"Morton Hall"におけるGaskellの名門意識批判
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(2) 甲南 女子大学大学 院論 集 第 3号. 文学 。文化研 究編 (2005年 3月. ). 「モー トン・ホール」 の語 り手 ブリジェッ ト. She was a beautiful woman to be 娘 ア リ ス をみ て “. (Bridget). と. は,男 性 とは違 ったこの歴史感覚で語 つている。 この. 見抜 き,従 順 な彼女 と結婚す れば ,彼 女 の所有す る邸. ように考 えると,カ ミュは,こ れまでは懐古趣味 とし. を難 な く自分 の もの にで きる と判 断す る。 また ジ ョン. て批判的な目で見 られがちであったこれ ら一連 の短編. は騎馬兵 をつ れて邸 へ 帰 って くる際 に,ア リスが精 神. 小説へ の再評価 を促 してい ることになる。. tamed,and made to his beck and call."(MH 172)だ. 異常者 であ る と言 いふ ら してお き,彼 女 に異 様 な衣装. ギャスケルは意図 してい なかっただろうけれ ども. を着 せ て 馬 に乗 せ ,村 人 の 衆 目に さ らす こ とに よつ. 当時 の女たちの潜在意識 の一面 を私 たちに提示 してい. て ,自 分 の行為 を正 当 に見せ かける。 ア リスは夫 を恨. るのである。. ,. んで ,モ ー トン家 の 家系 の 者 は 死 に絶 え,邸 は倒 壊 し,そ の 後 には 「小 商 人風 情」 (“ peddlers"MH 177). (3). が 住 む こ とになる と宣 告 し,苦 悩 の 末 に精 神異常 にな って荒野 で行 き倒 れて凍死す る。 ジ ョンの無情 な性 格. この作 品 は,革 命 以前 のモ ー トン家 の小作 人 の娘 で. や ,ア リスの激 しい苦悩 による精神異常 の描写 な ど. あ るブ リジ ェ ッ トが 清教徒革命 以 降 の三代 にわた る居. ゴ シ ック・ロマ ンス を思 わせ る ところが 多 くあ る。. 住者 た ちについ ての 回想 を語 る とい う形式 で あ る。 た. ,. ギ ャス ケルが この よ うな作風 の短篇小説 を書 い たの. だ し彼女 の子 ども時代 のサ ー ・ ジ ョンとア リスの こ と. は,前 述 の よ うに当時 の読者層 の好 み に応 えるため だ. な どは,モ ー トン家 の 家政婦 で あ った ミセ ス ・ ドー ソ. った と考 え られ るが ,作 者 に内在 す る無意識 的 な理 由. ン (Mrs.Dawson)か らきい た こ とをブ リジ ェ ッ トが. と して , マ リア ンヌ ・ カ ミュ (Marianne Camus)が 述. 語 る とい う形式 になって い る。. べ て い る 「女 に特有 な歴 史観」 に注 目すべ きだろ う。. モー トン・ ホ ール には ,清 教徒革命 に よって ほんの. カ ミュに よれば,男 と女 では歴 史観 が ちが う。彼女 の. しば ら く清教徒 の リチ ャー ド・ カー とその娘 であ るア. 論 を大胆 に要約す れ ば ,男 に とって ,歴 史 は社 会 を進. リスが住 む時期 を除 い て ,モ ー トン家系 の 人たちが住. 展 させ て きた事 象 が線 的 に連 続 して い る「過去 」 で あ. む。作 品 は三 代 の家族 の三 つ の エ ピソー ドか ら成 り立. る。 い っぽ う女 に とつて歴 史 とは,幼 い ころに母や祖. ってい るが ,そ の 全体 の なかで結婚 を望 む女 性 が四人. 母 の膝 の うえで 聞 い た「お話」 であ る。 これ は女親 か. 登場 し,そ の うちの二 人が結婚 し二 人 は諦 め る。 一 人. ら娘 へ と循環 して い く「時」 であ り,繰 り返 しであ る. 目の ア リスはジ ョンとの初対面 の 際 に彼 を愛 した と ミ. か ら,「 現 在」 も古 い 時代 に停 滞 した ま まで あ る。 カ. セ ス ・ ドー ソンは語 るが ,な ぜ 愛 したか とい う説明 は. ミュは ,女 の この ような歴 史観 につ い て ,“ As to the. して い ない 。