Nonlinear Inventory Dynamics in a Macro
Disequilibrium Economy(マクロ不均衡経済におけ
る非線形在庫動学)
著者
松本 昭夫
号
73
発行年
1998
URL
http://hdl.handle.net/10097/14788
知
松
枇
本
謎
昭
お
夫
学 位 の 種 類
博
士(経 済学)
学 位 記 番 号
経
第73号
学位授与 年月 日
平成10年6月18日
学位授与の要件
学 位規 則第4条 第2項 該当
学 位 論 文 題 目
論 文 審 査 委 員
NonlinearInventoryDynamicsinaMacroDisequilibrium Economy (マ ク ロ 不 均 衡 経 済 に お け る 非 線 形 在 庫 動 学)(主査)
教
授
堀
元
助教授
尾
崎
裕
之
論
文
内
容
要
旨
本 研 究 の 主 要 内 容 は、 現 代 の 理 論 経 済 学 の枢 要 な 一 分 野 と み な され て い る経 済 動 学 に っ い て 、 近 年 発 展 しつ っ あ る非 線 形 動 学 理 論 を 援 用 し、 必 ず し も安 定 的 で な い経 済 に お け る変 動 を 分 析 した も の で あ る。 本 研 究 は、1970年 代 の 初 期 に所 謂 ケ イ ン ズ流 の マ ク ロ経 済 学 と ア ロ ー ・デ ブ リュ ー流 の 一 般 均 衡 理 論 体 系 に基 づ く ミク ロ経 済 学 の 融 合 を 目的 と した 「不 均 衡 理 論 」 の 動 学 的 展 開 を 企 図 し た もの で あ るが 、 同 時 に一 般 均 衡 モ デ ル の 安 定 性 分 析 の 拡 張 の 方 向 性 を 示 唆 した も の と もな って い る。 本 研 究 は 全9章 よ り成 り、 以 下 の 様 な構 成 を もつ 。 第 一 章 は序 説 で あ り、 本 研 究 の 目的 を 述 べ 、 基 本 モ デ ル の 構 築 が 行 わ れ る。 この モ デ ル は一 次 元 あ る い は 二 次 元 の 動 学 シ ス テ ム に集 約 さ れ う る 単 純 化 さ れ た もの を使 うが 、 非 線 形 動 学 の 本 質 的 な 要 素 は含 ま れ て い る と考 え られ る。 以 下 第 二 章 か ら第 四 章 まで が 基 本 モ デ ル に 沿 って 、 メ ッ ッ ラ ー 型 の 線 形 在 庫 循 環 モ デ ル か ら最 近 の 内 生 的 非 線 在 庫 循 環 を ふ くむ こ の 分 野 で 蓄 積 さ れ た研 究 文 献 の 簡 単 な 整 理 を施 して い る。 後 半 第 五 章 か ら第 八 章 は、 申 請 者 が こ の在 庫 循 環 モ デ ル に様 々 な角 度 か ら拡 張 お よ び 深 化 を 論 じた もの で あ り、 第 九 章 が ま とめ とな って い る。 この 研 究 の 独 自性 を あ え て 列 挙 す れ ば 、 つ ぎの とお りで あ る。(1)生 産 者 の動 学 的 最 適 化 行 動 を メ ッ ッ ラ ー 型 の マ ク ロ在 庫 循 環 モ デ ル に組 み 込 み 、 そ の ミク ロ的 な基 礎 を 提 示 し、 生 産 者 の 合 理 的 な 行 動 の 結 果 と して 在 庫 循 環 が 引 き起 こ され る こ と を 示 し た こ と。 ② 時 系 列 デ ー タに 観 察 さ れ る在 庫 の 不 規 則 ・非 対 称 的 な 変 動 を カ オ ス を 含 む 非 線 形 動 学 に よ り記 述 し、 内 生 的 な変 動 と して 議 論 を して い る こ と。 (3)収 束 も発 散 も しな い 持 続 的 な 在 庫 変 動 は 財 市 場 に お い て 需 要 と供 給 の 不 均 衡 状 態 が 長 期 化 して い る こ と を意 味 して い る。 