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寺戸 武志 *・永浦 拡 **対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程
─小学4年生を対象に─
本研究の目的は,小学4年生を対象とした「いじめ未然防止プログラム」の実践過程から,教師とスクー ルカウンセラーとの協働によるプログラム実践の効果およびその課題について検討することであった。ス クールカウンセラーと2名の教師でミーティングを行ってアレンジされた授業案をもとに,1クラス20名 の児童に対して計5回の授業が実施された。ミーティングはLINEのグループチャット機能を活用して行わ れた。その結果,アセスメントツールCoCoLo-34の事前・事後の比較では,すべての因子において有意な 差は認められなかった。2名の教師へのインタビュー調査結果からは,5名の児童のポジティブな行動の 変化や教師自身の考え方の変化等が示された。これらより,LINEを使ったミーティングの有効性,教師 とスクールカウンセラーとの協働の在り方の実践例の提案と,アセスメントの方法及び勤務時間に関する 課題が提起された。 キーワード:ストレスマネジメント,コミュニケーション能力,いじめ未然防止,連携・協働 問題と目的 兵庫県教育委員会では,「いじめ未然防止プログ ラム」を作成し,平成27年度よりWebを通じて小・ 中・高等学校及び特別支援学校向けに提供を行っ ている(兵庫県教育委員会,2015)。同プログラ ムは,児童生徒自身がいじめをしない,させない, 見逃さないために育むべき11の資質・能力(ス トレスマネジメント能力,コミュニケーション能 力,思いやり・他者理解など,以下「11の資質・ 能力」)の向上をねらいとした54種(2019年4月 現在)の授業案からなる「授業プラン」と,それ らの資質・能力のよりスムーズな般化に生かせる 活動例が示されている10種(2019年4月現在) の「特別活動プラン」から構成されている。「授 業プラン」に収録されている授業案には,ストレ スマネジメントをはじめ,アサーション,認知の コラム法,傾聴に関するスキルやソーシャルスキ ルトレーニング(SST)など,心理学に関する専 門的な知識や視点も多く盛り込まれている。 しかし,このような心理学を基盤とした心理教 育プログラム授業の実施について,教師は「教師 の知識・情報」,「効力感」,「同僚や学校管理者の理 解」といった課題を感じていることが報告されて いる(越・安藤,2013)。 「いじめ未然防止プログラム」に収録されてい る「授業プラン」には,ねらいや展開例の他に, 内容を解説した「参考」や「資料」が掲載されて おり,教師が授業展開をイメージしやすいように 工夫が施されている。しかし,教師の専門である 教科の指導とは異なり,心理学等の専門的な内容 が含まれている授業案もあることなどから,A4 用紙1枚程度の文章による解説を読むだけでは不 十分であり,実施する教師からは「授業展開のイ メージが掴みにくい」という意見が多くあったと 報告されている(寺戸・増田・乘松・藤原,2016)。 また,同プログラムの「授業プラン」の中には, スクールカウンセラー(以下,SC)とのチーム ティーチング(以下,TT)による共同実施が推 奨されている授業案もある。 このような心理教育プログラムの実施において, 集団に関わることや授業を実施することのプロで * 兵庫教育大学発達心理臨床研究センター ** 神戸医療福祉大学2.児童対象の質問紙調査 実施前のアセスメントおよび実施前後による効 果の検討のため,2018年10月(実施前),2019 年3月(実施後)の2回にわたり,CoCoLo-34(寺 戸ら,2019)を用いた調査を実施した。 CoCoLo-34は児童生徒の「11の資質・能力」 をアセスメントすることを目的とした質問紙であ る。24項目8因子(ストレスマネジメント能力, セルフコントロール能力,自尊感情・自己効力感, 道徳性,思いやり・他者理解,コミュニケーショ ン能力,思いや考えの表現力,相談・支援を求め る力)からなる『個々の児童生徒の力』と,6項 目3因子(仲間づくり・絆づくりに資する力,自 治集団づくりに資する力,規律性)からなる『学 級全体の力』に,いじめの実態把握に活用できる 4項目(いじめ加害経験,いじめ被害経験,個人 としてのいじめへの傍観意識,集団としてのいじ めへの傍観意識)を加えた計11因子34項目で構 成されている。因子ごとの合計得点に対して校種 毎に基準値が予め算出されており,付属のエクセ ルに入力するとこの基準値をもとにした結果シー トが示されるようになっている。 このCoCoLo-34を用いて,児童生徒の『個々の 児童生徒の力』を測定する24項目と実態把握用 の3項目(「加害」「被害」「個人の傍観」)に対し ては 普段のあなたに ,また,『学級全体の力』を 測定する8項目と実態把握用の「学級の傍観」に 関する1項目に対しては 普段のあなたのクラスの 様子に どの程度当てはまるかについて,「3:すご く当てはまる」「2:だいたい当てはまる」「1: あまり当てはまらない」「0:全然当てはまない」 の4件法で回答を求めた。なお,CoCoLo-34が対 象とするのは小学校5年生以上であるが,著者ら で検討し,小学校4年生の2学期と3学期に用いる こと,本プログラムに付属している質問紙であり 「授業プラン」の選定に生かしやすいことから使 用することとした。 また,調査は学級担任によって行われ,成績と は関係がないこと,回答は強制的ではないことに ついて,質問紙上および口頭で説明がなされた。 ある教師と,心理の専門家であり心理学的アプ ローチのプロであるSCとが協働で取り組むこと は,学校における一次支援活動を効果的に実践し ていくためにきわめて重要であると考える。 一方,教師は日々の授業実施ほか,担任業務, その他校務分掌に関わる業務など多くのタスクを 抱 え て お り,「OECD 国 際 教 員 指 導 環 境 調 査 (TALIS)2018」においても,その1週間あたり の仕事時間は小学校で54.4時間,中学校では 56.0時間と,参加国でも最長であることが明ら かとなっている(国立教育政策研究所,2019)。 また,平成7年より配置が開始されたSC配置事業 においては,その多くが非常勤での勤務体制と なっており,個別カウンセリングやコンサルテー ションといった相談業務が多くなればなるほど, 一次支援活動に十分な時間を充てることが困難と なる。