人権教育の新たな指導方針について
一文部科学省・調査研究会議「第三次とりまとめ」の検討-梅 田
修
政府は、 2002年 3月15日に「人権教育・啓発に関する基本計画J (以下「基本計画J) を閣議決 定した。「基本計画Jは、「人権教育・啓発の推進方策J (第四章)で、「学校における指導方法の改 善を図るため、効果的な教育実践や学習教材などについて情報収集や調査研究を行い、その成果を 学校等に提供していく」ことを指摘している。文部科学省は、この指摘を具体化するために、 2003年6月に「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議J(以下、調査研究会議)を発足させ た。これは、人権教育に関する文部科学省の独自の対応である。 調査研究会議は、発足以来審議を継続し、次のような「とりまとめ」を公表した。 1.人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「第一次とりまとめJ(2004年6月) 2.人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「第二次とりまとめJ(2006年 1月) 3.人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「第三次とりまとめJ(2008年 3月) 「第三次とりまとめ」が最終とりまとめである。本稿では、「第三次とりまとめ」を中心に、人 権教育の指導方法等の在り方に関して批判的な検討を行うことを目的とする。1
.
r
第三次とりまとめJに至る経過と特徴
(1)審議の経過 「第三次とりまとめJの方向性が議論された際(第24回/2006年7月25日)、「第二次とりまと め」について、「現場の教員がより明確にイメージできるよう、必要に応じて加筆・修正を加える」 ことと、「実際の授業・指導や研修で活用できる具体的な取組例等の資料を、取りまとめて添付す る」ことが提起された。 「具体的な取組例等の資料」を提示することが強調される中で、結局「第三次とりまとめjは、 「指導等の在り方編J と「実践編Jの二部構成でまとめることが決まったのである。「実践編J によ って人権教育のイメージを具体化しようとしたわけである。そして、第24回の直後、「実践編」の 事例を豊かにするために、 2006年 7月27日、文部科学省初等中等教育局児童生徒課は、都道府 県・指定都市教育委員会人権教育担当者宛に、「人権教育に関する指導資料等の提供について(依 頼)Jなる文書をだし、資料の収集をはかっている。 (2 )とりまとめの特徴(表1) 「第二次とりまとめJまでの議論の内容は、「第三次とりまとめ」の際には、「指導等の在り方編J として議論された。さらに、「第二次とりまとめJ(2006年 1月)の次にだされた「指導等の在り 方編J(2006年12月20日)では、「人権教育の指導方法の在り方について[最終まとめ] (案)J と して提案された。つまり、「指導等の在り方編J については、基本的な考え方や基本構想はほとん ど「第二次とりまとめJで終わっていたと言うことである。逆に言えば、「第三次とりまとめ」の-1-審議の中心になったのは、「実践編Jであったということができる。 表 1 とりまとめ」の経過 【第二次とりまとめ】 A.人権教育の指導方法等の在り方について一[第二次とりまとめ](素案) 第
1
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B.人権教育の指導方法等の在り方について一[第二次とりまとめ](案) 第1
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人権教育の指導方法等の在り方について一[第二次とりまとめ](案) 第20
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D.人権教育の指導方法等の在り方について [第二次とりまとめ](案) 意見募集(
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人権教育の指導方法等の在り方について一[第二次とりまとめ](
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【第三次とりまとめ】 「指導等の在り方編」 F. 人権教育の指導方法の在り方について[最終まとめ](案) 第2
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G. 人権教育の指導方法の在り方について[最終まとめ][改訂](案) 第2
9
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H. 人権教育の指導方法の在り方について[第一次とりまとめ](案) 第3
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1.人権教育の指導方法の在り方について[第二次とりまとめ](案) 意見募集(
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1.人権教育の指導方法の在り方について[第三次とりまとめ](
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「実践編」a
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第三次とりまとめ(実践編(資料編))J原案 第2
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第三次とりまとめ(実践編(資料編))J原案[改訂] 第2
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第三次とりまとめ(実践編)J (案) 第3
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第三次とりまとめ(実践編)J (案)意見募集(
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第三次とりまとめ(実践編)J(
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基本的な考え方
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指導等の在り方編
J
「指導等の在り方」に関わっては、審議の過程で、文書A (
2
0
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5
年8
月29日)から文書 Jr
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第 三次とりまとめ」、2008
年3
月)までに、1
0
個の文書 (案・正文)がだされている。ここでは、こ 円 , uれらの文書の経緯も見ながら問題点を検討する。 (1)人権について [第一次とりまとめ] (2004年6月)は、人権を国民相互の問題に綾小化し、公権力や社会的権 力と人権の関連を無視して記述したところに特徴があった。(1) この点で、文書Aには、「国家や政府は個々人の人権を無条件に尊重することを要請されている と言わなければならない。それに対して、個人が他の個人の人権を尊重するという原理は、歴史的 に言えば、国家の人権遵守義務から派生して生じたものである。しかし、世界人権宣言が発せられ て以降、今日では、個人が他の人も含めて個人の人権を守らなければならないという原理は、普遍 的なものとされるようになっている。J (傍線一梅田、以下同様)との貴重な指摘があった。しかし、 B以降の文書で削除された。 しかし、文書
A
には、i
W