こ こで は、 不 均 衡 市 場 に お い て 各 経 済 主 体 が 実 現 す る利 潤 、 効 用 の 長 期 的 な 平 均 が 均 衡 点 で 得 られ る均 衡 利 潤 、 均 衡 効 用 な ど と比 べ て 必 ず し も低 くは な い こ と を 示 し、 カ オ ス 的 変 動 の ひ とっ の 「経 済 学 的 な 解 釈 」 を 提 示 した こ と。 基 本 モ デ ル は代 表 的 な生 産 者 と消 費 者 の 二 人 の経 済 主 体 と財 ・労 働 ・貨 幣 の 三 財 よ り な る簡 素 化 され た 構 成 を もっ 。 貨 幣経 済 を想 定 す るの で 財 の 交 換 は労 働 市 場 、 財 市 場 を 通 じて な さ れ る。 消 費 者 の 行 動 方 程 式 は 09 計 ド 五 9 = ( 5 3 五
ー
第 一 式 は 線 形 の ケ イ ン ズ型 消 費 関 数 で は 生 産 、cは 限 界 消 費 性 向 、 αは 基 礎 消 費 を 意 味 す る。 第 二 式 は労 働 供 給 関 数 で 、 分 析 は短 期 で あ る こ と か ら単 純 化 の為 に 定 数 と想 定 さ れ て い る。 他 方 生 産 者 の 行 動 方 程 式 は欝 面
7を 在 庫 保 有 量 、3θを 期 待 販 売(需 要)と す れ ば、 第 一 式 は生 産 が これ らの変 数 に 依 存 して き ま る こ と を あ らわ す 生 産 決 定 関 数 、 労 働 が 唯 一 の 生 産 要 素 と 想 定 して い る の で 第 二 式 は 逆 生 産 関 数 φ日 よ り決 定 さ れ る 労 働 需 要 を 表 して い る。"第三 式 は期 待 販 売 に依 存 して 望 ま しい在 庫 水 準 〆 が 決 ま る こ と を 示 して い る。 こ の モ デ ル の 動 学 シ ス テ ム は 連 続 時 間 で は次 式 で 与 え られ る。(D){に 鍵
「3(9隙
こ こで 第 一 式 は在 庫 調 整 を 、 第 二 式 は期 待 調 整 を あ らわ す 動 学 方 程 式 で あ る。 生 産 者 の 行 動 方 程 式 や 望 ま し い在 庫 決 定 方 程 式 を 如 何 に 定 式 化 す る か に よ り こ の モ デ ル に お け る生 産 量 、 在 庫 の変 動 が 決 定 され る。 以 下 で、 期 待 形 成 に つ い て は、5ε=α(3-5り の 適 応 的 期 待 か5θ=3の 完 全 予 見 の ケ ー ス を取 扱 う。 第 二 章 に お い て は基 礎 分 析 と して 線 形 の 行 動 方 程 式 を 想 定 す る。離 瓢 ∵'
そ の結 果 動 学 シス テ ム(D)は 線 形 と な る。 線 形 動 学 方 程 式 の 生 み だ す 解 の挙 動 は普 く知 られ て お り、 こ こ で は解 析 的 な分 析 よ り も、 図 的 分 析 に重 点 を お き、 各 パ ラ メ ー タの 値 に応 じて 収 束 ・発 散 の 解 経 路 を視 覚 的 に示 す 。 ま た 、 後 半 の 分 析 で 多 用 され る。 変 数 変 換 に よ る動 学 方 程 式 の 正 規 化 に っ い て も若 干 考 察 さ れ る。 第 三 章 で は生 産 要 素 が ボ トル ネ ッ ク な る場 合 を取 り上 げ て い る。 こ こで は 特 に 労 働 供 給 量 不 足 に よ る生 産 制 約 が 動 学 に 及 ぼ す 影 響 を分 析 して い る。 労 働 供 給 制 約 を 受 け な い 場 合 と受 け た 場 合 と で 生 産 行 動 が 異 な って くる の で 、 以 下 の よ う な区 分 線 形(非 線 形)の 行 動 方 程 式 を考 え る。 9(レ;3つ=ル 伽[0,ノレ薙'η[(1十ん)8`一玩9]] た だ し、 φ(五)=砒 な る収 穫 一 定 の生 産 関 数 を 仮 定 し、g=説 で完 全 雇 用 生 産 量 を 示 す(上 式 で は生 産 の 非 負 性 も考 慮 に 入 れ て 定 式 化 さ れ て い る)。 