これらのことから,教師とSCとが協働で「い じめ未然防止プログラム」を実践していくために は,互いの勤務体制や時間的制約を考慮した上で, 連携を図っていく必要がある。 そこで本研究では, 小学4年生を対象とした「い じめ未然防止プログラム」の実践過程から,教師 とSCとの協働によるプログラム実践の効果およ びその課題について検討する。 方 法 1.実践の概要 1)実施対象:A県B市の市立小学校4年生1学級(男 子8名,女子12名,計20名)。B市は小都市であり, 実施対象校はB市の農村地帯に位置している。 2)実施期間:2018年10月∼ 2019年3月 3)実践までの経緯:2018年7月,担任より「児 童間で攻撃的な言動等が多くみられるが,どのよ うに指導すべきか苦慮している」と,SC(第二 著者)に対して相談がなされた。SCと担任は学 校長および児童支援担当教諭と協議し,学級全体 を対象とした心理教育的アプローチとして,「いじ め未然防止プログラム」を活用した授業の実施を 決定した。
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対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 ―小学4年生を対象に― 4.倫理的配慮 本研究は,実施校の学校長の許可を得て実施さ れた。また,調査結果から心理的介入が必要と思 われた児童には第二著者であるSCが面接を行う こととした。 結 果 1.実践の経過 1)授業プランの選定 実施前のCoCoLo-34の結果シートより,ストレ スマネジメント能力とコミュニケーション能力が 基準値を下回る「課題となる資質・能力」である ことが確認された。そこで,SCは「いじめ未然 防止プログラム」およびCoCoLo-34の作成に携 わった第一著者と協議のうえ,プログラム内の「授 業プラン」の中からストレスマネジメント能力の 向上を主なねらいとする「ストレスマネジメン ト」,コミュニケーション能力の向上を主なねら いとする「ひょっとしてコーピング」の授業を, また,担任が懸念している攻撃的な言動等に対応 するものとして,思いや考えの表現力の向上を主 なねらいとする「適切な表現方法」の授業を紹介 し,3つの「授業プラン」の実施を提案した。学 校側との協議の結果,上記3つの「授業プラン」 を2学期中に実施することとした(Table 2)。 また,結果はプログラムの効果検討のほか,教育 相談に用いる場合があることについて,口頭で説 明がなされた。 3.教師対象のインタビュー調査 本実践およびSCとの連携・協働の過程を教師 がどのようにとらえているのかについて明らかに するため,実践に関わった2名の教師を対象とし たインタビュー調査を実施した。2名の教師の属 性について,Table 1に示す。調査は,プログ ラム終了後の2019年8月,第二著者によって行 われた。調査開始時に「あなたは,今回の『いじ め未然防止プログラム』をSCとの協働で取り組 むにあたり,どんなことを感じたかについてお聞 かせください」と口頭で教示した上で回答を求め た。なお,インタビューの時間は,約1時間とした。 また,インタビューは調査対象者2名の了承のも と録音が行われ,音声データをもとに逐語録を作 成した。 【寺戸・永浦】対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 <図表データ> Table 1 インタビュー対象者の属性 Table 2 2 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 3 3 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 4 CoCoLo-34 下位尺度の t 検定結果 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など •ストレッサーとストレス反応との関係について説明。 •適切なストレス対処について話し合う。 •眠りのためのリラックスの体験。 コミュニケーション •教員によるロールプレイ→他の考え方はできないか?と児童に 考えさせる。 セルフコントロール •「ひょっとして」と考えることでストレスを緩和できると伝える。 ストレスマネジメント 思いや考えの表現力 •教員によるロールプレイ→どのような意見の表明がお互い ストレスなく過ごせるか コミュニケーション を児童に考えさせる。 思いやり・他者理解 •自他尊重「アサーティブ」の説明。 適切な表現方法 ひょっとしてコーピング ロールプレイではあえてアサーティブな例は提示 せず、児童に「ストレスなく過ごせる意見の表 明」を実演させた。 「ひょっとして」を考えるときに落ち着くための 方法として「10秒呼吸法」を授業内で実施した。 ストレスの仕組み ストレスマネジメント 「ストレスコーピング」はストレスと上手に付き 合うための「技」であり、今後の授業でレパート リーを増やそう!と伝えた。 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など コミュニケーション •教員によるロールプレイ(クラスメイトの言葉を、自分の名前が呼ばれたと勘違いした) セルフコントロール •どのような言い方をすればトラブルにならずに過ごせるかを児童に考えさせ、実演させる。 •まずは「何のこと?」と確認する一言が大切であると伝える。 コミュニケーション •ストーリー(音楽会の練習に来ないAさんと悪口を言うBさん)を読ませる。 思いやり・他者理解 •「ひょっとして」コーピングを使って、Aさんが練習に来ない理由を 考え、Bさんに「〇〇かもしれないね」とその理由の伝え方を考えさせる。 音楽会の練習で… 立ち止まって考えよう 自己表現を行う前に、自分の思い込みであるかど うか「確認」をするためのスキルの習得をねらい とした。 過去にクラスで起こったトラブルをもとに教師が 中心となりシナリオを作成した。やや重たい内容 を取り扱うことで、楽しむことよりも真剣に考え させることをねらいとした。 