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タイ語形容詞の意味と構文 : 日本語との対照

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Academic year: 2021

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(1)

タ イ語 形 容 詞 の 意 味 と構 文

一 日本語 との対照一

Semantic and Syntactic Analysis of Thai abjectives

In Contrast with Japanese —

Hiroshi

Tanaka

For the contrastive

analysis of vocabulary,

especially that of

adjec-tives, several points need to be noted. The first is the identification

of

the word. In this paper, some of the syntactic features of Thai adjectives

will be discussed and then their distribution

in certain sentence patterns

will be compared with those of the Japanese language. Second, some of

the basic Thai abjectives will be contrasted with Japanese adjectives for

their overlaps and differences in meaning. Their synonyms will also be

considered.

In discussing

adjectives,

it is necessary

to take into account the

connotations,

both social and personal, of the words to be analyzed, since

the lack of such knowledge

may make ambiguous the discrepancies

in

the meanings of these words. In this regard, it should be emphasized that

the comparison

of vocabulary

should be done in such a way that the

understanding

of different cultures and their sense of values is deepened.

(2)

タ イ語 形 容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との対 照一

[要 旨]語 彙 に 関 す る対 照 研 究 で 、 形 容 詞 の 比 較 の場 合 、 い くつ か の 注 意

す べ き問 題 点 が あ る 。 まず 、 品詞 の 認 定 で あ り、次 に そ の 語 の もつ 意 味 範

囲 で あ る。 本 稿 で は タイ 語 の 形容 詞 の 統 語 的 な特 徴 を み た あ と、 い くつ か

の 構 文 に お い て ど の よ うに あ らわ れ るか を 日本 語 と比較 す る。 ま た 、 その

他 の統 語 的 な 問 題 と して補 足 成 分 や 反 対 語 、 品 詞 の 派 生 な どに つ い て もふ

れ る。 次 に 基 本 的 な 形容 詞 の もつ 意 味 範 囲 と 日本 語 との 意 味 の 重 な り、 区

別 、類 語 的 な 問 題 につ い て み て い くこ とに す る。

形 容 詞 を考 え る場 合 、 そ の 言葉 の もつ 社 会 的 、 日常 的背 景 に も とつ く発

想 、社 会 通 念 を知 る 必要 が あ る 。 そ う した事 実 に立 脚 した 認 識 を 欠 け ば 意

味 的 な ズ レ を 生 じる 危 険性 が 多分 に あ る 。 語 彙 の 比 較 を通 して さ らに 価 値

観 、文 化 の 理 解 に努 め る こ とが 大切 で あ ろ う。f

[キー ワ ー ド]タ イ語

形 容 詞

意 味 と構 文

意 味 範 囲

文 化 的 背 景

1.は

じめ に 一 日本 語 教 育 と対 照 研 究

外 国 人 日本 語 学 習 者 が ふ え る に つ れ て 、 学 習 者 の母 語 と 日本 語 との 比 較

研 究 は 、 教 育 上 か ら も重 要 な課 題 の 一 つ とな っ て きた 。 外 国 語 との 対 照 研

究 の対 象 と範 囲 、方 法 をめ ぐる議 論 は 、効 果 的 な 言 語 習 得 を考 え る うえ で

常 に 有効 な手 段 た り う るか とい う具 体 的 な 問 題 を提 起 して や ま な い 。 な お

未 整理 な 分 野 の 多 い な か で 、 経 験 的 に収 集 され た 多様 的 、 個 別 的 な 類 例 か

ら体 系 的 、一 般 的 な規 則 、 相 違 点 の 解 明 をめ ざす 対 照 研 究 の 最 終 的 課 題 は

具 体 的 に 両 言 語 間 の使 用 、構 造 の 違 い を知 る こ とに よ って 、背 景 と して の

文 化 、 発 想 の 理 解 に接 近 す る こ と で あ り、 さ らに 誤 用 例 の 収 集 分 析 ・研 究

な どに 関 連 し て 、 よ り簡 潔 な 中 間 言 語 を整 理 す る と同 時 に 、 目標 言 語 と学

習 者 母 語 との 相 互 干渉 を で き るだ け 少 な くす る こ とに あ る。

日 タ イ語 両 語 の 比較 対 照 に つ い て は 、 最 近 少 しず つ 発 表 さ れ て は い る も

の の 、 一 部 の 報 告 や 内 部 の 修 士 論 文 な ど を除 け ば 、 まだ 一 般 に は 目 に 触 れ

一30一

(3)

る こ との 少 な い 分 野 で あ ろ う。 い ず れ 、 タ イ 語 の 文 法 記 述 の研 究 と並 行 し

て 、 タ イ語 学 習 書 や 日本 語 の 母 語 別 教 材 の 開 発 等 の 作 業 を経 なが ら、 順 次

的 に積 み重 ね られ て い くもの と思 わ れ る。

さて 、対 照研 究 の 対 象 と して は 音 声 、語 彙 、 構 文 な どの 分 野 が あ るが 、

そ の 言 語 背 景 と して の 社 会 、 発 想 、習 慣 な どに つ い て の 理 解 も大 き く関 与

す る。 な か で も語 彙 と意 味 に 関 して は個 別 的 で もあ り、 ま た比 較 の 対 象 と

も な りや す い も の の 、 使 用 上 多 くの 問 題 が 残 され て い る。 本 稿 で は 基 本 的

な形 容 詞 語 彙 を例 に 統 語 的 な 問 題 、 意 味 発 想 の 違 い 、 運 用 上 の 注 意 な ど を

考 え て み る こ とに し た い 。 形 容 詞 は そ の 国 の 言 語 文 化 、習 慣 な ど を観 察 す

る上 で興 味 深 い だ け で な く、 他 の 品 詞 との 関 連 性 も あ る こ とか ら 、基 本 的

な語 彙 に関 す る 分 析 は極 め て 重 要 な もの とな ろ う。

2.品

詞 と構 文 の 諸 問 題

語 彙 の対 照研 究 の場 合 、 品詞 の 分 類 と呼 応 関 係 とい う こ とが 関 心 の 対 象

とな る もの の 、 明 瞭 な 線 引 き が 不 可 能 な場 合 が 多 い。 形 容 詞 の 場 合 も例 外

で は な く、核 とな る部 分 と、 周 辺 部 分 とで は 特 徴 の あ らわ れ か た に違 いが

み られ る 。 指 示 的 な概 念 の 強 い もの は名 詞 寄 りで あ ろ う し 、状 態 動 作 の 意

味 を表 す もの は 動 詞 寄 り と考 え る こ と もで き る。 い ず れ に せ よ 、析 出 され

る概 念 実 体 は 、 そ の 叙 述 対 象 に よっ て 多岐 に わ た る。

タ イ語 の 品 詞 分 類 に つ い て は タ イ 国学 士 院 編 纂 の 国語 辞 典 な ど に よれ ば

動 詞 、代 名 詞 、 名 詞 、 前 置 詞 、修 飾 詞 、接 続 詞 、 感 動 詞 の 七 品詞 に分 類 さ

れ る。名 詞 を修 飾 す る形 容 詞(kham-khunnasap)と

、動 詞 を修 飾 す る副 詞

(kriyaa-wisさet)は

同 一 形 で あ る こ とか ら、

通 常 この 二 つ を修 飾

詞(kham-wisさet)と 称 す る。 前 述 の辞 書 に よ れ ば 、kham-wiseetと

は 、

他 の 語 を組 み 立 て て(ま た は他 の 語 に添 え て)、変 わ った 意 味 内容

を表 して い くの に 用 い る品 詞 で 、 十 種 類 に 分 類 され る …

(4)

タ イ語 形 容 詞 の 意 味 と構 文一 日本 語 との 対 照 一

とあ る。

今 日の 権 威 あ る文 法 書 に もほ ぼ 同 様 の 定 義 と分 類 が 記 され て い る。

タ イ語 の 修 飾 形 容 とい う概 念 は 、prakう っp(組 み 立 て る 、添 え る)と い う

語 で 説 明 され る ほ か 、

概 念 理 解 を助 け る ため に しば しばkham-khayaayと

称 す る こ と もあ る。 こ のkhayaayは

拡 大 す る」 とい う意 味 で 、形 容 詞 は

名 詞 を拡 大 し 、 副 詞 は 動 詞 を拡 大 す る もの で あ る 。 そ し て 、十 種 類 とは 、

性 状 修 飾 詞 、時 間 修 飾 詞 、場 所 修 飾 詞 、 数 量 修 飾 詞 、 疑 問 修 飾 詞 、 指 示 修

飾 詞 、不 定 修 飾 詞 、 呼 応 修 飾 詞 、 否定 修 飾 詞 、関 係 修 飾 詞 を さ す が 、 こ う

した 広 範 囲 の 分 類 で は 依 然 、厂形 容 詞 ら し さ」は 不 透 明 な ま まで あ る 。 この

う ち 、性 状 形 容 詞 が 、 日本 語 の 一 般 的 な 、 ご く常 識 的 な範 囲 内 で の 形 容 詞

に 相 当す る と い え よ う。

一 方

、 こ う した伝 統 的 な分 類 に 対 して 、 機 能 上 か ら、 形 容 詞 を動 詞 の 範

疇 に 位 置 づ け て 考 え る立 場 が あ る。 こ れ は タ イ語 が 孤 立 語 で あ り、 どの 品

詞 成 分 か は文 中 の 語 の 位 置 に よ っ て決 定 され る とい う特 徴 に も とつ く点 、

そ れ に 否 定 詞 や 文 末 の 完 了 を あ ら わす 助 動 詞 な どの 付加 成 分 が 共 通 して み

られ る とい う点 な どに よ る。 形 容 詞 が 動 詞 と して用 い られ る場 合 、 普 通 の

動 作 ・行 為 を表 す 動 詞 に 対 し、 「

静 的 な動 詞 」 と称 す る こ とが あ る。

ガモの 1)h5っ 一tookiaos前uOsak-thaoray東 京 タ ワ ー の 高 さ は [東京 タワー ・ 高い ・ どの くらい]ど の く ら い で す か 2)khaokeyphaasaa-aOkrit彼 は 英 語 が 得 意 で す [彼 ・ 上 手 ・ 英語] つ ま り、 形 容 詞 が 述 語 成 分 で あ れ ば 積 極 的 に 動 詞(上 の 例 で は 「高 さ を も つ 」、「得 意 とす る 」)と 見 な さ れ る の で あ る 。 中 国 語 の 品 詞 で し ば しば 言 及 さ れ る 形 容 詞 と 動 詞 の 兼 類 と い っ た こ と も 、 タ イ 語 で は さ ら に 副 詞 的 な 要 素 も加 え て 、 い わ ば 常 識 的 な特 徴 と さ れ て い る 。 こ の よ う な 統 語 的 に も 複 雑 な 特 徴 を 有 す る こ と か ら 、当 然 さ ま ざ ま な 問 題 が み ら れ る が 、以 下 で は 、 注2)

