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酸性染料によるナイロン6の染色における圧力の影響 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

(IIHFWVRI3UHVVXUHRQWKH'\HLQJRI$FLG'\HVWR1\ORQ6

勢 田 二 郎

-LUR6(7$

1.緒言  一般に、凝縮系におけるペネトラントの拡散係数'は、(\ULQJ1)による活性化状態論によれば、次 式で表される。       '=$H[S(−⊿*キ57) (1) ここに、$はペネトラントの跳躍距離などからなる係数である。また、*、5、7はそれぞれ熱力 学における*LEEVの自由エネルギー、気体定数および絶対温度である。*キにおける上付添え字は、 (\ULQJが使用したものであり、GRXEOHGDJJHUと読む。このような遷移状態論による取り扱いは、その 他にも:LUW]2)3ULJR]LQH3)らによっても表現されており、それらはいずれも式(1)の型となる。高 圧下の等温過程において、熱力学関係式は*LEEVの自由エネルギー変化の圧力依存性が、系の体積変 化を与えるので、式(1)より       ⊿9キ=−57∂OQ'∂3)7 (2) となる。ただし、式(1)における$の圧力依存性については、通常、1FP3PRO以下と評価されるの でその寄与は無視した4)。ここに、⊿9は拡散の活性化体積と呼ばれ、活性化状態と原状態におけ るペネトラントの部分モル容積の差と定義される。染色系における拡散の活性化状態では、高分子鎖 のセグメント運動により、染料分子の直傍に染料を収容するのに必要な(\ULQJ+ROHと呼ばれる孔((+ と略す)が生じ、次の位置へ染料は跳躍する。したがって、⊿9キは次のように表現できる体積変化 の総計となる。       ⊿9キ = ⊿9(+ + ⊿9, +⊿9Z (3) ここに、⊿9(+キは(+の生成に伴う体積変化であり、⊿9,キは染料分子とその周囲にある高分子や溶 媒(ここでは水)との相互作用(たとえばイオン結合やイオン解離など)による原状態と活性化状態 とにおける染料分子の部分モル容積の差である。さらに、⊿9Zキは染料分子自身の占有体積変化であ り、化学構造変化を示すが、一般に、染色における染料分子の構造変化はないので考えなくてよい。 したがって、式(3)は、       ⊿9キ = ⊿9(+ + ⊿9, (4) となる5)  既報6)で述べたように、反応染料の木綿中の染料拡散における圧力の効果は、小さい正の拡散の活 性化体積の値を示した。この結果を、共有結合の生成や水溶性染料の水和等に起因する拡散種/高分 子/水分子の3者間の相互作用による負の体積変化(⊿9,キ)と(\ULQJの孔の生成による正の体積変 化(⊿9(+キ)とが相殺されたものとして定性的に説明した。  本研究では、主としてイオン結合により染着する酸性染料の染色におよぼす圧力の効果について検 討した。酸性染料による染料の拡散については、多くの研究がなされており7)、拡散係数の濃度依存 性などが報告されている。圧力の効果に関する研究は、&,$FLG2UDQJH7を用いた筆者の報告8) あるだけである。この報告では、初期の染色速度曲線から拡散係数を求めた7)ものであり、この場合 も染料の占有体積に比較して、比較的小さな活性化体積の数値を報告した。本報告では、実験方法を

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異とする染料の浸透距離から求める後述の方法を用い、3種の酸性染料について興味ある結果が得ら れたので報告する。 2.実験 (1) 試料  染色に使用した試料は、宇部 興産より恵与された直径6PPの ナイロンモノフィラメントを純 水により十分洗浄後、1FPに切断 し、自由長下、水中90℃21K 熱 処理後使用した。  染色に使用した染料は、表1に 示 し た C,$FLG2UDQJH7、$FLG 5HG88 お よ び$FLG5HG18( 試 薬、東京化成社製)を精製せず にそのまま用いた。表1には、化 学構造も示した。$27は、酸性 染料として従来の染色研究によ く用いられている標準的な染料 である。$588は、$27より疎水 性が増加し体積が大きいが親水 基(6231D)の数が同じである。 さ ら に、$518は、$588よ り 親 水基が多い染料として使用した。 尚、S$$%は分散染料モデル物質 として、従来より使用している 拡散種であり、酸性染料との拡 散現象の比較に用いる。 (2)方法  高圧染色速度実験に使用した方法の概要を以下に記す。すなわち、染色系を所定温度(80℃)まで 予熱中に、染料拡散が進行することを防ぐために、各染料を純水に溶解し、ガラスアンプルに封印した。 これを、試料とともに、所定の酢酸緩衝液を注入したポリプロピレン製試験管内部に置き、テフロン 栓をした後、高圧反応シリンダー内部に導入した。これにより染料は予熱中に試料との接触を防止で きる。所定の温度に到達後、約2003Dの圧力を付加することで、アンプルは粉々に破砕され染色が開 始される。また、染色時に染浴内部の十分な撹拌ができないので、円柱状ナイロン試料を細いステン レス針金を用いて、染色液中において試験管壁に接触しないように固定した。この方法により、染色 ムラを防止することができた。  尚、高圧実験に使用した装置は既報5)と同じである。 7DEOH1 &KHPLFDOVWUXFWXUHRIGLIIXVDQW