対象者 性別 年齢 経験年数 X(担任) 女性 20代前半 1年 Y(児童支援担当) 男性 30代後半 16年目 【寺戸・永浦】対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 <図表データ> Table 1 インタビュー対象者の属性 Table 2 2 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 3 3 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 4 CoCoLo-34 下位尺度の t 検定結果 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など •ストレッサーとストレス反応との関係について説明。 •適切なストレス対処について話し合う。 •眠りのためのリラックスの体験。 コミュニケーション •教員によるロールプレイ→他の考え方はできないか?と児童に 考えさせる。 セルフコントロール •「ひょっとして」と考えることでストレスを緩和できると伝える。 ストレスマネジメント 思いや考えの表現力 •教員によるロールプレイ→どのような意見の表明がお互い ストレスなく過ごせるか コミュニケーション を児童に考えさせる。 思いやり・他者理解 •自他尊重「アサーティブ」の説明。 適切な表現方法 ひょっとしてコーピング ロールプレイではあえてアサーティブな例は提示 せず、児童に「ストレスなく過ごせる意見の表 明」を実演させた。 「ひょっとして」を考えるときに落ち着くための 方法として「10秒呼吸法」を授業内で実施した。 ストレスの仕組み ストレスマネジメント 「ストレスコーピング」はストレスと上手に付き 合うための「技」であり、今後の授業でレパート リーを増やそう!と伝えた。 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など コミュニケーション •教員によるロールプレイ(クラスメイトの言葉を、自分の名前が呼ばれたと勘違いした) セルフコントロール •どのような言い方をすればトラブルにならずに過ごせるかを児童に考えさせ、実演させる。 •まずは「何のこと?」と確認する一言が大切であると伝える。 コミュニケーション •ストーリー(音楽会の練習に来ないAさんと悪口を言うBさん)を読ませる。 思いやり・他者理解 •「ひょっとして」コーピングを使って、Aさんが練習に来ない理由を 考え、Bさんに「〇〇かもしれないね」とその理由の伝え方を考えさせる。 音楽会の練習で… 立ち止まって考えよう 自己表現を行う前に、自分の思い込みであるかど うか「確認」をするためのスキルの習得をねらい とした。 過去にクラスで起こったトラブルをもとに教師が 中心となりシナリオを作成した。やや重たい内容 を取り扱うことで、楽しむことよりも真剣に考え させることをねらいとした。 対象者 性別 年齢 経験年数 X(担任) 女性 20代前半 1年 Y(児童支援担当) 男性 30代後半 16年目 【寺戸・永浦】対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 <図表データ> Table 1 インタビュー対象者の属性 Table 2 2 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 3 3 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 4 CoCoLo-34 下位尺度の t 検定結果 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など •ストレッサーとストレス反応との関係について説明。 •適切なストレス対処について話し合う。 •眠りのためのリラックスの体験。 コミュニケーション •教員によるロールプレイ→他の考え方はできないか?と児童に 考えさせる。 セルフコントロール •「ひょっとして」と考えることでストレスを緩和できると伝える。 ストレスマネジメント 思いや考えの表現力 •教員によるロールプレイ→どのような意見の表明がお互い ストレスなく過ごせるか コミュニケーション を児童に考えさせる。 思いやり・他者理解 •自他尊重「アサーティブ」の説明。 適切な表現方法 ひょっとしてコーピング ロールプレイではあえてアサーティブな例は提示 せず、児童に「ストレスなく過ごせる意見の表 明」を実演させた。 「ひょっとして」を考えるときに落ち着くための 方法として「10秒呼吸法」を授業内で実施した。 ストレスの仕組み ストレスマネジメント 「ストレスコーピング」はストレスと上手に付き 合うための「技」であり、今後の授業でレパート リーを増やそう!と伝えた。 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など コミュニケーション •教員によるロールプレイ(クラスメイトの言葉を、自分の名前が呼ばれたと勘違いした) セルフコントロール •どのような言い方をすればトラブルにならずに過ごせるかを児童に考えさせ、実演させる。 •まずは「何のこと?」と確認する一言が大切であると伝える。 コミュニケーション •ストーリー(音楽会の練習に来ないAさんと悪口を言うBさん)を読ませる。 思いやり・他者理解 •「ひょっとして」コーピングを使って、Aさんが練習に来ない理由を 考え、Bさんに「〇〇かもしれないね」とその理由の伝え方を考えさせる。 音楽会の練習で… 立ち止まって考えよう 自己表現を行う前に、自分の思い込みであるかど うか「確認」をするためのスキルの習得をねらい とした。 過去にクラスで起こったトラブルをもとに教師が 中心となりシナリオを作成した。やや重たい内容 を取り扱うことで、楽しむことよりも真剣に考え させることをねらいとした。 対象者 性別 年齢 経験年数 X(担任) 女性 20代前半 1年 Y(児童支援担当) 男性 30代後半 16年目16
