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世界の音楽から新たなリズムを習得するプロセス

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Academic year: 2021

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1. はじめに 子どもは、自分にとって新しいリズムをどのように 習得していくのだろうか。さらに習得したリズムをど のようなプロセスを経て自分の表現につなげていくの だろうか。本稿では、オルタナティブスクールでの実 践をもとに、子どもたちがトルコの9拍子の音楽と出 会い、鑑賞、言葉あそび、身体表現、創作活動をとお して、新たなリズムを習得して自分の音楽として表現 していくプロセスについて考察したい。 筆者(大北)は、これまで世界の音楽の研究、教材 開発の研究を進めてきた。修士論文でのタイ音楽の教 材化の研究をかわきりに、トルコ、エジプト、インド ネシア、スペインなど、さまざまな国の音楽をまず自 らが体験し、教材化し、授業実践を試み、子どもの反 応を研究してきた。その際、世界の音楽を鑑賞したり、 演奏したりするだけにとどまらず、「知る」→「体験 する」→「広める」という、島崎・加藤(1999)の 複合的アプローチをベースとした学習活動を行うこと で、音楽を取り巻く文化や伝統への理解が深まり、音 楽的視野や経験が広まることが明らかになった。 しかしながら、世界の音楽の学習で学んだ国の音楽 をその後の学習や生活に生かす設定がない場合、やは り、そ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・の場限りの新しい音楽に出会っただけという域 を脱することは難しいと思われる。勿論、新しい音楽 を知ることが学習者の音楽的、文化的視野を広げる出 発点にはなりうる。だが、世界の音楽の学習にはもっ と本質的な音楽的学びがあるのではないか。例えば、 非西洋の音楽には、五線譜に記すことのできない音程 や、西洋音楽にはない拍子、音階、旋法、リズムが存 在する。それらを経験し、習得し、創作活動などで自 分の表現につなげることが出来てはじめて学習者の音 楽経験の幅を広げたと言えるのではないかと考えた。 筆者は世界の音楽の教材開発として、多様な旋法や 音階、リズムをもつ中東の音楽に着目した。中でもト ルコの伝統音楽にみられる特徴的な9拍子を持つトル コの民俗舞踊カルシュラマの8分の9拍子に焦点をあ てた。この9拍子は、「2・2・2・3」という拍の 並びで、拍子を取る際に躓くような感覚の面白さがあ る。筆者は、トルコ・エジプトで踊られるベリーダン ス(中東舞踊)のレッスンに通ったところ、ベリーダ ンサーでさえ、これらの多様な拍子やリズム体系を持 つ音楽に乗って舞うことは決して容易ではないことが わかった。そこで、日本在住のベリーダンサーらはカ ルシュラマの特殊なリズムを「うに・うに・うに・い くら」と言葉を入れて拍子を取れるようにすることを 知った。このように難しいリズムに簡単な言葉を当て はめて体得できるようにすれば、子どもの興味を引き 出しつつ、日頃体験しにくい拍子やリズムを経験する のに適しているのでないかと考えた1)。 そこで本稿では、勤務するオルタナティブスクール、 箕面こどもの森学園での実践から、トルコ音楽の鑑賞 活動を出発点とし、学習者がその9拍子のリズムを習 得し、自分の新たな表現として活用するプロセスにつ いて考察することにしたい。 2. 箕面こどもの森学園について 大阪府箕面市にある認定NPO法人箕面こどもの森 学園は、フレネ教育をもとにしたオルタナティブス クールである。1999年に辻正矩らにより「大阪に新 しい学校を創る会」が立ち上げられ、2004年にNPO 法人「わくわく子ども学校」を経て、2009年に現在 の箕面こどもの森学園となった。  筆者が音楽講師として勤務するこの学園は、学習指 導要領に則った指導はしておらず、フレネ教育を参考 にした自由な教育を行っている。辻らは、箕面こども の森学園について、特に以下のことを大切にしている と述べている。  ① 子どもの主体性や自立心を育むこと。  ②  教科書中心の一斉授業ではなく、個別学習と協 働学習によって、一人ひとりの子どものニーズに