王政復古後 ,清 教徒 たちは土地 を追 われ. present, it is heavy with the weight of a past which one. て い た ため ,ア リス も邸 を引 き渡 さね ば な らなか っ. could caH archaic, on the fringe of History, a past which. た。 しか し,王 党派 の ジ ョンと結婚す れ ば ,引 渡 しを. is in fact the collective memory of the inevitable phases. 逃 れ るこ とがで きる と考 えた。要す るにア リスは,清. of human life.This is the past that pemeates Gaskell's. 教徒革命 の際 に買 った邸 に亡 父が愛着 を もっていたの. stories."(Camus 175-6)と 述 べ て い る 。 こ れ は ギ ヤ ス. で ,そ れ を他 人 に渡 した くな い ため にジ ョンと結婚 し. ケ ルの 懐 古 的 な傾 向 に つ い て の 的確 な説 明 に な って い. たのである。 ミセ ス ・ ドー ソ ンはモー トン家 の元 家政. る 。 この よ うな歴 史観 ,あ る い は む しろ歴 史感 覚 と呼. 婦 であ るか ら,終 始 ジ ョンに好意的 な判断 を して語 つ. ぶ べ き もの は ,ギ ャ ス ケ ルの 中 ・短 編 小 説 の 女 性 の 語. て い る と推測 しなけれ │ゴ な らな い 。彼女 は ロ ン ドンの. り手 に共 通 して認 め られ る 。 女性 の 懐 古 談 に は ,男 ヘ. 宮廷 で ジ ヨンが 不 貞 を犯す の は,彼 が結婚 して くれた. の 隷 従 の も とで 鬱 積 して きた悔 しさが こ も って い る 。. こ とについ て ア リスが 感謝 を示 さなか ったか らだ と語. だ か ら,彼 女 た ち の 〈思 い 込 み 〉が 現 代 の 私 た ち に は 迷 信 に近 い よ うに感 じ取 れ る に して も,カ. ミュ はそ こ. って ,罪 を彼女 に負 わせ て い る。 これは元 家政婦 の. ,. モー トン家へ の忠実 さに もとづ く偏 見 で あ ろ う。 けれ. に 経 験 に よ る知 恵 が あ る と した う え で ,“ They(Such. ども,ア リス に とつて亡 父が 「 この 世 でただ一 人 の. examples of popular wisdom)express an understanding. 真 の愛 人であ り友達 であ った」(“ the only true lover and. and intuition of psychological in■ uence which we an ac_. friend shc had ever had on eanh"MH 174)と い うの は. cept today,dressed as they are in learned names."(Camus. 真実 であ り,彼 女 はモ ー トン・ ホ ール に住 み続 け るた. 176)と い う見 解 を述 べ て い る 。彼 女 は ,女 に 特 有 の. め に打算的 な結婚 を した ので あ る。. 歴 史感 覚 が この よ うな知 恵 を醸 成 した と考 えて い る 。. 二 人 目の ミス ・ フ イリス (Miss Phillis)は. ,. ,兄 の家.
(3) 越川菜穂子. :“ Mo■ on. Hall". における Gaskellの 名門意識批判. 29. 事手伝 い を続 け るため に結婚 をあ きらめ る。 三人 目の. の ジェネラル ・モー トンの姉妹 は経 済的 には心 配が な. アナベ ラは美 貌 で あ ったため に母 と姉 たちか ら家柄 や. ヽ の優 しい アナベ ラは ,打 い けれ ど,仲 は よ くない 。 ′ 亡. 財 力 の あ る男 と結婚 す る よ うに期待 をか け られ ,恋 人. 算 的 な結 婚 に応 じな か っ た た め に 姉 の ソ フ ロ ニ ア. との結婚 を断念 しなけれ ばな らなか った。 