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(1)

会社分割の法制について

著者

小関 健二

著者別名

K. Koseki

雑誌名

東洋法学

17

1

ページ

95-113

発行年

1973-11

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006094/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

会社分割の法制について

関 健 二

七六五四三二一

はじめに 両私案の相違 会社分割の意義 株式の割当と減資 会社分割の運営 分割合併の麟度 創立総会と設立委員 はじめに  筆者はさきに、更生計画にょる会社分割の事例をあげて、更生会社が会社分割の方法によって再建に成功した実例 を紹介したが︵商事法務研究五六三号︶、通常の会社においても、会社分割の必要なことがしばしばある。しか し、この場合には、現行法上会社分割の規定がないので、ω現物出資 ⑧財産引受 ③事後設立 等の方法によっ    会社分割の法制について       九五

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   東 洋 法 学      九六 て、営業譲渡又は資産譲渡をなし.実質上その目的を達している︵その事例については、武田昌輔著﹁会社分割の法 人税務﹂壬二五、二三六頁参照。株式会社日立製作所が日立金属工業株式会社および日立電線株式会社を分割設立し た手続等の詳細は商事法務研究四八一号に掲載されている。︶。  しかしながら.このように会社分割を正面から認めた法制がないため︵例外は会社更生法二二六条︶.その実行手 続上の不便や税制上の措置の不均衡が生じており.資本取引の自由化に伴う産業の再編成を促進するため.その法制 化の早期実現が望まれている.そこで.既に発表きれている商法改正研究会の商法改正要綱私案︵商事法務研究五〇 一号.以下単に研究会案という、︶および吉照昂弁護士の吉田私案︵商事法務研究五三六号.以下単に吉田案という︶ に関して.いきさか私見を述べてみたいと思う、なお.以下の記述の参照のため.次に両私案を対照して転載する.   研究会案 一 ︵分割計画書.分割合併契約書の承認︶ 会社が分 割又は分割合併をするには.分割計画書又は分割合併 契約書を作成し.株主総会の特別決議による承認を得 なければならない。 ︵現行第四〇八条参照︶   吉田案 一 会社が分割をするには.分割計画書を作成し.株主 総会の承認を得なければならない。  商法圏○八条二項三項の規定は.前項の場合に準用 するQ  分割をする会社の定款に.株式の譲渡につき取締役 会の承認を要する旨の定がない場合に.分割に際し、 新設会社又は分割後の会社の定款に.その定をすると

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二 ︵分割計画書の記載事項︶ 1 分割によって新会  社を設立する場合には、分割計画書に、次の事項を記 載しなければならない。 ︵現行第四一〇条、会社更生 法第二二六条参照︶   e 新設会社の商号、目的、本店の所在地及び公告    の方法   口 新設会社が発行する株式の総数   日新設会社が額面株式を発行するときは一株の金    額   四 新設会社が分割に際して発行する株式の総数、    額面無額面の別、種類並びに会社の株主に対する    新設会社の株式の割当に関する事項   ㈲ その他新設会社の定款に記載すべき事項   ㈹ 新設会社の資本の額及び準備金に関する事項    会社分割の法制について きは、第一項の決議は、第三四八条一項の規定によら  なければならない。この場合には、四〇八条五項の規 定を準用する。 二 分割計画書には、次の事項を記載しなければならな  い。 ⑨ 新設会社につき一六六条一項一号から四号までに   掲げる事項、数種の株式を発行するときには、その   種類及び数、株式の譲渡につき取締役会の承認を要   する旨を定めるときは、その規定並びに本店の所在   地 口 新設会社が分割に際し、発行す各株式の総数、額   面無額面の別、種類、数、並びに存続会社の株主に   対し、新設会社の株式を割り当てるときは、その割   当に関する事項  日 新設会社の資本の額及び準備金に関する事項  ㈹ 分割によって新会社に移転すべき財産及びその価   格並びに移転しない財産及びその価格        九七

