* 立命館大学文学部
* College of Letters, Ritsumeikan University 地学雑誌 Journal of Geography 118(4)646—664 2009
動態的な空間的マイクロシミュレーションモデルを
用いた社会シミュレーション
―京町家の取壊し分析を事例に
―花
岡
和
聖
*Social Simulation Using a Dynamic Spatial Microsimulation Model: Analysis of Kyomachiya(Traditional Wooden Townhouse)
Demolitions
Kazumasa HANAOKA*
Abstract
The purpose of this article is to evaluate a social simulation using a dynamic spatial microsimulation model for predicting demolitions of Kyomachiya, which are traditional wooden townhouses and core elements of the historical landscape of Kyoto City, Japan. This model is also applied to estimate the number of Kyomachiya surviving when preservation policies are introduced. The results are summarized as follows:
(a)Spatially disaggregated synthetic microdata of Kyomachiya residents were constructed by combining multiple existing datasets in a manner whereby the sums of synthetic microdata agree with those of census datasets. Using synthetic microdata allows us to analyze detailed household demographics and the process of Kyomachiya demolitions at small area and individual levels.
(b)Decision-making units such as individuals, households, and Kyomachiya can be modeled in the same way that they exist, behave, and interact with each other in the real world using object-oriented modeling. Another merit is that re-using and extending classes are possible due to object-oriented architecture.
(c)The results of simulations show that, during the next 15 years, only 67.3% of Kyomachiya will be preserved and the proportion of the population aged 60 and over will increase from 43.9% to 51.6%. On the other hand, when a comprehensive preservation policy is implemented, those numbers are reduced to 82.5% and 49.2%, respectively. In this manner, a dynamic spatial microsimulation model is useful for understanding the process and cause-and-effect of Kyomachiya demolitions under the status quo. Furthermore, what-if simulations on the basis of Kyomachiya preservation policies help to evaluate which policy is most effective for reducing the number of demolitions.
Key words: spatial microsimulation model, Kyomachiya(traditional wooden townhouse), object-oriented, simulated annealing, Kyoto City
キーワード: 空間的マイクロシミュレーションモデル,京町家,オブジェクト指向,焼きなまし法,
I.序 論 近年,社会科学分野において,シミュレーショ ンを用いた分析が行われるようになってきた。シ ミュレーションとは,現実世界を模したモデルを 作成し,仮想実験を行うことである(中谷・花岡, 2008)。シミュレーションは,解析的な手法で解 くことが困難な,動態的で非線形の関連性がみら れる社会経済現象を理解する上で有効な手段とさ れる(Gilbert and Troitzsch, 1999)。
さらに,大規模なミクロデータの整備や計算機 の処理能力の向上,オブジェクト指向言語の登場 によって,個人や世帯,企業等の意思決定主体に 基づく非集計レベルでのシミュレーションモデル の構築が可能になりつつある。その一つに空間的 マイクロシミュレーションモデル(以下,spa-tial microsimulation model: 空 間 的 MSM) が あり,これまでに詳細な空間レベルでの地域的差 異の解明に利用されてきた。 空間的 MSM の特色は,複数のマクロな統計資 料や地理情報,入手可能なミクロデータを駆使し て,個人属性と空間属性の両面で詳細な属性を有 し た 合 成 ミ ク ロ デ ー タ(synthetic microdata) を生成できる点,ミクロデータをベースとするこ とで,個人や世帯単位で政策がもたらす結果の差 異を明らかにできる点にある(Ballas and Clarke, 2001)。これによって,大規模なミクロデータが 得られない場合においても,非集計レベルでのシ ミュレーションモデルの構築が可能になり,その 結果として,多様な社会経済現象を対象にした分 析が可能になる。 そこで,本稿は,1990 年代後半以降に保全対 象と認識されつつあるが,取壊しが進む京町家を 事例に,動態的な空間的 MSM を構築し,その残 存軒数の時系列的変化の予測と京町家の保全政策 の評価を行う。これを通じて,社会経済現象のモ デル化と政策分析ツールとして,動態的な空間的 MSMを用いた社会シミュレーションの有効性を 評価することを研究目的とする。なお,本稿の章 節構成は以下の通りである。まず II 章で,空間 的 MSM の既往研究を整理する。次に III 章で, 京町家の取壊しの背景をまとめ,空間的 MSM の 利点について説明する。IV 章で,空間的 MSM の構成と構築手順を説明する。具体的には,京町 家の居住世帯のミクロデータの生成方法と京町家 の取壊しの動態モデルについて述べる。V 章で, 京都市西陣地区を対象に,京町家の保全政策のシ ナリオに即して空間的 MSM を実行し,2004 年 から 15 年後までの京町家の取壊しを予測する。 これによって,中期的な視点で,京町家の保全政 策の有効性を評価する。VI 章では,得られた知 見と今後の課題を整理し結論とする。 II.空間的マイクロシミュレーションモデル 空間的 MSM は,1950 年代に経済学を中心に 展開されてきたマイクロシミュレーションモデル 研究で看過されてきた空間次元をモデルに組み込 むことで,構築されてきた(Clarke, 1996)。た だし,空間的 MSM は,同時期の空間的拡散研究 や時間地理学にみられる非集計モデルとも類似す る点も多く,そうした地理学的研究の中での位置 付けも可能である(中谷・花岡, 2008)。 地理学を中心に,空間的 MSM は,地域政策の 分野で主に活用されてきた。たとえば,水道水の 需要予測(Williamson et al., 1996)や高齢者の 医 療 需 要 予 測(Williamson, 1996), 通 勤 行 動 (Wegener and Spiekermann, 1996),工場移転に よる労働市場の変化(Ballas and Clarke, 2000, 2001),購買行動(Hanaoka and Clarke, 2007; Nakaya et al., 2007)が事例に挙げられる。これ らの空間的 MSM は,いずれも静態的なモデルに 分類され,一時点での人口・世帯分布の予測と政 策評価が分析対象である。 一方,時間次元を組み込んだ動態的な空間的 MSMの構築事例も散見される。先駆的な事例と して,林・富田(1988)は,名古屋都市圏の 14 地区を対象に,世帯動態による住宅需要の変化と 通勤通学流動を推定する空間的 MSM を構築し た。近年,動態的な事例が複数みられ,吉田ほか (2002)と五十嵐ほか(2005)が,空間的 MSM を用いて,仙台市を対象に,町丁目別の人口分布 を推定し,郊外住宅地での高齢化率の地域差を分