四人 目の コ. (Sophronia)と 妹 の ドロ シー (Dorothy)か ら酷 い 扱 い. ー デ リア (Cordelia)だ けが ,自 由 で 幸 せ な結 婚 をす. を受 け て い る。家族 内 で は弱 い立場 にい るが ,印 度 で. る。. 亡 くな った妹 ジ ェー ン (Jane)の 遺児 で あ る コー デ リ. 最初 の ア リスの打算 的 な結婚 と結末 の コー デ リアの. ア を可 愛 が る。 コー デ リアが理不 尽 な二 人 の叔母 たち. 愛 による結婚 とが対照 的 に語 られて い て ,こ れ も「著. の こ とを ロ ン ドンにい る保護者 の叔 父 に訴 え よ う とす. しい対照」 だ と言 え よ う。後者 の幸福 の証 として彼女. るが ,ブ リジ ェ ッ トが 諌 め ,先 代 の ミス ・ フ イリスが. は女 の子 を生 む。 これ ら二 つ の結婚話 の 間 に挟 まれ る. 苦境 で我慢 強か った こ とを話 して きかせ たので ,コ ー. よ う に して語 られ て い る ミス ・ フ ィ リ ス とア ナ ベ ラ. デ リアは子 どもなが ら賢明 に判 断 し,お そ ら くは家族. は,結 婚 は しないが ,作 者 の結婚観 を考 える うえで は 無視 で きない 。家事 や家族 の 介護役 を果 たす ため に結. 関係 が 破綻 す る こ とを危惧 して叔 父 に訴 える こ とを諦 め る。 もし彼女 が 実情 を訴 えて い た ら,結 果的 には コ. 婚 をあ きらめ る話 はギ ヤス ケ ルの他 の短編小 説 に も登. ー デ リア とアナベ ラは別居 を余 儀 な くされ ,先 代 の ジ. 場 す るが ,ア ナベ ラが家族 の 名 門意識 の犠牲 になった. ョンと ミス ・ フ イリスの よ うに飢餓 の危 険 に さらされ. 点 には注 目す べ きであ る。. る運 命 となったか も しれ ない。 コー デ リアはそ の後 も. ,名. モ ー トン・ ホ ール で つ らい境遇 に耐 えなが ら,成 長 し. 門意識 を もってい る。 エ セ リ ンダは コー デ リアの婚約. て い く。 この苦 しい成長 の過程 で ,カ ミュが言 う女 に. 者 の先祖 が モー トン・ ホ ール に住 んで い た ことが あ る. 特有 の 歴史感覚が コー デ リアに浸 透 して い った とす れ. と聞 い た ときに,“ Has he got ancestors?That's one good. ば ,そ れは ,幼 い彼女 を膝 に乗せ て育 てた母 や ,結 婚. point about hiln, at any rate. I didn't know cotton―. 問題 で 家族 の犠牲 になって しまったアナベ ラを通 して. ブ リジ ェ ッ トと妹 の エ セ リ ン ダ (Etherinda)も. spinners had ancestors."(MH 202)と. 言 う。婚約者ヘ. で あ ろ う。. の親近感 を語 っているのではあるが 「紡績商人 にご先. この 短編小説 で語 られて い る幾 つ かの家族 には ,家. 祖 があるとは知 らなかったわ」 とい うことで,エ セ リ ンダは思 いがけず名門意識 を暴露 して しまっている。. 長 が不 在 で あ る こ と,家 族 の なかで弱 い立場 の 者 が 優 しい こ と,無 力 な家族構成員 同士が助 け合 う こ とな ど の 共通点 が あ る。 もっ とも,経 済 的 に恵 まれ ない者 の. (4). 間 で 家族 的 な愛情が醸成 され るの は ,ギ ヤス ケ ルの 筋 立 ての常道 で はあ る。. ア リスの 父 はモ ー トン・ホ ー ル に住 む よ うになって. 語 り手 の ブ リジ ェ ッ トは,ス クワイア ・ モー トンの. 間 もな く死亡す る。次 の物語 の ミス ・ フ イリスは三 十. 十歳 の 虐、 子 が ,昔 ア リス と結婚 して若死 に したジ ヨン. 過 ぎで父 と死別す る。 ジ ェ ネラル ・モ ー トン (General. と同 じ名前 で あ るの を不吉 だ と感 じ,“ I used to wish. Mo■ on)は ロ ン ドンで生 活 して い るため に,モ ー トン. he might not bear that ill― omened. ・ ホ ール で幼 い コー デ リアが二人の叔母 たちか ら偏 っ. 