• 検索結果がありません。

和算と算額補遺(2)―正五角形(法眼寺算額) 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "和算と算額補遺(2)―正五角形(法眼寺算額) 利用統計を見る"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

和算と算額補遺(2)―正五角形(法眼寺算額)

著者

米山 忠興

著者別名

YONEYAMA, T.

雑誌名

東洋大学紀要, 自然科学篇

58

ページ

109-122

発行年

2014-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006650/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

和算と算額補遺(2)

―正五角形(法眼寺算額)

米山忠興

Japanese Historical Mathematics and its Dedicated Tablets

―Supplement(2)Regular Pentagons―

Tadaoki Y

ONEYAMA

 今回は、「和算と算額」の「補遺(2)」ということで、星形・正五角形を採りあげる

が、その問題を残した和算家:岩田清謹の内子算額も、併せて紹介・解説する。

はじめに

 星形、梅鉢形家紋、晴明神社・天神社の紋章などは、いずれも正五角形をもとに作図さ

れる。和算にも、しばしば現れるが、意外にも、その簡明な作図法は一般にはあまり知ら

れていない。

 以前に見た「科学の事典」とかいう本には、あとに参考のために載せた、決して推奨で

きない三角関数の五倍角の公式を用いた方法が書かれていた。

 また、ネットのホーム・ページには、隣り合う辺の長さを三平方の定理のみで次々に計

算して、三辺の長さが等しく、図形の対称性から五つの辺の長さが全て等しいので正五角

形である、という非常に面倒でそして初歩的な方法と論理が流布している。

 和算でいつも見慣れている易しい問題なので、わざわざ和算の問題として取り上げるこ

ともあるまいと思っていたが、やはり、見過ごすわけにもいかない、と思い直してここ

に、2 次方程式の解法を知っていれば、高校生にも十分理解出来る簡単な論理と方法を示

すことにした。

法眼寺

 寛政六年(1794)年に伊豫新谷藩の岩田清謹が、同じく新谷大洞家の「星梅鉢形家紋」

の作図法を問うた算題が和紙に書かれて残されていた。それを近年(平成 12 年)、愛媛県

和算研究会事務局長の渡邊雅道氏が中心となって、算額として復元し、岩田の墓のある新

谷法眼寺に奉納されたということである(図 1、写真①)。

* この研究は、平成 25 年度科学研究費補助金(基金)(課題番号:24501064)の支援のもとに行なわれた。 **東洋大学自然科学研究室 〒 112-8606 東京都文京区白山 5-28-20

(3)

110

米 山 忠 興

写真①:新谷・法眼寺算額。法眼寺・八島龍晴院首のご厚意により『「新谷藩一万石史」補遺−星梅鉢』 から転載。 図 1 正五角形 2 -は じ め に 星 形 、 梅 鉢 形 家 紋 、 晴 明 神 社 ・ 天 神 社 の 紋 章 な ど は 、 い ず れ も 正 五 角 形 を も と に 作 図 さ れ る 。 和 算 に も 、 し ば し ば 現 れ る が 、 意 外 に も 、 そ の 簡 明 な 作 図 法 は 一 般 に は あ ま り 知 ら れ て い な い 。 以 前 に 見 た 「 科 学 の 事 典 」 と か い う 本 に は 、 あ と に 参 考 の た め に 載 せ た 、 決 し て 推 奨 で き な い 三 角 関 数 の 五 倍 角 の 公 式 を 用 い た 方 法 が 書 か れ て い た 。 ま た 、 ネ ッ ト の ホ ー ム ・ ペ ー ジ に は 、 隣 り 合 う 辺 の 長 さ を 三 平 方 の 定 理 の み で 次 々 に 計 算 し て 、 三 辺 の 長 さ が 等 し く 、 図 形 の 対 称 性 か ら 五 つ の 辺 の 長 さ が 全 て 等 し い の で 正 五 角 形 で あ る 、 と い う 非 常 に 面 倒 で そ し て 初 歩 的 な 方 法 と 論 理 が 流 布 し て い る 。 和 算 で い つ も 見 慣 れ て い る 易 し い 問 題 な の で 、 わ ざ わ ざ 和 算 の 問 題 と し て 取 り 上 げ る こ と も あ る ま い と 思 っ て い た が 、 や は り 、 見 過 ご す わ け に も い か な い 、 と 思 い 直 し て 、 こ こ で は 2 次 方 程 式 の 解 法 を 知 っ て い れ ば 、 高 校 生 に も 十 分 理 解 出 来 る 簡 単 な 論 理 と 方 法 を 示 す こ と に し た 。 法 眼 寺 寛 政 六 年 ( 1 7 9 4 ) 年 に 伊 豫 新 谷 藩 の 岩 田 清 謹 が 、 同 じ く 新 谷 大 洞 家 のに い や 「 星 梅 鉢 形 家 紋 」 の 作 図 法 を 問 う た 算 題 が 和 紙 に 書 か れ て 残 さ れ て い た 。 そ れ を 近 年 ( 平 成 1 2 年 ) 、 愛 媛 県 和 算 研 究 会 事 務 局 長 の 渡 邊 雅 道 氏 が 中 心 と な っ て 、 算 額 と し て 復 元 し 、 岩 田 の 墓 の あ る 新 谷 法 眼 寺 に 奉 納 さ れ た と い う こ と で あ る ( 図 1 、 写 真 ① ) 。 伊 豫 新 谷 藩 は 、 大 洲 加 藤 藩 の 支 藩 で 、 山 陰 か ら 転 封 さ れ て き た 大 洲 藩 初 代 ・ 加 藤 貞 泰 が 生 前 に 長 男 の 二 代 ・ 泰 興 と 、 そ の 弟 直 泰 に も 分 封 し よ う と 考 え て い た こ と か ら 、 そ れ こ そ 藩 を 二 分 す る 激 論 の の ち 、 寛 永 十 六 ( 1 6 3 9 ) 年 、 弟 直 泰 に 新 谷 藩 一 万 石 を 分 知 す る こ と に な っ た 。 幼 か っ た 直 泰 は 、 あ と か ら 母 の

率 乃 謂 依 等 円 径 而 得 心 円 径 依 心 円 径 而 得 等 円 径 之 法

寛 政 六 甲 寅 厳 冬 十 一 月 岩 田 清 謹 考 之 家 に 宝 と し て 残 し た 和 算 書 で あ る 。 大 洞 家 の 菩 提 寺 で あ る 法 眼 寺 所 蔵 の 和 紙 算 額 を 復 元 し た も の で あ る 。 愛 媛 和 算 研 究 会