析した。また Ballas et al.(2005)は,アイルラ ンドを対象として動態的な空間的 MSM である SMILEを構築し,市区町村レベルでの地域人口 推計を行った。さらに,スウェーデンでは,大規 模かつ動態的な空間的 MSM である SVERIGE が構築された(Holm et al., 2002)。このモデル は,国勢調査から得られる複数年の全国民のミク ロ デ ー タ を 用 い て, 移 民 政 策(Rephann and Holm, 2004)や工場閉鎖(Rephann et al., 2005) による人口分布の時空間変化を 100 m メッシュ単 位で捕捉できる。こうした研究成果によって,動 態的な空間的 MSM の予測精度が検証されてきた。 以上のように,これまでに動態的な空間的 MSM研究が行われてきたが,その研究蓄積はい まだ不十分である。また,従来の空間的 MSM 研 究では,個人や世帯の人口学的,社会経済的属性 の推定が主目的であり,都市や地域を構成する個 人や世帯以外の主体を考慮した空間的 MSM の構 築事例は,今のところみられない。 なお,1990 年代以降,地理学や都市工学では, セルオートマトン(CA)とマルチエージェント システム(MAS)が新たなモデリング手法とし て採用されてきた。これらのモデルでは,多主体 間の相互作用から都市の形成過程がシミュレート される。最近では,こうしたシミュレーションモ デルを総称した「ジオシミュレーション(Geo-simulation)」が Benenson and Torrens(2004) によって提示された。これは,オブジェクト指向 に基づき生成された地理的オートマタ(Geo-graphic Automata)とそれらの相互作用で定式 化されるモデルである。動態的な空間的 MSM は,非集計モデルという点において,ジオシミュ レーションに含まれる CA や MAS とも共通する。 空間的 MSM に,主体間の相互作用およびオブ ジェクト指向によるモデリングを採用し,3 手法 を統合することで,より包括的なモデルの構築が 可能と考えられる。 III.京町家の取壊しをめぐる背景 1)京町家の取壊しとその背景 京町家は,京都市都心部において,歴史的な町 並みの重要な構成要素であり,職住が近接した住 宅ストックとしての機能を果たしてきた。しか し,戦後の開発偏重の土地市場の中で特別な保護 もなく多くの京町家が急速に取り壊されてきた。 河角ほか(2003)の空中写真判読に基づく調査 によれば,1948 年から 2000 年までに,河原町 通と四条通,烏丸通,御池通に囲まれた一街区で 70%もの京町家の取壊しが確認されている。最 近になって,京都市都心 4 区(上京区・中京区・ 下京区・東山区)を対象に,京町家の居住者や外 観特性に関する調査である『京町家まちづくり調 査』(京都市都市計画局, 2004)が整備されてきた。 橋本ほか(2001)は,この調査結果から京町家 の外観特性別の残存状況やその空間的分布を明 らかにした。矢野ほか(2006)は,2 時点の調 査結果を用いて,1998 年から 2004 年までに, 28,000軒の京町家の約 14%の取壊しを確認した。 京町家の取壊しをめぐる背景として,京町家ま ちづくり調査での居住者を対象とした調査結果か ら,京町家での居住を継続する上での問題点を以 下のように再整理した(表 1)。 第 1 に,「 耐 震 性 や 防 火 性 が 不 安 で あ る 」 (58.1%)や「現代的な住み方や使い方に合わない」 (15.4%),「改修が困難である」(14.8%)等の京 町家の伝統的な建物構造とその老朽化による問題 点が指摘された。これは,戦前に建てられた京町 家は,老朽化が進み耐用年数をみても建替えの時 期を迎えると同時に,その建物の内部構造も現代 的な生活様式と調和しないことによるものと考え られる。実際に,花岡ほか(2009)は,京町家 の外観調査結果を用いて,京町家の建物状態の悪 化と空家化が,京町家の取壊しを助長すると指摘 した。 第 2 に,「隣近所がビルやマンションになって 住みづらくなる」(41.1%)が挙げられ,京町家 が立地する周辺環境からの影響も無視できない。 京都市都心部では,高度経済成長期以降,共同住 宅や商業ビルの需要が高く,低層木造建築物であ る京町家が取り壊され,より収益性の高い中高層 建築物へと建替えられてきた(Fujitsuka, 2004; 魚谷ほか, 2005)。中高層建築物が京町家の敷地
に隣接して建設されると,日照や風通しが悪化す るばかりでなく,既存コミュニティが弱体化する ことで京町家の取壊しが進むと考えられる。花岡 ほか(2009)においても,京町家の取壊しと周 辺の京町家の残存状況や土地利用との関連性が確 認された。 第 3 に,「建物の維持・修繕費が心配である」 (54.0%)や「相続税が心配である」(22.8%)等 のほか,「事業の継続が困難である」(11.0%)や 「住み続けてくれる人や事業の後継者がいない」 (8.0%)が挙げられ,京町家の維持費用と後継者 に関する問題点が指摘された。これらの割合を世 帯年齢別にみると(表 2),30 歳代以上で世帯主 年齢が低いほど維持費を問題にする傾向にある。 相続税の問題は,世帯交代が行われる 50 歳代と 70歳代で相対的に高い。また後継者の問題は, 世帯主年齢が高くなるほど割合が上昇する。つま り,今後,高齢化が進み世代交代が生じた際に, 後継者がいないことや,また子世帯にとっては, 相続税や維持費用の負担が問題となることで,京 町家が取り壊される可能性が高いと考えられる。 1998年から 2004 年までの間に,京町家の居住 世帯のうち世帯主年齢が 60 歳以上の割合は, 58.4%から 69%にまで上昇した。今後も,急速 な高齢化を背景に,京町家が取り壊されるものと 考えられる。 以上のように,京町家の老朽化や局所的な周辺 環境の悪化,世帯構成の変化の中で京町家の取壊 しが決定されるものと考えられる。したがって, 京町家の取壊しの予測には,京町家と居住世帯, 周辺環境の動態的な変化と三者間の相互作用を考 慮する必要がある。 こうした京町家の取壊しの実態と対応付けて分 析を行うには,個々の京町家の外観特性や立地, 表 1 京町家に住み続ける上での問題点. Table 1 Problems living in Kyomachiya.
京町家に住み続ける上での問題点 件数 % 京町家の建物構造 耐震性や防火性が不安である 1,031 58.1 現代的な住み方や使い方に合わない 273 15.4 改修が困難である 262 14.8 相談したり,工事を任せられる専門家(建築家,大工等)を知らない 122 6.9 京町家の近傍環境 隣近所がビルやマンションになって住みづらくなる 729 41.1 京町家の維持費用・後継者 建物の維持・修繕費が心配である 959 54.0 相続税が心配である 404 22.8 家賃や固定資産税など居住費用の負担が心配である 293 16.5 事業の継続が困難である 195 11.0 住み続けてくれる人や事業の後継者がいない 142 8.0 その他・不明 その他 61 3.4 不明 101 5.7 n= 1,775(複数回答あり). 『京町家まちづくり調査』(2004 年)より作成. n= 1,775(multiple answer).
