StageIIIb以上の若年者肺癌(45歳以下)
と非若年者肺癌の比較検討
山梨厚生病院 呼吸器内科 池田華子 岩井和郎呼吸器外科 加賀重亜喜 虎走英樹
有泉憲史 橋本良一
病理学 三俣昌子
1)はじめに 近年肺癌が増加する中で、若年者 肺癌も相対的に増加してきており、その 報告も増えてきている。 一般的に若年者肺癌は、 ①腺癌の占める割合が多い ②女性の頻度が高い ③進行が速く、予後が悪い と言われているが、今回我々は45歳以 下を若年者肺癌とし特にStage皿b以上 の腺癌に焦点をあて、若干の文献的考 察を加え比較検討したので報告する。 2)対象(表1) 平成6年6月から平成8年12月までの 2年半における原発性肺癌を対象とした。 45歳以下は4例で、全例腺癌であった。 46歳以上は49例で、腺癌49.0%・扁平 上皮癌30.6%・小細胞癌18.4%・大細 胞癌2.0%であった。 3)結果(表2∼4,図1.2) Stage皿b以上の腺癌について、 若年者は3例で34歳、41歳、45歳で 男:女=2:1であった。非若年者は10 例で62歳から82歳まで平均72歳男:女 =6:4であった。 臨床病期は、若年者では皿b:IV= 1:2、非若年者では皿b:rv ・3:7であ った。 喫煙は若年者3例中1例でB.1二600、 非若年者では喫煙者5例で平均B.1== 738であった。 発見動機は若年者3例とも、胸痛・咳 漱・喀疾など自覚症状であり、これまで検 診でレントゲン検査をしたことはなかった。 非若年者では胸痛・喀疾など原発巣によ る自覚症状が6例、麻痺など転移巣によ るものが2例、検診によるものが2例であっ た。 病悩期間は若年者1∼10ヶ月(平均 8.7ヶ月)、非若年者では2日∼5ヶ月 (平均2ヶ月)と若年者に病悩期の長さが 目立った。(表2) 原発部位は2例が末梢、1例が中枢で、 非若年者でも7例が末梢であった。胸水貯留は若年者に3例とも認められ、非若 年者でも9例に認められた。 発見時若年者においては肺外転移は なかったが、非若年者では7例に認めら れていた。肺内転移は若年者2例、非若 年者6例に認めた。癌性リンパ管症は若 年者1例、非若年者6例に認めた。(表3) 腫瘍マーカーは、CEAに関して初診 時から末期への変動など特に若年者、非 若年者間で有意差は認められなかった。 TP/Alb値は、末期の平均値におい て若年者が7.1/3.4、非若年者が 5.6/2.9と若年者のほうが栄養状態 が保たれていた。治療は若年者では3例、 非若年者ではPerformance Statusの 保たれている6例に胸膜癒着術を施行し 全例効果を得たが、化学療法(EC)は若 年者ではNC:PD=1:2,非若年者で はNC:PD=2:4とあまり効果は認めら れなかった。 予後は若年者が平均8.7ヶ月、非若 年者が平均11.4ヶ月と若年者の方が予 後が悪かった。(表4) 非若年者肺癌の発育度曲線(図1): 胸部単純写真から求めた受診時の腫瘍 の容積を1とし、横軸に病日数、縦軸に発 育倍率を示した。非若年者の発育度曲 線は緩やかで、doubling timeは平均 83.6日であった。 若年者肺癌の発育度曲線(図2):非 若年者と比べて発育度曲線は急峻で、 doubling timeの平均は17.5日と発育 速度は速かった。 4)考察 当院では若年者肺癌は4例と少数 例ではあったが、若年者肺癌は一般に腺 癌56.8%、小細胞癌17.5%、扁平上 皮癌13.5%と腺癌の占める割合が高 い1)2)3)4)6)7)とされるが、当院でも全例腺 癌であった。 男女比は一般に若年者では2.75対1、 全肺癌では3.56対1と若年者の方が女 性の比率が高い1)2)3)4)6)7)とされるが、当 院では3対1と全肺癌の3.13対1に比し て女性の比率は高くなかった。 臨床病期分類では進行癌が多い3)5)6) 7)8)とされるが、当院でもStage皿b以上が 75%と多く認められた。 St age皿b以上の検討では、病悩期 が非若年の2ヶ月と比べ8.3ヶ月と長く、 若年者肺癌が発見時既に進行癌となっ ていることの多い背景として、Patient’s delay、 Doctor’sdelayすなわち、患 者側・医師側共に、呼吸器症状があるに も関わらず若年者ゆえに肺癌を疑いにく く診断が遅れることが考えられた。 腺癌そのものは、若年者でも高齢者 でもその生物学的特性に大きな差異はな く治療に対する反応性も全体として差異 がない6)と言われているが、当院の発育 度曲線の比較では若年者の発育度のほ うが速いと考えられた。 5)結語 若年者肺癌は発育度が速いと共に 一25一
診断が遅れることが多いと考えられ、若年 者肺癌に対して良好な予後を得るために は特に、検診による早期発見と医師・患 者側の認識・啓蒙が必要と考えられた。 文献 1)下野高嗣,宮村一男,竹内義広 他:40歳未満若年者原発性肺癌手術症 例の検討.日胸,1985年,XLIV 5,