これ を 動 学 シス テ ム(D)に 代 入 す れ ば 、 区 分 線 形 動 学 方 程 式 が 求 め られ る。 こ こで 興 味 あ る の が 小 域 的 不 安 定 な ケ ー ス で あ る。 解 の 時 間 経 路 は均 衡 点 か ら乖 離 して い くが 生 産 要 素 制 約 に よ り発 散 しな い こ と は直 感 的 に も明 らか で あ るが 、 限 られ た 領 域 な い で い か な る挙 動 を す る か に っ い て は必 ず し も明 らか で な い。 あ る一 定 の 条 件 の も と で 極 限 循 環(リ ミッ ト ・サ イ ク ル)に 収 束 す る こ と が 示 さ れ る。 第 四 章 で は行 動 方 程 式 の非 線 形 性 が 大 域 的 お よ び小 域 的 な動 学 に お よ ぼ す 影 響 を 考 察 す る。 非 線 形 性 を どの よ う に行 動 方 程 式 に導 入 す るか に よ り モ デ ル の 解 は異 な る が 、 以 下 の3っ の ケ ー ス を 考 察 す る。{
(1)〆=プ(3り,!'(3う く0,∫"(3う ≠0, (2)ψ(V,Se)=(1憾 ε一 の 十 σ(婿6一 の2一ト ρ(ん5θ 十 の3十_, (3)ψ(疏5つ ニ β(3つ(ん88一 の,β'(3θ)>0,β"(3θ)≠0. (1>は望 ま し い在 庫 水 準 が 期 待 販 売 と非 線 形 の 関 係 に あ る場 合 。(2)と(3)は望 ま し い在 庫 と手 持 ち在 庫 の差 、 ψ(耽5e)、 が 非 線 形 的 に調 整 さ れ る場 合 を想 定 して い る。 モ デ ル の 非 線 形 性 が 強 ま る に 従 い (1)と② で は均 衡 点 が 不 安 定 化 し、 解 軌 道 が 極 限 循 環 へ 向 か う と い う解 の 均 衡 点 近 傍 に お け る分 岐 が 解 析 的 お よ び 図 的 に 示 され 、 さ ら に、(3)にお い て は大 域 的 な循 環 解 の存 在 が 示 され る。 第 五 章 で は第 四 章 の マ ク ロ在 庫 循 環 モ デ ル の ミク ロ的 な 基 礎 を 提 示 す る こ と を 目 的 と して い る 。 よ り具 体 的 に は、 第 四 章 で は(1)∼(3)の行 動 方 程 式 を基 本 動 学 モ デ ル に 導 入 し、 そ の 影 響 が 強 まれ ば 、 収 束 も発 散 も しな い 循 環 的 な 変 動 が 生 ず る こ と は 示 され た 。 しか し、 行 動 方 程 式 の特 定 化 が ア ド ・ ホ ッ ク に行 わ れ て い る の で 、 第 五 章 で は、 い か な る経 済 条 件 の も とで 、 上 記 の よ うな 行 動 が 合 理 的 に導 け るか を 考 察 して い る。 在 庫 保 有 は オ ー バ ー ・タ イ ム の意 志 決 定 で あ る の で 、 生 産 者 の動 学 的 最 適 化 に よ る 生 産 決 定 を 定 式 化 し、 最 適 な生 産 決 定 関 数 を 導 く。 こ の最 適 関 数 の もつ 性 質 を使 い 、小 域 的 お よ び大 域 的 な在 庫 循 環 の 存 在 と そ の安 定 性 を 調 べ 、 さ ら に簡 単 な数 値 例 に よ り在 庫 変 動 の シ ミ ュ レー シ ョ ンを 行 って い る。 こ の 章 の 特 徴 は動 学 的 最 適 化 プ ロ セ スで 連 続 的 に 改 訂 され る期 待 形 成 に あ る。 生 産 者 は あ る時 点 の在 庫 保 有 量 とそ の期 首 に形 成 した 期 待 販 売 量 を 所 与 と して 、 割 引 利 潤 を最 大 化 す る全 将 来 期 間 に わ た る 最 適 生 産 計 画 を 決 定 す る。 今 期 の 計 画 は実 現 され 、 市 場 で 取 り引 き を行 う。 