発達心理臨床研究 第26巻 2020 び「適切な表現方法」の「授業プラン」を参考と した2つの授業案を担任・児童支援担当・SCで新 たに作成し,3学期に実施することにした(Table 3)。その際に,児童支援担当の提案で,以前学 級内で起こったトラブルに類似した事例を取り上 げ,ロールプレイ中心ではなく,新たに創作した 架空事例を読みディスカッションをさせるなどの 工夫を取り入れた。また,担任は授業時間外の般 化をねらいとし,授業内容を日常の指導場面で活 用する,学級だよりやポスター掲示により振り返 るなどの取り組みを行った。 2.実践による効果の検討 1)CoCoLo-34を用いた児童の資質・能力の変化 実施前後のCoCoLo-34の平均点の差を検討する ため,t検定を行ったところ,すべての因子にお いて有意な差は認められなかった(Table 4)。 2)教師対象のインタビュー調査の結果 作成されたインタビュー調査の逐語録を語られ た内容ごとに分割し,著者らによって内容の分類・ 命名を行った。分類の結果,「1:教師側の課題や気 づき」「2:協働実施について」「3::授業について」「4: 児童の変化について」の4つの大項目に整理され た(Table 5)。 「1:教師側の課題や気づき」については「①心 の健康教育の普及」「②SCとの関係」「③時間確保」 から構成される「1a:現状の課題」,「④心の健康教 育の重要性」「⑤今後の指導の在り方」「⑥心の健 康教育の在り方」から構成される「1b:教師自身 の気づき」の2つの中項目にまとめられた。授業 2)授業の実施および教師のアレンジ 各授業は,担任および児童支援担当が中心と なって行い,SCは授業補助および助言を行った。 また,各授業の実施前後に,担任,児童支援担当, SCでミーティングを行い,学級の様子の共有と 今後の計画等について検討がなされた。やむを得 ずSCの勤務時間内でミーティングを行うことが できない場合は,LINEのグループチャット機能 を用いたミーティングを実施した。 「いじめ未然防止プログラム」の「授業プラン」 は「11の資質・能力」のそれぞれについて発達 段階に合わせて校種別・学年別に推奨される授業 案が整理されているが,他校種や他学年の授業案 についても適宜アレンジを施すことで利用可能と されている。また,他校種や他学年の授業案でな かったとしても,実施対象となる児童生徒の実態 や,実施する教師の特性等を鑑みたアレンジを施 すことが推奨されている。そこで,実施前のミー ティングでは,各授業案に関して,対象となる児 童の実態に応じたアレンジについて,主に教師が 中心となり検討を行った(例:ロールプレイの題 材がイメージしづらいと考えられる,提供されて いる「授業プラン」の推奨学年が異なるなど)。 各授 業にお けるアレンジの具体例について, Table 2に示す。 3)2学期終了後のミーティング 当初予定していた3つの「授業プラン」実施終 了後に授業実施後の児童の様子と今後の方針につ いてミーティングを行った。授業実施後の児童の 様子について,担任より「『ひょっとしてコーピ ング』の授業で相手の状況や気持ちを鑑みた対応 の在り方について,収録されている事例のロール プレイを通じて体験させたが,依然,勘違いから 児童同士のトラブルに発展するケースがみられ る」との報告がなされた。また,教師・SC双方 の見取りとして「一部の児童において,事例のロー ルプレイの演技自体を楽しむことにとらわれ,授 業のねらいを理解していないと思われる」と考察 された。そこで,「ひょっとしてコーピング」およ 【寺戸・永浦】対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 <図表データ> Table 1 インタビュー対象者の属性 Table 2 2 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 3 3 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 4 CoCoLo-34 下位尺度の t 検定結果 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など •ストレッサーとストレス反応との関係について説明。 •適切なストレス対処について話し合う。 •眠りのためのリラックスの体験。 コミュニケーション •教員によるロールプレイ→他の考え方はできないか?と児童に 考えさせる。 セルフコントロール •「ひょっとして」と考えることでストレスを緩和できると伝える。 ストレスマネジメント 思いや考えの表現力 •教員によるロールプレイ→どのような意見の表明がお互い ストレスなく過ごせるか コミュニケーション を児童に考えさせる。 思いやり・他者理解 •自他尊重「アサーティブ」の説明。 適切な表現方法 ひょっとしてコーピング ロールプレイではあえてアサーティブな例は提示 せず、児童に「ストレスなく過ごせる意見の表 明」を実演させた。 「ひょっとして」を考えるときに落ち着くための 方法として「10秒呼吸法」を授業内で実施した。 ストレスの仕組み ストレスマネジメント 「ストレスコーピング」はストレスと上手に付き 合うための「技」であり、今後の授業でレパート リーを増やそう!と伝えた。 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など コミュニケーション •教員によるロールプレイ(クラスメイトの言葉を、自分の名前が呼ばれたと勘違いした) セルフコントロール •どのような言い方をすればトラブルにならずに過ごせるかを児童に考えさせ、実演させる。 •まずは「何のこと?」と確認する一言が大切であると伝える。 コミュニケーション •ストーリー(音楽会の練習に来ないAさんと悪口を言うBさん)を読ませる。 思いやり・他者理解 •「ひょっとして」コーピングを使って、Aさんが練習に来ない理由を 考え、Bさんに「〇〇かもしれないね」とその理由の伝え方を考えさせる。 音楽会の練習で… 立ち止まって考えよう 自己表現を行う前に、自分の思い込みであるかど うか「確認」をするためのスキルの習得をねらい とした。 過去にクラスで起こったトラブルをもとに教師が 中心となりシナリオを作成した。やや重たい内容 を取り扱うことで、楽しむことよりも真剣に考え させることをねらいとした。 対象者 性別 年齢 経験年数 X(担任) 女性 20代前半 1年 Y(児童支援担当) 男性 30代後半 16年目 <図表データ> Table 1 インタビュー対象者の属性 Table 2 2 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 3 3 学期に実施した授業プランの概要および教師のアレンジ・工夫例 Table 4 CoCoLo-34 下位尺度の t 検定結果 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など •ストレッサーとストレス反応との関係について説明。 •適切なストレス対処について話し合う。 •眠りのためのリラックスの体験。 