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ℚ上ランク2のガロア拡大体に関するKronecker-Weberの定理の類似について

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Academic year: 2021

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(1)

椙山女学園大学

?上ランク2のガロア拡大体に関する

Kronecker-Weberの定理の類似について

著者

吉本 明宣

雑誌名

社会とマネジメント = Journal of society and

management, Sugiyama Jogakuen University : 椙

山女学園大学現代マネジメント学部紀要

18

ページ

111-118

発行年

2021-03-19

(2)

はじめに

ℚ上のアーベル拡大に関する Kronecker-Weber の定理[1]とは、「ℚ上のアーベル拡大 体は適当な円分体に含まれる」というものであった。その後 Kroneker は「Kronecer の青 春の夢」と題する虚㧞次体上のアーベル拡大に関する予想を発表した。その内容は「虚 㧞次体上のアーベル体は虚㧞次体に対応する楕円曲線の等分値を添加した体に含まれ る」というものであった。この問題は、20 世紀に入り高木の類体論によって解決された。 また、代数体上のアーベル拡大体を適当な関数の等分値を添加することによって構成す るという問題は、20 世紀の半ばに志村・谷山・ヴェイユの虚数乗法論という形で部分的 ではあるが一応の決着を見た。 これらの結果はすべてある代数体上のアーベル拡大に関するものであったが、虚数乗 法をもたない楕円曲線の等分拡大体のアルティンのL関数の極限と保形形式が対応す るという問題(谷山・志村予想)の提出により、非アーベル拡大を深く研究する状況が 生まれた。虚数乗法を持たない有理数体上の楕円曲線を考えると、Seere の結果[3]によ れば、その等分拡大体の考察は、ℚ上のランク 2 のガロア拡大体の考察に帰着された。 他方で、Wiles は環論を深く研究することによって谷山・志村予想の一部を解決し、その 結果として Fermat 予想の解決に至った。 以上の動機から、我々の目的は、ℚ上ランク㧞のガロア拡大体を、楕円曲線の拡張で Abstract

The purpose of this paper is to make the structures of Galois groups of Galois extension fields over ℚ with rank2 clear. We use P functions which are generalizations of elliptic functions. We prove the theorem explained above applying the theorem concerning complex multiplication. We can embed Galois extension fields over ℚ with rank2 in equal extension fields over appropriate division quaternion algebras. キーワード:□ Kronecker-Weber の定理  □等分拡大  □非可換類体論       □谷山・志村予想     □不定符号  □四元数体       □ランク2のガロア拡大  □虚数乗法  □四元数乗法

上ランク2のガロア拡大体に関する

Kronecker-Weber の定理の類似について

吉本明宣

AkinoriYOSHIMOTO

(3)

●吉本明宣 ℚ 上ランク2のガロア拡大体に関する Kronecker-Weber の定理の類似について あるエアロビック多様体の等分拡大体の部分体として実現することである。そのような 考察によってゼータ関数を容易にとらえることが期待できる。 第㧝節では,四元数体上のそれに対応するエアロビック多様体の等分拡大体を考察 し、そのガロア群の構造を明らかにする。第 2 節では、ℚ上のランク㧞のガロア拡大体 を四元数体上のそれに対応するエアロビック多様体の等分拡大体への埋め込みを実現 する。