そ の ご く基 本 的 な構 文 上 の 諸 特 徴 をみ て い くこ とにす る 。

一32一

(5)

2.1修

飾 構 造 につ い て

名詞 に 直 接 に か か る修 飾 構 造 の特 徴 をみ て み よ う。 タ イ 語 で は 統 語 上 、

修 飾 語 は 被 修 飾 語 の 後 ろ に 置 か れ る とい う語 順 の特 徴 が あ る。 従 っ て 次 の

文 は文 単 位 か 、 語 彙 単 位 か でみ る こ とに よ っ て 、 両 義 性 が 認 め ら れ る 。

3)baanyayA)家

が 大 きいyay;述

語 成 分

[家 ・大きい]B)大

き い家yay;修

飾 成 分

4)aakaatdii

-A)天

気 が い いdii;述

語 成 分

[天気 ・いい]B)い

い 天 気dii;修

飾 成 分

だ が 、 現 実 に は 、A)の

よ うな連 語 の 場 合 、指 示 物 の 絶 対 的 な 規 定 、潜 在

的 な 比較 な どの 状 況 下 で な け れ ば 、通 常 、単 独 の 述 語 成 分 とは な りに くい 。

また 、B)の

よ うな 修 飾 語 や 関 係 代 名 詞 を用 い た と き に 、意 味 的 な 「

限 定 」

を もつ 形 容 句 とな る こ とが 多 い。

注3) 5)phuukhaos道uOluuknoonあ の 高 い 山 [山 ・ 高 い ・ 〈類 〉 ・ あ の](類 ・;類 別 詞) 6)khonthiisizaythiisut一 番 き れ い な 人 [人 〈関 〉 きれ い ・ 一 副(関;関 係 代 名 詞)

2.2並

列 構 造 に つ い て

タ イ語 で は 語 列 は 比較 的 自由 な構 造 を有 して い る の で 、 動 詞 文 で も例 え

ば 「

考 え ご と を して 歩 い て い る」な ど も簡 単 にdaankhit[歩

く/考 え る]

の よ う に あ らわ す こ とが で き る 。 形 容 詞 の[A/B]と

い う よ う な語 の 並

列 に つ い て もそ の ま ま述 べ た り、 語 形 変 化 が な い代 わ りに 接 続 語 を使 う こ

とか ら タ イ 人 の 日本 語 学 習 者 の な か に は 次 の よ う な表 現 の 誤 用 が 多 くみ ら

れ る。 日本 語 の 形 容 詞 の 接 続 の しか た につ い て は 注 意 が 必 要 で あ る 。

注4)

7)siisayaykhaasari*頭 が 大 き い 足 が 短 い [頭 ・ 大 きい ・ 足 ・ 短 い](頭 が 大 き くて 足 が 短 い)

(6)

タ イ語 形 容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対 照一 8)h5ηniikwaaOlξsawaaO*こ の 部 屋 は 大 き い と 明 る い [部 屋 ・ この ・ 広 い ・ と ・ 明 るい](大 き く て 明 る い)

2.3時

制 の マ ー カー

語 形 変 化 が な い わ け で あ る か ら 、過 去 や 未 来 を表 そ う とす れ ば 、 時 を あ

ら わす 時 間 副 詞 や 助 動 詞 を補 う こ とに な る。 こ の 点 も 「

動 詞 的 」 で あ る 。

は    9)aathit-naacayOO来 週 は 忙 し い で す [来 週 〈未 〉 い る](未;未 来 の 助 動 詞) 10)m命aマvaank5っr5っn昨 日 も 暑 か っ た [昨 日 ・ も ・ 暑 い] 11)kamlaηdiiち ょ う ど い い(と こ ろ)で す [と ころ ・ い い] 12)yardmayyuuま だ 新 し い' [ま だ ・ 新 し い ・ い る] ノ 13)khoeymii-chuzuz一 訂aη 有 名 だ っ た(こ と が あ る) [こ とが あ る ・ 有 名 だ] 2.4疑 問 文 の 類 型 次 に 疑 問 文 で は 日本 語 の 「か 」 に あ た る 疑 問 文 末 詞 が い く つ か あ る 。 14)a.[yaak]ruz?[難 し い]ん で す か? b.[一 一 一]may?/riuuzplaao?[一 一 一]で す か? c.[一 一 一]may./chaymay?[一 一 一]で し ょ う? d.[yaak]r血[ηaay]P[難 し い]で す か[易 し い]で す か? こ の 疑 問 文 の つ く りか た も 動 詞 文 と 同 様 で あ る 。 し か も 、 こ の う ち 、a. のr血 だ け を 用 い た 場 合 、 「∼ な の か 」 と い う よ う に 、「自 分 は そ う 思 っ て い な い が 本 当 に そ う な の か 」 と い う モ ー ダ ル な 疑 念 、 あ る い は 問 い 返 し の 一34一

(7)

意 味 が 強 く あ ら わ れ る 。B本 語 の 疑 問 の 「の だ 」 構 文 は ほ ぼa.と 重 な っ て い る と い え る 。b.は 通 常 の 疑 問 文 、c.は 確 認 、 念 押 し の 意 味 を 含 む 疑 問 文 、d.はr血 を は さ ん だ 選 択 疑 問 文 で あ る 。 2.5命 令 文 文 頭 に 命 令 ・依 頼 の 「く だ さ い 」 に 相 当 す るprδot、chuayな ど を 用 い て 動 詞 文 の よ う に 表 す ほ か 、 単 に 重 ね て 命 令 文 を つ く る も の も あ る 。 15)prδotη ↑ap!静 か に し な さ い! 16)η ↑ap-03ap!静 力・に! こ の ほ か 、 使 役 成 分 のhayを も っ て 具 体 的 に あ ら わ す 言 い 方 も あ る 。 17)chuaychophayう っn・うっnnうyち ょ っ と薄 く し て くだ さ い 18)prootthamhaysa?aatき れ い に し な さ い hayは 前 後 に 動 詞 と 形 容 詞 を 配 し て 、〈Xし てYに す る 〉 と い う意 味 を示 す 。17)は 例 え ば コ ー ヒ ー を 薄 く し て ほ し い と き に 言 う 言 い 方 で 、「入 れ る 」 と い う具 体 的 な 動 作 の 動 詞 と と も に 用 い て い る し 、18)の 場 合 は 、thamの ほ か に 具 体 的 な 行 為 を あ ら わ す 動 詞 も あ ら わ れ る 。 こ の よ う な 動 作 の 結 果 的 な 状 態 を あ ら わ す 副 詞 的 用 法 に つ い て は4.2の と こ ろ で 述 べ る 。 2.6否 定 詞 の 位 置 と程 度 成 分 形 容 詞 の 否 定 は 動 詞 と 同 時 に 、そ の 前 に 否 定 詞 のmayを つ け れ ば よ い が 、 may-chay(waa)を 用 い る と一 部 否 定 の 言 い 方 に な る 。 19)a.mayr5つn [な い ・ 暑 い] b.may・chayr5っn(yaaηdiao) [で は ない ・ 暑 い ・(だ け)] c,may-chaywaaroan -35一

暑 くな い

暑 く は な い(∼ だ け で は な い)

暑 い と い うの で は な い

(8)

タイ語形容詞の意味 と構文一 日本語 との対照一 [ではない ・ という ・ 暑 い] ,b.c.で は 他 の 状 況 に も 言 及 し た り 、 限 定 、 対 比 の 意 味 も 含 ま れ る 。 ま た 程 度 を 示 し て 否 定 に 呼 応 す る も の にlacy,thaoray,r3k,nak等 が あ る が 、 こ れ ら は 語 気 助 詞 、 終 助 詞 的 な 機 能 と し て 用 い ら れ る こ と も 多 い 。 20)mayr5っnrうkそ う 暑 く は な い [な い ・ 暑 い ・ そ ん なに] 21)maykh5yr5っn/mayr5っnthaorayあ ま り 暑 く な い [な い ・ あ ま り ・ 暑 い/な い ・ 暑 い ・ い く ら も] 22)mayar3ymaak-nak大 し て 美 味 し く な い [な い ・ 美 味 しい ・ 大 して] 23)maythuuklacy全 然 安 く な い [な い ・ 安 い ・ 全 然] こ れ ら の 否 定 の 特 徴 的 な 表 現 の ほ か に 、 次 の よ う な 「当 初 の 意 に 反 し て 」 と い う 意 味 を 含 ん だ 、 口 語 的 な 言 い 方 も み ら れ る 。 24)phiisaaomay-yak・casむuη 姉 は そ ん な に 高 く な い [姉 ・ そ ん な に ∼な い ・ 高 い](高 い と 思 っ て い た が) 25)raakhaamay-s伽 一caphε εn値 段 は あ ま り 高 く な い [値 段 ・ そ ん な に ∼ な い ・ 高 い](思 っ た ほ ど) 2.7二 重 主 語 構 文 い わ ゆ る 日 本 語 の 〈∼ハ ∼ ガ 〉の 二 重 主 語 構 文 に あ た る も の と し て は 、タ イ 語 に も い くつ か の タ イ プ が 観 察 さ れ る が 、語 順 的 に 対 応 す る 言 い 方 と し て 、 26)の よ う な 構 文 が あ る 。27)の よ う に 場 所 が 主 語 と し て た つ 場 合 は 前 置 詞 thiiを 用 い る の で 、 日 本 語 に 訳 す 場 合 、 誤 用 が み ら れ る 。 \ 26)chaaUOaaoyaao象 は 鼻 が 長 い 一36一

(9)

[象 ・ 鼻 ・ 長 いJ 27)th↑imulaηthaykh5っOraakhaath自uk*タ イ で 物 が 安 い [で ・ タ イ国 ・ 物 ・ 値 段 ・ 安 い](タ イ は 物 が 安 い) 2.8変 化 を あ ら わ す 構 文 「暑 く な る 」 「寒 くな る 」 の よ う に 程 度 の 変 化 が 認 め ら れ る 場 合 に は 、方 向 動 詞 を 後 に つ け て あ ら わ す 。 原 則 と し てkhuznは 「プ ラ ス 」 の 方 向 、lord は 「マ イ ナ ス 」 の 方 向 を 意 味 す る 。 た だ し 、 結 果 を 含 意 す る も の に つ い て は そ の 限 りで は な い 。 そ の ほ か 、新 し い 事 態 の 出 現 に はcaを つ け た り 、継

