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自己研修型教師の養成を目指した実習指導 : 自己開発能力の養成に向けて

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Academic year: 2021

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(1)自己研修 型教 師 の養成 を 目指 した 一― 自己開発 能力 の養 成 に向 け て一一. 松. 崎. 千香 子. Teaching Practiculn toward the Self― directed Japanese]Language Teacher ―. A First Step towards the Development of Self― development Ability―. MATSUZAKI Chikako Abstract: The ail■ of teacher training is to help the trainee teachers to develop and improve their teaching practice by themselves。. ・. In this paper, the difference in teaching between a professional Japanese language teacher and a student teacher teaching Japanese for the first tiine is discussedo A most important difference between the two is that. the professional teacher pays much attention to the leamers' response and the relations between teacher and learners.. Student teachers did not pay very much attention to the leamers du五. ng the practice; however,through the. process of looking back over their practice and evaluating it, they found that consideration for the learners. was very important. It follows fronl what has been said that through the experience of practice and evalu― ation student teachers build up the basis of the self―. development ability which is necessary for the self―. directed teacher。. 要 旨 :本 稿 で は ,学 生 の初 めての教壇経験 としての模擬授 業 と,現 職 日本語教 師 の授 業 を比較 し,学 生 の授 業 の特徴 と問題 を明 らか に した。 また ,模 擬授 業後 に行 った学 生 の授 業 の振 り返 りにお け る発. 言内容 か ら,学 生が模擬授業 を通 して,教 師 として どの ように変化 したかについて考察 した。近年 自己研修型教師の養成 を目指 した教員養成 の重要性が指摘 されてい る。模擬授業 ,及 びその振 り返 り ,. を通 して,学 生 自身が 自己研修型教師 に不可欠な自己開発能力 の基盤 一 自己の保有す る教育能力 を的 確 に把握 し,そ の良い点や欠点 を客観的に評価する とともに,常 に自ら改善 目標 を設定 してい くこと ので きる能カ ーを築 き始 めたことが認 め られた。. 1.は. じめ に. 場 にある者であ り,学 習者の 自律的に学ぼ うとす る意 欲,及 び学習能力 を伸ばしてい くのを支援する役割 を 担 う者 であるとい うことを心に留 めてお く必要があ. 近年 の言語教育 においては,こ れまで実践 されて き た教師主導型教育 か ら学習者主体 の授業へ の転換 の必. る。. 要性 が主張 されてきてい る。今 日で は学習者主体 の言. 学習者が 自律的 に学習 で きる ようになるのを助ける の と同時 に,教 師 もまた自己研修 を通 して成長す る必. 語教育 (学 習)の あ り方 に関 して多様 な研究が行われ ている。 この よ うな学習者 主体 の言語教育 にお い て. 要 がある。岡崎 ・岡崎 (1997)は ,「 これ まで の教授 法 や教材 の もつ可能性 を批判的 に捉 えなお し,こ れま. は,教 師 は,標 準的 な正 しいモデルを示 し,教 える立. での無意識 に作 り上げて きた自分 の言語教育観 やそれ.

(2) 甲南女子大学研 究紀 要第 40号. 文学・文化編 (2004年 3月. ). に基づいた教授法やテクニ ックの問題点 を,学 習者 と. 的な事項 については既 に学習 してい る。学生 の うち 6. の関わ りの中で見 なお してい くとい う作業 を自らに課. 名 は,年 度末 に日本語 の海外実習 を行 う予定 であるこ. す」 (p。 15)「 自己研修型教 師」 の養 成 の方 向 を示 し. と,ま た「日本語教育演習 I」 は,い わゆるゼ ミであ. た。. るため,来 年度 の卒業研究 に向けて問題意識 を持 って. この よ うな中にあ って,日 本語教育実習 の あ り方 は,「 教師 として備 えるべ きだ と考 えられてい る指導. ほ しい ことの 2点 か ら模擬授 業 を行 う旨の説明 を行 い,学 生の動機付け を図 った。. 技術 を指導者 が訓 練 によって教 え込み マス ター させ. 同授業において音便 に関す る事 などについて既 に触. る」 (岡 崎 ・岡崎 , 1997: p.8)と い う「教 師 トレー ニ ング」 か ら,「 実践 ―観察 一改善 のサ イクル を実習. れたとい う経緯があ るため,模 擬授業 では「テ形」 を 取 り上 げた。「テ形」 とは,用 言 に接続助 詞 「テ」が. 生 (現 職 )が 主体的 に担 うことによって教師 としての 専 門性 を 自 らが 高 め て い く」 (岡 崎 ・岡崎,1997:p.. 「に ぎやかで」 な どの形 をそれぞれ,動 詞 「行 く」 の. 10)と い う「教師の成長」 を目的 としたものへ と転換. テ形 ,イ 形容詞 「赤 い」 のテ形 ,ナ 形容詞 「にぎやか. してい く必要があ る。. (だ )」. 本稿 で取 り上 げる,本 学 で 日本語教育 を学 ぶ 学生 (文. 学 部 日本 語 日本 文 学 科 3年 生 8名 :以 下,「 学. 生」)の 場合 は,日 本語 を教 える入 り口に立 ったばか 生が履 修 中の「日本 りと言 えるい 。今年度 7月 に. ,学. 接続 したもので, 日本語教育では「行 って」「赤 くて」. のテ形 と呼ぶ。 テ形 を用 いた文型 ・表現 は多様. であ り,初 級 においてだけで も,「 ∼てい る」「∼てあ る」「∼て下 さい」「∼てはいけません」「∼て もらう」 等多 くの文型 ・表現 が指導項 目に挙げられる。 模擬授業 に先駆け,授 業 で,初 級 で導入 される「∼. 語教育演習 I」 (通 年科 日)冽 にお い て 日本語 の模擬授. テ,∼ 。 」 とい う形式 のテ形表現 には,ど の よ うな用. 業 を行 った。学生 の多 くは,2004年 3月 に韓 国 で 日. 法があるか,学 生 に挙げさせたところ,次 の ようなも. 本語 の教育実習 を行 う予定 であるため,早 い段階で模. のが挙げ られた。 尚,こ こでの用法 の名称 は学生が挙 げた ものをそのまま用 いた〕。. 擬授業 の経験 をさせ ,自 らの目的意識 ,並 びに,自 ら の指導方法 に対す る問題意識 を持 たせ ようとしたため この 7月 の模擬授業が,学 生 にとっては最初 の教壇. : 「友達 と食事をして,映 画を見ます。」 ①継起 ②原因・理由 「風邪をひいて,学 校 を休みました。 」. 経験 であった。学生が,こ れまでの講義中心 の授業 に. ③付帯状況 「手 を上げて,横 断歩道 を渡 ります。 」. おける受動的な姿勢 か ら脱却 し,模 擬授業 の経験 をク. ④手段. である。. :. :. : 「この紙を使 って,封 筒を作 ります。」. リテ イカルに捉 え,自 らを「教 師 として成長」 させる ための契機 と位置付 け て い け る よ う,実 習指導教員. 学生には,こ れらの中から自分が希望する用法を選. 以下では,学 生が行 った 日本語 の模擬授業 と,現 職. 択 し,8分 程度で文型 を導入す るように指示 した。そ の際,継 起を選択 した場合は,テ 形の形の作 り方 につ. 日本語教師の授業 についての評定調査 を行 い,教 壇経. いても教えるとい う条件 を付 した。模擬授業 までに複. 験 の差異 によって授業が どの ように異なってい るかに. 数の学生から⑤形容詞の並列 (:「 この部屋 は大 きく てきれいです。 」)に ついての導入の希望が出たため. (筆 者 )が 支援 してい くことを心掛けた。. ついて明 らかに し,初 めての授業 における学生 の問題 点 を探 る。 また,授 業後 の学生の模擬授業の振 り返 り における発言内容 を提示 し,学 生が 自らの授業 ,教 師 としての 自分 自身 についてどの ような気づ きを見せた かについて考察す る。. 2。. 2-1. 模擬授業前 の学生 に対す る導 入. 模擬授業課題. 学 生 の大半 は ,授 業 の進 め方 につい て は既 に前 年度. ,. これを許可 した。また,③ 付帯状況については選択 し た学生がいなかった。. 2-2 模擬授業前の学生の「 日本語教師像 」 模擬授業 を行 う前 に,学 生 に 自分が考える「日本語 教師」 について 自由に挙げさせた。 ・正 しい 日本語 を学習者 に教 える こ とを仕事 とす る。. の「 日本語教授 法 I・ Ⅱ」 にお い て講義 を受 け ,教 材. ・幅広 い 日本 語 の 知 識 を持 つ 。. 分析 の 方法 ,さ まざまな教 授 法 , ドリルの種類 ,学 習. ・ 文 法 能力 が 高 い 。. 項 目の分析 ,各. レベ ル ・ 各技 能別 の指導法 な ど,基 本. ・忍 耐 力 が必 要 で あ る 。.