上のランク2のガロア拡大体

𝐾を有理数体ℚ上のガロア拡大体と、ガロア群𝐺𝑎𝑙(𝐾 ℚ⁄ )の表現のランクは㧞であると する。そのようなℚ上のガロア拡大をℚ上のランク㧞のガロア拡大ということにする。 この節で扱うのは、ランク㧞のガロア拡大の中で次のような特殊なタイプのものであ る。考察の対象となるガロア拡大は、四元数体𝐵に対して、𝑃関数と𝑑𝑃関数の𝑛等分値を 添加してできる四元数体𝐵𝑛である。この章の目的は、有理数体ℚ上のアーベル拡大に対 する類体論の類似を、ガロア拡大𝐾𝑛⁄ℚではなく、四元数体𝐵のガロア拡大𝐵𝑛⁄𝐵に対し て考えることである。 そこで、ある代数体𝑘上で定義された四元数体𝐵上の係数ガロア拡大を考える。𝑘上の ガロア拡大体𝐾に対して、𝐵𝐾 = 𝐵 ⊗𝑘𝐾を考えると、𝐵 ⊂ 𝐵𝐾に対して、通常のガロア理 論を適用することができる。具体的には、ガロア拡大𝐾 𝑘⁄ のガロア群を𝐺としたとき、 ガロア理論によれば、𝐺の部分群𝐻に対して中間体𝑘′, (𝑘 ⊂ 𝑘′ ⊂ 𝐾),が対応し、𝐻が正規 部分群であればガロア拡大𝐾 𝑘⁄ ′のガロア群は𝐻である。これを今考えている係数ガロア 拡大に適用する。𝐵𝐾は𝐵のガロア拡大とみなすことができ、そのガロア群は𝐺である。 また、𝐵𝑘′ = 𝐵 ⊗𝑘𝑘′とおけば、𝐵𝑘′は𝐵と𝐵𝐾の中間四元数体と考えられ、次の対応が得 られる。 𝐵𝐾⁄𝐵𝑘′⇔ 𝐻 さらに、𝐻が𝐺の正規部分群であれば、拡大𝐵𝐾⁄𝐵𝑘′はガロア拡大である。 [5]で定義した𝑄上の不定符号四元数体𝐵 = (𝑁,−𝑞 ℚ )を考える。ただし、𝑁は異なる奇数 個の素数の積であり、𝑞は𝑁と互いに素な素数である。そのとき、𝐵の無限素点での完備 化は、𝑀2(ℝ)である。ゆえに、𝑀2(ℝ)と𝐵および𝐵のひとつの整環𝑅に対して、第㧠章で 扱った𝑃関数を考えることができる。同様にして、𝑑𝑃関数も定義できる。また、整環𝑅 に対して、その𝑛等分点𝑅(𝑛)を (1.1) 𝑅(𝑛) = {𝑋 ∈ 𝑀2(ℝ)|𝑃 (𝑛 ∙ 𝑋) = 㱣, 𝑑𝑃 (𝑛 ∙ 𝑋) = 㱣} と定義すると、𝑅(𝑛)は

(4)

