Title
沖縄県粟国島における福木屋敷林の実態
Author(s)
安藤, 徹哉; 小野, 啓子; 凌, 敏; 廣岡, 周平
Citation
日本建築学会計画系論文集 = Transactions of AIJ. Journal of
architecture, planning and environmental engineering, 75(649):
603-608
Issue Date
2010-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/9487
【カテゴリーI】
日本建築学会計画系論文集第75巻第649号,603-608,2010年3月 J・Archit、Pla皿.,AU,Ⅵ)1.75N0.649,603-608,Mar:,2010沖縄県粟国島における福木屋敷林の実態
ASTUDYOFPHYSICALCHARACTERISTICSOFPREMISESFORESTONAGUNIISLAND,OKINAWA
安藤徹哉*,小野啓子**,凌敏***,唐岡周平*窯**
乃施卿αANDO,KeikoONO,Mツ〃UNG
α"dS""舵iHIROOKA Located57kmintheNorth-westofOkinawaIsland,AguniIslandisoneoffewplacesinOkinawainwhichwell-preserved yashikirin(premisesforest)offukugi(Garciniasubelliptica)U℃escanstillbeseen.Thisstudyanalysesthephysicalcharacteristicsof yashikinnm曲evillagesofHigashiandNishionAgunibymeasuringtheactualsizeofthetrees.Itfindsthatthenumberoffukugitrees inthesevillagesisapproximately9,800andthatthetreeshavebeendeliberatelyplantedalongthespecificsidesofpremisestorespond totheclimateoftheisland,particularlyduringthewintermonths・Italsosuggeststhatthehistoricaldevelopmentofthevillagemaybe tracedbythedistibutionoflarger(older)fukugitrees. KeywoF曲:O""αwa,Aguni,village〃"dscape,fukugitrees,p〃で柳isesた形師 沖 縄 県 , 粟 国 村 , 集 落 景 観 , フ ク ギ , 屋 敷 林 1 . は じ め に 粟国島は那覇市の北西約57kjnの洋上に位置しており、南に渡名喜島、南西に久米島を望む近海離島の一つである(図1)。面積約7.9¥d,
周囲約12km、人口936人(2005年国勢調査)となっている。島の地 形は、南西部から西部は絶壁で海抜QOmの高台となっており、そこ から東部の平地に向けて穏やかな段丘が続き、東海岸は砂丘で囲ま れている。島の南側中程の高台に東集落と西集落が隣接して立地しており注')、やや離れた港近くの低地に浜集落が立地する(図2).
粟国島東・西集落のほぼ全域は、福木(フクギ)の屋敷林に包まれている(図3)注2)。浜集落で福木屋敷林が見られるのは、東・西
集落に最も近い北西端の一部に限られている。琉球王府は家屋や畑 地を守るため、十八世紀頃から屋敷林として福木の植樹を奨励したとされる注3)。戦前までの沖縄ではこうした屋敷林が生活空間におい
て重要な役割を果たしていたが、第二次大戦後の米軍による土地収用や生活の近代化に伴い、その大半が伐採され姿を消した注‘)○現在、
集落全域に福木屋敷林を残しているのは、粟国島東・西集落の他に本部町備瀬集落注5)や今帰仁村今泊集落、渡名喜集落など数カ所し
かない。 本研究は、貴重な集落生活空間を今に伝える粟国島東・西集落の 福木屋敷林を対象として、その実態を明らかにすることを目的としている。現地調査は2006年10−11月に実施した江6)。