権利』という概念は、『自分の望みに基づいて何かを行う資格』を指す。 一般に、何かの権利が認められる場合には、それに応じた義務が裏打ちとして定められている」と いったやや乱暴な権利=義務一体論も記述されていたが、これも B以降の文書で削除された。 したがって、人権についての記述は、[第一次とりまとめ]のレベルを超えるものにはならなか った。次のような記述が文書J (1第三次とりまとめJ)まで継続された。 「人権を侵害することは、相手が誰であれ、決して許されることではない。全ての人は自分の持 つ人としての尊厳と価値が尊重されることを要求して当然である。このことは同時に、誰であれ、 他の人の尊厳や価値を尊重し、それを侵害してはならないという義務と責任とを負うことを意味す ることになるのである。J (文書C'"文書J) 当然であるが、こうした人権の説明に対して次のような意見が出されている(1第二次とりまと め(案)Jパブリックコメント)0 (2) O人々の尊厳を守るための条件を「権利Jとして位置づけることにより、権限を持つ人々に「保護・不介入・伸長J を求めることができるようにしたところに人権の意義があるという正確な表現にすべきです。人権は私人間のもの だけでなく、人権の主体である市民と、さまざまな場で権限を持つもの(公権力、職場の上司、教師など)の関係 を調整するためのものであることは、人権の歴史を振り返れば自明のことです。 Oそもそも、人権は、人間関係能力や価値、共感力にかかわるだけではない。むしろ現実に存在する権力関係(教 師 生徒、親 子ども、雇用者一被雇用者)の中で、「共感Jが働かなくなったときにも自他の尊厳を守ることが できるための原則・制度としての意義が大きい。全ての人に共感したり大切に,思ったりすることができる人聞がい ない以上、「あなたは嫌なヤツだが、人権のためのあなたの要求は全力で守る」と言える人間を作り出すことが第 一の目標とされなくてはならない。一全体を通じて「自分の大切さと共に他の人の大切さを認めることJ に言及さ れているが、人権は、権力関係が存在する社会生活の中で人間の尊厳を守るための原則を「権利」の明確化という 形で具体化したものであり、人間関係の問題に還元してはならない。 ( 2)人権教育の位置づけ 人権教育の位置付けについて、調査研究会議でも、当初から「基本計画においては『教育活動全 体を通じて、人権教育が推進されている』とされているが、そのことの裏返しとして、カリキュラ ムでの位置付けが不明瞭であると思う。人権教育を学校の教育全体の中でどのように位置付けるか についての言及があってもよいのではないか。J (第9回/2004年2月23日)といった意見が出さ れていた。 円 ︿ U「人権教育は、自他の人権の実現と擁護のために必要な資質や能力を育成し、発展させること を目指す総合的な教育である。その際に必要とされる資質や能力は、①知識的側面、②価値的・態 度的側面、③技能的側面という三つの側面からなっているJ(文書 E) 「人権教育は、人権に関する知的理解と人権感覚の酒養を基盤として、意識、態度、実践行動 力など様々な資質や能力を育成し、発展させることを目指す総合的な教育であることがわかる。こ のような人権教育を通じて培われるべき資質・能力については、次の三つの側面(①知識的側面、 ②価値的・態度的側面及び③技能的側面)からとらえることができる。J (文書J) 表現は異なるものの、内容は[第一次とりまとめ]と変わらない。問題の焦点は、「学校の教育 全体の中でどのように位置付けるか」という人権教育の位置づけにあったはずである。この指摘は、 「総合的な教育である」と述べているだけであって、位置づけは不明確のままである。 これに対して、次のような意見が出されている(["第二次とりまとめ(案)Jパブリックコメント)。 いずれにしても、人権教育の位置付けの暖昧さが反映している。
O
人権教育を教科、特活、道徳その他の全領域でおこなわなければならないのは分かりますが、具体的にどの時間 を使っておとなうのかがよく分かりません。or
人権教育は、すべての教育の基本であり、各学校において、教育活動全体を通じて児童生徒の発達段階に応じ、 創意工夫してこれに取り組まなければならないJ とある。進路指導、生徒指導、学習指導などを行う際、全ての教 育の基本という言葉の持つ意味は重たいので、人権教育の位置づけをもっと分かりやすく書いて欲しい。 0人権教育を、個別の科目のように考えている部分が見受けられますが一「人権授業の時間」というものをイメー ジしては、本質的に人権教育を捉えそこなってしまいます。さまざまな時間の中に、少しずつ人権という亙素が染 み渡っている状態というものを想定するべきところです。この点を間違えると、目標、評価、計画など、数値など で語るべきではないところ、文書で報告するようなものではないところを、それと分からずに要求するような過ち につながりますが、現在の文面ではその恐れが高いと危倶されます。 ( 3 )人権感覚と知的認識・意欲・態度・行動 「第一次とりまとめJは、人権擁護推進審議会「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深め るための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について(答申)J (1999
年)の指摘を受け容れて、「人権の意義 ・内容や重要性についての正しい知識を身に付けることを 『知的理解』とし一人権問題を直感的にとらえる感性及び人権への配慮が態度や行動に現れるよう な人権感覚をまとめて『人権感覚』」とすると明記した。 だが、態度・行動までふくめて「人権感覚jであるかのような説明に対して、「感覚という日本 語そのものが態度 ・行動とイコールか、というと少し違うと思うが一J (第12回議事録)といった 異論が[第一次とりまとめ]の審議段階から出ていた。座長(福田弘)も、第9
回調査研究会議に 提出した補足資料(1人権感覚の育成をめぐる課題J)で異論を提出していた。(
3)
こうした経過もあって、「第二次とりまとめJの議論にはいった文書 Aから、ほぽ福田弘「人権 感覚の育成をめぐる課題J (補足資料)の基調にもとづいて整理されることになった(文書 A'"文 書Jはほぼ同様)。ここでは文書Jを示す。 「人権感覚とは、人権の価値やその重要性にかんがみ、人権が擁護され、実現されている状態を 感知して、これを望ましいものと感じ、反対に、これが侵害されている状態を感知して、それを許 せないとするような、価値志向的な感覚である。『価値志向的な感覚』とは、人間にとってきわめ て重要な価値である人権が守られることを肯定し、侵害されることを否定するという意味において、 -4まさに価値を志向し、価値に向かおうとする感覚であることを言ったものである。一つまり、価値 志向的な人権感覚が知的認識とも結びついて、問題状況を変えようとする人権意識又は意欲や態度 になり、自分の人権とともに他者の人権を守るような実践行動に連なると考えられるのである。J ここでは、人権感覚とは「価値志向的な感覚J (価値を志向し、価値に向かおうとする感覚)だ と説明したことで、態度・行動までふくめて「人権感覚」とする「第一次とりまとめ」の説明は修 正されたことになる。だが、新たな問題がいくつか生じることになった。人権感覚と知的認識、人 権意識、意欲、態度との関連である。 その第一は、「人権感覚とは、人権の価値やその重要性にかんがみ、人権が擁護され、実現され ている状態を感知して、これを望ましいものと感じ、反対に、これが侵害されている状態を感知し て、それを許せないとするような、価値志向的な感覚である。」と説明されていることである。だ が、これはかなり高次な感覚(感覚という表現が適切かどうかも検討を要する)である。しかも、 = 一 線部分の「感知j には知的認識が深く関係しているし、 一 一部分の内容は人権意識と区別 はつかない。この説明からだけでも、人権感覚を知的認識や人権意識と区別して把握すること事態 困難なことを示している。 第二は、にもかかわらず、「価値志向的な人権感覚が知的認識とも結びついて、問題状況を変え ようとする人権意識又は意欲や態度になり、自分の人権とともに他者の人権を守るような実践行動 に連なる」と段階的に説明しようとする。図式化すれば、(人権感覚+知的認識)→人権意識、意 欲・態度→実践行動 となる。区別が困難な要素をあえて段階的に区別し、図式化したのである (図 1参照)。 第三は、この段階論的な区別にも矛盾がある。人権感覚と意欲・態度の関係である(図1参照)。 人権感覚は「価値志向的な感覚Jであるとして、態度・行動とは区別したはずである。ところが、 人権感覚の下位に位置づけられている「価値的・態度的側面」には、「自他の価値を尊重しようと する意志・態度J I人権侵害を受けている人々を支援しようとする意欲や態度J I人権の観点から自 己自身の行為に責任を負う意志や態度J I社会の発達に主体的に関与しようとする意欲や態度」が ふくまれている。 そして、この「人権感覚」と「人権に関する知的理解」が結合するときに、「自分の人権を守り、 他者の人権を守ろうとする意識・意欲・態度Jが生じるとされ、人権感覚の上位には態度が登場し てくる。それだけではない、人権感覚の下位に存在する「自他の価値を尊重しようとする意志・態 度JI人権侵害を受けている人々を支援しようとする意欲や態度Jと上位に存在する「自分の人権 を守り、他者の人権を守ろうとする意識・意欲・態度」は内容的に区別できない。人権感覚と意 欲・態度の関係がまったく整理されていない。 第四は、人権感覚とは「価値志向的な感覚J (価値を志向し、価値に向かおうとする感覚)だと 説明したことと教育実践の関係である。問題の所在は、「実践編J の「人権感覚の育成に関わる指 導内容」のところでふれる。 5
