新型コロナウイルス禍後の航空輸送産業
戸 崎 肇
キーワード:航空産業、コロナ禍第 1 章 はじめに
歴史上、ペストの流行などによって多くの人々が命を失うということは何回もあった。 衛生知識の向上などによって、もはやそうした事態はなくなったと思われたが、現在、世 界は再び伝染病の世界的流行によって大きなダメージを被っている。 その一方、世界は新型コロナウイルスとの闘いを展開している中で、ただ病気と闘うだ けではなく、最新技術の導入・利用を行いながら、従来の生活・仕事のあり方を見直し、 むしろこの危機的状況を糧として、様々な次元において変革を行い、前向きな改革にも取 り組もうとしている。航空業界も同様である。航空業界は、国際的にも国内的にも移動制 約を課された状況化において、生き残りのために特に大きな変容を強いられているが、そ れが同時新たな付加価値を生み出すチャンスともなっている。 一方で、これまでにも航空業界は大きなイベントリスクに見舞われてきており、改革を 進めることが難しかったことも事実である。とりわけ今回のコロナウイルス渦は、過去の サーズなどの事態と比べてより深刻なものとなっている。それらは、いずれも地域的にあ る程度限定されたものであったからである。たとえば、2001 年 9 月に発生した米国同時 多発テロが与えた影響の範囲は大きかったものの、全世界的というまでには至らなかっ た。 これに対して、今回のコロナウイルス禍は、大きな時差をともなって全世界に蔓延して いる。当初は、今回の新型コロナウイルスの発生源である中国武漢市とその周辺に限定さ れた問題であるかのように思われたが、瞬く間に全中国で猛威を振るい、それが様々な形 で世界に伝播していった。これは、経済の国際化の進展と、それを支える国際間の移動手 段が LCC(LOW COST CARRIER : 格安航空会社)の発達などによって急速に発展を遂げて きたことの結果でもある。 地域毎に流行の時期に差があることは、コロナ禍の影響をかつてないほど長引かせるこ とになっている。2020 年夏の段階では米国、ブラジルでの感染者数が飛びぬけた状況と なっているが、今後、インドやアフリカなどにおいて感染者数が爆発的に増加していくも のと予想されている。早晩、ワクチンが開発されても、それが広く利用されるようになる までには供給体制の問題もあって時間がかかるだろうし、費用の問題もある。経済的問題 があって、ワクチンがあってもなかなかそれを摂取できない人々も多く存在し、むしろそうした人々の方が世界的には多い。彼らにワクチンがいきわたり、また衛生面での指導結 果が効果を見るまでには相当な時間がかかるだろう。その結果、コロナ渦が世界的に終息 を迎えるまでには3∼4年くらいはかかるものと考えられている。この長い期間、経営を 持ちこたえられる航空会社はどれだけあるだろうか。航空会社の自助努力に任せるなら ば、ほとんどの航空会社は経営破綻に追い込まれるだろう。そのため、多くの航空会社が 政府からの支援を求めている。しかし、それはどのような形で行われるのが望まれるか、 あるいはそもそも政府支援が必要なのかどうか、改めて検証されなければならない。 航空会社としては、今回の厳しい経営環境を乗り越えた先には、新たな経営の在り方が 求められることになる。航空業界のあるべき変革を考えることで、他の業界における変革 を考える上でも重要なヒントが見えてくるだろう。 また、世界的に大規模な気候変動が生じ、生態系も大きな影響を受けている中、世界的 に広まった新型コロナウイルスのような従来にない病原菌が、今後も続々と現れてくるこ とも覚悟しなければならない。それに、テロ行為として生物兵器が今後用いられることに ついても警戒感は高まる。テロも阻止することは難しく、そもそもそれがテロ行為として 行われたかどうかを見極めることも難しい。今回の危機を乗り越えた先には、技術革新に よる新たな移動手段の登場が期待される。その結果として、航空を中心とする交通・移動 手段が今後さらに急速に発達した上で、再度今回のような事態が生じれば、その拡散規模 は今回よりもさらに拡大し、その拡散速度もより速くなっていく。 今回の事態を受けて、航空会社としては、乗客の安全を確保するということは大前提で あるが、それに加え、病気の拡散を防ぐという社会的責任も果たさなければならなくなっ た。いわゆる「安全」の概念に、新たに疫病対策といったことが明瞭な形で加わったので ある。そのためには、空港での検疫に頼るだけでは不十分である。今後の航空会社の安全 対策の中には、コロナ対策が含まれることになり、航空会社のブランド価値形成の1つの ファクターとなってくると考えるべきである。 このように、今回の新型コロナウイルス禍は、様々な角度から航空業界に変容を迫って いる。以下において、いくつかの論点からこの変容の先を展望していくこととする。
第 2 章 世界の従来の優良航空会社の盲点