(3) 松 崎千香子 :自 己研 修型教 師 の養成 を目指 した実習指導. ・文化的知識が豊富 である。 ・学習者 にわか りやす く教 える必要がある。. 泉ヮィトボード. ・外国語がで きたほうが良い。. 以上のような点が挙げ られた。 これ らから,教 師自 身の能力 ・資質 に関わることに注意が向いていること が分かる。 先 に も述 べ た とお り,外 国語学習 にお い て ,教 師 は. 学. 学習者 の 自律 的学習 を支 える役 割 を担 ってい る こ と. 習. 者. Figure l 教室の教具等配置. ,. また ,授 業 は学習者 中心 で あ るこ とを心 が け る必 要が. あるが,模 擬授業 を行 う前 の段階では,こ のような点. とがで きるが ,全 学 生が基本 的 に この 配置 で授. については学生の意識は向いてい ない とい えよう。. 業 を行 った。 学 生が授 業 で用 い る教材 ・教 具類. 3。. (フ. ラ ッシ ュ ・ カ. ー ド,レ ア リア,絵 教材 な ど)は 各 自が 自由 に作成 ・. 模 擬 授 業. 準備 した。. 3-1 模擬授業の概要. 教 師役 の学 生 は,大 半 が ホ ワイ トボ ー ドの前 ,若 し くは教卓 の横 に立 って授 業 を進 めた。 一 人 の学生 のみ. (1)模 擬授業 における学生及 び指導教員 の役割分担 本授業 では,次 の ように学生 の役割 を定 めた。学生. 使用教材 が よ く見 える よ うに学習者 に近 い位 置 に立 っ. は,教 師 として模擬授業 を 1人 1回 (8分 程度)担 当. て授 業 を進 めた。. し,実 習時以外 は,学 習者役. (授 業 を受 け る),ま た は観察者 (授 業 を詳細 に観察 ・記録す る)を 担 当 し. (4)模 擬授 業 の記録. た。 この際,学 習者役 と観察者 を担当する回数がほぼ. された。 また ,観 察者 は模擬授 業 にお いて気 づい た事. 均等 になるよう配慮 した。授業指導教員 (筆 者)は 常 に学習者 とな り,模 擬授業 に参加 したの。 教 師役 :「 日本 語 教 育 演 習 I」 を履 修 して い る 8. 柄 を全 て筆記 で記録 した。. 名。全員が 日本語 日本文学科 3年 生であった。 学習者役 :実 習担当以外 の学生 ,教 員各実習 5名 。. 模擬授 業 の様子 は ,デ ジタル ・ ビデオカメラで記録. 模擬授 業 を記録 したデジタル ・ ビデオの映像 は,コ ンピュー タを用 いて ,学 生 ご とに 1つ の フ アイル を作 成 し保 存 した。模 擬 授 業 の 時 間 は 最 短 で 約 7分 30 秒 ,最 長 で 12分 強 で あ り,学 生 に よ り差 が 見 られた。. 観察者 :実 習 ・学習者役 以外 の学生 ,各 実習 3名 。. (2)実 習内容. 4。. 模 擬 授 業 に対 す る 評 定 調 査. 日本語初級教科書で扱われてい る「テ形」 (「 ∼テ. ,. ∼」 の文型)の うち,2-1で 挙 げた用 法 か ら 1つ 選択 し,そ れを 8分 以内で導入す る。導入の際,参 考 にす る. (あ. るい は模擬授業 で用 い る)教 科書 は,各 自が選. 4-1 模擬授業 に対す る評定調査 記録 された模擬授業 の うち,「 継起」 の導入 を行 っ た一人の学 生の授業. (約. 12分 )と ,こ れ と比 較す る. 択 し,実 習 の際 ,当 該 の用法が導入 される課 の全頁 を. ために,現 職 日本語教師が同 じ教科書 で「継起」 の導. 授業参加者全員 に配布 した。 また,各 自が作成 した教. 入 を行 った授業9を. 案 も実習の直前 に全員 に配布 したが,学 習者役 の学生. 評定 して もらった。評定者 の評価 の視点が偏 らない よ. には模擬授業 の間はそれを見ない ように指示 した。教. うに,視 聴 の前 に統一の評定表 を渡 し,そ れに評定 を. 案 は,で きるだけ詳細 な内容 を書 いて くる ように事前. 記入 して もらう方法 を採 った。評定者 は評定表 に記載. に指導 した。. されてい る 40項 目に対 し,そ れぞれ 5段 階 で評定 し た。評定項 目及 び評 定 方法 につ い て,Table lに 示. (3)実 習形態 準備物 :ホ ワイ トボー ド,マ ーカー,教 卓 ,学 習者用 の机 ・椅子 ,観 察者用 の机 0椅 子 ,デ ジタル・. ,現 職 の 日本語教師 21名 に視聴. ,. す。 Table lに 挙 げた評定項 目は,堀 口 (1992)で 授業. ビデオカメラ (記 録用 )。 配置 は,Figure lの 通 りであ る。 ホワイ トボー ド,教 卓 ,机 ・椅子. の分析 をする目的で用 い られた ものに,表 現 を変える. は固定式 ではないため,自 由に配置 を変えるこ. 堀 口 (1992)で は,評 定項 目の 中 に「20.ド リルの. などの若干 の修 正 を加 えたものであ る。.

(4) 甲南女子大学研究紀要第 40号. 文学 ・文化編 (2004年 3月. ). Table l 日本語教授技能評定項 目. 1学 習へ の動機付 け は よくで きた。 2授 業 の 目標 を明確 に しようと努めた。 3授 業内容 にめ りは りがあ った。 4適 度 な緊張感 の ある授業だ った。 5授 業全体 のテ ンポは適切 だった。 6和 やかな雰囲気 の授業 だった。 7授 業 で取 り上げた項 目は多す ぎず,適 切 だつた。 8ま とめは十分であつた。 9既 定 の時間 を有効 に使 った。. 10時 間配分が適切であつた。 11 目標 は十分達成 された。. 12個 々の学生の理解度 を十分理解 しなが ら進めた。 13説 明 は分 か りやす く工夫 されてい た。 14言 葉遣 いは適切 であった。 15重 要な点 で学生の興味や注意 を喚起するような工夫 をした。 16話 し方の速 さは適切であ つた。 17声 は大 きくてはっきりしていた。 18教 師 は話 しす ぎず,学 生 も十分発言す る機会があ った。 19教 師 は教 えるべ き事項 を正 しく理解 してい た。 20 ドリルの量は適切であ つた。. 21教 具,教 材 を有効 に活用 した。 22適 切 な教具 ,教 材 を使用 した。. をよく. しなが. 観察 23讐 製糞場経 ふ毛iン グや範囲が適切で学生 24学 生のほうへ顔 を良 く向け,学 生 と目線 も合わせ ていた。. な さ '正 確 さ,筆 順 ,配 置 ,ま とめ,配 色 言ぷ李f。 26学 生の蹟 き,誤 り,疑 間 に うまく対処 した。 27間 の取 り方 は適切 だつた。 万. ゲ. │」. 28誤 りの訂正 は適切だ つた。 29教 師の態度 に落 ち着 きがあ った。 30学 習意欲 を育てるよう,個 々の学生の発言 を尊重 した。 31学 生へ の行動 の指示 ,要 請 は適切だった。 込 む よ うな表現 (身 振 り,表 情 ,話 し振 2替 馬 難 :塩 33学 生は生 き生 きとして授業 に参加 した。 34学 生は集中 して授業 を受 けていた。 35挙 手 を しない学生 に も発言 の場 を与 えた。 36発 間の後,大 多数 が考 えるまで十分な時間を取 った。. 37予 期 しない学生の発言や反応 にうまく対応 した。. 38発 間の量,内 容 は適切 だった。 391つ のステ ップか ら次の ステ ップヘ の移行 はよくで きた。 40学 生の反応が正 しか ったか どうかす ぐ知 らせた。. 動機付 け られない まま授業が進んだ。 日標 を明確 にする努力が足 りなか った。 め りは りの無 い授業 だった。 飽 きを誘 う授業 だった。 テ ンポが [速 す ぎた,遅 す ぎた]。 堅苦 しい,打 ち解けない雰囲気 の授業 だった。 取 り上げた項 目が [多 す ぎた,少 なす ぎた。] まとめ をしないで終 わった。 時間が足 りなか った り,余 った りした。 時間配分が不適切であ った。 目標 は達成 されなか った。 学生の理解度 につい て注意が払われなかった。 説明が分か りに くか った。 言葉遣 い は [難 しす ぎた,易 しす ぎた]。 重要な点 に学生の興味 や注意が向いてい ないの にその まま授 業 を進めた。 話 し方が [速 す ぎた,遅 す ぎた]。 声 が小 さくて聞 きに くか つた。 教師が [話 しす ぎた, もっと話すべ きだ った]。 間違 ったことを教 えてい た。 ドリルが [少 なす ぎた,多 す ぎた]。 教師 は教具 ,教 材 の使用 が有効ではなかった。 あ ま り適切 ではない教具 ,教 材 を使用 した。 机間巡視 をするべ き時 に しなか った り,巡 視 は したが よく見 なか つた り,範 囲が偏 った りした。 学生 と視線 を合わせ ない ように してい た。 板書へ の配慮が不十分 で,字 が大 きす ぎた り,不 鮮明 だつた りして見に くか った。 学生の蹟 き,誤 り,疑 間 の見落 とし,取 り違 えがあった。 [せ かせか した,間 延 び した]授 業 だった。 本人 に理解で きなか った り,学 習意欲 を失わせ た りする よう な訂正だ った。 緊張 ,焦 り,不 安 ,う ろたえが見 られた。 学生の発言 を無視 した り,聞 き流 した り,取 り上げなか った りした。 