沖縄の福木屋敷林に関する既往の文献としては、やまびこの会編の 図 1 粟 国 島 の 位 置 図 2 東 ・ 西 集 落 の 位 置 ▲三角点又は水箪点。数値は標高。 、琉球大学工学部環境建設工学科准教授・博士(工学) *率沖縄大学法経学部法経学科教授・博士(建築学) **簿琉球大学大学院理工学研究科博士前期課程 ***傘琉球大学大学院理工学研究科博士前期課程 Assoc.Prof.,Dept.ofCivilEngineeringandArchitecture,UniversityoftheRyukyus, Dr.Eng. Prof.,Dept.ofLawandEconomics,OkinawaUniversity,Ph.D.(Arch) GraduateStudent,GraduateSchoolofEngineeringandScience,UniversityoftheRyukyus GraduateStudent,GraduateSchoolofEngineeringandScience,UniversityoftheRyukyus 6 0 3-とができた(表1)。東・西集落の1区画あたりの福木の本数は14.1 本となり、本島北部の備瀬集落の65.5本よりもかなり少ない(表2) 注11) ◎ 福木の幹回りを「太い」(50cm以上)、「中間」(20cin以上50cm未満)、
「細い」(20cm未満)に3区分注'2)すると、「太い」が57.6%、「中間」
が32.0%、「細い」が10.4%となる。備瀬集落と比較すると、「太い」 の割合が高く、「中間」と「細い」の割合が低くなる(表3)。これ ら の こ と か ら 、 東 ・ 西 集 落 の 福 木 屋 敷 林 の 特 徴 の 一 つ と し て 、 生 育 している福木の本数自体は少ないが、幹回りが太い福木の割合が高 いことが分かった。 2.2屋敷林密度の分布特性 粟国島東・西集落内における福木屋敷林のない無屋敷林区画の割 合は17.6%で、備瀬集落の19.1%よりもやや少ない(表4)。地区 別の無屋敷林区画の割合は、東集落14.8%、西集落22.3%となり、 西集落の方が高くなっている。これらの無屋敷林区画は、集落の外 縁(東集落の東端部と西集落の南西部)に多く見られる(図4)。 区画の四周を東側辺、西側辺、南側辺、北側辺に分け、辺ごとの福木の幹断面積の総和を辺長で除した値を屋敷林密度とする注'3)。
屋敷林密度が5以上をランク6,4以上5未満をランク5,3以上4 未満をランク4,2以上3未満をランク3,1以上2未満をランク2 とし、0以上1未満は0のみをランク0、それ以外はランク1とする。 さらに、ランク0を無屋敷林辺、ランクl、2,3の和を低密度辺、 ランク4,5,6の和を高密度辺とした。 隣接する区画では屋敷林は戸境上に植えられ、隣家同士で共有さ れる。東・西集落全697区画の総辺数は2,782辺となるが、戸境上 の屋敷林は394辺(14.2%)に過ぎなかった。このため全体に対する 影響は大きくないと判断し、戸境上の屋敷林は重複してカウントす ることにした。 東・西集落の屋敷林密度の構成は、高密度辺10.1%、低密度辺 図 3 粟 国 島 の 福 木 屋 敷 林『沖縄のフクギ(福木)屋敷林を考える』(2006)注7)がある。また、
粟国島の福木屋敷林に関する記述のある文献としては、大石・大戸 の『小離島におけるフクギ屋敷林の環境特‘性に関する研究』(1996)注8)がある。しかしこれまで、粟国島東・西集落の個々の福木の幹
回りを計測し、屋敷林の実態を定量的に明らかにするような調査・ 研究は行われていない。また、粟国村は福木を村木に指定している が、福木屋敷林についての資料も残されておらず、その形成過程もよく分からないのが現状である注9)。
2.粟国島東・西集落の福木屋敷林の形態的特徴 2.1福木の幹回りごとの本数 粟国島東・西集落内のすべての福木の幹回り(地表から1.3mの高さ)を10cm刻みの印をつけた紐と目視により計測していった注'0)。