今回のコロナウイルス禍では世界中の全ての航空会社が深刻なダメージを被ったといっ ても過言ではない。その中でも、従来超優良会社だとされてきた航空会社が、他の航空会 社よりもむしろ大きな経営上のダメージを受け、危機的な状況に至っている。 たとえばシンガポール航空である。シンガポール航空は、これまで何度も世界のベスト エアラインとして表彰されてきたし、航空業界においても、また一般の利用者の間でも高 品質のサービスを提供する優れた航空会社として一番に名前が挙がる航空会社である。 それにはこの会社が置かれている独特の歴史的、地理的背景がある。シンガポールは都 市国家であるがゆえに国内線を持つことができず、国際線市場で勝負するしかなかった。また、その歴史も浅いことから、周辺諸国に飲み込まれてしまわないように、早急に経済 発展を遂げる必要があった。そこで、いわゆる「開発独裁体制」という強力な国家のリー ダーシップの下に、規制撤廃、自由化を早い段階から積極的に進め、国際競争力を高めて いった。その一環としてシンガポール航空も成長を遂げていき、同社の品質は常に世界 トップクラスのものとして高い評価を受けてきた。 しかし、コロナウイルスの影響で、国際線の運航ができなくなることで、シンガポール 航空は危機的な状況に陥ることになった。国内線があれば、そこからの収益で少しでも事 態の改善を図ることができるが、それができないからである。国際線と国内線を比べれ ば、一般的には国際線の方が売り上げが大きく、利益も大きくする可能性も大きくなる が、イベントリスクに弱いという課題もある。したがって、国際線と国内線をバランスよ く運航させることが航空会社の経営にとって理想的なものとなる。 中東の 3 大航空会社であるエミレーツ航空、カタール航空、エティハドも同様の事態に 至っている。いずれも、その航空会社を抱える国が、そのオイル・マネーをつぎ込んで世 界でも屈指の規模と設備を誇る空港を建設し、地政学的優位性を活かしてそれを世界の乗 り継ぎ拠点(ハブ)として位置づけ、広範な航空ネットワークを形成し、洗練されたサー ビスを提供、国際的に高い競争力を発揮してきた。しかし、これらの航空会社もシンガ ポール航空と同様に、国内線を持たないがゆえに危機的状況に陥っている。 ただ中東の航空会社の場合、その後ろ盾となる国家が、石油という、世界における主要 なエネルギー源を保有しているがゆえに、その経済力はまだまだ万全のものがあり、いざ となったら自国の航空会社の経営を支えることは間違いないだろう。また中東地域の地政 学的優位性は変わらないので、コロナ禍から必ずや復権を遂げてくるに違いない。 中国の航空会社も急激な経済成長をもとに世界のトップクラスに成長を遂げてきたが、 何よりも新型コロナウイルスの発生源となったがゆえに、その影響も大きい。しかし、中 国も同様にその経済力は今後も衰えることはないだろう。それを背景に、中国の航空会社 も、国際間の移動制約が解除されていけば、早急に回復し、成長軌道に戻るだろう。 欧米においても、伝統的航空会社が倒産することはあまり考えられない。国家第一的考 え方がむしろ強まっている時勢に鑑み、自国の航空輸送力を弱体化させるような政策をと ることはないものと考えられるからである。ただ、ヴァージン・アトランティックのよう に、反政府的なスタンスをとってきた会社は、苦しい状況に追い込まれている。 アジアにおいては、伝統的航空会社において淘汰が進むことが予想される。その代表的 なものがタイ国際航空である。同社は国営会社としての弊害が表出し、経営上危機的状況 に陥っていても、強力な組合からの抵抗などもあり、改革が進まず、立ち行かなくなっ た。今回のコロナ禍は抜本的な改革を遂行する絶好の機会であるととらえられ、会社更生 法を適用することによって、改革を進めることになった。 韓国では、コロナ禍前から、大韓航空では内部の「御家騒動」があり、アシアナ航空で は経営権が変わるなど、混乱状態にあった。今回のコロナ禍が、こうした混乱した状況に
追い打ちをかけ、改変を促進し、韓国の航空市場は大きな変貌を遂げる可能性がある。 その一方で、コロナ禍への対策上、大きな成功を収めていると評価されている台湾やベ トナムなどは、国の信頼性も高まることで、コロナ禍後には航空需要が急速に回復するこ とが期待される。そうなれば、両国の航空会社も大きなメリットを享受できるだろう。と りわけ台湾は、若手の優秀な人材をコロナ対策のトップに据え、最先端の技術を駆使し て、斬新なコロナ対策を次々と実行していった。単にコロナ対策と言う面だけではなく、 国の人材登用のあり方、その実行力など、台湾のもつソフトパワーの強さを世界的に示し たものであるということができる。日本としては大いに見習うべきものである。
第 3 章 日本の航空会社の状況