大北 沙織

Saori OHKITA

箕面こどもの森学園・大阪教育福祉専門学校

林  睦

Mutsumi HAYASHI

滋賀大学教育学部

―オルタナティブスクールでの実践から―

Learning Process of New Rhythms from World Musics:

A Case Study at an Alternative Elementary School

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るが、旋法、拍子、音階についての先行研究をもとに 簡単に説明したい。  松田(1998)によると、トルコを含めた中東音楽 の特徴は、マカームと呼ばれるアラブ音楽特有の旋法 が使われていることである。マカームはジンスと呼ば れるトリコルドやテトラコルドといった最小の旋法を 組み合わせて作る旋法のことを指す。その組み合わせ は150種類以上と言われる。松本(2006)は、トルコ の音楽で使われる拍子について、音楽と関係の深い民 俗舞踊の拍子と脚部動作の関係から分析した結果、2、 5、7、9拍子が使われ、もっとも多く使われている のが2拍子、次に多いのがアクサックリズムと呼ばれ る独特の9拍子であると述べている。トルコ音楽の研 究者アドゥルラッハマン3)は、トルコや中東、地中海 の音楽について概観し、トルコを含めた中東の音楽に は、中立音程というものが存在し、例えば、CからD に至る間に楽譜には表せない幾つかの音程が存在する と述べた。そのことをふまえ、トルコ音楽のリズムに ついて、あまりにも多様なため、一般的な理論化や体 系化ができるものではないと述べている。 3.1 民俗舞踊 カルシュラマ  カルシュラマは、トルコの民俗舞踊の一種である。 その特徴は、踊るときには必ずハンカチーフを使い、 2名以上で踊る。カルシュラマとは、トルコ語で迎え 入れるという意味である。この言葉の所以通り、オス マン帝国時代に花嫁を迎え入れた時の儀式やお祝いの 席で踊られるようになったことがはじまりと言われて いる。この踊りは、トルコ北部、旧オスマン帝国領の ペルシャからバルカン地方と広い地域で踊り継がれて いる。現在でも、お祭りや結婚式などでカルシュラマ の独特の拍子やリズムに合わせて踊られる。 3.2 カルシュラマのリズム  トルコの音楽は、2拍子や3拍子のみではなく、多 種多様な拍子が音楽や舞踊に用いられ、音楽や舞踊の 構造に密接に関わっている。カルシュラマの音楽及び 踊りは、9拍子によるものである。この9拍子は、ト ルコ語でアクサックと呼ばれるもので、躓くという意 味である。2拍子と3拍子が混合するためどこかで躓 いたり、間延びしたりする感じからそう呼ばれており、 カルシュラマの9拍子は、以下の【譜例1】の「2・2・ 2・3」のようにとられる。 