その結果、集落全体(697区画)で合計9,796本の福木を確認するこ 表 1 地 区 別 の 幹 回 り 別 福 木 の 本 数 表3幹回り区分別の福木の本数の比較 表 2 区 画 あ た り の 福 木 の 本 数 の 比 較 表 4 無 屋 敷 林 区 画 の 状 況 の 比 較 表 5 屋 敷 林 密 度 の 構 成 の 比 較 − 上 段 : 区 画 数 、 下 段 : 割 合 −604− 幹回り (cm) -20 20-303伽40 40-50 50-6060-70 70-80 80-90 90-100 100-110 110-120 120-130 130-140 140-150 15僻 160 160-170 170-180 180-190 190-200 200-210 210-220 220-230 230-240 240-250 250-260 260-270 270-280 合計 東 集 落 664 617 757 820 646 857 605 650 407 391 128 150 54 52 32 23 9 11 4 9 1 0 8 0 0 0 16,896 西集落 354 288 318 333 271 297 240 245 152 167 92 61 29 20 12 10 3 3 0 3 1 ‘0 0 0 1 0 02.900 合 計 1.018 9051.0751.153 9171.154 845 895 559 558 220 211 83 72 44 33 12 14 4 12 2 0 8 0 1 0 19,796 本数 区画!曲本数/区画 粟国島東・西集落 9.796 697 14.1 備瀬 18.143 277 65.5 幹回り 粟国島東・西集落 備瀬 太い 50cm以上 5,645 57.6% 6,565 36.2% 中間 20cm以上 50cm未満 3.133 32.0% 7.089 39.1% 細い 20cm未満 1.018 10.4% 4,489 24.7% 合計 9,796 100.0% 18.143 100.0% 区画数 無屋敷林 区画数 無屋敷林区画 比 率 粟国島東・西集落陳雲霧一言
│西集落
697 432 265 123 64 59 17.6% .14.8% 22.3% 備瀬’
277 53 19.1% ランク 800 無屋敷;画y K辺 0 (0) 1 (0を超え て1未満) 氏密度辺 2 3 (1以上2 未満) (2以上 3未満) 高密度辺 4 5 (3以上 4未満) (4以上5 未満) 6 D ■ ● ● ● G ● ● ● ● ● ● e ● ● ● ● ● ■ (5以上) 合計 粟国島 東・西 集落 0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●1,537● ● ● ● ● ● ● 。 ■ ■ ● ■ ロ 55.2% 432 347 187 15.5% 12.5% 6.7% 34.7% 138 66 75 5.0% 2.4% 2.7% 10.1% 2,782 , ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ ● ● ● 1 100.0% 備瀬 418 、 。 ● ● ● ● g ● ● ● ● ● ● ● ● O ● ● ● ● 。 ● ● ● ● ● 1 37.7% 165 174 157 14.9% 15.7% 14.2% 44.8% 78 63 53 7.0% 5.7% 4.8% 17.5% 1.108 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 100.0%34.7%、無屋敷林辺55.2%となる(表5)。備瀬集落よりも高密度辺、 低密度辺の割合が低く、無屋敷林辺の割合が高い。無屋敷林区画の 割合に大きな差がないことから、東・西集落では一部の辺が無屋敷 林である区画の割合が備瀬集落よりも高いことが分かる。 地区別の福木の本数は、東集落6,896本(432区画)、西集落 2,900本(265区画)であり、1区画あたりの本数はそれぞれ、16.0 本、10.9本となる(表6)。屋敷林密度の平均は、東集落(0.88)の 方が西集落(0.61)よりも高い(表7)。‘無屋敷林辺の割合は西集落 (60.6%)の方が東集落(52.0%)よりも8.6ポイント高く、高密度辺 の割合は東集落(12.5%)の方が西集落(6.0%)よりも6.5ポイント高 い(表8)。これらのことから、東集落の福木屋敷林の方が西集落よ りも充実していることが分かる。 2.3方位と屋敷林密度の関係 次 に 、 方 位 と 屋 敷 林 密 度 の 関 係 を 見 て い く 。 粟 国 島 東 ・ 西 集 落 における方位別の屋敷林密度の平均は、高い順に北側(0.95)、東 側(0.86)、西側(0.70)、南側(0.61)となる(表7)。地区別に見て も、東集落、西集落共に北側が最も高く、東側がそれに次ぐ。方位 別の屋敷林密度の構成を見ると、無屋敷林辺の割合は高い順に、南 〆 0 5 0 1 0 0 1 5 0 2 0 0 m 一 一 0