第 1 節 全体的概況 日本では、JAL の経営破綻後、国際線のネットワークを急速に拡大させていった ANA が大きな打撃を被っている。2010 年に経営破綻した JAL は、公的資金の導入によって経 営再建を遂げたため、ANA との間での公正競争上の配慮から、新規投資の抑制など、拡 大戦略をとることに歯止めが掛けられてきた。そうした経営環境下において、供給座席数 を抑制しながら収益率を向上させる戦略に転換してきた。このことが今回のコロナ禍にお いて、ANA と比べて、コロナ禍からの影響が軽いことに結果的につながっている。 余剰人員対策としては、社員を一時帰休させたり、客室乗務員(CA)を期間限定とし て、地域振興に携わるような地上職に配置転換するなどの対策を行っている。社員に他部 門を経験させることで個人的力量を高めていくという人事政策は従来も行われているが、 経営が悪化している状況下の対応策としては、単に余剰人員対策というだけではなく、こ のような深刻な経営危機だからこそ、何でも新しいことができるというチャンスとして、 この機会を生かし、これまでの職場とは異なる視点からの取り組みによって、こうした体 験をしたあとに元の職場に戻った時に、当該組織の改革、活性化につなげていくことで、 複合的にプラスの効果を得るものとしてより積極的に進めていくべき施策である。いわゆ る「シナジー効果」の追求である。その他、FSC(Full Service Carrier : フルサービス航空会社)でも LCC でもない、「第三 極」と位置付けられるスカイマークも経営再建過程からの EXIT を迎える時期における今 回のコロナ禍の影響は大きいだろう。しかし、スカイマークは、その発着枠を持てば必ず 収益が得られる羽田空港において多くの発着枠を保持している。羽田空港を中心に多くの 路線をもち、その経営の主軸となっている国内線の回復は国際線に比べれば回復の時期も 早いことから鑑みれば、国内の航空会社の中では最も今回の危機的状況からの脱却は早く なる可能性がある。 今回の経営危機に際して、国際線部門において ANA・JAL を経営統合し、1 社で今後 の国際線市場に臨むべきだという主張がある。こうした主張は、2010 年に JAL が経営破 綻した際にも行われたものであるが、当時は国内・国際を含め、完全に 1 社化すべきであ
るというものであった。その際には独占禁止法との兼ね合いもあり、結果的には競争環境 を維持することが重視され、実現しなかった。今回は国際線に絞った主張であるが、統合 後のシェアが 25%であり、独占禁止法に抵触しないことから、日本の航空輸送産業が今 後の厳しい国際航空市場で生き残っていくためには是非、国際部門において 1 社化を実現 させ、資源の集中化を図っていくべきだというのである。 しかし、1 社化は、独占価格の形成による運賃の上昇、サービス水準の低下など、独占 の弊害をもたらす。国内でも競争状態を保つことは、今回のようにいざという時に自国の 航空会社がなくなってしまうというリスクを避けるためにも重要である。コロナ禍が深刻 化する中で、外資系の航空会社はいち早く日本路線を運休、廃止していった。航空会社に とっては、航空ネットワークのベースを置く自国発着の路線を重視し、どこの路線を残す かは政治的判断も多少働くであろうが、やはり収益性である。この場合、日本路線がその 国にとってどこまで重要性があるのかを外部から判断するのは難しく、突然運航停止にな ることも十分にありうるし、実際そうなった事例もこれまでに多々存在する。これに対し て、日本の航空会社であれば、自国発着の航空ネットワークの維持が最大限図られるであ ろうし、ダイヤ設定においてもマーケットの主軸となる日本人旅客の利便性を優先的に考 慮することになり、日本人にとっては使い勝手のいいものとなる。 こうして考えると、日本の航空会社がなくなってしまっても何の問題もなく、国籍に関 係なく、よりサービスがよく運賃もリーゾナブルなところに任せればよいという主張には 首肯しがたい。日本の航空会社がなくなってしまうという事態は是非とも避けるべきであ ると考える。そのためには、競争原理を活かすという論拠とともに、複数の日本の航空会 社を並存させるという必要性は妥当性を持つだろう。 第 2 節 JAL/ANA の 2 社を合併することのリスク また、経営文化の違う 2 つの企業が合併する際には、果たして新しい会社でどこまでお 互いが融和できるかと言う問題も出てくる。特に長年ライバル関係にあり、規模の面でも それほど差がない会社同士が合併する際には、こうした問題が顕在化してくる。 たとえば、2004 年の JAL と JAS(日本エアシステム)の経営統合がある。JAS の前身 は東亜国内航空(TDA)である。戦後、敗戦国として国際的に遅れをとった日本の航空 産業をできるだけ早く世界市場で戦えるだけのレベルに引き上げるために採用された国家 による航空産業の保護・育成政策である 45・47 体制(いわゆる「航空憲法」)のもと、 JAL は国際線偏重、JAS は国内ローカル線が主体といったように、両社ともバランスの悪 い経営資源を与えられてきており、両社を合併させることで両社の欠点を補い合い、成長 を促進しようということは何度も主張され、模索されてきたがなかなか実現しなかった。 それが、2001 年 9 月 11 日に発生した米国同時多発テロによる未曾有の航空需要の落ち込 みを背景として、JAL・JAS 統合が一気に実現することになった。 しかし、その後の経緯を見れば、両社の経営文化の違いを乗り越えることはなかなかで
