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第2章 必修教科等の研究 4 理科 科学的思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開 : 細胞の営みを実感し,未解決課題への科学的な思考を育成する教材開発

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Academic year: 2021

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4 理科

科学的思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開

─細胞の営みを実感し,未解決課題への科学的な思考を育成する教材開発─ 太田 聡 1.はじめに 生命現象を解明し,その知見を応用する科学技術 は,今,まさに急速に新しい医療・産業革命を切り 開いていく可能性を有している。京都大学 iPS 細胞 研究所所長の山中伸也教授やケンブリッジ大学の John Bertrand Gurdon 教授らが,成熟した細胞の時 計を巻き戻しどんな細胞にもなれる万能性を取り戻 せると示した(2006,2007 年)事をきっかけに,世界 各国の科学者達が知恵を絞り,一刻を争う国家間の 特許技術争奪戦となっている現状がある。世界が注 目する最先端科学の現在の可能性だけではなく,細 胞の営みの不思議さを実感させる学習を通して,こ れからの社会への未解決課題についても積極的に立 ち向かえるような,「科学の芽」を持った生徒を育 成したいと考えている。 「細胞」の学習に関して,現行の中学校理科学習 指導要領に目を向けると, 1 年生での水中の微生物 の観察や,光合成の学習を軸として表皮細胞や孔辺 細胞などの植物細胞を学習する。そして,2 年生で は動物細胞の代表として,自分の口腔細胞の観察を 行う中で,子どもたちは 14 歳にして初めて自分の体 を構成する代表的な細胞の形や機能に興味を持ち, 生命の営みや自然の不思議さに引き込まれていく。 さらに,3 年生で花粉管の伸長や受精卵と胚との関 係性を学習する。メンデルの遺伝の法則を中心に, 多細胞生物の遺伝のしくみを遺伝子の概念を用い て,単細胞生物の殖え方の特徴と比較しながら学習 を進めている。 しかし,体細胞分裂時の染色体の分裂のような動 的な細胞の営みについて,生徒に明瞭な観察・実験 試料を扱わせ,充分に実感を伴わせるような指導を してきたとは言い難い。そこで,本研究では1つの 受精卵から始まる多細胞生物の細胞分裂と分化のし くみや,最も身近な 60 兆個 200 種類以上あるといわ れるヒト細胞の特徴や多様性などに着目し,中学校 段階で,生命現象に関する科学的思考力を高めさせ るような新たな教材や教具,授業展開について開発 しようとするものである。 2.研究仮説 身近な素材を用いた観察・実験を通して,視点の明 確化を促し,結果を実感として捉えさせ,考察させ ることができれば,未解決課題に対する科学的な思 考力・判断力・表現力を育成できるであろう。 3.研究方法 次の 3 つの内容について研究を進めた。 (1)「体細胞分裂」観察の授業実践 (2)思考力・判断力・表現力を高める方策の工夫 ①「高精細細胞ヴァーチャルスライド」の活用 ②「医学的教育資源」を活用した細胞に関連する教 材・教具の開発 (3)授業研究の分析と成果と課題 本論の要旨 中学校理科においての細胞の学習は,学年が高まるにしたがい,植物から動物へ,また,細胞の形や数 などの具体的概念から遺伝子などの目に見えない抽象的概念へと段階的に指導してきた。ただし,これま で中学校段階で,60 兆個 200 種類以上あるといわれるヒト細胞の多様性や,1つの受精卵から始まる多 細胞生物での細胞分化のしくみについて,既習事項とのつながりや実体験を伴わせて指導してきたとは言 えない。そこで,細胞に関してより興味を高めさせ,生命現象に対する科学的な思考力を高めさせるよ うな具体的な教材の開発と,学習成果を高等教育へより効果的に引き継ぐ方策を試みた。 本研究では,「細胞」の学習で,生徒にとって身近な素材を用いて授業実践を行った。そこで,未解決 課題に対して科学的視点から判断し,思考力を高められるような学習指導の事例を開発した。どのように すれば観察・実験の視点の明確化が促進され,科学的思考力・判断力・表現力を高めさせることができる か(効果的か)を明らかにし,その有効性の検証を研究の目的とした。さらに,医科大学や研究機関等と連 携した画像共有提示システムを構築し,授業に活用した。その結果,学習ノート等に記された記述内容か ら,生徒の思考の変容が明らかになった。 キーワード 思考力・判断力・表現力,視点の明確化,医科大学等との連携,ヴァーチャルスライド