④
ノ 、 ∼ ノ ハ ダ ダ f f I 7 I I ノ 凡 例 屋敷林密度ククククククク 0123456
勃勃勃勃勃勃刃
一 一 4 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ − − 一 一 一 〆 一 ff ff ヂ J 〆一 一一IL I 一 一 ・ 集 落 境 界 ×無屋敷林区画 図 4 屋 敷 林 密 度 と 無 屋 敷 林 区 画 の 分 布 表6地区別の区画あたりの福木の本数 表 8 地 区 別 の 屋 敷 林 密 度 の 構 成 表 7 地 区 別 の 屋 敷 林 密 度 の 平 均 上 段 : 区 画 数 、 下 段 : 割 合 −605− 本 数 区画数本 数 / 区 画 東集落 6,896 432 16.0 西集落 2.900 265 10.9 合計 9,796 6971 14.1 ランク 無屋敷林辺 0 ●●●。●●●●■●●”●●●■●●●●q●。●p (0) 妊 索 匿 切 1 、 p ● ● ・ ● ● D p D ● Q ■ 。 ● ー q ● 。 ● 。 (0を超え て1未満) 2 (1以上2 未満) 3 (2以上 3未満) 高 密 度 辺 4 、 ● ● ■ ● ② g 今 ● ■ ■ ■ q ■ ■ ● C l (3以上 4未満) 5 、 ● ● ● ■ ■ ● ■ ● ■ ● 。 ● ● ● p ■ E ■ 写 (4以上5 未満) 6 ■ ■ ■ D 色 色 目 □ ■ B O D ■ 0 0 ■ ■ O G (5以上) 合 計 東 集 落 897 ● 。 ● 、 ● ● ■ ● ■ □ ● 画 ● 。 ● ● ● ● ● 0 9 ● ● ● ■ 52.0% 250 l●●●■●●●●●●●●g●●0■■●領●1 14.5% 234 B g q g ■ ● ■ D D C 。 ● ■ q ■ ■ ● ■ ● ● ■ q 13.5% 129 ■ ■ 。 ■ ■ ● ■ ● ● こ ■ ■ ■ ● ■ ■ ○ 7.5% 35.5% 105 0■●■■■●。●●●●ロロ●●91 6.1% 50 1口■■b●●。●●●軍■●●C■■●● 2.9% 60 ■■■■■●●●■●●●■■●■■旬I 3.5% 12.5% 1,725 e ■ □ ■ 、 D ■ ■ ■ 、 ■ ■ 0 0 ● ■ 1 100.0% 西集落 640 。 。 、 ■ ■ ● ■ ■ ● ● ● 画 ■ ● ● ■ ● ■ ■ ■ q ● 。 ● ● 60.6% 182 17:2% 113 I 。 ● ● ● ● 。 。 ■ ぬ ● ● ● 。 ● ■ の 。 ● ● ■ q 10.7% 58 、 ● ■ ● ■ ● ■ ■ b ● ■ 口 ■ 画 一 ● 且5% 33.4リ11 33 ロ ● ● ● ■ ■ ■ = 皇 ■ G ■ ■ ● 白 ● ■ I 3.1% 16 P 舎 今 ニ タ ● ■ ● 。 □ ■ ■ g ● ● D ● ● ● ■ 1.5% 15 ■ 画 O ● ● ● p ● ■ q ■ ● ● ■ ● □ 。 ● 1.4% 6.0%.
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100.0% 合 計 OCS80e■O0DDCOO■66■D9peBDOO1,537 55.2% 432 lDOa900gQ80■080■600■0,1 15.5% 347 B●00●088■008DB●■●CQD●q 12.5% 187 g ● o q a ■ 0 ■ 0 ■ a g Q g D g g 6.7% 34.7% I■■■■08● B●q■38 5.0% 66 2.4% 75 2.7% 10.1% 2,782 eD8D0DD■eBO●C80●q 100.0% 屋リkj再ソ ;密‘ 童の平均 ー 夢 上産フ 写司、 き落 西 集 落 iミ・西舎 畠落 全‘ニー一 A 0.88 0.61 0.78 東則辺 0.99 0.64 0.86 西‘ 則辺 0.82 0.49 0.70 南側辺 0.68 0.50 0.61 北 側 辺 1.03 0.80 0.95表 9 東 ・ 西 集 落 の 方 位 別 の 屋 敷 林 の 構 成 表11地区別の幹回り100cm以上の大福木の構成 上段:区画数、下段:割合 上段:区画数、下段:割合 表10粟国島の月ごとの最多風向別日数と平均風速(2006-2008)