きず、効率化が進むのではなく、むしろ肥大化してしまった。このことが、後に JAL が 経営破綻する遠因の1つとなる。 こうした合併が本当に効果を発揮するためには、合併後に入社してきた人々が中核的な 地位につくまで待たなければならない。真の合併効果が表れるまでに相当な時間を要する のであれば、急変期における対応策としては問題がある。むしろ、合併後の内部の合意形 成などに余計な時間がかかるようになり、生き残りがさらに難しくなるだろう。
第 4 章 LCC への影響
第 1 節 ビジネスモデルの見直しの必要性 今回のコロナ禍によって最も大きな影響を受けたのが LCC(低コスト航空会社)である。 近年、LCC は過当競争の状況に陥り、倒産するところも出て来ていた。そうした中で、 コロナ禍によって需要が激減し、状況はさらに急速に悪化した。 できるだけ多くの旅客を安い運賃で集め、低コストで運航することによって収益を上げ るというのが LCC の基本モデルである。しかし、コロナウイルス対策としてソーシャル ディスタンスを保つことが求められるようになったことから、座席数を減らして乗客の間 に従来よりも広いスペースを確保する、あるいは座席の配列を工夫して飛沫感染などが起 こりにくいようにする、などの措置を講じることが求められるようになった。 供給座席数を抑えることになると、収益を挙げて生き残っていくためにはどうしても 1 席あたりの販売単価を上げなければならない。そうなれば、FSC との運賃差は縮小し、機 内サービスなど、無料の付加的サービスを十分に提供できないような LCC によって FSC との競争は厳しいものとなる。 また、ソーシャルディスタンスをとるために搭乗時に旅客に間隔をあけて搭乗してもら うことで搭乗に要する時間が長くなったり、到着時や出発時の消毒作業に時間がかかるこ とになれば、着陸から離陸までの時間を最短に押さえ、できるだけ航空機の効率的な運用 を図ろうとする LCC のビジネスモデルにとって障害となってくる。 そして、運航頻度を高めることで収益を挙げようとするビジネスモデルは、需要の減退 期では便数をある程度抑えても高い付加価値を提供することで収益を挙げていくことがで きる FSC に比べて脆弱な体質を LCC はさらけ出すことになった。 今後、FSC 以上に、LCC において大規模な市場再編が進んでいくであろう。ワクチン が開発され、人心が安定すれば、すぐにこうした懸念も忘れられていくことも予想できる が、LCC は今後どのような形でウイルスのような新たな脅威に対応しつつ、FSC とは違っ た輸送サービスを提供できるかを考えなければならない。その先には、LCC という概念 が消滅し、FSC との新たな対抗軸である航空会社群が形成されてくることが期待される。 第 2 節 中長距離 LCC について 今回のコロナ禍が起こる前、すでに LCC の間で過当競争が発生しており淘汰が進みつつあった。そうした中で、LCC の基本的なビジネスモデルを離れて、中長距離路線へ進 出することで生き残りを図ろうという LCC が出てきた。その中には早々に失敗して市場 から撤退していったものもあるが、大手 LCC の中にもそうした方向に活路を見いだそう としているところもあった。特に LCC が最初に市場を席 したヨーロッパでは競争が激 しく、大手の LCC が率先する形で中長距離路線での市場の展開を図っている。アジアで もスクートなどを始めとして中長距離路線への LCC への参入が図られてきている。そし て、日本では JAL がジップ・エアー東京を立ち上げ、中長距離市場に LCC で参入するこ とを目指してきた。 中長距離路線となると、低運賃の魅力は既存の市場では短距離路線よりもさらに大きな アピール力を持つ可能性がある。中長距離路線での競争はまだ激しくなく、低運賃の魅力 は大きくなるからである。しかし、機内での快適性という点では密な状態に押し込まれた 状態でどこまで耐えることができるか、ということが問題となる。その点、中距離路線に 参入する LCC の中には短距離路線に比べて余裕のある機内の座席配置を行っているとこ ろも見られるが、座席数が減少すれば、それだけ収益を確保することは難しくなる。
第 5 章 客室サービスの見直し