一 般 的 に計 画 値 と実 現 値 は異 な る が 、 生 産 と販 売 と の齪 齪 は 在 庫 に よ り調 整 され る、 ま た 期 待 販 売 量 と実 現 さ れ た販 売 量 の齪 擁 は次 期 以 降 の期 待 の 変 更 を 引 き起 こす 。 そ こで 、 この 取 り引 き後 に え られ た在 庫 保 有 量 と新 た な 期 待 販 売 量 の も とで 、 企 業 は再 び利 潤 最 大 化 問 題 を 解 き、 新 た な最 適 計 画 を 立 案 し、 次 期 の取 り引 きを 行 う。 この プ ロ セ ス が 均 衡 が 達 成 され る ま で 繰 り返 さ れ る。 この 章 の 主 な 分 析 結 果 は 以 下 の4っ に ま とめ られ る。 (1>ス トッ ク調 整 係 数 を 分 岐 パ ラメ ー タ と して 、 ホ ップ 分 岐 に よ る均 衡 点 近 傍 に お け る極 限 周 期 軌 道 の 存 在 証 明 。 ② 最 適 生 産 決 定 関 数 の 期 待 販 売 に 関 す る 強 い非 線 形 性 の も とで 、 ボ ア ンカ レ=ベ ン デ ィ ク ソ ンの 定 理 に 援 用 に よ る大 域 的 周 期 軌 道 の 存 在 証 明 。 (3)モ デ ル を 特 定 化 して ホ ッ プ分 岐 に よ る周 期 解 の安 定 性 指 数 を も とあ 、 周 期 軌 道 の 安 定 性 の考 察 。 具 体 的 に は、 分 岐 が お こ る際 に超 臨 界 分 岐(supercriticalbifurcation)に よ り周 期 軌 道 が 吸 引 的 と な る条 件 と 臨 界 下 分 岐(subccriticalbifurcation)に よ り周 期 軌 道 が 反 発 的 と な る 内 生 的 条 件 を 明 らか に した。 (4)シ ミュ レ ー シ ョ ン に よ り小 域 的 周 期 軌 道 と大 域 的 周 期 軌 道 が 同 一 とな る場 合 、 ま た、 複 数 の 周 期 軌 道 が 共 存 す る場 合 を 数 値 例 に よ り確 か あ た 。 第 六 章 の 目 的 は 第 五 章 と同 じで 、 周 期 的 在 庫 循 環 の 出 現 に関 して 、 利 潤 最 大 化 行 動 を と る生 産 者 の 役 割 を 明 確 にす る こ と で あ る。 本 章 で 察 す る モ デ ル 構 成 は基 本 的 に第 四 章 の もの とお な じで あ る が 、 次 の2点 に お い て異 な る。 まず こ こで は 離 散 時 間 に よ る動 学 を 考 え る。 時 間 単 位 の 取 り方 が 動 学 に与 え る影 響 を考 察 す る。 生 産 決 定 関 数 を 割 引利 潤 最 大 化 問 題 の解 と して導 き、 循 環 解 の 存 在 証 明 は離 散 時 間 に お け る ホ ップ 分 岐 定 理 を 援 用 渉 る事 は 前 章 と お な じで あ るが 、 異 な る分 岐 パ ラ メ ー タ を使 う:こ こで は適 用 的 期 待 調 整 の 調 整 係 数 を分 岐 パ ラ メ ー タ と して 使 うが 、 前 章 で は 限 界 消 費 性 向 が 使 用 さ れ て い た。 第 七 章 で は カ オ ス 動 学 を取 り扱 う。 適 応 的 期 待 形 成 の 調 整 速 度 を無 限 大 と し、 期 待 は常 に 実 現 さ れ る と い う完 全 予 見 を想 定 す る。 これ は第 四 章 か ら六 章 ま で は 、 適 応 的 期 待 形 成 の 前 提 で 動 学 シス テ ム の 解 と して 極 限 循 環 が 求 め られ て い た が 、 循 環 的 な 変 動 は 強 い不 規 則 性 が な く、 実 際 の デ ー タ よ り得 られ る不 規 則 ・非 対 称 的 な 変 動 を う ま く説 明 で き な い な ど の批 判 に 答 え る た め に 上 記 の よ う な モ デ ル の 修 正 を試 み た 。 数 値 計 算 の 便 宜 の た め、 生 産 者 の 生 産 費 用 関 数 、 在 庫 保 有 に関 す る費 用 関 数 は二 次 関 数 、 将 来 の収 益 は期 末 に 保 有 さ れ る在 庫 保 有 量 の 一 次 関 数 と仮 定 す る。 こ の章 の特 徴 は、 生 産 者 の望 ま し い在 庫 保 有 量 の決 定 に 関 して 、 期 待 販 売 量 の 定 数 倍 と い う従 来 の 仮 定 を と らず 、 期 待 販 売 が 極 端 に低 いか あ る い は高 い 値 を と る場 合 と均 衡 近 傍 の 平 常 的 な 値 を と る 場 合 で は 、 望 ま