11213141516171819110111112
面 画 ■ ■ ■ ■ ■ 回 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ’1|型崎■ ■ ■ 回 ■ 回 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ー 司 回 固 ■ ■ ■ ■ ■
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口 ■ ■ ■ ■ 面 ■ 園 = ー 田 匠 亘 五 F ー ■ ■ ■ ■ 岡 ■ = ロ ロ ー 弓 ■ n 口 ■ ■ ■ F ロ ■ 固 ■ ■ ■ 困 困 固 口 ■ ■ ■ ■ ■ ■ 田 ■ ■ 画 口 ■ 面 ■ ■ ■ ■ 口 ■ ■ ■ ■ ■ 困 固 回 口 ■ ■ ■ m m m m m m m m m m m m m m m m m 4.95.4.64.33.93.44.43.6355.4.594.9394.84.4353.7394.343.5画4%砿4.7 *粟国島における気象庁アメダス観測データによる。最多風向については同月中に7日以上集中した風向に、平均風速については5m以上の月に網かけした。が、これは今からおよそ270年前に導入された地割土地制度注'7)に
基づくものである。福木の幹回りとの関係で見ると、幹回り200cm の大福木の推定樹齢は255年であり、地割土地制度の導入と時期的にほぼ一致している注'8)。幹回り100cmの大福木の推定樹齢は127.5
年であり、地割土地制度の末期にあたる注'9)。そこで、大福木を
100cm以上200cm未満、200cm以上300cm未満、300cm以上に3区分し、 集落形成との関係を見ていく。 粟国村誌によると、尚敬25年(1737)に八重村(現東・西集落) と浜村が新設され、翌26年に在番を置いて行政に当たらせたとある注20)。また、集落発祥の地と伝わる根屋(ニーヤ)注21)と歴代地頭
代屋の居宅注22)として9つの屋号をあげているが、現地調査注23)で
その位置をすべて確認することができた(図5)。 東.西集落には幹回り100cm以上の大福木が全部で1,275本(全 体の13.0%)あり、その内訳は幹回り100cm以上200cm未満が1,251 本、幹回り200cm以上300cm未満が24本となる(表11)。 幹回り100cm以上200cm未満の大福木は、集落の外縁を除くほぼ 全域に分布している(図5)。地区別に見ると、東集落に854本(地 区内の12.4%)、西集落に397本(地区内の14.0%)とほぼ均等の割 側(59.3%)、西側(58.6%)、北側(53.0%)、東側(50.2%)となり、高 密度辺の割合は北側(13.9%)、東側(11.7%)、西側(8.5%)、南側(6.0%) の順となる(表9)。これらのことから、東・西集落の福木屋敷林は 区画の北側が最も充実しており、東側がそれに続く構成となってい ることが分かる。 過去3年間(2006-2008年)の粟国島のアメダス観測データを 見ると、5月から8月は南よりの風、10月から3月は北一北東の風が多い(表10)注'4)。また平均風速も、冬季の北一北東の風の方が
高い江'5)。備瀬集落の調査においても、区画の北側の屋敷林密度が
最も高いことが分かっている注'6)。こうした密度構成は、従来言わ
