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CSCLシステムの開発・運用分析を支援する 統合プラットフォーム

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CSCL システムの開発・運用・分析を支援する

統合プラットフォーム

Integrated Platform to Support CSCL Systems Life-cycle

杉本葵 林佑樹 瀬田和久

Aoi SUGIMOTO, Yuki HAYASHI, and Kazuhisa SETA

大阪府立大学大学院 人間社会システム科学研究科

Graduate School of Humanities and Sustainable System Sciences, Osaka Prefecture University

Abstract: A number of studies in the research field of CSCL (Computer Supported Collaborative Learning)

have proposed various systems in order to support collaborative learning process. In collaborative learning, participants exchange not only verbal but also non-verbal cues such as gaze and posture. In order to realize CSCL systems that can treat a form of multimodal interaction for different purposes accordingly to the learning objective, it is desirable to execute in a continuous and smooth way each activity in CSCL systems life-cycle: 1) implementation, 2) practice and 3) analysis. We propose a novel integrated platform as the basis for multimodal interaction aware CSCL systems. In this paper, we developed verbal and non-verbal aware CSCL analysis support environment to support analysis activity.

1 はじめに

複数のメンバが議論し合い,互いの知識構築や問 題解決を行う協調学習が注目されている[1].協調学 習ではグループ参加者の相互作用により主体的な学 びが促進され,コミュニケーション態度の涵養,他 者への説明を通した理解の深化など,多岐に渡る学 習効果が知られている[2].一方で,特定の参加者間 で意思決定がされたり,学習の行き詰まりや取り残 される参加者がいたりする場合は,必ずしも良い学 習 効 果 を も た ら す と は 限 ら な い . そ こ で CSCL (Computer Supported Collaborative Learning) の研究 分野では,協調学習支援を目的としたさまざまな学 習支援システム(CSCL システム)が提案されてきた [2][3]. 多人数マルチモーダルインタラクションの研究領 域では,対面でのコミュニケーション場面を分析対 象として,発話や視線,身振りといった複数の社会 的シグナルを組み合わせ,会話への参加意欲や支配 性に見られるマルチモーダル特徴を分析する研究が 行われ,知見が積み上げられつつある[4]. これらの研究の知見をCSCL システムの支援機能 へと発展的に応用していくことにより,学習者のイ ンタラクション状況をシステムが把握しながら分 析・評価することや,リアルタイムな知的介入の道 を拓くことが期待される. このようなシステムを実現するためには,図1 に 示すCSCL システムライフサイクル(1. 開発:開発 者によるCSCL システム開発,2. 運用:参加者によ るシステム利用,3. 分析:分析者による学習分析) において,1 の CSCL システム開発者と,3 の協調学 習インタラクションの分析者という,専門性が異な るステークホルダが連携しながら活動していく必要 がある.このため,このサイクルの連続的な実現に より,分野横断的かつ持続的に知見を積み上げてい くことが重要となる. 本研究では,この開発・運用・分析活動サイクル の基盤となる言語・非言語アウェアな統合プラット フォームを提案する.先行研究として,我々は,開 発者の活動を支援するCSCL システム開発環境を提 案してきた[5].本稿では,分析活動を支援する CSCL 分析支援環境を組み込むことにより,CSCL システ ムライフサイクルを循環させる基盤を実現する. 以下,2 章でシステムライフサイクルに基づき, CSCL,多人数マルチモーダルインタラクションの両 分野を考慮したプラットフォームの設計理念を挙げ る.3 章では我々が構築した CSCL システム開発環 境を概説し,4 章では第 2 章でとりあげた理念に基 づくCSCL 分析支援環境の要件を整理する.5 章で はCSCL 分析支援環境の構造とその機能について述 べ,6 章では多人数マルチモーダルインタラクショ ン分野とシステムライフサイクルの観点から CSCL 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B509-06

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分析支援環境の有用性を議論し,7 章で本研究をま とめる.