航空会社にとっては、ラウンジでのサービスを含めて、乗客に対する一連のサービスの 提供の仕方についても大幅に見直していくことが必要となってきた。 ラウンジサービスでは、日本の航空会社はいち早くアルコールの提供を取りやめ、食事 などの提供も感染を防ぐための方策としてビュッフェスタイルでの提供を取りやめた。今 後、コロナ禍発生後の体験をもとにサービス提供の仕方も旧に復していくであろうが、上 顧客にとっては、ラウンジにいることのメリットが大幅に消滅してしまったことは確かで あり、関係者のモチベーションの低下にもなっている。 機内サービスについていえば、日本の航空会社では、客室においてサービスを提供する に際して、親密さを示すために、時に旅客に近づき、物理的に寄り添い、ものを渡す際に は手を添えるかたちをとり、様々な形で身体的に接触、もしくはそれに近い状態になるこ とが多かった。それに対して、他国の航空会社においては、たとえば「おしぼり」を配る 場合でも、はさみのような器具を用いて行うなど、旅客との間で距離をとる場合が多くみ られた。 今回のコロナ禍における「ソーシャルディスタンス」の概念の導入・普及によって、今 後、日本の航空会社でも、一時的にではなく、コロナ禍が収束した後においても、旅客と の距離の取り方、そしてそれに伴うサービス提供の在り方、ホスピタリティの在り方の見 直しを迫られることになるだろう。 このことは、空港でのチェックインやボーディング(搭乗)案内を行うグランドスタッ フ、待合ラウンジにおける接遇スタッフについても同様である。さらに言えば、日本全体 として、これまでの「ホスピタリティ」の在り方の見直しが強いられているといえよう。ただ、そもそも日本のホスピタリティについては、今回のコロナ禍がなくても、一定の 見直しは必要であったのではないかと考える。なぜならば、インバウンド旅客が急増して いた中で、従来の日本人を対象としていた、いわば「以心伝心」をベースとするホスピタ リティの在り方に限界も見えてきたのではないかと思われるからである。 それぞれがベースとする文化が異なる以上、詳細な説明なしには理解できない、また、 理解はできても評価できないものが出てくるのは必然的なことである。もちろん、そこに 新たな発見と魅力を感じ、それを希求することも多いことは確かである。だからこそ、従 来のホスピタリティの在り方にこだわるか、あるいは異文化との交流という状況を踏まえ てアレンジを加えていくか、あるいは「国際標準」といったものに近づけていくか、とい うことをしっかりと考えていかなければならない。 現状では、いまだに明確に定義できない抽象的な「日本的ホスピタリティ」というもの が無批判的に評価され、それを場合によっては多文化に属し、価値観の異なる人々に「押 しつけよう」としているようにも思われる。 そして何よりも、ホスピタリティを具体的に収益性の向上に結び付けようとしないのが 問題ではないかと考える。そもそも日本のサービス産業の収益性は国内の他の産業と比較 した場合、低い次元にある。特に航空も含めた観光関連業界に対する学生の就職人気に鑑 みた場合、奇異な状況であるといってもよいのではないだろうか。 よく日本のホスピタリティは世界一だということを国内では耳にする。そうであるなら ば、世界一高いホテルや旅館、レストランがあってもおかしくはないし、むしろ存在しな いことの方が問題である。世界の富裕層が実際にどのような消費・支払い行動をとってい るのか、しっかりと調査し、その結果を観光戦略にも取り入れていかなければならない。 コロナ禍で観光政策が停滞している今だからこそ、こうした調査を行い、コロナ禍後に備 えるべきである。このことは、航空会社にとっても、ハイエンドの顧客をより多く取り込 む可能性を高めることにつながるだろう。 昨年、菅官房長官が、日本には富裕者層を迎えるホテルがないので、それを今後 50 く らい整備していくというコメントを出した。これは全く理にかなったことであり、今回の コロナ禍によってこうした方針が中止・見直しされてしまわないようにしなければならな い。 そして、富裕層を取り込むためにも優秀な観光人材の本格的な育成を行っていかなけれ ばならない。この点については「卵が先か鶏が先か」という議論にもなってしまうが、先 見性のある民間の事業家に期待するか、あるいは国家戦略として推進していくか、恐らく 両面からのアプローチが必要になってくるだろう。
第 6 章 政府援助についてどう考えるか
第 1 節 その正当性について 国際化や情報化が進展する中で、移動の需要、そしてその重要性が高まっており、その手段である航空会社が健全に機能することは、国際社会にとっても、また国内政治的に も、非常に重要なことである。つまり、航空輸送体系は現代社会にとって重要なインフラ ストラクチャーであり、それが健全に機能していくことができるようにすることは各国の 政府にとって大きな責務となっている。 実際、各国政府は自国の航空会社に対して多額の援助を行うことでその存続を図ろうと している。その一方で、タイ国際航空のように、これまで国営による弊害が大きく、放漫 経営を続けながらなかなか抜本的な改革を進めることができなかった場合には、その改革 を進めるための絶好の好機となっている。また、ヴァージン・アトランティックのよう に、従来政府の方針に反逆するような形でユニークな戦略をとり、成功を収めてきた航空 会社は、今回のような未曾有の危機に対して政府からの支援を得られず、米国やオースト ラリアで系列の航空会社が経営破綻に追い込まれている。