新 谷 藩 士 岩 田 清 謹 源 助 が 三 十 一 歳 の 時 、 従 兄 弟 の 大 洞 牧 太 の 印 渡 邊 雅 道

図 1

(4)

 伊豫新谷藩は、大洲加藤藩の支藩で、山陰から転封されてきた大洲藩初代・加藤貞泰が

生前に長男の二代・泰興と、その弟直泰にも分封しようと考えていたことから、それこそ

藩を二分する激論ののち、寛永十六(1639)年、弟直泰に新谷藩一万石を分知することに

なった。幼かった直泰は、あとから母の法眼院殿の強力な後押しがあったことを知り、そ

の母の恩に報いるために、神南山麓に菩提寺を建立して、亡き母の院号にちなんで「法眼

寺」としたという言い伝えが残されている。

 2010 年以降、法眼寺を何回か訪れ、この復元算額や瀟洒な妹背の庭園を拝観したあと、

老住職・八島龍晴師の先導で和算家・岩田清謹の墓参りをした。(龍晴師は、住職をすで

に龍英氏に譲られているので、正しくは龍晴院首である。)

 また、岩田清謹が弘化四(1847)年、八十二歳の時に内子八幡神社に奉納した算額(あ

とに[参考]として掲載・解説する)が現存していて、内子町を訪れれば、誰でも見るこ

とが出来る。その奥書に「弘化四丁未歳十一月良辰 兼斎岩田清謹識 印 印」と書かれて

いるところから、多くの歴史書・和算書、たとえば三上義夫著「文化史上より見たる日本

の数学」などでは「岩田 清 謹識」すなわち、「岩田清が謹んで識す」と読まれていた。し

かし、法眼寺に「改田加祢」と並んで立っている岩田の墓石には、確かに、「岩田清謹」

と彫られている(写真②)。これは、龍晴師がすでに藪になっていた墓地を整備している

ときに見つけられたとのことである。

写真②:和算家・岩田清謹の墓。たしかに「清謹」と書いてあるのが読みとれる。

(5)

112

米 山 忠 興

正五角形 3 -法 眼 院 殿 の 強 力 な 後 押 し が あ っ た こ と を 知 り 、 そ の 母 の 恩 に 報 い る た め に 、 神 南 山 麓 に 菩 提 寺 を 建 立 し て 、 亡 き 母 の 院 号 に ち な ん で 「 法 眼 寺 」 と し た と い う 言 い 伝 え が 残 さ れ て い る 。 2 0 1 0 年 以 降 、 法 眼 寺 を 何 回 か 訪 れ 、 こ の 復 元 算 額 や 瀟 洒 な 妹 背 の 庭 園 を 拝 観 し た あ と 、 老 住 職 ・ 八 島 龍 晴 師 の 先 導 で 和 算 家 ・ 岩 田 清 謹 の 墓 参 り を し た 。 ( 龍 晴 師 は 、 住 職 を す で に 龍 英 氏 に 譲 ら れ て い る の で 、 正 し く は 龍 晴 院 首 で あ る 。 ) ま た 、 岩 田 清 謹 が 弘 化 四 ( 1 8 4 7 ) 年 、 八 十 二 歳 の 時 に 内 子 八 幡 神 社 に 奉 納 し た 算 額 ( あ と に [ 参 考 ] と し て 掲 載 ・ 解 説 す る ) が 現 存 し て い て 、 内 子 町 を 訪 れ れ ば 、 誰 で も 見 る こ と が 出 来 る 。 そ の 奥 書 に 「 弘 化 四 丁 未 歳 十 一 月 良 辰 兼 斎 岩 田 清 謹 識 印 印 」 と 書 か れ て い る と こ ろ か ら 、 多 く の 歴 史 書 ・ 和 算 書 、 た と え ば 三 上 義 夫 著 「 文 化 史 上 よ り 見 た る 日 本 の 数 学 」 な ど で は 「 岩 田 清 謹 識 」 す な わ ち 、 「 岩 田 清 が 謹 ん で 識 す 」 と 読 ま れ て い た 。 し か し 、 法 眼 寺 につ つ し しる 「 改 田 加 祢 」 と 並 ん で 立 っ て い る 岩 田 の 墓 石 に は 、 確 か に 、 「 岩 田 清 謹 」 と 彫 ら れ て い る ( 写 真 ② ) 。 こ れ は 、 龍 晴 師 が す で に 藪 に な っ て い た 墓 地 を 整 備 し て い る と き に 見 つ け ら れ た と の こ と で あ る 。 な お 、 法 眼 寺 か ら 帰 る と き に 、 老 住 職 が み ず か ら 鐘 楼 に 立 っ て 、 寺 か ら の 坂 道 を 下 り る 私 た ち に 、 「 送 り 鐘 」 を 撞 い て く れ る 。 私 た ち も 、 思 わ ず う し ろ を 振 り 返 っ て 、 お 寺 と 住 職 に 向 か っ て 、 も う 一 度 、 合 掌 す る の で あ っ た 。 正 十 角 形 の 作 図 題 正 五 角 形 を 描 く 一 番 簡 明 な 方 法 は 初 め に 正 十 角 形 の 一 辺 を 求 め る こ と で あ る 。 図 2 の よ う に 、 正 五 角 形 に 外 接 す る 円 の 中 心 を O , 半 径 を a と す る 。 正 五 角 形 の 一 辺 を A B と し 、 O か ら A B に 下 ろ し た 垂 線 の 足 を D 、 そ の 延 長 線 と 円 の 交 点 を C と す る 。 そ う す る と 、 こ の B C が 正 十 角 形 の 一 辺 の 長 さ で あ る 。 こ の B C = x と お く 。 △ O B C に お い て 、 ∠ C O B = π / 5 , ∠ O C B = ∠ O B C = 2 π / 5 で あ る 。 図 3 に お い て 、 ∠ O B C の 二 等 分 線 と O C の 交 点 を E と す る 。 ∠ B O E = ∠ O B E = π / 5 , ∠ B C E = ∠ B E C = 2 π / 5 だ か ら 、 O E = E B = B C = x . △ O B C ∽ △ B C E だ か ら 、 a : x = x : a - x x2= a ( a - x ) x2+ a x - a= 0 x π 5 O A B C 図2 D a E O x a π 5 a-x C B x x 図3 D 図 2 図 3

 なお、法眼寺から帰るときに、老住職がみずから鐘楼に立って、寺からの坂道を下りる

私たちに、「送り鐘」を撞いてくれる。私たちも、思わずうしろを振り返って、お寺と住

職に向かって、もう一度、合掌するのであった。

正十角形の作図題

 正五角形を描く一番簡明な論理と方法は初めに正十角形の一辺を求めることである。

 図 2 のように、正五角形に外接する円の中心を O, 半径を a とする。正五角形の一辺を

AB

とし、O から AB に下ろした垂線の足を D、その延長線と円の交点を C とする。そう

すると、この BC が正十角形の一辺の長さである。

 この BC=x とおく。 △ OBC において、

    ∠COB = π/5,

    ∠OCB = ∠OBC = 2π/5 である。

図 3 において、

∠OBC の二等分線と OC の交点を E とする。

    ∠BOE = ∠OBE = π/5,

    ∠BCE = ∠BEC = 2π/5

だから、OE=EB=BC=x.