続 のpay、 不 可 避 のvsiaな ど を 、完 了 を あ ら わ すIEEOと と も に 用 い る 場 合

も あ る 。 注6) 28)r5っnkhthn暑 くな るyenlord涼 し く な る 29)dε ε0赤 い/赤 く な るU臼an・nっ っn眠 い/眠 く な る 30)ph5っmpaylξ εoや せ て し ま っ た 31)kESsialEEO古 くな っ て し ま っ た 32)cardus{hkkhlthulnsay気 持 ち が 悪 くな る

2.9程

度 の 強 調 と程 度 成 分

次 の よ うに 、 形 容 詞 は重 ね る こ とに よ っ て意 味 が 強 調 され る。 発 音 上 は

前 の 音 節 に 比べ 、

後 の 音 節 の ほ うを強 く、

長 め に 発 音 さ れ る特 徴 が あ る。

注7) 33)rotcat-cat味 が 濃 いvsuay-Vsuayと て も き れ い な [味 ・濃い][美 しい】 s通uO-s丘uη と て も 高 いnay-n6っyほ ん の ち ょ っ と [高い][少 し] 構 文 的 な 反 復 と し て は 次 の 言 い 方 が あ る 。 こ れ も強 調 表 現 の 類 型 で あ る 。 34)yaykδ っyay犬 き い と い っ た ら 大 き い

(10)

タイ語形容詞 の意味 と構文一 日本語 との対照一 35)waaonawaaη ひ ま な こ と は ひ ま だ ま た 、 形 容 詞 の 程 度 表 現 は 、 後 続 の 副 詞 と と も に 表 さ れ る こ とが 多 い 。 単 音 節 形 容 詞 が 単 独 で 用 い ら れ に くい こ と は 中 国 語 と類 似 す る 。 36)swaymaak大 変 き れ いn血ayciη 本 当 に 疲 れ た sanizkdiiな か な か 面 白 いarうychiao実 に お い し い phεεUpay高 す ぎ るmaakkaan-pay多 す ぎ る yayluza・kaan非 常 に 大 き いphetthiidiaoま っ た く辛 い こ う し た 程 度 表 現 の 強 調 に は 、 ほ か に 次 の 言 い 方 が 口 語 で み ら れ る 。 37)r5っncataay死 ぬ ほ ど 暑 い 38)y両penbaaば か に 忙 し い 感 嘆 文 で は 次 の よ う に 文 頭 や 文 末 にchaff,cadを つ け て 表 す 。 39)chaffO601な ん とバ カ な! 40)phε εocard!わ あ 高 い! 一 方、「∼ と 感 じ る 」 と い う 主 観 的 な 印 象 を あ ら わ す 言 い 方 で は 、waaの 有 無 に よ っ て 、 多 少 の 意 味 の 違 い が み られ る 。 41)a.ruusuzkoaayや さ し く感 じ る b.r丘ustヒkwaaηaayや さ し い と感 じ る で は 、waaを と も な う文 に お い て 、 よ り判 断 的 な 要 素 が 強 くあ ら わ れ る 。 程 度 成 分 に つ い て 、 あ と 少 し ふ れ て お く。 ま ず 、 「難 易 文 」 で あ る が 、 こ れ は 日 本 語 の 「∼ や す い/に くい 」 に 相 当 す るoaay/yaakを 動 詞 の 後 に つ け て 用 い ら れ る ほ か 、 適 当 な 補 語 的 成 分 を と も な う こ と も あ る 。 42)r6tkhan-niikhapηaayこ の 車 は 運 転 し や す い [車 ・ 台 ・ こ の ・ 運 転 す る ・ 易 し い] 43)chat'-chiiwitUaay暮 ら し や す い [暮 らす ・ 易 しい] 44)mulaηthiiy血usabaay住 み や す い 街 一38一

(11)

[街 ・ 関 ・ い る ・ 快 適 だ] 45)thanon-niidaanlambaakこ の 道 は 歩 き に く い [道 ・ こ の ・ 歩 く ・ 困 難 だ] 46)tua-naOs前tu・niiaanyaakこ の 字 は 読 み に く い [字 ・ こ の ・ 読 む ・ 難 しい] 47)paakkaathiikhiankh15ηdii書 き や す い ペ ン [ペ ン ・ 〈関〉 ・ 書 く ・ 流 暢 ・ い い 】 48)paakkaath↑ikhianmaykhl50書 き に く い ペ ン [ペ ン ・ 〈関 〉 ・ 書 く ・ な い ・ 流 暢] 49)khaophuutmaychat彼 は 話 す の が は っ き り し な い [彼 ・ 話 す ・ な い ・ は っ き り] こ の う ち 、48)、49)に つ い て は 否 定 詞 の 位 置 に 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 否 定 詞 を 前 に 移 動 す る こ と は で き ず 、 こ の こ と は 動 詞 と そ れ 以 下 の 成 分 が 注8) 「分 説 的 」 な 二 命 題 の 関 係(厂 ∼ は ∼ だ 」)に あ る こ と を 意 味 し て い る ま た 、 一 般 に 程 度 の 強 調 と し て 「∼ す ぎ る 」 に 相 当 す る 言 い 方 と し て 、 形 容 詞 の 後 にkaan-payま た はpayを つ け て 用 い る 。動 詞 に は 直 接 つ く こ と は な く、 や は り形 容 詞 のmaakを 副 詞 的 機 能 と し て 必 要 と す る 。 50)phomkhunyaaokaan-payあ な た の 髪 は 長 す ぎ る [髪 ・ あなた ・ 長い ・ す ぎる] 51)thaankhaaomaakpayIEEo御 飯 を 沢 山 食 べ す ぎ た [食べ る ・ 御飯 ・ 沢山 ・ す ぎる ・ ∼た] 「よ り ∼ だ 」、 「一 番 ∼ だ 」 な ど の 比 較,最 上 級 を あ ら わ す 言 い 方 は 、 形 容 詞 の 後 に そ れ ぞ れkwaaやthiisutを つ け れ ば よ い 。 52)wan-niir5っnkwaamlhawaan-nii今 日 は 昨 日 よ り暑 い [今日 ・暑 い ・ より ・ 昨 日] 53)wan-niir5っnm磁ankapm命awaan今 日 は 昨 日同 様 に 暑 い 一39一

(12)

タイ語 形容 詞の意味 と構文一 日本語 との対照一 [今日 ・ 暑 い ・ 同 じ ・ と ・ 昨 日] 54)wan-niir5っnthii・sut今 日 が 一 番 暑 い [今 日 ・暑い ・一番] ほ か に も程 度 を め ぐ っ て 様 々 な 表 現 が 観 察 さ れ る が 、 こ こ で は 最 後 に 、 diiに つ い て 述 べ て お こ う。diiは 価 値 判 断 の 中 核 的 な 意 味 を 有 し て い る が 、 そ の 一 つ に 形 容 詞 の あ と に つ く と 、 話 し 手 の 満 足 な 気 持 ち や 賞 賛 を あ ら わ す 。 こ れ も 「積 極 的 な 」 意 味 の 形 容 詞 が 対 象 と な る 。 55)swaydiiけ っ こ う き れ い だthuukdiiけ っ こ う い い arうydiiけ っ こ う 美 味 し いsanukdiiけ っ こ う 面 白 い ま た 、diiは 疑 問 詞 疑 問 文 の 文 末 に お い て 、婉 曲 的 な 問 い か け の 働 き を もつ と 同 時 に 、 相 手 に 対 して 提 案 や 、 誘 い を か け る 口 語 的 な 表 現 に も な る 。 56)paykii-moondiikhrap何 時 に 行 っ た ら い い で し ょ う か [行 く ・ 何 時 ・ いい ・ 丁寧詞] 57)thaankaafEEdiimayコ ー ヒ ー を 飲 み ませ ん か [飲む ・ コー ヒー ・ いい ・ か?] さ ら に 文 末 にdiikwaaを つ け る と 、「∼ ほ うが い い/た ら い い 」 と い っ た 、 警 告 や 勧 め 、 話 し 手 の 主 張 を あ ら わ す 言 い 方 に な る 。注 9) 58)kinyaadiikwaa薬 を 飲 ん だ ほ う が い い で す [飲 む ・ 薬 ・ い い ・ よ り] 59)payphatthayaadiikwaaノ ぐタ ヤ へ 行 く の が い い で す [行 く ・ パ タ ヤ ・ い い ・ よ り] 2.10そ の 他 の 構 文 形 容 詞 文 が 補 文 を と も な う場 合 を 考 え て み よ う。 評 価,価 値 判 断,感 情 の あ りか た を 述 べ る 「∼ す る こ と は ㌻ で あ る 」 と い う 言 い 方 に つ い て は 、kaan,ま たsirsthii,thiiな ど を も っ て 先 行 主 語 1/

(13)

とす る 名 詞 句 の 後 に 指 示 詞 のnan(そ れ)な ど を 伴 い 、 そ の あ と に 形 容 詞 述 語 が あ ら わ れ る の が 普 通 で あ る 。 60)kaanth↑iりaany如nadii仕 事 が 忙 し い [こと ・ 〈関〉 ・ 仕事 ・ 忙 しい ・ は ・ いい]こ と は い い 61)thiicakhianhaysetdiao-niinanyaak今 す ぐ書 き終 え [の 〈未〉 書 く ・ させ る ・ 終わ る ・ 今 ・ それ ・ 難 しい]る の は 困 難 だ 関 係 代 名 詞 のthiiを 使 っ た 言 い 方 で は 、 二 つ の 解 釈 が 可 能 で あ る 。 ま ず 注10) thii以 下 を 叙 述 の 対 象 と み な す も の で あ る 。 こ の 形 容 詞 は 動 詞 的 で あ る 。 62)maych3apthiicayuutaaybankhap・ 人 に 管 理 さ れ る の が [き らい ・ 〈関 〉 ・ 〈未 〉 ・ い る ・ 下 ・ 管理 す る い や だ banchaakh5っ りkhray 監 督 す る ・ ∼ の ・ 他 人] 63)khaoaayth宝icabう っkkhwaam-cig彼 は 本 当 の こ と を 言 う [彼 ・ 恥 ず か し い ・ 〈関〉 ・ 〈未 〉 ・言 う ・真 実]の を 恥 ず か し が る も う 一 つ は 、th↑i以 下 の 内 容 が 原 因 理 由 を あ ら わ す 場 合 で あ る 。 64)siadaaythiikhunmaydaymaaあ な た が 来 な く て 残 念 [残 念 だ ・ 〈関 〉 ・ あ な た ・ な い ・ 〈過 〉 ・来 る]で し た 65)yindiithiicachuaykhun喜 ん で お 手 伝 い し ま す [喜 ぶ ・ 〈関〉 ・ 〈未 〉 ・ 手伝 う ・ あ な た] 66)diicaythiidayphopkapkhunあ な た に 会 え て 嬉 し い [嬉 しい ・ 〈関 〉 ・ 〈過 〉 ・会 う ・ と ・ あ な た] 67)ch60k-diithiimaathanweelaa時 間 に 間 に 合 っ て 幸 い だ [幸 い だ ・ 〈関 〉 ・ 来 る ・ 間 に 合 う ・ 時 間] こ れ と 関 連 し て 引 用 節 を あ ら わ すwaaに もthiiと 似 た 働 き が あ る 。 68)penth↑inEs-chatwaakhaokoohδk彼 が 嘘 を 言 っ て い [∼ だ ・ 〈関 〉 ・ 確 か ・ 〈引 〉 ・ 彼 ・ 嘘 を つ く]る の は 明 ら か だ 一41一