学生 は何 を した ら良いのか分か らず, まごついていた。 表情 に乏 しく,授 業 に引 きつ ける力が ない。 多 くの学生は授業 にのってい なかった。 集 中 してい ない学生が多 かった。 挙手 した学生のみ発言 させた。 発間の後,す ぐに指名 して答 えさせた。 予期 しない質問や反応 を無視 した り,そ のために混乱 した り した。 発間の量 は [多 す ぎ,少 なす ぎ],内 容 は適切でなかった。 次 に何 をするのか学生は分か らず混乱が見 られた。 学 生 は 自分 の反応が正 しか ったか どうか分か らない まま授業 が進んだ。. ※実際 に用 いた評定表 では,各 項 目の右側 の事項 と左倶1の 事項 の 間に,「 5_4_3_2_1」 のように線分が書 いてあ った。 これ ら の数字 は,5:「 全 く左記 の内容 の通 りである」,4:「 やや左記 の内容 に近 い」,3:「 左記 の内容 とも,右 記 の内容 ともい えな い。 」,2三 「やや右記 の内容 に近 い」,1:「 全 く右記 の内容 の通 り」 を示 してい た。 ※評定者 は観察 した授業が どうであったかを,40項 目各 々について左側 と右側 の相対する内容 を読 んだ上 ,5段 階で評定 し 該当す る番号 に○ を付す よう教示 された。 ,. 量 が [多 す ぎた ,少 なす ぎた]。 」 の よ うに相 反す る要 素 が 含 まれて い る ものが 存在 してお り,こ れ につい て. 目 21と 22(教 材 教 具 の 使 用 に つ い て),項 目 30,33 と 34(学 生 の 学 習 へ 態 度 へ の 配 慮 ),項 目 26と 28. 5段 階評定 させ た ところ,分 析 の 際 , ドリルの量 が 多. (学 生 の 反応 へ の対 応 )の. す ぎて不適 当な のか ,少 なす ぎて不適 当 なのか判別 で. 重複 して い る (独 立 して教授 技 能 を測 り分 け て い な. きなか った とい う問題 が 指摘 されて い る。 これ らの相. い )こ とが 明 らか にな つた。今後 の研 究 で は この点 に. 反す る要素 を含 む評定項 目につい ては ,今 回 の評定調. 鑑 み ,評 定表 を改 訂す る必 要が あ る。. 4種 類 9項 目の 内容 が 一 部. 査 で は 5段 階評定 した上 で ,該 当す る要素 の 方 に○ を. この調査 で得 られ た学 生 の授 業 ,及 び現職 日本語教. つ ける よ う評定者 に要請 し,分 析 の際 の参考 と した。. 師 の授 業 に対す る評定 を対照 し,学 生の模擬授 業 の特. 今 回 ,評 定 項 目 に つ い て ,項 目相 互 間 の 相 関係 数 (ピ. ア ソ ンの積率相 関係 数 ),及 び クラス ター分析 を行. った結 果 ,項 目 9と 10(時 間 の使 い 方 につ い て),項. 徴 と問題点 を探 った。.

(5) 松崎千香子 :自 己研修型教師の養成 を目指 した実習指導. 4-2. 分析結果. 評定調査 で得 られたデ ー タの 因子分析 を行 った とこ. り,中 には学習者 の質問 に対 し,誤 ったフイー ドバ ッ クを与 えるなどの行動が見 られ,こ の項 目について も. ろ,学 生 の模 擬授 業 ,現 職教 師 の授 業 か ら,Table 2. かな り評定が低 かった。. に示す 因子 が 抽 出 された。. (2)「 授業 の展開」「動機付け」因子. これ らの因子 については,現 職教師の授業 のみか ら Table 2 学生 と現職 日本語教 師 の授 業 か ら抽 出 され た因子. I Ⅱ Ⅲ Ⅳ V Ⅵ. 学生 の模擬授 業. 現職教 師 の授 業. 時 間 の用 い方 (37.2%) 教材 の使 い方 (17.8%) 雰 囲気 づ くり (10.0%) 学習者 へ の対応 (6。 7%) 分かり易 さへ の配慮 (5。 9%) 引 き締 ま り (4。 1%). 学 習者 へ の対応 (48。 2%) 時 間 の用 い 方 (H.5%) 動機付 け (10。 8%) 授 業 の展 開 (7.2%) 雰 囲気 づ くり (5.5%) 教材 の使 い 方 (4。 2%) ※括弧 内 は寄与率. 抽出され,学 生の授業か らは抽出 されなか った。 「授業 の展開」因子 では,項 目 12「 個 々の学 生の理 解度 を十 分理解 しなが ら進めた」が,ま た「動機付 け」因子 では,項 目 2「 授業 の 目標 を明確 に しよう と 努 めた」,次 いで項 目 1「 学習へ の動機付 け は よ くで きた」が因子負荷量 が大 きかった。 (3)「 分か り易 さへ の配慮」「引 き締 まり」因子 これ らの因子 については,学 生の授業からのみ抽出 された ものである。因子負荷量 の大 きか った項 目は. (1)「 学習者 へ の対応」 因子. ,. 現職教 師 の 第 I因 子 「学習者 へ の対応」 は,学 生 ・. 前 者 で は 項 目 25「 板 書 (字 の 大 き さ,正 確 さ,筆. 現職教 師 間 に大 きな差 が 見 られ ,現 職教 師 の方 が 寄与 率 がか な り高 い (48.2%)こ とが 半J明 した。 この 因子. 」,後 者では項 順 ,配 置 ,ま とめ,配 色 )は 良かった。 った で は 。 」 あ った。 目 3「 授業内容 にめ り りがあ. に関 して ,現 職教 師 の授 業 につい て 因子負荷 の大 きい. (4)「 時間の使い方」「教材 の使 い方」因子. もの は ,次 の Table 3に 挙 げる項 目で あ つた。. これらの因子 は,現 職教師,学 生のいずれの授業で も抽出されたが,学 生の授業では特に寄与率が高かっ. Table 3 現職 日本語教師の「学習者へ の対応」因子 にお いて,因 子負荷量の大 きかった評定項目 28.誤 りの訂 正 は適切 だ った。 (.642) 37.予 期 しな い 学 生 の 発 言 や 反 応 に う ま く対 応 した。 (。. 633) (。. 学生 の蹟 き,誤 り,疑 間 に うま く対処 した。 (.502) 1つ のス テ ップか ら次 のス テ ップヘ の 移行 は よ くで き た。 496) 31.学 生 へ の行動 の指示 ,要 請 は適切 だった。 488) 40。 学 生 の 反 応 が 正 しか っ た か ど う か す ぐ知 らせ た。 26。. 39。. (。. (。. (。. これ らの寄 与率 の高 さと,現 職教 師 と学 生 の授 業 の ほかの因子 の寄与率 を合 わせ てみてみ る と,学 生 の場 合 は ,8分 程度 とい う規定時 間 の 内 に,作 成 した教 案. 29.教 師 の態度 に落 ち着 きが あ った。 510). 30。. た。. どお りの進行 を心が け て い る一 方 で ,現 職教 師 の場合 は,学 習者 の反応 を見 なが ら,時 間 を有効 に使 お う と して い る こ とが 分 か る。. 479). 学 習 意 欲 を育 て る よ う,個 々 の 学 生 の 発 言 を尊 重 し た。 407). 5。. 評 定 調 査 ,及 び授 業 記 録 か らの 考 察. (。. ※括弧内は,因 子負荷量 一 方 ,学 生 の授 業 にお い ては,「 学習者 へ の対応」 因子 は寄与率 6.7%と 低 か った。Table lに 挙 げ た評 定項 目の うち,学 生の授業 において因子負荷量が小 さ. 学生の模擬授業 について,全 ての点 について論 じる のは困難 であるため,特 に大 きな問題 と,記 録映像 を 観察 した結果 ,学 生の模擬授業 に共通 して認められた 問題 について述べ る。. 項 目 28に 関 しては,「 誤 りの訂正は適切だ った」 に. 学生 ・現職教師の授業 に共通 の因子 として抽出され た「学習者へ の対応」因子 について,両 者 の寄与率 に は大 きな差が認 め られた。 これ と,前 節 (1)で 述べ. 相反す る「本人 に理解で きなか った り,学 習意欲 を失. たことか らも明 らかなように,現 職教師 は,学 習者 の. わせた りす るような訂正だ った」 の方 に評定が傾 いて. 反応 に敏感 であ るよう, しか も学習者 の反応 一つ一つ にきちんと適切 な反応 をするよう心 がけてい ることが. かったのは,順 に,項 目 30(因 子負荷量 .034),項 目. 40(同 .051),及 び 31(同 .056)で あ つた。. いた。 また ,項 目 31に 関 して は ,行 動 の 指 示 が うま くで きて い ない とい う評定 が 多 く見 られた。 さ らに項 目 26に 関す る こ とで は ,学 生 が 誤 った 文 を発話 した ときな どに,聞 き流 して い た り,板 書 の 中 か ら正 しい 形 をす ぐさ ま指 差 す こ とが で きなか っ た. 分 かる。 また,授 業 につ きものの,学 習者 か らの予期 せぬ発言や反応 に対 して も,落 ち着 い た態度 で適切 に 対応 してい るとい える。 また,現 職教 師 の授業 は,項 目 24「 学生 の ほ うヘ 」 や項 目 顔 をよ く向け,学 生 と目線 も合 わせ て い た。.

