• 検索結果がありません。

公法判例研究 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "公法判例研究 利用統計を見る"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

公法判例研究

著者

高木 武

雑誌名

東洋法学

25

1

ページ

155-160

発行年

1981-11

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006034/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

公法醤

例研究

診療中の殴打は診療に含まれるか ︵難難醜難︶鹸綴淵整β翫塾謁”螺一一ゴ澁H靴編懸醐鮮︶   ︹事実︺ 歯科医師が、付添いの母親の承諾もなく、五歳の幼児の歯髄炎治療のために前鶏、奥歯に充旗した歯髄失活剤を取患  すに当って、両手で口を押え開口しない同児の頬を平手打で二回殴打して、治疲したが、これが傷害の罪であるとされ、罰金刑  を科された。

  ︹響ご撲性が鶉︵羅二︶される振、その行為が、単に繋晶2愛ぢ琴荏署ず、その態様欝蚤いて

 社会的相当性がなければならないが、それが、とうてい認められない。   ︹評釈研究︺判旨を支持する。  このケースは、刑法学の視点からは、さして取上げるほどのものではないであろう。それは、違法阻却ができるか どうかの問題にすぎないからである。しかし秀れて医療に関係のある医事法の視点からは、一箇の間題として取上げ なければならないケースであるといえよう。それは、歯科診療の内容や方法を規定するからである。  歯科診療は、歯科医師が歯科に関して行う医療であるが、歯牙・歯根の疾病の治療の外、金属充填、     歯 冠継続と加工、歯列矯正そして口蓋補綴の技術を主な目的・対象とし、そのために口腔内の他の疾病の治療・手術を

    東洋法学      一五五

(3)

    公法判例研究      一五六 施すことも必要であり.欝腔内の他の疾病の治療・手術を行うことも.歯科医師の従である業の目的の一つである ︵齢鱈魏鰍算嗣帽杯轡。これに対して、診澱は、医師が行う医療であり.医療は、入の傷病の治癒、軽減、人の病疾の 予防︵悪化の予防も含む︶、人の健康の保持・増進・人の傷病の固定.人の身体の一部の機能の回復・固定・整形 ︵外形的固定・保持も含む︶又は助江︵胎児の母体外の排灘も含む︶のために.学理に背反する絶対不能でない方法 .、  .、.菱      ..、、 土勲晦職持調、一廠︶によハ、ザ隔行葵人の浮涛︵不作為も含む薄一撮 峡媒解八蜘ぴである、両者の差異は.とくに趣科熱擬は.歯科医師が行い.歯科し碍し.そのために主としザ楡歯牙・ 指根の腕擁の塗.ずに特定されるのに.一、ノ、試轍.医師が行い.歯科に鱒華  蜂のでなく.ぐのために人の身体の持定 の部位に必ずしも甑定されない点にあるといえよう。歯科医師は.寅科医師︹ズ試験に合格して.厚生大臣の免許を 受けた者であり︵灘端継綴︶.医師は.医師騒家試験に合格し.厚生大臣の免許を受けた者である︵鋸緬護。歯科に関して は.、厩牙・脅根の疾病の治療等に関してである。したがって歯科診療と診療が.競合する部分・部位もある。それ は、いわゆる欝腔外科に属する行為である︵酬弛蝦ご㌍懸に一︶、又その方法とくに治療の方法︵の施用︶は.歯科診療に おいても診療においても.嘗転にいえば.人の身体︵の一部︶に対する停ー.であるといえよう。それは.何らかの意 味で、人の身体の組織︵の一部︶又は機能に畢蓑幽を与えるからである︵舵麹鰭携硬臆r過鱗麩織陳ポ涯凶晴為︶。そこで.診 療の法的評価に関する学説によって.この殴打を評価することができるというのである。  診療についての法的評価に醐する学説の主なものは、正当行為説、患者承諾説、慣習法説、国家承認説.必要行為 説、羅的説.業渉権説等である。正当行為説には.何故に正当であるか不明であり、患者承諾説には、承諾さえあれ

(4)

ば、何んでも、どのような行為も、できるのかどうかの疑間があり、慣習法説には、成文法が何故に慣習法に劣るの であるか等が不明であり、国家承認説には、何故医師の診療だけ、評価されるのか分からず、必要行為説には、診療 を何故に小害であるとするか不明確であり、目的説については、目的が診療・医療であるとすれば、何人も医療がで きるようであり、業務権説には、何故に業務を基本とするのであるか不闘である等がとくに考えられる︵禰踊恥蠣鵬堂周︶。 問題の基本は、歯科診療と診療の方法わけても治療の方法にある。歯科診療の治療の方法には、診察と密接な関係が あり、無診でも治療だけでも歯科診療があるとされ︵歎審磯録款乱聾ガ瀞︶、治療に患者の動作が含まれている︵諌噸嚇載昭

窺噸導の特象あ桑、診療と共通する歯科繋の方綾、とくに、つぎのようである.投薬︵纏穀謙喋望

態あ購翻距墜ガ綾議塑竃同︶、注射、手術︵驚諜擁、認参轡膝院︶、処置、学理療法筆ある.あ墾

歯科治療には、診療とくにその治療にない金属充填.鑛嵌義歯︵諌随陶陶蔽網勲瓢豊、事︶、歯冠継続・加工、歯列矯正、導蓋 補綴等の方法がある。これらには、とくに入工的外力が共通して目立つといえよう。したがって歯科診療とくに歯 科治療が元来、正当であるとは、いえまい。そこで何故に、このような方法をもつ歯科診療・診療が処罰の対象にな らないのかという間題になる。これについては、法令による行為であるとか正当な業務であるとか︵酬雑﹂又緊急避難 であるとか︵躯七︶構成要件該当性阻却説等がとくに目立つ。いずれも秀れた考えであるが、尊ら刑法学的視点の所産 でもある。  歯科診療は、歯科医師が歯科に関して行う医療である。歯科医師になろうとする者は、歯科医師国家試験た合格し なければならず︵灘麟雑師︶、歯科医師国家試験は、臨床上必要な歯科医学と口くう衛生に関して、歯科医師として具有