LCC についても政府からの後 ろ盾がないために多くが経営危機に陥っているところから、政府との信頼関係、様々な関 係性が今回のような緊急事態において生き残りを果たす上で極めて大きな要因であること が分かる。 航空会社に対する政府支援は、様々な分野において行われている戦略的貿易政策と同じ ものとして捉えることができる。ここで政府が自国の企業に対して支援を行わず、その企 業が国際市場における競争力を喪失し、または完全に撤退するようなことになれば、自国 にとって国際経済上大きな損失となる。そうならないように、自国の企業を防衛すること は国益上、理にかなっていることになる。確かにこれは自由競争の理念に反することには なるが、国際市場においてはそこでプレーしている各国の企業が全く同じ条件で競争を演 じているのではなく、補助金の支出など、様々な「不公正競争」が現実には行われてお り、そのような現状において「馬鹿正直に」自由競争の理念に従って政府が何も介入しな いのは国益上問題だとするのである。 また、政府も限られた予算の中で自国の企業に投資するのであれば、その効果が大きい こところに選択的に投資するのは当然のことであり、そもそも自由化を進める中で従来の 体制を破壊するような形で成長を遂げてきた LCC や、政府に敵対的な行為をとる企業で はなく、政府と良好な関係にある企業を守ろうとするのも理にかなった行為であるという ことになる。 このようにして、今後はいわゆるナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空 会社)は混とんとした国際航空市場の中でも一時的なものであろうとも、その中心的な位 置を取り戻す、あるいは確固たるものとするだろう。ただ、それがどこまで続くかは全く 別の問題であり、事態が落ち着き、市場が再び成長軌道に乗るならば、また様々な新規参 入企業がこれまでとは違ったビジネスモデルを引っ提げて登場してくるだろう。 第 2 節 Go To キャンペーンについて 7 月に入ってコロナウイルスの感染者数が全国的に増加傾向を示し、感染流行の「第 2
派」が訪れたとの報道が盛んになされるようになった時期と、「GO TO キャンペーン」の 開始時期が重なったことから、当該政策に対する批判の声が高まることとなった。 GO TO キャンペーンとは、疲弊する地方経済を支えるための一助として、国内観光に 出かける場合に、その旅費の一部を公的に負担し、援助するというものである。これに よって航空会社を含む観光関連業界全体は需要喚起によって大きな恩恵を受けるはずで あった。 しかし、流行の「第2派の到来」(この点に関しては、データの解釈をめぐって様々な 見解があることには留意しなければならない)と、東京からの出発、ならびに東京への訪 問が対象外となったことで、その効果は限定的なものとなるのではないかという危惧がも たれている。 2020 年 5 月 25 日に緊急事態宣言が解除され、6 月には都道府県をまたがる移動制限も 完全に解除された。その結果、それ以前ほどではないにせよ、週末を中心に移動需要は回 復してきていた。それが第二派の影響で再度停滞の動きを示してはいるものの、移動を制 約されるストレスは、仕事面でもプライベートな面でも大きい。ZOOM など、テレワー クの環境整備は進み、実際にテレワーク、また教育の場においても遠隔授業が広く行われ るようになった。この流れはコロナ禍が収束したのちも継続的に進むであろう。しかし、 外出し、人と直接会話し、会食し、旅行に出かけるということは人間の根源的欲求であ り、テレワークや遠隔授業が広まっても、それらがリモート化によって大きく変化するも のとは考え難い。 類似の事例としては、在宅で株の売買を行い、収益を挙げる個人事業主であるデイ・ト レーダーという職業が自由な働き方を追求する新しい労働スタイルとしてクローズアップ された際に、彼らが現状に対する不満としてマスコミのインタビューなどに応えていたの は、他者との会話の機会、接触の機会がないという孤独感であった。 こうして考えてみると、仮にコロナ禍の第 2 派が到来したかもしれないという時期に、 当然様々な批判が出てくることが予想できるような状況下で GO TOキャンペーンを行わな いという決定を行ったとしても、移動制限が緩和されれば人々は自然と旅行に出かけたこ とであろう。しかも、海外への渡航制限がなされている現状では国内旅行を行うしかな く、それは地方経済を下支えすることになったはずである。 これに対しては、そうはいってもコロナ禍によって多くの人々が経済的なダメージを受 けており、キャンペーンを行わなければ旅行に出かけたくともそうすることはできないの で、キャンペーンを行うことは絶対に必要であったという反論も出てくるだろう。ただ、 その場合には、確かにそうであったとしても、日常生活を送る上での援助を行った方が世 情を安定化さえるという意味での政策効果は高くなるのではないだろうか。 今後は、今回のキャンペーンの費用対効果を厳密に検証することが求められる。また、 地方間での取り組みの結果がどのように反映され、どこが最も効果を挙げたかのか、それ はなぜそうなったのかを厳密に検証することで、その中から見出されるサクセス事例か