【譜例1】カルシュラマのリズム 4 リズム習得のプロセスについて  今回明らかにしたいのは、学習者が世界の音楽の鑑 賞を出発点として、新たなリズムを習得し、その音楽 合った学習を支援すること2)。  筆者は、2013年よりこの学校で音楽講師として小・ 中学生の音楽の時間を担当している。この学園では、 一般的な学校での音楽の授業とは異なる位置づけとな るため、まずここで説明しておきたい。 2.1 箕面こどもの森学園における音楽の時間  箕面こどもの森学園は現在、小学部と中学部からな る。この学校では子どもの主体性が重要視されており、 一人ひとりの子どもが毎週末ごとに翌週の時間割を組 み立てている。学習の内容としては、「ことば・かず」 と呼ばれる国語や算数などの基本学習を自分のペース ですすめる時間、自分の好きなことを追究できるプロ ジェクトの時間といった個人ベースで進められる学習 のほかに、学校のきまりや活動についてみんなで議論 する時間、複数の子どもたちで行う協働学習がある。 各々の成果を発表するため、数か月毎に研究発表会が 行われている。筆者が担当する音楽は、協働学習の選 択科目という位置づけである。一般的な小学校や中学 校とは違い、音楽に興味がある子どものみが選択する ことができる。 2015年度は、小学校低学年対象の音楽A、小学校 高学年対象の音楽B、中学部音楽と3つのクラスが開 講され、筆者は音楽B及び中学部音楽を担当している。 ここでは学習内容は決まっておらず、教科書もない。 また指導者主体で学習内容を決めるのではなく、各学 期のはじめに児童・生徒が教材曲、合奏及び合唱など 興味のある活動について話し合いにより決めたこと を音楽の時間に行う。これまで他校で音楽専科として 一般的な音楽の授業を行ってきた筆者は、児童・生徒 が歌いたい、演奏したい音楽を話し合うと必ずポピュ ラー音楽になり、個々にピアノを一人で弾きたいなど のニーズが多くあったため、はじめは戸惑った。しか し選択音楽は協働的な学習の位置づけであるため、友 だちの音色を聴く、合わせていくという能力を育んで いくことを目標に音楽の時間を運営することにした。 そこで、話し合いで決まった教材曲とは別に、子ども の育ちや実態をみながら、音楽鑑賞時間の確保やリズ ム創作など、多様な実践を行うことにした。 本稿では、リズム創作活動のひとつとしてトルコの 民俗舞踊カルシュラマの学習活動を取り上げ、新たな リズム習得を自分の表現につなげるプロセスについて 探る。 3.トルコの音楽  トルコ固有の音楽と認識されている音楽は、オスマ ン宮廷で培われた芸術音楽と、同時代に存在した芸術 音楽以外からなる。トルコの音楽全般およびその音楽 の特徴については、ここでは網羅できないほど複雑な 性格をもつものであるため、安易に述べることは避け