しい在 庫 と期 待 販 売 の比 率 が 異 な る と い う区 分 線 形 で は あ る が 非 線 形 関 係 を 想 定 した こ と で あ る。 完 全 予 見 の も と で動 学 シ ス テ ム は一 次 元 区 分 線 形 の 差 分 方 程 式 で 記 述 さ れ る。 分 岐 パ ラ メ ー タ を 変 化 さ せ る に従 い 、 こ の線 形 区 分 方 程 式 に よ り うみ だ され る在 庫 変 動 の シ ミュ レ ー シ ョ ンを お こ な う と、 安 定 均 衡 点 が 、 不 安 定 化 し2周 期 、4周 期 の サ イ ク ル 、 厚 み を 持 っ た4周 期 カ オ ス 、 そ して 全 域 で の カ オ ス へ と分 岐 して い く。 さ らに 、 パ ラ メ ー タを 変 化 さ せ る と3周 期 の 窓 が 現 わ れ 、 っ い で 厚 み の 持 っ た3周 期 カ オ ス、 全 域 で の カ オ ス へ 分 岐 す る様 が 観 察 され る。 カ オ ス を 含 む 複 雑 な時 間 経 路 の 存 在 が 明 らか に さ れ る。 第 八 章 で は第 七 章 で 求 め られ た カ オ ス 的 変 動 の経 済 学 的 な イ ンプ リ ケ ー シ ョ ンを 考 察 す る。 動 学 シス テ ム の 解 が 循 環 的 か あ るい は カ オ ス 的 な 変 動 を す る こ と は 、 市 場 に お い て 需 要 と供 給 が一 致 せ ず 齪 齢 を在 庫 に よ る調 整 が 続 け られ て い る こ と を意 味 す る。 つ ま り市 場 不 均 衡 の持 続 で あ る。 従 来 の 経 済 学 で は市 場 不 均 衡 は均 衡 収 束 の過 渡 的 な 状 態 とみ な さ れ 、 持 続 的 不 均 衡 状 態 に対 す る分 析 は 十 分 に な さ れ て こな か っ た。 こ の章 で は 生 産 の 成 長 率 に上 限 と下 限 を 持 っ 線 形 の 蜘 蛛 の 巣 モ デ ル を 用 い て カ オ ス 的 変 動 経 済 学 的 な 意 味 合 い を 考 察 す る。 成 長 率 に 関 す る数 量 制 約 の た め に 動 学 方 程 式 は区 分 線 形 的 に な り、 第 七 章 の 動 学 方 程 式 と類 似 した もの と な る。 競 争 的 な 市 場 を 想 定 す れ ば 、 線 形 の需 要 関 数 ・供 給 関 数 は そ れ ぞ れ 消 費 者 の効 用 最 大 化 行 動 お よ び 利 潤 最 大 化 行 動 を 具 現 して い る と考 え られ るの で 、 基 と な る各 経 済 主 体 の 効 用 関 数 ・利 潤 関 数 を 導 出 可 能 で あ る。 区 分 線 形 の 動 学 方 程 式 か ら産 み 出 され る カ オ ス 的 変 動 の 具 体 的 な密 度 関 数 を 求 め る こ と は可 能 で あ る の で 、 カ オ ス の エ ル ゴ ー ド性 を利 用 し、 長 期 平 均 利 潤 と長 期 平 均 効 用 が 計 算 で き る。 これ らを 均 衡 点 で え られ る 均 衡 利 潤 と均 衡 効 用 と比 較 す る と平 均 利 潤 や 平 均 効 用 が 均 衡 利 潤 や 均 衡 効 用 よ り も高 く(望 ま し く) な り う る場 合 が あ りえ る こ とが わ か る。 換 言 す れ ば、 「均 衡 状 態 と く らべ て カ オ ス 的 不 均 衡 は必 ず し も劣 る もの で は な い」 と い う ひ とっ の 「経 済 学 的 な解 釈 」 が 成 り立 ち 得 る。