 △ OBC∽△ BCE だから、

    a:x = x:a − x

    x

2

= a(a − x)

    x

2

+ ax − a

2

= 0

    x =

−1 ±  5

2

a

x

> 0 だから、

(6)

正五角形 4 -- 1 ± √ 5 x = a 2 x > 0 だ か ら 、 √ 5 - 1 x = a 2 こ れ が 半 径 a の 円 に 内 接 す る 正 十 角 形 の 一 辺 の 長 さ で あ る 。 こ れ を 用 い れ ば 、 正 五 角 形 も 簡 単 に 描 け る 。 具 体 的 な 正 十 角 形 ・ 正 五 角 形 ・ 星 形 の 描 き 方 は 、 以 下 の よ う で あ る 。 図 4 の よ う に 、 中 心 O , 半 径 a の 円 の 一 本 の 直 径 を F G と し 、 F G の 垂 直 二 等 分 線 と 円 の 交 点 の 一 つ を K と す る 。 ま た 、 O G の 垂 直 二 等 分 線 と 円 の 交 点 の 一 つ を J 、 F G と の 交 点 を H と す る 。 a √ 5 K O = a , O H = だ か ら 、 H K = a で あ り 、 H を 中 心 と し て H K を 半 2 2 √ 5 1 径 と す る 円 と F G の 交 点 を L と す る と 、 O L = a - a で あ る 。 2 2 こ の O L が 、 半 径 a の 円 に 内 接 す る 正 十 角 形 の 一 辺 の 長 さ で あ る 。 正 五 角 形 ま た 、 図 2 の B D = y と す る と 、 正 五 角 形 の 一 辺 は 2 y で あ る 。 √ 5 - 1 x = a 2 1 1 √ 5 - 1 3 - √ 5 C D = ( a - x ) = 1 - a = a . 2 2 2 4 y2 - C D√ 5 - 13 - √ 5 2 = = - a a2 6 - 2 √ 5 1 4 - 6 √ 5 1 0 - 2 √ 5 = - = 4 1 6 1 6 よ っ て 、 1 0 - 2 √ 5 2 y = a . 2 星 梅 鉢 次 に 、 梅 鉢 型 を 描 く に は 、 ① 前 述 の 考 え に 基 づ い て 、 図 5 の よ う に 、 正 十 角 形 か ら 正 五 角 形 を 描 く 。 ② 図 6 で 、 正 五 角 形 の 外 接 円 の 中 心 と 頂 点 を 通 る 5 本 の 直 線 を 引 き 、 さ ら に 正 五 角 形 の 頂 点 を 中 心 と し て 直 線 に 接 す る 円 を 描 く と 、 こ れ が 5 等 円 で あ る 。 ③ 芯 円 は 中 心 が 正 五 角 形 の 外 接 円 の 中 心 と 同 じ で 、 5 等 円 に 接 す る 円 で あ る 。 ④ 天 満 神 社 の 紋 章 の 芯 円 は も っ と 小 さ く 、 図 7 の よ う に 、 3 6 ゜ を さ ら に 2 等 分 し て 、 1 8 ゜ の 線 を 描 き 、 梅 の 花 の 雌 蕊 、 雄 蕊 を 描 く 。め し べ ⑤ こ の 3 6 ゜ × 2 = 7 2 ゜ と 1 8 ゜ は 、 四 季 と 五 行 説 の 関 係 で も あ る 。 O F G J H K L a a 2 5 2 5 ― 1 2 図 4 a a 図 5 図 4 図 5

 図 4 のように、中心 O, 半径 a の円の一本の直径を FG とし、FG の垂直二等分線と円の

交点の一つを K とする。また、OG の垂直二等分線と円の交点の一つを J、FG との交点

を H とする。

KO=a,OH=

a

2 だから、

HK=  

2

5

aであり、H を中心として HK を半径とする円と FG

の交点を L とすると、OL=  

2

5

a−

1

2

a

である。

この OL が、半径 a の円に内接する正十角形の一辺の長さである。

正五角形

 また、図 2、図 3 の BD=y とすると、正五角形の一辺は 2y である。

 x =

 5 − 1

2

a

CD

1

2(

a

− x)=

1

2

1

−  

5

− 1

2

a =

3

−  5

4

a.

y

a

2

x

2

− CD

a

2 2

 5 − 1

2

2

3

−  5

4

2

   =

6

− 2  5

4

14

− 6  5

16

10

− 2  5

16

よって、

   x =

 5 − 1

2

a

 これが半径 a の円に内接する正十角形の一辺の長さである。これを用いれば、正五角

形も簡単に描ける。具体的な正十角形・正五角形・星形の描き方は、以下のようである。

(7)