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経験をもとに創作活動などで表現することができるよ うになるプロセスである。そこで、カルシュラマの拍 子とリズムを使用し、学習者がこのリズムを習得し表 現できるようになるプロセスを、以下の①~③の段階 に分け観察することにした。なお、本実践でカルシュ ラマの拍子を感じ取るために、トルコ及びバルカン地 方で昔から親しまれている《Rompi Rompi》4)とい う曲を使用する。 ①教材曲を鑑賞し、新たな音楽表現を知る。 ②新たな音楽表現に自分たちの方法で親しむ。 ③ 習得した音楽表現を創作活動などで、自分ものとし て表現する。  ①では、カルシュラマの9拍子のリズムと拍子を感 じ取るため、《Rompi Rompi》というカルシュラマ でよく使われる音楽を教材として使用する。トルコの 音楽であることを学習者に伝え、躓くような9拍子の 特徴を感じ取る。②では、「2.2.2.3」でとるカル シュラマの9拍子をベリーダンサーの拍子の習得法を 援用し、自分たちの言葉に置き換えて親しみ、身体表 現を行う。③ではこの9拍子を、創作活動において自 分の表現として用いる。この3つのプロセスを経て、 学習者たちがカルシュラマの9拍子を習得すると想定 し、実践を行うことにした。箕面こどもの森学園では 週に一回45分の音楽の時間を確保しているため、各回 15分程ずつカルシュラマのリズムを使用した活動を 行うことにした。この活動の積み重ねにより、学習者 が新たなリズムをどのように習得し表現できるように なるのかを探ることにした。 実施内容について ○実施日:平成27年9月17日、9月24日、10月1日、      10月22日、11月11日(各15分~ 20分) ○授業者:大北 沙織 ○場 所:箕面こどもの森学園 ホール ○対 象:小学4年生~小学6年生 【資料1】学習者の概略 ○具体的な学習活動について ・第1回目 平成27年9月17日 《Rompi Rompi》を鑑賞し、カルシュラマの9拍 子を知る。 ・第2回目 平成27年9月24日 カルシュラマの9拍子を、自分たちが考えた言葉を 当てはめて親しむ。 ・第3回目 平成27年10月1日 自分たちの言葉でカルシュラマの9拍子をつなげて 身体表現を行う。 ・第4回目 平成27年10月22日 カルシュラマの9拍子に自分たちの好きなベルの音 を選んで創作活動を行う。 ・第5回 平成27年11月11日 カルシュラマの9拍子に乗せて、オノマトペによる 創作活動を行う。 ○ 分析及び観察方法:学習者の発言記録及び創作活動 時のビデオ記録を行う。学習者が5回の学習活動の 中で、「2・2・2・3」によるカルシュラマの拍 子とリズムの習得具合を分析する。 4.1 カルシュラマは何拍子だろう?  まず《Rompi Rompi》を1回鑑賞し、次にトルコ の曲であることを伝え、2回目の鑑賞をした。1回目 は、「この曲が何拍子か考えて手拍子などでカウント をとってみよう」という課題を与えた。その課題につ いての反応は以下のとおりである。 【資料2】学習者の様子 学習者A(5年生)女子 学習者B(5年生)女子 学習者C(5年生)女子 本年度より、音楽の時間 を選択している。これま で公立の学校で音楽の授 業を受けてきた。 筆者担当の音楽の時間を 本 年 度 よ り 選 択 し て い る。ミュージカル出演経 験が多数あり、音楽的能 力が高い。 筆者担当の音楽の時間を 選択して2年目になる。 鑑賞能力及び歌唱能力が 高まってきている。 学習者D(6年生)女子 学習者E(6年生)男子 筆者担当の音楽の時間を 選択し、2年目になる。 音 楽 づ く り を 意 欲 的 に 行っている。 本年度より音楽の時間を 選択している。タップダ ンスを習っており、リズ ムの習得が早い。思春期 を迎え発言等に関しては 消極的である。 学習者A(5年生)女子 学習者B(5年生)女子 学習者C(5年生)女子 学習者D(6年生)女子 音楽を聴いて、戸惑いの 表情を見せている。 リズムを感じ取ろうと、 音楽に合わせて色々なリ ズムを試みている。 強 拍 を た た こ う と す る が、なかなか合わず苦戦 している様子を見せる。 強 拍 を た た こ う と す る が、なかなか合わず苦戦 している様子を見せる。

