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建設技術を巡る問題 利用統計を見る

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建設技術を巡る問題

著者名(日)

荻原 国宏

雑誌名

井上円了センター年報

6

ページ

184-178

発行年

1997-07-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002834/

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建設技術を巡る問題

荻原国宏

ogihard kevnihiro はじめに  先に建設技術に関する問題についてまとめてから2年ほどたつ。この 時には高度成長期に出来上がった建設行政における効率的システムが、 低成長期で成熟した社会ではかえって技術革新の阻害になっていること を指摘した。すなわち 1)入札を含めての営業活動が技術力の競争でなく、入札金額を争う営  業力の競争になっている。 2)各種の技術基準、積算基準が新技術の採用を阻害している。これは  会計検査がからみ非常に複雑になっている。高度成長期には、この事  がどの企業に発注しても同質な工事が行われ、均質な仕上がりが期待  できるシステムとして効果を上げることが出来た。 3)しかしこれらの出来上がったシステムは新技術の開発を停滞させる  ことになり、基準を越える新しい発想をし難い状況を発生させてい  る。  その後、建設省により国際化の流れと、相次ぐ入札、契約に関する不 祥事を契機に「公共事業の入札契約手続きの改善に関する行動計画」 (平成6年1月18日:閣議了解)が作られ、平成6年度予算から採用され た。これによって一般競争入札、プロポーザル型入札(技術提案型入札) が導入された。また建設企画を上からの発想でなく、ユーザーフレンン ドリーな利用者からの発想を重視するように転換して情況は変化してき ている。(齋藤広保NHK解説委員「使う側の技術の視点の徹底を」建設業

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界。1997。平成7年9月建設省技術5年計画)  しかしその変化は遅々としている。そこで現在の情況を考察してみ た。 1.技術移転は大丈夫だろうか  技術移転と言うと日本の技術を外国に移転するように考えられるが、 日本国内でも熟練技術者から若い技術者への移転が考えられる。技術基 準、設計基準等の整備がされて、これに従って業務を行うと効率良く仕 事が済まされ、発注者側も理解しているので合意の形勢がしやすい。  さらに会計検査でも、特にミスを起こさない限り問題とならない。し かし、新しい手法、技術を使用して業務を行うと、基準に無いものを使 う理由を説明しなければならない。(「会計検査対応の不毛」日経コンスト ラクション、1994.10.28、ネットワーク)  さらに実績の無いことの条件をクリヤーしなければならないし、積算 基準より早く、安く仕上がったりすると具合の悪いことになる。(「新工 法に前向きな若手に期待する」日経コンストラクション、1993.9.10、ネッ トワーク)  このような情況で育った若い技術者は基準以上の発想が出来なくな る。さらに設計計算、製図がコンピューターで行われるようになって来 ているので、出てきた結果をそのまま信じてしまう。明らかに熟練技術 者が見れば柔らかく、弱い構造物が設計されていても気が付かない情況 が生じてくる。昭和40年台に手で計算し、図面を引いていた技術者が経 験から得られる感覚として持っていたものを持てない時代となってい る。技術基準に表せない事象の考えかた、硬く表現すると哲学が、これ らの熟練技術者が定年を迎える年齢となり、技術を移転しない限りその 人と共に技術は消えて行くことになる。(日経コンストラクション、1993. 11.12、「勘を養えない若手の技術者に思う」)