(6) 甲南女子大学研究紀要第 40号. 文学・文化編 (2004年 3月. ). 18「 教師 は話 しす ぎず ,学 生 も十分発言する機会があ. の対象 とした学生の授業以外 では,テ 形 の作 り方 につ. った。 」 についての評定 も高 く,現 職教師 は学習者 の. い て まだ学習 してい ない に も拘 わ らず,「 7時 に起 き. 反応 を絶えずチ ェック し,学 習者 の能動的な学習,学. て,コ ーヒー を飲み ます。 」 の ようなテ形 を用 い た文. 習者中心 の授業 を心がけてい ること,さ らには,「 授. 例 を一例示 しただけで,「 顔 を洗 い ます。朝 ごは んを. 固々の学 生 の理解 業 の展 開」因子 に関 わる項 目 12「 イ. 食べ ます。 これ を一つ の文 に直 して くだ さい。 」 とい. 度 を十分確認 しなが ら進めた」 についての評定が非常. うように無理な行動 を要請 した者 もいた。 さらには. に高 く,学 習者 の学習の進展について注意 を払 ってい. 学生 による複数 の授業 において,何 を復唱するのか理. ることが うかがえる。現職教師は,こ の ような学習者. 解 で きなか った り,復 唱のタイミングが掴 めなかった. とのや りと り,及 び学習者の観察 をは じめ とした授業. りして,学 習者が戸惑 い を見せた場面が確認 された。. 全体 を通 じて,学 習者 との信頼関係 を築 こうとしてい. 付 け加 える と,現 職教 師 な ら,こ うい った場面 で ,学. ることが読 み取 れる。. 習者 が ば らば らに復 唱 を行 った 時 ,あ る い は復 唱 し. 一 方 ,学 生の授 業 にお い ては,「 学習者 へ の対応」. ,. (で. き)な か った 時 には ,一 人 一 人が正確 な復 唱 を行. 因子 について詳細 に見 てみると,学 習者 の誤 りの訂正. ったか ど うか の確認 がで きて い ないので あるか ら,再. や,予 期せぬ学習者 の発言 ・反応へ の対処,学 生の疑. 度復 唱す る文 を学習者 に口頭 で提示 し,全 ての学習者. 問 ・蹟 きへ の対処 に関す る項 目へ の評定が低 く,多 く. が正 しい復 唱 を行 った ことを確 認 してか ら次 のステ ッ. の問題が存在 してい ることが分 かる。. プに移 る。学生 の場 合 は,学 習者 の理解度 の確認 や次. 一般 に語学教師 は授業 を行 う前 に,新 しい学習項 目 の分析 を行 うとともに,既 習項 目の整理 ・確認 ,既 習. の ス テ ップヘ の 移行 の 適切 さに問題 が あ る と言 え よ. 項 目と新出項 目との関連 ,予 想 される質問 とそれに対. また ,こ れ に関連 して,学 生 の授 業 の多 くは,変 形. す る対処 まで を考 えて授業 に臨 む。 この よ うな こ と. ドリル を行 わせ るな どした時 に,一 人 の学習者 を指名. は,多 くの授業経験 を経 て 身 につ ける ことで もある が,最 低限,新 出項 目についてはで きる限 りの分析 を. して答 え させ ただけで次 の発 間 に移 っていた。 これで は,指 名 された学習者 につい ては理 解 して い るか否 か. 行 い,学 習者 の反応 をあ らゆる角度 か ら予測 しておか. が 分 か るが ,他 の学習者 も理解 で きて い るのか否 か は. ねばならない。学生 には,模 擬授業前 の教案作成指導. 分 か らない。特 に新 しい表現 な どの導入時 には ,必 ず. を行 った ときに,注 意 としてこれ らの事柄 については. 全 ての学習者 に復 唱 させ るな ど して理解度 を確認す る. 示 しておい たが,や は り教授項 目の分析 の甘 さ,学 習. 必 要 が あ る。 この よ うな理解度 の確認 につい ては,現. 者の反応 の予測 の不十分 さは目立 った。. 職教 師 はて きぱ きと ドリル を実施 しなが ら確 実 に行 っ. う。. 教授項 目の分析 ,学 習者 の反応 の予測 は,使 用教材. て い た。現職教 師 の場 合 は ,学 習者が誤 った 回答 を し. の当該 の課 だけを見 ていて もで きるものではない。当. た時 で も,そ の学習者 にだけで はな く,全 ての学習者. 該 の課 に先立 って教 えられてい る既 習項 目について も. に対 して正 しい答 えを示 し,且 つ そ の後 で ,全 ての学. 頭 に入ってい なければ,学 習者 の頭 の中 にある日本語. 習者が 口頭 で正 しい答 えを言 える よ うになって い る こ. を理解す ることは不可能であ り,そ れが理解 で きなけ. とを確認 して い る。. れば,当 然 ,学 習者が どのような反応 ,誤 答 を返 して くるか も予測で きない。. 他 に,現 職教 師 が配慮 して い る「動機付 け」 因子 に つい ては,学 生 のほ うは,テ 形 の各用法 につ い ての導. このような ことは,先 にも述べ たように,経 験 を通. 入 とい う課題 をこなす の に精一 杯 で ,授 業 開始後 ,文. して学ぶ もの と言えばそ うであ るが,自 己研修型 の教. 型 の導 入 も行 わず に,い きな り形 の導 入 を始 めた学 生. 師養成の観点 か らすれば,学 習者 に対す る適切 な対処. もい た。 このテ形 の用法 を学習す る と, どの よ うな言. がで きなか った理由を自らが見出す ことが重要なので. 語行動 がで きる よ うになるのか とい った,学 習者 の コ. ある。 この点 については,6で 論 じる。 次 に,項 目 31「 学生へ の行動 の指示 ,要 請 は適切. ミュニ ケ ー シ ョン能力 に直結す る よ うな導入 を行 った 者 はお らず ,二 つ の文 をテ形 に よって一 つ につ なげる. だった。 」 について,学 生の授業では評定値が非常 に. には ど う した らいい か ,ま たつ なげてで きた文 の意味. 低 かった。実際の授業 の映像記録 を見てみると,こ の. は どの よ うな ものか とい った形式 的 ・意味 的 な観点 か. 評定調査 の対象 となった学生の授業 では,学 習者 に言 わせ るべ き回答 を自分で言って しまい,学 習者が何 を. らのみ 説 明 を行 ってい た。. 答 えていいのか分か らない場面があ った。 また,調 査. は,自 分 の行動 を継起 的 に述 べ る には,「 朝 7時 に起. 例 え ば ,学 習 者 は「継 起」 に つ い て 学 習 す る 前 に.