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4.研究内容 (1)「体細胞分裂」観察の授業実践 生徒はこれまでに,植物や動物のからだの基本的な つくりとはたらきを,おもに多細胞生物の観察・実験 を通して学習している。また,生物のからだは細胞か らできていることや,植物と動物の細胞のしくみの違 いについて理解している。特に,成長過程のまっただ 中にある中学生にとって,「生物のからだの成長は, どのようなしくみで起こるのか?」ということに関し ては,疑問を持たせやすく,探究させやすい学習課題 であるといえる。 しかし,日頃あたりまえの現象として捉えている生 物の生命活動と,通常目にすることない微視的な細胞 レベルの営みとを関連づけて理解することは,生徒に とって容易ではない。 そこで,細胞の観察・実験では,生物の体のつくり やはたらきの設計図である細胞内の「核」のふるまい に注目させることが重要になる。多細胞生物にとって 成長の段階を,体細胞分裂に伴う「染色体の形の変化」 の様子や「細胞そのものの大きさ」の変化の様子につ いて,生徒自らに見出させることに重点を置き,授業 展開を行った。実験材料は,成長が比較的早く,生徒 にとって馴染みのある,タマネギの根の細胞を用い た。タマネギの根の伸びる様子は,成長過程のイメー ジしやすい実物と,細胞内の核の様子の違いが区別し やすい既製プレパラートを活用した。さらに,自分自 身(ヒト)の成長での細胞のふるまいについて,具体的 に実感として捉えさせたいと考え,「細胞」に関する 鮮明な動画や静止画を活用した。 生徒自身の観察手法や観察機会の改善策として,医 科大学の医師や最先端科学の研究機関等との連携を 通して,専門的な見地から,視覚的な資料,数値デー タ,中学生に適した観察・実験に関する情報等を共有 し授業を構成した。これらの改善点から,生命のすば らしさを感じ,科学的思考力を発揮できる「科学の芽」 を持つ生徒の育成をめざした。具体的な「細胞分裂 と生物の成長」の授業実践例についてつぎに述べる。 第1図に授業での観察の様子を示す。 第1図 タマネギ根の細胞観察に取り組む様子 ① 学習過程(1時間) 学習内容・活動 導 入 1.タマネギの根の先端の成長部分を観察する。 ・根の先端より数mm上(根冠の上部)でよく成長す ることを知る。 展 開 2.本時の課題を知る。 3. 課題に対する自分の考えを,図や文章でノー トにかく。 ・大きな細胞がたくさんある。 ・小さな細胞がぎっしりつまっている。 ・核が見える。 ・ひものようなものが見える。 4.意見を交流する。 ・考えたことを黒板にかく。 ・発表を聞く。 ・話し合いをし,自分の考えをはっきりさせる。 ・自分の賛成する説を決める。 5.実験の手順を聞き,実験を行う。 (1)60℃の湯であたためたうすい塩酸にタマネ ギの根の先端をつけておく。 →細胞どうしをバラバラにする準備 (2)根を押してつぶす。 (3)染色液(酢酸カーミン液)1滴かけ数分おく。 (4)スライドガラスを重ねて押し,顕微鏡で観察 する。 (5)後片づけをする。 (6)ノートに実験結果と考察を記入する。 6.実験結果をもとに結果を発表する。 ・各班で得られた実験結果を交流する。 7.細胞に見られた変化を画像をもとに整理する。 ・細胞の内部にひものような模様があった。 「核」→「染色体」 ・細胞は小さいのがたくさん見られた。 ・先端より上にいくほど細胞が大きい。 ・細胞が分かれていた 「体細胞分裂」 ま と め 8.本時のまとめをする。 ・まとめたことを発表する。 9.植物細胞と動物細胞の体細胞分裂の違いについて,整理 シートでまとめる。 ・動物細胞についてもビデオクリップで共通点と相違 点を整理する。 タマネギの根が伸びていく部分(成長点)で は,どんな特徴の細胞が見つかると思いますか。 細胞分裂の時に1つの核が染色体に変化し て、2 つの細胞に小さく分かれ、それぞれが 大きく成長する。(細胞が複製された)