(1.2) 𝑅(𝑛) = {𝑃 (𝑚), 𝑑𝑃 (𝑚), (𝑚 ∈ 𝑅 𝑛𝑅⁄ )} となる。 まず、次の補題を証明する。 補題 1.1 𝐵を体𝑘上の四元数体とし、𝐾を𝑘の代数的拡大体とするとき、𝐵𝐾 = 𝐵 ⊗𝑘𝐾 は𝐵の代数的拡大四元数体である。 証明 𝐵𝐾の任意の元を𝑒とすると、第㧝章より、𝑒 = 𝑥 + 𝑦𝑎 + 𝑢𝑏 + 𝑣𝑎𝑏, (𝑥, 𝑦, 𝑢, 𝑣 ∈ 𝐾)と おくことができる。𝑛を𝐵𝐾の被約ノルムとし、𝑛𝐾 𝑘 を代数的拡大𝐾 𝑘⁄ におけるノルムと し、 𝑛𝐾 𝑘 (𝑒) = 𝑛𝐾 𝑘 (𝑥) + 𝑛𝐾 𝑘 (𝑦)𝑎 + 𝑛𝐾 𝑘 (𝑢)𝑏 + 𝑛𝐾 𝑘 (𝑣)𝑎𝑏 と定義する。定理 1.1 より、任意の𝑂でない𝐵𝐾の元𝑒に対して、𝑛(𝑒) ≠ 0を示せばよい。 今、𝐵は四元数体であり、𝑛𝐾 𝑘⁄ (𝑒)は𝑂でないので、𝑛 ∘ 𝑛𝐾 𝑘⁄ (𝑒) ≠ 0である。 𝑛 ∘ 𝑛𝐾 𝑘⁄ (𝑒) = 𝑛𝐾 𝑘⁄ ∘ 𝑛(𝑒)࡛࠶ࡿࡢ࡛ࠊ𝑛(𝑒) ≠ 0࡛࠶ࡿࠋ 㸦q.e.d.㸧 𝑅をレベル㧝の𝐵の整環とするとき、 (1.3) 𝑅(𝑛) = 𝑅 𝑛𝑅⁄ ≅ 𝑀2(ℤ 𝑛ℤ⁄ ) が成立する。また、𝑛等分点の集合𝑅(𝑛)に対して、逆元をもつ𝑅(𝑛)の元全体を𝑅(𝑛)∗とす ると、 (1.4) 𝑅(𝑛)∗= (𝑅/𝑛𝑅)∗≅ 𝐺𝐿2(ℤ/𝑛ℤ) となることがわかる。 そこで、𝑚 ∈ 𝑅, 𝑚′∈ 𝑅(𝑛)とすると、𝑚𝑚′∈ 𝑅(𝑛)であり、エアロビック多様体𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ の𝑛等分点(𝑃 (𝑚′), 𝑑𝑃 (𝑚′))の𝑚倍写像を次のように定義できる。 (1.5) 𝑚 ∗ (𝑃 (𝑚′), 𝑑𝑃 (𝑚′)) = (𝑃 (𝑚𝑚′), 𝑑𝑃 (𝑚𝑚′)) エアロビック多様体がこのような性質を持つことを𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ は四元数乗法を持つとい うことにする。 𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ は四元数乗法を持てば、𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ の自己同型写像全体である𝐸(𝑀2(ℝ) 𝑅)⁄ は 𝑅と同型である。したがって、𝐸(𝑀2(ℝ) 𝑅)⁄ ⊗ℤℚ = 𝐵になることがわかる。 𝐵に𝑅(𝑛)の元全体を添加した体を𝐵𝑛とするとき、次の命題が成り立つ。 命題 1.1 拡大𝐵𝑛⁄𝐵はガロア拡大である。 証明 上で述べたことから、𝑅(𝑛)は𝐵𝑛⁄𝐵の自己同型群と一致することがわかる。ゆえ に、拡大𝐵𝑛⁄𝐵はガロア拡大である。 (q.e.d.) 命題 1.2 𝐺(𝑛) = 𝐺𝑎𝑙(𝐵𝑛⁄ )𝐵は(𝑅/𝑛𝑅)∗の部分群と同型である。 証明 𝑋, 𝑌を𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ に含まれる𝐵𝑛の元とし、𝑚 ∈ 𝑅とするとき、𝐺(𝑛)の元𝜎は準同型