世帯構成員の人口学的属性を同時に把握する必要 がある。しかし,京町家まちづくり調査において も,そのような詳細な情報が収集されていない。 そのため既存のデータを利用するだけでは,京町 家の取壊しを把握するには不十分である。また京 町家の保全政策を定量的に評価する必要もある。 1990年代後半以降,いわゆる「町家ブーム」を 契機として,京町家が保全の対象として認識され るようになり,京町家を保全する取組みが本格的 に開始された(野田, 2006)。たとえば,「財団法 人京都市景観・まちづくりセンター」の設立 (1997 年)や「京町家再生プラン」の策定(2000 年),「京町家まちづくりファンド」の設立(2005 年 ), 景 観 重 要 建 造 物 と し て の 京 町 家 の 登 録 (2006 年)が進められている。そのため,京町家 の取壊しの現状把握に加えて,保全政策を伴った 場合での京町家の残存状況を将来的に予測するこ とが求められる。 2) 京町家の取壊しを分析する上での空間的 MSM の利点 京町家の取壊しを分析する上での空間的 MSM の利点として,次の点が指摘できる。 第 1 に,空間的 MSM を用いることで,京町 家の居住世帯と世帯人員に関する合成ミクロデー タを作成できる。これを用いることで,適当なミ クロデータが得られない状況においても,京町家 と居住世帯,周辺環境の変化の把握とそれぞれの 相互作用を踏まえた分析がミクロレベルで可能と なる。 第 2 に,合成ミクロデータの生成過程におい て,国勢調査等の信頼性の高い悉皆調査を利用す ることで,標本調査による統計資料に含まれる属 性間での回答率の偏りを補正できる(花岡, 2006)。 第 3 に,非集計モデル全般に共通するが,意 思決定主体に基づくモデルであるため,現実空間 での主体の振る舞いに対応させたモデリングや非 集計レベルでの人間行動に関する理論のモデルへ の組み込みが容易になる。これは,京町家居住世 帯の人口・世帯動態,京町家の取壊しの意思決定 をモデリングする際に役立つ。 第 4 に,分析結果がミクロデータ形式で提供 されるため,政策評価において分析者の必要に応 じて柔軟で詳細な集計ができる。これによって, 京町家の保全政策において,個人や世帯状況に応 じたきめ細やかな分析ができ,またミクロデータ を用いることから,集計データの利用に際して問 題となる生態学的誤謬や可変地区単位問題を軽減 できると考えられる。 IV.町家シムの構築 1)町家シムの構築手順 本稿で構築する動態的な空間的 MSM を町家シ ムと呼ぶ。町家シムは,a)京町家の居住世帯に 関する合成ミクロデータの生成,b)京町家と居 住世帯の動態モデルの作成,c)推定結果の精度 検証,d)政策シナリオに基づく政策分析の順で 構築する。 2)使用するデータと対象地域 合成ミクロデータの生成を目的に,平成 12 年 表 2 世帯主年齢階級別の回答割合(住み続けてい く上での問題点).
Table 2 Proportion by age group of household head (problems living in a machiya).
世帯主年齢階級 維持費 相続税 後継者 30歳未満 33.3 40.0 0.0 30-40 歳未満 69.0 20.7 0.0 40-50 歳未満 64.8 25.4 1.4 50-60 歳未満 61.5 27.3 6.9 60-70 歳未満 59.3 24.6 9.3 70-80 歳未満 52.0 26.3 9.0 80歳以上 43.6 21.3 9.4 不明 47.8 11.4 7.4 全体 54.0 22.8 8.0 下線は全体の比率より高いもの. 維持費:建物の維持・修繕費が心配である. 相続税:相続税が心配である. 後継者: 住み続けてくれる人や事業の後継者がいない. 『京町家まちづくり調査』(2004 年)より作成.
Underlines indicate values below overall averages. Maintenance cost: worrying about maintenance cost. Inheritance tax: worrying about inheritance tax. Heir: no heirs who will live or keep the business running.
の『京阪神都市圏パーソントリップ調査』(以下, PT調査)の個票データと『国勢調査』および『京 町家まちづくり調査』の統計表を使用する。京町 家まちづくり調査は,第 I 期調査(1995 ~ 1998 年)と第 II 期調査(2003 ~ 2004 年)が整備さ れている。このうち京町家の居住者を対象とした 調査である京町家居住者調査(財団法人京都市景 観・まちづくりセンター所蔵)と,外観特性を対 象とした調査である京町家外観調査の GIS デー タ(立命館大学地理学教室所蔵)を使用する。 研究対象地域は,京都市西陣地区とする。西陣 地区は 7 つの学区(乾けん隆りゅうと西にし陣じん,嘉か楽らく,桃とう薗えん,小お 川 がわ ,正せい親しん,聚じゅ楽らく)から構成され,208 の町丁目が 含まれる(図 1)。西陣地区では,第 I 期から第 II期調査にかけて,約 13%の京町家が取り壊さ れた。西陣地区は,伝統的繊維産業の衰退と都市 再集中を背景に,京町家の取壊しと中高層建築物 の建設が観察される地区である。そうした理由か ら,西陣地区を研究対象地域とする。 3)合成ミクロデータの生成 3-1)合成ミクロデータの生成方法 京町家の居住世帯と世帯人員に関するミクロ データが存在しないため,本稿では合成ミクロ データの作成を行う。合成ミクロデータの生成方 法には,モンテカルロ法による方法と,組合せ最 適化アルゴリズムによる方法がある(Williamson, 2002)。前者では,多重クロス表から条件付分布 を求め,乱数を用いて個人や世帯属性を遂次的に 追加し,合成ミクロデータを生成する。後者で は,焼きなまし法や遺伝的アルゴリズム等の組合 せ最適化アルゴリズムを用いて,入手可能なミク ロデータをマクロな統計資料に整合させて,合成 ミクロデータを生成する。 両手法の長所と短所は,Ballas et al.(1999) や Huang and Williamson(2001)で検討され てきた。そこでは,組合せ最適化アルゴリズムの 方が,実際の調査で得られた個票データを利用す るため,現実的に妥当な個人や世帯属性の組合せ 情報が得られ,合成ミクロデータの推計精度を向 上できる点や,世帯と世帯人員といった階層関係 を組合せ最適化アルゴリズムの制約に組み込める 点,データ整備や計算処理が容易な点が指摘され た。一方で,モンテカルロ法は,マクロな統計資 料しかない場合でも,合成ミクロデータを生成で きる点や,推定すべき属性が少ない場合は組合せ 最適化アルゴリズムよりも短時間で計算処理が可 能な点が挙げられた。 本稿では,合成ミクロデータの生成において, 両手法の長所と短所を踏まえて,PT 調査の個票 データが利用できる居住世帯の基礎的な人口・世 帯属性の推定には,焼きなまし法による組合せ最 適化アルゴリズムを用いるが,集計データしか利 用できない世帯主の特定や京町家居住の推定には モンテカルロ法を用いる(図 2)。 3-2)焼きなまし法の適用 焼きなまし法とは,有限の組合せ解の中から, 制約条件(目的関数)を満たす,または近似する 組合せ解を求めるアルゴリズムである(サイト・ ヨゼフ, 2002)。「焼きなまし」とは高熱の金属を 徐々に冷却させる熱処理の工程を意味する。焼き なまし法では,制約条件と組合せ解との乖離を 「状態エネルギー」と捉え,メトロポリス基準(式 1)によって組合せ解を評価し,状態エネルギー 図 1 西 陣 地 区 の 京 町 家 分 布(2003・2004 年). Fig. 1 Spatial distribution of Kyomachiya in