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 このような状況は国内のみでなく海外工事、海外コンサルタント事業 でも生じており、日本人の人件費が高いために若い日本の技術者を派遣 できず現地の技術者、外国人技術者を雇うことになり、技術移転は外国 人にされることになる。国際企業としては生き残れることを考えると企 業としては好ましいことであろう。  このような状況を考えると、前記建設省の方針転換を受けての、すで に出来上がっている基準に固執した発想から脱却し、新技術を発想転換 できる状況が生ずることを望む。(「マニュアルに無い対応も必要」日経コ ンストラクション、1994.4.22ネットワーク他) 2.コンサルタントは本当の技術力を持てるか  日本の建設技術はどこにあるのだろうか、官庁、コンサルタント、建 設会社、専業メーカー、専門工事会社、大学のどこだろうか。このこと については、かなり前から議論されて来た問題であるが、未だに残され ている問題である。  コンサルタントが提唱するATI構想(Attractive, Technologically spirited, Independent)が出されて居るにも拘わらず、技術力をあまり評 価されない。  施工技術が分からない、提案力がない、成果品にゼネコンン、メーカ ーが手を入れないと使えない。(寺田和巳「建設コンサルタンントは何故育 たないのか」土木学会誌1997.4、VOL.82:論壇)。  あるいはゼネコンン、メーカーにサービスを強要する、等と言われて いる。発注者や建設コンサルタントが施工のノウハウを持たないものだ から、設計段階からゼネコンに施工方法を検討させ、協力したゼネコン に見返りとして、工事を発注していたケースも多かったのではないか。 (「なれ合いの談合ばかりじゃない」日経コンストラクション、1994.11.11、 ネットワーク)

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 この背景にはコサルタントの仕事が非常に広範囲であり、一人の技術 者の能力ではこなしきれない、かといってチームワークでの仕事をする 態勢になっていない。そこで専業メーカー、ゼネコンの力を借りる訳で あるが、サービスとして無料でやってもらう。この付けはいずれかの工 事でメーカー、ゼネコンは回収することになる。または工事取得のお墨 付きを得ることになるわけである。コンサルタントの標梼する中立性は 失われてしまいかねない事態が生ずることになる。健設コンサタント協 会倫理綱領:平成3年5月1日)  この事に付いては朝日新聞論壇に載った圓堂政嘉「日米建設交渉で問 われる倫理」と、これに対する建設コンサルタント協会の反論「建設コ ンサルタントはダミーに非ず」でも問題にされている。(明日への JCCA、1994、 vol.182)  従って、専門性を要求される仕事については外注経費を見込んで置 き、その技術を得意とする会社に外注するとか、専門技術を持つコンサ ルタント、メーカーとJVを組み仕事をする等考慮してゆく必要があ る。しかし、現実には発注者側の小間使い的な仕事もしなければ成らな いとすると、高度の専門性を持つ仕事と区分して受注するようにしなけ れば成らないでしょう。サービスとしての仕事をセットで受注、発注す るような事を官民双方がしている情況では、技術の進展は有り得ないだ ろう。これらのことは契約条項が比較的大まかである点が特徴の日本的 体質の現われで、契約としてする仕事の範囲が発注、受注者の双方でず れがあるときに問題が顕在化するのであろう。  さて標題の「コンサルタントは技術力を持てるか」に付いてである が、提案型の入札が十分に機能するようになれば、コンサルタントは技 術力での競争が必要になる。当然に会社は技術力開発に力を入れるよう になるので技術力を持てるようになるものと考える。しかし、仕事の範 囲が非常に広いので、個人の技術者として処理できる範囲は限定されて

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しまうであろう。そこで今後はチームワークとして技術処理をしていか なければならないでしょうし、高度に専門的な問題は専門メーカー、ゼ ネコンの技術者の技術提供を得なければならないでしょう。当然従来の ようなサービスとして行ってもらう姿勢は止めて、正当な対価を支払う 必要があると思われる。  コンサルタントは得意とする技術をより生かす方向になるであろう し、その技術力を生かす営業活動をするようになることが予測される。 したがって技術者自身も、企画を得意とする、調査を得意とする、設計 を得意とする、特殊構造物の設計と得意とする、施工管理を得意とする などと技術者の持てる技術も特殊化しより専門化しなければならなくな るであろう。  このように本当に技術による競争の世界になると、会社は技術開発に 投資をしなくてはならなくなるし、有能な人材を抱えなくてはならな い。当然に欧米なみに技術者の引き抜きも生じてくる可能性がある。そ こまで踏み込んだ提案型の入札制度が発注者側、受注者側の双方で覚悟 して出来るか否かが、今後の技術開発の鍵となると考えられる。  また会計検査の方針も施工、積算、設計ミスのチェックから事業の無 駄についても問題提起する方向に動くようになると、従来の基準にもと ずくチェックから企画、計画、施工の考え方へのチェックへと変わる可 能性がある。このことは技術開発を促進するのか停滞させるのか不明で あるが、物の考え方を問われるようになるので多分促進する方向に動く と期待される。(「会計検査院が目指すもの」白川健(元会計検査院事務総局 次長)談、日経コンストラクション、1997.3.28、会計検査報告のコラム) 3.談合は無くなるだろうか  この春に大阪で建設業の談合組織を業界内部の紛争として告発するこ とが新聞で報道されたのは注目された。これは従来型の談合では行けな