(7) 松 崎千香子 :自 己研 修型教 師 の養成 を 目指 した実 習指導. きます。 コー ヒー を飲 み ます。8時 に家 を出 ます。 」 とい うように,三 つの文 を続けて挙げる. (あ. るい は. ,. 授業 の映像記録か ら,「 引 き締 ま り」因子 に関係す る と思 わ れ る 点 は,多 くの 学 生 が ,「 まず ∼ し ま. 略 しか持 たない。 これ らを一つの文 で述べ るための方. す。 」,「 では,こ こで∼ してみ まし 」,「 次 に∼ します。 ょう」 などのように,授 業 の流 れを示す ことば を用 い. 法 を知 らないのである。教師の側 はこれを利用 して. て,学 習の方向付け を行 っていた ところである。 この. 学習者 が「継起的な行動 を一 つ の文 で表現 してみた. ような方向付けは,学 習者 にとって心積 もりをするな. い」,あ るいは「一つの文 で表現す るには どうした ら. どがで きるようになるため,さ らには,自 身の学習 の. 良い のか」 と思 わせ る よ うな文型導入 を行 う,ま た. 進み具合 を確認す ることがで きるため,有 効 なもので. は,継 起 のテ形表現 を用 い ることので きる場面 を用 い. ある。. 「そ して」 の ような接続語 を用 い る)と い うような方. ,. た文型導入 を行 うことによって,「 この表現 はこ うい. 現職教師の場合 は,文 型 を提示す ると同時 に学習者. う場面 で用 い ることがで きるのか」 と学習者 自身に気. に用法 を考 えさせた り,動 詞 のテ形 の回頭練習 をする. づ かせる,な どの方法 により学習者 の動機付 けを行 え. 一方 で学習者 に音便などの形 の作 り方 のルール を考 え. ば良い。. させた り,テ 形 の作 り方 の導入の際 にさりげな く辞書. また,学 習者中心 の教育 (学 習),コ ミュニ ケ ー シ. 形 やマス形 についての復習 を入れた りとい うことがあ. ョン能力 の養成 を視座 にいれた授業では,単 に言語的. った。 これは,学 習者 の既有知識 を動員 させての学. 知識 を植 え込むだけでな く,そ の表現 を習得す れば. 習 ,或 い は,学 習者 の能動的 な学習活動 を狙 った もの. どの ような ことがで きるようになるかを学習者 に示す. であ る。無論 ,現 職教師の場合 も,こ とばで もって. 必要があるだろう。例 えば,原 因理由を表 わす 「∼テ. 学習 の方向付 けを行 っているが,学 生 の場合 よ りも方. ∼。 」 (「 友達 か ら手紙 が きて,嬉 しか ったです。 」)の. 向付 けが よ り自然 になされて い る。 この よ うな違 い. よ うな文 では,後 件 の原 因が前件 である ことを説明. が,学 生の授業 にのみ「引 き締 ま り」因子 が抽出され. し,文 型練習するだけで終 えるのでは学習者 の動機付. た原因 と推測 される。. ,. ,. けも,コ ミュニケー シ ョン能力 の養成 も望めない。 し か し,こ の表現 が,「 ど う して遅刻 しま したか。 」「な ぜ学校 を休 みましたか。 」 に対す る応答. (「. 6.学 生 の 気 づ き一 ― 自己 開発 能 力 の 基 盤. 電車が遅れ. て,遅 刻 しました。 」「風邪 をひいて,学 校 を休 み まし. 以上 の考察 は,学 生の指導教員 であ る筆者 が,評 定. た。 」)に 用 い ることがで きる,す なわち,学 習者 の生. 調査 の結果 と,授 業 の映像記録 とを見 て行 った もので. 活 の 中で有用な表現 である ことを文型導入 の段階か ら. あ る。学生 に これ らの点. 示せば,学 習者 の動機付 けも可能である し,学 習者 の 実際 の コ ミュニケー シ ョンにも役 立つ。. 点)に ついて示 し,今 後 の学生の授業改善 に対す る示 唆 を与 えることもで きるが,そ れでは,自 己研修型教. 最後 に,学 生の授業のみか ら抽出された「分 か り易 へ さ の配慮」因子 ,及 び「引 き締 まり」因子 について. 師 としての成長 は望めない。 斎藤 ・田中・今尾 ・出口・稲葉 (1992)は. 述べ る。 これ らの因子負荷量 の大 きか った項 目は. 習生 としての経験 を踏 まえ,教 育実習 において「 自己. 「分 か り易 さへ の配慮」因子 では項 目 25「 板書 は良か. 研修型教師」 を養成す ることの重要性 を訴 えてい る。. った。 」 が,「 引 き締 ま り」因子 では項 目 3「 学習内容. また,「 自己研修型教師」 を養成す るためには,経 験. にめ りは りがあ った」 である。. の浅 い教師が,自 己を客観的に評価 し,分 析す ること. ,. (及. び,上 に記 せ なか った. ,教 育実. 学生の板書 については,評 定が高 く,映 像記録 を見. によつて 自己開発能力 の基盤 を作 ることが必要である. て も,丁 寧 な文字 で分か りやす く書 いてい ることが分. と述べ てい る。 自己開発能力 とは,「 自己 の保有す る. かる。 この点 については今後 も保持 していって もらい たい。但 し,学 生は教案 どお りに板書 を丁寧 に書 こう. 教育能力 を的確 に把握 し,そ の利点 や欠点 を客観的に 評価す ると共 に,常 に自ら改善 目標 を設定 してい く能. とす るあまり,板 書 に非常 に長 い時間 をかけていた。. 力」 のことを言 う。教育実習 は,こ の 自己開発能力 の. 学習者側 か ら見れば,長 い時間放置 されてい ることに. 基盤 ,す なわち,教 師が さらに自身 を向上 させてい く. なる。短 い時間の中で導入 を行 うのであるか ら,板 書. 原動力 を培 う場 と位置付 けることがで きる。. について も必要最小 限の時間で行 い,あ らか じめ必要. 以下では,こ のような先行研究 を踏 まえ,学 生 に模. な語や文 を書 いたマ グネッ トシー トを利用す るなどの. 擬授業終了後 に自身の授業 を振 り返 り,ま た他 の学生 の授業 を観察 し,授 業 に関す る評価 についてなど自分. 工夫 も必要であろう。.