コミュニケーション •教員によるロールプレイ→他の考え方はできないか?と児童に 考えさせる。 セルフコントロール •「ひょっとして」と考えることでストレスを緩和できると伝える。 ストレスマネジメント 思いや考えの表現力 •教員によるロールプレイ→どのような意見の表明がお互い ストレスなく過ごせるか コミュニケーション を児童に考えさせる。 思いやり・他者理解 •自他尊重「アサーティブ」の説明。 適切な表現方法 ひょっとしてコーピング ロールプレイではあえてアサーティブな例は提示 せず、児童に「ストレスなく過ごせる意見の表 明」を実演させた。 「ひょっとして」を考えるときに落ち着くための 方法として「10秒呼吸法」を授業内で実施した。 ストレスの仕組み ストレスマネジメント 「ストレスコーピング」はストレスと上手に付き 合うための「技」であり、今後の授業でレパート リーを増やそう!と伝えた。 授業テーマ 目標となる資質・能力 授業内容(概要) 教師のアレンジ・工夫など コミュニケーション •教員によるロールプレイ(クラスメイトの言葉を、自分の名前が呼ばれたと勘違いした) セルフコントロール •どのような言い方をすればトラブルにならずに過ごせるかを児童に考えさせ、実演させる。 •まずは「何のこと?」と確認する一言が大切であると伝える。 コミュニケーション •ストーリー(音楽会の練習に来ないAさんと悪口を言うBさん)を読ませる。 思いやり・他者理解 •「ひょっとして」コーピングを使って、Aさんが練習に来ない理由を 考え、Bさんに「〇〇かもしれないね」とその理由の伝え方を考えさせる。 音楽会の練習で… 立ち止まって考えよう 自己表現を行う前に、自分の思い込みであるかど うか「確認」をするためのスキルの習得をねらい とした。 過去にクラスで起こったトラブルをもとに教師が 中心となりシナリオを作成した。やや重たい内容 を取り扱うことで、楽しむことよりも真剣に考え させることをねらいとした。 対象者 性別 年齢 経験年数 X(担任) 女性 20代前半 1年 Y(児童支援担当) 男性 30代後半 16年目17
対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 ―小学4年生を対象に― Table 5 教師対象のインタビュー調査の結果 X(担任) Y(児童支援担当) ① 心の健康教育 の普及 これまでこのような授業のイメージがなかっ た こういう授業はなかなか上手にできないこと に気づいた ② SCとの関係 どの学校もSC・教師双方ともアプローチがなかなかない状況 外国語の本格実施のため、授業時間の確保が 難しい 担任を持つと打合せの時間を確保するのはよ り難しい このような内容を授業で知識として教えるこ とが大切だとわかった 児童だけでなく教師自身にとってもために なった 知識として得ることと方法として獲得するこ とが大切だとわかった 小学生の時期は、対人関係等のスキルの引き 出しを多く作ることが重要なのでとてもよい 教師自身が言い続けることが重要 はたらきかけが続いていけば続いていくほ ど、その引き出しは開けやすくなると思う 生徒指導において、授業で学んだ内容を使っ て具体的に行えるようになった ⑥ 心の健康教育 の在り方 この学年で忘れてしまったとしても、どこか で触れておくことが大事だと思った 継続的にやっていくことが必要 ⑦ 時間的制約の低さ LINEでの相談は帰宅してから話ができるのでよかった ⑧ 日常への効果 LINEで気軽に話せたので、学校でも気軽に話せた LINEのやりとりがあったから、お互いの距離が縮まった LINEの打合せは記録に残るのがよい LINEのやりとりで継続的に話しながら進めた のはよかった LINEで考えを共有できたこと、意見が言えた ことがよかった SCと一緒に考える中で、教師自身のSCへの 相談意欲が高まった SCとの普段の距離感が重要 SCと事前に関わりがあったので、他の先生に も勧めやすかった ⑪ 授業づくりの やりやすさ 自分一人で考えてやるより、より実態に即し たものにできた SCが枠組みを作ってくれたので助かった ⑫ 教師自身の 成長 相談することで、授業展開や子供の見立て等 に関する自分自身の視野が広がった F TTに 関して ⑬ 効果と課題TTの TTでやることで、担任からは見えていない部分がわかる T2だが出しゃばりたくなったりして、立ち位置が難しい 道徳と違って、今考えさせたいことを、実態 に合わせてやれる 道徳と違って、実際の日常に関わる実例を示 せたので想像しやすい 道徳と違って、考え方や価値観の多様性を感 じさせやすい 対処スキルを具体的な言葉にして確認できた ことがよかった ⑮ 積極的に 取り組める みんなが発言できる授業だった 「あるある!」と自分たちで考えていける 日常と直結しており、直結していることが児 童自身にわかることがよい 問題が起こる前に考えておくというのはとて もよい ⑰ 演習方法 2回目に協議の上ロールプレイを話し合いに変えたことで引き締まった ⑱ 演習テーマ クラスの日常に関わったテーマにしたのがよ かった ロールプレイは面白がってしまって中身が 入っていない ロールプレイ以外のアプローチがあること で、理解できる子も増える 教師自身も本来のねらいよりロールプレイを 集中してさせる方に気を取られる ⑳ 理解てきていない児童 考えてほしい子ほど真剣に考えていない ㉑ スキルの限界 怒りが高まっている段階では「ひょっとして コーピング」は使いにくい ㉒ 般化への課題 授業の積み重ねが大事 同様の授業を繰り返すと深まるが、飽きもあ る 「もしかしたら」と考えるようになった子が 増えた 問題が起こったときに立ち止まるところまで はできるようになったと思う オブラートに包んだら伝えてもいいというの をわかってくれた ㉔ 即した行動テーマに 「嫌やからやめて」がスッとでるようになった 具体的に行動を起こせるまでの変化はない ㉕ テーマへの 関心 (授業内容をまとめた)掲示物はみんな結構 見ていた 変化するきっかけを刻めたのは大きな効果 道徳だと真剣に取り組めないPが真剣に考え ていた 普段の授業で後ろ向きなPが元気に取り組め ており、挙手もしていた Pはその後かなり元気になった ㉗ 4 カードゲームに準えてコーピングを技カード とするとQは納得して使えていた ㉘ 5 Rなんかは、頑ななところは解きほぐせてい なかった ㉙ SやT SやTなどの優しい子にはストンと落ちた ㉚ 8 去年のUならカッとなって言い返していたが 「みんな考えてないねん」と別の次元でとら えてる発言が見られた ロールプレイ の進め方 教 師 側 の 課 題 や 気 づ き 語られた内容 中項目 大項目 小項目 ③ ④ ⑤ ⑩ ⑲ ⑯ ⑭ 協 働 実 施 に つ い て 授 業 に つ い て 児 童 の 変 化 に つ い て ⑨ E 児童の 変化 (個別) D 授業内容 について F 授業での 課題 G 授業後の 課題 ㉖ ㉓ 時間確保 心の健康教育 の重要性 今後の指導の 在り方 LINEの特性 による効果 SCとの距離感 D 現状の 課題 E 教師自身 の気づき D LINEでの 打合せ E SCとの 協働 E 授業の 工夫 D 児童の 変化 (全体) テーマに 即した理解 3 道徳との違い 日常との 関連付けTable 5 教師対象のインタビュー調査の結果