2 プラットフォームの設計理念

2.1 多人数マルチモーダルインタラクショ

ン分析

表1 に本研究が参照モデルとするインタラクショ ンの階層モデルを示す[6].参加者間でやり取される 社会的シグナルを組み合わせ,会話主導権の遷移や 参加意欲といった高次な情報へと解釈する処理を実 現するためには,各種センシングデバイスから得ら れる音声波形や頭部向き,視線座標といったデータ 系列(Raw Data 層)を,誰が話している,誰が誰を 見ている,誰が筆記しているといった,参加者個々 の原始的なインタラクション要素(Interaction Primi-tive 層)として抽出する処理が必要となる. このイ ンタラクション要素を組み合わせることで,共同注 視や相互注視といったイベント解釈が可能となる (Interaction Event 層).そして,参加者相互のイン タラクショイベントに基づき,会話コンテキストに 踏み込んだ高次な解釈へと積み上げることができる ようになる(Interaction Context 層). このモデルで表されるように,多人数マルチモー ダルインタラクション分析では,低次な階層に属す るデータから高次な階層へと解釈を持ち上げる取り 組みが盛んに行われている.例えば,McCowan らは 会話形態(ディスカッション形態,プレゼンテーシ ョン形態等)を推定する試みとして,韻律情報(音 声のピッチ,振幅,話速),話者の姿勢等のマルチモ ーダル情報を隠れマルコフモデルに適応する手法を 提案している[7].Hillard らは,機械学習手法を用い て,発話数や発話内容(肯定的/否定的な単語),韻律 情報から参加者の議論に対する肯定的/否定的態度 を判定するモデルを提案している[8]. このように,多人数マルチモーダルインタラクシ ョン分野の研究では,低次なデータを高次な情報へ 持ち上げるという共通構造を基にしながら,どのよ うな言語・非言語特徴を扱い,如何に処理するかは 分析目的に応じて異なる.また,インタラクション 分析では,分析前のデータ整形において多くの作業 を必要とする.例えば,複数のカメラを用いて参加 者データを収集する場合では,それらの映像を同期 再生するための調整作業や,映像をフレーム毎に観 察することによる任意区間へのアノテーション付与 作業など,分析者は膨大なデータ整形作業を必要と する. 一方で,本研究と同様に分散環境のインタラクシ ョンを分析対象とする状況では,データ集約作業を サーバが担うことにより,この前処理に伴う作業負 荷は低減されると考えられるが,これを前提とした インタラクション分析基盤は我々の調査の限り存在 しない.

2.2 CSCL システムの多様性

協調学習には様々な学習形態が存在する.例えば, 複数の学習者が教えあいながら課題を解決するもの, 機会を重ねて議論し,1 つの成果物を創出するとい ったものなどが挙げられる.このように,参加者の 人数,学習目的,学習環境(対面/遠隔,同期/非同期), 学習頻度など,様々な観点から協調学習の形態は規 定され,数多くのCSCL システムが提案されている. 多様なCSCL 環境を概念的にとらえたものとして, 本研究では図2 に示す稲葉らの概念的 CSCL 環境を 参照する[2].CSCL は参加者と利用される学習ツー ルにより構成されており,学習ツールは参加者の学 習活動の目的に応じてデザインされる.例えば,学 習における自分の立場を意識させるための文頭語句 の設定機能を備えたテキストチャット[9]や,参加者 による意見の集約を支援するためのノート・資料の 共有ツール[10]が提案されており,開発者は,協調学 習の学習目的に応じた学習ツールを実装する必要が ある. 加えて,多人数マルチモーダルインタラクション 図1 CSCL システムライフサイクル

Layer Summary Example

Interaction

Context The flow of interaction

Dominant level transition Interaction

Event

The combinations of

multiple primitive data Joint attention Interaction Primitive A single motion by a human Looking, Speaking Raw Data Raw data recorded

by sensing devices

Wave data, Motion data

表1 インタラクションの階層的解釈モデル

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の知見を組み入れるCSCL システムを実装するため には,協調学習プロセスに発現する参加者の言語・ 非言語情報を捉える必要がある.しかし,参加者の 言語・非言語情報を捉える汎用的なシステム開発環 境は存在せず,開発者は一から言語・非言語情報の 検出機能を実装する必要があり,システムを通して 得られた知見を他の開発者に参照できる形で積みあ げていくことも困難である.

