谷口 伸一
(経済学部 教授)
彦根版ICタグの図柄(上)と内部構造
しがだい 21
しがだい 21
産 学 官 連 携 と 共 同 研 究 の ス ス メ
ここ数年は産学官連携を中心とした研究プロジェクトを推進する中でデー
タベースの高度応用に関する研究を行っている。共同研究が増えることを
願って、以下の三つのプロジェクトを取り上げて概要を紹介する。
1.滋賀県研究者情報データベース(愛称ちえナビ)
本研究は滋賀県(商工観光労働部)から委託され、㈶滋賀総合研究所と共
同で遂行している。2003年度1,000万円で開発を開始し、以後、維持費が計
上されている。
本システムは、以下のような特長を持つため、これまでに他の自治体や各
種団体によって作成されたシステムより優れた機能と性能を誇っている。
① 各大学が公式提供する研究者Web情報を検索ロボットで自動収集し、次
の②の方式でデータベース化している。本方式により研究者の網羅率を
ほぼ100%とし、そのうえ定期的な更新により鮮度の高い情報提供を可
能にしている。
② 各研究者のWeb情報は形態素解析とNグラム索引法により索引語に展開され、tf-idf法による重み計算
をして索引語データベースとして管理している。そして、ベクトル空間モデルによる検索質問文と研
究者情報の類似度計算をして、適合度順による表示を実現している。
③ 類語辞書(シソーラス辞書)を搭載し、検索キーワードの概念の拡張や表記の揺れを吸収して漏れの
少ない検索を可能にしている。例:バイオ→生命工学、バイオテクノロジーも検索対象。
本システムは、産学官連携推進のために公設機関のコーディネータが大学の研究シーズと企業のニーズ
をマッチングするために企画されたものだが、金融や企業からの利用希望が多く、2005年3月1日から機
能を絞って公開している
一般に情報検索システムの評価項目である再現率と適合率はトレードオフの関係にあるが、類語辞書を
利用したことなどが効を奏し、独自に作成したテストコレクションによるシステム評価では、両方が同時
に高性能を示した。
2.データマイニング
昨年度までは和洋菓子の製造販売企業の販売データに基づいて、大量のデータから知識を発掘するデー
タマイニングを試みてきた。この分野の研究では、実際のデータを入手することが難しく、そのことがデー
タマイニングの応用研究の障害となっている。一方、中堅中小企業が独自にデータマイニングシステムを
運用することはコスト、スキルなどの点で難しい。そこで、研究成果を当該企業へフィードバックするこ
とで、双方がメリットを享受するとともにデータの扱い方に万全を期すことで実施することができた。そ
の結果、相関ルールのリピート率を考案し、それを付与した新たなアルゴリズムを提案することができ、
ルールの有効性判断を容易にした。
この実績がベースとなり、本年度からは産業共同研究センターの共同研究の位置づけで、輸入洋食器販
売企業と実施することになった。本研究形式をコラボレーション・ラボと命名して、マーケッティング、
数理解析、情報処理の分野の三名が当該企業とディスカッションしながら研究に当たっている。
3.ユビキタス学習型観光システム
従来の観光は複数の観光ポイントを弱い関連づけで行っているものと考え
る。それに対してターゲットとするアクティブシニア層などは個々の視点で
強い関連づけができる観光スタイルを求めはじめていると考える。そこで、
その観光を支援するために、「いつでも、どこでも」観光ポイントの情報が
提供できるユビキタス学習型観光システムの研究開発を行っている。感動、
発見、そしてそれらの関連づけによる文脈化がキーワードになると考えてい
る。本年度は国土交通省の「都市観光の推進による地域作りの取り組み」と
して全国5都市の一つに選定され支援を受けることができたこともあり、これまでの携帯電話とQRコー
ドによるテーマ性のある観光ナビゲーションに加えて、NTTドコモ関西とびわ湖放送と共同して、英語、
中国語、ハングル語による外国人向け観光コンテンツの配信実験、また、凸版印刷㈱とは写真のような
ICタグを作成し、観光地のICタグリーダに観光客が所持するICタグをかざすことで観光情報を携帯メー
ルで受信する実験も行った。一方、筆者が3年前に構想したICタグリーダ付き携帯電話で観光ポイント
のICタグを読み取る実験が、総務省により彦根市で行われたが、筆者もアドバイザーとして参画した。
これらの活動は滋賀大学の名とともに新聞、TVニュース等に多数取り上げられ広報に寄与できたので
はないだろうか。