児童・生徒の「思いやり意識Jに与える読書の影響
学校教育専攻 人間形成コース 村 田 豊 1. 問題の所在と研究の目的 ここ数年、学校の教育現場では、児童・生徒 の不登校やいじめ、非行、学級崩壊といったさ まざまな問題が起きている。 人間関係の希薄化がさまざまな対人関係のト ラブノレを引き起こし、人の気持ちゃ考えを理解 できない子どもなど増加してくるものと思われ る。そこで文音降、(現文音防ヰ学省)は、平成11 年度より、一人ひとりの子どもの個性を生かし、 「豊かな人間性キ創造性Jを育むための教育プ ログラムを掲げ、心の教育の充実を図ることを 提唱してきた。 そのプログラムの中で「子どもたちの読書活 動の充実jを強調し、読書活動と思いやりの気 持ちの関連性にも角封もている。 毎日新聞社の特交読書調査(19
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4
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では、「読書 をする子J~こは周囲への配慮や思いやりの気持 ちが強くなることが明らかにされている。 しかしながら、これらは実態調査による表面的 な関連性の指摘にとどまっており、今日、もっ とも重要視されている「他人を思いやる気持ちj に関して、読書との関連を実語句に調査した研 究は少ない。 そこで本研究では、①現代の子どもたちの読 書の実態を把握するD ②子どもたちの思いやり 意識と読書の関係を探ることを通して、「本を読 む子は思し1やり意識が高し1の州を実記句に明 指導教員 伴 恒 信 らかにする。③どのような作品が児童・生徒の 思いやり意識に影響を与えているのかを明らか にする。④読書をした時の心理的な気持ちが「思 いやり意識」とどのように結びついているのか を明らかにする。以上、 4つの観点から児童・ 生徒の「思いやり意識jに与える読書の影響に ついて研究を行った。2
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研究の概要 。 対 象:K
府、N
県の小学生・中学生8
2
9
人(男4
6
8
人・女3
5
8
人)D
質問紙の構成内容:自記式質問紙調査 1 .属性及び読書を捉える要因 (1)属性、 (2)読書状態、(の読書環境、(心50 冊の本リスト、 (5)良かったと思う本を読ん だときの「気持ちJ ll. 思いやり意識を捉える要因 (6)行動的側面:予備調査で得られた回答及 び向社会的行動尺度促童腕(佐藤,1
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8
5
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2
0
項目を参考に作成した。 (竹共感的倶i厨:桜井(
1
9
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による児童用 の共感測定尺度 (EmpathyS
c
a
l
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あr
C
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:
ESC) 2
0
項目を用いた。(
8
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判断的側面E
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(19
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9
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の 研究を参考に、ポジティブな側面について の道徳的判断に関する6つの質問場面を作 成したD 場面設定は高木(19
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)
による向社 会的行動の分類に対応させ作成した。 -20-3.現代の児童・生徒の読書の実態(研究1) 児童・生徒の読書の実態を把握するため、読 書状態、読書環境、 50冊の本リスト等を用いて 分析を行ったD それぞれの項目において児童・ 生徒の読書の実態を把握することができた。ま た、 150冊の本リストjおよび「良かった本を 読んだときの気持ちJについて因子分析を行い、 それぞれに因子名をつけた。そして、「良かった 本を読んだときの気持ちJについては、得点化 を行し1全体の傾向を把握した。 4. 思いやり意識に与える読書の影敏研究II) まず、思いやり意識を構成する要因を明確に 捉えるため「行動的側面j、「共感的側面」、「判 断的側面jについて因子分析を行し、指標化及び 得点化を行った。次に、ここで得られた結果と 読書を捉える各項目との関連性lこついて統計的 手法を用いて分析を行った。その結果、児童・ 生徒の「思し1やり意識」と読書との関連性及び 影響について明らかにすることができた。 5.研究の結果及ひ総併句考察 研究Iでは、子どもたちの読書高針もや活字離 れが問題となっている中で、少す設ではあるが非 常によく本を読む子もいることが明らかとなっ た。しかし、一方で、全く読まない不読者も全体 の1割ほど占めており、そのこ極化が激しくな っていることをうかがい知ることができた。こ の傾向は、読書の好き嫌し1についてもいえ、「本 を読むことが好きである」と回答した児童・生 徒が 7割ほどいる反面、「本を読むことが嫌い であるJと回答した児童・生徒も3割ほどいる 結果となった。 次に、研究 Eでは、今まで、表面的な関連性が 指摘されているだ、けで、あった「読書と思いやり 意識」の関連について分析を行し、明らかにした。 その結果、①本を読むことが好き、②1ヶ月に 多くの本を読む、③毎日、本を読む④成長の過 程で読み聞かせをしてもらった経験が豊富で、あ る、⑤周囲に本好きな人がし1る環境である。 こういった子どもの方が、そうでない子よりも 「思いやり意識jが高いとし、うことが明らかに なったD これは、「本を読む子は思いやり意識が 高いJということを実証的に裏付けしている。 また、読書環境の中でも「祖父・祖母Jの影 響が大きく、祖父・祖母に「本を読んでもらっ た経験がある」、「本好きであるJと答えた児童・ 生徒はそうでない子よりも思いやり意識が高い ことが明らかとなった口 次に、本研究で取り上げた 50冊の中からの 考察では、物語の中の「空想的作品」が「思い やり意識Jを育てるのに、プラスの影響を及ぼ していることも明らかになったo 子どもたちに 空想的要素が含まれる作品を多く読ませること が「思いやり意識」を育てる1つの方法である とし1える。 さらに「よかった本を読んだ、ときの気持ちJ について分析をした結果、すべての因子 (1主人 公・物語への同一化J• 1自己洞察j・「気持ちの 浄化J)が「思いやりの意識」と関連が深く影響 を及ぼしていることが認められた。 6. 今後の課題 「本を読む子どもが思いやり意識が高しリと いうことが明らかにされ、読書の影響力につい ても探ることができた。しかし、それが「読書 が思いやり意識を高める効果を持つjと完全に 実証されたという解釈にはつながらない。今後、 この点の解明に向けて研究を進めていく必要が あるといえる。また、ここで一般の本を通して 確認された「思いやり意識」と関連のあるメカ ニズムをさらに深く検討する必要があるといえ る