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(3)測定  本報告では、下記のアインシュタイン式を用い、染料の浸透距離から拡散係数を求めた。       '=05[ð / W (5) すなわち、染色実験後モノフィラメントをミクロトー ムにより薄片を切り出し、顕微鏡下において、表面か らの浸透距離を測定した。浸透距離の測定値は10回の 測定の平均値を用いた。図1は、$588を用い、S+40 および438における大気圧での浸透距離を染色時間の 平方根に対してプロットしたものである。図に明らか なように、直線性は良好であり、勾配から式(5)に より拡散係数'を求めることができる。  一方、酸性染料染色系は、一般に、染浴S+の影響を 受けることが知られており7)、図1においても、染浴 S+の違いにより拡散係数が異なることを示している。 イオン解離度は圧力に依存し変化するので、染浴S+も 圧力により変化する。(O \DQRY9)は、25℃における酢 酸緩衝液のS+の圧力係数(∂S+∂31000EDU−1)が  −019であることを実験的に示している。本報告で は、80℃の実験であり、また酸性染料混在化でもある が、他に参考デ−タが得られなかったので、(O \DQRY の結果をそのまま使用し、所定の圧力下においてS+ が40になるように大気圧下のS+を調整した。 3.結果と考察  (1)圧力下における染色速度  図2は、3種の酸性染料を用い、大気圧から3000EDUまでの各圧力下における浸透距離を染色時間 の平方根に対してプロットしたものである。各染料について何れも、圧力の増加とともに単調に浸透 )LJ1 'LIIXVLRQGLVWDQFHYVWLPH$588 1EDU) )LJ2 5HODWLRQVKLSEHWZHHQ'LIIXVLRQGLVWDQFHDQGWLPH

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距離は低下した。一方、染料の分子量や大きさ の増加とともに浸透距離も低下していることが 明らかである。さらに、拡散の遅い状況におい て若干のバラつきはみられるが、概ね直線性は 良好である。この直線の勾配から式(5)を用 いて拡散係数'を算出した。 図3は、式(2)から拡散の活性化体積を求め るために、各圧力下におけるOQ'をプロットし たものである。筆者は、これまでに多くのOQ' YV3 の関係を作図した9)が、その結果は、い ずれの場合にも実測の圧力の範囲において直線 により近似できることが見出している。本報告 においても、⊿9キの圧力依存性は、実測圧力 範囲において取り扱わないこととした。  ⊿9キは、図の直線の勾配より、式(2)に従っ て求めることができる。得られた結果を表2に示した。表2には、染料の分子量0およびその占有 体積9Zも示した。これは既報に述べた染料のYG:分子モデルを計算した占有体積である。 163(FP3PRO)の大きさをもつ$27に対して、⊿9 205(FP3PRO)の値が得られた。緒言で述べ た初期染色濃度測定から求めた既報8)における値(117FP3PRO)とは異なった結果である。この原 因は不明であり、さらなる検討はしていない。本報告では、一連の大きさの異なる染料との比較を今 回のデータを用いて行うこととした。親水基の数が同じで体積の大きい$588に対して、⊿9キ 264 (FP3PRO)の値が、また親水基の数が増加し体積のさらに大きい$518に対して、⊿9 176(FP3 PRO)の値が得られた。一方、参考として用いた分散染料モデルのS$$%に対する値は、⊿9キ 197(FP3 PRO)である5)  表2に得られた結果を示し、その右欄に、染料の占有体積との割合⊿9キ9Zを示した。分散染料モ デルであるS$$%の場合には、既にある高分子の自由容積に加えて、染料の占有体積の僅かに17%の 小さな活性化体積が分配されれば拡散が可能になると理解される。これより大きな酸性染料では、さ らに小さな活性化体積の分配により拡散が遂行される結果となった。さらに、3種の酸性染料を比較 すると、染料の占有体積と活性化体積の間には、分散染料に見られた正の相関性は観察されず、最も 大きな$518が最も小さな⊿9キ9Zの値(8%)を示した。  さて、表2から酸性染料について得られた⊿9キの結果は、正の活性化体積の値であり、拡散の遷移 状態は原状態に比較して「膨らむ」ことを意味する。すなわち、圧力は拡散に負の効果を示す。しか しながら、その値は、染料のYG:体積の8∼14%に過ぎず、遷移状態が原系と比べて大きく膨らんで )LJ3 3ORWVRIOQ'YV3UHVVXUH '\H 0 9Z ⊿9キ (+9,99Z S$$% 197 117 197 197 0 017 $27 327 163 205 274 −69 013 $588 377 189 264 318 −54 014 $518 582 225 176 379 −203 008 7DEOH2$FWLYDWLRQYROXPH(FP3PRO)RIGLIIXVLRQ