ら、それがなぜ成功したのかを深く検証し、それを全国に応用できるよう定式化と普及を 図っていくことが求められる(もちろん、こうした取り組みは、観光庁などにおいて、観 光マイスターの選定などを通して従来も行われているが、その手法のより一層の精緻化を 目指していく必要があるのではないかと思われる)。
第 7 章 保安体制の見直しと強化
第 1 節 関係者間の相互連携の重要性 今回のコロナ禍において、空港や港湾での水際対策のあり方が問われた。東京オリン ピックを始めとして、2025 年の大阪万博など、これからもビッグ・イベントが開催され ていく中で検疫を含めた保安体制をどのように精緻化、強化していくかは、航空輸送の安 全性を担保する上で極めて重要なことである。 その一方、2019 年度には、保安検査場での検査をすり抜けて、刃物がクリーンエリア 内に持ち込まれるという事態が多発した。これらは、航空会社のマイレージクラブの上級 会員用の特別待合ラウンジにおける保安検査場で起こったことが特徴である。一般の検査 場の場合でも同様ではあるが、こうした場所を利用する乗客はクレーマーも多く、検査員 が強い姿勢で検査に臨むことが特に難しく、このような問題が発生しやすくなっている。 そしていったん検査場を通り抜けてクリーンエリアに出てしまうと、それを探し出すこ とは難しい。ここで問題となるのは、航空会社、空港会社、保安警備会社など、関係者間 の連携関係が緊密になっていないことである。お互いのコミュニケ―ションを迅速かつ効 果的に行うことができるような体制にはなっていないのが現状である。ちなみに、このこ とは台風などの自然災害による混乱時にも同様に見ることができる。 現行の体制では航空会社が保安検査については直接の責任をもつような法体系になって いる。しかし、航空会社は民間企業である以上、保安検査にためのコストはなるべくかけ たくないのが本音である。そのしわ寄せが、実際に保安検査を担う下請け会社にかかって くることになる。賃金や勤務時間など、恵まれた状態にあるとは到底言えない状況のな か、先ほども触れたように、強制力も持たない状況で旅客の検査に臨まなければならな い。過酷の労働環境の中での勤務に耐え切れず、離職していく人の割合は 3 割を超えるほ ど高い。 その一方で、LCC などのように預入手荷物の数が厳しく制限され、またビジネスパー ソンは重要な書類などを預けることはできず、また到着地において預入荷物がターンテー ブルに出てくるまで待つことなく、できるだけ早く目的地に向けて移動したいがゆえに、 機内に持ち込む荷物の量が非常に多くなっている。この結果、手荷物検査場での検査数も 増え、多数の荷物の中にどのような持ち込み制限品が収納されているのかを瞬間的に見極 めることも難しくなっている。最新技術を導入すればその負担も軽減されるだろうが、こ こでもコストの問題が出てくる。非常に高額な検査器を導入するインセンティブが航空会 社側にあるかどうかである。ただでさえコスト削減が経営の大前提となっている航空経営の現状では、なかなかそうしたインセンティブは生まれてこず、できるだけ現状の体制で 処理しようとする。そうなると、まさに検査員一人一人の経験値がものをいうことになる が、先に見たように離職率が高く、経験値がなかなか高まっていかないという状況にさら されている。 このように、保安は国にとって極めて重要なことであり、現行のように航空会社の責務 とすることには問題がある。この点に関して、すでに法改正の動きはあるが、早急に改正 に向けた取り組みを進めていくべきである。それと同時に、今後、今回のようなコロナ禍 のような新たな脅威にも対応していくために、最新技術を活用した保安機器の開発と導入 も進めていく必要があり、そのために十分な予算が充当されるべきである。ただし、検査 においては最終的には人による判断が求められる部分が残るであろうし、その判断はより 深い知識と経験値に基づいて行われることになろう。それが可能となるように、保安のス ペシャリストをより多く育成し、全国の空港に配置していくことが求められる。 そのためには、労働条件の改善など、待遇面での全面的な見直しを行い、その向上に努 めていかなければならない。そこでは、空港の保安検査の社会的重要性を社会的に深く認 識させるための啓発活動を行っていくことも欠かせない。 第 2 節 ビジネスジェットのセキュリティなどの検査について コロナ禍の中でその価値が再評価されたものにビジネスジェットがある。見知らぬ他者 と機内で長時間過ごすというリスクを冒すことなく移動できるということは、ビジネス ジェットの利点として改めて評価されることになった。実際、ヨーロッパでは、今回のコ ロナ禍の中で、ビジネスジェットの利用が増えている。今後コロナ禍の影響が長引けば、 同様の現象がヨーロッパ以外でも見られるようになるだろう。 ビジネスジェットに関しては、今後日本ではその普及を図っていくべき移動手段であ る。