愛知県医師会健康教育講座 平成23 年 9 月 17 日
食物アレルギーの最前線
伊藤浩明(あいち小児保健医療総合センター) 食物アレルギーは、赤ちゃんでは10〜20 人にひとり、小学生でもクラスにひとりくらい の子どもが持っている、代表的なアレルギーの病気です。原因となる食べ物(アレルゲン) を食べると、15 分くらいでじんま疹や咳、腹痛などの症状が出現します。ひどいときには、 血圧が下がって意識が朦朧となるような、アナフィラキシーショックという危険な状態を 引き起こします。 アレルギーとは、体の中で IgE 抗体など免疫力の働きによって症状が起きることをいい ます。ぜん息や花粉症も、同じアレルギーの病気です。アレルギーがあるかどうかを調べ る IgE 抗体検査は、病院で採血をすれば簡単に受けることができます。ただし、検査が陽 性であっても、食べた時に症状を感じないものは食物アレルギーとは診断されず、除去す る必要もありません。 アレルギーを起こしやすい食べ物は、鶏卵・牛乳・小麦などで、そのほとんどは赤ちゃ んの頃から発症します。特に、湿疹のある赤ちゃんは食物アレルギーの合併が多いため、 湿疹が治りにくければアレルギーがあるかどうか検査を受けることも考えましょう。その 他、ピーナッツ、大豆、魚、ソバ、エビなどもアレルギーを起こすことがある食品です。 食物アレルギーと診断された赤ちゃんでも、1年後に約 30%は症状なく食べられるよう になってきます。アレルゲン食品を除去する時には、それを見直す時期を主治医とよく相 談して、将来の見通しを持てるように心がけましょう。 食物アレルギーを正確に診断したり、解除できる時期を見つけるためには、実際にアレ ルゲン食品を食べて症状が出るかどうかを見極めることが必要です。しかし、家庭で試し に食べてみるのは危険を伴います。そのために、病院の中で計画的に食べて症状を観察す る「食物経口負荷試験」を受けることが、最も安全・確実な方法です。この検査は保険適 応もあり、愛知県下でも多くの病院で実施できるようになってきました。 わずかな量の摂取でも症状が出てしまう場合は、アレルゲン成分を少しでも含む食品を 完全に除去することが必要です。食品表示をよく確認して、アレルゲンが含まれないもの を選びます。レストランやホテルで食事をする時にも十分に確認することが必要ですが、 最近ではしっかり対応してくれる施設も増えてきました。 食物経口負荷試験を受けると、アレルギーはあっても安全に食べられる量が見つかるこ とがあります。症状なく食べられるものは、できるだけ食事に取り入れて食べるようにし ましょう。それが、アレルギーを治していく力にもなります。ただし、加工食品の中にア レルゲン成分がどの程度含まれているかという情報は、なかなか得られないものです。私たち専門施設では、専属の栄養士がたくさんの情報を集めて、できるだけ具体的な食事の アドバイスできるように努力しています。 卵や牛乳など特定の食品にアレルギーを持つ方の多くは、ソバ・ピーナッツ・エビなど 「重いアレルギーを起こしやすい食べ物」を怖くて食べられない、という気持ちを抱いて います。食べ物が関連する生活上のあらゆる場面で、常に不安と緊張感を持って生活され ています。それは安全を守る上で必要なことではあるのですが、子どもさん自身が常にそ うした雰囲気の中で成長すると、「食べることが怖い」という気持ちから抜け出せなくなっ てしまう場合があります。せっかくアレルギーが治っても、学校の給食を食べることが不 安で弁当を持って行く、ということもあります。 アレルギーは難しい、原因不明でよくわからない、と言われますが、多くの方が持って いる疑問や誤解はほとんど共通です。そのほとんどには、現時点で最良と思われる答えが あります。 アレルギーのことをよく知ることで、食べ物に対する漠然とした不安ではなく、何に気 をつけたらいいかというポイントをつかみましょう。お母さまが知識と自信を持つことが、 アレルギーはあっても食べることの大好きな子どもが育つ力になるはずです。