の最小化を図る。 (1) ここで,Prob(accept) は,新たな組合せ解を受 け入れる確率,T は温度パラメータ,E はある組 合せ解の状態エネルギー,E' はサンプル置換後 の新たな組合せ解の状態エネルギー,DE は状態 エネルギーの変化量を指す。式(1)が示すよう に,DE 0が成立する場合,自動的に新たな組 合せ解が受け入れられる。そうでない場合でも, 温度パラメータに応じて,改悪解を時々受け入 れ,局所解からの脱出機会が与えられる。温度パ ラメータは組合せ解の探索の初期段階では高温に 設定し,新たな組合せ解を規定回数分受け入れる 度に温度を一定の比率で減少させる幾何冷却過程 を採用する。これによって初期段階では,改悪解 が受け入れられる確率が高く,温度が低下するに 従い,その確率が急速に低下する。最終的に,状 態エネルギーがゼロに収束するか,サンプルの置 換回数が設定した最大回数に達した時点で計算を 終了させる。 町家シムでは,この焼きなまし法を用いて,京 都市都心 4 区内の全世帯の合成ミクロデータを 作成する(図 2- ①)。使用するデータは,PT 調 査から得られる京都市都心 4 区の 2,508 世帯, 5,598人の個票データである。制約条件として, 国勢調査小地域集計から,町丁目別に(1)家族 類型別世帯数,(2)世帯人員別世帯数,(3)年 齢
×
産業別世帯人員数に関するクロス表を用意 する。ただし,国勢調査の調査項目を,PT 調査 の調査項目と事前に対応させておく。 焼きなまし法では,国勢調査のクロス表と, PT調査の個票データの組合せ解から作成された クロス表を比較し,その度数の差の絶対値を合計 した値を,状態エネルギー E および E' とする(式 2)。 (2) :制約統計表 k の i 行 j 列の観測度数 :制約統計表 k の i 行 j 列の推定度数 焼きなまし法のパラメータは,Williamson et al.(1998)を参考に,初期温度 T0を 30,冷却 過程における温度減少率αを 0.95,温度減少率 を適用するまでのサンプルの置換回数を 400 回, 最大反復回数を 20 万回と設定する。これを京都 市都心 4 区の町丁目別に適用し,合成ミクロデー タを作成した。 その結果,焼きなまし法の適用前の状態エネル ギー E は,都心 4 区内で平均 148 度数,最大で 846度数であったが,適用後には平均で 11 度数, 最大で 72 度数にまで大幅に改善した。累積割合 をみても,適用後の状態エネルギー E が 5 度数 未満である町丁目が 33%,10 度数未満が 61%, 図 2 合 成 ミ ク ロ デー タ の 生 成 方 法. Fig. 2 Construction of synthetic microdata.20度数未満が 88%であった。したがって,大半 の町丁目について,3 つの制約条件と合成ミクロ データのクロス表には,各セルに最大でも数度数 程度の乖離しかなく,両者が高い精度で整合して いると言える。 3-3)モンテカルロ法の適用 モンテカルロ法を用いて,世帯主と京町家居住 の有無を推定する(図 2- ②,③)。世帯主の推定 には,まず国勢調査結果の家族類型
×
性別×
世 帯主年齢(15 歳以上)別世帯数を用いて,家族 類型×
性別×
世帯主年齢別割合を求め,世帯主 となる確率(以下,世帯主率)を推定する。次に, 合成ミクロデータから世帯の家族類型と世帯構成 員の性別,年齢を取得し,その属性に該当する世 帯主率を与える。その確率分布を累積密度分布に 変換する。さらに 0 から 1 の一様乱数を発生さ せ,それを累積密度分布と比較し,世帯人員が世 帯主であるか否かを決定する。この推定作業を全 世帯に対して行う。 世帯が京町家に居住するか否かについても,モ ンテカルロ法で決定する。世帯が京町家に住むか 否かの確率(京町家居住率)の推定には,国勢調 査および京町家居住者調査の家族類型×
世帯主 年齢別世帯数の集計表を使用する。事前に両者の 調査項目を比較できるよう整理し,国勢調査結果 を京町家居住者調査結果の度数で除すことで,家 族類型×
世帯主年齢別に京町家居住率を求める。 その上で,モンテカルロ法を用いて,町丁目内の 京町家軒数を上限に,合成ミクロデータの各世帯 に対して京町家の居住の有無を推定する。推定さ れた合成ミクロデータから西陣地区内の京町家居 住世帯を抽出し,町家シムで使用する。 以上の手順で作成された京町家居住世帯の合成 ミクロデータの推計精度を検証する。ただし,合 成ミクロデータの推計精度を直接比較できるデー タは存在しない。そこで,京町家居住者調査の調 査対象範囲について,京町家居住者調査と合成ミ クロデータの家族類型別世帯割合および世帯主年 齢別割合を求め,両者の分布が同一であると仮定 して,その差を検討する(表 3,表 4)。その結果, 両者の差は,家族類型と世帯主年齢ともに最大で±
6%程度であった。また差の絶対値の平均値 は,両者ともに 3%程度であり,両者の分布は高 い精度で一致する。したがって,合成ミクロデー タは,京町家居住者調査とも高い精度で整合し, 分析に利用するに妥当であると言える。なお表 3,表 4 に,西陣地区内の合成ミクロデータにつ いて,家族類型別,世帯主年齢別割合を示す。 4)町家シムの仕様 4-1)町家シムの構成 III 章で考察した京町家の取壊しの背景を踏ま えて,京町家の取壊しに至る一連の過程を,図 3 のように,個人・世帯の動態モデルと京町家の動 態モデルを用いてモデル化する。個人・世帯動態 モデルでは,個人と世帯の人口動態および居住世 帯による京町家の修繕と取壊しの意思決定をモデ ル化する。京町家の動態モデルでは,建物状態や 保存状態等の京町家属性の変化と,京町家の近傍 環境の変化をモデル化する。 京町家が取壊しに至る基本的な過程は以下の通 りである。時間が経過するとともに,世帯員の個 人属性が変化し世帯属性が更新される。そして, 世帯属性の変化は世帯が修繕を行うか否かに影響 する。京町家が修繕される場合には,その建物状 態は改善されるが,修繕されない場合は建物状態 が悪化する。さらに京町家の建物状態の悪化が進 行すると,京町家が取り壊される確率や空家とな る確率が上昇する。最終的に,京町家と居住世帯 の状態に基づき,京町家の取壊しが決定される。 京町家が取り壊された後には,周辺の京町家の近 傍環境が更新される。なお,これらの事象の発生 の順序は固定されたものではなく,一定の範囲内 で無作為に決められた期間ごとに,独立して発生 するものとする。 4-2)オブジェクトモデル 町家シムの構築には,Java 言語による,エー ジェントモデリングに特化した総合開発環境であ る AnyLogic5.5 を使用する。町家シムでは,オ ブジェクト指向モデリングを採用し,京町家と世 帯,個人をオブジェクトとして定義する。オブ ジェクトはデータとメソッドから構成される。個 人オブジェクトであれば,性別や年齢等がデータとして,加齢や死亡等がメソッドとして定義され る。手続き型と比較して,オブジェクト指向の利 点は,現実世界で人間が認識するように実体をモ デリングできる点にある(高阪, 2002)。さらに オブジェクト指向特有のカプセル化や継承,多態 性等のオブジェクトを再利用できる仕組みによっ て,プログラミングを効率化できる点も,利点の 一つに挙げられる。 町家シムでは,図 4 に示すように,京町家と 世帯,個人のオブジェクトはデータとメソッド, オブジェクトとの関連性を有する。京町家と世 帯,世帯と個人とを関連付けることで,三者の階 層関係を定義する。さらに,京町家オブジェクト を近傍の京町家オブジェクトと関連付けること で,近傍環境との相互作用を考慮する。ただし, 表 3 合成ミクロデータの精度検証(家族類型). Table 3 Validation of synthetic microdata by household type.