    東洋法学      一五七

(5)

    公法判例研究      一五八 すべぎ知識と技能について行われ︵織一︶.歯科医師国家試験・歯科医師国家試験予備試験には受験資格が定められ ︵=殊︶.一毒年少くとも.一回以上行われる︵条○︶等試験の運営等についても規定されている︵条驚︶。 しかも麟科医業 は.歯科医師のみに行うことが許されている︵条紘麟、∼瓠︶。又その業務・歯科医業については.各種の義務︵不作為義 務も含む︶が規定されている︵撤諮蕪か端燕︶が、専らその不履行には.刑罰を科すことなく.その良心に壌藁の絵行 を期待する轡乱もあり冷頭搾員騨.さらに一般に対し、、轟について不作為を命じる乳のもある今七鳶一一瓶.擦し崇ま瀞に その.轟ぱ.法令しよるもので滲・鵜魯  しかし華聴れ︵撫 \に歯轡 ,:わげても爵馳娯搭.かそれ趨体.ヂバで晒煽こと︶だけに、一.銃、ー ,あるが、隔擁涯 診療とくに爵科”、、擬には.条理上.限界や購転があるとしなげればならない。すくなくとも、その限界は.歯科浴駄 とくに醤科治療は.その歯牙・歯根の疾病等又は治療の騒的に比例しなければならないという比例原則弊しよって示 され、その前提は、患者の麟君羅師、歯科診療・治療等の選択の自由等の不可侵の原則に齢論油携灘この縛雛醇筋ポ継貿乱疑 纐・爵葺L印の般     茸、語璽の奪弓︶讐も、専ら法的とく.﹄医療愚誤の免頁の対応簾として論じられてい”⇔計偽うであり、とく響隔慰潰の医師、 囑科ド師ρ択の自議は、違反︵r解汐7九窮も○条︶  、、 ー   鶏告によって侵かされているようであるが、畔・スマ・・、広、一痴巻等は、こ 膿歴嚥囎甑側癬礁繊樋甥瀬︶等である。これらの原則は.歯科診療・診療自体の性質等から.薮講されるが.とくにここ で示されなければならないのは.歯科診療とくに歯科の治療方法輿体が何らかの意味で.人の身体の組織⋮作用に影 響するから.歯科勢賛わけても歯科治療の方法は、最小限度のものでなければならないことであろう。それは.たん に歯科診療とくに歯科治療が侵襲であるからのみでなく.これに本来正当、であるという考えがあり.かえって.同 じように診療︵歯科診療︶がはじめから正当であるというような国家承認説.業務権説があるからである。

(6)

 さて、本件の殴打がすくなくとも歯科診療とくに歯科治療に伴うものであるかどうかを吟味してみよう。幼児は、 母親と来院し、前日、右上奥から二番目の歯に充填されていたが、その歯髄失活剤パラホルムパスタを取出すため に、診察台に仰向に寝かされ、歯科医師から、口を開けるように指示された。しかし同児は、恐ろしがって口を閉 じ、矯を両手で押えて泣ぎだした。歯科医師は、同児の気の鎮まるのを待つため一旦診察台から離れ、五分程休ん だ。その間母親は、同児に口を開けるよう言いきかせたので、同児は、泣ぎやみ、歯科医師も、再び診察台に戻っ て、又歯科治療具を右手にもって、同児にβを開けるように指示し、母親も、一緒になって開欝を説得した。しかし 同児は、又しても両手で口を押え、その指示に応じようとしなかった。そこで、歯科医師は、﹁こら2と怒鳴りつ け、平手で同児の左顛を殴打した。同児は、泣きやんだものの口を開こうともしなかった。そこで歯科医師は、﹁開 けなできへんやないか﹂と怒鳴って、さらに強く同所を再び殴打した。そこで同児は、驚いて自を半開したので、歯 科医師は、同児の口内に右用具を差入れ、前記充填薬を取出し、そのまま立去った。これが事実の経過である。  歯科医師も、診療の自由がある︵欄踊恥嚇醐量岡︶が、前日充填した右失活剤は、是非当霞除去しなければならない程の ものではない︵灘麟醐︶から、殴打してまで取出す必要は、なく、殴打以外に開βの方法はまったくないともいえず、説 得の努力は必ずしも十分とはいえない︵鋼︶。したがって、殴打は、診療の自由の範囲にも入らず、歯科診療行為にも 伴うものでなく、まして歯科診療・治療にも属さない。患者側も、歯科医師ないし歯科診療とくに治療の選択の自由 をもつ。この場合、同児は、開口を拒否し、右用具による右失活剤の取綴しを拒み、他の方法による取出し又は取出 しの延期を希求していたのであろう。ここにその選択の自由の保守がある。母親は、患者側であるが、歯科医師の自

    東洋法学      

一五九

(7)

    公法判例研究      一六〇

由を承諾し、歯科医師側の治療の方法とその前提としての開織を説得した。しかし殴打についての対応はなかった。

そこで禽科医師の殴打は.同児の麺科治療の選択の嶽由を侵し.とくに.その診療の自由の実現の手段にもならず.

たんなる暴行としてしか評価でぎまい。ここでは.幼児の大人化.粛科医師の幼児軽視等の現象が溝立つ。幼児は.

参照