(5)

●吉本明宣 ℚ 上ランク2のガロア拡大体に関する Kronecker-Weber の定理の類似について 写像であるので、 (1.6) 𝜎(𝑋 ⊕ Y) = 𝜎(𝑋) ⊕ 𝜎(𝑌 ), 𝜎(𝑚 ∗ 𝑋) = 𝑚 ∗ 𝜎(𝑋) が成り立つ。𝜎は𝑅(𝑛)∗に作用し、 (1.7) 𝜎: (𝑃 (1 𝑛), 𝑑𝑃 ( 1 𝑛)) ↦ (𝑃 ( 𝑚 𝑛), 𝑑𝑃 ( 𝑚 𝑛)) となる𝑚 ∈ 𝑅,𝑚𝑛 ∈ 𝑅(𝑛)∗が決まる。すると、他の𝑅(𝑛)∗の元 (𝑃 ( 𝑚′ 𝑛), 𝑑𝑃 ( 𝑚′ 𝑛))への𝜎の作 用は、 (1.8) 𝜎(𝑃 (𝑚𝑛), 𝑑𝑃 (𝑚𝑛)) = 𝜎 (𝑚∗ (𝑃 (1𝑛), 𝑑𝑃 (1𝑛))) = 𝑚’ ∗ 𝜎(𝑃 (1 𝑛), 𝑑𝑃 ( 1 𝑛)) = 𝑚’ ∗(𝑃 (𝑚 𝑛 ), 𝑑𝑃 ( 𝑚 𝑛 )) = (𝑃 ( 𝑚′𝑚 𝑛 ), 𝑑𝑃 ( 𝑚′𝑚 𝑛 )) ゆえに、任意の𝐺(𝑛)の元𝜎は(1.8)の作用によって、すべての等分点への作用が決ま る。したがって、𝜎を𝜎𝑚とおくことができる。 𝜎𝑚は(5.7)から準同型写像であることがわかり、明らかに㧝対㧝写像でもある。した がって、𝐺(𝑛) → (𝑅/𝑛𝑅)∗となる㧝対㧝準同型写像が存在し、𝐺(𝑛)は(𝑅/𝑛𝑅)∗の部分群と 同型である。 (q.e.d.) 𝛼 < 0, 𝛽 > 0とすると、𝛼 = ( √𝛼 0 0 −√𝛼), 𝑏 = ( 0 1 𝛽 0)とおくことによって、 (1.9) 𝐵 = ℚ + ℚ𝑎 + ℚ𝑏 + ℚ𝑎𝑏 と表すことができ、 (1.10)𝐵 = {(𝛽𝑤 𝑧 𝑤𝑧 )|𝑥, 𝑦, 𝑢, 𝑣 ∈ ℚ} , (𝑧 = 𝑥 + 𝑦𝑎, 𝑧 = 𝑥 − 𝑦𝑎, 𝑤 = 𝑢 + 𝑣𝑎, 𝑤 = 𝑢 − 𝑣𝑎) (1.11) 𝐵 = 𝐹 + 𝐹𝑏, (𝐹 = ℚ + ℚ𝑎) と表すこともできる。 いま、有理数体ℚにエアロビック多様体𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ の𝑛等分点を添加した体を𝑘𝑛とおき、 𝐵にエアロビック多様体𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ の等分点を添加した体を𝐵𝑛とおく。また、虚 2 次体𝐹 に対して、𝐹の整数環𝑂によって定義される楕円曲線ℂ 𝑂⁄ の𝑛等分点を添加した体を𝐹𝑛と おく。そして、以下のような関係を考える。 (1.12) ℚ ⊂ 𝐹 ⊂ 𝐹𝑛⊂ 𝑘𝑛, 𝐹 ⊂ 𝐵 ⊂ 𝐵𝑛, 𝑘𝑛⊂ 𝐵𝑛