2.3 プラットフォームの設計理念

多人数マルチモーダルインタラクションを前提と したCSCL システムのためのプラットフォームを実 現するためには,開発・分析の活動において処理さ れる言語・非言語情報,学習ツール,解釈処理の多 様性を考慮し,支援・分析対象とする作業に開発者・ 分析者が注力できる必要がある.ここでは,言語・ 非言語データの検出処理やデータ整形作業などの低 次なデータレベルでの処理を意識せず,自身が支援 対象とする学習活動に応じて,如何にデータを扱い 高次な情報を捉えるかに専念して開発・分析活動を 行えることが望ましい―― (1) また,多人数マルチモーダルインタラクション分 野の知見を組み入れたCSCL システムライフサイク ル(図1)では,開発・分析活動の知見を互いの作業 者が参照できることが,サイクルを連続的に循環さ せ,知見を健全に積み上げていく上で肝要となる. これを実現するためには,言語・非言語情報を捉 える開発環境の上で,学習データ,言語・非言語情 報を統合処理するCSCL システムを開発できること に加えて,開発したシステムを通して得られたデー タを分析作業で利活用し,協調学習場面を対象とし たインタラクション分析へと応用していける仕組み が求められる.提案するプラットフォームでは,開 発・分析の統合基盤となり,各活動を通して得られ る知見を次の活動へと活用できることが望ましい― ― (2) 以上の(1),(2)に基づき,以下の 2 項目をプラット フォームの設計理念として掲げる. 理念1:開発者・分析者各々が対象とする協調学習 活動に応じた高次の開発・分析活動に注力できる こと 理念2:開発者・分析者の互いの知見を反映できる 形でCSCL ライフサイクルを連続的に循環できる 仕組みを備えること

3 CSCL システム開発環境

3.1 概要

図3 に我々が開発している開発者の活動を支援す るCSCL システム開発環境[5]の概要図を示す.協調 学習の参加者間でやり取りされる言語・非言語情報 を捉える外部計測機器を備えた環境を前提とし(図 3(a)),ネットワークを介した情報の送受信,セッシ ョン管理といったCSCL システムの動作基盤として の基本機能を備える(図3(b)).この開発環境におい て開発者は,学習活動に適した学習ツール開発を可 能とし(図3(c)),学習ツール内で言語・非言語情報 や複数の学習ツールから得られる原始的な異種情報 を組み合わせることにより,より高次な情報へと開 図2 概念的 CSCL 環境([2]より引用) 図3 言語・非言語アウェアな CSCL システム開発環境の概要

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発者が解釈できる仕組みを備えている(図3(d)).

3.2 インタラクションの階層的解釈に基づ

く基礎情報の提供

インタラクションの階層モデルに基づくローデー タを高次な解釈へ積み上げるという,マルチモーダ ル解釈処理を伴う大掛かりな作業負荷を軽減するた めには,開発者がその検出処理を意識せずにマルチ モーダル情報にアクセスできるシステム開発基盤で あることが望ましい(設計理念1). 本環境は,発話行為(発話区間・発話内容),視線 行為(視線対象オブジェクト・視線座標),筆記動作 (筆記区間),頭部動作(頭部座標直行軸の座標)の 4 種の情報を検出できるように構成されている.開 発者には,解釈処理の基礎情報として単一動作に基 づくRaw Data 層および Interaction Primitive 層に相当 する情報を提供している.