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 この場面で、学習者B及び学習者Eは、拍子やリズ ムを感じ取ろうと色々積極的に試みている様子を見せ た。その様子を見ながら学習者A,C、Dも拍子を探 ろうとしている様子を見せていた。しかしながら、「2・ 2・2・3」という拍子の音楽に触れたことのない学 習者らは、正解が見つからず探りながら音楽を聴取し ている様子であった。学習者Eは、周期的な強拍を正 確にとらえていた。しかしながら、9拍目の不自然さ を感じているような表情を浮かべていた。2度目の鑑 賞の前に、「2.2.2.3」の形の9拍子であると伝え た。学習者BとEからは困惑の表情が消え、2度目の 鑑賞時には「2.2.2.3」のリズムを容易く叩きな がら音楽を聴取していた。学習者A,C、Dについて は、このリズムを取ろうと何度も試みていた。  【資料3】の「拍子を知って聴いたら、知らない時 とはどう違うか」と質問した際のやり取りの中で、新 しい拍子やリズムに触れた学習者の率直な感想が抽出 できたと思われる。学習者Bの発言(太字下線の箇所) は、新たな拍子を知り、合わせて拍子をとれた経験に より、音楽が楽しめたと述べている。なお、この時点 でカルシュラマのリズムと拍子をとらえていたのは学 習者Bと学習者Eのみである。 【資料3】拍子に関する学習者とのやりとり 4.2 カルシュラマのリズムによる言葉遊び  2回目の実践では、カルシュラマの拍子とリズムの 習得状態をはかるため、言葉遊びを行った後、《Rompi Rompi》の鑑賞を行いながらリズム打ちを行うこと にした。  1回目の実践では、多くの学習者が拍子をとらえて リズムを打つことに難しい様子を見せた。一般的に考 えても、この特殊なリズムを打つことは容易ではない と思われる。この拍子で踊る機会が少なくないベリー ダンサーは、「うに・うに・うに・いくら」のように 言葉に置き換え、特殊な拍子及びリズムに慣れる。そ の方法を援用することで、前時に比べこの拍子とリズ ムの理解を高める学習者が増えると仮定した。  筆者が「うに・うに・うに・いくら」と例を見せ、 学習者に、自分の言葉で考えるよう課題を与えたとこ ろ、すぐにホワイトボード一杯に言葉が埋め尽くされ た【写真1】。ホワイトボードに書いた「2・2・2・ 3」の言葉を《Rompi Rompi》を流しながら、拍子 に合わせて一人ずつ順に言葉をつなげた。学習者Bと Eは引き続き拍子とリズムをとらえていた。学習者C は、体全体で拍子をとらえながら言葉をつなげること が出来ていた。学習者A、学習者Dは、9拍目から1 拍目に向かう際に間があったり、拍子に乗り遅れてし まったりと感覚を掴むのが難しい様子を見せた。学習 者Cが体全体で拍子をとらえている様子を見ながら、 共に何度も言葉をつなげていくことで、拍子に合う場 面も見られはじめたことから、前時に比べ理解は増し ていると思われる。また、前時に比べ困惑する表情が 見られることは少なくなった。 【写真1】「2・2・2・3」の言葉によるリズム 【写真2】カルシュラマの言葉遊びの様子 学習者E(6年生)男子 大北:《Rompi Rompi》鑑賞後 最初何拍子だろうって悩んだ? 学習者E:別に・・・。 学習者C:なんか難しかった。 大北:(学習者Aに)どうだった? 学習者A:分からへんかった。 学習者D:私も。 学習者B:これかなってやってみるけど、なんか違 うみたいって思った。 大北:私もね、始めて聴いたとき全然分からなかっ たよ。拍子が分かったら 2 度目聴いたときど うだった? 学習者B:拍子が分かったら、音楽にのれるから、 聴いてて楽しかった。 学習者C:楽しくなった。でも、やってみたら難し かった。 (※下線太字は筆者による) 1拍 目 の 強 拍 を 感 じ 取 り、太ももを軽く叩きな がら4拍子として音楽を 感じ取っているも、これ で正しいのかという表情 を見せる。