図1
【参考]
r人 権 教 育 を 通 じ て 育 て た い 資 質 ・ 能 力 」 自 分 の 人 権 を 守 リ 、 他 者 の 人 権 を 守 る た め の 実 践 行 動1
曾
守 ろ う と す る 意 識 ・ 意 欲 ・ 態 度 (以下の「人権に関する知的理解」と「人権感覚」 とが結合するときに生じる) 人 権 に 関 す る 知 的 理 解 関 連 / 人 権 感 覚 (以下の知識的側面の能動的 学習で深化される) 骨一一~( (以下の価値的・態度的側面と技 能的側面の学習で高められる)-
-
-
-
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-
-
グ
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知 識 的 側 面 価 値 観 ・ 態 度 的 側 面 技 能 的 側 面 -自由、責任、正義、 -人権の尊厳、自己価値 -人権の尊厳の平等性を踏 平等、尊厳、権利、 及び他者の価値を感知 まえ、互いの相違を認め、 義務、相互依存性、 する感覚 受容できるための諸技能 連帯性等の概念への -自己についての肯定的 -他者の痛みや感情を共感 理解 態度 的に受容できるための想 -人権の発展・人権侵 -自他の価値を尊重しょ 像力や感受性 害等に関する歴史や うとする意欲や態度 -能動的な傾聴、適切な自 -多様性に対する聞かれ 現状に関する知識 た心と肯定的評価 己表現等を可能とするコ -憲法や関係する圏内 -正義、自由、平等などの ミュニケーション技能 法及び「世界人権宣 関 連 実 現 と い う 理 想 に 向 関 連 -他の人と対等で豊かな関 言」その他の人権関 4昏一一歩惨 かつて活動しようとす ~ 係を築くことのできる社 連の主要な条約や法 る意欲や態度 会的技能 令等に関する知識 -人権侵害を受けている -人間関係のゆがみ、ステ -自尊感情・自己開 人々を支援しようとす レオタイプ、偏見、差別 示・偏見など、人権 る意欲や態度 を見きわめる技能 課題の解決に必要な -人権の観点から自己自 -対立的問題を非暴力的で、 概念に関する知識 身の行為に責任を負う 双方にとってプラスとな -人権を支援し、擁護 意志や態度 るように解決する技能 するために活動して -社会の発達に主体的に -複数の情報源から情報 いる国内外の機関等 関与しようとする意欲 を収集・吟味・分析し、公 に つ い て の 知 識 等 や 態 度 等 平で均衡のとれた結論に -E 】・ 到 達 す る 技 能 等 間 連1
曾
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全 て の 関 係 者 の 人 権 が 尊 重 さ れ て い る 教 育 の 場 と し て の 学 校 ・ 学 級 ( 人 権 教 育 の 成 立 基 盤 と し て の 教 育 ・ 学 習 環 境 ) -6-(4 )人権教育の目標 1 .翻弄される人権教育 人権教育とはどういう教育かという問題は、人権教育の推進にとって決定的問題である。ところ が、教育概念の一つである人権教育は、教育学的に吟味されることなく、その説明は政策的に翻弄 されてきた。 第一は、人権教育を最初に提起した、地域改善対策協議会「意見具申J (1
996
年、以下「意見具 申J)である。ここでは、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発 活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての人の基本的人権 を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築すべきと考えられる」と指摘した。 「差別意識の解消j のための人権教育が提起されたのである。 第二は、「人権教育のための国連1
0
年」に関する圏内行動計画(
1
9
9
7
年、以下「圏内行動計画J) である。ここでは、何の吟味もなく、「国連人権教育の1
0
年」行動計画において定義された、「人権 教育Jとは「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行 う研修、普及及び広報努力J と説明された。 第三は、人権擁護推進審議会「答申J(
1
9
9
9
年、以下「答申J) である。この「答申」では、「人 権教育とは、基本的人権の尊重の精神が正しく身に付くよう、学校教育及び社会教育において行わ れる教育活動とする。J と定義された。 第四は、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(
2
0
0
0
年、以下「法律J)である。ここで は、「この法律において、人権教育とは、人権尊重の精神の酒養を目的とする教育活動」と定義し た。人権擁護推進審議会「答申Jの延長線上で定義されたと言ってよい。 第五は、人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「第一次とりまとめJ(
2
0
0
4
年)である。 ここでは、「一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解 するとともに、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるようになり、それ が様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるようにすることが、人権教育の目標であ る。」と定義された。一部加筆されたものの(
4
)、「具体的な態度や行動に現れるようにすること が、人権教育の目標」であるという定義は、「第二次とりまとめJr
第三次とりまとめ」にも継続さ れた。 2.問題点 第一は、人権教育とは、「差別意識の解消J(r意見具申)、「基本的人権の尊重の精神が正しく身 に付くよう(にすること)J (r答申)、「人権尊重の精神の酒養J (r法律J) を目標とした教育として、 「意識に「精神」を対象とした教育と説明していたにも関わらず、「第一次とりまとめJr
第二次とり まとめJr
第三次とりまと」においては、これに加えて「具体的な態度や行動に現れるJようにす ることまでも目標として措定したのである。 教育学的吟味もなく、人権教育の目標・目的の変更が政策的に繰り返されている。当然ともいえ る次の質問にも、調査研究会議は基本的には答えていない。 (5)or
人権教育は、児童生徒の人権課題解決を目指す主体的な態度、技能及び行動力を育てることを目的とするJ と なっているが、人権教育啓発推進法では「人権教育は人権尊重の精神の酒養を目的とする」と人権教育の目的を規 定している。この標記と法律の捉え方の相違について記述する必要があるのではないか。c
r
第二次とりまとめ(案)J パブリックコメント)-7-第二は、人権のとらえ方と関連して、人権教育の目標が国民相互の問題に媛小化されていること である。人権教育の目標を国民相互の問題に媛小化するという問題は、子どもを権利の主体として 育てるという観点を希薄化させる。これは、教育内容にも関連する。次のような意見は当然の指摘 である。 (f第二次とりまとめ(案)Jパブリックコメント) 0基本的人権には、「自由権J
r
社会権Jr
参加権Jなどが含まれるが、重要なことは、それらの権利を行使するた めの、「自分で判断できる力Jや「ゆたかな学力Jを保障することである。人権教育は、教育を受けること自体が 基本的人権であると示しているが、このことに加えて、権利行使のための「判断カJr
ゆたかな学力J を保障する ことが必要であり、そのことを明確に示すべきである。 O日本国憲法の三本住の一つである基本的人権ーを行使・主張するために「自分で判断できるカJr
批判的に思考 する力」の育成があると思います。今後の人権教育は権利行使にかかわる「判断力Jr
思考力」、そしてそれらを身 につけるための「ゆたかな学力」を保障すべきだと思います。i
l
l
.