語 る。 また上述 の よ うにブ リジ ェ ッ トは , ミス ・ フ イ. た教育 を受 け て い る こ とに気 が つ か な い。 三 つ の物語 の 共通点 は,頼 りになる保護者が東 の 間 しか顔 を出 さ. リスの こ とを コー デ リアに話 して きかせ る。 ギ ャス ケ ルは ミス ・ フ イリス とジ ヨンとの叔母 0甥 の 関係 とア. な い か ,死 んで しまうか だ とい う こ とで あ る。 これ が. ナベ ラ と コー デ リア との叔母 ・姪 の 関係 とい う二 組 の. 扶養 を必 要 とす る人物 たち,具 体 的 にはア リス , ミス. 三 親等 間 の愛情 を繰 り返 して語 る こ とに よつて物語 の. ・ フ イリス お よび コー デ リアに共通 す る不幸 の 原 因 で. 構 成 をパ ター ン化 し,家 族感情 は親子 間 に限 らず ,家. あ る。. 族 の なかで脇役 にす ぎな い構 成員 の 間 で も醸成 され る. name."(MH 178)と. ス クワイア ・ モー トン (squire MO■ on)の 没後 ,世. こ とを訴 え よ う と して い るのであ る。 四人姉妹 の うち. 継 ぎであ るジ ョンは叔母 の ミス ・ フ イリス を頼 りにす. で ,優 しい アナ ベ ラ と末妹 の ジ ェー ン (Jane)の 遺児. る ことに なるが ,同 居 して い る独 身 の叔母 は,一 般 の. コー デ リアだけが死 なな い で ,コ ー デ リアが結婚 す る. 概念 で は家族 で はな く親族 にす ぎない 。 この叔母 と甥. とア ナ ベ ラ も同居 して 幸 せ な家族 の一 員 とな る 点 に. とは深 い愛情 に よって家族 と して生活す るが ,二 人 と. も,血 縁 に こだわ らない とい う作者 の 家族観 が うかが. も生活力 は皆無 で あ る。 この二 人 と対照 的 に,次 の代. える。.
(4) 30. 甲南女子大学大学院論集第 3号. 文学 0文 化研究編 (2005年 3月. ). 姪 を愛 す るアナベ ラや コー デ リアを諌 め るブ リジ ェ. て 食料 を得 て い る。 そ の肥料 にす るため に路 上 の馬糞. ッ トには,「 理性」 とい う よ りもむ しろ「分 別」 と言. を拾 うが ,家 柄 の 誇 りを捨 て きる こ とが で きな い か. うべ き思慮 深 さが あ る。男 な ら単純 に理 屈 で判 断 し. ら,人 目を避 けるため に夜 明 け前 に拾 い集 め る。 また. 利 害 に傾 くことだろ う。 この 「分別」 は女 たちが 男 ヘ. この野菜 づ くりについ て ミス ・ フ ィリスは ,ジ ョンが. の隷従 の もとで蓄 えて きた叡智 で あ り,カ ミュが い う. 農業 に興味 を もち,栽 培 の実験 を して い るのだ とブ リ. ,. 「女 に特 有 の歴 史観」 と重 な り合 うように思 える。. ジェ ッ トに話す。叔母 と甥が名 門意識 に とらわれて い. 男性 や地位 の あ る女性 が 自分 の一 存 で こ とを決 めて. る この姿 は ,滑 稽 で 哀 しい。 二 人が飢餓 に瀕 して い る. しまうと,弱 い立 場 にい る女性 は沈黙 を強 い られ ,強. の を見 かねて ,ブ リジ ェ ッ トはあ る 日の夜 明け に二人. 者 の単純 な理 屈 に従 う よ り他 に方法 はない。彼女 た ち. が 住 む小 舎 の 入 り口に鶏卵 を置 い てお く。 けれ ども. は強者 の 方針 の枠 内 で思慮 を働 かせ て ,破 局 を回避 す. 翌朝早 くブ リジ ェ ッ トは卵 が小 舎 の まえの路 上 に投 げ. る秘 か な努力 を しなけれ ばな らな い。. 捨 て られて い るの を見 る。. ,. この よ うな厳 しい境遇 の女性 た ちの 間 で は,黙 従 を. けれ ども,や が て露命 をつ な ぐため に虚 栄 を捨 てな. 強 い られて い るなかで 深 い共感が醸成 され る。無力 で. ければな らな くなる。 