(8) 甲南女子大学研 究紀 要第 40号. 文学 0文 化編 (2004年 3月. ). た ち の授 業 につい て 自主的 に,自 由 に発言 させ た。 そ. を初めて導入す る段階)で ,そ の説明 にテ形 を用 いて. の発言 内容 を幾 つ か取 り上 げ ,学 生 自身 に どの よ うな. しまっている点 も看過 で きない。. 気 づ きが あ ったか を探 ってい く. この学生だけでな く,学 生の発話は一文 が非常 に長 い傾向がある。特 に,学 習者 の疑問 ・質問 に答 えると. 6-1. 既習事項 の確 認 に 関 して. きは,予 期せぬ ものであるとい うことも影響 して,緊. 「学習者 か らの 予期 せ ぬ 質 問 や ,誤 答 に関 して も,な ぜ そ の よ うな質問 や誤 答 が出 るのか を既 習. 張 して しまい,頭 の 中で整理す る前 に考 え付 い たこと を話 し始め,未 習語彙 などを頻繁 に用 い てい る。「覚. 事項 との 関連 で考 えてみて初 めて理 解 で きる よ う. えといて」 の ような学習者 にとって聞 き取 りも理解 も. にな り,既 習事項 を確認す る こ との重 要性 が理解. 難 しい縮約形 も無意識 に使用 してい る。. 6。. で きた。 また ,こ の よ うな こ とは ,実 習 を終 えて. この ような説明がなされた場合 ,学 習者 は「よ く覚. 自分 の授 業 を振 り返 る ことが なか った ら分 か らな. え といて ください,の 意味が わか らない」「例外 とし. か った と思 う。」. て,っ て どうい うことだろ う」 などと引 っかか り,こ. この発言 か らは ,既 習事項 の確認 が大切 な こ とは指 導教 員 か ら聞 い ただけで理 解 で きた と思 つていたが. こでの説明の主要な点 である,テ 形 の形 の作 り方 のル ール を理解 し,覚 えるところ まで到達で きな くなって. ,. 学習者 か らの反応 を得 ては じめて ,ど んな事項 を確認. しまう。. しなければな らないの かが具体 的 に理 解 で きた こ とが. 教師 は,授 業 においては常 に使用す る語彙 をコン ト ロール しなければな らない。語彙 の コン トロー ル と. 分 か る。 つ ま り,学 生 は既 習事項 の 中で頭 に入れてお くべ きポ イ ン トに気 づ い た と言 える。 さらには,指 導 教員 か ら受動 的 に学 ぶので はな く,指 導技 能 を向上 さ せ るため には 自分 自身 の振 り返 りが必 要 であ る こ とに つい て も示唆 して い る。. 6-2. 教 師 の使用語彙 0使 用文型 0使 用表現 に関 して. ① 「学習者 の既習語彙 についてはで きるだけ頭 に入 れ,文 型 の導入や説明の時 には未習 の語彙 ・文型 ・表現 を用い ない ように心がけて,教 案 も作成 し た。 しか し,自 分 の授業 を見てみると,そ れ以外 のつ なぎの部分 や,学 習者の質問 に対す るフイー ドバ ックの部分 で,未 習の語彙 や表現 を用 いてい ることが分か った。 」 この発言 を行 った学 生 は,模 擬授業 で動詞 の「テ 形」 の形 について教 えてい るとき,次 の ような発言 を した (下 線 は未習文型 ・表現 )。 「五段動詞 の普通形が 〈書 く〉〈泳 ぐ〉のように 一く,一 ぐ〉で終 わるときは,〈 一いて,一 いで 〉の 〈 ,. 形 にな りますが,〈 行 く〉は例タトとして く行 って〉 」 とな りますか ら,よ く覚 えといて ください。 この発言中,大 きな問題 として 「辞書形」 のことを 「普通形」 と呼 んで い ることが挙 げ られる。使用語彙 ・文型 ・表現 の問題 と しては,未 習 の「∼の ように」 「∼ と して」「∼か ら」「∼て お く (の 縮 約 形 「∼ と く」)」 の使用 ,「 ∼ になる」 と「∼ となる」 の混用 が 挙げ られる。 さらには,こ れだけの情報 を一つの文 に まとめてい るため,こ の段階の学習者 には理解不可能 である。 また,テ 形 の形 について説明す る段階. (テ 形. は,学 習者の既習範囲内の語彙や表現 で指導す るとい うことである。学習者 にとって既 習 の語彙 ・文型 ・表 現 と未習の語彙 ・文型 ・表現 はいつ も頭 の中で区別す る必 要がある。 この語彙の コン トロールは,日 本語教 師 に必要な教授能力 の うちで も最 も重要な能力 の一つ に数 えられる。語彙 の コン トロールが十分 になされて い ない と,学 習者 は理解不可能 な状態 に陥 り,教 室内 の コ ミュニケー シ ョンが図れな くなって しまう。 このためには,教 科書 の各課 の語彙 0文 型 ・表現等 をきちんと覚えておかなければならない。そ して,授 業 の前 には,新 しい学習項 目の準備 だけではな く,既 習項 目の見直 しもして,語 彙 の コン トロールの範囲 を 確定 してお くのが大切 である。 ② 「学習者が正 しく言 えてい るか どうかについては 注意 を払 っていたが,自 分 の発言 については,授 業中ほとんど無意識 で,自 分 の授業 を見 なお して みて初めて自分 の発言 に対 して もっと意識 を向け 」 なければならない とい うことに気づいた。 教師 は, ドリルの際 にも説明の際 にも,常 に自分の 話 してい る・書 いてい る日本語 を自己モニ ター し,学 習者 の混乱 を絶 えず避けなければならないが ,① ,② の学生 の発言 は,ま さにこのことについての気づ きで あ った。. 6-3 学習項 目の分析 ,及 び授業の進め方に関 して ① 「テ形 の形 の作 り方 は,五 段動詞 に特 に注意が必 ヽ がけて教案 を作 ったが,五 段動詞 ばか り 亡 要 だ と′ に気が向いて,不 規則変化動詞 (す る,来 る)に.

(9) 松崎千香子 :自 己研修型教師の養成 を目指 した実習指導. つい て教 えるの を忘 れて い た。学習者 に指摘 され. す る動詞 につい て も,取 り上 げ るの に よ り適 当 な もの. る まで全 く気 づ か なか った。 」. が あ る。. これ は,学 習項 目の分析 につい ての認識 の甘 さにつ. 適 当 な動詞 は ,導 入す る文型 ・表現 に よつて 自ず か. い て反省 した もので あ る。 この発言者 は,あ るテキス. ら決 ま って くる。 テ形 の場合 は,一 段動詞 の場合 は. トの練習問題 か ら該 当す るテ形 の用法 の例 文 を適 当 に. 辞書形 の「―る」 を「―て」 に変 えれば良いだけである. 抜 き出 し,そ れ を もとに教案 を作成 して い た。 た また. か ら,い わゆる上一段動詞 と下一段動詞 の うち既習の. ま抜 き出 した例 文 に不規則変化動詞 が用 い られて い な. ものの 中か ら,い ず れか に偏 らない よ う配慮 しなが. かったために,こ の よ うな問題 が生 じたのである。. ら,適 当数選べ ば良い。五段動詞 は,テ 形 の形別 に①. 「次 の模擬授業 では どの よ うにしたい と思 うか」 と尋. 辞書形 の末尾 が 「―う」「―つ」「―る」 の もの,② 辞書 形 の 末 尾 が「―む」「―ぶ」「一ぬ」 の も の (末 尾 が. ねた ところ,「 教案 を作 る前 に,も っ と学習項 目につ. ,. 当か どうか,必 要なものを全て含 んだ例文 であるかを. 「―ぬ」 の 動 詞 は「死 ぬ」 の み),③ 辞 書 形 の 末 尾 が 「―く」「―ぐ」 の もの (こ の うち,「 行 く」 は例外 とし. きちん と確認 しなければならない。 また教案 を作成 し. て「行 って」 となる),④ 辞書形 の末尾 が「―す」 の も. た後 も何度 も見 なお しをしなければならない」 と答 え た。学習項 目の分析 ・確認が如何 に重要か,そ して学. の,の 4種 があ り,こ のそれぞれについて適当数 を取. いての分析 に時間をか けて,用 い る例文 について も適. 習内容 について,確 認 してお くべ き点 についての気づ. り上げる必要がある。「死 ぬ」「行 く」 については必 ず 取 り上げる。不規則動詞 については,学 習者 は辞書形. きが見 られる。. を学んだ段階で特殊な変化 (活 用)を す るものである. ②「テ形の形の作り方で,辞 書形から作るよう説明 したが ,他 の学 生 の模擬授 業 を学習者 の立 場 か ら 見 て い て ,不 規則変化動詞 な どは くす る→ して くる→ きて 〉よ りも,く します → して ,き ます→ ,. きて 〉の よ うにマス形 か ら教 えるほ うが ,学 習者. と認識 してい るため,テ 形 について も「す る」「来 る」 と,他 に漢語サ変動詞 を幾つか示 してやれば良い。 このようなテ形 の形別 の観″ 点か らだけでな く,他 の 観点 か ら学習者 に是非提示 したい動詞がある。「着 る」. た ,自 分 を含 めて ,形 の作 り方 を教 えた授 業全部. 「切 る」 (五 段動詞),「 変 える」 (一 段 動詞)と 「帰 る」 (五 段動詞)な どの よ うなペ アであ る。 これ らのペ アは,辞 書形 では同 じかな表記 である. を比較 してみ る と,難 しい五段動詞 を最初 に教 え. (ア. る よ りも,辞 書形 か らの変形 が 簡単 な一段動詞 を. て」,「 変えて/帰 って」 のように全 く違 った ものにな. 最初 に教 えた方 が ,学 習者 に とつて分 か りやす い. ように思 つた。教案 を作 る段階では,よ りよい説. る。 このようなものを初期 の段階で積極的 に取 り上げ れば,学 習者 の混乱 を防 ぐことがで き,且 つ アクセン. 明の順序や,よ りよい例文 といったことにまで配. トの学習 も同時に行 える。. の負担 が 少 な くて 良 いの ではない か と思 った。 ま. (一 段動詞)と. ク セ ン トは異 な る)が ,テ 形 で は「着 て/切 っ. 慮 で きなかった。 これか らは,も っと日本語 の知. 学生の模擬授業 では,不 用意 にこれ らの語 を口頭練. 識 を増やす よう努力 したい。知識が増 えれば,教. 習 の ときに挙げて しまい,学 習者が誤 ったテ形 を答 え. えるにあたってのさまざまな選択肢 を持 つ ことが. た時 に聞 き流 して しまった り,訂 正するにして も説明. で きる し,そ の中か ら最 も良い ものを選ぶ ことが. にまごついて しまった りしていた。口頭練習 は,形 や. で きると思 う。 」 この発言 は,学 習者 の側 か ら授業 を分析 した もので. 文型 の理解 の確認 と学習事項 の定着 とい う重要な役 目 を果たす ものであるとの認識 を常 に持 ち,用 い る語 に. ある。教師佃1か らは見 えて こない問題 に気づ き,よ り. ついて も,こ こで どの ような語 を用 い るのが妥当であ. よい授業 にす るため. るかを教案作成 の段階で熟考すべ きである。「既習事. (よ. りよい教 師 になるため)に. は,学 習者 の立場 か らの授業分析 も必要である ことに. 項 が頭 に入 つている」 とい うのは,例 えば動詞 の場合. 気づいてい る。 この発言者 は,模 擬授業 とその振 り返. は,既 習語が思 い出せ るだけではな く,そ れ らの動詞. りを通 して,学 習者中心 の教育 (学 習)ヘ ー歩踏み出. の活用 ,自 動詞 か他動詞 か,継 続動詞 か瞬 間動詞 か などさまざまな面か らのグルーピングが頭 の中に整理. した と言え よう。 ① ,② を発言 した学生 らはともに,授 業 で用 い る例 文 につい て,教 えるのに適当な例文 とい うものの存在 に気 づ い て い る。学生 が気 づ い た例文 につい てのみ な らず ,例 えば ,テ 形 の形 の導入 で例 として学生 に提示. ,. され,学 習者 の反応 に応 じて,適 宜取 り出せる状態 に ある ことであ る。 ③ 「形容詞 の並列 で,「『この町 は大 きくて,に ぎや かです。 』 は,『 大 きい』 も『にぎやか』 もプラス.