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くなって来たのか、単なる業界の中の主導権争いなのか経過を見ないと 判らない。しかし、談合問題は建設業界に限った問題では無いが、度々 発生するのでこの業界特有のものと誤解されている。  提案型の入札制度がまともに実施されると、談合はし難くなるでしょ う。しかし業界内部でも談合肯定論まではいかなくても、なくせないな ら誤解を受けないように行うべきとの意見もある。(「施工業者を話し合 いで決める」1994.5.13、「健全な調整を経て一般競争へ」1994.5.13、「清 く正しい談合はできないものか」1994.4.8、「なれ合いの談合ばかりじゃな い」1994.11.11、以上日経コンストラクション、ネットワーク)  この問題は受注者のみの問題でなく、発注者側をも含む業界の体質の 問題でもあると考えられる。一般競争入札、提案型入札を導入して技術 競争が行える環境へと変化している。が、ある社が技術開発を行って積 算基準に無い工法で破格の価格で工事を完成するような事態が生ずるこ とは現段階では望まれていない。特にその工法を特許にして独占的に実 施することは望ましくなく、少なくとも共同実施権を業界に開放しなけ ればならないでしょう。  また発注者側、受注者側の双方に根強くあるのは、破格の価格で受注 した業者が行う粗悪工事の付けの処理方法が見当たらなく、この業界で の価格破壊はその辺の問題処理が上手く出来ない限り難しいとの見方も ある。(「自由競争の前に議論すべき事」1993.12. 26、「公共事業にも「価格 破壊を」」1994.10.28、日経コンストラクション、ネットワーク)  しかし、技術力が受注活動の鍵になる時代が来るためには、まだ相当 の年数を要するような気がしてならない。建設行政システムが徐々に変 化してきているので、早晩変わって来ると期待している。 おわりに  井上円了センターのプロジェクト研究「日本の研究」に参加して、2

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期の研究活動をしてきたが。もともと私の専門とするところは自然科学 そのものであって、社会科学では無いが、この研究に参加して大変な問 題を研究テーマにしてしまったと考えている。しかしせっかく作ったデ ーターべ一スをより価値ある物にするためにも研究を続行する羽目にな った。  高度成長社会をもたらした効率的な、均一的な建設システムが低成長 期、国際化の時代になって機能しなくなっている状況となってきてい る。建設省が入札制度(一般競争入札、提案型入札)を改革し、技術重視 の方向に向かっているのは評価できるが、まだ緒についたばかりでこの 制度が技術改革につながって行くかは、発注者、受注者を含めてこの業 界に生きている人たちの覚悟次第であると考える。  国際化の時代に入り、日本の建設市場の開放が要求されているが、日 本の建設技術が国内ばかりでなく海外でも通じる実力(技術、価格の双 方で)を持つためには、技術者が比較的自由に発想できる建設行政シス テムを作る必要があると考える。例えばロンドンのテームズ川のテーム ズバリヤーの水門の形式は日本ではまず発想できないタイプである。ま た日本ではやたらに斜長橋ばかりが目に付くが、「英の橋梁コンペに集 まった衝撃作一日本ではお目にかかれない構造デザインの数々」(日経 コンストラクション、1997.4.11)のような発想は現段階では出てこない でしょう。  まだデーターべ一スは蓄積を続けている。次期の研究は高度成長社会 に完成した効率的な、均一的な建設システムを支えた大学における土木 教育の果たした役割に視点を移したいと考えている。

参照

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