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   東 洋 法 学   ㈲ 分割によって新設会社に移転すべき財産及びそ    の価格   ㈹ 分割によって連帯債務を負う場合の負担部分  露 分割後会社が存続する場合には.存続する会社に   つ熱.分割計画書に次の事項を記載しなければなら   ない.   9 減少すべき資本及び準備金の額   口 資本減少の方法   日 分割後の発行済株式総数   鱒 会社の発行する株式の総数を減少するときは.    その減少すべき株式の総数、種類及び数   ㈲ その他定款変更を生ずる事項 三 ︵分割合併契約書の記載事項︶ 1 甲会社の一部   が乙会社と分割合併し.乙会社が存続する場合に   は.分割合併契約書に次の事項を記載しなければな   らない。 ︵現行四〇九条参照︶   e 乙会社が分割合併によりその発行する株式の総       九八 ㈲ 分割前の会社の債務につき.分割後の各会社が連  帯して責任を負担する場合には.その旨及び各会社  の負担部分 因 存続会社の資本を減少する場合には.その資本の  額及び資本減少の方法 ㈹ 存続会社の分割後の発行済株式総数 内 各会社の株主に対し支払をなすべき金額を定める  と蓉は穐その旨 三 会社が分割をする場合には、一の総会において設立 委員を選任しなければならない。   設立委員は.三名以上とし.新設会社の定款の作成  その他設立に関する行為をなす権利義務を有する。

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 数を増加するときはその磐加すべき株式の総数、

 種類及び数

⇔乙会社が分割合併に際して発行する新株の総   数、額面無額面の別、種類及び数並びに甲会社の   株主に対する乙会社の株式の割当に関する事項 日 乙会社の増加すべき資本の額及び準備金に関す   る事項 四 甲会社の株主に支払をなすべき金額を定めたと   きはその規定 ㈲ 各会社において一の決議をなすべき株主総会の   期日 ㈹ 分割合併をなすべき時期を定めたときはその規   定 ㈹ 二のユひ9に掲げる事項 2 甲会社の一部が乙会社又は乙会社の一部と分割合  併し、新会社を設立する場合には、分割合併契約書  に次の事項を記載しなければならない。   会社分割の法制について 九九

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   東 洋法 学  e 二の王e乃至日及び国㈹に掲げる事項  口 新設会社が分割合併に際して発行する株式の総   数.額面無額面の別.種類及び数並びに各会社の   株主に対する株式の割当に関する事項  の 各会社から新設会社に移転すべき財産及びその    価格   四 各会社の株主に支払をなすべき金額を定めたと    きはその規定   ㈲ 前項樋乃至㈲に掲げる規定  3 前2項の場合において各会社の分割合併しない部   分については二のーまたは2を準用する。 四 ︵貸借対照表の作成、備置。公示︶ ︵現行第四〇八  条ノニ参照︶ 1 会社は分割する部分ごとに貸借対   照表を作成し、一の株主総会の会βの二週間前より   本店に備置くことを要する。  2 分割合併の場合には前項の貸借対照表のほか、相   手方会社の貸借対照表を備置くことを要する。 一〇〇 四第一〇〇条及び第三七六条の規定は.分割の場合に  準用する。ただし・分割前の会社の債務を分割後の会  社が連帯して弁済の責任を負う旨を定めた場合には.  この限りでない。

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 3 株主及び会社の債権者は、営業時間内何時でも前   2項の貸借対照表の閲覧を求め、または会社の定め   た費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求   めることができる。 五 ︵反対株主の株式買取請求権︶ ︵現行第四〇八条ノ  三参照︶ 1 一の株主総会に先立ち、会社に対し   書面をもって分割又は分割合併に反対の意思を通知   し、かつ総会において分割計画書又は分割合併契約   書の承認に反対した株主は、会社に対し自己の有す   る株式を、承認の決議がなければそれが有するはず   であった公正な価格をもって買取るべき旨を請求す   ることができる。  2 第二四五条ノ三及び第二四五条ノ四の規定はこれ   を準用する。 六 ︵債権者の保護︶ 1 分割または分割合併後の存   続会社及び新設会社は、分割前の会社の債務につき   連帯して弁済の責に任じなければならない。ただし、    会社分割の法制について 五 存続会社が分割に際し、資本を減少する場合におい  ては、その株主に対し新設会社の株式を交付し、存続  会社の株式を消却することができる。   第三七七条から三七九条までの規定は、会社分割に  よる株式の併合に準用する。 六 第二四五条ノニから二四五条ノ四までの規定は、  割の場合に準用する。 一〇一 分