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② 資料・教具・準備 タマネギ,うすい塩酸,酢酸カーミン液,ろ紙,え つき針,顕微鏡,タマネギの根の縦断プレパラート, PC,タブレット PC,ディジタルカメラ,液晶ペンタ ブレット,ビデオクリップ(動・植物の細胞の体細胞 分裂),プロジェクター,電子黒板,実物投影機,学 習整理シート,高精細細胞ヴァーチャルスライド 第2図 生徒が記録した授業ノートの一例 授業では観察の前に,タマネギの実物だけでなく, ディジタル教科書に添付されている根の成長の微速 度撮影動画を補助的に用いて,根の内部構造について イメージさせ,根の成長と既習事項である細胞の形 と,数量の関係について,図や文章を用いて予想させ た。第3図は,予想から導かれた,「根の成長部分 に関する観察時の視点」を,生徒自身が電子黒板上に 書き込みながら説明している様子である。 第3図 観察時に注目すべき視点を説明する生徒 その際,主にYチャート等を活用し,観察の視点を 明確にさせ,観察前後の根の成長に関する概念形成の 記録がノートに残るように留意した。第2図に生徒 の記録したノートの一例を示す。ここでは,特に, ①細胞の形や大きさ②細胞の数③核の様子の変化に ついての観察の視点を引き出し,生徒自身の気づきが 記述に活かされることをねらいとした。 観察では,タマ ネギの根の実物を 利用した。立体的 に折り重なる細胞 から生徒自身にプ レパラートを作成 させる直接体験の 意味は大きいと考 え,生徒実験とし ている。ただし, 根の中の細胞の並 びを正確に実感さ せ,記録させるに は,根を塩酸で処 理し,押しつぶし て観察する方法だ けでは十分とはい えない。そこで, 観察のひとつの視 点である,成長過 程にある根の細胞 の連続的な連なりを効果的に観察させるために,既成 品である根の縦断プレパラートも用意し,両者を併用 して観察させた。 (2) 「高精細細胞ヴァーチャルスライド」の活用 限られた授業時間の中で,学習課題の把握・予想・ 観察・記録・考察・まとめに至るまでの一連の時間を 確保する必要がある中で,学習の各段階に費やす時間 のバランスの取り方を常に検討しておく必要がある。 指導者は,どの授業においても,一連の思考過程を 効果的に織り込むような授業展開を常に目指してい る。その一方で,生徒自身は細胞観察にじっくりと時 間をかけ,「自分自身で」細胞をもっと観察してみた いと考える生徒がいるはずである。しかし,生徒一人 あたりの顕微鏡台数や観察時間の制約等の関係で,観 察に対する「科学の芽」を失わせる原因になっていな いだろうかと考えるようになった。 そこで,授業時間内では,従来通り科学的に思考・ 判断・表現させる土壌作りを継続する一方で,授業時 間外においても,すべての生徒が「科学の芽」を伸ば

