この度,久津内一雄教授,松葉正文教授,山下秋二教授の定年ご退職を迎えるにあたり,産業社会学部・社 会学研究科を代表して,挨拶をさせていただきます。 3名の先生方は,それぞれ35年間,34年間,7年間と,教授会に所属された期間に差異はあるものの,産業 社会学部・大学院社会学研究科での教育,研究指導とともに,教養教育や副専攻をはじめとする立命館大学 全体の教学の発展に貢献され,多くの卒業生・修了生を社会に輩出してこられました。以下,それぞれの先 生方のご経歴を簡単に紹介させていただきます。 久津内一雄先生はフランス語の基礎教育ならびに副専攻科目等の授業を担当されました。先生のフランス 語教育では言語と社会そして文化との関連が意識され,著名な言語学者であるソシュール以降の言語学と言 語思想に着目し,言語活動がいかに社会と文化に深く関与しているかが重視されています。このような先生 のフランス語教育が,スタンダール,バスザックそしてメリメといった,19世紀フランス文学研究の成果に依 拠していることはいうまでもありません。先生はこうしたフランス語教育とともに,異文化理解の視点によ る言語文化論や映画芸術論といった専門科目も担当されています。また,先生はフランス語・フランス文学 会,日本哲学会,日本言語学会でも活躍されました。 久津内先生は学部では学生主事を,また全学役職として教学部副部長(国際化担当),外国語教育センター 長を,それぞれ務められました。この点と関連し,先生は詳細な調査に基づく産社学生の実態分析にも取り 組まれ,当該論文は学生実態把握にとっての先駆的な研究成果となっています。 松葉正文先生はドイツ社会経済史,現代日本経済論,現代市民社会論の各分野において精力的に研究成果 を発表してこられました。それぞれの分野における先生の研究成果・多数の著作及び論文(和書,洋書)は, そのすべてが秀逸したものであり,学会(界)での高い評価をえています。先生はドイツの最も著名な社会史 研究者の一人,J.コッカ氏とのネットワークをいかしながら,ヨーロッパそして日本における市民社会研究分 野の第一線で活躍され,その研究成果の一部は本誌においても論文あるいは翻訳として掲載されています。 先生はクラッシック音楽や芸術に関しても造詣が深く,またベルリン・フンボルト大学の経済史研究所,ベ ルリン自由大学の歴史学部マイネッケ研究所との間で長年にわたる交流も続けておられます。このような重 厚かつ緻密な研究成果をベースに,先生は学部ならびに大学院において日本経済論や市民社会論等の科目を 担当され,多くの優れた学生ならびに大学院生を社会へ輩出されています。 松葉先生は学部において学生主事,大学院研究科主事(現副学部長),副学部長(教学担当)といった重要 な役職を務められました。 久津内一雄先生,松葉正文先生,山下秋二先生の定年ご退職にあたって(有賀郁敏) 1
久津内一雄先生,松葉正文先生,山下秋二先生の
定年ご退職にあたって
有賀 郁敏
産業社会学部長・社会学研究科長 『立命館産業社会論集』 第50巻第1号 2014年6月山下秋二先生は2007年度のスポーツ社会専攻立ち上げに際して,キーパーソンとして赴任されました。ス ポーツ経営学の泰斗である先生は,わが国におけるスポーツの産業化をはじめとする諸変化を「スポーツ・ イノベーションの普及」といった観点から科学的に解明することに加え,これまで未成熟であったスポーツ 経営学の理論体系化に取り組む等,学術面において多大なる貢献を果たしてこられました。山下先生が構想 するスポーツ経営学は,学校や企業,地域といったセクター間の違いを超えて共有される理論の構築を目指 すものであり,その意味で研究の射程はスポーツビジネス,体育科教育そして地域スポーツ等の幅広い領域 へと広がっており,このような研究面での成果は,学生ならびに大学院生に対する優れた授業展開ならびに 研究指導において十全にいかされています。 山下先生は日本体育・スポーツ経営学会の理事を務められるとともに,京都市市民スポーツ振興計画策定 委員会委員長,京都市スポーツの絆が生きるまち推進会議(スポーツリエゾン京都)委員長として,長年にわ たり京都市におけるスポーツの発展に尽力されました。 ところで3名の先生方は,時々のカリキュラム改革において,それぞれの専門性をいかしつつ,学部・大学 院教学の充実に向けて力を傾注されました。産業社会学部は,現在では立命館大学の中で2番目に大きな学 部,社系学部における中核的な存在となっておりますが,この学部の今日的な発展は先生方の努力なくして 実現しえなかったといっても過言ではありません。私たちは,先生方が大学人として行動をもって示してこ られた学問に対する真摯な姿勢と見識を継承し,それをさらに発展させなくてはなりません。このことこそ, 先生方からなにほどかの薫陶を受けた私たちの感謝の証となると思います。先生方,本当にありがとうござ いました。 最後になりましたが,久津内一雄教授,松葉正文教授,山下秋二教授のますますのご活躍とご健康,ご多幸 を心より祈念申し上げます。 2014年5月 立命館産業社会論集(第50巻第1号) 2