(14)

タイ語形容詞の意味 と構文一 日本語 との対照一 69)ruustzzkpen-kanwonwaacas3ap-dayruzuz-may試 験 に 合 格 で き 腮 う ・不安 だ ・ 〈引〉 ・ 〈未〉 ・合格す る ・か否ヵ・]る か ど う か 不 安 だ 二 つ の 例 で は 形 容 詞 は 「名 詞 的 」 な 働 き を し て い る 。 こ の よ う な 対 内 容 判 断 を処 す る 形 容 詞 述 語 文 の 成 立 に つ い て は 種 類 が あ り 、 慣 用 的 な も の も あ り 、 ま た ど の よ う な 形 容 詞 の タ イ プ が こ の よ う な 内 容 修 飾 を と も な う の か に つ い て 、 補 文 構 造 の 考 察 も 含 め て 更 に 用 例 の 収 集 分 析 が 必 要 で あ ろ う 。 注11) 次 に 形 容 詞 の と る 格 成 分 に つ い て は 、 タ イ 語 で は 日本 語 の 格 助 詞 に 相 当 す る 前 置 詞 を 連 語 的 な 構 造 と し て と も な う も の が い くつ か み ら れ る 。 70)h5っ 一phaky錢uklaykaprooη ηaan寮 は 工 場 の 近 く に あ る [寮 ・ あ る ・ 近 い ・ と ・ 工場] 71)barisatyuuklaycaakbaan会 社 は 家 か ら 遠 く に あ る [会社 ・ ある ・ 遠 い ・ と ・ 工場] 72)kaansuupburiimaydiit3っsukkhaphaap喫 煙 は 健 康 に よ くな い [こと ・ 喫煙 す る ・ ない ・ よい ・ に ・ 健康]

3.語

形 と他 の 晶 詞 との 関 係

こ こ で は 形 容 詞 の 形 態 的 特 徴 と して 、単 純 な形 の もの か ら派 生 し た 、 あ

る い は合 成 語 とな っ て 他 の 品詞 に 転 成 した もの につ い て み て い こ う。

3.1〈

重 ね 型 〉 につ い て

タ イ語 の 形 容 詞 の 特 徴 と して 、 類 似 的 な 音 韻 を ふ む 語 彙 を重 ね て 使 う も

の が 少 な くな い 。これ はkham-s5っnと

呼 ば れ 、歴 史 的 にみ て も中 国 の 聯 綿

詞 と関 連性 が 深 い と い わ れ る。 語 調 を整 え た り、 強 調 の働 きが あ る 。

注12) 73)kwaan・khwaaO広 いphlaat-phlaan楽 し い

kha頭n-k飴nkh掬 勤 勉 なaociη ・aocaη 真 面 目 な diiok-diicayう れ し いkh15つn-kh1ε εo流 暢 な

(15)

次 の よ う な 類 義 的 な 二 つ の 語 を 重 ね た 合 成 形 容 詞 も 多 く見 ら れ る 。 74)yay-tooで か い 0↑ap-sagδP静 か な kao-kEs古 臭 い lek。n5っy小 さ い kwaaη ・yay広 大 な S近ay一 ηaam美 し い 3.2形 容 詞 の 名 詞 化 形 容 詞 の 前 に.khwaamを つ け る と抽 象 名 詞 と し て 用 い ら れ る 。 75)〈 形 容 詞 〉 〈名 詞> s漁 η ・ 高 いkhwaam-s近ug高 さ reo速 いkhwaam-reo,速 さ ,sa?aat清 潔 なkhwaam-sa?aat清 潔 さ こ れ ら の 状 態 名 詞 は ま た 程 度 の い か ん を あ ら わ す 点 で も 特 徴 的 で あ る 。

3.3動

詞 の形 容 詞 化

動 詞 の あ る も の の 前 にnaaを

つ け る とそ れ に相 応 しい価 値 や 状 態,性 質

を あ らわす 形 容 詞 と して 用 い られ る。

注13) 76)〈 動 言司> rak.愛 す る buza退 屈 す る kluaこ わ が る itchaa'妬 む v soncay興 味 が あ る sao悲 し む 〈形 容 詞> naa-rak可 愛 い naa-buzaっ ま ら な い naa-kluaこ わ い naa-itchaa羨 ま し い naa.vsoncay興 味 深 い naa-sao悲 し い 動 詞 と形 容 詞 派 生 の も の と の 語 彙 的 機 能 は 次 の よ う.であ る 。 77)itchaathiikhaosamretあ の 人 の 成 功 が 羨 ま し い(動 詞 的) [妬ま しい ・ 〈関〉 ・彼 ・ 成功する] -43一

(16)

タイ語形容詞の意味 と構文一 日本語 との対照一 78),.miiroanyanaa-itchaaお 金 持 ち で 羨 ま し い(形 容 詞 的) [ある ・ お金 ・ 沢山 ・ 羨ま しい] ま た 、動 詞 の 前 にkhiiを つ け る と そ う し た 価 値 感 や 性 質 を そ な え た 名 づ け 的 な 言 い 方 と な る 。naaが プ ラ ス と マ イ ナ ス 評 価 の 双 方 の 意 義 素 が み ら れ る の に 対 し て 、khiiは マ イ ナ ス 評 価 の 語 彙 と な る 。 79)〈 動 詞 〉 〈形 容 詞> aay恥 ず か しが るkhii-aay恥 ず か し が りや の v niao粘 りけ が あ るkhii-vniaoけ ち な mao酔 うkhii-mao酔 払 い の こ れ を 人 に つ い て 言 う と き に は 、 次 の よ う にkhon「 人 」 と い う 名 詞 を 必 要 と す る の が 普 通 で あ る 。 こ れ は 二 重 構 造 的 な 修 飾 と み ら れ る 。 80)khonkhii-kiat怠 け も のkhonkhii-luIuIm忘 れ ん ぼ う khonkhii-mao酔 払 いkhonkhii.r5っn暑 が りや

3.4形

容 詞 の 副 詞 化

形 容 詞 は文 の 位 置 に よ って は副 詞 に な る と述 べ た が 、kham-samと

呼 ば

れ る反 復 の 重 ね 形 で 副 詞 に 転 成 して 用 い られ る もの も 多い 。

注14) 81)〈 形 容 詞> klay近 い chao朝 早 い bao軽 い cio本 当 の 〈副 詞> klayklay近 く chaochao朝 早 く baobaoそ っ と ciocio本 当 に

また 、前 置 詞 を 用 い て 副 詞(句)化

した もの も多 くみ られ る。

82)yindii喜 ぶ phっ っcay満 足 す る diiい い duaykhwaam-yindii喜 ん で duaykhwaam-phっ つcay満 足 し て dooydii女 子意 白勺に II

(17)

cig本 当 のdooykhwaam-cig実 は somkhuan適 当 なdooysomkhuan適 宜 sanuk面 白 いyaaηsanuk楽 し く maak多 いyaaomaakせ い ぜ い n5っy少 な いyaagn5っy少 な く と も miikhwaamsuk幸 サ なyaaηmiikhwaams泳 幸 ぜ に 3.5心 理 的 な 活 動 を あ ら わ す 言 い 方 形 容 詞 の 前 にcay(心)と い う語 を つ け る と 、 人 間 の 心 理 的 な 活 動 や 思 考 を あ ら わ す 言 い 方(A)に な る が 、cayが 動 詞 、 形 容 詞 の 後 に 置 か れ る と 動 作 的 な 心 理 活 動 を あ ら わ す(B)。 主 な も の と し て は 次 の も の が あ る 。 83)A)cay・dii親 切 なcay-kh向 意 志 が 強 い cay-tESk堕 落 し たcay-raay残 忍 な cay-n5っy感 じや す いcay-kwaaO寛 大 な . cay-yen冷 静 なcay-khECp狭 量 な cay-roanせ っ か ち なcay-uaay誘 惑 さ れ や す い B)phっ っ一cay満 足 す るtδk・cay驚 く nak-cay気 が 重 いch5っp-cay気 に い る bao-cay気 が 軽 いkleeO・cay遠 慮 す る r5っn-cayあ せ るcam-cayい や い や ∼ す る こ れ ら の う ち 、cayの 位 置 に よ っ て 品 詞 や 意 味 の 異 な る もの が あ る 。 84)dii-cayう れ し いcay-dii親 切 な r5っn-cay心 配 す るcay-r50nせ っ か ち な bao.cayほ っ とす るcay-bao軽 は ず み な kh乙0-cay心 を 鬼 に す るcay-kh動 頑 固 な haay-cay呼 吸 す るcay-haay驚 愕 す る

(18)

タ イ語 形 容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対照 一

vsia-cay残 念 なcay-vsiaが っ く り し た

yen-cai落 着 い て い るcay-yen冷 静 な

3.6動

詞 的 表 現 に つ い て

日本 語 の 形 容 詞 に 相 当 す る も の で 、 形 態 的 に動 詞 とな る もの も い くつ か

あ る。 次 はmii「

あ る」 とい う動 詞 を慣 用 的 に 用 い た 言 い 方 で あ る。

85)miiantaraay危 な いmiikhwaamsuk幸 せ な miich兪ul訂aη 有 名 なmiiOaany両 忙 し い miiprayδot有 用 なmiiweelaawaaη ひ ま な miikhaa貴 重 なmiisa?nee魅 力 的 な そ の ほ か に 、 動 詞 的 な 言 い 方 と し て 次 の も の が あ る 。 86)khitth面0恋 し いhasyaak珍 し い r6pkuan邪 魔 なph6εruia船 に 弱 い