れてきた台風対策のための防風・防潮林としての役割よりも、冬場 の季節風への対策に重点を置いた構えであるように思われる。東・ 西集落は海岸線から500mほど離れた海抜40mの高台に位置してお り、特にこの傾向が強いことが予想される。区画の北側と東側が高 い東・西集落の福木屋敷林の密度構成は、こうした周辺環境にうま く対応していると言える。 2.4大福木の分布と集落形成の関係 粟国島東・西集落はほぼその全域が碁盤状の道路構成をしている −606− 一 幸 ランク 無塁敷;■・四F ;辺 0 ■ ■ ■ 。 ● Q 菌 句 ● ○ 画 。 ■ ● 、 ■ 鹿 q ● ● ・ D p (0) 1 ● ● 画 a ● ● ● ■ ■ 蟻 ● 、 再 C ● ■ ● ● I (0を超え て1未満) 氏密庶辺 2 ■ ● 。 ■ 画 ● ■ ● D P 韓 ● ● ● 画 ● Q ● (1以上2 未満) ● 画 ● O b 3 ● ● ● ● 毎 ● ● 画 Q ● (2以上 3未満) 高密庶迩 4 (3以上 4未満) 5 1 9 面 ■ ■ ● ■ ● ■ ■ ■ ● ● ● G O 唖 ● (4以上5 未満) 6 聖邑曾曾9088BOBOBOOMI (5以上) 合計 東 側 辺 ・ 3 4 9 0 ● 旬 ■ ■ ■ ‐ ■ ● ● 輯 ● q 、 ● ● 画 ● ● ■ ● ● ● 50.2% 115 。 ● 画 ■ 何 ■ ■ 、 ● 画 ● ● 画 ■ Q ● ● ● 1 16.5% 101 ■ q ■ q ■ 、 q ● ■ ● ● 歯 。 ● C 毎 q ● 0 14.5% 49 7.1% 38.1% 49 、 、 。 ■ ■ 屯 ■ 唾 ■ q ○ 、 ■ ■ I 7.1% 16 2.3% 16 2.3% 11.7% 695 100.0% 西 側 辺 407 O ● ● ● ● ● e ■ Q ■ ■ ■ 。 ● ● D C 画 。 ● U p b a 58.6% 101 ■ ■ ■ 0 □ 。 ■ ■ ■ ● 画 ● ● 画 。 。 Q ● ● 1 14.5% 87 画 □ 。 ● 唾 ● 。 ■ ● S 堂 舎 二 ⑱ ■ ● 。 ■ 12.5% 41 5.9% 32.9% 、 ● ● ■ ■ ■■ 匿 曾 二30■■■■ロI 4.3% 13 BBO■■●■■■、■■■■■b旬再魯 1.9% 16 ロ ■ ● ● ● ● ● ● ー ● ■ ● ー ● ● D q 2.3% 85% 695 q0QD8DCqpQOOOgqOO 100.0% 南 側 辺 412 6 p q D ■ ■ 画 ● ● 。 ” ● ■ □ 、 ■ 函 G ■ ● ● ■ ● 59.3% 121 ● ● 蝉 ● ・ ● ● 。 ● 画 Q S 竺 昏 ・ ロ D D I 17.4% 74 ■ O ● Q ■ q ■ b D D ■ 。 ■ q ロ ■ ● ■ ■ 10.6% 46 ■ 画 Q ■ q ■ ● ■ 唾 ● ● ‐ O ■ 6.6% 34.7% 21 p ● ● 唖 ■ q ■ ■ ■ ■ Q ● ● 、 画 1 3.0% 1 1 1口唾●q、●●画■Q■bgD■● 1.6% 10 嵐■。■、●●画0りqO■●C●0 1.4% 6.0% 695 eO008000eOOBODBBロ 100.0% 北側辺 369 53.0% 95 13.6% 85 12.2% 51 7.3% 33.1% 38 E D p 顛 q U ■ 画 。 ■ ■ 、 ● ■ 0 5.5% 26 # ■ ■ O q q D ■ ■ 三 舎 e q D ● ● 画 ■ 3.7% 33 脚 ● g ● D ● ■ 画 旬 ● ● 壷 害 吾 p q 4.7% 13.9% 697 66Bg88e680gp000m 100.0% 合計 1.537 55.2% 432 15.5% 347 12.5% 187 6.7% 34.7% 138 5.0% 1 66 2.4% 75 2.7% 10.0% ""&‘‘照: 100.0% 幹回り 100cm未満 100cm以上 lOOcm以上 200cm未満 200cm以上 300cm未満 300cm以 上 合計 東集落 -..._JL鯉§ 87.3% 854 0 ー ● ● ■ ● ● ・ 韓 、 ● 写 邑 弓 ● D e U C 鐘 ● 、 。 12.4% 19 0.3% 0 ロ 。 ■ 唾 p ● ● ■ ■ ■ 、 ● ● ■ ー ● q 0.0% 12.7% ....。.§・照§ 100.0% 西集落 2,498 86.1% 397 0 ー ● 告 ニ ョ q 竺 二 b p ● ■ ■ ● ● ■ ■ ● ー ■ ● ’ 13.7% 5 D ● ● − , E ニ ョ ■ G ー E 竺 竺 = こ こ ■ ● ● 口 唾 舎 舎 0.2% 0 ■ ● ■ ■ ■ ● 、 ● ● ● ● 臼 ■ ● ● ■ ■ ● q 0.0% 13.9% "".鳥‘鮒9 100.0% 合計.
