Title
水力発電所経年水路トンネルの維持管理技術に関する研究(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
関根, 裕治
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第071号
Issue Date
2013-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/47963
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。63 -氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 関 根 裕 治(埼玉県) 博 士(工学) 乙第 71 号 平成 25 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 水力発電所経年水路トンネルの維持管理技術に関する研究
(Development for the maintenance technology of the aged aqueduct tunnels of hydroelectric plant) (主 査)教 授 本 城 勇 介 (副 査)准教授 沢 田 和 秀 理 事 八 嶋 厚 教 授 張 鋒 (名古屋工業大学) 論 文 内 容 の 要 旨 我国の一般水力発電所の水路トンネルは,約 50 年以上前に建設されたものが比較的多くあり,これらの 設備の経年化が進んでいる.また,これらの水路トンネルの中には,軟岩や地質不良箇所を通過していて岩 盤のクリープの影響を受けて変状を発生したと考えられる事例がある.これらの変状に対する長期的な健全 性の評価や対策工の検討においては,地質的な要因との関係を定量的に評価することは一般に困難な場合が 多く,また評価のための手法も十分確立されているとは言いがたい. 本研究は,水路トンネルの維持管理技術の高度化を図ることを目的として、軟岩や地質不良箇所が有する と考えられるクリープに代表される時間依存性,ひずみ軟化及びダイレイタンシーの各特性を表現できる足 立・岡の弾粘塑性構成モデルを用いたシミュレーション解析を適用して,①水路トンネルの変状原因・メカ ニズムを評価する方法,②水路トンネルの長期的な挙動予測手法,③変状メカニズムを考慮した水路トンネ ルの対策工検討手法について検討し,提案するものである. 「経年水路トンネルの変状事例と地質との関係の検討」では,7 つの実水路トンネルの変状事例において, 推定される地質的な変状要因を評価するとともに,施工的な変状要因として,コンクリ-ト巻厚・強度のば らつき及び背面空洞の存在について評価した.しかし,地質的な要因と施工的な要因の変状に及ぼす影響度 について,定性的に評価することは可能であるが,定量的な影響度評価は困難となっている.このことから, 既設水路トンネルの変状の要因を定量的に評価するために,周辺岩盤のクリープ,ひずみ軟化,ダイレイタ シー等の軟岩の特性を表現でき,またコンクリ-ト巻厚・強度及び背面空洞等の施工上の特性を評価できる 解析手法の開発が必要であることを示した. 「トンネル模型実験による水路トンネルのクリープ挙動評価に関する研究」では,軟岩の特性を模擬した トンネル模型実験を行い,岩盤のクリープに起因するトンネル周辺地盤の時間依存性挙動(塑性領域の拡大 等)を模擬できることを明らかにした.さらに,破壊時荷重に近づくにつれて,ひずみの深度分布のピーク がトンネル壁面より奥方向へ移行する,すなわち応力再配分といった特徴的な挙動を模擬できること,覆工 による変形抑制効果ならびに模型地盤のクリープ変形による覆工の破壊など,実際の挙動に近いと想定され る特徴的な挙動を模擬できることが明らかになった.軟岩地山の長期的な挙動予測解析手法として,トンネ ル模型実験結果を用いて拘束圧・ひずみ速度依存性を考慮した拡張弾粘塑性構成モデルを組み込んだ有限要 素解析の適用性について検討した.その結果,クリープ実験での変形の時間依存性挙動については,定性的 に実験結果を説明できる見通しを得た. 「クリープ岩盤挙動を示すトンネルの長期的な挙動評価に関する研究」では,弱層を有する水路トンネル 及び偏圧を受ける水路トンネルの変状事例に対して,足立・岡の弾粘塑性構成モデルを用いた解析から得ら れた結果は,点検・調査・計測データに対し概ね良好であり,トンネルの地圧特性に密接に係わる軟岩地山 の力学特性ならびに初期応力状態の妥当性が検証できたことより,現状の再現としての利用だけでなく,さ らに将来予測手法としての利用が期待できる.また,変状を示す水路トンネルの変状メカニズムを検討する に当たって,変状要因を想定し,足立・岡の弾粘塑性構成モデルを用いたシミュレーション解析に組み入れ, 変状が再現できれば,それが変状原因であると推定できること,さらに変状要因が複数想定される場合には, 個々の変状要因について,それが解析上無いとして解析を行うことにより,それぞれの要因について影響度 合いを定量的に把握することが可能となることを示した.