人 権 教 育 の 指 導 内 容 ・ 指 導 方 法 に 関 わ っ て -w指導の在り方編~ w実践編』 一 では、人権教育の指導内容と指導方法は具体的にはどのようにを示されたのであろうか。ここで は、「第三次とりまとめJ(~指導の在り方編~ ~実践編~)を中心に検討する。(
,
)人権教育の全体計画・年間指導計画について 「指導等の在り方編Jは、人権教育の位置付けについて、次のように述べている。 「人権教育については一『生きる力』を育む教育活動の基盤として、各教科、道徳、特別活動及 び総合的な学習の時間(以下『各教科等』という)や、教科外活動等のそれぞれの特質を踏まえつ つ、教育活動全体を通じてこれを推進することが大切である。J(文書 J-10
頁) -学校において人権教育を展開する際には、人権教育の目標と各教科等の目標やねらいとの関連を 明確にした上で、人権に関する意識 ・態度、実践力を養う人権教育の活動と、それぞれの目標 ・ね らいに基づく各教科等の指導とが、有機的 ・相乗的に効果を上げられるようにしていくととが重要 である。(文書J-11頁) 人権教育を「教育活動全体を通じてJ推進すること、人権教育と各教科等が「有機的 ・相乗的に 効果を上げられる」ように指導していくことを強調しているが、具体的にはどういうことであろう か。『実践編』を見てみよう。,
.全体計画の構成 「事例1
J (文書e-8
頁)には、「目標の体系化による全体計画の構成例」が図式化されている が、その一部を抜きだしたのが、表2である。表2には、「各教科について、人権教育に関する目 標を記載する」との注意書きがある。これによって、たとえば、数学は「論理的な思考力や合理的 な考え方を養う」、音楽は「合奏や合唱活動を通して豊かな感性を育てる」、美術は「表現活動や鑑 賞活動を通して豊かな感性を育てるj となっている。これらは、数学 ・音楽 ・美術の目標そのもの であって、なぜこれが人権教育の目標なのか。「各教科等やその分野 ・領域にはそれぞれ独自の目 標やねらいがあり この目標やねらいを達成させることが、第一義的に求められることは言うまで もない」と指摘しておいて、その中で「人権教育をいかにして総合的に位置付け、実践するか」と 発想したにもかかわらず、区別して記述できなかったということである。-8-表2 各 教 科 等 に お け る 目 標
国 語
。 教 材 を 通 し て 人 間 と し て の外国語
0
表 現 力 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ 生 き 方 に つ い て の 考 え を 深 ン能力を育成する。 める。 社 会0
人 権 問 題 を 正 し く 理 解 す 情 報0
人 権 に 配 慮 し て 情 報 を 主 体 る。 的 に 活 用 し よ う と す る 能 度 数 学0
論 理 的 思 考 や 合 理 的 な 考 え を育てる。 方 を 養 う 理 科0
科 学 的 な 見 方 や 考 え 方 , 自道 徳
0
差 別 や 偏 見 に 気 付 か せ , 人 然 や 生 命 を 愛 す る 心 情 を 育 間 尊 重 の 精 神 を 育 て る 。 てる。 生 活0
身 近 な 人 々 と の か か わ り に 特 別 活 動0
学 級 活 動 , 生 徒 会 活 動 , ク 関心をもっ。 ラ プ 活 動 , 学 校 行 事 に お い 音 楽0
合 奏 や 合 唱 を 通 し て 豊 か な 間 関 係 に つ い て 体 験 を 通 して , 望 ま し い 集 団 活 動 や 人 感 性 を 育 て る 。 て 学 び , 自 他 を 尊 重 し 社 会 美 術0
表 現 活 用 や 鑑 賞 活 動 を 通 し に 貢 献 す る 姿 勢 を 養 う 。 て 豊 か な 感 性 を 育 て る 。 保 健 体 育0
協 調 性 ・ 連 帯 性 を 育 て る 。 技術・O
よ り よ い 家 庭 生 活 の 在 り 方 総 合 的0
教 科 横 断 的 な 内 容 の 学 習 や 家 庭 に 気 付 き 実 践 す る 力 を 育 て な 学 習 の 体 験 的 活 動 を 通 し て , 課 題 る。 時 間 を 解 決 す る た め の 実 践 的 行0
情 報 モ ラ ノ レ に つ い て 考 え 動 力 や 豊 か な 人 間 性 を 養 る。 フ。 2.年間指導計画の作成 (参考)r
年間指導計画充実のための留意点J (文章e-10
頁)は、「年間指導計画は、全体計画 に基づき、各年度に行う人権教育の指導内容・方法等具体化した指導計画であり、当該年度におけ る取組の全体像を具体的に把握し、共通認識をもって人権教育に取り組めるようにするための、大 切な指針となるものである。」と述べ、八つの留意点を示しているが、その一つは「各教科では、 学習内容や指導方法等から人権教育の目標と結びつく教育活動を見出す」となっている。 具体例として、「事例2
J (文書e-ll
頁)に、小学校六学年における年間指導計画の作成例(図 2)が示されている。この表は、たしかに「教育活動全体を通じてJ取り上げる構図にはなってい るが、どこが「総合的」なのであろうか。 算数は「数を用いた論理的な思考力を養う」との記述のみである。国語は「人権作文の作成J 「平和について」であり、家庭は「高齢者・障害者と家族」、図画工作は「人権ポスターの作成」、 音楽は「世界の音楽に親しむ」である。社会科では、「江戸時代J r明治維新J r15年にわたる戦争J 「暮らしと憲法Jr
日本とつながりの深い国々」が上げられているだけである。これらは、学習指導 要領の中から人権教育の目標と結びついているらしい単元を「つまみだしたJのに等しい。 「教育活動全体を通じてJr
総合的に位置づけ、実践する」といった美名にも関わらず、実際の 構想は各教科などの活動の「つまみ食しり的取組の羅列である。「総合的J というより「総花的J な構想とも言いうるものである。-9-図2 〔第 6学年〕
5月~月~月
~月~月|叶 1叶叶叶叶 3月
' '.
.
国 語人権fF~の作成
'.
平
和
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ついて E '.