3.3 学習ツールが扱う情報の定義・通信制御

協調学習で利用される学習ツール情報を参加者間 で共有するためには,テキスト内容や書き込み座標 など,その目的に応じた特有の情報を学習ツール間 で発信・共有できる必要がある.加えて,言語・非 言語情報や学習ツールから得られる情報を解釈処理 するためには,開発者の要求に応じた情報を各学習 ツールへと適切に通信できる必要がある. 本環境では,上記の要求を実現するためのメッセ ージング処理機能を備えている.環境内で処理され るメッセージ,開発者が扱うメッセージ(学習ツー ル独自のメッセージ,言語・非言語情報を表すメッ セージ等)を,その処理方法に応じたタイプを付与 し構造的に定義することで,開発者独自のメッセー ジ定義を可能としつつ,全てのメッセージを処理す る機構へ適切に分配する仕組みを持つ.これにより 開発者は,解釈処理するための情報をメッセージと して受け取ることができるようになり,低次な処理 を意識することなく開発作業に専念できる.(設計理 念1)

3.4 CSCL 分析に向けた各種データ管理

本環境上で動作するCSCL システムは協調学習参 加者により利用され,ここで得られた協調学習デー タを分析者が分析することを前提としている.分析 には,言語・非言語情報に加えて,“テキストチャッ トに文字を入力している”,“ポインタを使って資料 を示している”といった学習ツールが提供するイン タラクション支援機能の利用情報も用いられる.さ らに,設計理念2に基づきCSCL システムのライフ サイクルを通じて持続的に知見を積み上げていくた めには,開発者が定義したマルチモーダル情報の解 釈処理を加えた情報も分析に利活用できることが望 ましい. 本開発環境では,3.3 節のメッセージング処理を通 じて各種データをRDBMS に保存することで,分析 へと利用できる仕組みを実現している.ここでは, 開発者がマルチモーダル情報の解釈処理により持ち 上げた独自の学習ツールメッセージを含め,データ を蓄積管理できるようになっている.

4 CSCL 分析支援環境の要件

分析者の活動を支援するCSCL 分析支援環境とし て,2.3 節で掲げたプラットフォームの設計理念に基 づき以下に示す2 つの要件を挙げる. 要件1(4.1 節): マルチモーダルインタラクション の分析手法を参照した分析の基本機能を提供する こと(設計理念1) 要件2(4.2 節): 言語・非言語情報に加え,開発者 が定義するメッセージ情報も扱った分析を可能と すること(設計理念2)

4.1 インタラクション分析基盤としての要件

多人数マルチモーダルインタラクション分野では, 分析を支援するためのAnvil[11]に代表される様々な アノテーションツールが提案されている.これらの ツールでは,扱えるデータの種類や,前提とするデ ータ収集環境条件(利用するセンシングデバイスの 種類や,カメラのセッティング台数等)に応じたデ ータの可視化,アノテーション付与,データ出力の 基本機能を備えている.この基本機能は,大量のデ ータに基づく機械学習手法を用いたインタラクショ ン分析作業で幅広く利用されている[11]. 分析支援環境においても,様々な手法による分析 を可能とするため,上述の分析ツールに備えられて いる機能を提供することを考える.

4.2 CSCL システムライフサイクルの連続

性を担保するための要件

分析者は開発者の知見を反映した協調学習インタ ラクション分析を実現できることが望ましい.この ためには,協調学習場面に特化し,参加者の言語・ 非言語情報に加えて学習情報も扱える必要がある. CSCL システムライフサイクル活動の接続性を担保 するためには,CSCL システム開発環境上で開発者 が独自に定義した学習状況を捉えるメッセージ情報 をも分析できることが望ましい.このため,分析支

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援環境では,言語・非言語情報に加え,開発者が定 義する独自メッセージ情報を含めて協調学習インタ ラクションを分析できるようにする. さらに,分析結果の知見を次なるCSCL システム 開発へと展開していくための仕組みとして,分析の 解釈過程を明示的に表現したパターン(解釈パター ン)を分析者が明示的に定義し,これを抽出する機 能を提供することを要件とする.解釈パターンに基 づき解釈処理の方法をルール化できることで,開発 への知見接合の手段とする.