64 -「クリープ岩盤挙動を示す水路トンネルの補強設計方法の提案」の検討では,従来,経験的な要素が強い トンネルの補強対策の検討において,弾粘塑性構成モデルを用い,トンネル覆工と岩盤のクリープ挙動を示 すトンネル周辺岩盤との相互作用も考慮した有限要素解析による数値実験に基づき,各対策工の補強メカニ ズムを含めた効果の評価が可能となることを示した.また,経年水路トンネルの維持管理部門での適用を想 定した基本的・具体的な変状メカニズムの検討と補強対策工評価スキームについて,策定・提案を行った. 最後に、今後検討を進めるべき課題として,長期的な経年水路トンネルの計測データを取得し,弾粘塑性 解析の適用事例の拡大を図り,本研究で提案した方法と実際の挙動を比較・評価することにより,本提案手 法をレベルアップしていく必要があること,及び今回実施した模型実験でのクリープ破壊までの詳細な評価 に当たっては,適用した解析が2次元平面ひずみ条件であることから,今後3次元シミュレーション解析に よる検討・評価を行うことが望まれることを示した. 論文審査結果の要旨 この論文では,山岳トンネルに分類されるような一般水力発電所の経年水路トンネルを対象として,経年 トンネルにおいて,周辺岩盤が長期的なクリープ挙動をすることにより変状を発生している場合について, トンネルの変状原因・メカニズムを評価する方法,トンネルの長期的な挙動予測手法,変状メカニズムを考 慮した山岳トンネルの対策工検討手法を提案したものである.検討に当たっては,周辺岩盤を含むトンネル の長期間の弾粘塑性解析手法の適用性を評価するために,トンネル模型実験による計測結果,および実際に 変状が発生している経年水路トンネルの点検結果等を対象としてシミュレーション解析を実施し,適用性を 確認している.また,モデル地盤を想定してトンネル挙動の数値実験により変状対策工の効果を変状メカニ ズムに基づき評価を行い,あわせて今後の課題を抽出している.現在各種社会資本の経年化が進むなかで, より的確な維持管理の技術開発が求められている.重要な社会資本の一つである経年水路トンネルについて, 維持管理のためのより予測精度が高く合理的な設備診断・評価,将来予測および対策工検討技術を検討し, 提案している点において,この研究成果は高く評価することができる.したがって,審査の結果,この論文 を学位論文に値するものと判定した. 以下に,細目の研究成果の概要を示す. (1)トンネル模型実験による水路トンネルのクリープ挙動評価 トンネル周辺岩盤のクリープ挙動を評価するために,軟岩が有する弾粘塑性的な特性に着目し,軟岩の挙 動を模擬できる人工軟岩材料を検討した.そして,人工軟岩を用いたトンネル模型実験を行い,実際の変状 トンネルの挙動に近いと想定される特徴的な挙動を模擬できることを明らかにし,変状発生メカニズムを評 価している.軟岩地山の長期的な挙動予測解析手法として,トンネル模型実験の計測結果を用いて拘束圧・ ひずみ速度依存性を考慮した拡張弾粘塑性構成モデルを組み込んだ有限要素解析により適用性を検討した. その結果,クリープ実験での変形の時間依存性挙動については,定性的に実験結果を説明できる見通しを 得ている. (2) クリープ岩盤挙動を示す実トンネルの長期的な挙動評価への適用検討 トンネル周辺岩盤に弱層を有する水路トンネルおよび偏圧を受ける水路トンネルの変状事例に対して,足 立・岡の弾粘塑性構成モデルを用いた有限要素解析による検討を行っている.解析結果は,実水路トンネル の点検・調査・計測データに対し概ね良好であり,挙動解析の手法の有効性を検証している.また,現状ま での挙動の再現としての利用だけでなく,さらに将来予測手法としての利用および対策工効果の評価への利 用が期待できることを明らかにした.また,変状を示す水路トンネルの変状メカニズムを検討するに当たっ て,変状要因を想定し,弾粘塑性構成モデルを用いたシミュレーション解析に組み入れ,変状が再現できれ ば,それが変状原因であると推定できること,さらに変状要因が複数想定される場合には,個々の変状要因 について,それが解析上無いとして解析を行うことにより,それぞれの要因の変状への影響度合いを定量的 に把握することが可能となることを,変状事例の挙動解析により例示している. 以上の検討により,クリープ岩盤挙動を示す実トンネルを対象として提案する足立・岡の弾粘塑性構成モ デルを用いた有限要素法による挙動解析の有効性を検証するとともに,具体的な活用方法を示している.
65 -(3) クリープ岩盤挙動を示す水路トンネルの補強設計方法の検討・提案 足立・岡の弾粘塑性構成モデルを用い,クリープ挙動を示すトンネル周辺岩盤,トンネル覆工および対策工 の相互作用を考慮した有限要素解析による数値実験に基づき,各対策工の効果を定量的に評価するためのい くつかの指標を提案し,それらの指標を基に解析結果を評価している.補強メカニズムの面から対策工効果 を評価できることを明らかにして,効果的な対策工法を提案している.また,これらの検討成果を基に,経 年水路トンネルの維持管理部門での適用を想定した基本的・具体的な変状メカニズムの解明と補強対策工の 評価の検討スキームについて,策定・提案を行うとともに,本提案手法を今後適用していくための課題を整 理している. 最終試験結果の要旨 本城勇介,沢田和秀,八嶋 厚,張 鋒で構成する審査委員会は,本論文および論文別刷りなどを慎重に 検討した.その結果,本論文は学位論文として十分完成された内容を有していることを確認した. 最終試験(公聴会)を平成25年2月12日(火曜日)午後3 時より 5 時に,岐阜大学サテライトキャン パス(JR 岐阜駅前)で開催し,審査を行った.最終試験(公聴会)では,論文内容が約 60 分で手際よく講 演され,その後約40 分程度の質問を受けた. 講演後の質疑応答では,本研究が水路トンネルに限らず一般的なトンネルについての多くの有用な知見が 示されているという指摘など,多岐に渡り活発な質疑が行われた.これらの質問に対して本人より十分な説 明が行われた. 以上のことから,最終試験を合格と判定した.