(6)

ℚの素数𝑝に対して、𝑝を割る𝐹の任意の素イデアルを℘とし、℘を割る𝐹𝑛の任意の素イ デアルを℘′、℘′を割る𝑘𝑛の任意の素イデアルを℘、℘を割る𝐵の任意の既約左イデアル を𝐽、℘′を割る𝐵𝑛の任意の既約左イデアルを𝐽′とおく。𝐹𝑛⁄𝐹のフロベニウス写像𝐹𝑟℘′ は𝐹𝑛⁄𝐹がアーベル拡大であることから、𝐹𝑟℘とおくことができる。また、ガロア拡大 𝐵𝑛⁄𝐵についても、フロベニウス写像𝐹𝑟𝐽′を考える。このとき、次の補題が成り立つ。 補題 1.2 フロベニウス写像𝐹𝑟𝐽′は𝐹𝑟𝐽とおくことができる。 証明 𝐵 = 𝐹 + 𝐹𝑏は四元数体であり、𝐵𝑛は𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ の𝑛等分点を添加した体である。 また、𝑀2(ℝ) = ℂ + ℂ𝑏, 𝑅 = 𝑂 + 𝑂𝑏であり、𝐹𝑛は𝐹にℂ 𝑂⁄ の𝑛等分点を添加した体であ ることに注意すると、𝐵𝑛= 𝐹𝑛+ 𝐹𝑛𝑏であることがわかる。 さらに、𝐽′の𝐵𝑛⁄𝐵における任意の共役左イデアルを𝐽 ̃′とおき、共役写像𝜎によって 𝜎(𝐽′) = 𝐽 ̃′であるとすると、𝐹𝑟𝐽′= 𝜎𝐹𝑟𝐽′𝜎−1であるので、 (1.13) 𝐹𝑟𝐽 ̃′(𝐵𝑛) = 𝜎𝐹𝑟𝐽′𝜎−1(𝐵𝑛) = 𝜎𝐹𝑟𝐽′𝜎−1(𝐹𝑛) + 𝜎𝐹𝑟𝐽′𝜎−1(𝐹𝑛)𝑏 = 𝐹𝑟𝐽′(𝐹𝑛) + 𝐹𝑟𝐽′(𝐹𝑛)𝑏 = 𝐹𝑟𝐽′(𝐵𝑛) となる。これは、𝐵𝑛⁄𝐵のフロベニス写像𝐹𝑟𝐽′は𝐵の左イデアル𝐽によってのみ決まるこ とがわかるので、フロベニウス写像𝐹𝑟𝐽′は𝐹𝑟𝐽とおくことができる。 (q.e.d.) さて、命題 1.2 で見たようにガロア群𝐺(𝑛) = 𝐺𝑎𝑙(𝐵𝑛⁄ )𝐵は(𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗の部分群と同型で あったが、𝐺(𝑛)の Frobenius 写像𝐹𝑟𝐽を観察することによって、より詳しく𝐺(𝑛)の構造を 見ていく。 ここで、虚数乗法の主定理を引用する。 定理 1.1(Shimura[1])𝐾を整数環𝑅𝐾をもつ虚 2 次体とし、𝐸 ℂ⁄ を𝐸𝑛𝑑(𝐸) ≅ 𝑅𝐾である ような楕円曲線とし、𝜎(∈ 𝐴𝑢𝑡(ℂ))を複素数体の自己同型、𝑠(∈ 𝐴𝐾∗)を[𝑠, 𝐾] = 𝜎|𝐾𝑎𝑏を 満たす𝐾のイデールとする。ここで、[𝑠, 𝐾]は素元𝑠に対応する𝐾の Frobenius 写像であ る。さらに、複素解析的同型𝑓 : ℂ 𝑎⁄ ≅ 𝐸(ℂ)を固定する。ここで、𝑎はܭの分数イデアル である。このとき、 (1.14) 𝐾 𝑎⁄ ←←←←←←←→ 𝑠−1 𝐾 𝑠⁄ −1𝑎 ↓𝑓 ↓𝑓′ 𝐸(ℂ)←←←←←←←←→ 𝐸 𝜎 𝜎(ℂ) を可換とするような(𝑓と𝜎に依存する)複素解析的同型𝑓′: ℂ 𝑠⁄ −1𝑎≅ 𝐸𝜎(ℂ)が存在する。 定理 1.2 𝐺(𝑛) = 𝐺𝑎𝑙(𝐵𝑛⁄ )𝐵は(𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗と同型である。 証明 命題 1.2 より,𝐺(𝑛)は(𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗の部分群であることがわかっているので、𝐺(𝑛)か