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   東 洋 法 学   各債権者と別段の約定をすることを妨げない。  2 会社の債権者の異議については、第一〇〇条を準   用する。  3 社債権者の異議については.第三七六条第三項を   準用する。 七 ︵株券提供手続︶   分割又は分割合併による株式併合の場合には.第三  七七条乃至第三七九条を準用する。   は.貸借対照表の資産の部に計上することができ   る。この場合には.その取得価額を附し.その取得   後五年内に毎決算期に均等額以上の償却をしなけれ   ばならない。 ︵現行第二八五条ノ七参照︶  2 分割若しくは分割合併の新設会社又は分割合併の  工 分割または分割合併により暖簾を取得した場合に 八 ︵分割および分割合併に関する計算︶ 一〇二 七 新設会社は分割前の会社の権利義務を分割計画書の  定めるところにより承継する.   前項の権利のうち債権については.旧会社に対して  なした弁済は.弁済者が善意にして.かつ.重大なる  過失がなかったときに限り.その効力を有する. 八 第二八五条ノ七の規定を改正し.分割により取得し  たのれんについても.同条の規定を適用するものとす  る。

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  存続会社に分割又は分割合併により生じた差益は、   資本準備金として積立てなければならない。ただ   し、この差益中分割きれた会社の利益準備金その他   留保利益金その他留保利益の額に相当する金額は、   資本準備金としないことができる。この場合には、   その利益準備金に相当する金額は、新設会社または   存続会社の利益準備金としなければならない。 ︵現   行第二八八条ノニ参照︶   主総会はその創立総会を兼ねることができる。   る。   五六条第三項第四項及び第四一三条を準用する。   分割若しくは分割合併の新設会社又は分割合併の存    会社分割の法制について 一〇  ︵分割の効力︶  3分割合併によって新会社を設立する場合には、第  2 三のーの乙会社については、第四二一条を準用す  1 分割によって新会社を設立する場合には、一の株 九 ︵創立総会、報告総会、設立委員︶ 九第二八八条ノニの規定を改正し、分割差益につき、  同条一項五号、二項を適用するものとする。 一〇 四一四条の規定は、分割による変更の登記及び分 割による設立の登記に準用する。        一〇三

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   東洋法学

続会社は.分割された会社の権利義務を分割計画書の 定めるところにより承継する。 ︵現行一〇三条参照︶ 二  ︵分割及び分割含併無効の訴︶  合併無効の訴に準じた規定を置く。 一〇四 コ  四一五条の規定は.分割無効の訴に準用する。

二 両私案の相違

 吉田氏は.普通いわれる会社分割は.企業分割のことであり.現行法上の営業譲渡の方法により十分その欝的が達 せられ.税法上の不都合は、税法上の取扱を変更すればよいのであって.そのために商法を改正する必要はないとき れつつ.存続会社の資本減少と新設会社の株式を存続会社の株主に分配する問題等から.立法上解決することが望ま しいときれ.吉田案を作成された。  研究会案は.合併に関する現行法と会社更生法の新設会社設立に関する規定をミックスして作成されたもので.現 行法の改正として.会社分割が取り入れられる以上.妥当なものである。これと吉田案との相違については、氏自身 意見を述べておられるので︵商事法務研究五三六号三頁︶.そのうち主要な点について.更に私見を述べることとす る。  の 吉田氏は.研究会案の分割合併の制度は、営業の一部を現物出資するのであるから、現行法で足り、その制度 を認める必要がないといわれる。しかし、そのような見方をするのであれば、分割による新会社設立も.同じく営業

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の一部の現物出資であり、この両者の違いは、新株発行時の現物出資か、会社設立時の現物出資かの違いに過ぎない ので、これを理由として否定する根拠は薄弱であるといわなければならない。  口 吉田氏は、研究会案の二つ以上の新会社を設立して、旧会社が消滅する分割の方法を認めない。しかし、合併 において、吸収合併と共に新設合併が認められている以上、分割においても、存続分割と共に解散︵消滅︶分割を認 めても均衡上差支えないと思う。実際には、新設合併の事例が少ないと同様に、解散分割が行われることは少ないで あろうが、制度上は設けるべきである。  日 分割の場合に、研究会案は、常に、旧会社の株主に対して新会社の株式を割当てるものとするのに対し、吉田 案は、それを、旧会社の株主に割当てるかどうかは、計画で自由に定め得るものとする。この点は、吉田案の方がま さっている。しかし、吉田案は、旧会社の株主に割当てないものとすれば、旧会社自体に割当てることとなるとされ るが、これについては、更に、弾力的に老える必要があると思う。この問題については、項を改めに私見を述べる。  四 吉田案は、分割による新設会社のため設立委員の選任を要するとされ、また、研究会案の分割計画書承認総会 が創立総会を兼ねることができる旨の規定に反対されているが、この点に関する私見も後述する。