(5)

いないという結論が得られる。同様の結果は、セロファンを直接染料である&KU\VRSKHQLQH*(&,'LUHFW <HOORZ12)で染色(100℃)した場合にも得られている10)。セロハンの場合には、水膨潤セルロ−ス の中で、大きな染料分子が拡散する際に、僅かの(\ULQJの孔が分配されるだけで拡散が進行するとい う概念が推察されるが、ナイロンの膨潤度はセルロ−ス程大きくはない5)。表に挙げた分散染料モデ ルとしてのS$$%の、同温度における拡散の場合には、染料体積が、$27の約23にもかかわらず、ほ ぼ同等の拡散の活性化体積の分配が必要とされる結果である。したがって、本報告における酸性染料 の結果は、系の膨潤という概念では説明できない。  そこで、拡散の活性化体積⊿9キの値について吟味する。拡散の活性化体積は、遷移状態を得るのに、 拡散種(GLIIXVDQW)を包む局所容積(ORFDOYROXPH)について、原状態に加えられるべき空容積の下限 を意味する。すなわち、拡散の遷移状態は、拡散種の直傍に少なくとも拡散種の体積に等しい空孔が 必要であると考える。緒言に述べた式(4)のように、ここでは高分子鎖のセグメント運動により生 じる動的な孔((\ULQJの孔)の生成に伴う原状態と遷移状態の体積変化⊿9(+キと拡散種の周囲との 相互作用に基づく体積変化⊿9,キの和を考える。 すなわち、表2のように、分散染料であるS$$%にはイオン結合などの強い結合はないので、拡散種 の周囲との相互作用に基づく体積変化⊿9,キ=0と考えられる。加えて、酸性染料においても⊿9(+キ は、S$$%の⊿9(+キに正比例すると仮定すると、表2に示した各染料の⊿9(+キの値が計算される。 すなわち、大きな染料には大きな(\ULQJの孔が必要となるわけである。この仮定の上に、式(4)より ⊿9,キを求め、表2に示した。スルフォン酸基1個の$27と$588については、ほぼ同じ−5∼−7(FP3 PRO)の値となり、スルフォン酸基3個の$518の場合には約3倍の−20(FP3PRO)の値が得られた。 すなわち、スルフォン酸基がイオン結合や水和により部分モル体積が1個につき5∼7FP3減少すると 考えるのである。このように、⊿9,キを考慮すれば、活性化体積と染料の体積の関係を整理すること ができると考えたが、定量的に取り扱うためには、さらなるデータの積み重ねが必要である。以上の ように、拡散種/高分子/水分子の3者間の相互作用による体積変化と(\ULQJの孔の生成による体積 変化とが相殺された結果として、小さい活性化体積の値が得られたと結論した。  筆者は、高圧下における染色の物理化学に関する実験研究テーマを約30年間取り組んできたが、残 念ながら、これ以上継続することができなくなった。今後、この研究がさらに進展し、染色物理化学 に新たな知見が加わること祈念して終わりとする。  尚、高圧下の染色物理化学に関する著者の論文リストを付記した。 文献