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者AとDが9拍目で止まってしまったり、遅れたりし ていたが、学習者Bと学習者Cが「もも・もも・もも・ ぶどう」と拍子を取り、「ぶどうの後、すぐに 4 4 4 ももだよ。」 と、9拍目から1拍目に向かう特徴をとらえた発言を し、友だちを導いていた。身体表現や言葉であれば、 安易にリズムを打つことができていたが、楽器となる と少々難しい様子を見せていた、4小節分を3回ほど 練習した後、学習者Bと学習者Cが、9拍目の「ぶど うの「う」に音がないほうがかっこいい」とつぶやい た。筆者に「「う」の部分を音じゃなくて「う」と言っ てほしい」と提案してきた。【資料5】 【資料5】学習者の創作① ①レ ミ シ ド レ ド シ レ ド  ↓(4小節分を3度練習した後)   ②レ ミ シ ド レ ド シ レ ―  【資料5】にある9拍目にドの音を含む①から、9 拍目に音を入れない②の創作となり、学習者はカル シュラマの拍子にのって4小節分を演奏できた。最終 的に学習者が考えた9拍目に音を入れないと考えた背 景は、譜例2にある前時の身体表現による既習効果で あると推測する。その際に、躓く感じを学習者間で手 をつなぎながら行ったことで、ベルの演奏による創作 でも拍子を感じ取ることができたと思われる。 4.5 カルシュラマのリズムを使った創作活動②  学習者がカルシュラマの拍子やリズムを自分の表現 として表現できはじめている様子をもとに、新たな創 作活動をすることにした。5回目は、カルシュラマの 9拍子に乗せて、オノマトペで料理や物など、何かを 作る過程を表現することにした。  この学校では、毎学期ごとにテーマ学習と呼ばれる 教科があり、この時期は「食」がテーマであった。学 習者と話し合った結果、ハンバーグを作る過程をオノ マトペで表わそうということになった。学習者Bと学 習者Cを中心に、ハンバーグを作る過程を4つに分け オノマトペを考え出した。学習者は、「2・2・2・3」 のリズムにオノマトペを入れるために、最後の7・8・ 9拍目の言葉選びに苦戦していた。全員で相談しなが ら手で拍子を叩いたり、頭でリズムを刻みながら考え たりする様子を見せた。学習者Eは言葉選びに参加し た後、「2.2.2.3」のリズムを机で叩き全体をまと めることになった。始めは、以下の①から④を4小節 分ずつ順番につなげていく方法を筆者が提案した。そ の後、学習者Cが、初めの人に続いて声を重ねていく のはどうかと提案した。学習者Bは、全員での始め方 と終わり方について考えた。学習者たちは「2・2・ 2・3」に合わせて初めと終わりの言葉を練習し始め た。それをもとに、学習者Eの机で取るリズムに合わ せ声を重ねた。その際に、学習者が創作したものが、【資 4.3 カルシュラマのリズムによる言葉遊びと身体表現  1、2回目で学習者がカルシュラマの拍子及びリズ ムについておおよそ理解したと、学習の様子から推測 した。それに伴い《Rompi Rompi》の音楽から離れ、 カルシュラマの拍子及びリズムの手法を自分のものと して表現する段階に移ることにした。  2時間目で学習者が考えた言葉リズムを使い、次は 身体表現により習得度を高めることにした。この時間 では、譜例2のアクセントを感じ取れるように、2回 目の言葉あそびをつなげて、9拍子を感じながら全員 で輪になり●を右足、○を左足で踏むという身体表現 を行った。 【譜例2】カルシュラマのアクセント  学習者A、学習者B、学習者C、学習者Dは、はじ め足踏みをしていた。全員で手をつなぎ、まわりなが らカルシュラマの拍子とリズムで遊ぼうと提案する と、まわりながら拍子をとらえ、9拍目で躓くような 感覚を楽しんでいるような様子が見られた。前回はリ ズムに乗ることが難しい様子を見せていた学習者A、 学習者Dも手拍子や言葉とリズムだけよりも、自分た ちで考えた言葉遊びをしながら友だちと手をつないで 身体表現を行うと、より拍子を感じ取ることができて いた。学習者Eは、机でリズムを叩き参加していた。 この地点では、「2・2・2・3」のリズムを全員が 拍子にのってとることができていた。 4.4 カルシュラマのリズムを使った創作活動①  学習者全員が9拍子に合わせて「2.2.2.3」の リズムが取れるようになってきたことを確認し、4回 目では創作活動を行うことにした。好きなハンドベル を取ってくるように指示した。学習者Eが休みであっ たため、以下の4つの音による創作となった。 【資料4】学習者それぞれの担当音  次に、「2・2・2・3」の言葉を考えるよう指示 すると、「もも・もも・もも・ぶどう」と学習者Dが ホワイトボードに書き始めた。その後、「言葉に好き な音を当てはめて遊んでみよう」と指示をすると、学 習者Bと学習者Cを中心に色々な順番を試した。その 後、「もも・もも・もも・ぶどう」の文字の下に「オ レンジ(レ)黄色(ミ)・紫(シ)赤(ド)・オレンジ (レ)赤(ド)・紫(シ)オレンジ(レ)赤(ド)」と いう順番でそれぞれの音を合わせた。はじめは、学習 学習者A(5年生)女子 オレンジ(レ) 学習者B(5年生)女子 紫(シ) 学習者C(5年生)女子 黄色(ミ) 学習者D(6年生)女子 赤(ド)