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・ヘーーニニー、 図 5 根 屋 、 歴 代 地 頭 代 屋 と 大 福 木 の 分 布 合 と な っ て い る 。 大 福 木 の 分 布 が 見 ら れ な い 部 分 に は 無 屋 敷 林 区 画 も多く、比較的近年、形成された区画であると考えられる。 幹回り200cm以上300cm未満の大福木は、東集落に19本、西集落に5本が分布しており、特に東集落と西集落が接する位置にある根
屋を中心とする辺りに集中が見られる(図5)。根屋周辺の区画割り はやや不整然となっており、地割土地制度の導入以前に集落が築か れていたと考えられる。東・西集落内で最大の福木の幹回りは270cm台であり注24)、推定樹齢約350年の金武観音寺境内の大福木(幹
回り280cm、樹高12m)にほぼ匹敵する太さである。
大福木の分布から東・西集落の形成過程を推察すると、根屋を中 心として集落形成と福木の植樹が始まり、集落が地割土地制度に基 づき拡大されていくのと平行して屋敷林としての福木の植栽が進め られ、現在見られるような集落を福木屋敷林が包み込むような集落 景観が形成されるに至ったと考えられる。 自体は少ないが、幹回りが太い福木の割合が高いことがあげられる。 また、無屋敷林区画の比率は備瀬集落と変わらないが、無屋敷林辺 の割合が55.2%と過半を占めており、敷地全体を屋敷林が取り囲む 区画よりも一部に屋敷林を持つ区画が多いことが分かった。こうし た数値や特徴は粟国島の福木屋敷林の今後の推移を見守って行く上 で重要なポイントとなる。 第二に、一見、森のように広がって見える福木屋敷林の分布は一 様ではなく、場所や方向によって密度に差があることが分かった。 地区別の屋敷林密度は、東集落の方が西集落よりも高い。また、方 位別では、区画の北側の屋敷林密度が最も高く、東側がそれに次い でいる。こうした福木屋敷林の密度構成は、従来言われてきた台風 対策のための防風・防潮林としての役割よりも、冬場の季節風対策 に重点を置いた構えであるように思われる。 第三に、大福木の分布から東・西集落の形成過程を推察すると、 根屋を中心として集落形成と福木の植樹が始まり、集落が地割土地 制度に基づき拡大されていくのと平行して屋敷林としての福木の植 栽が進められ、現在見られるような集落を福木屋敷林が包み込むよ うな集落景観が形成されるに至ったと考えられる。 現在、粟国村役場が配布している『粟国島観光マップ』は、村内 の様々な見所を紹介しているが、福木や屋敷林については全く触れ られていない。集落生活空間の観光資源化には賛否両論あるだろう 3.まとめ 戦後、急速な近代化が進んだ沖縄地方において、福木屋敷林に囲 まれた伝統的景観を今に残す粟国島東・西集落は貴重な存在である。 そうした福木屋敷林の実態について、以下のことが明らかになった。 第一に、粟国島東・西集落の福木の総本数は9,769本であった。東・ 西集落の福木屋敷林の特徴の一つとして、生育している福木の本数 −607−が、住民の高齢化や過疎化が進み福木屋敷林の長期的な維持管理体 制を考えることが難しくなりつつある現状を踏まえると、観光資源 として保全活用を図ることも一考に値する。そのためには、200年 以上の時間をかけて築き上げられてきた集落生活空間である福木屋 敷林の重要‘性を再認識することが重要であろう。 謝 辞 本研究の調査作業にあたり、琉球大学工学部環境建設工学科安藤 研究室の4年生および修士課程の皆さんの協力を得ました。記して 謝意を表します。 注 注1)粟国村誌(2001(再版))に「明治41年島喚町村制によって行政区が分 けられるまでは西と東は八重村として一部落であったが、町村行政上道 路で分けられ、西、東の二ヶ部落とし、浜は浜部落として現在の三部 落となった」(28頁)とある。また「現在でも字西・東部落は言語、生 活、慣習等一致の点が多い」(74頁)とされる。そこで本研究では、粟 国島の東集落と西集落の福木屋敷林を一体的に扱う場合には、東・西集 落と表記することにする。粟国村村誌編纂委員会編:粟国村誌、粟国村、 2001(再版)参照。 注2)福木はオトギリソウ科に属する雌雄異種の常緑高木で、樹高20メート ル、樹径80センチに達する。直幹性が強く地際から頂部まで葉が密生 し、防風、防潮、防砂、防火などに効果がある。環境耐性に極めて富み、 脱水症状で落葉することがない。 注3)仲松弥秀:古層の村一沖縄民俗文化論、沖縄タイムス社、1977,94−95 頁参照。