あ る 日 ミス ・ フ ィリスは,ブ リ. あ る こ とを 自覚 して い る人に,同 じく無 力 な人が さ し. ジェ ッ ト姉妹 の小 舎へ 食 べ 物 を乞 い に くる。最後 には. 延 べ る救 い は,受 ける側 には大 きな支 えになる。 そ こ. ミス ・ フ ィリス が 甥 のため に食物 を乞 い ,彼 よ りも先. には,強 者 が 弱者 に差 し延べ る救 い にはな い深 い感情. に餓死 す る。 ここ には,甥 に対 す る叔母 の家族愛 の強. の 交流 が あ るか らだ。 アナベ ラは ,姉 たちの監 視 を気. さが窺 える。. に して コー デ リアに話 しかける こ とさえ控 えなけれ ば. ギ ャス ケルは三 つ 目の エ ピソー ドで ,モ ー トン姉妹. な らなか ったか も しれ な いが ,コ ー デ リアに とっての. に よって名 門意識 へ の偏執 を時代錯誤 と して戯画的 に. 大 きな支 えで あ った。 この共感 ゆ えに,た とえ窮境 を. 描 い て い る。 三 人三様 の生 活 の絵模様 は,名 門意識 の. 脱 す る こ とはで きな い と して も,耐 え きる こ とはで き. 影響 に よって決 まって い る。 ドロ シー は,姉 の葬式 を. る。彼女 た ちは理知 的 で はないか ら,過 酷 な境遇 に耐. 派手 にや りた い と思 い ,ブ リジ ェ ッ トに頼 んで村 人 た. える手段 と して理 屈 に合 わな い ジ ンク スや迷 信 をつ く. ちに参列 して くれ る よ う声 をか けて もらうが ,二 十人. りあげ るだろ う し,ブ リジ ェ ッ トの よ うに 自分 を低 い. ばか りがや って きただけで ,そ の なか には報酬 を要求. 身分 だ とみ る固定観念 に甘 ん じて い るだろ うが ,つ ら. す る者 さえ い た。やが て ドロ シー は この邸 内 で死 ぬ最. い経験 の なかで ,直 感 的 な予測 の 能力 をた くわ えて い. 後 の 人 と して世 を去 る。 モー トン・ ホ ールの 三代 にわ. く。 この よ うな処世観 は ヴ イク トリア朝時代 にお い て. た る継承者 たちは,ア ナベ ラ と コー デ リアを除 い て. さえ,す で に時代 お くれ な もの で あ っ たか も しれ な. す べ て邸 内 か ドラ ンブル (Drumble)の 村 で死 ぬ 。. い。 けれ ども,苦 境 に耐 えて時期 の到来 を待 つ アナベ ラや コー デ リアは ,聡 明 な弱者 で あ る。. ,. イ ン ドで死亡 した コー デ リアの両 親 はモ ー トン・ホ ール での居住経験 が なか ったか ら名 門意識 に とらわれ ず にす んだので あ り,コ ー デ リアはその遺児 で あ るか. (5). らモ ー トン・ ホ ー ルの 〈呪 い 〉 ,具 体 的 には清 教 徒 の ア リスの宣告 を免れたのだ と解釈 で きる。. モ ー トン・ホ ール は,名 門意識 の 象徴 で あ る。 モー トン・ ホ ール に住 む者 は ,名 門意識 に よる虚 栄心 のゆ. (6). えに正 常 な生 活 か ら逸 脱 して い く。清教徒 で あ る リチ ャー ド・ カー で さえ,革 命 の恩恵 で この 邸 に住 め る こ. モ ー トン ・ ホ ー ル の 家屋 は ,居 住 者 が 変 わ る ご とに. とを誇 りと した。 ア リス に関す る “ _。 ■ was a great. 模 様 替 え され る 。 これ は ,時 代 の 移 り変 わ りを読 者 に. honour for her father's daughter to be wedded to a Mor―. 印 象 づ け る 。 ブ リジ ェ ッ トとエ セ リ ン ダは ,ジ ェ ネ ラ. ton."(MH 173)と い うの は,語 ってい るのが モ ー ト. ル 0モ ー トンが モ ー トン ・ ホ ー ル の 所 有 者 に な った と. ン家 び い きの ドー ソ ンで あ るか ら,ジ ョンの側 に傾 い. きに邸 内 の 模 様 替 え を して しまっ たの をみ て 失 望 した. た意見 で あ る とい う点 を割引 い て も,ア リス に も名 門. が ,新 しい 住 民 とな るモ ー トン家 三 姉 妹 に つ い て ,エ. 意識 が あ った こ とが 推測 で きる。. セ リ ン ダは 姉 に “ A■er all,these three ladies are Mor―. ミス ・ フ ィリスは ,殊 に名 門意識が強 か った。彼女 とジ ョンは小舎 の裏 の 空 き地 で野菜 を栽培 し,辛 う じ. tonso We must not forget that: we must go and pay our duty to them as soon as they have appeared in church.".