家族類型 京都市調査a 都心 4 区(推計)b 西陣(推計) 差(b-a) 高齢単身 0.119 0.152 0.143 0.033 高齢夫婦 0.255 0.196 0.194 ▲ 0.059 3世代 0.110 0.089 0.091 ▲ 0.022 65歳未満単身 0.042 0.073 0.063 0.031 65歳未満夫婦 0.067 0.087 0.091 0.020 親子 0.349 0.329 0.348 ▲ 0.020 その他 0.058 0.074 0.070 0.016 京都市調査:『京町家まちづくり調査』(2004 年). Source: Kyomachiya Survey(2004).
表 4 合成ミクロデータの精度検証(世帯主年齢). Table 4 Validation of synthetic microdata by age of household head. 世帯主年齢 京都市調査a 都心 4 区(推計)b 西陣(推計) 差(b-a) 30歳未満 0.010 0.023 0.027 0.013 30-40 歳代 0.020 0.033 0.040 0.013 40-50 歳代 0.049 0.069 0.072 0.021 50-60 歳代 0.178 0.234 0.234 0.056 60-70 歳代 0.288 0.287 0.282 ▲ 0.001 70-80 歳代 0.314 0.250 0.241 ▲ 0.064 80歳以上 0.140 0.104 0.104 ▲ 0.037 京都市調査:『京町家まちづくり調査』(2004 年). Source: Kyomachiya Survey(2004).
図 3 町 家 シ ム の 全 体 構 成. Fig. 3 Model diagram of MachiyaSim.
町家シムでは,京町家の修繕や取壊しの意思決定 は,厳密には所有世帯であるが,所有者に関する 調査資料がないため,居住世帯が行うものとし た。京町家居住者調査によると,持地の京町家世 帯は 7 割を占め,この仮定による分析への影響 は限定的であると考える。 4-3)個人・世帯の動態モデル 本モデルでは,個人オブジェクトには人口動態 の 5 つの事象(加齢,出生,死亡,婚姻,離家), 世帯オブジェクトには世帯動態の 2 つの事象(世 帯分離,転居)と京町家の修繕および取壊しに関 する手続きを用意する。 事象の生起確率の基準値は,表 5 に示すデー タを用いて算出する。加齢を除き,事象の生起を 判断するまでの期間は,一定の変動を持たせるた め,0 から 2 の一様乱数で決定する。その期間が 経過すると,事象が生起するか否かをモンテカル ロ法で決定する。 たとえば,死亡の有無を決定する場合,まず個 人オブジェクトは,発生させた一様乱数の期間だ け待機する。その後,性別年齢別死亡率と 0 か ら 1 の一様乱数を用いて,死亡の有無を決定す る。そして,死亡と判断されたならば,モデルか ら個人オブジェクトを削除し,世帯オブジェクト の家族類型や配偶者の配偶関係を更新する。生存 と判断されたならば,再び,一様乱数で次の事象 が生起するまでの期間を決定する。同様の手続き を,人口・世帯動態の各事象で行う。 京町家の居住世帯は,建物状態に応じて京町家 を修繕し,建物状態を良好に維持しようとする。 ただし京町家の修繕頻度は,世帯のライフステー ジによって異なる。そこで,モデルに世帯主年齢 による修繕頻度を考慮する。具体的には,京町家 居住者調査からわかる世帯主年齢別の修繕頻度か ら補正率を求め,修繕率の平均値に乗じた。な お,建物状態とは,京町家の建物外観からみた老 朽化の程度であり,「良好(今後も使えそう)」と 「やや良好(今後修理が必要)」「劣悪(今すぐ修 理が必要)」に 3 区分する。 次に京町家の居住世帯による京町家の取壊し率 Pi(change)は,ロジスティック回帰モデル(式 3) で推定する。 (3) ここで,J は説明変数の数,{A0, A1,…, Aj}はデー タから推定される係数,Xijは京町家 i における j 番目の説明変数を示す。説明変数には,花岡ほか (2009)を参考に,京町家の取壊しと関連する変 数を投入した。その際に,近傍の京町家との相互 作用を示す指標として,京町家から半径 50 m の 円内に含まれる京町家の敷地面積割合を近傍変数 と定義し用いる。半径 50 m の円は,京都市都心 部のひとつの町の範囲とほぼ対応する。表 6 に, 係数 B と有意確率,標準誤差,Wald,オッズ比 Exp(B)を示す。京町家の取壊しは,京町家の 建て方(長屋建 / 戸建)と空家,建物状態,保存 状態が有意水準 5%で,高度地区と一般道路から の 距 離, 京 町 家 の 近 傍 変 数 50 m が 有 意 水 準 10%で関連することがわかる。これらの説明変 数の係数を用いて,式(3)により,京町家の取 壊し率を求める。それを 1 年当たりの取壊し率 に換算した上で,モンテカルロ法を用いて,京町 図 4 町 家 シ ム の ク ラ ス 図. Fig. 4 Class diagram of MachiyaSim.
家の取壊しの有無を決定する。 4-4)京町家の動態モデル 京町家オブジェクトには,京町家の建物状態と 保存状態の経年変化,新規世帯の入居に関する手 続きを用意する。 建物状態は,京町家の居住世帯によって修繕が 行われない場合,時間経過とともに悪化すると仮 定する。修繕が行われた場合のみ,建物状態が改 善する。一方,保存状態は,京町家の外観構成要 素(格子と大戸・木戸,土壁,虫籠窓)の残存数 であり,それを「良好(すべて残っている)」と「や や良好(いくつか残っている)」「やや劣悪(ひと つだけ残っている)」「劣悪(まったく残っていな い)」に 4 区分する。保存状態は経年的に悪化し, 表 5 町家シムで使用する基準値とデータ. Table 5 Reference values and datasets for MachiyaSim.