5 CSCL 分析支援環境の構築

5.1 システム構成

図4 に CSCL 分析支援環境の構成図を示す.本環 境はサーバ・クライアント型のシステムとなってお り,サーバサイドは,ユーザ情報や学習履歴,言語・ 非言語情報を管理する(CSCL Database)と参加者の ビデオ映像を管理するRTMP プロトコル準拠のスト リームサーバ(Stream Server)[12]から構成され,こ れらはCSCL システム開発環境が備えるサーバと兼 用している.クライアントサイドは,C#で Windows Form Application として実装されている.データ抽出 部(Data Extracting Module)では,データベース接続 部(Database Connecting Module)を通じてデータベ ースにアクセスし,分析者が入力するセッション情 報に基づき当該セッションのデータを抽出する.抽 出されたデータはデータ管理部(Data Management Module)で管理され,以下の 3 つのモジュールで処 理される.  可視化部(Visualization Module):データ抽出を通 じてデータ管理部に登録されたデータを可視化 する機能を持つ.

 解釈パターン抽出部(Data Pattern Extracting Mod-ule):分析者の入力に応じたデータの解釈パター ン抽出機能を実現する.データ管理部から抽出す るデータ要素を取得し,解釈パターンによって得 られたデータをデータ管理部に登録する処理を 行う.  アノテーション付与部(Annotation Module):分析 者が付与するアノテーション情報を管理し,デー タ管理部でデータを登録する処理を行う.協調学 習参加者のビデオ映像の同期再生機能も備えて おり,ActionScript 3.0 を用いて実装された Adobe Flash Application を埋め込む形で実装している. 分析者はデータ出力部(Data Exporting Module)を 通じて分析用途に応じたデータを出力できる.

5.2 マルチモーダル情報の管理

本環境のデータ管理部では,言語・非言語情報や 学習ツール情報,分析者が付与したアノテーション 情報など様々なデータを管理する.ここでは図5 左 のようなデータ分類の下で,図5 右のように階層的 に定義しており,すべてのデータは InteractionData を継承している.InteractionData は,全てのデータに 共通のインタラクション階層モデルのレベル情報 (layer)と解釈に伴って付与されるラベル(label) が定義されている.データは階層や処理モジュール によって以下に示す4 種類に分類される.

(a) RawData(図 5(a)):データベースに保存されてい るデータのうち,Raw Data 層のデータで構成されて いる.Raw Data 層のデータはデバイスから得られる データそのものを表しているため,データのタイプ (型)を一意に定めることができない.このため, RawData を継承した離散データを表現するための DiscreteData など,データ型ごとにクラスを定義して いる. Interaction Primitive 層以上のデータは,開始・終了 区 間 情 報 を 保 持 す る デ ー タ 構 造 を 持 つ Higher-InteractionData として定義している. HigherInteractionData を継承して以下のクラスを 定義している. (b) PrimitiveData(図 5(b)):データベースに保存され ているデータであり,開発環境が捉える Interaction Primitive 層のデータ,または開発者が定義する解釈 図4 CSCL 分析支援環境の構成図

(6)

パターンが捉える高次なデータから構成される.可 視化の際に利用されるほか,データの解釈パターン 抽出でも条件指定可能なデータ要素となる. (c) InterpretedInteractionData(図 5(c)):データの解 釈パターン抽出機能によって抽出されたデータを表 す.どのようなデータをどのように組み合わせて解 釈したかは分析者や分析目的に依存するため,この 解釈理由を明示的に表現するためにデータ処理方法 (function ) を 付 与 す る 形 式 と な っ て い る . InterpretedInteractionData を継承して,OverlapInter-pretedInteractionData や , JointInterpretedInteraction-Data などが定義される.これらのクラスでは処理方 法が記述されるとともに,処理に扱うデータ(param1, param2 など)を設定できるようになっている. (d) AnnotatedData(図 5(d)):分析者によって付与さ れたアノテーション情報を保持するデータを表す. 本クラス特有のプロパティは定義されていない.