114

米 山 忠 興

    2y =

10

− 2  5

2

a

星梅鉢

 次に、梅鉢型を描くには、

①前述の考えに基づいて、図 5 のように、正十角形から正五角形を描く。

② 図 6 で、正五角形の外接円の中心と頂点を通る 5 本の直線を引き、さらに正五角形の頂

点を中心としてこの直線に接する円を描くと、これが 5 等円である。

③芯円は中心が正五角形の外接円の中心と同じで、5 等円に接する円である。

④ 天満神社の紋章の芯円はもっと小さく、図 7 のように、36 ゜をさらに 2 等分して、18 ゜

の線を描き、梅の花の雌蕊、雄蕊を描く。

⑤この 36 ゜×2=72 ゜と 18 ゜は、四季と五行説の関係でもある。

正五角形 5 -大 洞 家 々 紋 本 題 に 戻 っ て 、 大 洞 家 の 家 紋 の 芯 円 径 を 求 め る 。 図 6 の よ う に 、 梅 鉢 型 の 外 側 の 5 つ の 等 円 と 中 心 の 芯 円 の 半 径 を 、 そ れ ぞ れ 、 y , r と す る と 、 r + y = a だ か ら 、 4 r = - 1 y . 1 0 - 2 √ 5 こ れ を 等 円 の 半 径 と 比 べ る ( y = 1 と す る ) と 、 芯 円 の 半 径 r は 、 ∴ r ≒ 0 . 7 0 1 3 0 1 6 ■ と こ ろ で 、 岩 田 清 謹 の 術 文 は 「 術 に 云 う 、 五 個 を 列 し 平 方 に 開 き 一 個 を 加 え 、 こ れ をみ ず か ら自 し 、 實 と 為 す 。 内 一 個 を 減 じ 平 方 に 開 き 、 商 を 見 て こ れ を ( 二 ) 倍 し 、 法 と 為 す 。 法 を 一 の 如 く し て 得 た る 内 、 一 個 を 減 ず れ ば 定 率 を 得 る 。 問 に 合 う 。 」 で あ る 。 術 文 中 、 和 算 家 が 「 如 法 一 而 」 を ど う 「 訓 み 下 し 」 て い た の か は 分 か ら な いよ が 、 私 は 「 法 を 一 の 如 く し て 」 と 勝 手 に 訓 み 下 し て い る 。 法 を 単 位 ( 一 ) と し て 、 と い う こ と で あ る 。 い ず れ に し て も ( 実 を ) 法 で 割 る と い う こ と で あ る 。 実 ( √ 5 + 1 )2= 実 , 実 - 1 × 2 = 法 , - 1 = 定 率 . 法 す な わ ち 、 実 ( √ 5 + 1 )2 6 + 2 √ 5 定 率 = - 1 = - 1 = - 1 法 2 ( √ 5 + 1 )2- 1 5 + 2 √ 5 こ れ は 、 先 に 計 算 し た r と は 、 見 か け 上 か な り 違 っ た 形 を し て い る の で 、 一 瞬 と ま ど っ て し ま っ た が 、 関 数 電 卓 で 計 算 し て み た ら 、 五 ~ 六 桁 の 精 度 で 、 ぴ っ た り 一 致 し て い た の で 、 そ れ に 勢 い を 得 て 「 分 子 の 有 理 化 」 を 考 え た 。 6 + 2 √ 5 ( 3 + √ 5 ) ( 3 - √ 5 ) 定 率 + 1 = = 2 5 + 2 √ 5 5 + 2 √ 5 ( 3 - √ 5 ) 4 4 = = = r + 1 . 5 + 2 √ 5 1 4 - 6 √ 5 1 0 - 2 √ 5 よ っ て 、 岩 田 清 謹 の 「 定 率 」 は 、 先 に 求 め た r に 等 し い こ と が 分 か る 。 □ 五 倍 角 の 公 式 参 考 と し て 、 五 倍 角 の 公 式 か ら 正 五 角 形 の 一 辺 の 長 さ を 直 接 計 算 す る 方 法 を 以 下 に 示 す 。 た だ し 、 あ と に 述 べ る よ う に 、 こ の 方 法 は 、 推 奨 で き な い 。 加 法 定 理 : s i n ( α + β ) = s i n α c o s β + c o s α s i n β y y r 図6 a 梅鉢型家紋 図7 天満神社の紋章 図 6 図 7

大洞家々紋

 本題に戻って、大洞家の家紋の芯円径を求める。図 6 のように、梅鉢型の外側の 5 つの

等円と中心の芯円の半径を、それぞれ、y,r とすると、

    r+y=a だから、

    r =

10

− 2  5 −

4

1 y.

 これを等円の半径と比べる(y=1 とする)と、芯円の半径 r は、

  ∴ r≒0.7013016 ■

 ところで、岩田清謹の術文は「術に云う、五個を列し平方に開き一個を加え、これを

自 し、實と為す。内一個を減じ平方に開き、商を見てこれを(二)倍し、法と為す。法

を一の如くして得たる内、一個を減ずれば定率を得る。問に合う。」である。

 術文中、和算家が「如法一而」をどう「訓み下し」ていたのかは分からないが、私は

(8)

「法を一の如くして」と勝手に訓み下している。法を単位(一)として、ということであ

る。いずれにしても(実を)法で割るということである。

 ( 5 + 1)

2

= 実,  実 − 1 × 2 = 法,   実

法 − 1 = 定率.

すなわち、

 定率 = 実

− 1 =

( 5 + 1)

2

2

( 5 + 1)

2

− 1

− 1 =

6

+ 2  5

2 5

+ 2  5

− 1

 これは、先に計算した r とは、見かけ上かなり違った形をしているので、一瞬とまどっ

てしまったが、関数電卓で計算してみたら、五∼六桁の精度で、ぴったり一致していたの

で、それに勢いを得て「分子の有理化」を考えた。

  定率+1 =

2 5

6

+ 2  5

+ 2  5

(3 +  5)

(3 −  5)

5

+ 2  5(3 −  5)

      =

5

4

+ 2  5 14 − 6  5

4

10

− 2  5

= r + 1.

 よって、岩田清謹の「定率」は、先に求めた r に等しいことが分かる。

□五倍角の公式

 参考として、五倍角の公式から正五角形の一辺の長さを直接計算する方法を以下に示

す。ただし、あとに述べるように、この方法は、推奨できない。

加法定理:

sin

(α + β)= sinαcosβ + cosαsinβ

cos

(α + β)= cosαcosβ − sinαsinβ

倍角の公式:

sin2θ

= 2sinθcosθ

cos2θ

= cos

2

θ

− sin

2

θ

= 1 − 2sin

2

θ

三倍角:

sin3θ

= sin2θcosθ + cos2θsinθ

   = 2sinθcos

2

θ

+(1 − 2sin

2

θ

)sinθ

   = 2sinθ(1 − sin

2

θ

)+(1 − 2sin

2

θ

)sinθ

   = 3sinθ − 4sin

3

θ

cos3θ

= cos2θcosθ − sin2θsinθ

   =(1 − 2sin

2

θ

)cosθ − 2sin

2

θcosθ

   = cosθ − 4sin

2

θcosθ

   = cosθ − 4cosθ(1 − cos

2

θ

   = 4cos

3

θ

− 3cosθ

五倍角:

sin5θ

= sin3θcos2θ + cos3θsin2θ

   =(3sinθ − 4sin

3

θ

(1 − 2sin

2

θ

)+(4cos

3

θ

− 3cosθ)・2sinθcosθ

(9)

116

米 山 忠 興

   =[(3 − 4sin

2

θ

(1 − 2sin

2

θ

)+(1 − 4sin

2

θ

)・2(1 − sin

2

θ

)]× sinθ

   =[3 − 10sin

2

θ

+ 8sin

4

θ

+ 2 − 10sin

2

θ

+ 8sin

4

θ

]× sinθ

   ={5 − 20sin

2

θ

+ 16sin

4

θ

}× sinθ

ここで θ=π/5 とおくと、sin5θ=sinπ=0, また sinθ≠0.