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
本 論 文 は、 非 線 形 動 学 の 理 論 、 っ ま り極 限 周 期 軌 道 及 び カ オ ス の理 論 を応 用 す る こ と に よ っ て、 景 気 変 動 を分 析 して い る。 本 論 文 の 基 本 モ デ ル は、 ケ イ ンズ 型 の 消 費 関 数 を 有 す る 消 費 者 と、 予 想 販 売 量 を考 慮 に い れ っ っ在 庫 を 望 ま しい 水準 に調 整 して い く企 業 とか らな る一 財 不 均 衡 経 済 で あ る。 動 学 は、 在 庫 の 変 動 を表 す 方 程 式 と予 想 販 売 量 の 改 定 を 表 す 方 程 式 と か ら構 成 され る。 本 論 文 中 松 本 氏 の 新 しい貢 献 を 中 心 的 に 含 ん で い るの は5章 か ら8章 ま で の 四 っ の 章 で あ る。 5章 に お い て 筆 者 は、 利 潤 の 割 引 現 在 価 値 を 最 大 化 す る と い う企 業 の 最 適 化 行 動 を 分 析 し、 動 学 を 微 分 方 程 式 を 用 い て表 わ して 、 ホ ップ の 分 岐 定 理 を用 い て 局 所 的 な 安 定 周 期 軌 道 の 存 在 す る条 件 を 求 め 、 ま た ポ ァ ンカ レ=ベ ンデ ィ ク ソ ンの 定 理 を 用 いて 、 動 学 方 程 式 の 非 線 形 性 の 度 合 が 強 い場 合 に は大 域 的 な 極 限 周 期 軌 道 が 存 在 す る こ とを 証 明 して い る。6章 で は差 分 方 程 式 に よ っ て動 学 を 定 式 化 し な お して極 限 的 周 期 軌 道 の 存 在 条 件 を 求 め 、7章 で は、6章 の モ デ ル に 短 期 的 完 全 予 見 の仮 定 を導 入 し、 関 係 式 を特 定 化 して シ ミュ レー シ ョ ンを行 い、 望 ま しい在 庫 水 準 に 関係 す るパ ラ メ ー タ ー の 値 の 変 化 に と も な って 、 極 限 周 期 軌 道 の み な らず 種 々 の カ オ ス が 発 生 す る こ と を 明 らか に し て い る。8章 で は ク モ の 巣 動 学 モ デ ル に っ い て カ オ ス下 の 密 度 関 数 を導 出 し、 生 産 者 の平 均 利 潤 と 消 費 者 の平 均 効 用 と を、 長 期 均 衡 点 と カ オ ス的 変 動 下 に あ る場 合 に つ い て 比較 し、 モ デ ル の パ ラメ ー タ ー の 値 い か ん に よ って 、 カ オ ス の方 が 長 期 的 均 衡 点 よ り も望 ま しい場 合 が あ り う る こ と を示 して い る 。 極 限 周 期 軌 道 は 永 続 的 、 規 則 的 な 景 気 循 環 の 存 在 を説 明 し、 ま た カ オ ス は 、 一 見 不 規 則 に見 え る 景 気 変 動 の 存 在 を単 純 な モ デ ル か ら説 明 す る もの で 、 い ず れ も線 形 動 学 体 系 で は分 析 で き な い 経 済 変 動 の分 析 を可 能 に す る。 こ の分 野 の先 駆 的 業 績 と して は グ ッ ドウ ィ ン、 デ イ、 グ ラ ンモ ン、 西 村= 矢 野 等 に よ る業 績 を 挙 げ る こ とが で き るが 、 本 論 文 独 自 の 貢 献 は、 生 産 者 の 最 適 化 行 動 を 明 示 的 に 考 慮 した 在 庫 変 動 モ デ ル を 用 い て 在 庫 循 環 を 分 析 して い る点 に あ る。 景 気 変 動 の 分 析 に新 た な 視 点 を 提 示 して お り、 貴 重 な研 究 で あ る。 よ っ て 博 士 論 文 と して 合 格 と判 定 す る。