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' ' , 国々 ' t ' ' ' t 6 算 数 I~ 通年・数を用いた論理的な思考力を養う 理 科 家 庭 図画工作 音 楽 一一一一一一一一一」 動Z
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の環境 ; 人 権 ポ ス エ の 作 成z
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健康な生活と病気の予防 高齢者・3
害者と家族 感Z
症について( 道 徳 人霊感覚とは T T 礼儀 公徳心 尊敬ー感謝"" T 公正・公平 : 解 理 の 者v
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※ テ ー マ ふ れ あ い を 通 し て 学 ぶJ ~______l______~_____~______L_______~_____J______L_____.I______J______L____.J__ , 酪 姐 1・
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に £ つ て な か ま づ り V 障害者理解のアンケート・話し合い 障害者の方との交流 :児童会 :会動 特別支援学E
との交流② :クラブ I~ 通年;クラブの活動による異学年間の交流を促進する :活動 : 学 校 : 行 事 総 合 的 な 学 習 の 時 間 家庭・地域 との連携 ' 文化J
(
人権作文発表・ポスター主示、ユニセフ学習) T Tj j
特別支援学校との交流① 高齢者施設の訪問 i・
T T 。 I 人権作文コンクールへの応募 人権週間 n U T i(2 )人権教育の指導内容と指導方法 文書Jは、「指導内容の構成、学習教材の選定・開発、指導方法の在り方」について順次述べる として、「特に人権感覚の育成、児童生徒の自主性・主体性の尊重、発達段階や実態への着目、体 験的な学習の活用等の視点に焦点を合わせることにしたい」と指摘している (22頁)。すでに最初 から、「知的理解」に関する指導内容・指導方法への言及に十分な配慮がない。 1 .指導内容の構成 指導内容の構成について、文書Jは次のように指摘する。 「学校教育における各教科等やその分野・領域にはそれぞれ独自の目標やねらいがあり、指導に 当たっては、この目標やねらいを達成させることが、第一義的に求められることは言うまでもない。 このような中にあって、人権教育をいかにして総合的に位置付け、実践するかについては、なお、 様々な工夫や検討が求められるところである。 現代社会における人権尊重の理念の徹底の重要性にかんがみれば、児童生徒に対しては、人権に 関わる資質・能力をトータルに身に付けさせる必要があり、人権教育の指導内容についても、総合 的な内容構成が目指されることになるが、同時に、育成すべき資質・能力の特定の側面に焦点を当 て、個別的、具体的な指導内容を構成してこれを実施していくことも、必要かつ有効な方法となる。」 (文書J-22頁) 人権教育を「総合的に位置付け、実践するか」が課題なのだが、「なお、様々な工夫や検討が求 められるところであるJ と述べ、「総合的に位置付け、実践する」ことへの言及は歯切れが悪い。 むしろ、「個別的、具体的な指導内容を構成してこれを実施していくことJ を重視した指摘となっ ている。これが「知的理解J
r
人権感覚」にも共通した特徴となっている。 ア.人権に関する知的理解に関わる指導内容 では、「人権に関する知的理解に関わる指導内容」はどのように指摘しているのか。 「これまで、人権教育の知識的側面は、社会科等を中心とした教科の学習において扱われる場合 が多かった。他方、様々な人権意識に関する調査等の結果からは、人権に関する客観的・科学的知 識をある程度まで習得している人についても、その知識が社会や個人の生活の変容に資する生きた 知識として内面化され、主体化されていないといった傾向がうかがえる。こうしたことからも、人 権教育をより一層充実させる観点から、知的理解に関わる内容の指導を特に取り立てた形で行うこ とが必要となってくる。この側面の指導に当たっては、単なる知識伝達に止まらず、その知識内容 を自らのものとして肯定的に受けとめ、情緒的にもそれに共感できるようになるための主体的な学 習を可能にする教授法を活用する努力が求められる。その指導は必ずしも教材を読んだり、講話を 聴いたりする方式である必要はなく、むしろ、児童生徒の自己活動的、主体的関与を促すような学 習や、主体的な関与と取組を基礎とする体験的な学習の機会を提供できるよう、工夫が求められる。 (文書J-22頁) ここには、「総合的な内容構成」は記述されていない(無視されている)。逆に、「知的理解に関 わる内容の指導を特に取り立てた形で行うこと」を強調している。しかも、その指導にあたっては、 「主体的な学習を可能にする教授法Jr
児童生徒の自己活動的、主体的関与を促すような学習Jr
主 体的な関与と取組を基礎とする体験的な学習」が奨励されている。だがこれは、指導方法であって、 指導内容ではない。 続いて r(参考]知的側面に焦点を当てた指導内容の構成の例Jが示されているが、ひとつめは、 社会科の授業で「柔軟で弾力的な指導方法を取り入れるとと」であり、ふたつめは、総合的な学習 唱 E i-の時間や特別活動などで、「世界人権宣言Jや「児童の権利に関する条約Jなどを「教材として使 用する」ことであり、みつつめは、外国語の時間に、「世界人権宣言」や「児童の権利に関する条 約」などの英語版テキストなどを「教材として活用する」ことの記述である。 (6) これらは指 導方法や教材の提示であって、どこにも「指導内容の構成J にはふれられていない。 さらに、『指導の在り方編』に対する『実践編』の事例提示が、事離している。「【参考]知的側 面に焦点を当てた指導内容の構成の例」に示された内容が、『実践編』の事例として提示されてい るわけではない。『実践編』に、「人権に関する知的理解に関わる指導内容Jの事例として示されて いるのは次の二つ だ け で あ る (一部省略して紹介入 [事例10J人権概念を明確にする指導 (27頁) 「人権とは何かについて明確にすることは人権教育の第一歩である。一次に挙げるのは、人 権とは何かについてわかりやすく理解できるための効果的な指導事例である。」 ①テーマ 「欲しいものJ
r
必要なものJr
人権」 ②目的と概要一一ひとが「欲しいと思うもの」と「必要とする(大事な)もの」との関係を情 緒と思考を働かせて理解し、さらにそれらと「人権J との関係について考え、理解すること を目的とする。 ③所要時間(短) (7) /特別活動等 ④準備するもの 白紙/
r
世界人権宣言Jの要約 [事例11J人権についてのイメージを育てる指導 (29頁) 「人権に関する知識を深め、人権の尊重と実現のために必要な想像力や連帯の感情を高める ために、想像力と描写技能を活用させる指導事例である。」 ①テーマ 人権を絵に描く ②目的と概要一一小グループに分かれ、 1人が世界人権宣言に定める権利を絵で描き、他のメ ンバーは、その絵がどの権利を表したものであるかを当てるゲームを行う。 ③所要時間(短)/特別活動等 ④準備するもの一一「世界人権宣言Jの条項/用紙など [事例10Jは、「欲しいものJ の中から「必要なもの」を取りださせ、それもふくめて「絶対的 に必要不可欠なものJ を考えさせ、世界人権宣言の中味と比較させ、議論させようという実践であ る。[事例11Jは、世界人権宣言の中の一つの権利を絵に描かせ、何の権利かを他の子どもに当て させようというゲームである。二つの事例とも、どの学年(小・中・高)で実施するかも示されて おらず (W実践編』全体に共通する)、「知的理解に関わる指導内容J の事例であるにも関わらず、 教科ではない特別活動の時間を使って実施することになっているなど、「人権に関する知的.理解」 が深まる保障は見いだせない。むしろ、「人権」の理解に対する混乱をもたらす可能性さえある。 イ.人権感覚の育成に関わる指導内容 では、「人権感覚の育成に関わる指導内容Jはどのように指摘しているのか。 「人権感覚を育成するには、『価値・態度的側面』や『技能的側面』に属する諸要素としての価 値や態度、並びに諸技能を身に付けさせることが必要である。しかし、いきなり整合的な全体計画 の中でこれらを一挙に育成することは容易ではない。そこで、全体構造を意識しつつも、その諸要 素の中からいくつかを個別的に順次取り上げて、様々な場面や機会を生かして促進を図る取組が必 要となる。J (文書J-23