対象 事象 比率 詳細 基準値 出典 個人 出生 出生率 母親の年齢別出生順位別 2000年 人口動態調査 出生性比 女児 100 につき男児 106 人口動態調査 死亡 死亡率 性別年齢別 2000年 人口動態調査 婚姻 結婚率 性別年齢別 2000年 人口動態調査 配偶者との年齢差 性別年齢別 2000年 人口動態調査 結婚時の親との 同居率 性別 2003年 21世紀成年者縦断 調査 離婚率 性別年齢別 2000年 人口動態調査 離婚時に夫が 離家する率 0.5 任意 離婚時に子供が 離家する率 0.5 任意 再婚までの期間 平均 4 年 人口動態調査 離家 離家率 性別年齢別 1999年 世帯動態調査 世帯 世帯分離 親世帯と子世帯の分離率 0.01 任意 転居 転居率 建物状態別 (第 I 期—第 II 期)変化割合 京町家まちづくり調査 修繕 修繕率 建物状態別 (第 I 期—第 II 期)変化割合 京町家まちづくり調査 取壊し 取壊し率 ロジスティック回帰モデルによる推定 京町家まちづくり調査 町家 建物状態 変化率 空家別 (第 I 期—第 II 期)変化割合 京町家まちづくり調査 保存状態 変化率 (第 I 期—第 II 期)変化割合 京町家まちづくり調査 新規世帯 入居 入居率 建物状態別 (第 I 期—第 II 期)変化割合 京町家まちづくり調査
元の状態に改善できないと仮定する。建物状態と 保存状態の変化率は,第 I 期と第 II 期の京町家 外観調査から 5 年間での状態別変化割合を求め, それらを 1 年当たりの割合に換算し使用する。 新規世帯の入居とは,空家の京町家に新たな世 帯が入居することである。新規世帯の入居につい ては,建物状態に応じて入居の頻度が異なると考 えられる。そこで,第 I 期と第 II 期の京町家外 観調査から建物状態別に空家でなくなった京町家 の割合を入居率として求め,1 年あたりの割合に 換算し使用する。 京町家の居住世帯が京町家の取壊しを決定した 場合,京町家オブジェクトを町家シムから削除す る。それと同時に,ほかの京町家の近傍環境の状 態を更新する。その結果,周辺に立地するほかの 京町家の取壊し率が上昇し,局所的な空間的連鎖 を伴って京町家の取壊しが展開する。 4-5) グラフィカル・ユーザ・インタフェース (GUI) 京町家と世帯,個人の動態を表示するため,図 5に示す GUI を町家シムに組み込む。GUI の中 央部には,西陣地区内の京町家の分布が示され, 京町家の居住の有無および建物状態を色で識別で きる。また京町家軒数や総人口,男女別人口,家 表 6 京町家の取壊しに関するロジスティック回帰モデルのパラメータ 推定結果.
Table 6 Parameter estimations of logistic regression model for Kyomachiya demolitions. 変数名 B(標準誤差) Wald Exp(B) 長屋建 長屋建 -0.890(0.165)** 29.085 0.411 戸建 0.000( - ) - 1.000 空家 空家 0.602(0.255)** 5.595 1.827 空家でない 0.000( - ) - 1.000 建物状態 良好 -0.969(0.221)** 19.158 0.380 やや良好 -0.734(0.230)** 10.223 0.480 劣悪 0.000( - ) - 1.000 保存状態 良好 -0.787(0.225)** 12.287 0.455 やや良好 -0.561(0.161)** 12.187 0.571 やや劣悪 -0.238(0.180) 1.749 0.788 劣悪 0.000( - ) - 1.000 高度地区 20 m 第 2 種 -0.101(0.428) 0.056 0.904 20 m 第 3 種 0.401(0.212)* 3.602 1.494 31 m 0.000( - ) - 1.000 一般道路からの距離(m) -0.011(0.006)* 2.749 0.989 京町家の近傍変数 50 m(%) -0.009(0.005)* 2.746 0.991 切片 -0.492(0.494) 0.990 0.611 **= p < 0.05,*= p < 0.1 -2 log likelihood: 1,639.624 Cox and Snell R2: 0.036 Niagelkerke R2: 0.068 n= 2,300
族類型の時系列変化を折れ線や棒グラフで把握で きる。 V.政策シナリオ分析 1)モデルの精度検証 町家シムの推計精度を検証するため,上記のパ ラメータ設定の下で,第 I 期の京町家の残存軒数 を初期条件として,第 II 期までの京町家の残存 軒数を推定した。なお 100 回の試行結果の平均 値を,町家シムの推定値とする。ここで,学区別 に京町家の残存軒数を集計した結果について,観 測値と推定値,両者の差を表 7 に示す。推定値 と観測値との差は小さく,両者の分布傾向はほぼ 一致する。両者の差は,残存率が高い学区で過小 評価,残存率が低い学区で過大評価が認められる が,全体としては差の絶対値の平均が 7 軒と高 い精度で一致する。したがって,町家シムは,京 町家の取壊しをおおむね良好に捕捉していると考 えられる。 2)政策シナリオ分析 現行では,京町家の保全政策として,京町家ま ちづくりファンドでの修繕費の助成や専門家によ る京町家の修繕相談,後継者の斡旋による空家対 策,新景観政策に基づく建物の高さ規制が実施さ れている。そこで,現行より大規模に京町家の保 全政策を実施する場合を想定し,シナリオを次の ように設定する。シナリオの基準値は,京町家居 住者調査を参考に,可能な限り現実的に妥当な値 を採用した。また中期的な京町家の保全政策の効 果を測定するため,2004 年から 15 年間の変化 を分析する。 A:現状維持 B: 修繕費助成による修繕率の上昇(低率: 0.202) 図 5 グ ラ フィ カ ル・ユー ザ・イ ン タ フェー ス. Fig. 5 Graphical user interface.
C: 修繕費助成による修繕率の上昇(高率: 0.389) D: 入居者斡旋による入居率の上昇(低率: 0.433) E: 入居者斡旋による入居率の上昇(高率: 0.594) F: 高度規制の強化(全地域を 20 m 第 2 種高 度地区に指定) G: C と E,F の組合せによる京町家保全の包 括的政策 シナリオ A は,京町家の取壊しが現状のペー スで進行した場合を想定したシナリオである。現 状における 1 年当たりの修繕率は,建物状態別 に 0.123(建物状態が良好→良好),0.103(やや 良好→良好),0.076(劣悪→やや良好)であり, 新規世帯の入居率は 0.326(建物状態が良好), 0.230(やや良好),0.090(劣悪)である。 シナリオ B と C は,京町家の修繕費助成によっ て修繕率が上昇するシナリオである。これは京町 家まちづくりファンドのように京町家の修繕に対 する直接的な公的支援の実施を想定する。修繕率 が上昇し建物状態が改善することで,京町家が残 存しやすくなると考えられる。京町家居住者調査 によれば,修繕費の過半相当の公的支援があれば 修繕を行う世帯が 18.7%,修繕費の一部の公的 支援では 20.2%であった。公的支援によって, これらの世帯が京町家をより高い確率で修繕する と考えられる。そこで,1 年当たりの修繕率をシ ナリオ A よりも高い値に設定し,そのうち低率 (0.202)の場合をシナリオ B,高率(0.389)の 場合をシナリオ C と設定する。 シナリオ D と E では,京町家への入居者の斡 旋を実施した場合を想定する。新たな入居者を斡 旋することで,建物状態の悪化を防ぎ,京町家の 利用価値を高められる。その結果として,京町家 が残存する確率が高まる。京町家居住者調査によ ると,後継者が決まっていない世帯は 43.3%, これに「(後継者を)考えたことがない」世帯を 含めると 59.4%に上る。この結果を参考に,建 物状態が良好な京町家については,1 年当たりの 入居率を低率の場合で 0.433(シナリオ D),高 率の場合で 0.594(シナリオ E)とする。それ以 外の建物状態の京町家の入居率については,上記 の値を現状での建物状態別の入居率に比例させた 値を用いる。 シナリオ F では,2007 年に導入された新景観 政策と同様に,高度規制が強化された場合を想定 する。高度規制によって,中高層建築物への転用 が減り,京町家が存続しやすくなると考えられ る。西陣地区では, 20 m 第 2 種と 20 m 第 3 種, 31 m高度地区が指定されていた。そのうち 20 m 第 2 種は,建物の高さと斜線制限の点で最も規 制が強い。そこで,シナリオ F では,西陣地区 全域に 20 m 第 2 種の規制を適用する。ロジス ティック回帰モデルの高度規制の係数をすべて 20 m第 2 種高度地区の係数に設定する。 シナリオ G は,シナリオ C と E,F を組合せ た京町家の包括的な保全政策の実施を想定したシ ナリオである。シナリオ G では,修繕率と入居 率,ロジスティック回帰モデルの高度規制の係数 をシナリオ C と E,F と同様に設定する。 3)試行結果 政策シナリオの条件下で町家シムを 100 回実 行し,2004 年から 15 年後までの京町家の残存 表 7 モデル精度の検証(学区別京町家軒数). Table 7 Model validation(number of Kyomachiya
by school district). 学区 (第 II 期)観測値a 推定値 (第 II 期)b 差 (b-a) 嘉楽 252(89.0%) 251 ▲ 1 乾隆 444(88.8%) 439 ▲ 5 小川 350(88.4%) 350 0 正親 425(86.7%) 425 0 西陣 351(91.9%) 334 ▲ 17 桃薗 295(81.3%) 316 21 聚楽 362(90.5%) 357 ▲ 5 合計 2,478(88.1%) 2,471 絶対値の平均 7 括弧内は,残存率=第 II 期の軒数 / 第 I 期の軒数× 100.