(5) 越川菜穂子. :“ Mo■ on. Hall"に おける Gaskellの 名門意識批判. (MH 190)と ,モ ー トン家 へ の忠誠 を語 る。 しか し最. 〈女 の怨念 〉が強調 して語 られてい るか ら,叔 母 と甥. 後 には ,コ ー デ リア と結婚 したマ ーマ デ ュー ク 0カ ー. (Marlnaduke CaOが モ ー トン・ ホ ー ル を壊 して CaI. による貴族 の衰亡 とい う「定型」 の印象 は薄 らいで し まう結果 になってい る。家系 に関 しては,カ ー家 とモ. Streetと い う道路 に して しまう。. ー トン家 とが婚姻 によって融和するとい う幸福 な結末. コー デ リアが エ セ リ ンダか ら小遣 い に もらった六 シ リ ングで村 の女 の子 を買収 して遊 びの仲 間 に入れて も. になってい るか ら,こ の点で も「定型」 をはみ出 して い る。. らって い るの をみて ,語 り手 のブ リジ ェ ッ トが モ ー ト. ブ リジ ェ ッ トの先祖 は , ドラ ンブルの地で三百 年 以. ン家 の 子 が 下賤 な子 と遊 ぶ の は よ くな い と注 意 す る. 上 も昔 か らモ ー トン家 の借地 人 と して生活 して きた。. と,コ ー デ リアは「私 は マ ニ ス テ イ家 の 子 よ !」. But. 清教徒 革命 以前 に同家 の借地 人 の家族 の娘 だ つた彼女. l am a Mannisty,ma'am!"MH 195)と 反駁す る。 こ. たち姉妹 は ,王 政復古後 に移 り住 んで くるモ ー トン・. れ は,自 分 が モ ー トン家 の子 で はな く,亡 くな った両. ホ ールの居住者 たちが ,自 分 たちの先祖 が仕 えた モ ー. 親 で あ るマ ニ ス テ ィ (Mannisty)家 の 子 だ とい う宣言. トン家 とは遠縁. (“. で ある。 また ,女 の子 にお金 を与 えた こ とに関 して は 「私 の 意志 で彼女 にあげたの よ」 “ I gave it to her quite. (“. distant cousin")に す ぎな いの に. ,. 彼 らに対 して非常 に忠 実 で あ る。彼女 たちは餓死寸前 の ジ ョン・ マーマ デ ュー クに さえ礼儀正 し く臨 み , ミ. of my own self."(195-6)と 言 って ,自 分 の行為 へ の. ス ・ フ イリス とジ ヨンの死後 はホ ール の荒 れ 果 てた花. ー トン家 の家系 の 人 と し. 園 の 除草作業 に精 を出す。 また ミス ・ ソフ ロニ アが お. ては名 門意識 に とらわれ な い初 めての人物 で あ る。少. 茶 に招 待 して くれ た ときには ,そ の光栄 を村 人 たちに. 女 による この名 門意識否定 の 宣言が ,二 人 の叔母 たち. 見 せ び らか した い と思 う。 こ うい う身分意識 を作者 が. の 反面教育 の結 果 で あ るの は皮 肉 でお もしろい 。. どの程度 まで肯定 して い たのか は ともか くと して ,ブ. 干渉 を拒 む。 この少女 が ,モ. モー トン 0ホ ー ル を買 った工 場 主 の カー は,清 教徒. リジ ェ ッ トの忠実 さが名 門意識 に よる ものであ る とす. 革命 の 時代 にこの屋 敷 を買 ったカーの子孫 で あ る。彼. れ ば,モ ー トン家 の 家系 の コー デ リアが清教徒 の 商 人. が モ ー トン家 の コー デ リア と結婚 す る こ とに よって二. と結婚 す る ことを彼女 が喜 び ,モ ー トン・ ホ ー ルが 取. つ の家系 が一 体化 し,新 しい 家系 が誕生す る。