(7)

●吉本明宣 ℚ 上ランク2のガロア拡大体に関する Kronecker-Weber の定理の類似について ら(𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗への写像が全射であることを言えばよい。 今、𝐵と𝑅に関する𝑃関数を考え、そのℂへの制限を考える。(1.11)より、𝐵 = 𝐹 + 𝐹𝑏, (𝐹 = ℚ + ℚ𝑎)であるが、虚㧞次体𝐹の整数環を𝑂𝐹とし、𝑅 = 𝑂𝐹+ 𝑂𝐹𝑏とする。その とき、𝑃関数は 𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ ≅ 𝐸(𝑀2(ℝ)) のように、エアロビック多様体𝐸̃(𝑀2(ℝ))と同型である。𝑃関数のℂへの制限は𝑀2(ℝ) 𝑅⁄ では、ℂ 𝑂⁄ 𝐹への関数の制限となる。このとき、𝑓 : ℂ → 𝐸,(ここで、𝐸は𝑀2(ℂ)内のℂ 𝑂⁄ 𝐹 と同型な多様体)を𝑃 |𝐶= 𝑓となる関数とすると、虚数乗法の定理 1.1 より、 𝜎(𝑓 (𝑥)) = 𝑓′(𝑥 𝑠), (𝑥 ∈ 𝐹 𝑎𝑏 ) となる関数𝑓′: ℂ → 𝐸𝜎,(ここで、𝐸𝜎は𝑀2(ℂ)内の(ℂ 𝑂⁄ 𝐹)𝜎と同型な多様体)が存在す る。ここで、素数𝑝に対応する素元を𝜋として、𝜋で決まる有理数体ℚのイデールを𝜋で表 すとすると、𝑝が㧝次の素数であるか㧞次の素数であるかに従って、𝜋 = 𝑠𝑠′または𝜋 = 𝑠 となる。ここで、𝑠′は𝑠の共役である。 [𝑠, 𝐾]を素元ݏに対応する𝐹の Frobenius 写像とし、𝜎′(∈ 𝐴𝑢𝑡(ℂ))を複素数体の自己同型 で[𝑠, 𝐾] = 𝜎′|𝐹𝑎𝑏とすると、𝜋 = 𝑠𝑠′か𝜋 = 𝑠に従って、 (1.15) 𝜎 ∘ 𝜎′(𝑓 (𝑥)) = 𝑓′(𝑠𝑠𝑥′) = 𝑓′( 𝑥 𝜋)または𝜎(𝑓 (𝑥)) = 𝑓′( 𝑥 𝜋) となることがわかる。ここで、𝜎 ∘ 𝜎′はmod 𝑝で定義される写像であることに注意する。 他方、𝐵の最大等分拡大体を𝐵𝑇とし、素数𝑝に対して、規約左イデアル𝐽に対応する𝐵 のイデールを𝐿で表すことにすると、𝜆(∈ 𝐴𝑢𝑡(𝑀2(ℝ))に対して、[𝐿, 𝐵] = 𝜆|𝐵𝑇となる𝐿 に対応する𝐵の Frobenius 写像[𝐿, 𝐵]が存在することになる。ここで、𝐵𝑇はℚのランク㧞 の最大ガロア体であるとする。𝐿の共役を𝐿′とすると、𝐿𝐿′= 𝜋となることから、 (1.16) 𝜆 ∘ 𝜆′(𝑓 (𝑥)) = 𝑓′(𝜋𝑥), (𝑥 ∈ (𝑂𝐹⁄𝑛𝑂𝐹)∗) が成立する。ここで、𝜆′は𝜆の共役写像である。[𝐿, 𝐵]=𝜆′|𝐵𝑇であることに注意する。 𝐵 = 𝐹 + 𝐹𝑏、𝑃 |= 𝑓であったので、(1.15)より、 (1.17) 𝜆 ∘ 𝜆′(𝑃 (𝑋)) = 𝑃′(𝑋𝜋), (𝑋 ∈ (𝑅/𝑛𝑅)∗) となる。ここで、𝑃′は楕円関数𝑓′に対応する𝑃関数である。(1.14)、(1.17)より、 (1.18) 𝜆(𝑃 (𝑋), 𝑑𝑃 (𝑋)) = (𝑃(𝑋𝐿−1), 𝑑𝑃(𝑋𝐿−1)), (𝑋 ∈ (𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗) 𝐿に対応する既約左イデアル𝐽は(𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗のすべての類に対して存在するから、 (𝑅 𝑛𝑅⁄ )∗への Frobenius 写像の全射が証明できた。

(8)

上のランク 2 のガロア拡大

この節では、ℚ上のランク㧞のガロア拡大に関する Kronecker-Weber の定理の類似 を 考 え る 。𝐾をℚ上 の ラ ン ク 㧞 の ガ ロ ア 拡 大 体 で 、𝐾 ℚ⁄ の ガ ロ ア 表 現 𝜌 は 奇 (det 𝜌 (複素共役) = −1)とする。このとき、𝜌 は不定符号四元数体に自然に作用する。 したがって、𝐵が不定符号四元数体であれば、𝐵𝐾= 𝐵 ⊗𝐾を考えることができる。こ の節では、𝐾を適当なℚ上の四元数体ܤのܭへの係数拡大体を考え、それが含むܤにܲ関 数と𝑑𝑃関数の𝑛等分値を添加した体𝐵𝑛に含まれることを証明する。 定理 2.1 𝐵 = (𝑁,−𝑞 ℚ )とし、ℚ(√𝑁), ℚ(√−𝑞) ⊄ 𝐾とする。そのとき、ܭで決まる自然数 𝑚に対して、𝐵𝐾は𝐵𝑚に含まれる。 証明 𝐾はℚ上のランク 2 のガロア拡大体なので、𝐾 ℚ⁄ のガロア群𝐺は𝑆𝐿(2, ℂ)の有限 な部分群と同型である。𝐺の元のすべてを対角化した元からなる集合を (2.1) 𝐺0= {(𝑎 00 𝑏)|𝑎, 𝑏 ∈ ℂ} とする。𝐺の位数は有限であるので、 (2.2) 𝐺0,1= {𝑎 ∈ ℂ |(𝑎 00 𝑏)∈ 𝐺0}, 𝐺0,1= {𝑏 ∈ ℂ |(𝑎 00 𝑏)∈ 𝐺0} とすると、𝐺0,1, 𝐺0,2を含む適当な有限アーベル群𝐺̃0,1, 𝐺̃0,2が存在する。𝐺̃0,1, 𝐺̃0,2をガロ ア群に持つℚ上のガロア拡大体を𝐾1,𝐾2とすると、[1]の Kronecker-Weber の定理より、 𝐾1⁄ , 𝐾ℚ 2⁄ℚのガロア群は、適当な自然数𝑚1, 𝑚2に対して、(ℤ/𝑚1ℤ)∗, (ℤ/𝑚1ℤ)∗に含まれ る。ゆえに、𝑚1, 𝑚2の最小公倍数を𝑚とすると、𝐺は𝐺0の共役からなる群であるので、 𝐺 ⊂ 𝐺𝐿(2, ℤ 𝑚ℤ⁄ )となる。定理 1.2 より、𝐵𝑚⁄𝐵のガロア群は𝐺𝐿(2, ℤ/𝑚ℤ)(≅ (𝑅/𝑚𝑅)∗) であるので、𝐵𝐾は𝐵𝑚に含まれる。 (q.e.d.)