∴ 5 − 20sin

2

θ

+ 16sin

4

θ

= 0

 sin

2

θ

10

± 100−80

16

10

±  20

16

10

± 2  5

16

 sin

2

θ

10

− 2  5

16

  sinθ =

10

− 2  5

4

よって、正五角形の一辺は(図 8)

 2asinθ =

10

− 2  5

2

a

さらに、この式を変形して、

 2asinθ =

6

− 2  5 + 4

2

a

  = a   

5

2

− 1

2

+ 1

2

 ,

これから、図 4 の KL が正五角形の一辺の長さであることが分かる。

正五角形

6

-c o s ( α + β ) = -c o s α -c o s β - s i n α s i n β

倍 角 の 公 式 :

s i n 2 θ = 2 s i n θ c o s θ

c o s 2 θ = c o s

θ - s i n

θ = 1 - 2 s i n

θ

三 倍 角 :

s i n 3 θ = s i n 2 θ c o s θ + c o s 2 θ s i n θ

= 2 s i n θ c o s

θ + ( 1 - 2 s i n

θ ) s i n θ

= 2 s i n θ ( 1 - s i n

θ ) + ( 1 - 2 s i n

θ ) s i n θ

= 3 s i n θ - 4 s i n

θ

c o s 3 θ = c o s 2 θ c o s θ - s i n 2 θ s i n θ

= ( 1 - 2 s i n

θ ) c o s θ - 2 s i n

θ c o s θ

= c o s θ - 4 s i n

θ c o s θ

= c o s θ - 4 c o s θ ( 1 - c o s

θ )

= 4 c o s

θ - 3 c o s θ

五 倍 角 :

s i n 5 θ = s i n 3 θ c o s 2 θ + c o s 3 θ s i n 2 θ

= ( 3 s i n θ - 4 s i n

θ ) ( 1 - 2 s i n

θ )

+ ( 4 c o s

θ - 3 c o s θ ) ・ 2 s i n θ c o s θ

( 3 - 4 s i n

θ ) ( 1 - 2 s i n

θ )

× s i n θ

+ ( 4 c o s

θ - 3 ) ・ 2 c o s

θ

( 3 - 4 s i n

θ ) ( 1 - 2 s i n

θ )

× s i n θ

+ ( 1 - 4 s i n

θ ) ・ 2 ( 1 - s i n

θ )

3 - 1 0 s i n

θ + 8 s i n

θ

× s i n θ

+ 2 - 1 0 s i n

θ + 8 s i n

θ

= { 5 - 2 0 s i n

θ + 1 6 s i n

θ } × s i n θ

こ こ で θ = π / 5 と お く と 、 s i n 5 θ = s i n π = 0 ,

ま た s i n θ ≠ 0 .

5 - 2 0 s i n

θ + 1 6 s i n

θ = 0

1 0 ±

1 0 0 - 8 0

1 0 ±

2 0

1 0 ± 2

s i n

θ =

1 6

1 6

1 6

1 0 - 2

1 0 - 2

s i n

θ =

s i n θ =

1 6

よ っ て 、 正 五 角 形 の 一 辺 は ( 図 8 )

1 0 - 2

2 a s i n θ =

さ ら に 、 こ の 式 を 変 形 し て 、

6 - 2 √ 5 + 4

√ 5 - 1

2 a s i n θ =

= a

+ 1

こ れ か ら 、 図 4 の K L が 正 五 角 形 の 一 辺 の 長 さ で あ る こ と が 分 か る 。

し か し 、 初 め か ら 直 接 に 正 五 角 形 の 一 辺 の 長 さ を 求 め

る こ と は 、 決 し て 推 奨 出 来 る 方 法 で は な い 。

ま ず 、 五 倍 角 の 公 式 か ら 正 五 角 形 の 一 辺 の 長 さ を 求 め

る こ と が 、 初 め て の 人 に は 、 た ぶ ん 、 途 方 も な く 大 変 な

計 算 で あ ろ う 。

さ ら に 、 図 4 に 正 十 角 形 の 一 辺 の 長 さ が 示 さ れ て

い る か ら よ い ヒ ン ト に な る が 、 上 の

1 0 - 2

を 作 図 で ど の よ う に 表 わ せ ば よ い の か 、 多 く の 人 は 戸 惑 う こ と で あ ろ う 。

二 つ の 方 法 を 較 べ て み れ ば 明 ら か な よ う に 、 軟 ら か い 発 想 の 出 来 る 人 は 、 直

接 に 正 五 角 形 を 描 く の で は な く 、 初 め に 簡 明 に 、 正 十 角 形 を 求 め る で あ ろ う 。

π 5 O A B a asinπ

図8

図 8

 しかし、初めから直接に正五角形の一辺の長さを求めることは、決して推奨出来る方法

ではない。

 まず、五倍角の公式から正五角形の一辺の長さを求めることが、初めての人には、たぶ

ん、途方もなく大変な計算であろう。

 さらに、図 4 に正十角形の一辺の長さが示されているからよいヒントになるが、上の

    

10

− 2  5

4

a

を作図でどのように表わせばよいのか、多くの人は戸惑うことであろう。

(10)

 二つの方法を較べてみれば明らかなように、軟らかい発想の出来る人は、直接に正五角

形を描くのではなく、初めに簡明に、正十角形を求めるであろう。

 さらなる別法として、ピタゴラス(三平方)の定理のみによって、五辺が相等しいこと

から、正五角形を証明する方法は、あまりにも稚拙なので、ここでは扱わない。興味があ

る人は、ネットを見ること。

[参考]内子八幡神社の算額

 前述の法眼寺算額問題を作った岩田清謹が八十二才の時に、新谷から五キロほど東の、

当時は蝋燭などで栄えていて、「内子座」という歌舞伎小屋もある内子町の八幡神社に奉

納した算額があり、今でも神社の拝殿に掲げられており、内子を訪れれば、誰でも見るこ

とが出来る(写真③、図 9)。

写真③:内子八幡神社に奉納された和算家・岩田清謹八十二歳の時の算額

 これは本来は、数学的内容から言えば、敢えてここで解説するほどではないが、星梅鉢

−法眼寺算額−岩田清謹の一連の繋がりで、ここに取り上げることにする。

 「初学の請いに応じて」という題の通り、比較的易しいが、以下のように 2 重根号のは

ずし方など、初心者に参考になりそうな計算がいくつか見られる。

(11)