古 い貴. り壊 された こ とについ ての悲 しみ を感 じない か ,あ る. 族 主 義 と新 しい 中産階級意識 とが 和解す る この幸福 な. いは悲 しむことを忘れて しまってい るようなのは不 自. 結末 は ,新 旧 の調和 とい う作 者 の価値観 を暗示 して い. 然 であ る。けれ どもこれを矛盾 と感 じるのは,今 日で. る。 ブ リジ ェ ッ トは コー デ リアが生 んだ女 の子 を夫 の. は廃 れて しまった非科学的 な歴 史観 ,カ ミュが注 目を. カーが フ イリス と名 づ け た こ とを喜 び ,“ Phillis Cad. 促 してい る「女性 の時間 としての循環的な時間」 (“ the. l am glad he did not take the name of Morton, I like to. idea of cyclical time as the time of women"Camus 175). keep the name of Phillis Morton in my memory very still. が 私 たちには理 解 で きな い か らだ とい う解釈 が成 り立. and unspoken."(MH 203)と 語 る。 ブ リジ ェ ッ トは名. つ ので はな い か。 この循環的 な時 間 の観念 を内在 して. 門意識 を捨 て きって しまってはい ない けれ ども,新 し. い るブ リジ ェ ッ トや作者 のギ ャス ケルの女性 特有 の情. い家系 にはア リス に よる呪 い が 及 ばな い こ とを感 じて. 緒 的 な生活感 には ,矛 盾 が 矛盾 と して認識 されず に共. ヽして い る とい う推測 はで きそ うだ。 と 安ノ. 存 で きた と考 えて よさそ うに思 える。. (7). (8). 貴族や富豪 の家系 を歴史的に追 う物語 は,衰 亡ある. 女 性 の 語 り手 が 過 去 に 親 し く して き た 人 の こ と を懐. い は滅亡 で終 わるとい うのが定型 である。だか ら,本. 古 的 に物 語 る と い う 「 時 代 後 れ の 形 式 」 に ギ ャ ス ケ ル. 章 の初めに紹介 した「青 いサテインのガ ウ ン」 と「餓. が 執 着 して い る こ と に つ い て カ ミュ は ,次 の よ う に 書. 死」 との「著 しい 対 照」 (“ striking contrast")は. い て い る。. ,読. 者 に悲劇的な物語展 開 を予想 させ る。「モ ー トン・ホ. But this clinging to old fonttLS Can also betray a re―. ール」 の結末 も,邸 に関す る限 りはい ま述べ たように. luctance to abandon the discourses of a tilne when. 取 り壊 されるか ら「定型」通 りである。けれ ども,ア. women had a real place in society。 ' . . .the choice of. リスの呪いがモ ー トン家 の ミス・ フィリス と甥 を餓死. using these discourses as well as the way they con―. させたことによって帳消 しになるとい う筋書 きにより. tradict other aspccts of the narrative discourse― in.
(6) 32. 甲南女子大学大学院論集第 3号 particular its insistence on reasonable dialogue―. ―be―. 文学 。文化研究編 (2005年 3月. ). かで女 たちが 会得 した生活 の 知恵 か もしれ な い。 ブ リ. tray distract and even a feeling of malaise toward the. ジェ ッ トは家柄 を尊重す るい っぽ うで ,家 柄 に拘 泥す. donlinance of a masculine type of discourse which. る こ との危 うさに気 づ い て い る。. encloses women in a vision of the world which is not theirs。. 