おわりに

第㧞節の結果によって、ℚ上ランク㧞でガロア表現が奇のガロア拡大体のゼータ関数 は、ある不定符号四元数体上のガロア群が𝐺𝐿(2, ℤ 𝑛ℤ⁄ )に同型なガロア拡大体の部分体 のゼータ関数の考察に帰着される。そこでは、四元数体の整環上の Poisson の和公式が 存在し、ゼータ関数の関数等式が得られる。また、ℚ上ランク㧞でガロア表現が偶のガ ロア拡大体のゼータ関数は、ある定符号四元数体上のガロア群が𝐺𝐿(2, ℤ 𝑛ℤ⁄ )に同型な ガロア拡大体の部分体のゼータ関数の考察に帰着される。これらが証明されれば、ℚ上 ランク2のガロア拡大に対するラングランズ予想が解決されたことになる。 また、有理数体以外の代数体上で同様なことを考察しようとすると、ܲ関数のような 適当な関数が見当たらない。有理数体以外の代数体上のランク 2 のガロア拡大に対する

(9)

● 同様の理論は、類体論のような一般的な理論を構築せざるを得ず、極めて困難な問題と なることが予想される。 さらに、この論文では述べられなかったが、この論文の結果は四元数体の整環の既約 左イデアルの分解法則と深く関係し、このことが類体論の類似となっていることを意味 している。 吉本明宣 ℚ 上ランク2のガロア拡大体に関する Kronecker-Weber の定理の類似について 参考文献

[1] L. Kronecer: Uber die algebraish auflosbaren Gleichungen, Monatsber. Kgl. Preuss. Acad. Wiss. Berlin, 1992.

[2] G. Shimura: Introduction to the arithmetic theory of automorphic functions, Iwanami Shoten and Princeton University Press, 1971.

[3] J.-P. Serre: Propriétés galoisiennes des points d ordre fini des courbes elliptiques, Invent. Math. 15 (1972), 259‒331. [4] 吉本明宣:「行列変数の有理型関数について」『社会とマネジメント』 10 (2) (2011),椙山女学園大学現代マネジメント学部,pp. 21‒30. [5] 吉本明宣:「有理数体上の四元数体のガロア拡大」『社会とマネジメント』 12 (2013),椙山女学園大学現代マネジメント学部,pp. 67‒76. 【著者略歴】

吉本 明宣

(よしもと あきのり) 1959年 愛知県生まれ 所 属・現 職 椙山女学園大学現代マネジメント学部現代マネジメント学科・准教 授 最終学歴・学位 名古屋大学大学院理学研究科博士課程後期課程数学専攻満期退学・ 修士(理学) 所 属 学 会 日本数学会 主 要 業 績 「行列変数の解析関数について」『社会とマネジメント』9(1) (2011),椙山女学園大学現代マネジメント学部,pp. 57‒70. 「行列変数の有理型関数について」『社会とマネジメント』10(2) (2011),椙山女学園大学現代マネジメント学部,pp. 21‒30. 「有理数体上の四元数体のガロア拡大」『社会とマネジメント』12 (2013),椙山女学園大学現代マネジメント学部,pp. 67‒76.

参照

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