4.修

飾 と述 語 の 関 係

こ こ で は さ らに 形 容 詞 の 副 詞 的 用 法 の 意 味 に つ い て考 え て み た い。 一 般

に 副 詞 とい っ て も、 単 に 状 況 を修 飾 す る もの と結 果 を表 す もの とが ・

考 え ら

れ る。 形 態 的 に は 同 じで も意 味 の 構 造 に お い て違 いが み られ る。

A)速

く話 す(話

す 状 態 が 速 い);「

状 態 」 修 飾

B)短

く切 る(切 っ た 結 果 が 短 い;短

くな る よ うに切 る);「

結 果 」補 語

タ イ語 で は こ れ らの 運 用 の違 いは 構 造 上 、 日本 語 と く らべ て 明 確 で あ る。

4.1修

飾 成 分 の 移 動

r

タ イ語 で は 形容 詞 が(状

態)修 飾 構 造 と主 述 構 造 の双 方 に 解 釈 さ れ る こ

とは 珍 しい こ とで は な い。 例 えば 次 の 文 は 二 つ の 意 味 構 造 が 考 え られ る。

87)wiryreoA)「

速 く走 る」;修

飾 構 造

一46一

(19)

[走る ・ 速 い]B)「 走 る の が 速 い 」;主 述 構 造 ど ち ら の 意 味 を あ ら わ す か は 場 面 に 依 存 す る 。 た だ し 、 次 の よ う に 質 問 は 二 義 性 を 表 し て も 、 応 答 文 で は 形 容 詞 だ け を 用 い る の が 一 般 で あ る 。 88)wiryreomay?速 く走 り ま す か/走 る の が 速 い で す か [走る ・ 速 い ・ か?] -reo-*速 く で す(速 い で す) [速い] つ ま り 、 こ れ は2.9で み た 「分 説 」 的 表 現 と も 関 係 が あ る と こ ろ で 、 「∼ の が ∼ 」 と い う 補 文 構 造 を 含 む 言 い 方 と み な す こ と が 可 能 で あ る 。 89)khaprotkerb上 手 に 運 転 す る(運 転 が 上 手 だ) [運転す る ・ 車 ・ 上手] khaprotmaykerb*下 手 に 運 転 す る(運 転 が 下 手 だ) [運転す る ・ 車 ・ ∼ない ・ 上 手] な ど も 同 様 で あ る 。 こ れ ら の 形 容 詞 は 前 の 動 作 行 為 を う け た 主 動 詞 で あ る と も考 え ら れ る 。 こ の よ う に タ イ 語 の 形 容 詞 は そ の ま ま で 副 詞 と な っ て 動 詞 を 修 飾 す る 一 方 、 形 式 上 の 区 別 な く、 動 詞 補 語 構 文 と し て も 用 い ら れ る の で 、 訳 出 す る 場 合 は 注 意 が 必 要 と な る 。 次 の 形 容 詞 の 位 置 に よ り 、 副 詞 注15) 的 な 構 造 や 連 体 修 飾 の 構 造 に な る 場 合 を み て み よ う 。 90)A)taObっrisatkh血nmay*会 社 を つ く っ た の は 新 し い [お く ・会社 ・成 る ・新 しい](新 し く会 社 を つ く っ た) B)taUbっrisatmaykh血n新 し い 会 社 を つ く っ た [お く ・会社 ・新 しい ・成 る] A)は 別 に 会 社 を 設 け た と い う 意 味 で 、B)は 最 新 の 会 社 と い う意 味 で あ る 。 注16) 91)kh会ykhthns丘uO*熱 が 上 が っ た の が 高 い [熱 ・ 上が る ・ 高い](熱 が 高 く な る) で は 「熱 が 上 が っ た 結 果 が 高 い 」 と い う 意 味 構 造 に な っ て い る が 、 こ の

(20)

タイ語形容詞 の意味 と構文一 日本語 との対照一 よ う な 場 合 も 日本 語 に 直 接 お き か え に く い の で 注 意 が 必 要 で あ る 。 ま た 、 92)A)phuuttarok面 白 く話 す/話 す の が 面 白 い [話す ・ 面 白い] B)1aor血aOsanuk-sanuk面 白 い 話 を す る [語る ・ 話 し ・ 面 白い] の 例 で は 、A)は 〈状 態 修 飾 〉、 ま た は 述 語 構 造 と し て 用 い ら れ る 。B)は 〈一 般 概 念 の 規 定 〉(面 白 い 話)で あ ろ う 。 さ ら に 次 の 例 を み て み よ う。 93)A)suzuzrotdaythuuk安 く車 を 買 う(安 く 買 え た) [買 う ・ 車 ・ で きる ・ 安 い] B)suzuzrotraakhaathuuk(値 段)の 安 い 車 を 買 う [買 う ・ 車 ・ 値段 ・ 安 い] A)は 普 通 よ り安 い 値 で 買 っ た と い う意 味 で 、 同 時 に 可 能dayを 含 意 し て い る 。B)は 色 々 な 値 段 が あ る 中 で 安 い 車 を 買 っ た と い う 意 味 で あ る 。 し た が っ て 「(値段 の)安 い 車 」 と い う の は 〈一 般 概 念 規 定 〉 で あ る 。 さ ら に 注17) 修 飾 構 造 と述 語 構 造 の 意 味 的 な 違 い を み て み よ う。 94)A)khaothamりaanreo彼 は 速 く仕 事 を す る [彼 ・ 働 く ・ 速い】 B)khaopenkhonthamOaanreo彼 は 仕 事 が 速 い [彼 ・ ∼だ ・ 人 ・ 働 く ・ 速い] A)は 〈状 態 修 飾 〉 で そ の 時 の 仕 事 の 仕 方 を 言 い 、B)は 〈一 般 規 定 〉 で 「仕 事 が 速 い 人 」 と い う 意 味 に な っ て い る 。 次 のA)は 可 能 動 詞dayを 用 い る 点 で 特 徴 的 で あ る 。 つ ま り 「(そ の 人 は)打 て る が 遅 い 」 と い う一 般 規 定 を あ ら わ し て い る 。 こ れ に 対 し 、B)は そ の 時 の 動 作 の 状 況 修 飾 で あ る 。 95)A)phimdaychaaタ イ プ を 打 つ の が 遅 い [タイプする ・ で きる ・ 遅 い] ,・

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B)phimchaa・chaaゆ っ く り タ イ プ を 打 つ [タイプす る ・ 遅 い] こ こ で 可 能 表 現 に も 関 連 し て お べ て お こ う 。 あ る 種 の 否 定 を と も な う形 容 詞 は 動 詞 の あ と に お か れ て 、 慣 用 的 に 不 可 能 の 意 味 を あ ら わ す こ と が で き る 。 こ れ もmay以 下 は 副 詞 的 成 分 とみ る こ と も で き る 。 96)thaanmaythanat上 手 に 食 べ ら れ な い [食 べ る ・ な い ・ 器 用 な] 98)bう っkmayth貢uklう ま く 言 え な い [言 う ・ な い ・ 正 し い] 98)saymaydiilき ち ん と 入 ら な い [入 る ・ な い ・ よ い] 4.2意 図 と 結 果 形 容 詞 の あ ら わ す 意 図 と 結 果 に つ い て も 意 味 論 的 に 複 雑 な 問 題 が い くつ か 観 察 さ れ る 。 動 作 の 到 達 目 的 の 状 態 は 、 次 の 文 の よ う に あ ら わ さ れ る 。 99)tathaysang;短 く切 るthamhayphet;辛 く作 る [切る ・ させ る ・ 短い][作 る ・ させ る ・ 辛い] の よ う に 、「短 く切 る 」 「辛 く作 る 」 「赤 く塗 る 」 な ど の 変 化 形 容 詞 の 副 詞 的 な 用 法 は 使 役 の 機 能 と 関 連 が あ る 。 つ ま り 、使 役 の 助 動 詞 のhay「 ∼ させ る 」 を 使 い 、 「何 か を し て ∼ す る 」 と い う 意 味 で 、 そ れ ぞ れ 「切 っ て 短 くす る 」 ま た は 「赤 く な る よ う に 塗 る 」 と い う 、 「結 果 目 的 」 に 至 ら し め る 言 い 方 を す る 。 次 の 例 の よ う に 「き れ い に す る 」 の 「す る 」 の と こ ろ に は 具 体 的 な 動 作 動 詞 が あ ら わ れ る こ と に な る 。 100)[sak/kwaat/tham/raksaa]haysa?aat きれ いに[洗 う/掃 く/作 る/保 つ] タ イ 語 で は 「シ ャ ツ を き れ い に 洗 っ た 」 と い う よ り も 「シ ャ ツ を 洗 っ て き

(22)

タ イ語 形容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本語 との 対 照 一

れ いに した 」 とい う結 果 ま で 言 及 す る 言 い 方 が 一 般 的 な わ け で あ る 。 た だ

注18) し 、 会 話 で は こ のhayが 省 略 さ れ る こ と も 少 な く な い 。 101)sakphaasa?aat-sa?aatき れ い に 洗 濯 す る [洗う ・ 服 ・ 清潔な] さ ら に 次 の 文 を 参 照 し て み よ う。 102)thaayruup5っk-maadaydiimaak [撮る ・ 写真 ・ あが る ・ できる ・ いい ・ 大変] 103)thaayruupう っk-maadaymaydii [撮る ・ 写真 ・ あが る ・ できる ・ ない ・ い い] 102)の 文 は 「こ の 写 真 は よ く とれ て い る 」、103)は 「こ の 写 真 は よ く とれ て い な い 」 と い う 意 味 で あ る 。 「*写 真 を と っ た の が い い/よ く な い 」 の よ う な 「分 説 的 」 な 解 釈 は 成 立 し な い 。 こ れ も 日本 語 で は 副 詞 的 表 現 が タ イ 語 で は 複 文 的 な 構 成 で 意 味 さ れ る 一 例 で あ る 。 4.3感 情 形 容 詞 の 制 限 一 般 に 日 本 語 で は 「彼 は う れ し い で す 」 、 「彼 は 残 念 で す 」 な ど の 言 い 方 は 不 自 然 と さ れ る 。 こ の よ う に 主 観 を と も な う 形 容 詞 に は 第 三 人 称 に は 使 え な い も の が あ る が 、 タ イ 語 で は 動 詞rdus{hkと と も に 表 わ さ れ る 。 104)khaoruusuzksanuk*彼 は う れ し い と 感 じ ま す [彼 ・ 感 じる ・ 面 白い](彼 は う れ し そ う で す) こ の 場 合 、 当 事 者(彼)が そ う 感 じ て い る の か 、 第 三 者 が 感 じ て い る の か 日 本 語 で 区 別 し に く い こ とが あ る が 、 後 者 の 場 合 は タ イ 語 で は 別 の 助 動 詞 か 名 詞 を 動 詞 の 前 に 用 い て あ ら わ す 。 例 え ば 厂彼 は 楽 し そ う だ 」 の 文 は 、 105)khaoduumuzansanuk [彼 ・ 見え る ・ よ うに ・ 面 白い] 106)khaothaathaaηsanuk 一50一