頁) まず第一に、「人権感覚の育成に関わる指導内容」は設定可能なのであろうか。可能なためには、 円 4 1 i何よりも人権感覚とは何かが「指導内容」として設定しうるほどに明確でなければならない。だが、 人権感覚とは「価値志向的な感覚J (価値を志向し、価値に向かおうとする感覚)だと説明されて いるようにきわめて暖昧な概念である。こうした暖昧な概念が、教育の目標になり得るのかという 基本的な問題が不問に付されたままで(こうした議論はほとんどない)、「指導内容」が問題にされ ている。 第二に、「整合的な全体計画Jcr~価値・態度的側面』や『技能的側面』に属する諸要素としての 価値や態度、並びに諸技能を身に付けさせること J)は、「一挙に育成することは容易ではない」な どといった弁明付きで、どこにも示されていない。逆に、「全体構造を意識しつつも、その諸要素 の中からいくつかを個別的に順次取り上げJ ることが強調されている(ここでいう全体構造とは何 か)。 続いて示されている「【参考)人権感覚の育成に焦点を当てた指導内容構成の例」は、ひとつめ は、各教科と関連させて、想像力・共感性・感受性・コミュニケーション技能などの育成、ふたつ めは、道徳教育・特別活動・総合的な学習の時間などで「直接的な体験を活かす」ことで、ひとつ めにかかげた「諸技能を育成する」ことである。 結局、「価値・態度的側面Jや「技能的側面」に属するとされる諸要素を「個別的に順次取り上 げJていけば、「人権感覚」に行き着くはずだというわけである。ここには「整合的な全体計画」 等と言われるものは、構想としても存在しない。 ここでは、『指導の在り方編』に対する『実践編』の事例提示は草離していない。『実践編』では、 「人権感覚の育成に関わる指導内容」として四つの事例が紹介されているが、ここでは三つの事例 (28'""-'30頁)を紹介する。 [事例12J聴く技能を育てる指導 (28頁) 「相手の話をきちんと傾聴し、自分の意見を自身を持って発信する技能を育てるための指導 事例である。
L
①テーマ どうぞ続けて、ちゃんと聴いていますから ②目的と概要一聴く技能に焦点を当てるが、論理的な思考及び意見を表明する自信を高める支 援もすることができる。 ③所要時間(短)/特別活動等 ④準備するもの一ーなし [事例13Jイマジネーション能力を育てる指導 (29頁) 「人の感情を読みとり、愛情と共感をもって対処する能力は人権感覚を高める一つの重要な 技能である。様々な写真を読む能力を育てるための指導事例である。」 ① テ ー マ 写 真 を 読 む ②目的と概要一一これは様々な場面での人物を写した写真を使って、人々の心を理解するイマ ジネーションの力や共感的理解力を高めることを目的とする。 ③所要時間(短)/特別活動等 ④準備するもの一一いろいろな国の人々の様々な状況を写した写真を用意する。 [事例14J感受性を高める指導 (30頁) 「次の事例は、様々な問題状況に直面する体験やロールプレイングなどを活用し、感受性を 育成しようとする指導事例である。」 ①テーマ あなたならどうする 円 ぺ U 噌 E i②目的と概要一一他の人々との関係において生じがちな様々な問題状況を提示し一人の感情や 思いや痛み、関心等を感受する能力(感受性)を高める。 ③所要時間(短)/特別活動等 ④準備するもの一一問題場面を表す文章を書いておく これらは、いわゆる参加型学習の事例であって、それぞれが「聴く技能を育てるJ
r
イマジネー ション能力を育てるJr
感受性を高める」ことにつながるのかどうかも吟味を要するが、なにより もこれが「人権感覚の育成Jにつながるのかについての決め手はない。 2.指導内容と指導方法の軍離 「人権教育における指導方法の基本原理J(文書J-27
頁)は、次のように指摘する。 「知的理解を深めるための指導を行う際にも、人権についての知識を単に一方的に教え込んだり、 個々に学習させたりするだけでは十分でなく、児童生徒ができるだけ主体的に、他の児童生徒とも 協力し合うような方法で学習に取り組めるよう工夫することが求められる。人権感覚を育成する基 礎となる価値的・態度的側面や技能的側面の資質・能力に関しては、なおさらのこと、言葉で説明 して教えるというような指導方法で育てることは到底できない。一一児童生徒が自分で『感じ、考 え、行動する』こと、つまり、自分自身の心と頭脳と体を使って、主体的、実践的に学習に取り組 むことが不可欠なのである。このように見たとき、人権教育の指導方法の基本原理として、児童生 徒の『協力』、『参加』、『体験』を中核に置くことの意義が理解される。」 教育実践は、目標一内容(教材)一方法一評価という一連のサイクルをもって展開される。それ ぞれは独立して存在するのではなく、 一連のサイクルの中でひとつの意味をもって位置づけられる。 ところが、『指導の在り方編』の「人権教育の指導内容と指導方法J (第E章第2節)では、こうし た観点がほとんど欠落している。 第一に、「人権に関する知的理解に関わる指導方法Jである。ここでは、「知的理解を深めるため の指導を行う際にも、人権についての知識を単に一方的に教え込んだり、個々に学習させたりする だけでは十分でなく、児童生徒ができるだけ主体的に、他の児童生徒とも協力し合うような方法で 学習に取り組めるよう工夫することが求められる。」と、主体的協力的な学習方法を指摘している にすぎない。これは、学習形態の指摘であって、指導方法の説明ではない。「人権に関する知的理 解に関わる指導方法J に関する限り、ほとんどふれられていないに等しい。 『実践編』ではこのことは象徴的である。『実践編』の「【参考】人権教育の効果的な指導のため の方法と技術J(
3
7
頁)は、「人権感覚を育成する基礎となる価値的・態度的側面や技能的側面の学 習においては、児童生徒が自ら主体的に、しかも学級の他の児童生徒たちとともに学習活動に参加 し、協力的に活動し、体験することが不可欠である。一こうした学習の取組においては、基本的に は個別的活動よりもグループ活動が必要となってくるJ (文書e
-35
頁)と指摘するのみである。 「人権教育の効果的な指導のための方法と技術」という表題にも関わらず、「人権に関する知的理解 に関わる指導方法J にはまったく言及していない。 第二に、「指導方法の基本原理として、児童生徒の『協力』、『参加』、『体験』を中核に置くこと の意義が理解される」と述べているように、「協力的な学習Jr
参加的な学習Jr
体験的な学習」を 指導方法の中核に置くことを強調していることである。指導方法の中核と称しているが、実際は 「人権感覚」を育成するための中核的な方法という意味である。そのためのテクニックとして、次 のような方法が紹介されている。 4 T i①グループ活動を効果的に進めるテクニック (37---40頁) ブレーンストーミング/ウオール・ライティング/ディスカッション/バズグループ/小グ、ル ープ活動/はしご形ランキング、ダイヤモンドランキング/ロールプレイング/シュミレーショ ン/絵、写真、漫画、図面、コラージュ/映画、ビデオ及びラジオドラマ/新聞、ラジオ、テレ ビ、インターネット/写真撮影と映画作り ②ディスカッション技能を発達させるための方法と技術 (40---41頁) マイク口フォン/デ、ィレンマ・ゲーム こうした形の事例紹介が[事例 19]---[事例 30] まで続いている。
N.