(10) 甲南女子大学研究紀要第 40号. 評価 の言葉 なのでいいですが ,『 この町 は小 さ く. 文学 ・文化編 (2004年 3月. 6-4. ). 学習者 へ の 配慮 に関 して. て,に ぎやかです。 』 は,『 小 さい』が マ イナ ス で,『 にぎやか』がプラスなのでだめです。 」 とい. ① 「学習者 か ら思 いが けない反応 が返 って来 た と き,あ せって緊張 し,適 切な フイー ドバ ックまで. う よ うな説明 を した。す る と,学 習者 か ら「で. 到達 で きなか った。原因は準備不足 であるが,学. は,『 この大 は小 さ くて,か わい くないです。 』は. 習者 か らどの ような反応が返 つて きて も,何 らか. 『小 さい』 も『かわい くない』 もマ イナスだか ら. のフイー ドバ ックを毅然 とした態度 で返す必要が. いいですか」 と質問 され,頭 が混乱 した。 自分 で. あると思 う。 」. 「プラス」「マイナス」 と言 ってお きなが ら,何 が. ② 「時間ばか りが気 にな り,ま た,教 案 ばか りを見. プラスで,何 がマ イナスかわか らな くなって しま. ていて,学 習者 の表情 などに注意が いってい なか. い,う まく質問 に答 えられなか った。教師用手引. った。教案 に固執す るのではな く, もっと学習者. きをそのまま用 い るのではな く,自 分 で きちん と. を観察 して,学 習者 の様 々な反応 に対応 で きるよ. 」 学習項 目を整理す る必 要があつた。. うな柔軟性 を身 につ けたい。 」. 近年,さ まざまな文法書や,参 考書 ,教 師用手引 き. ③ 「 (他 者 の授業 を観察 して)写 真 な どの教材 が う. などが出版 され,経 験 の浅い教師の 中にはこれ らを参. まく導 入に使われていて,そ れをもとに学習者 と. 考 に教案 を作成す る者 も多 い。 この発言者 の場合,教. 楽 しく会話 もで きていてよかった。学習者 の興味. 師用手引 きの当該課 に関す る部分 のみに目を通 して これ以前 の課 で「プラス/マ イナス」 の概念 を用 いて. をひ くことがで きれば,授 業 もや りやすい し,学. ,. 文法説明が行 われてい ることに気づいていなか った。. 習者 も関心 を持 って学習で きる ことが分 かった。 」 これ らの発 言者 の教案 には,「 予想 される学習者 の. その部分 にも目を通 していれば,「 プラス/マ イナス」. 反応」 など,学 習者 に配慮 した記述はほとんど無か っ. とい うのが どういった意味 で用い られてい るか十分 に. た。 自分が 「教 える」 ことのみに気 を奪われ,授 業準. 理解で きたはずである。. 備 を進めてい たようである。それが,授 業 の振 り返 り においてこれだけの学習者へ の配慮 に関する気づ きを. この発言者 は,教 師用手引 きは,あ くまで一つ の指 導方法 の例示 であ り,そ れが 自分 の授業 で使 えるか ど. 見せた。学生 は,授 業 の「教師が教 える」 とい う佃1面. うかは,必 ず確認 しておかねばならないこ と,ま た. だけでな く,よ り重要な「学習者が学ぶ」倶1面 の存在 について も意識 を向けるようになった。 このことにつ. ,. 手引 きを利用するに して も,そ こで示 されている指導 方法 の問題点やその ような指導法 を採用 している意図 は何 であるかを読 み取 らねばならないこ とについて気. いて確認 で きた一方 で,教 壇経験が教師養成 において 大 きな役割 を果 たす ことについて も再認識で きた。. づ くことがで きた。 ④ 「継 起 の「∼て,∼ 」 の 後 に,「 ∼て,∼ て か ら,∼ 」 の説明 をした時,学 習者 か ら両者 の違 い. 7。. ま. め. につ い て 聞 か れ,「 後者 の ほ うが,よ り丁寧 で. 現職 日本語教 師 と学 生 の授 業 の大 きな違 い は,学 習. す。 」 と誤 った こ とを教 えて しまった。「∼てか ら,∼ 」 について きちんと調べ てい なか ったか ら. 者 の 反応 に対 して どれ だ け注 意 を払 って い るか ,ま. だが,あ せ っていいかげんな ことを言って しまっ. バ ックを行 えるか否 か とい った ,学 習者 との イ ン ター. ては,学 習者 の信頼 をな くす ことにつ ながると思. ア クシ ョンの面 である。. た ,学 習者 の 反応 に対 し,適 切 で且 つ 十分 な フ イー ド. 学 生 は, とか く教案 どお りに授 業 を進 め よ う とす る. う。 」 この発言者 は,単 にあせ っていいかげんなことや. 傾 向 が あ った。学 習者 か ら予 期 せ ぬ 反応 が 生 じた 場. 誤 ったことを言 ったことについて反省 してい るだけで. 合 ,そ れ に何 とか応 え よ う と して も,知 識 が乏 しい こ. な く,そ の ような教師の発言が,学 習者 との信頼関係. と,さ らには準備 が十分 で ない こ とが原 因 で ,誤 った. を損 ねる ことに まで考 えを巡 らせてい る。間違 ったこ とを教 える ことは,教 師の最 も重大な過失 の一つであ. フ ィー ドバ ックを行 って しまった り,必 要以上 に時間. るが ,そ の一方 でその経験 を通 したか らこそ,学 習者. う として ,元 の教案 の部分 まで突 然 に戻 って しまい. と教師 との信頼関係 について考 える ことがで きたとも. 授 業 の流 れ を壊 す な どの 問題 も引 き起 こ して い た。. ,. 言えるだろ う。. を取 られ た りして い る。その後 ,教 案 どお りに進 め よ ,. この 2点 につ い てが 学 生 の授 業 の 大 きな特 徴 で あ り,問 題 であ るが ,授 業後 の振 り返 りにお い ては,学.