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[彼 ・ 態度 ・ 面 白い] の よ う に あ ら わ さ れ る 。 ま た 、「∼ が る 」 と い う心 理 的 な 気 持 ち を あ ら わ す 言 い 方 は 、 タ イ 語 で は 「∼ と感 じ る 、 思 う」 の よ う にruusuzkを 補 助 的 に 用 い て あ ら わ さ れ る 。 107)dさkdさkrdus由kgao*子 供 た ち は 寂 し く思 う [子供達 ・ 感 じる ・ 寂 しい](子 供た ちは寂 しが っている) 108)nakrianruusuzkaaysamaa*学 生 は い つ も恥 ず か しい と思 う [学生 ・ 感 じる ・恥 ずか しい](学 生はいつ も恥ずか しが る) 「∼ そ う な,そ う に 」 と い う 修 飾 成 分 は 、 タ イ 語 で は 一 般 化 し た 言 い 方 に な る こ とが 多 く、 こ れ も 日 本 語 に 言 い か え た 場 合 、 注 意 が 必 要 で あ ろ う 。 109)miibaynaathiidiicay*う れ し い 顔 を し て い る [ある ・ 顔 ・ 〈関〉 ・ うれ しい](う れ しそ うな顔 を している) 110)r5っ ηhayyaag訂acay*く や し く泣 い て い る [泣 く ・ よ うに ・ くや しい](く や しそ うに泣いて いる) 5.意 味 範 囲 と 意 味 の 重 な り 5.1形 容 詞 語 彙 の 意 味 範 囲 以 上 、構 文 上 の 問 題 を 検 討 し て き た が 、こ こ で は 基 本 的 な 語 彙 に か ぎ り 、 意 味 の 重 な り を み て い く こ と に す る 。 タ イ 語 の 形 容 詞 に は 日本 語 と 異 な る 意 味 範 囲 を も つ も の が い くつ か 観 察 さ れ る 。 ま た 、 一 般 的 な 意 味 範 疇 が 、 他 の 語 で は 、 個 別 的 な 意 味 に 規 定 さ れ た 別 の 語 彙 で 表 さ れ た りす る 。 た と え ば 、 111)A)y鋤 う る さ い 、.複 雑 な 、 忙 し い 、 … B)う る さ いnuak-huu,cuu-  ・Cil,y{io_ A)、B)は 対 応 す る 日 本 語 、タ イ 語 の 個 別 的 な 意 味 の あ ら わ れ の 例 で あ る 。 以 下 で は そ う し た 基 本 的 な 形 容 詞 の 意 味 用 法 に つ い て み て い く こ と に す る 。 -51一

(24)

タイ 語 形 容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対 照 一 〈き れ い 〉 の 表 現; タ イ 語 に は 「美 し い 」 と 「清 潔 な 」 は そ れ ぞ れ 別 の 言 葉 を 用 い て 使 い 分 け る 。 ま た 、 声 や 曲 の 旋 律 な ど に つ い て は 特 別 な 言 い 方 を す る 。 112)khon-niisuayこ の 人 は き れ い だ h50-niisa?aadこ の 部 屋 は 清 潔 だ phleeη 一niiphr5maakこ の 音 楽 は 大 変 美 し い 「きれ い に 食 べ た 」「き れ い に 書 い た 」な ど 副 詞 的 に 用 い る と き は 「全 部 す っ か り」 「丁 寧 に 」 な ど の 別 の 語 の 言 い 替 え や 、 補 い が 必 要 で あ る 。 113)kinmδtき れ い に 食 べ る/食 べ つ くす khianhayfiapr5っyき れ い に 書 く/て い ね い に 書 く <大 き い ・小 さ い 〉 の 表 現; 形 状 の 大 き さ に つ い て はyayで よ い が 、大 き く育 っ て い る と い う 意 味 の

と き に はtooを 用 い る 。yay-tooど い う複 合 形 容 詞 も使 わ れ る 。ま たyayに

は 「え ら い 人 」 と い う 意 味 も 含 ま れ る 。 114)khontoo長 男(*大 き い 人) phuu-yay',khon=yay大 人 、 偉 い 人 ま た 、 音 が 大 き い と き はyayで は な く 、dadを 使 う 。 115)訂aodad大 き な 音/音 が 大 き い 反 対 に 「小 さ い 」 場 合 はlekで よ い が 、 音 の 場 合 はbaoを 使 う 。 〈高 い ・低 い 〉 の 表 現; 位 置 の 高 さ 、背 丈 もs丘uuで あ ら わ す 。 音 声 で は 「と が っ た 」 と い う 意 味 のrε εmを 用 い る 。反 対 に 低 い の は 地 位 ・温 度 ・音 声 な ど も一 緒 にtamを 使 うが 、人 の 背 丈 に 限 っ て 、tiaを 使 う 。値 段 の 高 さ はphε εg,thuuk(高 価 な 、 安 い)を 用 い る 。 〈や さ し い 〉 の 表 現; 「親 切 な 」 と い う意 味 で はcaydii 、「容 易 な 」 と い う 意 味 で はoaayと 一52一

(25)

う よ う に 別 の 言 葉 を 使 う 。 ηaayは 動 詞 の あ と に つ い て 「(読 み)や す い 」 な ど の 補 助 動 詞 と も な る が 、「や す い 一 や さ し い 」 の よ う に タ イ 人 学 習 者 に は 意 味 の 混 乱 が 生 じ や す い も の の 一 つ で あ る 。 〈長 い ・短 い 〉 の 表 現; 時 間 の 長 さ に はHaan,距 離 の 長 さ に はyaaoを 使 う が 、 「短 い 」 場 合 は い ず れ もsanを 使 う 。 116)weelaanaan/san長 い/短 い 時 間 phomyaao/san長 い/短 い 髪 〈か ら い ・あ ま い 〉 の 表 現; 次 に 味 覚 に 関 す る 形 容 詞 で あ る が 、 辛 さ に は 二 種 類 、 塩 か ら い 、 唐 が ら し の か ら い が あ る 。そ れ ぞ れkhemとphetを 使 う 。あ ま い はvwaanで あ る 。 味 の 濃 さ ・薄 さ に 関 し て 「か ら い ・あ ま い 」 を い う と き が あ る が 、 こ の 場 合 は そ れ ぞ れcat,cthUltを 用 い る 。こ の 外 、味 覚 に 関 し て は 比 喩 的 な 表 現 が い くつ か あ っ て 興 味 深 い 。 117)khaocay-ctuurt冷7炎 な 人 khaprotpriao車 を と ば す paakVwaan口 が う ま い khonkhemけ ち な 人 そ の ほ か の 味 覚 、 嗅 覚 の 形 容 詞 に つ い て は 省 略 す る 。 〈古 い ・新 し い 〉 の 表 現; 形 、 考 え 方 、 物 、 性 質 な ど に つ い て はkaoを 使 い 、年 を と っ た 人 、 動 物 に 限 っ てkε ε を も ち い る 。 厂時 代 遅 れ 」 と い う場 合 はlaasamay(時 代 に 遅 れ た)と い う 言 い 方 もす る 。vsia(だ め な/腐 っ た)と い う 言 い 方 を す る と き も あ る 。 ま た 、「考 え 方 が 古 い 」 と い う 場 合 は 、booraanを 使 う こ と も あ る 。反 対 に 新 し い ほ う はmayを 使 う が 、「新 鮮 な 」 と い う意 味 で はsδtを 使 う。 な お 、mayに は 動 詞 の あ と に つ い て 「ま た ∼ す る/∼ し な お す 」 と い う補 助 動 詞 的 な 使 い 方 が あ る 。 注19) -53一

(26)

タ イ語 形容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対 照 一 118)maamay来 な お す,ま た 来 る 〈薄 い ・厚 い ・濃 い 〉 の 表 現; 味 が 薄 い 場 合 はc血Ult,色 が 薄 い 場 合 は うっn,厚 さ が 薄 い 場 合 はbaan, ア ル コー ル 度 の 薄 さ で はbao等 で 使 い 分 け る 。 反 対 語 の 濃 い は 、 そ れ ぞ れ khem/cat,kEs,vnaa,nakの よ う に 使 い 分 け な け れ ば な ら な い 。 注20) 〈軽 い ・重 い 〉 の 表 現; 重 量 の 重 さ はnak,baoを 用 い る 。病 状 や 雨 降 り の 程 度 を い う と き に も 用 い られ る 。 119)aakhaannak重 症 fontokbao小 降 り 〈若 い ・年 下 の ・年 上 の 〉 の 表 現; 「若 い 」 は、 日 本 語 で は 男 女 別 な く用 い ら れ る が 、 タ イ 語 で は 男 性 に は

num女 性 に はvsaaoを 使 う。あ わ せ てn血m曲aoと い う こ と も あ る 。 うっnは

双 方 総 称 的 に 用 い ら れ る 。 反 対 の 「年 配 」 はkε ε を 使 う 。 ま た 「年 下,年 上 」 と い う 意 味 で は そ れ ぞ れaaydn5つy,aayumaakと い う 言 い 方 が あ る 。 比 較 を あ ら わ す と き はkwaaを 後 に つ け る 。 120)う っnkwaa(よ り)若 い 121)aaydn5りykwaa年 が(よ り)若 い 〈は や い ・お そ い 〉 の 表 現; ま ず 時 間 的 に 「朝 早 い 」 場 合 と 「夜 早 い 」 場 合 、 ま た 同 様 に 厂遅 い 」 場 合 、 タ イ 語 で は 時 間 に そ っ た 言 い 方 が あ る 。 注21) 122)chao/hua-kham朝 早 く,時 間 よ り早 く/夜 ・夕 方 早 く 123)vsaay/dunk朝 遅 く,時 間 よ り遅 く/夜 遅 く chaoは 時 間 よ り早 く、v-saayは 時 間 に 遅 れ て と い う 意 味 が あ る 。 こ れ に 対 し て 、 速 度 の 場 合 はreo(速 い),chaa(遅 い)を 使 う 。 124)phuutreo,phuutchaa速 く話 す,ゆ っ く り話 す 〈強 い ・弱 い 〉 の 表 現; 一54=