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し得る機会を確保し,継続的に探究可能な学習環境を 確保することの重要性と教育的意義を感じた。 具体的には,後述する医科大学等との連携を通し て,理科教室内だけでなく,授業後,いつでも,どこ でも,生徒自身の意志で,授業時間中にわき起こった 新たな疑問に対して,細胞の観察や考察が継続できる 環境を独自に構築することはできないかと考え,ネッ トワークを活用した自作「高精細細胞ヴァーチャルス ライド」の活用環境の構築を目指した。(以下,ヴァ ーチャルスライドと略記する。) そこで,本研究の一環として,生徒が実際に顕微鏡 観察するものと同一のプレパラートを用いてヴァー チャルスライドを独自に作成し,画像データをアーカ イブ化し,授業に活用することとした。 ここで,特に留意した点は,授業中に一連の顕微鏡 観察を,一度実際に経験させておくという点である。 これらの実体験を踏まえさせたうえで,疑似的な観察 の環境を提供することに意味があると考える。なぜな ら,ヴァーチャルスライドのみ利用し,目前にある実 物を対象とした観察・実験を軽視するのでは,科学教 育の手段として本末転倒だと考えたからである。「自 分で実際にやってみる」ことの価値は何事にも代え難 いと考えている。 本授業においても,生徒自身が顕微鏡観察をひとと おり終え,①細胞の大きさ②細胞の数③核の様子の変 化について整理し,観察から得た新たな発見を考察す る段階で初めて第4図のような画像を提示した。こ れらは,授業で活用したタマネギの根の成長点にお けるヴァーチャルスライドの実例である。 第4図 タマネギの根(成長点)の高精細 ヴァーチャルスライド画像 ヴァーチャルスライドは,観察箇所の移動・回転 や観察倍率の増減だけでなく,擬似的なピントの調 整が可能なため,まるで目の前で実物の顕微鏡をの ぞき込んでいるような高精細画像を複数の生徒で共 有して目にすることができる。生徒は,自分自身が 顕微鏡で観察した結果と一致していることで観察へ の自信を持ち,観察の視点に対してさらに言えること はないかどうかをノートに記述する姿が見られた。ま た,観察がなかなかうまくいかなかった生徒にとって も,第5図のようにプロジェクターによって映し出 した高精細画像を用いて観察を振り返らせ,生徒自身 の言葉で特徴を説明させることができた。そうするこ とで,体細胞分裂の全過程の理解や,生物の成長と体 細胞分裂のしくみとを関連付けてとらえさせること が容易にできた。 第5図 体細胞分裂を生物の成長と関連付け 高精細画像を活用して説明する生徒 期待していた通り,授業ノート記述からは,細胞 の美しさやそのしくみに興味を持った生徒が数多く 見られた。第6図にその一例を示す。 ここで,科学の芽をさらに育てたいと考え,家庭 でもインターネットを通してヴァーチャルスライド を活用できる機会を与えた。専用のID・パスワード を入力することで, 第6図 生徒の細胞観察の記録例(授業ノート) 今回使用したタマネギの根だけでなく,動物細胞 として自分自身の身体をつくる骨細胞等についても 同様に,高精細画像が観察できることを紹介した。 すると早速,家庭においても複数の生徒が閲覧し, ヴァーチャルスライドを用いた細胞の観察につい て,以下のように記述していた。 生徒自身の顕微鏡観察は,理科学習にとって必要 不可欠である。しかし,顕微鏡の観察スキルや物理 的な制約が一因となり,学習課題に対し考察に至る までの,生徒の科学的な思考を導き出せないでいた

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場面も多かったことから,ヴァーチャルスライドの 活用を通して,授業での顕微鏡観察の補完的な役割 が今後も期待できる。 (3)「医学的教育資源」を活用した細胞に関連する 教材・教具の開発 ①ヴァーチャルスライドの作製 滋賀医科大学開放型基礎医学教育センター(相見 良成准教授)の全面的な技術指導と施設協力を得て, 本校が所有する生物プレパラートの一部を試験的に デ ィ ジ タ ル ア ー カ イ ブ 化 し た 。 使 用 し た 機 器 は NanoZoomer2.0RS(浜 松 ホ ト ニ ク ス 社 製 ,分 解 能 /pixel:0.46μm(20 倍モード),0.23μm(40 倍モード)) で,授業で用いる各プレパラートをスキャンした。第 7図に使用した機器と作製手順を示す。 第7図 ヴァーチャルスライドの作製過程 ②画像共有提示システムの構築 ディジタルアーカイブ化した画像はインターネッ トを介し,理科室内外を問わず活用できるよう公開 (第8図)した(http://vslide.shiga-med.ac.jp/)。 第8図 ログイン画面 ③学校現場で活用できる医学的教育資源の利用 生徒にとって,体細胞分裂のしくみを時間軸に沿 って整理し,実感を伴って理解することは難しい。 生きている細胞の観察,特に体細胞分裂途中の細胞 を直接的に定点観察できる機会はほとんどなく,こ れまで教科書や資料集等の静的な写真資料を提示し て理解させることが多かった(第9図)。 第9図 カエル受精卵の分裂の様子を 写真を並び替えて説明する生徒 そこで,医学専門誌等に付属する動画資料や鮮明 な提示用資料を収集し,授業に活用した(第10図)。 第10図 受精卵の分裂動画を観察 また,発展的な細胞の観察・実験が可能な教材・ 教具の開発について検討した。その中でも,今後さ らに研究が深まり,我々の生活に大きく貢献するで あろう iPS 細胞について,自作プレパラートを作製 する試みを行おうとした。しかしながら,現実的に は iPS 細胞を入手するだけで高額なライセンス料が 発生することや,細胞をプレパラート上に固定化す るまでの設備・技術面等の問題がありプレパラート の自作は今回断念せざるを得なかった。そこで,京 都大学が主催する「やってみよう幹細胞研究」に昨 年度から2年間にわたって参加し,コリメート法に (手順1)プレパラートを スキャナートレイ に装塡 (完成画像)ミジンコ (手順2)フォーカスを指定し 多層スキャンを実施