学校としての組織的な取組とその点検・評価
一一『指導の在り方編~ ~実践編』一一 『指導の在り方編』は、「学校としての組織的な取組と関係機関等との連携等J (第 E章第 1節) の r2.学校としての組織的な取組とその点検・評価」で、次のように指摘している。 「各学校においては、校長のリーダーシップの下、教職員が一体となって人権教育に取り組む体 制を整え、人権教育の目標設定、指導計画の作成や教材の選定・開発などの取組を組織的・継続的 に行うことが肝要である。また、こうした人権教育の取組については、当該学校における活動全体 の評価の中で定期的に点検・評価を行い、主体的な見直しを行うとともに、その取組に関する情報 は、保護者や地域の人々に対しても積極的に提供するよう努めることが求められる。その際、学校 評議員や保護者等の意見を聞く機会を設けることも重要となる。J (16頁) ここで述べられているのは、「校長のリーダーシップJ にもとづいた推進体制の整備と定期的な 点検・評価(r外部評価J を含む)の活動である。 ( 1 )推進体制の整備 まず第一は、推進体制の確立である。繰り返し、次のように強調されている。 「人権教育の年間指導計画の立案や毎年の点検・評価、研修の企画・実施等を組織的に進める体 制を確立することがきわめて重要となる。この推進体制において、校長のリーダーシップの下、各 校務分掌の取組と人権教育の目標との関連を明確にすることが求められる。推進組織の構成として は、人権教育担当者、学年主任のほか、生徒指導部、進路指導部、関連する教科等の研究部など、 各部校務分掌組織の代表者が必要に応じて随時参加するような機動的・機能的な構成とすること等 が考えられる。J (16---17頁) 第二は、人権教育担当者の役割である。次のように指摘されている。 「各学校において、人権教育の活動に関する企画立案や、各校務分掌組織問の連絡調整・統括、 学校運営全体との調整、対外的なコーディネートなどを担う人権教育担当者は、人権教育に係る校 内推進体制の要として、指導的役割を果たすことが期待される。J(17頁)(8)r
校内推進体制の要」 としての位置付けである。かつてのような同和教育担当教員(推進教員)の存在を初梯とさせる位 置付けである。 『実践編』では、「【参考]学校における人権教育の推進体制に関するチェックポイントJ として、 何の注釈もなく次の一二点が掲げられている (12頁、表 3)。最大の問題は、チェック主体が誰か Fhd 官iということである。主として学校の「自己評価」に関わるチェックポイントと考えることもできる が、主として教育委員会が主体となったチェックポイントと理解することができる。さらに、チェ ックポイントの一つに「外部評価」を加えていることも無視できない
U
u
人権教育の取組の評価 に当たり、保護者や学校評議員等、学校外の人々の意見・評価を反映しているJ との項目)。 このように、「学校における人権教育の推進体制J も、現在整備が進められてきている「学校評 価システム」と一体化した体制として構想されているのである。 表3 学校における人権教育の推進体制に関するチェックポイント0
学校教育目標に、人権教育の推進に関する事項が示されている。O
校長等管理職が人権教育の推進に指導力を発揮している。0
人権教育の推進のための校内組織を整え、人権教育の目標を具体化するための計画的な 運営を行っている。O
人権教育の全体計画及び年間指導計画が作成されている。0
すべての教職員が、人権教育の全体計画及び年間指導計画の見直し ・策定に、いずれか の形で参加する体制が執られている。 。人権教育の推進に関し、学校と家庭 ・地域、関係諸機関との連携 ・協議の場を設けてい る。O
人権課題に対する理解を深めるための教職員研修が計画的に実施されている。O
人権教育に関する理解と指導方法の改善のための教職員研修を行っている。 。教職員の問で実銭の交流 ・評価が行われている。0
学習活動づくり、人間関係づくり、環境づくりに関する評価項目を設定し、実践の評価 が次年度の取り組みに生かされている。0
人権教育の取組の評価に当たり、保護者や学校評議員等、学校外の人々の意見 ・評価を 反映している。O
教育の中立性が保たれている。 ( 2 )点検・評価 推進体制の整備とともに、『指導の在り方編』は点検 ・評価にも次のようにふれている。 「各学校においては、各学期や年度ごとに、人権教育に関する活動の点検 ・評価を行うことが求 められる。点検 ・評価は、学校全体の組織的な取組として、人権教育の年間指導計画に沿って行い、 次年度における年間指導計画の見直しゃ、指導の改善につなげていくことが必要である。J08
頁) では、『実践編』は、どのような点検 ・評価項目を提示しているのであろうか。「教員向けJr
児 童生徒向けJJr
保護者等向け」が例示されているが、ここでは「教員向けJ に限定して紹介する (表4
)
。 p o 唱 E i表 4 【教員向け]点検・評価アンケートの項目例 観 点 項 目 ( 例 )
O
人権教育の視点、が学級経営目標の中に位置付けられている。O
児童生徒の不安や悩みを受け止める体制ができている。O
配慮や支援を要する児童生徒への支援について共通理解を図っている0
言語環境及び教室環境の適正化を図り、偏見や差別意識が生まれることの ない言葉づかいや掲示物等の指導をしている。 教科等指導 10
人権についての知的理解を深める指導を推進している。0
人権感覚を育成する指導を推進している。 学年・ 学級経営O
人権教育の視点に立った各教科等の指導目標や年間指導計画が作成されて いる。O
道徳の時間や学級活動の時間で、人権に関する内容を計画的に指導してい る。 。様々な人権課題を身近な生活と結びつけて理解できるようにするための教 材の工夫を行っている。0
人権教育の指導を進めるに当たり、協力的・参加的な学習を取り入れる、 体験活動や交流活動を多様に組み入れるなど、指導方法の工夫を行ってい る。0
人権を尊重し支え合う集団づくり(人間関係づくり)に取り組んでいる。0
集団活動において、児童生徒が、互いのよさを認め合い協力するとともに、 自己を生かすことのできる場や機会を適切に設けている。0
学習内容が定着していない児童生徒や支援を必要とする児童生徒に適切な 支援を行っている。 生徒指導、10
積極的生徒指導の視点に立って、相互に人権を尊重し、支え合う人間関係 教育相談、 │ づくりを援助している。 進路指導10
いじめ等の実態を的確に把握し、課題解決を図るための校内組織を整備し ている。O
児童生徒理解については、受け身の姿勢だけでなく、一人一人の性格や抱 える問題等を積極的に理解・把握するための取組を、日頃から行っている か。0
児童生徒が自他のよさを理解し、将来への目標と希望を持って生きること ができるように指導・援助している。O
自己の進路や生き方について考える機会を設けている。O
人権教育の視点から進路指導の目標が立てられている。 l)r
連携の取組」欄は省略した。 前述した「学校評価システムJ と「一体化し、その整備のプロセスを駆動しシステムを正当化す る言説として、PDCA
は位置づけられていると言っていいJr
p
D
C
A
は、主に『学校評価』と セットになってその重要性が説かれることが多いJ(長谷川裕rPDOA
という言説JW
人間と教育』 円i y i第58号、 2008年夏号、 82頁)と指摘されているように、「教員向け」点検・評価は(1第三次とり まとめ」は一言も言及していないが)、
PDCA
サ イ ク ル (P
l
a
n
一目標設定、Do
一実行、C
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c
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ー 評価、A
c
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i
o