(27)

体 力 的 に 物 理 的 に 強 い 場 合 、 お 酒 や 水 な ど に 強 い と い っ た 体 質 、 性 質 、 技 能 ・知 識 に 関 し て な ど い く つ か の 意 味 範 疇 が 考 え ら れ る 。 こ れ に も個 別 的 な 使 い 分 け が み ら れ る 。 125)kh向rε ε0/う っn・yうっn体 が 丈 夫 、 元 気/弱 い Iomphatrε εg/う っn風 が 強 い/弱 い thonIthaan/maythonthaannaam水 に 強 い/弱 い phaas首aaOkritkδn/maykerb英 語 に 強 い/弱 い witsakii-niinak/baoこ の ウ イ ス キ ー は 強 い/弱 い 〈上 手 ・下 手 〉 の 表 現; タ イ 語 で は 語 学 、 ス ポ ー ツ 、 楽 器 、 料 理 な ど の 得 意 、 不 得 意 の 意 味 の ほ か 、 標 準 以 上 の レベ ル(プ ラ ス.・マ イ ナ ス)を 表 す こ とが あ る 。 126)n5っnkeyよ く寝 る dLUUZmlaokey酒 飲 み の lUIUIm1(的 よ く忘 れ る riankerb勉 強 が で き る khuykerb話 上 手 thiaokeyよ く遊 び に い く ム 「下 手 」 はmaykerb(上 手 で は な い)の よ う に 否 定 表 現 に な る 〈お も し ろ い ・た の し い 〉 の 表 現; 理 屈 ぬ き に 面 白 い と い う場 合 はsanukを 使 う が 、こ れ は 第 一 次 的 な 感 覚 に 近 く 、 認 知 し た 段 階 で は 個 別 的 な 使 い 分 け が あ ら わ れ る 。 つ ま り 、 読 ん で 面 白 い 、 聞 い て 面 白 い な ど と い う 対 象 に よ る 限 定 表 示 で あ り 、 動 詞 の 前 にnaa(∼ し て よ さ そ う な)と い う語 を お い て あ ら わ す 。 127)naa.aan読 ん で 面 白 い naa-fart聞 い て 面 白 い naa・duu見 て 面 白 い

(28)

タ イ語 形容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対 照一 naa・vsoncay興 味 深 い 「お も し ろ い 」 に は こ の 外、 「こ っ け い な 」 「お か し い 」 と い う 意 味 が あ る が 、こ の 場 合 はtarδk,khamを 使 う 。一 方 、「楽 し い 」 は 厂お も し ろ い 」 が む し ろ 属 性 形 容 詞(面 白 い 本)で あ る の に 対 し て 、 感 覚 ・感 情 形 容 詞 で あ り 、 副 詞 的 に 使 っ た り 、kanな ど を併 用 す る こ と が 多 い 。 128)r5っOphleeηyaaOsan血k-vsanaan楽 し く歌 を 歌 う 12g)chayweelaaphlaat-phlaan楽 し い 時 間 を す ご す 130)raosanuk-sanaankanmaak私 達 は 楽 し か っ た 〈痛 い 〉 の 表 現; 痛 さ 一 般 に 対 し て 日本 語 で は 同 一 の 表 現 か 、 ま た 程 度 に 応 じ て 「ヒ リ ヒ リす る 」 「ズ キ ズ キ す る 」 な ど の 擬 態 語 を と も な う 。 タ イ 語 の 場 合 、 こ れ ら は 普 通 一 語 で あ ら わ さ れ る 。 一 般 的 に はcさp、 こ れ は 外 部 的 な 刺 激 に つ い て 用 い る 。頭 が 痛 い 、お な か が 痛 い な ど の 内 部 的 な 痛 み に はpuatで 、歯 の 痛 み な ど の よ う に 慢 性 的 な 症 状 に も用 い る 。 ま た 、傷 口 や 太 陽 に 焼 け た り 、 目 に ゴ ミが 入 っ て 厂ヒ リ ヒ リす る 」場 合 はsさepを 使 う 。 ま た 、 こ の 場 合 は 語 順 に も 気 を つ け る 必 要 が あ る 。 タ イ 語 で は 動 詞 と し て 扱 い 、 場 所 な ど の 限 定 語 は そ の あ と に つ く。 131)p亡atth5っ0お な か が 痛 い/お な か が 痛 む 132)cepfan歯 が 痛 い/歯 が 痛 む 133)sさeptaa目 が 痛 い/目 が 痛 む 〈涼 し い ・冷 た い ・寒 い 〉 の 表 現; 温 度(触 覚)形 容 詞 に つ い て 、日本 語 で は 大 気 の 温 度 や 風 に 対 し て は 、「す ず し い 」 を 用 い て 、 液 体 や 固 体 な ど に 冷 気 を 感 じ る も の に は 「つ め た い 」 を使 う が 、 タ イ 語 で はyenで 、 快 適 さ を あ ら わ す の にsabaayが 用 い ら れ る 。 特 別 に 寒 さ を 感 じ る と き はVnaaoを 使 う 。 134)naam-yen冷 た い 水 一56一

(29)

135)yensabaay涼 し い 136)wanniinaaomaak今Bは 大 変 寒 い 〈あ つ い ・あ た た か い 〉 の 表 現; 日本 語 で は 「暑 い 」 と 「暖 か い 」 は 区 別 さ れ る が 、 タ イ 語 で は 気 候 に 対 して は ほ と ん どr5っn(暑 い)を 使 う 。い つ も の 暑 さ と 比 べ て や や 気 温 が 低 い と き に はun(暖 か い)に な る 。 ま た 、unは 何 か を 暖 め る と き 、つ ま り 、 動 詞 と し て 使 わ れ る こ とが 多 い 。 137)unkeelス ー プ を あ た た め る 138)kaafε εrうmホ ッ ト コ ー ヒ ー 〈色 彩 形 容 詞 〉 に つ い て; 色 彩 語 に つ い て はv・S11をつ け る と名 詞 に な る 。A)の よ う に 純 粋 に 色 の 識 別 を あ ら わ す 外 に 、B)の よ う な 比 喩 的 な 言 い 方 も み ら れ る 。 139)A)sutachaatsiikhaao krapaosiinamtaan kaankeeOsiidam B)caydam khaydε εO damdε ε0 藪agkhiao

白 い(色 の)シ

ャ ツ

茶(色)の

か ば ん

黒 い(色 の)ズ

ボ ン

心 が 黒 い 一 腹 黒 い 、 心 が 冷 た い

赤 い卵 一卵 の 黄 身

黒赤 一 白黒(真

偽)

緑 の 声 一 怒 っ た声

こ の 外 、類 語 の 問 題 と し てsiadaay,vsiacay「 も っ た い な い/残 念 な/惜 し い 」、saduak「 都 合 が い い 、 便 利 」、r6pkuan「 邪 魔 な 、迷 惑 な 」 な ど が あ る が 、 こ れ ら の 使 い 分 け に つ い て も場 面 に 応 じ た 選 択 が 必 要 で あ る 。 注22)

5.2否

定 と反 対 語

日本 語 で は 例 え ば 「

上 手 」 に 対 して 「

下 手 」 とい う対 応 す る反 対 語 が あ

るが 、 タ イ語 で は対 応 す る一 語 は な く、 否 定 詞 を使 っ て あ らわ す 。 こ の よ

(30)

タイ語形容詞の意 味 と構 文一 日本語 との対照一 う な 意 味 の 関 係 に あ る も の と し て 、 次 の も の が あ る 。 140)key arうy dii chiつP saduak sabaay

上 手

お い し い

い い

好 き

便 利 な、

元 気 な

maykerb ノ    mayarつy maydii maych5つP maysaduak maysabaay

下 手

まず い

悪 い

嫌 い

不 便 な

病 気 の

中 に は 、右 の よ う に 一 語 で あ ら わ さ れ る も の も あ る が 、意 味 は 強 調 さ れ る 。 141)maych5っP好 き で は な いkriat嫌 い な maydiiよ く な い1eeo,chua悪 い ま た 、 否 定 形 式 の 可 能 表 現 の な か に も 、 い わ ば 連 語 的 な 構 成 と な っ て 、 形 容 詞 的 な 意 味 を あ ら わ す も の が あ る 。 こ の よ う な 表 現 も タ イ 語 の 語 構 成 を 注23) 考 え る う え で 興 味 深 い 点 の 一 つ で あ る 。 142)priapmaydaay比 較 で き な い 、 特 別 な chaymaydaay使 え な い 、 だ め な chuaymayclaay救 え な い 、 仕 方 が な い suumaydaay太 刀 打 ち で き な い 、 え りす ぐれ た こ こ で 「親 切/不 親 切 」 と い う 言 葉 に つ い て 述 べ て お こ う 。 「親 切 」 に あ た る タ イ 語 はcaydiiの ほ か に 次 の 言 い 方 が 場 面 に よ っ て 選 択 さ れ る 。 143)miinamcay情 が あ る miimeettaa慈 悲 深 い うっp.5っm-aarii気 持 ち が あ る athayaasaydii愛 想 が い い ま たcaydiiに は 「慈 悲 心 の あ る 」「思 い や り の あ る」 な ど の 広 い 意 味 が あ る の で 、 日本 語 の 「親 切 」 と は 必 ず し も 意 味 が 一 致 し な い こ と に 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 一 方 、 「不 親 切 」 で は 、 多 くの タ イ 人 に よ っ て 、行 為 を 与 え 一58一

(31)