118

米 山 忠 興

正五角形 7 -さ ら な る 別 法 と し て 、 ピ タ ゴ ラ ス ( 三 平 方 ) の 定 理 の み に よ っ て 、 五 辺 が 相 等 し い こ と か ら 、 正 五 角 形 を 証 明 す る 方 法 は 、 あ ま り に も 稚 拙 な の で 、 こ こ で は 扱 わ な い 。 興 味 が あ る 人 は 、 ネ ッ ト を 見 る こ と 。 [ 参 考 ] 内 子 八 幡 神 社 の 算 額 前 述 の 法 眼 寺 算 額 問 題 を 作 っ た 岩 田 清 謹 が 八 十 二 才 の 時 に 、 新 谷 か ら 五 キ ロ ほ ど 東 の 、 当 時 は 蝋 燭 な ど で 栄 え て い て 、 「 内 子 座 」 と い う 歌 舞 伎 小 屋 も あ る 内 子 町 の 八 幡 神 社 に 奉 納 し た 算 額 が あ り 、 今 で も 神 社 の 拝 殿 に 掲 げ ら れ て お り 、 内 子 を 訪 れ れ ば 、 誰 で も 見 る こ と が 出 来 る ( 写 真 ③ 、 図 9 ) 。 こ れ は 本 来 は 、 数 学 的 内 容 か ら 言 え ば 、 敢 え て こ こ 解 説 す る ほ ど で は な い が 、 星 梅 鉢 - 法 眼 寺 算 額 - 岩 田 清 謹 の 一 連 の 繋 が り で 、 こ こ に 取 り 上 げ る こ と に す る 。 「 初 学 の 請 い に 応 じ て 」 と い う 題 の 通 り 、 比 較 的 易 し い が 、 以 下 の よ う に 2 重 根 号 の は ず し 方 な ど 、 初 心 者 に 参 考 に な り そ う な 計 算 が い く つ か 見 ら れ る 。 和 算 家 は 、 円 の 大 き さ を 直 径 で 表 わ し て い た が 、 我 々 は 半 径 で 考 え る 方 が 慣 れ て い る し 、 逆 に 和 算 家 の よ う に 直 径 で 表 わ し て 、 半 径 を た と え ば 、 R / 2 , b / 2 の よ う に 書 く の は 煩 雑 な の で 、 以 下 の 計 算 で は 、 洋 算 に 倣 っ て 「 半 径 」 で 行 な う 。 そ こ で 、 直 径 で 表 現 さ れ て い る 算 額 の 術 文 と 比 較 す る た め に は 、 ( 「 円 」 同 士 は 、 ど ち ら で も よ い が ) 「 直 長 」 の み に つ い て は 「 2 長 」 と す る 。

左 甲 右 乙 丁 丙 大

天名 地名 乗 六 分 為 左 乗 四 分 為 右 關 流 算 學 寺 井 政 道 門 人 新 谷 藩 于 時 齢 八 十 有 二

図 9

2 bc

図 1 0

図 10 正五角形 7 -さ ら な る 別 法 と し て 、 ピ タ ゴ ラ ス ( 三 平 方 ) の 定 理 の み に よ っ て 、 五 辺 が 相 等 し い こ と か ら 、 正 五 角 形 を 証 明 す る 方 法 は 、 あ ま り に も 稚 拙 な の で 、 こ こ で は 扱 わ な い 。 興 味 が あ る 人 は 、 ネ ッ ト を 見 る こ と 。 [ 参 考 ] 内 子 八 幡 神 社 の 算 額 前 述 の 法 眼 寺 算 額 問 題 を 作 っ た 岩 田 清 謹 が 八 十 二 才 の 時 に 、 新 谷 か ら 五 キ ロ ほ ど 東 の 、 当 時 は 蝋 燭 な ど で 栄 え て い て 、 「 内 子 座 」 と い う 歌 舞 伎 小 屋 も あ る 内 子 町 の 八 幡 神 社 に 奉 納 し た 算 額 が あ り 、 今 で も 神 社 の 拝 殿 に 掲 げ ら れ て お り 、 内 子 を 訪 れ れ ば 、 誰 で も 見 る こ と が 出 来 る ( 写 真 ③ 、 図 9 ) 。 こ れ は 本 来 は 、 数 学 的 内 容 か ら 言 え ば 、 敢 え て こ こ 解 説 す る ほ ど で は な い が 、 星 梅 鉢 - 法 眼 寺 算 額 - 岩 田 清 謹 の 一 連 の 繋 が り で 、 こ こ に 取 り 上 げ る こ と に す る 。 「 初 学 の 請 い に 応 じ て 」 と い う 題 の 通 り 、 比 較 的 易 し い が 、 以 下 の よ う に 2 重 根 号 の は ず し 方 な ど 、 初 心 者 に 参 考 に な り そ う な 計 算 が い く つ か 見 ら れ る 。 和 算 家 は 、 円 の 大 き さ を 直 径 で 表 わ し て い た が 、 我 々 は 半 径 で 考 え る 方 が 慣 れ て い る し 、 逆 に 和 算 家 の よ う に 直 径 で 表 わ し て 、 半 径 を た と え ば 、 R / 2 , b / 2 の よ う に 書 く の は 煩 雑 な の で 、 以 下 の 計 算 で は 、 洋 算 に 倣 っ て 「 半 径 」 で 行 な う 。 そ こ で 、 直 径 で 表 現 さ れ て い る 算 額 の 術 文 と 比 較 す る た め に は 、 ( 「 円 」 同 士 は 、 ど ち ら で も よ い が ) 「 直 長 」 の み に つ い て は 「 2 長 」 と す る 。

左 甲 右 乙 丁 丙 大

天名 地名 乗 六 分 為 左 乗 四 分 為 右 關 流 算 學 寺 井 政 道 門 人 新 谷 藩 于 時 齢 八 十 有 二

図 9

2 bc

図 1 0

図 9

 和算家は、円の大きさを直径で表わしていたが、我々は半径で考える方が慣れている

し、逆に和算家のように直径で表わして、半径をたとえば、R/2,b/2 のように書くのは

煩雑なので、以下の計算では、洋算に倣って「半径」で行なう。そこで、直径で表現され

ている算額の術文と比較するためには、(「円」同士は、どちらでもよいが)「直長」のみ

については「2 長」とする。

 まず和算の基礎として、図 10 において、

直線と円 B, 円 C が互いに接しているとき、直線上の接点間の距離は、

(12)