X(担任) Y(児童支援担当) ① 心の健康教育 の普及 これまでこのような授業のイメージがなかっ た こういう授業はなかなか上手にできないこと に気づいた ② SCとの関係 どの学校もSC・教師双方ともアプローチがな かなかない状況 外国語の本格実施のため、授業時間の確保が 難しい 担任を持つと打合せの時間を確保するのはよ り難しい このような内容を授業で知識として教えるこ とが大切だとわかった 児童だけでなく教師自身にとってもために なった 知識として得ることと方法として獲得するこ とが大切だとわかった 小学生の時期は、対人関係等のスキルの引き 出しを多く作ることが重要なのでとてもよい 教師自身が言い続けることが重要 はたらきかけが続いていけば続いていくほ ど、その引き出しは開けやすくなると思う 生徒指導において、授業で学んだ内容を使っ て具体的に行えるようになった ⑥ 心の健康教育の在り方 この学年で忘れてしまったとしても、どこかで触れておくことが大事だと思った 継続的にやっていくことが必要 ⑦ 時間的制約 の低さ LINEでの相談は帰宅してから話ができるので よかった ⑧ 日常への効果LINEで気軽に話せたので、学校でも気軽に話せた LINEのやりとりがあったから、お互いの距離が縮まった LINEの打合せは記録に残るのがよい LINEのやりとりで継続的に話しながら進めた のはよかった LINEで考えを共有できたこと、意見が言えた ことがよかった SCと一緒に考える中で、教師自身のSCへの 相談意欲が高まった SCとの普段の距離感が重要 SCと事前に関わりがあったので、他の先生に も勧めやすかった ⑪ 授業づくりの やりやすさ 自分一人で考えてやるより、より実態に即し たものにできた SCが枠組みを作ってくれたので助かった ⑫ 教師自身の 成長 相談することで、授業展開や子供の見立て等 に関する自分自身の視野が広がった F TTに 関して ⑬ 効果と課題TTの TTでやることで、担任からは見えていない部分がわかる T2だが出しゃばりたくなったりして、立ち位置が難しい 道徳と違って、今考えさせたいことを、実態 に合わせてやれる 道徳と違って、実際の日常に関わる実例を示 せたので想像しやすい 道徳と違って、考え方や価値観の多様性を感 じさせやすい 対処スキルを具体的な言葉にして確認できた ことがよかった ⑮ 積極的に 取り組める みんなが発言できる授業だった 「あるある!」と自分たちで考えていける 日常と直結しており、直結していることが児 童自身にわかることがよい 問題が起こる前に考えておくというのはとて もよい ⑰ 演習方法 2回目に協議の上ロールプレイを話し合いに変えたことで引き締まった ⑱ 演習テーマ クラスの日常に関わったテーマにしたのがよ かった ロールプレイは面白がってしまって中身が 入っていない ロールプレイ以外のアプローチがあること で、理解できる子も増える 教師自身も本来のねらいよりロールプレイを 集中してさせる方に気を取られる ⑳ 理解てきて いない児童 考えてほしい子ほど真剣に考えていない ㉑ スキルの限界怒りが高まっている段階では「ひょっとして コーピング」は使いにくい ㉒ 般化への課題 授業の積み重ねが大事 同様の授業を繰り返すと深まるが、飽きもあ る 「もしかしたら」と考えるようになった子が 増えた 問題が起こったときに立ち止まるところまで はできるようになったと思う オブラートに包んだら伝えてもいいというの をわかってくれた ㉔ テーマに 即した行動 「嫌やからやめて」がスッとでるようになっ た 具体的に行動を起こせるまでの変化はない ㉕ テーマへの 関心 (授業内容をまとめた)掲示物はみんな結構 見ていた 変化するきっかけを刻めたのは大きな効果 道徳だと真剣に取り組めないPが真剣に考え ていた 普段の授業で後ろ向きなPが元気に取り組め ており、挙手もしていた Pはその後かなり元気になった ㉗ 4 カードゲームに準えてコーピングを技カード とするとQは納得して使えていた ㉘ 5 Rなんかは、頑ななところは解きほぐせてい なかった ㉙ SやT SやTなどの優しい子にはストンと落ちた ㉚ 8 去年のUならカッとなって言い返していたが 「みんな考えてないねん」と別の次元でとら えてる発言が見られた ロールプレイ の進め方 教 師 側 の 課 題 や 気 づ き 語られた内容 中項目 大項目 小項目 ③ ④ ⑤ ⑩ ⑲ ⑯ ⑭ 協 働 実 施 に つ い て 授 業 に つ い て 児 童 の 変 化 に つ い て ⑨ E 児童の 変化 (個別) D 授業内容 について F 授業での 課題 G 授業後の 課題 ㉖ ㉓ 時間確保 心の健康教育 の重要性 今後の指導の 在り方 LINEの特性 による効果 SCとの距離感 D 現状の 課題 E 教師自身 の気づき D LINEでの 打合せ E SCとの 協働 E 授業の 工夫 D 児童の 変化 (全体) テーマに 即した理解 3 道徳との違い 日常との 関連付け施する工夫を施したことがよかったとのことで あった。また,授業後の般化へのアプローチの重 要性についても語られていた。 「4:児童の変化について」は「 テーマに即し た理解」「 テーマに即した行動」「 テーマへの 関心」から構成される「4a:児童の変化(全体)」,「 P」「 Q」「 R」「 SやT」「 U」から構成され る「4b:児童の変化(個別)」の2つの中項目にま とめられた。X(担任)からは授業後にテーマに 即した理解や行動が見られたと語られていたもの の,ベテランのY(児童支援担当)からは,理解 はできているものの,行動化には至っていないと 語られた。