三 会社分割の意義

分割が営業の一部の現物出資であるというのであれば、合併は営業の全部の現物出資であるといわなければならな い。このように、一つの会社のサイドから、主観的にこの事象を観察するときは、分割と合併とは、同一方向の現象    会社分割の法制について       一〇五

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   東洋法学       一〇六

であるが、客観的に全体を観察するときは、分割と合併とは、全く逆の作用を営んでいる。合併の法制が必要であっ たと同様に、分割の法制も必要であったのである。  いったん合併した会社を.何らかの理由で元に戻す必要が生じたときに.どうしたらよいであろうか。それが.合 併の臼から六月内で.合併手続に瑠疵があれば.合併無効の訴によって.これを元に戻すことができる。合併無効の 判決の確定によって.実質上の会社分割が行われる。しかし.合併の日から六月以上経ってしまうと.現行法上はど うすることもできない。このような場合にも.分割の規定があれば好都合である。  営業の譲渡は.一種の取引であって.その対価が会社に入るのに対し.合併や分割は.取引ではなく.会社組織上 の間題である。二つ以上の会社が合体して一つの会社になるのが合併であり.逆に.︸つの会社を二つ以上の会社に 分けるのが分割である。営業の譲渡の方法によっても.企業分割の目的を達することはできるが.法定の会社分割に よる利点は.合併の場合と同様に会社財産の包括承継がなされることである。  また、研究会案の分割合併は、二つ以上の会社が、分割と合併を同時に行う場合を想定しており.妥当な立法である。

四 株式の割当と減資

会社の分割において.一番問題となるのは.新設会社の株式をどのように割当て.存続会社の資本の減少をどうす るかである。この問題を解く前に、分割が合併の逆の現象であるということから、まず.合併の場合に.合併新株が どのように割当てられ.資本がどのよう鉦増加するかを検討彩てみる必要がある。

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 以下、論述を簡明にするため、会社はすべて額面株式のみを発行し、 ﹁資本の額H額面金額x発行済株式総数﹂で あることを前提とし、合併比率が一対一の対等で、二社の吸収合併の場合を想定して論を進める。  この場合、合併新株の発行と資本増加の関係は、次の三つに分けることができる。  臼D 全株発行・全額塔資の場合  もっとも一般的で、原則的な場合である。解散会社の全株主に対し、一対一の割合で存続会社の株式を割当て、存 続会社の資本の額は、解散会社の資本の額と同額だけ憎加することになる。  図 一部発行。一部増資の場合  存続会社が解散会社の株式を一部所有している場合に、合併により、この株式にも合併新株を割当てると、存続会 社は自己株を取得することになり、商法の規定によれて、相当の時期にこれを処分しなければならないことになる ︵商法一二一条︶。そこで、通常は、この存続会社が所有する解散会社の株式に対しては、合併新株の割当をしな い。従って、この場合は、存続会社の合併によって増加する資本の額も、その分だけ少なくなるのである。  ③ 新株不発行・資本金不変の場合  存続会社が解散会社の全株式を所有している場合には、合併により、新株式は全然発行せず、資本の額も増加しな い。この合併によって、存続会社の貸借対照表は、投資の部の子会社株式欄に計上されている解散会社の株式に代っ て、解散会社の資産と負債および諸準備金が計上されることになるに過ぎないのである。  以上のことから、分割の場合について、これを逆に老えると、次のようになる。    会社分割の法制にっいて       一〇七