る 側 と受 け る 側 と に よ っ て 言 い 方 が 異 な る こ とが し ば し ば 指 摘 さ れ る 。 144)A)maycaydii,maymiinamcay不 親 切 B)caymaydii不 親 切(で 気 分 が 悪 い) A)の 場 合 は 普 通 の 否 定 形 で あ り 、 そ の 当 事 者 の こ と を 指 し て い る が 、'B) は 相 手 の 不 親 切 さ に 対 し て そ の 行 為 を 受 け た 本 人 の 不 快 な 気 持 ち を あ ら わ し て い る こ と に な る 。 6.終 わ り に.一 言 語 表 現 と 文 化 背 景 一 使 用 頻 度 の 高 い 形 容 詞 に は 日 本 語 と 当 然 異 な る 発 想,背 景 が あ り 、 そ こ に は 日常 の 思 考 ・習 慣 ・通 念 と し て の 発 想 に も とつ く語 彙 の 選 択 が あ る 。 価 値 概 念 に 基 づ く形 容 詞 語 彙 と し て 次 の も の が し ば し ば と り あ げ ら れ る 。 145)sabaay気 持 ち が い いreap-r5っyき ち ん と し た sanuk面 白 いsuphaapて い ね い な braつ ま ら な いntuay疲 れ た khayan勤 勉 なkhii-kiat怠 け 者 の こ れ ら は 単 に 意 味 と し て の 機 能 の ほ か に 、 日常 行 動 を 規 定 す る と こ ろ の 挨 拶 表 現 、 伝 達 形 式 な ど の 社 会 機 能 的 な 意 義 も 認 め ら れ る で あ る 。 い わ ば タ 注24)

イ 人 の精 神 構 造 を象 徴 す る よ うな これ らの 言 葉 の 意 味 は ま こ とに 深 く、か

つ 幅 ひ ろ く、 こ れ を た だ ち に 日本 語 的 な 訳 に お きか え る冒 険 は 危 険 で あ る

と言 え よ う。 言 語 の 表 層 構 造 と とも に 、 深 く互 い の 文 化 的 側 面 に も興 味 を

抱 か な け れ ば な らな い所 以 で あ る。 そ の理 解 の過 程 に お い て 、 よ く言 及 さ

れ る とこ ろ の 、'タイ 人 の思 考 ・発 想 の形 式 主 義 、権 威 主 義 、個 人主 義 とい っ

た一 面 的 な理 解 も修 正 をせ ま られ る こ.とに な ろ う。 語 彙 の 比 較 対 照 に よ っ

/注25)

て 広 く文 化 の エ トス を享 受 した い と思 う。

以 上 、 ご く概 括 的 に タ イ 語 の 形 容 詞 の様 相 を み て き た わ け で あ るが 、 意

味 範 疇 に 関 して 言 え ば 、類 義 語 、 多義 語 の 問題 も 多 く残 さ れ て い る。 例 え

一59一

(32)

タ イ語 形容 詞 の 意 味 と構 文 一 日本 語 との 対 照一 ば 、r㌔p・r5っyと い う こ とば は 、第 一 義 と し て は 「き ち ん と し て い る 、整 然 と し て い る 」 と い う意 味 で あ る が 、 人 の 性 格 に 使 え ば 厂丁 寧 な 、 しつ け の い い 」 と い っ た 意 味 に な る し 、 一 方 、 仕 事 や 準 備 が 滞 り な く完 了 し て い る と い う 場 合 に 用 い ら れ る 。 構 文 的 要 素 と と も に 、 こ う し た 場 面 や 人 称 に 制 限 さ れ た 形 容 詞 の 意 味 の 領 域 に つ い て も 、今 後 い っ そ う の 研 究 が ま た れ る 。

〈注 記 〉

本 文 中 の タ イ 語 の ロー マ 字 表 記(国

際 音 標 文 字)は 冨 田(1987)に

ほ ぼ

した が う。例 文 、例 句 に つ い て は タ イ語 の教 科 書 、辞 書 か らの 引 用 が 多 い 。

〈註> 1)最 近 で はPornpilas(1985)な ど を 参 照 。kin(食 べ る),nっ っn(寝 る)な ど を 動 作 動 詞"action-verb",vsuay(美 し い),yaao(長 い) な ど を 状 態 動 詞"stativeverb"と 分 類 し て い る 。 2)名 詞 的 な 転 成 も頻 繁 に 観 察 さ れ る 。thamdiidaydiithamchuaday chua(良 い こ と を す れ ば 徳 を 受 け 、悪 い こ と を す れ ば 罪 を 得 る)な ど のdii,chuaは そ れ ぞ れ 目 的 語 と な っ て お り 、名 詞 扱 い で あ る 。 ま た maysaapraaylayiat(詳 し い こ と は 知 ら な い)のraaylayiatは 副 詞 的 で も あ り、 名 詞 的 で も あ る 。 3)形 容 詞 名 詞 句 で 注 意 す べ き 点 の 一 つ は 、 総 称 と個 別 の 指 示 で あ る 。 す な わ ち 、「大 き い鞄 」は 一般 的 な 規 定 で あ り,直接 に名 詞 を修 飾 してkrapaoyay と い い 、「鞄 の 大 き い の 」の よ う に 特 定 の 事 物 を指 し て い う場 合 、krapao bayyayの よ う に 類 別 詞 を 用 い る の が 普 通 で あ る 。 4)日 本 語 の 並 列 助 詞 「と 」 に 相 当 す る 接 続 語 と し て 、 タ イ 語 に は ほ か に .1

(33)

kapが あ る が 、 原 則 と し て 動 詞 、 形 容 詞 の 並 列 文 に は 用 い ら れ な い 。 5)例 え ば 、「こ の 果 物 は 古 い で す 」 の 「古 い 」 も 「古 く な っ て い る(状 態)」 を 意 味 す る こ とか ら 、phonlamaayniikaoIESoの よ う に タ イ 語 で は 完 了 の 助 動 詞1ξ εoを 必 要 と す る 。 6)「 や せ て い る 、 太 っ て い る 」 は そ れ ぞ れphう っm、uonと い う が 、 「や せ る 、太 る 」の よ う に 変 化 を表 す 場 合 はph5っmloη 、uonkhuznの よ う に 日 本 語 に は あ ら わ れ な い 方 向 動 詞 を 必 要 と す る 。 7)形 容 詞 の 反 復 語 は 強 調 だ け で な く、 元 の 形 容 詞 よ り意 味 が 弱 く な る 場 合 も あ る 。例 え ばdesk-dε ε0は ど ち ら か と い う と赤 系 、赤 っ ぽ い と い う 意 味 で 、kao・kaoも 完 全 に 古 い と は 言 え な い が 、古 い と 言 え な く も な い と い う 意 味 で 用 い ら れ る 。 宮 本 マ ラ シ ー(1990)p.161.ま た 、 反 復 す る こ と に よ っ て 意 味 の 変 わ る も の も あ る 。 chay;の ろ いchay-chaay;平 気 だ ruzay;絶 え な いruzay-ruzay;相 変 わ ら ず,ず っ と 等 8)否 定 詞 を 前 に 置 い て 言 っ た 場 合 、例 え ばmayphuutchatで は 、chat は 本 来haychat「 は っ き り さ せ る 」 の 意 味 を も ち 、遠 慮 し て 、 ま た は 気 を 遣 っ て あ い ま い に 「は っ き り話 そ う と し な い 」 の よ う に 否 定 の ス コ ー プ が 話 し 手 の 意 志 的 な 要 素 に か か る 特 徴 が あ る 。 ま た 、 thampaymaytalう っt最 後 ま で や り通 さ な い [する ・ い く ・ な い ・ ず っ と] の 文 は 、 例 え ば 途 中 で しか た の な い 事 態 が 起 こ っ た り 、 障 害 が あ っ て で き な く な っ た と い う 、 つ ま り 外 的 な 条 件 で で き な い と い う 意 味 で あ る が 、 こ のmayの 位 置 を 動 詞 の 前 に も っ て く る と 、 maythampay(hay)talう っt最 後 ま で や ろ う と し な い の よ う に 、 自 分 側 の 都 合 で 遂 行 し な い と い う 意 味 に な る 。 こ の よ うに mayの 位 置 に よ っ て 意 志 性 が 異 な っ て く る 点 に は 注 意 が 必 要 で あ る 。

(34)

タイ語形容詞 の意味 と構文一 日本語 との対 照一 9)diiの 共 通 し た 機 能 と し て 、 と りた て 的 な 働 き が あ る 。 10)形 容 詞 述 語 文 の 成 立 条 件 と し て は 、 い くつ か の タ イ プ が み ら れ る 。 例 え ば 、 前 件 と 後 件 の 接 続 語 と し てlaayやCUIη 、thamhayを も っ て 、 結 果 を 導 く も の や 、 単 に 二 つ の 文 を 並 べ て 用 い る も の 、 条 件 文 の 主 文 に あ ら わ れ る も の な ど 、 さ ま ざ ま で あ る 。 thuukthaamkhamthaamlaaycay-may-dii [され る ・ 問 う ・ 質 問 ・ で ・ 気 分 が 悪 い] fontδkyuudaythuk-wanbuzaciりciU [雨 ・ 降 る ・ い る ・ 毎 日 ・ い や ・ 本 当] thaathiskδ っnaa-siadaay [た ら ・ す て る ・ も ・ 残 念 だ]

質 問 され て 気 分 が よ

くな い

毎 日雨 ば か り降 っ て

いや に な る

捨 て る の は 勿 体 な い

訂aηrooηOaandaηkhao-maathamhaynuak-huu工 場 の 音 が 響 い [音 ・ 工場 ・ 大 きい ・ 入る ・ させ る ・ うるさい]て う る さ い で す 11)こ こ に あ げ た も の の ほ か 、 次 の よ う な 補 文 構 造 の タ イ プ が み ら れ る 。 maydiithiipiakfonmuza-waan-nii [よ くな い ・ 〈関 〉 ・ ぬ れ る ・ 雨 ・ 昨 日] muza-Chao-niip1ECkthiituzuzntEC-chao [今 朝 ・ 珍 し い ・ 〈関 〉 ・ 起 き る ・ 朝 か ら] yardreokaan-paythiicakhao-naan [ま だ ・ 早 い ・ 過 ぎ る ・ 〈関 〉 ・ 〈未 〉 ・ 寝 る]

昨 日雨 にぬ れ た の が よ く

な か っ た

今 朝 は 珍 し く早 く起 き ま

した

寝 るに は ま だ早 い で す

muza-chao-niikwaa-catuzuzndaythEEp-yEE1今 朝 は 起 き る の が つ [今朝 ・ まで ・ 起 床 ・ できる ・ つ らい]ら か っ た で す な お 、 日本 語 の 「の 」 の う め こ み 文 と タ イ 語 の 補 文 構 造thli、waaと の 比 較 に つ い て は 別 稿 を 準 備 中 で あ る 。 12)こ の 対 照 比 較 に つ い て は 閻 立 羽(1983)に 詳 し い 考 察 が あ る 。 13)siacayとnaa-sia.cayを く ら べ た 場 合 、 い ず れ も 「残 念 な 、 も っ た い 一62一

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