Values in brackets indicate ratio of Kyomachiya surviving = number of Kyomachiya in Period II/ number of Kyomachiya in Period I×100.
軒数の平均値を求めた。その結果を表 8 に提示 する。またシナリオ A と G に関しては,無作為 に一つの試行結果を選択し,京町家と居住世帯の 時系列的変化を把握する。 シナリオ A:現状を維持した場合,京町家軒数 は 2,478 軒から 1,667 軒にまで減少し,30%近 くが取り壊される。残存率は 67.3%と全シナリ オの中で最も低い。 試行結果の一例をみると(図 6),京町家の外 観特性別構成割合の推移からは,空家割合が 8% 前後で横ばい,建物状態が「やや良好」と「劣悪」 に分類される京町家の割合(建物状態悪化割合) は緩やかな低下,保存状態が「やや劣悪」と「劣 悪」に分類される京町家の割合(保存状態悪化割 合)は上昇,近傍 50 m に占める京町家面積の割 合(近傍の京町家割合)は低下傾向にあることが 確認できる。これは,空家や建物状態が悪化した 京町家が高い確率で取り壊された結果,空家でな く良好な建物状態にある京町家の割合が相対的に 高まったことによるものと考えられる。ただし, 保存状態の悪化や近傍の京町家面積の減少によっ て,地区全体として,ほぼ一定の比率で京町家軒 数が減少するものと推察される。 京町家の居住世帯数は,京町家軒数の減少に伴 い,2,274 世帯から 1,536 世帯に,人口は 5,936 人から 2,927 人に減少する。図 7 に居住者人口 の年齢構成の推移を示す。2004 年時点で 60 歳 以 上 人 口 は 43.9% で あ っ た が,15 年 後 に は 51.6%に上昇し,1.17 倍となる。国立社会保障・ 人口問題研究所(2004)による京都市全域での 将来人口推計では,60 歳以上人口割合は 26.7% (2005 年)から 32.1%(2020 年)へと上昇し, 約 1.20 倍となる。これは,京町家の居住世帯の 上昇率と同水準であるが,京町家居住世帯では, 60歳以上の人口割合が高い状況で,高齢化が進 行すると推察される。 年齢階級別に人口変化をみると,20 歳代は減 少傾向,30 歳代および 40 歳代は横ばいから緩や かな減少に転じる。50 歳代と 60 歳代は急速な減 少,70 歳代は横ばいから減少,80 歳以上はほぼ 横ばいの傾向が確認できる。この結果は,京町家 表 8 政策シナリオ別のシミュレーション結果. Table 8 Comparison of simulation results by scenario.
シナリオ 残存数 残存率 A:現状維持との比率 A:現状維持 1,667 67.3% 100.0% B:修繕率の上昇(低率) 1,738 70.1% 104.2% C:修繕率の上昇(高率) 1,845 74.4% 110.7% D:入居率の上昇(低率) 1,679 67.7% 100.7% E:入居率の上昇(高率) 1,687 68.1% 101.2% F:高度規制の強化 1,886 76.1% 113.1% G:シナリオ C と E,F の組合せ 2,045 82.5% 122.7% 残存率=残存数 / 第 II 期の軒数(= 2,478 軒)×100.
Ratio of Kyomachiya surviving= number of Kyomachiya surviving/number of Kyomachiya in Period II(= 2,478)×100.
図 6 京 町 家 の 外 観 特 性 別 構 成 割 合 の 推 移(シ ナ リ オ A と G).
Fig. 6 Transitions of Kyomachiya by condition (Scenarios A & G).
の居住者の高齢化が引き続き進行すると同時に, 京町家居住者調査の結果を鑑みると,世代交代を 契機に 50 歳代を中心とした世帯によって京町家 が取り壊されることを示唆する。他方,20 歳代 は離家による減少,30 歳代と 40 歳代は京町家の 老朽化に伴う建替えによる緩やかな減少であると 考えられる。 15 年間における京町家の取壊し率の空間的分 布を図 8 に示す。取壊し率が 45%を超える地域 は,西陣の広範囲,嘉楽と聚楽,桃薗,小川の街 区内部または主要道路沿いで確認できる。図 1 の 京町家の分布と対応させると,京町家の残存軒数 が少ない地域で京町家の取壊し率が高くなる傾向 にある。つまり,近傍の京町家が取り壊されるこ とで,その周囲に残る京町家も取り壊されやすく なり,京町家の残存軒数に地域差が生じると考え られる。 シナリオ B・C:シナリオ A と比較して,京町 家の修繕費助成を想定したシナリオ B は 約 4%, 修繕費助成を過半以上にするシナリオ C では 約 11%,より多くの京町家を保全できると予測さ れた。シナリオ C の修繕率はシナリオ B の約 1.9 倍であり,京町家の残存軒数は,修繕率に応じて 増加する傾向が確認された。 シナリオ D・E:空家への居住者の斡旋を意図 したシナリオ D と E は,シナリオ A と比較して, 京町家の残存軒数が約 1%しか増加しない。これ は,入居者の斡旋が全体の 10%に満たない空家 の京町家軒数に依存すると同時に,空家の京町家 に世帯が入居するまでに,それらが取り壊される 可能性が高いことが要因として考えられる。 シナリオ F:高度規制を想定したシナリオ F では,シナリオ A と比較して,約 13%多くの京 町家を保全できる。これは,高度規制の強化に よって,別用途への建替えが規制された結果,京 町家の取壊しも抑制されるためと考えられる。シ ナリオ F は,シナリオ B ~ E と比較して,京町 家の取壊しに対する抑制効果が最も大きいことが わかった。 図 7 年 齢 別 人 口 の 推 移(シ ナ リ オ A). Fig. 7 Population change by age group(Scenario A).