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   東洋法学      

一〇八  ① 全部割当・全額減資  合併のωの逆にあたる場合で.新設会社の資本の額に相当する株式を全部存続会社の株主に割当て、存続会社は、 これと同額の資本の額を減少する方式である。ただ.合併の逆であるからといって、存続会社の株主のうち.特定の 株主の株式を新設会社の株式に振替えるような定めをすることは.株主平等の原則から許されない。従って.原則的 には.新設会社の株式は.存続会社の株主にその所有する株式の数に応じて割当てられ.存続会社の資本減少の方法 も.一般的には.株式併合の方法によると思われる.特別の方法については後述する.  ② 一部割当・一部減資  合併の働の逆にあたる場合で.新設会社の株式の一部を存続会社に割当て.残りを存続会社の株主に割当てる方式 である。存続会社の資本の額は.存続会社の株主に割当てられた株式に相当する分だけ減少することになる。この場 合.存続会社に割当てる株式と存続会社の株主に割当てる株式の割合は、新設会社の実情に従い、計画で自由に定め ることができる。

 ③完全子会社設立

 合併の③の逆にあたる場合で.新設会社の株式を全部存続会社に割当て.存続会社の株主には割当てない方式であ る。従って、存続会社の資本の額は.全然減少しないことになる。  このように.会社を分割するに当っては.その株式の割当と資本減少に関して、原則的に三つの方法が老えられ る。そして、具体的場合には.各会社の実情により.それぞれ、その方針なり.考え方が異なるので.何れの方式に

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よるかは、計画で自由に定め得るようにするのが望ましい。  よって、研究会案の二1四又は吉田案の二口は、次のように改めたい。       ヤ  ヤ  ヤ  ﹁新設会社が分割に際して発行する株式の総数、額面無額面の別、種類及び数並びに会社又は会社の株主に対する 新設会社の株式の割当に関する事項﹂

五 会社分割の運営

 会社を二分するような分割であれば、当然存続会社の資本の額も減少しなければならず、前記①又は②の方式によ って分割が行われるであろう。しかし、一部門を独立させて別会社とするようなときで、必ずしも存続会社の資本の 額を減少させなくてもよい場合もある。この場合、③の方式によれば、もちろん問題はないが、存続会社の株主にも 株式を割当てたいときはどうしたらよいか。そのようなときは、実質上の株式分割として、新設会社の資本金の一部 ︵存続会社にも株式が割当てられる場合︶又は全部︵全株式が存続会社の株主に割当てられる場合︶を、存続会社の 準備金を減少する方法によってまかない、その目的を達することができる︵研究会案二2e参照︶。すなわち、準備 金を資本に組入れて新株を発行するかわりに、準備金を新設会社の資本金にして新設会社の株式を存続会社の株主に 割当てるというわけである。  次に、会社を分割して存続会社の株主に新設会社の株式を割当て、存続会社の資本を減少する場合において、新設 会社の株式を存続会社の株主にその所有株式の数に応じて割当てるのではなく、株主の希望によって、新設会社の株    会社分割の法制について       一〇九

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   東洋法学      二〇 式をとるか、存続会社の株式をとるか.その選択権を株主に与えることはできないであろうか。存続会社の資本の減 少は.既発行の株式を消却すればよいのであるから.理論上は.新設会社の株式を希望する株主の所有する存続会社 の株式を任意消却すれば.その目的を達することができるようである。問題は.全株主に平等にその機会を与え.し かも.予定の株式数を確保する技術上の点にある。  一案として.その場合の分割計画書の記載例を書いてみよう.  ○ 新設会社の株式割当に関する事項    新設会社が分割に際して発行する株式の総数○○株を次のとおり割当てる.   ω 会社に対して○○株   鋤 新会社の株式割当を希望する株主に対して○○株     ただし.新設会社の株式割当を希望する株主は.所定の株式割当申込書に申込株式数と同数の存続会社の株    式の株券を添付して申込むものとし.申込書の到着順にこれを受付け.満株になり次第申込受付を締切る。     なお.新会社が設立し.新設会社の株式の割当を受けたときは.当該株主の有するそれと同数の存続会社の    株式は消却きれるものとする。  ○ 資本減少の方法    新会社の設立と同時に.新設会社の株式の割当を受けた株主の有するそれと同数の株式を消却する。    消却する株式は.額面普通株式○○株である。