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ー改善)の理念を根拠にして発想されたと言ってよい。逆に言えば、人権教育の場合、 P一学習指導要領を基礎にした人権教育の目標の規定、 Dー『実践編』にもとづくマニュアル化さ れた実践、C
一点検・評価項目の設定による制約、という構図になっており、PDCA
サイクルに よる規制は一層強く働くのではないかと思われる。おわりに
阿久津麻理子氏は、r
w
制度化』された人権教育のもつ危険性J にふれ、次のように指摘する。 「法ができ、人権教育が国家の責務になったからといって、私たちは安心してはいけない。一制度 化により人権教育が国家政策の一部になると、国家による人権教育の“読み替え"も起こるように なるからである。一国家の側にとってみれば、市民の権利意識を高める人権教育は、市民の要求を 刺激するものとなりかねない。したがって、人権教育が制度化されると、それは表面的な憲法学習 や、価値・道徳の教育などに読み替えられやすい。J と述べ、さらに毎年の法務省の「人権啓発重 点目標J (標語)に目を向けてみると、「これは人権問題を私人間の問題に限定し、一人ひとりの心 のもちょうで解決できるのだ、という見解であり一『市民が国家や行政に対して批判的な視点をも つこと』を回避させるものにすら、みえてしまう。Jc
r
世界的な人権教育の『制度化』のなかで、 日本のー市民、一教員として思うことJw解放教育』第484号、 2008年 3月、 23---25頁) 人権教育政策の登場は、「国家による人権教育の“読み替え"J を可能にさせたのではなく、はじ めから「市民が国家や行政に対して批判的な視点をもつこと」を回避させるものであったのである。 今回の「第三次とりまとめJ をめぐる状況もこのことを端的に示している。阿久津氏は、「公教育 において人権教育が実施される場合、公権力の論理で人権教育が読み替えられることがないよう、 市民社会の側でこれをモニター(監視・評価)することがなによりも重要である。J(問、 26頁)と 述べているが、人権教育政策はこうしたレベルをはるかに超えたレベルで進行しようとしている。 註 (1)梅田修「人権教育と教育実践をめぐる問題点一一調査研究会議の審議状況に関する中間的な 整理J (W部落問題研究』第171輯、 2005年 1月)参照(
2
)
r
指導の在り方編Jc
r
第三次とりまとめ案J) は、内容的には「第二次とりまめ案J と大きな 相違点がなかったこともあって、「人権及び人権教育」の項のパブリックコメントはごく一部に とどまっている。したがって、ここでは「第二次とりまとめ案Jパブリックコメントを中心に 紹介している。 (3 )福田弘「人権感覚の育成をめぐる課題J (補足資料)は、次のように説明する。 「人権感覚を『人権の大切さや価値、人権が擁護され、実現されている状態を感知し、これを よしとし、反対に、これが侵害されている状態を感知して、これを許せないとするような、そ んな価値志向的な感覚』と定義しておこう。この人権感覚が健全に働くときに、それに触発さ れて、自他の人権が尊重されていることの『良さ』と『妥当性』を肯定し、逆にそれが侵害さ れることの『問題性』や『不当'性』を認識して、これを解決せずにはおけないとする、いわゆ-18-る人権意識をいうものが、芽生え、育つのだといえよう。つまり、感覚的に認識された価値志 向的なものが、知的認識などと結びついて問題状況を変えようとする意志や態度に、そしてや がて行動に連なっていく。人権感覚、人権意識および人権問題解決のための行動とは、このよ うな関連にあるものと考えられるのである。」 ここでは、「人権感覚Jは、第一に、人権の擁護・侵害とは何かといった理解が前提になった 感覚であり、かなり高次の感覚(感覚という概念が適切かどうかも検討を要する)に限定され ていること(少なくとも「人権問題を直感的にとらえる感性J とはレベルが異なる)、第二に、 態度・行動はふくまない概念として定義されていることになる。 また、「教育対象としての人権感覚」について、「従来、感覚や感情は教育の対象ととらえら れない傾向があった。(しかし)その後、国連、ユネスコ、ユニセフなどの人権教育事業などに おいても、人権に関する知識ばかりでなく、その実現に要する態度の形成やさまざまな技能の 習得が強調されるなど、人権感覚育成の重要性に連なることが強調されるようになってきてい る。人権や人権尊重に関わる感性や感覚の広い意味での教育は可能であり、行うべきものであ る、ということを認めることがまず第一に必要である。」と指摘する。だが、この文章は、「人 権に関する知識ばかりでなく、その実現に要する態度の形成やさまざまな技能の習得」の必要 性を述べているだけで、「人権感覚」が教育の直接の対象になり得るのかという肝心の問題に答 えていない。 (4)
r
第二次とりまとめJr
第三次とりまとめ」では、人権教育の目標に「社会づくりに向けた行 動につながるようにすること」を追加した。これは、募集した意見を検討する中で追加された。 経過を伝える議事録は、次のようになっている(一部省略)。ここでは、「社会づくりに向けた 行動につながるようにすること」までが学校教育の目標になりうるのかという教育目標論にか かわる問題意識はまったくみられない。 (今泉補佐)ここでの指摘は「人権が社会の中でとらえられて、みずからの態度や行動に現れるとともに、 権利が守られる社会づくりにむけた行動につながること」。この一番最後の文ですけれども、この部分を入 れる必要があるんじゃないかと。実は、これに似たような意見は他にもいくつかでているところがありま して、一番最後の部分の「権利が守られる社会づくりにむけた行動」というところについて議論していた だきたいんですが。 (福田座長)今のいかがでしょうか。 (森委員)入るのであれば入れていただくとありがたいなあと,思っています。一一 (菅原委員)それを入れるのはいいと思う。ただ「守られる」というのが「人権が擁護される社会づくり」 とするほうが格調高い感じがする。 (今泉補佐)全体を通しての用語の統一ですね。例えば、「人権が尊重される」ではどうですか。 (菅原委員)それでいいですね。 (福田座長)人権という言葉とか人権の関わりというのを当然踏まえているつもりなんだけれども、やはり 今、文章として入れる方がベターに違いないわけで。 (5 )調査研究会議は、との問題に無頓着であったわけではない。文書 A (2005年 8月29日)から、 文書Jr
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第三次とりまとめ J) までほぼ同様の趣旨の説明が登場した。ここでは、文書Jを引 用する。 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号。以下『人権教育・啓発 推進法』という。)では、人権教育とは、『人権尊重の精神の瓶養を目的とする教育活動~ (第二 Q d -i条)をいうものとしている。この定義についても、より具体的にとらえることが必要である。」 (傍点ー梅田)と述べた上で、「国連の『人権教育のための世界計画』行動計画では、人権教育 について『知識の共有、技術の伝達、及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築す るために行う』ものとしJていることを紹介し、次のように説明する。「これらを踏まえれば、 人権教育の目的を達成するためには、まず、人権や人権擁護に関する基本的な知識を確実に学 び、その内容と意義についての知的理解を徹底し、深化することが必要となる。また、人権が 持つ価値や重要性を直感的に感受し、それを共感的に受けとめるような感性や感覚、すなわち 人権感覚を育成することが併せて必要となる。さらに、こうした知的理解と人権感覚を基盤と して、自分と他者との人権擁護を実践しようとする意識、意欲や態度を向上させること、そし てその意欲や態度を実際の行為に結びつける実践力や行動力を育成することが求められる。」 (4"-'5頁) 「具体的にとらえる」と称しながら、「人権尊重の精神」とは異質な意欲・態度・行為を持ち 出しているのであって、説明に整合性がない。