また、琉球王府は「家屋制限令」により、赤瓦の使用を制限し ていたため、農村部の家屋は茅屋根が基本であり、周囲を石垣や屋敷林 で固めなければ台風や冬の季節風をしのぐことは困難であった。 注4)屋敷林の減少時期とその理由については、拙稿の安藤徹哉、小野啓子: 沖縄島中北部集落における屋敷林の変化に関する研究一三時点(1945, 1972-74,2003年)の空中写真の比較と聞き取りを通して−、日本建築 学会計画系論文集、第630号、1723-1728頁、2008を参照。 注5)本部町備瀬の福木屋敷林の実態については、拙稿の安藤徹哉、小野啓子: 沖縄島本部町備瀬集落における福木屋敷林の実態、日本建築学会計画系 論文集、第630号、1729-1733頁、2008を参照。 注6)現地調査は2006年10月19−22日、11月8−10日、11月22−23日 に実施した。さらに、2007年8月3−4日、8月30日−9月1日、9 月22−25日には聞き取り調査を実施した。 注7)やまびこの会編:沖縄のフクギ(福木)屋敷林を考える、沖縄緑化推進 委員会、2006. 注8)大石・大戸らは、粟国島と渡名喜島のフクギの樹高から屋敷林の開放感・ 明るさを指標化すると共に、アンケート調査によりフクギ屋敷林に対 する住民意識を分析している。大石結奈、大戸慎二:小離島における フクギ屋敷林の環境特性に関する研究、平成7年度琉球大学卒業研究、 1996. 注9)前掲注1)の粟国村村誌編纂委員会編(2001)にも福木屋敷林に関する 記述はほとんど見られない。 注10)一本のひもを準備し、片端に結び目を付ける。その結び目から10セン チ刻みで結び目を付ける。胸の高さでこのひもを福木に巻き付け、幹回 りを測定した。 注11)以下、備瀬集落のデータは前掲注5)の安藤、小野(2008)による。 注12)生育環境が異なり、福木の個体差もあるが、沖縄島南部の知念城祉の 福木の切り株では1cmあたりの年輪数は8本であった(前掲注7)のや まびこの会(2006)、46頁参照)。幹回りをy(cm),半径をr(cm)、円周 率を元とすると、推定樹齢X(年)は以下の式で算出される。 r=y/(2*) x=8r 幹回り50cmの福木の推定樹齢はおよそ64年となり、ほぼ沖縄戦前後の ものとなる。また、幹回り20cmの福木の推定樹齢はおよそ25年となる。 −608− 注13)敷地一辺ごとの幹断面積の和を辺長で除した値を福木の屋敷林密度と した。福木の幹回りをy(cm)、半径をr(cin)、幹の断面積をA(cm')、敷 地一辺あたりの福木の断面積の和をEACcrn*)、敷地の一辺の長さを L(cra)、円周率を元とすると、福木の屋敷林密度D(cm)は以下の式で表 される。 r=y/(2冗) A=r'冗 D=(2A)/L 注14)アメダスデータは、気象庁ホームページのhttp://www.jraa・go.jp/jp/ amedas/を参照。 注15)アメダスデータによると、粟国島で最大風速が10mを超える日は27日 (2006年)、31日(2007年)、12日(2008年)あったが、そのうち10 月−3月の間に観測されたのはそれぞれ16日(59%)、20日(65%)、 9日(75%)だった。 注16)備瀬集落においても北側が最も高密度辺の割合が高く充実している。 前掲注5)の安藤、小野(2008)参照。 注17)前掲注3)の仲松(1977,111-131頁)によると、一種の班田制である 地割土地制度は1737年に導入され、それ以降の移動.新設村落や分家 地域が碁盤状の形態を取るようになった。 注18)推定樹齢の算出については注12)参照。 注19)地割土地制度は明治36(1903)年までに廃止された。前掲注2)の仲松 (1977,120頁)参照。 注20)前掲注1)の粟国村村誌編纂委員会編(2001,69頁)参照。 注21)根屋とは村落の始祖の家を言う。東・西集落では西字の「大家(ウフヤー)」 が根屋だと考えられている。前掲注1)の粟国村村誌編纂委員会編(200,も 26頁)参照。 注22)前掲注1)の粟国村村誌編纂委員会編(2001,42-43頁)参照。なお、 雑木主体の屋敷林主体の集落においても、村の旧家や有力者の家は見事 な福木の屋敷林を持つ集落の事例の報告がある。前掲注3)の仲松(1977, 94-95頁)参照。 注23)聞き取り調査(2007年8月)により位置を確認した。 注24)幹回りから樹齢を推定するとおよそ344年となる。 (2009年6月10日脱稿受丑'1,2“9年11月17日採用決定)