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六 分割合併の制度

 研究会案の分割合併の制度について、吉田氏は、営業の一部の現物出資であるから現行法で足り、不要であるとき れるが、それがこの制度を否定する絶対的理由とならないことは、前述のとおりである。また、大野博士は、この分 割合併の制度のうち、分割合併による新会社設立の規定は、分割による新設会社と他の会社との新設合併であるか ら、現行法で足り、不要であるとされるが︵大野実雄薯﹁株式会社の分割と分割合併﹂一〇九頁︶、この理由からす れば、分割合併により会社の一部を分割して他の会社に吸収合併させる場合も、分割による新会社を設立した後、現 行法により吸収合併すれば足りるから不要であるといわぎるを得ないことになる。  研究会案によ呑﹁分割合併﹂とは、 ﹁分割と同時に合併を行う場合﹂あるいは﹁合併を伴う分割﹂の意味であり、 フランス会社法の解釈としての分割合併とは異なる。合併には吸牧合併と共に新設合併が認められているのであるか ら、分割合併においても、この両者の規定が必要である。大野博士の説に従って、分割合併による新会社設立を実行 することは、もちろん可能であるが、その場合、まず分割により新会社を設立し、新会社設立後、新設会社同士又は 新設会社と他会社とが、更に合併契約を締結した上、新設合併手続を進めなければならない。これに反し、研究会案 によれば、会社分割の手続と新設合併の手続とを一挙に行うことができ、その実益は大であるといわなければならな い。  以上要するに、研究会案を現行法に取入れることにより、吸収合併と新設合併に並んで、存続分割︵吸収合併の    会社分割の法制について       一二

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   東洋法学      

一二一 逆︶と解散分割︵新設合併の逆︶ができ、更に、この分割と合併を同時に行う場合として、吸収分割合併︵分割と吸 収合併の組合せ︶と新設分割合併︵分割と新設合併の組合せ︶ができ.合併および分割に関する規定が整備されるこ とになる。  次に.分割合併の場合における株式の割当に関しては.分割の場合における全く同様の問題が生ずる。分割の場合 について記述したのと同一の理由により.研究会案の規定の心部について.次のとおむ修正を加えたい.       や  ゆ  ゆ  ゆ  な  三黛⇔を﹁乙会社が分割合併に際して発行する新株の総数.額面無額面の別.種類及び数並びに甲会社又は甲会社 の株主に対する乙会社の株式の割当に関する事項﹂に.三驚⇔を﹁新設会社が分割合併に際して発行する株式の総       ゆ  ゼ  な  ゼ  や 数.額面無額面の別.種類及び数並びに各会社又は各会社の株主に対する株式の割当に関する事項﹂にする.

七 創立総会と設立委員

 分割によって新会社を設立する場合に.研究会案は.分割計画書承認総会は新会社の創立総会を兼ねることができ るとし︵九i︶.吉田氏は.これに対し.分割計画書承認総会は分割の予定の段階であるから、後日創立総会を開か なければならないといわれる。  しかしながら.分割による新会社設立においては.新設会社の株式引受人は.存続会社又は存続会社の株主あるい はその両者であって、他に株式引受人となるものはない。従って、存続会社の分割計画書承認の決議があった以上重 ねて創立総会を開く必要はないのではないか。これは.発起設立の場合に創立総会が開かれないのと洞じ理屈であ

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る︵会社更生法二四九条参照︶。ただ、創立総会を開かないものとすると、新設会社の取締役および監査役を分割計画 書に記載するか又はその選任方法を定めておかなければならないことになる︵会社更生法二二六条一項九号参照︶。  従って、研究会案二1のひ9をσ⇒とし、ひ 9として﹁新設会社の取締役、代表取締役及び監査役となるべき者又はその 選任若しくは選定の方法並びに任期︵ただし、一年をこえることができない。︶﹂を加える。その結果、三1㈹に﹁ 二のi㈹﹂とあるは﹁二のーσゆ﹂に修正することになる。  次に、吉田案では、分割において設立委員の選任を定めているが、分割合併により新会社を設立する場合は別とし て、単なる分割においては、被分割会社︵株主を含む。︶以外に新会社設立に関係を有するものはないのであるか ら、設立委員の選任は必要ない︵商法五六条三項参照︶。分割による新会社設立においては、定款の作成その他設立 に関する行為は被分割会社自体が行うことになる︵会社更生法二四七条三項参照︶。  以上の点を明確にするため、研究会案九iを次のように改めたら如何であろうか。  ﹁分割によって新会社を設立する場合には、定款の作成その他設立に関する行為は会社が行い、創立総会の決議を 要しない。﹂ 会社分割の法制について 一一三

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