図 8 2004 年 か ら 15 年 後 ま で の 京 町 家 取 壊 し 率 の 空 間 的 分 布(シ ナ リ オ A).
10 mメ ッ シ ュ の 中 心 か ら 半 径 100 m の 円 に 含 ま れ る 取 壊 さ れ た 京 町 家 軒 数 か ら 京 町 家 の 取 壊 し 率 を 求 め た.
Fig. 8 Simulated spatial distribution of ratio of Kyomachiya demolitions during the next 15 years from 2004(Scenario A).
Ratio of Kyomachiya demolitions is calculated based on number of demolished Kyomachiya within a 100 m radius from the center of each 10 m mesh.
シナリオ G:京町家保全に対する包括的な政策 を実施した場合,シナリオ A と比較して,比率 にして約 23%,軒数にして約 380 軒と多くの京 町家を保全でき,残存率も 82.5%と京町家保全 に対する最も高い効果がみられた。シナリオ G に関して,試行の一例(図 6)をみると,京町家 の外観構成別の推移は,空家割合が約 8%から約 4%に低下し,建物状態悪化割合は最初の 5 年間 に大きく改善された後,緩やかに低下する。保存 状態悪化割合と近傍の京町家割合は,現状よりも 緩やかな変化が確認できる。つまり,高度規制に よる直接的な建替えの規制とともに,京町家の修 繕費助成や空家への居住者斡旋によって建物状態 や空家率が改善され,さらに近傍の京町家も残存 することで,続く年次でも,京町家が維持されて いく傾向が示唆される。 京町家の居住者の高齢化に関して,シナリオ G の 試 行 で は, 京 町 家 の 60 歳 以 上 人 口 割 合 は 49.2%であり,シナリオ A の試行と比較して約 2%低く,入居者の斡旋による効果がみられた。 京町家に住む上での問題点を鑑みるならば,60 歳以上人口割合の低下は,京町家の保全に対し正 の効果をもたらすと考えられる。 以上,動態的な空間的 MSM を用いることで, 現状を維持した場合および京町家の保全政策を実 施した場合の京町家保全の効果を,京町家の残存 軒数や外観状態,人口構成の時空間的変化から定 量的に把握できた。さらに京町家と世帯・人口の 動態を,GUI 上に年次別に表示し視覚的に把握 できる環境も実際には活用できる。このように, 町家シムは,京町家の保全政策を評価する上での 分析ツールとして有用であると考えられる。 VI.結 論 本稿では京町家とその居住世帯の動態から,京 町家の取壊しを将来的に予測し,京町家の保全政 策の効果を測定することを通じて,動態的な空間 的 MSM(町家シム)を用いた社会経済現象のモ デル化と政策分析ツールとしての有効性を確認し た。本稿の結論は,次のようにまとめられる。 (a)国勢調査や京町家まちづくり調査,PT 調 査等の複数のマクロな統計資料を組合せて,京町 家の居住世帯と世帯人員の合成ミクロデータを作 成できた。この合成ミクロデータは,上記のマク ロな統計資料とも高い精度で整合し,分析に使用 するに妥当であった。これによって,既存のデー タのみでは困難であった京町家の居住世帯と世帯 人員の詳細な人口属性を把握でき,さらにミクロ レベルでの京町家の取壊しの実態と対応させた分 析が可能となった。 (b)オブジェクト指向に基づき町家シムを構 築することで,現実で認識するのと同様に,京町 家と世帯,個人の振る舞いや,主体間の階層関 係,近傍の京町家同士の相互作用をモデリングで きた。さらに,今後,オブジェクト指向の特色で あるカプセル化や継承によって,町家シムで作成 した個人や世帯オブジェクトをほかの都市モデル に再利用でき,新たなモデル構築にかかる労力を 軽減できる。 (c)町家シムによる分析の結果,京町家の現状 での取壊しを維持した場合,2004 年から 15 年 後までに,現存する京町家のうち約 30%が取り 壊され,残存率は 67.3%と予想された。一方で, 修繕費助成や空家への入居者斡旋,高度規制の強 化を組合せた包括的な京町家の保全政策を実施し た場合,京町家の残存率を 82.5%にまで高めら れることがわかった。加えて,町家シムの分析結 果はミクロデータ形式で提供されるため,京町家 の外観特性別に残存軒数や居住世帯の年齢構成等 の推移を把握できる。その結果を分析すること で,京町家の保全政策が京町家の外観特性や居住 世帯の構成に与える影響を測定でき,京町家の取 壊しの因果関係についての示唆的な結果が得られ た。 以上,動態的な空間的 MSM は,非集計レベル でのシミュレーションモデルの構築に必要なミク ロデータを生成でき,その結果,京町家と居住世 帯とを関連付けて,京町家の取壊しをモデル化で きる。また政策シナリオの下で町家シムを実行す ることで,京町家の残存軒数や人口変化等の多面 的な点から政策が及ぼす影響を推定でき,政策分 析ツールとしての町家シムの有用性も確認でき
た。本稿で示した居住世帯と京町家との相互作用 を考慮した動態的な空間的 MSM の構築によっ て,政策分析を目的とした実用的な社会シミュ レーションとして空間的 MSM を活用できること が示された。 今後の課題点として,第 1 に,京町家居住世 帯の合成ミクロデータの推計精度を高めるには, 焼きなまし法で使用する制約条件やパラメータの 変更,その他の組合せ最適化アルゴリズムの検討 が必要となる。第 2 に,京町家や人口・世帯の 動態的なモデリングの改良も必要となる。京町家 の取壊しをめぐる個人や世帯の意思決定プロセス のモデル化や,社会ネットワークを考慮した他者 との相互作用,学習機能の組み込みを通じて,自 律的なエージェントモデルの構築が求められる。 かかる課題点を克服することで,Wilson(2000) が指摘するように,空間的 MSM は,都市の多様 な社会経済現象の解明や政策立案・評価において 有益なツールとして期待できる。 謝 辞 京町家まちづくり調査データを利用させて頂いた京 都市都市計画局都市企画部都市づくり推進課,特定非 営利活動法人京町家再生研究会,財団法人京都市景観・ まちづくりセンターに記して感謝致します。平成 12 年 度京阪神都市圏パーソントリップ調査の利用は,京都 府との共同研究で進めた交通需要管理推進事業基本計 画策定業務での一環である。また本研究は,立命館大 学大学院文学研究科に提出した博士論文を骨子とし, 加筆・修正を加えたものである。研究の推進にあたっ ては,文部科学省学術フロンティア推進事業「文化遺 産と芸術作品を自然災害から防御するための学理の構 築」(研究代表者:土岐憲三)に基づく支援を受けた。 最後に,本論文の執筆に際して,中谷友樹准教授をは じめ立命館大学文学部地理学教室の諸先生方から貴重 なアドバイスを頂きました。深く感謝致します。 なお本稿の一部は,2008 年に行われた第 17 回度地理 情報システム学会学術研究発表大会において発表した。 文 献
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