  (b+c)

2

−(b−c)

2

=2 bc である。

 大円径:R

 乙円径:b

 丙円径:c

とすると、図 11 のように、「直長」は、R,b,c で決まる。

 問題では丙円径が与えられていると考えて、数値計算では c=1 とする。

図 11 正五角形 8 -ま ず 和 算 の 基 礎 と し て 、 図 1 0 に お い て 、 直 線 と 円 B , 円 C が 互 い に 接 し て い る と き 、 直 線 上 の 接 点 間 の 距 離 は 、 ( b + c )2- ( b - c )= 2 b c で あ る 。 図 1 1 の よ う に 、 「 直 長 」 は 、 R , b , c で 決 ま る 。 大 円 径 : R 乙 円 径 : b 丙 円 径 : c と し 、 問 題 で は 丙 円 径 が 与 え ら れ て い る と 考 え て 、 数 値 計 算 で は c = 1 と す る 。 R = b + c + 2 b c ① b - c = ( R + c )2- c- 2 R b 2 長 = R + b + 2 R b ③ ① ⇒ R = ( √ b + √ c )2 √ R = √ b + √ c . ① ’ ② ⇒ ( √ b + √ c ) ( √ b - √ c ) = R ( R + 2 c ) - 2 R b √ b - √ c = R + 2 c - 2 √ b , 3 √ b - √ c = b + 3 c + 2 b c 両 辺 を 2 乗 し て 、 9 b + c - 6 b c = b + 3 c + 2 b c 8 b - 2 c - 8 b c = 0 b 2 4 - 4 - 1 = 0 c c b 2 ± 2 √ 2 1 ± √ 2 = = c 4 2 b > 0 だ か ら c b 1 + √ 2 = c 2 b 3 + 2 √ 2 2 b = ≒ 1 . 4 5 7 1 . = [ 乙 ] c 4 2 c R b b b 2 ① ⇒ = + 1 + 2 = + 1 c c c c 3 + √ 2 2 1 1 + 6 √ 2 2 R = = ≒ 4 . 8 7 1 3 . = [ 全 ] 2 4 2 c R b c R b c b c O B C R 図1 1

   R = b + c + 2 bc        ①

 b−c = (R + c)

2

− c

2

− 2 Rb    ②

 2 長 = R + b + 2 Rb        ③

①⇒ R =( b + c )

2

   R = b + c .       ① '

②⇒( b + c )

( b − c )= R (R + 2c)− 2 Rb

    b − c = R + 2c − 2 b,

  3 b − c = b + 3c + 2 bc

両辺を 2 乗して、

  9b + c − 6 bc = b + 3c + 2 bc

  8b − 2c − 8 bc = 0

  4  

b

c

2

− 4 

b

c − 1 = 0

   

b

c =

2

± 2  2

4

1

±  2

2

  

b

c > 0 だから

   

b

c =

1

+  2

2

   

b

c =

3

+ 2  2

4

≒ 1.4571        2b

2c =[乙]

(13)

120

米 山 忠 興

① ⇒

R

c =  

b

c + 1

2

3

+  2

2

2

11

+ 6  2

4

≒ 4.8713.   2R

2c =[全]

③ ⇒

2

c =(

R

+ b + 2 Rb )/c

    =  

R

c +  

b

c

2

=  

11

+ 6  2

4

+  

3

+ 2  2

4

2

ここで、

     

11

+ 6  2

4

(3 +  2 )

2

2

3

+  2

2

     

3

+ 2  2

4

(  2 + 1 )

2

2

 2 + 1

2

よって、

   

2

c =

 2 + 3

2

 2 + 1

2

2

2

 2 + 4

2

2

      =( 2 + 2)

2

= 2(1 + 2 )

2

= 2(3 + 2 2 ),

ゆえに、

   

c =(3 + 2 2)≒ 5.8284 .

2 長

2c =[長]      

 次に、大半円内の左右の半円と甲円について考える。

正五角形 9 -2 長 ③ ⇒ = ( R + b + 2 R b ) / c c R b 2 1 1 + 6 √ 2 3 + 2 √ 2 2 = + = + c c 4 4 , こ こ で 、 1 1 + 6 √ 2 ( 3 + √ 2 )2 3 + √ 2 = = 4 2 2 3 + 2 √ 2 ( √ 2 + 1 )2 √ 2 + 1 = = , 4 2 2 よ っ て 、 2 長 √ 2 + 3 √ 2 + 1 2 2 √ 2 + 4 2 = + = c 2 2 2 = ( √ 2 + 2 )2 = 2 ( 1 + √ 2 )= 2 ( 3 + 2 √ 2 ) , ゆ え に 、 長 2 長 = ( 3 + 2 √ 2 ) ≒ 5 . 8 2 8 4 . = [ 長 ] c 2 c 次 に 、 大 半 円 内 の 左 右 の 半 円 と 甲 円 に つ い て 考 え る 。 下 の 図 1 2 の よ う に 、 大 円 径 : R 左 円 径 : α R 右 円 径 : β R 甲 円 径 : a と お く 。 問 題 文 か ら 、 3 2 α = , β = 5 5 で あ る 。 図 1 2 の 2 つ の 三 角 形 に 余 弦 定 理 を 適 用 し て 、 c o s θ + c o s ( π - θ ) = 0 を 考 慮 す る と 、 ( β R )2+ ( R - a )- ( α R + a )( α R )+ ( R - a )- ( β R + a )2 + = 0 2 ・β R ( R - a ) 2 ・α R ( R - a ) 2 3 3 2 3 ( R)2+(R-a)-( R+a)+2 ( R)+(R-a)-( R+a)=0 5 5 5 5 a ≡ x と お く と 、 R 2 3 3 2 3 ( )2+(1-x)-( +x)+2 ( +(1-x)-( +x)=0 5 5 5 5 1 2 + 1 8 2 7 + 8 2 x + 5 ( 1 - x )2 ( 9 + 4 ) - 5 x= 0 2 5 2 5 5 2 4 7 6 - x = 0 5 5 6 - 1 9 x = 0 6 x = 1 9 6 6 1 1 + 6 √ 2 ∴ a = R = ・ c 1 9 1 9 4 a 3 ( 1 1 + 6 √ 2 ) 2 a = ≒ 1 . 5 3 8 3 . = [ 甲 ] c 3 8 2 c