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より iPS 細胞をはじめとする主要なヒト幹細胞のデ ィジタル高精細画像の撮影と幹細胞研究に関する基 礎研修を行うことができた(第11図)。これによ り,学習指導要領に沿った身近な植物・動物細胞だ けでなく,最先端科学で扱われている細胞に至る幅 広いデータベースとして保有し,前述のヴァーチャ ルスライドと併せて授業に活用できる環境を整える ことができた。 第11図 コリメート法による iPS 細胞の撮影画像 (ヒト iPS 細胞と周囲の繊維芽細胞) 5. 授業研究の分析 研究授業実践「生物の成長と細胞分裂」について, ①課題意識の形成,②帰納的推論・演繹的推論によ る仮説形成,③科学事象の理解,④科学事象への興 味・関心,⑤学習後の充実感の5つの観点に基づく 生徒の意識調査を第12図に示す。質問紙調査は, 3年生3学級の生徒 119 名を対象として実施した。 質問項目は,4段階評価(肯定を4,否定を1)と し,評価の数値は平均値を表した。 観点 質問項目 評価 ① 課題意識 本時の課題を意識した 3.6 ② 仮説形成 課題を深く考えることができた 3.5 友達の意見をよく聞いた 3.4 ねらいを持って観察・実験した 3.4 観察・実験で明らかになったことを 整理してまとめることができた 3.5 ③ 科学事象 授業を通して理解が深まった 3.5 の理解 ④科 学 事 象 へ の興味・関心 今後の授業への期待が高まった 3.3 ⑤ 学習後の 充実感 授業の中でできるようになったこ とがある 3.0 第12図 学習についての質問紙結果 これらの結果から言えることは,昨年度に引き続 き,Yチャートの活用を通して,観察・実験の視点を 明確化したことにより,①課題意識や②仮説形成が スムーズに行われ,③課題に対する科学事象の理解 が高まった傾向にある。④興味・関心については, 昨年度と同様である。⑤学習後の充実感については, 生徒一人ひとりの顕微鏡観察の機会の確保に密接に 関係していると考えられる。観察に適した明瞭・簡 便なプレパラート作製法の改良や観察時間の確保の 改善など,授業中の活動内容を盛り込みすぎない工 夫が今後必要であろう。ヴァーチャルスライド等を 活用しつつも,「自分でやってみさせる」という基 本的な要素を欠かさず,新たな発見への充実感や学 習への達成感を失わせることのない授業改善に今後 も力を注ぎたい。 授業で最も充実していた点を生徒に挙げさせる と,「普段見られない貴重なものが見られた」,「染 色体まではっきり見られて良かった」等,新たな発 見への驚きの声が多かった。細胞が鮮明に観察でき たことから「染色体がまとまったものが核だったこ とに驚いた」という細胞構造の関係性にまで言及す る生徒もいた。また,授業に関する全般的な感想で は,「自分で観察したあと映像を見るのは理解が深 まって良かった」,「タマネギだけではなく,他の 細胞も見てみたい」といった肯定的な意見が得られ た。 6.成果と課題 根拠のある予想を事前に立てさせ,観察・実験の 視点を事前に明確化し,各班の得た結果を使って考 察させる時間の確保が重要な意味を持つことが分か ってきた(*1)が,その前段階として,明瞭な観察・ 実験結果を生徒自身が実感として得ることで,考察 につながる思考活動に効果的に展開できる可能性が 見えてきたことから,実際の顕微鏡観察と,今回新 たに開発したヴァーチャルスライドを併用する観察 方法は,今後,重要な意味を持つと考える。 授業研究会参会者からは,Yチャートが授業で思 考の流れが見えるツールとして活用されていたこと への肯定的意見や,観察・実験を行う授業において 思考場面を確保するための授業内容精選に関する課 題提起,生徒のつぶやきを拾い上げる場面やツール の充実に向けての意見交流を行った。これらを受け, 科学的思考力・判断力・表現力の育成に向けさらに 授業改善を心がけていきたい。 文献 *1 太田 聡(2013)科学的思考力・表現力を高め る理科授業の展開の工夫-身近な素材を実験・観察に 取り入れた,思考する理科学習-,滋賀大学教育学部 附属中学校研究紀要第 55 集,pp.58-63 本研究は,平成 25 年度科学研究費補助金(奨励研 究,課題番号 24935002)の助成を受けて行った。

参照

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