ただ,個々の児童については,6名の 実名が挙げられ,うち5名について実施前と比較 してポジティブに行動が変化していることが示さ れた。 考 察 本研究の目的は,「いじめ未然防止プログラム」 の実践過程から,教師とSCとの協働によるプロ グラム実践の効果およびその課題について検討す ることであった。 CoCoLo-34を用いた事前と事後の比較では,有 意な差は認められなかった。授業実施者の一人で あるベテランのY(児童支援担当)は,今回の計 5回の授業による取組では授業の内容や学んだス キルについて理解はしているものの,それが明ら かな行動の変化を生むまでには至っていないと見 取っている。また,実施教師からのインタビュー 調査からは,個別にはポジティブな変化が見られ た児童がいるものの,それがクラス全体の雰囲気 や行動様式が大きく変わるほどのものではなかっ たことが示された。そのため,統計的な変化に表 れてこなかったものと推察される。 今回,SCとの協働の在り方として,授業をSC とのTTで実施する直接的な支援ではなく,授業 案づくりを一緒に行う間接的な支援とした。これ は,大規模校ではすべてのクラスにSCが直接授 業に関わることが物理的・時間的に難しいため成 果を般化しにくいこと,また,教師の心の健康教 を実際に実施することで,心の健康教育の重要性 や継続の必要性などについて教師自身の気づきが 得られたとのことであった。一方で,まだあまり 普及しておらずイメージが掴みにくかったり,教 師の授業実施への効力感が低かったりすること, また,学校現場の現状として授業や打合せの時間 を確保することが難しいということ,SCとの協 働姿勢が整っていない学校が多いことなどが示さ れた。 「2:協働実施について」は,「⑦時間的制約の低 さ」「⑧日常への効果」「⑨LINEの特性による効果」 から構成される「2a:LINEでの打合せ」,「⑩SCと の距離感」「⑪授業づくりのやりやすさ」「⑫教師 自身の成長」から構成される「2b:SCとの協議」, 「⑬TTの効果と課題」である「1c:TTに関して」 の3つの中項目にまとめられた。SCと協働で授 業づくりを進めたことで,より実態に即した授業 展開とすることができただけでなく,教師自身の 授業づくりに関する視野が広がり,教師とSCと の距離感もより縮まったとのことであった。協議 の手段としてLINEを使ったミーティングを実施 することで,時間が確保できただけでなく,グルー プチャットによって和やかに協議できたこと,協 議内容が文字として残る良さも示された。 「3:授業について」は,「⑭道徳との違い」「⑮積 極的に取り組める」「⑯日常との関連付け」から 構成される「3a:授業内容について」,「⑰演習方法」 「⑱演習テーマ」から構成される「3b:授業の工夫」, 「⑲ロールプレイの進め方」「⑳理解できていない 児童」から構成される「3c:授業での課題」,「 ス キルの限界」「 般化への課題」から構成される 「3d:授業後の課題」の4つの中項目にまとめられ た。「いじめ未然防止プログラム」は日常に直結 した題材を扱うことができ,多様性を認め合うこ とや具体的なスキルを体験的に学べることなどの 点がよく,授業に積極的に取り組む児童が多かっ たとのことであった。一方で,今回の「授業プラ ン」にあったロールプレイの手法がうまくいか なったことや,収録されている事例が現状に見 合ってないことも示され,手法や事例を変えて実
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対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 ―小学4年生を対象に― ラン」実施による効果が示された。クラス全体と しては大きな変化は見られなかったが,授業で学 んだ知識やスキルは理解できていると見取られて いる。児童生徒の変化以外にも,教師自身の心の 健康教育に対する価値観や,日々の生徒との関わ りの在り方などが変化したとともに,SCとの距 離感が近くなったことも示されていた。教師自身 の変化も含めた多面的な変化の総和が,児童のへ の影響となって表れているものと思われる(野島 ら,2019)。SCが直接的に授業に参加しなくとも, ミーティングを充実させることで児童や教師自身 への変容を得られたといえ,SCとの協働の1つ の形として提案できるものと考える。 一方で課題も明らかとなった。1つは,数値的 な変化が見られなかったことである。CoCoLo-34 の対象学年は小学校5年生以上であり,今回のよ うな小学校4年生での実践では本来は適用されな い。これが数値的な変化が見られなかった原因で あったとも十分に考えられる。小学校4年生以下 を対象とするアセスメントツールの早急な開発が 期待される。 2つ目は,LINEといえども勤務時間外でのミー ティングになることである。働き方改革が叫ばれ る中,時代に逆行しているとも捉えられ,この取 り組みを正当化することは大変難しい。しかしな がら,現在の学校現場の実際的な状況で,SCと 予定を合わせて学校での十分なミーティングの時 間を確保することに比べると,負担感は大いに少 なく,かつ手軽さによる相談のハードルの低さや, 文字として協議結果が残せるなどLINEならでは の有効性も見出された。これらの問題にどう折り 合いをつけていくかが今後の課題と言えよう。 謝 辞 本研究の実施に際し,授業実施と調査にご協力 いただいた小学校の児童の皆様をはじめ,ご指導 及びご助言くださいました学校長,並びに授業の 実施・インタビュー調査等にご協力いただきまし た先生方に心からの謝意を表します。 育実施への効力感を高めるには教師自身による主 体的な授業の実施が必要だと考えたことによるも のである。これらを主眼に置くには,いかにその 支援の柱となるSCとのミーティングを充実させ るかが肝要となってくる。しかし,日々多忙な教 師やSCの時間的制約は大きい。そこで,今回は LINEのグループチャット機能を活用したミー ティングを実施した。その結果,時間設定の自由 度が上がり,回数を重ねることもでき,充実した ミーティングを実施することができた。それだけ でなく,堅苦しい 会議 というスタイルではなく, 個々が職場から解放された空間から参加するグ ループチャットという場による和やかな雰囲気に よって,教師1年目の担任とベテランの教師,専 門家のSCとが立場を超えて自由に意見交換で きた。