5.3 システム機能

5.3.1 多人数マルチモーダルインタラクション分野 を参照した分析支援ツール 要件1を満たすために,CSCL 分析支援環境は以 下に示す機能を備えている. - 可視化機能:図6 にインタラクションデータ可視 化画面を示す.分析者によるセッション情報(セッ ション開始/終了時刻,参加者,各種データ)の入力 に応じて各データを時系列に可視化する. - アノテーション付与機能:分析者は図7 に示すイ ンタフェース上でアノテーションを付与できる.図 7(a)では協調学習参加者のビデオ映像が同期再生さ れており,図7(b)では,従来の分析ツール[11]と同様 に,ドラッグ操作により区間指定しながら任意のア ノテーションを付与できる. - データ出力機能:本環境では,データベースに蓄 積されたデータだけでなく,分析活動に伴う様々な 情報が管理される.分析用途に応じて,整形された データをcsv 形式で出力することができる. 5.3.2 解釈パターン抽出機能 要件2を満たすために,本環境では解釈パターン 抽出機能を備えている.Raw Data 層のデータはその データ型を一意に定めることができないため(5.2 節),本機能もRaw Data 層のデータと Interaction Prim-itive 層以上のデータに応じて異なる処理が施される. (i) Raw Data 層データの解釈パターン抽出:図 7(c)-1 にローデータの解釈パターン定義画面を示す.画 面左では処理の対象とするデータを選択し,その選 択に応じたパラメータの入力項目が画面右に表され る. 図7(c)-1 は,ノートツールへの入力タイミング処 理の定義例を表している.ここでは,離散データ用 の入力フォームが画面右で表示されており,データ とデータの間隔が200msec 以内であれば,結合して 1 つの区間として処理することを定義している. (ii) Interaction Primitive 層以上のデータの解釈 パターン抽出:Interaction Primitive 層の各データは開 始・終了区間情報を持つものと定義している.図 7(c)-2 に解釈パターンの定義画面を示す.画面上部では 図6 インタラクションデータ可視化画面 図5 CSCL 分析支援環境が管理するデータの分類とその階層構造 データ表現 インタラクション 階層 データ生成元 モジュール

(a) ※ Raw Data

Data Extracting Module (b) 開始・終了区間の リスト Interaction Primitive 以上 Data Extracting Module (c) 開始・終了区間の リスト Interaction Primitive 以上 Data Pattern Extracting Module (d) 開始・終了区間の リスト Interaction Primitive 以上 Annotation Module

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パターンに合致したデータ区間に付与するラベル (label)および,処理方法(function)を定めること ができる.画面下部では選択された処理方法に応じ た設定項目を入力できる仕様となっている. 本環境では,重複区間の抽出(Overlap),区間リス トの結合(Joint),区間リストの条件抽出(All)に伴 う処理を規定できるようになっている. 解釈パターンでは,処理されるデータの行為主体 者としてLearner, Instructor, Helper, Observer といった 各参加者の役割(ロール)を規定することができる. ロールを明示化した表現形式を採ることにより,学 習者構成が同様の協調学習セッションでの適用性を 高める狙いがある. (i)と(ii)で定義された解釈パタ ーンより抽出されるデータ区間は,図 7(c)に示す可 視化画面に表示される.この出力を観察することに より,分析者はさらに高次な解釈へと積み上げてい くことができる.