図 1 2

αR

θ

R-a

βR

αR

βR

αR

βR

図 12

上の図 12 のように、

 大円径:R

 左円径:αR

 右円径:βR

 甲円径:a

とおく。問題文から、

(14)

α

3

5 ,

β

2

5

である。

 図 12 の 2 つの三角形に余弦定理を適用して、

 cosθ+cos(π−θ)=0 を考慮すると、

(βR)

2

+(R − a)

2

−(αR + a)

2

2・βR(R − a)

(αR)

2

+(R − a)

2

−(βR + a)

2

2・αR(R − a)

= 0

 3

2

5

R

2

+(R − a)

2

3

5

R

+ a

2

+ 2

3

5

R

2

+(R − a)

2

2

5

R

+ a

2

= 0

a

R ≡

x

とおくと、

 3

2

5

2

+(1 − x)

2

3

5 +

x

2

+ 2

3

5

2

+(1 − x)

2

2

5 +

x

2

= 0

12

+ 18

25

+ 5(1 − x)

2

27

+ 8

25

2x

5(

9

+ 4)− 5x

2

= 0

24

5 −

76

5

x

= 0

 6 − 19x = 0

 x =

19

6

 ∴ a =

19

6

R

19・

6

11

+ 6  2

4

c

   

a

c =

3

(11 + 6  2 )

38

≒ 1.5383 .

2a

2c =[甲]   

 さいごに、丁円径を求める。これは、図 13 で直角二等辺三角形を考えれば、かんたん

に出来る。

   2(R − d)= R + d

 ( 2 − 1)R =( 2 + 1)d

R =

d

 2 − 1

 2 + 1

=(

 2 − 1)

2

− 1

2

= 3 − 2 2

d

c =

R ・

d

R

c =(3 − 2 2 )・

11

+ 6  2

4

9

− 4  2

4

≒ 0.8358 .    

2d

2c =[丁]

(15)

122

米 山 忠 興

正五角形 10 -さ い ご に 、 丁 円 径 を 求 め る 。 こ れ は 、 図 1 3 で 直 角 二 等 辺 三 角 形 を 考 え れ ば 、 か ん た ん に 出 来 る 。 √ 2 ( R - d ) = R + d ( √ 2 - 1 ) R = ( √ 2 + 1 ) d d √ 2 - 1 ( √ 2 - 1 )2 = = = 3 - 2 √ 2 R √ 2 + 1 2 - 1 d d R 1 1 + 6 √ 2 9 - 4 √ 2 = ・ = ( 3 - 2 √ 2 ) ・ = ≒ 0 . 8 3 5 8 . c R c 4 4 2 d = [ 丁 ] 2 c 書 か れ て い る 術 文 は 、 現 代 の 我 々 が 「 術 」 と い う 言 葉 か ら 連 想 す る 解 答 を 導 び く た め の も の で は な く 、 ほ と ん ど 答 え の 数 値 を 「 記 述 」 し て い る だ け で あ る 。 丙 円 径 が 与 え ら れ た と き ( 丙 = 1 と し て ) 、 そ の 術 文 を 数 式 と し て 表 わ す と 、 以 下 の よ う に な る 。 √ 8 = 天 , 天 + 3 [ = 2 √ 2 + 3 ] = 長 , 長 3 + 2 √ 2 = = 乙 , 4 4 1 1 1 + 6 √ 2 乙 × 3 + = = 地 = 全 . 2 4 3 2 全 = 左 , 全 = 右 , 5 5 左 × 右 = 甲 , 左2 + 右 地 こ の 式 か ら 、 3 2 全 × 全 5 5 6 全 6 全 6 甲 = = = = 全 . 3 9 全 9 + 1 0 1 9 ( 全 )2 + 1 0 5 2 地 + 全 地 5 ( 3 - 天 ) × 地 = 丁 , こ の 術 文 は 、 前 述 の 計 算 式 と 一 致 し て い る 。 [ P h o t o C a p t i o n s ] [ 写 真 ① : 新 谷 ・ 法 眼 寺 算 額 。 法 眼 寺 ・ 八 島 龍 晴 院 首 の ご 厚 意 に よ り 『 「 新 谷 藩 一 万 石 史 」 補 遺 - 星 梅 鉢 』 か ら 転 載 。 ] [ 写 真 ② : 和 算 家 ・ 岩 田 清 謹 の 墓 。 た し か に 「 清 謹 」 と 書 い て あ る の が 読 み と れ る 。 ] [ 写 真 ③ : 内 子 八 幡 神 社 に 奉 納 さ れ た 和 算 家 ・ 岩 田 清 謹 八 十 二 歳 の 時 の 算 額 ] R R-d d d d 図 13 図 13

 書かれている術文は、現代の我々が「術」という言葉から連想する解答を導びくための

ものではなく、ほとんど答えを「記述」しているだけである。

 丙円径が与えられたとき(丙=1 として)、その術文を数式として表わすと、以下のよ

うになる。

8

= 天,

天 + 3[ = 2 2 + 3]= 長,

4 =

3

+ 2  2

4

= 乙,

乙 × 3 +

1

2 =

11

+ 6  2

4

= 地 = 全 .

3

5 全 = 左,  

2

5 全 = 右,

左 × 右

2

地 + 右

= 甲,

この式から、

  

3

5 全

( )

2

3

5 全 ×

2

5 全

+ 2

5 全

甲 =

+ 10

6 全

9 全

9 + 10

6 全

19

6 全  .

(3 − 天)× 地 = 丁,

 この術文は、前述の計算式と一致している。

参照

関連したドキュメント

図2  CECS レベル2教材 (Introduction to Coaching − the Official IAAF Guide to Coaching Athletics,

In the main square of Pilsen, an annual event where people can experience hands-on science and technology demonstrations is held, involving the whole region, with the University

越欠損金額を合併法人の所得の金額の計算上︑損金の額に算入

toursofthesehandsinFig6,Fig.7(a)andFig.7(b).A changeoftangentialdirection,Tbover90゜meansaconvex

この場合,波浪変形計算モデルと流れ場計算モデルの2つを用いて,図 2-38

また、同制度と RCEP 協定税率を同時に利用すること、すなわち同制 度に基づく減税計算における関税額の算出に際して、 RCEP

今回のわが国の臓器移植法制定の国会論議をふるかぎり,只,脳死体から

の急激な変化は,従来のような政府の規制から自由でなくなり,従来のレツ