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料6】である。  学習者はこの創作の際、頭で拍子を取りながら共に 取り組んでいた。学習者Bは、「声が重なったほうが 迫力ある」、学習者Cは「だんだん大きくなるからいい」 と満足そうにしていた。学習者Aと学習者Dも、自分 のオノマトペを発するタイミングをしっかり感じ拍子 をとらえることができていた。この創作の後、学習者 は口々に「楽しい」と言い、もっと大人数でやってみ たいという意見も出た。 【資料6】オノマトペで遊ぼう 声の重ね方:◇の後、①の2小節に続いて②,③、 ④の過程を2小節分ずつずらして重ねていく。最 後に◆で終わる。 (全員で、2・2・2・3のリズムで) ◇ハン  バー グ  作ろう   ハン  バー グ  作ろう◇ ①(学習者A) コン・コン・コン・コココ ②(学習者D) ネチャ・ネチャ・ネチャ・ネチャチャ ③(学習者B) コロ・コロ・コロ・コロロ ④(学習者C) ジュ・ジュ・ジュ・ジュジュジュ (全員で、2・2・2・3のリズムで) ◆ハン  バー グ  たべよ   ハン  バー グ  たべよ◆  1回目の創作活動と大きく違った点は、学習者の主 体性がより強まり、この9拍子を自分の表現として使 えるようになってきたことである。この点について具 体的な動きとして、学習者Cのだんだん声を重ねると いう工夫や、学習者Bのはじめとおわりの提案など、 学習者それぞれが互いに息づかいを感じながら声を重 ねていく様子が挙げられる。このことからも、自分た ちなりの表現で世界の音楽から習得した表現を使い創 作を行っていたと言えるだろう。 5 実践の考察  カルシュラマの代表的な曲のひとつである《Rompi Rompi》の鑑賞を出発点に、言葉遊び、身体表現、ふ たつの創作活動というプロセスを経て、学習者はこの 拍子とリズムを十分に習得し、最終的には自分たちの 表現として創作活動をすることができた。各回15分~ 20分の実践であるにかかわらず、学習者は積極的に学 習活動に取り組むことで、カルシュラマの拍子とリズ ムの特徴をとらえていた。このような成果をあげられ たのは、以下の4つの点によるところが大きいと思わ れる。 ① 世界の音楽への複合的アプローチによる効果 ② ベリーダンサーの拍子とリズム習得法の援用 ③ 前時の内容を生かすことができる活動の設定 ④ 創作活動という主体的な表現ができる活動の設定  新たな表現の習得の段階について、《Rompi Rom-pi》の鑑賞後、言葉遊びを行った場面から、拍子とリ ズムの理解が深まった。その後、言葉遊びを用いなが ら身体表現を行いはじめてから、学習者の拍子とリズ ムの習得が高まっていった。このプロセスと学習者の 様子をまとめたものが【図1】である。 【図1】段階別学習プロセス 【図1】にあるように、学習者は鑑賞の時点でカルシュ ラマのリズムに疑問や難しさを感じた。次に言葉遊び によってリズムを理解したことが、その後の主体的な 活動に大きく関係したと考えられる。このことからも、 世界の音楽から新たな表現を獲得するには、学習者の 興味を高め理解を促す活動の有無が、新たな表現の習 得及びその後の音楽創作による表現を左右するといっ ても過言ではないだろう。今回の実践では、その理解 を促す活動がベリーダンサーの拍子とリズムの習得法 を用いた場面であった。(【図1】の太字部分の段階)  新たな表現について分かりやすい方法により理解し た学習者は、自然と「2・2・2・3」による言葉を 自分たちで考えることができた。創作の場面では、身 体表現によってアクセントを感じ取った経験により、 9拍目を無音にした方がよいことを学習者自ら気づく ことができた。2回目の創作活動では習得した表現方 法を使い、強弱や全体の構成を考えるまでに至った。 これらの全5回の実践中の学習者の様子から、世界の 音楽の学習を出発点とした新たな表現の習得の可能性 は十分にあると言える。