女 で あ り被害者 で あ るア リスの 怨念 は痛恨 きわ まる もので あ ったか ら,呪 いの言葉 は叶 え られた。 またマ. (Camus 178-9). カ ミュ に よる と,女 性 が 語 る形 式 に は ,女 が 社 会 に. ーマ デ ュー ク・ カーの結婚 も,ア リス に とつて幸福 な. お い て 実 質 的 な地 位 を 占 め て い た 時 代 へ の 愛 惜 で あ. 結 末 で ある。 カ ミュの 見解 に従 えば ,彼 女 の 怨念 は語. り,こ の 物 語 形 式 が 遠 慮 が ち に しか 使 用 され な い の. り継 がれ る うちに,女 たちの生 活感 に組 み込 まれて い. は ,お そ ら く時代 後 れ だ とい う批 判 を懸 念 す るか らで. くと考 えて よい 。 これは,常 に加害者 の立 場 にい る男. あ る。 女 が 実 質 的 な地位 を 占 め て い た のが いつ の 時代. に関 わ りの な い こ とであ る。富豪 の家系 を歴史的 に追. な の か カ ミュが 述 べ て い な い の は ,少 な く と もヴ イ ク. う物 語 は滅亡 で 終 わ る とい う定 型 に,「 モ ー トン・ホ. トリア朝 時 代 の 女 た ちの潜 在 意 識 に は ,理 性 あ る い は. ール」 は今 まで述べ てきた意味 です っぽ りと収 まりき. 合理的な思考 ではな く,一 時代 まえの直感あ るいは迷. らない。土壇場 で家族づ くりの役 を果 たすのは女 であ. 信的 なと呼 んで もよい判断が通用するアルカイックな. る。. 時代あ るい は社会が,「 過去」 ではな く「現在」 とし て存在 して い るか らであ る。 カ ミュは この「時代後 れ」 な 物 語 形 式 は 社 会 に「父 の 流 儀」 (“ paternal. way")と は ちが っ た 「母 の 流 儀」 (“ maternd way") が残存 してい ることを読者 に想起 させ る思慮深 い方法 であ り,女 家長的な文化 の構築あ るいは再構築 を希求 してい る点 で,今 日のラデ イカルな フェ ミニズ ムの最. 引 証 資 料. (1)Chapple,John&Shelston,Alan。. `′. 2000。. (こ. の テ キ ス トか らの 引 用 は “ Funher Letters"の. 略 語 と と もに頁 数 を括 弧 内 に記 す ). (2) Bacigalupo, Marie.Zた. οrr FJcrJο れ げ EJjZα わ ` S力 `油 ′.ⅣIissigan: UⅣ II Dissertation Scrviccs,2000。. Gα sた `′. (3) Gasken,Elizabeth.動. 初 の種 を蒔 いたと考 えてよい と批評 してい る。 ` 「モ ー トン・ホール」 には, 名門意識が理性 を くく った批判 としてではな く,女 の語 り手 の深 い実感 によ って,減 亡や死 を招来す る もの として否定 されて い る。名門意識についてのこの ような感情的な否定 は 男へ の隷従 の もとで実 質的 には暮 らしを取 り仕切 るな ,. θムs (edited)F“ rr力 ιr ι ′. た ι′ ′。Manchester:Manchester University Press, げ ″rS Gα ∫. 啄θθr′ ακグ Cθ ′ ″g`α 4グ θ′ 力. `rS′. `」. ri`s,Oxford: Oxford University Press, 1995。. (“. θ―. Mo■ on. Hall"の テ キ ス トか らの 引 用 は この 版 を用 い ,“ MH"の 略 語 と と もに頁 数 を括 弧 内 に記 す ). (4)Camus, Marianne, Wb“. jε 's lζθ. `″ E′. たαbθ rtt. Gθ. sた. len Press,2002.. `〃. (ノ. `s j″. jθ れげ ′ た Fjε ′. ∂ノ θ一ノ865), New York: Edwin Mel―.
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