6 議論

6.1 CSCL 分析環境の有用性

6.1.1 協調学習インタラクション分析作業の軽減 本分析支援環境では,インタラクションの階層的 解釈モデル(表1)を参照したデータ表現方法に基づ き,CSCL システムの利用を通して得られたデータ を管理する仕組みを備えており,データベースに蓄 積された様々なデータに対して,分析者はデータ整 形作業を要さずに分析できる.作業負荷を軽減する ように設計されている本環境により,分析者はどの 情報を組み合わせ,どのように解釈処理を定義する かに専念することができる. 6.1.2 多人数マルチモーダルインタラクション分析 への貢献 近年の情報通信技術発達に始まるインターネット 上のチャットやテレビ電話など,遠隔で他者とコミ ュニケーションをとる場面も日常生活で多く見られ るようになってきた.このような状況での多人数マ ルチモーダルインタラクション分析では,実世界に おける分析の概念を適用可能としつつも,その枠組 みは必ずしもそのまま利用できるわけではなく,遠 隔の分析概念も考慮しなければならないことが指摘 されている[13]. 本研究では,遠隔環境で実施される協調学習を前 提としたCSCL 分析支援環境を提案している.その 機能は実世界での様々なインタラクション分析でも 利用されてきた分析ツールに備えられた機能も提供 し,遠隔コミュニケーション場面を対象にした分析 を可能としている.この環境での知見を積み上げて いくことで,遠隔コミュニケーション固有の分析概 念を明らかにすることにも寄与すると考えている. また,多人数マルチモーダルインタラクション分 野では機械学習が主たる分析手法として用いられて いる.様々なデータを学習させ,高次なインタラク ションを捉えるこれらの研究の多くは,入力するデ ータとしてデータ整形作業を経た発話区間や視線対 象といったInteraction Primitive なデータが扱われて いる.我々が提案する分析支援環境では,データの 解釈パターン抽出機能に基づく共同注視や相互注視 といった高次なイベント情報を,データ整形作業を 要することなく扱うことができるため,多人数マル チモーダルインタラクション分析に必要な情報を容 易に整えることができる. このように,本環境は多人数マルチモーダルイン タラクション分野で提案されている分析手法を適用 し,協調学習インタラクション分析に応用可能な仕 組みを備える設計となっており,当該分野の知見を 高めていく観点から,有望な分析支援環境を実現し 図7 アノテーション付与機能・解釈パターン抽出機能のインタフェース

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ていると考える.

6.2 CSCL 分析支援環境としての展望

分析支援環境では協調学習参加者へのロール割り 当て機能を持つ.これに基づき定義される解釈パタ ーンは,分析対象とするセッションに閉じたもので はなく,同じロールを担う参加者で構成される他の 協調学習インタラクションでも,この解釈パターン 処理を適用できるため,ロールに応じた学習支援ツ ール開発などに応用できる可能性がある. 加えて,分析者により規定される解釈パターンは, インタラクションの階層モデルに基づきルール化さ れた明示的な表現形式をとっているため,分析者間 でパターン抽出方法を比較・共有し,再利用可能な 基盤を提供している.今後,これらの実現可能性を 検証していきたいと考えている.

6.3 統合プラットフォームの有用性

CSCL,多人数マルチモーダルインタラクションの 両分野において,これまでに多くの研究がされてき た.我々が提案しているCSCL システム開発環境に よる独自の学習ツール開発と,CSCL 分析支援環境 上でのCSCL 分析をサポートする本プラットフォー ムは,各活動の低次な作業負担を軽減するようにデ ザインされている.これにより,本プラットフォー ム上で開発者・分析者ともに,支援対象とする協調 学習活動に対する学習ツール開発,協調学習インタ ラクション分析に専念することができる. これに加えて,プラットフォームは各活動の知見 を反映し,連続性を担保するように設計されており, 開発環境で設定された様々な高次データを分析支援 環境上で直接扱えるため,分析者はデータ整形作業 を必要とすることなく協調学習インタラクション分 析に注力できる. このように,各活動の低次なデータレベルの処理 を備えた本プラットフォームは,開発者・分析者が 高次な情報を捉えることに専念できるだけではなく, その知見が次の活動へと反映されるというCSCL シ ステムライフサイクルの循環による持続的な知見の 積み上げに寄与する基盤であると考えている.

7 おわりに

本研究では,多人数マルチモーダルインタラクシ ョン分野の知見を組み入れたCSCL システム実現に 向けて,CSCL システム開発・運用・分析活動を支援 する言語・非言語アウェアな統合プラットフォーム を提案した.本稿では,主に分析活動支援に焦点を 当て,様々なデータを管理し,多人数マルチモーダ ルインタラクション分野の知見を参照した機能を提 案するとともに,CSCL システム開発への接合性を 担保するCSCL 分析環境を提案した. 今後は,分析者に提供する機能を充実させ,分析 で得られた知見のCSCL システム開発への組み入れ を実現し,プラットフォームとしての環境をより整 えるとともに,本プラットフォーム上でのCSCL シ ステム開発・運用・分析を通してその知見を積み上 げていきたい.

参考文献

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表 1  インタラクションの階層的解釈モデル

参照

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