(11) 松崎千香子 :自 己研修型教師の養成 を目指 した実習指導 習 者 は模 擬 授 業 中 には思 い が 及 んで い なか った 学 習 者 へ の 配慮 の 重 大 さ,自 らが用 い る 日本 語 を意識 化 す る 必 要性 ,よ り よい 授 業 にす る ため の 具体 的 な方 策 等 に つ い て発 言 し,多 種 多様 な気 づ きを得 た こ とが 分 か っ た 。模 擬 授 業 だ け で な く,振 り返 りの 活 動 を通 して. ,. 日本語科 で行 った「テ形」 の継起 の用 法 の 導 入 の授 業 1 コマ 45分 の うち ,事 務 的 な連 絡事 項 ,前 回 の授 業 の復 習 にあた る部分 ,他 の学習項 目に関す る部分 を除 い た 15 分 間分 で あ る。 これ に つ い て は,vTRで 評 定 者 に視 聴 して もらった。. 学 生 は 自己研 修 型 教 師 の 基 盤 を築 い た と言 え よ う。 尚 ,学 生 には ,模 擬 授 業 の 準 備 ,模 擬 授 業 の 実 施. き,一 度 は学習者 と して質問 な どの発 言 を行 った)。. 5)現 職 日本 語 教 師 の授 業 は,筆 者 が 三原 情 報 専 門学 校. 6)後 期 の 授 業 で は,現 職 教 師 の 授 業 の ビ デ オ も視 聴 ,. 模 擬授 業 後 の 自己評 価 ・反省 ,他 者 か らの 評価 の 内容. し,自 身 の授 業 との比 較 を行 う活 動 を行 う予 定 で あ る が ,本 稿 執 筆 時 点 で は ,学 生 の授 業 の振 り返 りの 活 動. を再 度確 認 す る よ う指 導 した。 今 後 は ,学 生 が 今 回 の. まで しか行 ってい な い。. 気 づ きを 自己研 修 型教 師 の 基 盤 と して保 持 し,自 己 の 参 考 文 献. 教 師 と して の 問題 点 を探 り,改 良 し,よ り よい 教 師 を 目指 して い くた め の 方 策 を模 索 し続 け て い くこ とが で きる よ う に ,指 導教 員 は 支 援 して い く必 要 が あ る 。. Bartlett, L。. 1990 Tcacher development through re■. gι g“ α. ん ルαε. `r Ed“. ective. &Nunan,D。 (Eds.)S`ε θκグルzれ ―. teaching.In Richerds,J。. jθ κo New York: Cambridge Univer― ε α′. sity Press 202-214.. 注 1)本 学 の 日本語教育関連 の授業科 目には,「 日本語教授 法 I」 「 日本 語教授 法 Ⅱ」 (以 上 2年 次),「 日本 語教授 法 Ⅲ」「 日本語教授法 Ⅳ」「 日本語教育実習」「日本語教 育 演 習 I」. (以. 上 3年 次),及 び「日本 語 教 育 演 習 Ⅱ」. (4年 次)が あ る。演 習科 日は,い わ ゆ るゼ ミに あ た. 堀 口純子 1992「 日本 語教 育実 習指 導 の ため の基礎研 究」 『 日本語教育』78,154-166. 和 子 ・村 澤慶 昭 2001『 にほ ん ご 90日 教 師用 Navi[初 級文法 ハ ン ドブ ック]』 ユ ニ コム 石 田 敏 子 0堀 口 純 子 。砂 川 有 里 子 ・西 村 よ しみ 1993 星 野 恵子 ・辻. 「 日本 語 教 育 実 習 に関 す る 実 証 的研 究」『 日本 語 教 育』. る。本稿 の執筆段 階 で は,学 生 は 2年 次科 目と「 日本 語教授法 Ⅲ」 のみが履修済み であ ったが,一 部 の学 生. 河 野俊 之 1996「 日本 語教 育 実 習 生 に よる未 習 外 国語 授. は,「 日本語教授法 Ⅱ」 も未履 修 であった。 また,模 擬. 業 の分析」『平成 8年 度 日本語教育学会秋季大会予稿. 授 業 の基礎 とな る「 日本 語 の 文法 I」 「 日本語 の 文法 Ⅱ」 な どについ て も,履 修済み の 者 と,未 履修 の者が. 集』226-231. 河野俊之 ・小河原義朗 2002「 日本語教育能力養成 で タ テ軸思考 は可能か」『日本語教育方法研究会誌』9(1),. お り,文 法的知識 に関 して も学生間に差があった。 の科 目は,い わゆるゼ ミ形式 の ものである。 この. 2)こ. 科 目では,4月 か らは誤用分析 の講義及 び実践 ,5月 中 旬 か ら日本語教育 に関わる語彙 ・文法 ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョンなどの分野の論文 を講読 し,7月 に模擬授業 を行 った。 このような方法 を取 ったのは,4月 の段階 で「日 本語教育演習 I」 を履修 している学 生の 日本語 の文法 ・語彙そ の他 に関す る知識量 に差が認 め られたので ,. 模擬授業前 に基 本 的な 日本語学 0日 本語教育 に関 して 不足 してい る知識 を与 えようとしたためである。. 3)「 原 因・理 由」 を表 す 「∼テ∼」 に つ い て は,「 テ」 が原 因 ・理 由を表す のでは な く,前 件 と後件 の 関係 が 原因・理 由にな っているのである。 このため,「 当な lll頁. 結果」 な どと呼 ぶ場合 もある。 また,「 原 因」 のみが挙 げ られて い ることもあ るが ,こ れは,後 件 に話 し手 の 意思 ・判断な どを表す文や,相 手 へ の働 きかけの文 が 来ず ,自 然 の成 り行 きを表す文 や,客 観 的 な叙述 文 が 来 るので,「 理 由」 は不適当であるか らであ る。授業で はこのような説明 をした上で「原因 ・理由」 を用 いた。. 4)学 生 は全 員実習経験が な く,ま. た,外 国人 に接 した. 経験 も少 なかったため,実 際 の 日本語教育 の授業 で 学 習者が どの よ うな反応 をす るのか につい ての知識が な い。少 しで も実際 の授 業 に近 づ けるた め,授 業担 当教 員が学習者役 とな り,学 生がわか りに くい説明や指示 を行 った り,未 習語 を使用す るな どした ときに,適 宜 質問 を した り,疑 間 を投 げかけた り,わ ざ とまちが っ た答 え を返 した り した (担 当教 員 は,学 生 一 人 に つ. 79, 160-170.. 30-31.. 2002『 初 心 者 向 き す ぐ に役 立 つ 日本 語 の 教 え方』 アルク. 小 島聰 子. Maingay,P。 1988 0bservation for training,development or as― sessment?In Dutt T。 jκ. (ed.)Dフ. Jθ. g― Prθ bJι. 岡崎. jθ ルr ′ κs jκ ルαε “. rrα jル. κグおs“ s α `s.Harlow,UK:Longman. “ 眸 2002『 内省 モ デ ル に基 づ く日本 語 教 育 実 習 理. 論 の構 築』平 成. H∼ 13年 度科 学研 究費 補 助 金研 究 基. 盤研 究 (C)(2)研 究成 果報告書 岡崎 敏 雄 ・岡 崎 眸 1997『 日本 語 教 育 の 実 習 .. 理論 と. 実践』 アル ク 斎 藤 令 子 ・田 中京 子 ・今 尾 ゆ き子 ・ 出 口 香 ・稲 葉 み ど り 1992「 日本 語教 育 実 習 へ の 提 言 一実 習 経 験 を踏 ま. えて 一」『 日本語教育』76,55-66. 迫 田久美子 2000「 アクシ ョン 0リ サ ー チ を取 りい れ た 教育実習 の試み ― 自己研修型 の教師 を目指 して 一」『広 島大学 日本語教育学科紀要』,10,21-29. 臼杵美 由紀 2001「 日本語教授 法 にお け る実践 :自 己内 省 と相互評価 を取 り入れた教師教育」『 日本語教育方法 研究会誌』8(1),34-35。 Wallace, M。 1991 rrajκ jソ Rイルθ′ ιJttρ. Press。. jれ. g Fο r`jg“ 二θκg“ αg` 7ン αε んιrs― ―A. 力 。 New York: Cambridge University αθ “. 2000『 日本 語 教 師 の た め の ア ク シ ョ ン・ リ サーチ』凡人社. 横 溝 紳 一郎.

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Table l  日本語教授技能評定項 目 1学 習への動機付 けは よくで きた。 2授 業の 目標 を明確 に しようと努めた。 3授 業内容 にめ りは りがあった。 4適 度 な緊張感のある授業だった。 5授 業全体のテ ンポは適切だった。 6和 やかな雰囲気の授業だった。 7授 業で取 り上げた項 目は多す ぎず ,適 切だつた。 8ま とめは十分であつた。 9既 定の時間を有効 に使 った。 10時 間配分が適切であつた。 11  目標 は十分達成 された。 12個 々の学生の理解度 を十分理解

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