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6 今後の展望  学習者が新たな音楽に触れ、ふたつの創作活動にお いて、その表現法を自分のものとして表現する子ども の姿を見て、世界の音楽の学習を新たな音楽表現につ なげる可能性を見出すことができた。今回の実践を 行った学校は、少人数であることや選択制の音楽の時 間であることなどからも、学校のカリキュラムや学習 者の状態は一般的な学校と異なる。しかし、世界の音 楽の学習から新たな表現を習得するということは、オ ルタナディブスクールの子どもたちだけでなく、一般 的な学校の子どもの学習にも応用できるであろう。ま たトルコだけでなく他の国の音楽の特徴を取り上げ て、新たな音楽表現の幅を広げることも可能であろう。  世界の音楽の学習活動を音楽や文化を学習するだけ にとどまらず、音楽そのものの本質的な要素に着目し、 さらにその要素を使い自分の表現につなげることで、 子どもの新たな音楽表現の幅を広げることができるこ とが分かった。指導者が西洋音楽以外の多様な表現の 世界に関心を持ち、その世界に触れ、さらに自分の表 現に取り入れることで、学習者の音楽的視野もまた広 がると考えられる。この方法は「五線が読めないから 音楽が苦手」という学習者を救う手立てにもなりうる だろう。  今後も世界の音楽の学習活動について、子どもの音 楽的視野や表現の広がりをめざして、ざまざまな国の 音楽を研究し、教材開発に生かしたいと考えている。 【謝辞】本稿執筆にあたり、ベリーダンサーのHarica 先生には、カルシュラマのステップのレクチャー及び 音源のこと等でお世話になりました。大阪大学の飯島 一博先生には貴重なトルコ音楽の資料を提供していた だきました。そして箕面こどもの森学園の関係者、そ の他多数の方にご協力いただきましたことをここにお 礼申し上げます。 【注】 1)「うに・うに・うに・いくら」の方法論を確立し たダンサーについては不明であるが、日本在住の多く のベリーダンサーの間ではこの言い回しが伝えられて いる。 2)辻 正矩 他 (2013)『こんな学校あったらいい な‐小さな学校の大きな挑戦』築地書店pp.8-22をも とに筆者がまとめたもの。 3)アドゥルラッハマン・ギュルベヤスは、トルコ音 楽奏者であり研究者である。「トルコ音楽とそのリズ ムについて」という内容の講演において、トルコ音 楽の複雑さについて述べている。(2014年12月28日  於:大阪MAFGA)  4)《Rompi Rompi》は、カルシュラマを踊る際に よく使われる音楽のひとつである。ベリーダンスでも よく使われるが、ロマの9拍子としばしば混合され、 そのステップで踊られることもある。正式には、民俗 舞踊であるカルシュラマの音楽である。 【引用・参考文献】 大北沙織 (2015)「タイの音楽『ロイクラトン』の教 材化-歌唱とラムウォンの踊りによる授業実践を中心 に-」『日本音楽表現学』vol.13 pp.41–50   岡崎美夏・斉藤完 (2013)「日本における『トルコ音 楽』需要の一側面について 音楽科教育が伝える『ト ルコ行進曲』」『山口学芸大学研究論叢』第3部 pp.89 -107 サラ-フ・アル・マハディ著 松田嘉子訳 (1998)『ア ラブ音楽 (La musique arabe)』パストラル出版 島崎篤子・加藤冨美子 (1999)『授業者のための日本 音楽世界の音楽』音楽之友社 松本菜穂子(2006)「トルコ共和国の民俗舞踊における 解釈域-拍子と脚部動作の関係を例として-」『日本 中東学会年報』Vol.21-2日本中東学会 pp.141-168 【参考URL】 オリエンタルサラーイ(2015年11月13日閲覧) http://www.oryantalsaray.com/?mode=f7 トルコ共和国大使館  http://www.tourismturkey.jp/index.html (2015年11月13日閲覧)

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