これらは,対面場面に比べて コンピュー タを介したコミュニケーション(Computer-Mediated Communication; CMC) の方が他者から 受ける緊張感や心理的負担といった対人圧力を弱 く知覚しているためにCMC 場面で話者間の立場 の平等化が起こりやすい(木村ら,1998)こと, ま た,CMC場 面 で は 自 己 開 示 が 促 進 さ れ る (Joinson,2001)ことによる効果だと考えられる。 さらに,LINEによる協議では同時に文字として 残ることで,後に協議内容を正確に反映すること も可能となる。一方,経験の浅い教師にとっては 日々不安と感じることが多い反面,諸先輩等にわ ざわざ時間を作って相談を願うことも躊躇されよ う。聞きたいと思ったときに,気軽にLINEに発 信し,応えられる時間に相手が返信できるという のは大きなメリットであり,週に1度程度しか出 勤しないSCに対してはなおさらであることは想 像に難くない。このようにミーティングが十分に 行われることによって教師の授業実施に対する効 力感が高められ,児童への適切な指導に繋がった ものと考えられる。LINEの活用は様々なSCとの 協働活動の充実を図る一手法としての可能性が示 唆されたと考える。 実施教師2名のインタビューからは,日常的な 対象児童との関わりで観察された今回の「授業プ引用文献 木村泰之・都築誉史 1998 集団意思決定とコミュ ニケーション・モード−コンピュータ・コ ミュニケーション条件と対面コミュニケー ション条件の差異に関する実験社会心理学 的検討− 実験社会心理学研究, 38,183-192. 国立教育政策研究所 2019 TALIS2018報告書 −学び続ける教員と校長− ぎょうせい 越良子・安藤美華代 2013 日本の学校におけ る予防教育の現状と課題 山崎勝之・戸田 有一・渡辺弥生(編著) 世界の学校予防教 育―心身の健康と適応を守る各国の取り組 み 金子書房 263-280. 寺戸武志・秋光恵子・松本剛 2019 学校にお けるいじめ未然防止プログラムのための包 括的測定尺度の改訂:信頼性・妥当性の検 討と尺度の活用方法の考察 ストレスマネ ジメント研究 15(1),2-12. 寺戸武志,乘松宏美,藤原一平,増田美佳子 2016 いじめ未然防止教育の実践支援に向 けて−聞き取り調査をもとにした「いじめ 未然防止プログラム」の改善− 兵庫県立教 育研修所『研究紀要』 第126集,67-74 野島一彦・岡村達也(監修) 松本剛・宮崎圭子(編 著) 2019 公認心理師実践ガイダンス④ 「心の健康教育」 木立の文庫 107-113 兵庫県教育委員会 2015 いじめ未然防止プロ グ ラ ム https://www.hyogo-.ed.jp/ kenshusho/07kokoro/ijimemizen/ (2019/9/26アクセス)
Joinson,A.N 2001 Self-disclosure in computer mediated communication: The role of selfawarene and visual anonymity. European Journal of Social Psychology, 31, 177-19
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対人ストレスに焦点を当てた「いじめ未然防止プログラム」の実践過程 ―小学4年生を対象に―The process of practicing the "bullying prevention program" focusing on interpersonal stress
-For fourth
graders-Takeshi TERADO*, Hiromu NAGAURA**
*Center for Research on Human Development and Clinical Psychology, Hyogo University of Teacher Education **Department of Social Work, Kobe University of Welfare
Abstract
The purpose of this study was to examine the effects and issues of the program "bullying prevention program" for fourth graders that was collaborated with teachers and school counselor. Five lessons were conducted for 20 students based on a lesson plans arranged by a school counselor and two teachers. The meeting was held using the LINE group chat function. As a result, no significant difference was found in all factors in the comparison between the pre- and post-tests using the assessment tool CoCoLo-34. The results of an interview survey with two teachers showed positive changes in behavior of five children and changes in the way teachers think. From these results, the effectiveness of the meeting using LINE, the proposal of the practical example of the way of collaboration between teachers and a school counselor, and the issues about the method of assessment and working hours were proposed. Key Words: stress management, communication ability, prevention of bullying, cooperation and collaboration