1)6*ODVVWRQH.-/DLGOHU+(\ULQJ 7KH7KHRU\RI5DWH3URFHVVHV 0F*UDZ−+LOO1HZ<RUNFKDS9(1941) 2):LUW]3K\VLN=44221309(1944) 3)3ULJR]LQHGH%URXKHUH$PDQG3K\VLFD16577(1950) 4)例えば勢田二郎;染色工業9RO391R5245(1991) 5)勢田二郎;学位論文(京都大学)(1984) 6)勢田二郎;山梨大学教育学部研究報告第48号88(1997) 7)例えば黒木宣彦;「染色理論化学」槙書店東京(1968) 8)勢田二郎;山梨大学教育人間科学部紀要9RO51R21(2003) 9)%6(O \DQRY$XVW-&KHP28933(1975) 10)勢田二郎、伊藤泰輔;繊維学会誌、38、7−178(1982)

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付記(高圧下の染色物理化学に関連する著者の論文) 1 「多層膜法小型拡散セルの試作」繊維学会誌 7−10337(1981) 2 ',))86,212)'<(02/(&8/(,132/<0(581'(5+,*++<'5267$7,&35(6685( 6(1−, *$..$,6+,7−11937(1981) 3 「セロファンに対する&KU\VRSKHQLQH*の拡散の活性化体積」繊維学会誌 7−17838(1982) 4 $&7,9$7,21 92/80( )25 7+( ',))86,21 2) '<( 02/(&8/( ,1 32/<((7+</(1( 7(5(3+7+/$7() 6(1−,*$..$,6+,7−21438(1982) 5 「ナイロン6繊維中の染料拡散における拡散係数および拡散の活性化体積の異方性」繊維学会誌 7−51 39(1983) 6 「S−アミノアゾベンゼン−ナイロン6系の染着平衡に及ぼす圧力の効果」繊維学会誌 7−34239(1983) 7 「ポリエチレンテレフタレートにおけるS−ニトロアニリンの拡散の活性化体積に及ぼす膨潤度の影響」繊 維学会誌7−8640(1984) 8 「セルロースジアセテートに対する水およびベンゼン系からのS−アミノアゾベンゼンの拡散の活性化体 積」繊維学会誌 7−22140(1984) 9 「ナイロン6に対する分散染料の拡散の活性化体積」 繊維学会誌 7−26340(1984) 10 「高分子固体における芳香族化合物の拡散および収着に対する圧力の効果に関する研究」京都大学 学位 論文(1984) 11 「S−アミノアゾベンゼンのセルロースジアセテート中の拡散に対する圧力および溶媒の効果」繊維学会誌  7−12541(1985) 12 「S−アミノアゾベンゼンのセルロースジアセテートに対する収着の⊿9における溶媒の効果」繊維学会誌  7−24141(1985) 13 「芳香族分子の占有体積について」繊維学会誌 7−16942(1986) 14 「高圧力下の高分子固体における拡散および収着」繊維学会誌 3−1542(1986) 15 (IIHFWRISUHVVXUHDQGVROYHQWRQWKHGLIIXVLRQRIDURPDWLFFRPSRXQGVWKURXJK3RO\PHUV &ROORLG 3RO\PHU6FL 557−573265(1987) 16 「薄膜拡散源を用いる多層膜法による拡散係数の測定」繊維学会誌 24344(1988) 17 3UHVVXUH(IIHFWVRQ'LIIXVLRQRI/LQHDU$OLSKDWLF(VWHUV7KURXJK3RO\HWK\OHQH %XOO,QVW&KHP5HV.\RWR 8QLY33066(1988) 18 'LIIXVLRQRIOLQHDUDOLSKDWLFHVWHUVLQSRO\HWK\OHQHDVDIXQFWLRQRIFKDLQ/HQJWKRIWKHHVWHUVSUHVVXUHDQG WHPSHUDWXUH &ROORLG 3RO\PHU6FL1224−1240269(1991) 19 「染色の物理化学における高圧の利用」 染色工業 24539(1991) 20 「高分子基質中の拡散に対する圧力の効果」高圧力の科学と技術 783(1994) 21 「&,5HDFWLYH%OXH19による木綿の染色における圧力の効果」山梨大学教育学部研究報告第48号88(1997) 22 「&,$FLG2UDQJH7によるナイロン6の染色における圧力の効果」山梨大学教育人間科学部紀要第5号1 (2003) 23 「数種の有機化合物の分子体積と高分子中の拡散係数」山梨大学教育人間科学部紀要第11号1(2009)

参照

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