国際化、情報化が進む中で、ビジネスジェットは時間価値を最大化し、経済活動の効 率化に大きく貢献するものだからである。 しかし、その一方で、2019 年末に起こった、元日産会長のカルロス・ゴーン氏の関西 空港からレバノンへの海外脱出の際に注目されたように、ビジネスジェットの利用者に対 するセキュリティ・チェックが甘いのではないかということが指摘されている。この点に 関しては関係者の間でも様々な異なった主張がなされているが、今後は、ビジネスジェッ トのセキュリティ・チェックのあり方も含めた形での見直しを行っていく必要はあるだろ う。 とはいえ、ビジネスジェットの利用者に対するセキュリティ・チェックなどの検査をあ まり厳格にしすぎると、ビジネスジェットを利用する魅力は低減してしまうことも確かで ある。というのは、ビジネスジェットを利用するということは、経済的に見て一定の社会 的ステータスをもった人物であるといえるので、その信頼性は高いものと見なされ、だか らこそ検査などを簡略化し、その利便性を図ることで、ビジネスジェットを利用すること
のメリットを提供することができるからである。 しかしながら、今後ビジネスジェットの利用をより普及していくためには、ビジネス ジェットに対する社会的評価を高める必要があり、その一つがビジネスジェットに関して もしっかりと検査を行っているという公平感を社会に与えることも重要であろう。そこ で、ビジネスジェットも含む形で保安検査に関する一定の明確な基準と体制を社会的に示 し、ビジネスジェットの利用に対するある種の不信感を払拭することも、その社会的な認 知を進め、普及を図っていく上では必要なことである。 第 3 節 財源面での検討 上記のような対策がとられていくための財源としては、観光税からの支出が妥当ではな いかと考える。観光税の使途としては色々と考えられているが、現状では移動に対する社 会的不安感を払拭することが観光需要を復活させていくためには必要であり、緊急度の高 い支出項目として保安体制の整備・強化を位置づけるべきである。 いずれにせよ、その費用対効果については算出過程を公開した上で公表し、その妥当性 について社会からの評価を仰ぐことが求められる。 この点に関しては、かつての各種の需要予測と同様の問題性を再認識し、その解決を図 ることが重要である。 たとえば、空港を建設する場合には需要予測が行われ、その建設の是非が問われること になるが、その場合の需要予測は 20 年後 30 年後といった超長期的なスパンで予測を行う ことになる。しかし、そのような遠い将来のことを正確に予測することはほぼ不可能であ る。それだけ遠い将来となると、それまでの間に様々が技術革新が起こるであろうし、そ れに伴うような形で構造変動も起こるであろう。現状のトレンドをそのまま将来に拡張し て未来を予測することはあまり意味がないといってもいいという見方もできる。実際、経 済成長の予測などでは、1 年半先辺りまでの予測が、せいぜい信憑性があるくらいであり、 それ以上長期の予測になると希望的観測に過ぎないということが言われている。 そこで、将来に向けての公的投資は、まさに政治的信念に基づいて行われるべきである という主張が行われることになる。たとえば、明治期以降の東京都の都市形成や、日本統 治下の台湾への投資などがそれに該当する。 その一方で、公的資金を投入して事業を推進しようとする時には、それを正当化するた めの客観的なデータを示し、政策を実行するかどうかの判定材料にすることも、民主的体 制のもとでは軽視されるべきではない、という主張も正当性をもつ。超長期の予測は困難 であるからといって初めからそれを放棄してしまうのは政策的怠慢であるとも考えること ができる。重要なのは、構造変化などの与件が変わった時に、いち早くそれを取り入れて 予測値を修正しながら、予測精度を上げるような取り組みを行うことで、予測作業の精緻 化を図っていくことである。そうした取り組みを重ねていくことで、どのような要因が重 要なのかが見えてくるだろう。
そして、こうした見直しの作業が一部関係者だけではなく、広く社会で行われるように データや予測手法を公開することで、様々な人々がこうした予測精度を上げるための取り 組みに参加するようになり、学際的なアプローチがより効果的に行えるようにすることで ある。従来であれば、超長期的な予測に関しては、最終的には定性的な判断に基づくもの となることから、そうした過程を公開したがらないという事情が働く。 さらにいえば、空港の場合などでは、予測作業を行う前提として空港を建設するという ことが関係者の間で合意事項としてあり、それを正当化するための需要予測となることか ら、どうしても需要を作為的に「創る」ということになるため、詳細な予測過程を公表で きないということになってしまう。需要予測は難しいことは事実であるが、だからといっ て間違いを正当化するようなことがあってはならない。政策担当者も、その使い方をどの ようにすべきか、考え直すべきである。