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エネルギー収支に基づく大スパン屋根の空力安定性評価

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Academic year: 2021

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エネルギー収支に基づく大スパン屋根の空力安定性評価

Aerodynamic Stability of Long-span Roofs based on Energy Balance

〇髙舘 祐貴1) 植松 康2)

Yuki TAKADATE1) Yasushi UEMATSU2)

1. はじめに 近年,新たな構造材料や工法の開発,建設技術の発 展によって従来の大空間構造物より軽量かつ大スパン 屋根を有する構造物の設計・建設が可能となっている。 このような大スパン構造物は軽量かつ剛性が低いこと から一般に風荷重が支配的となる。また,風による屋 根面の変形や振動が生じやすくなるため,屋根に作用 する直接的な空気力だけでなく,構造物の応答に伴っ て生じる付加的な空気力である非定常空気力も作用す る。こうした付加的な空気力が屋根の振動を抑制する 場合もあれば増大させる場合もある。 本研究では,大スパン屋根の空力安定性を評価する ために,屋根を対称一次モードと逆対称一次モードで 強制加振させることによって得られる屋根のエネルギ ー収支に基づき,空力不安定振動の発生条件を明らか にすることを目的とする。 2. 数値流体解析概要 2.1. 対象とする建築物 本研究では,我が国で建設された代表的な大スパン 建築物を調査し,その代表的な寸法に基づき,スパン 120 m,軒高 20 m とする。図 1 に対象とする屋根形状 を示す。円弧屋根のライズ・スパン比r/L は 0.1 と 0.2, 吊屋根のサグ・スパン比d/L は 0.05 と 0.1 とする。な お,数値流体解析では,風洞実験を模擬した縮小モデ ルでの解析とし,解析モデルの幾何学的縮尺率は1/400 と仮定する。

(a) Flat roof (b) Cylindrical

roof (c) Suspended roof Fig. 1 Roof shapes investigated in the present study 2.2. 解析手法 CFD 解析の計算コードには ANSYS Fluent(Ver. 19.0) を用いる。支配方程式は連続式とNavier-Stokes 方程式 である。乱流モデルはLES(WALE モデル)とし,モデル 定数CWは0.325 とする。時間項の離散化には 2 次精度 陰解法,空間項の離散化には2 次精度中心差分を用い る。解析時間は実スケール10 分相当の 6 秒とし,モデ ルスケールでの軒高風速UHを6 m/s から 15 m/s まで 3 m/s ずつ変化させる。無次元時間刻みt*(=tU H/L)は 4.0 ×10-3とする。本研究では,気流の乱れが屋根の空力安 定性に及ぼす影響を明らかにするために,一様流と境 界層乱流を用いた解析を行う。Fig. 2 に本研究で用いた 風速プロファイルを示す。なお,解析の詳細や妥当性 の検証については文献1)を参照されたい。

(a) Mean wind velocity and turbulence intensity

(b) Power spectra of fluctuating wind velocity

Fig. 2 Characteristics of inflow turbulence 2.3. 屋根面の強制加振 k 次モードで振動する屋根面の加振変位 zkは次式で 表される。

 

,

   

k k k z s tx ts (1)

 

0sin 2

k m x tzf t (2)

 

max sin 2 k s s s        (3) ここで,xkは一般化変位,kk 次モードのモード形状 を表す。また,z0は加振振幅,fmは加振振動数を表す。 本研究では,k=1 の対称一次モードと k=2 の逆対称一 次モードに対して解析を行う。なお,モデルスケール における加振振幅z0は3mm とし,加振振動数 fmは0~ 60 Hz では 10Hz 刻み,80~160 Hz では 20Hz 刻みで変 化させた。加振振幅と加振振動数はそれぞれ無次元化 H L H L r H L d 0 0.25 0.5 0.75 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 U/Uref , IU Z [m] U(smooth) Iu(smooth) U(ABL) Iu(ABL) U(AIJ) Iu(AIJ) 10-3 10-2 10-1 100 101 10-4 10-3 10-2 10-1 100 fLx/UH fS (f )/  2 CFD Karman 1) 東北大学工学研究科 大学院生 Graduate student, Tohoku University

2) 東北大学大学院工学研究科 教授

(2)

し,無次元加振振幅 z0*(=z0/L)と無次元加振振動数 fm*(=fmL/UH)として表す。本報では,z0*=1.0×10-2,fm*=0 ~8 の範囲を対象とする。 3. エネルギー収支に基づく空力安定性の評価 3.1. エネルギー収支の評価 強制加振の周期をTcとすると,強制加振時のエネル ギー収支ETは次式で表される。

 

0 c T T H p S k E  E

q C A z t dt (4) ここで,qHは速度圧,Asは荷重負担面積,żkは一般化 変位の速度を表す。また,E[ ]はアンサンブル平均を表 す。エネルギー収支の評価においては,これを無次元 エネルギーET*として次式で表す。

* 0 0/ T T H s E E q A z z L(5) ET*が正の場合は,屋根の振動がエネルギーを消費する 方向に働くが,ET*が負の場合は外力が屋根の振動にエ ネルギーを与えるため,自励的な振動が発生する。 3.2. 位置によるエネルギー収支の変化 Fig. 3 に境界層乱流中の陸屋根を対称一次モードと 逆対称一次モードで加振した場合の屋根の位置s での エネルギー収支ET*を無次元風速UH*(=UH/fmL)ごとに示 す。横軸は風上端部から屋根に沿った長さs を最大長smaxで無次元化した値である。いずれの振動モード についてもUH*が小さいときはET*が大きい。さらに, 振動の腹の位置でのエネルギーが大きい。モード形状 に着目すると,同じ UH*に対して対称一次モードの方 が逆対称一次モードよりもエネルギー消費が大きく, 対称一次モードは逆対称一次モードよりも空力的に安 定な振動モードと考えられる。

(a) First symmetric mode (b) First anti-symmetric mode Fig. 3 Energy balance on a vibrating flat roof 3.3. 空力不安定振動の発生風速 Fig. 4 に一様流と境界層乱流中での陸屋根と r/L=0.1 の円弧屋根におけるエネルギー収支の無次元風速 UH* による変化を示す。UH*が増加するにつれて,ET*の絶対 値は徐々に小さくなる。屋根形状に着目すると,陸屋 根では円弧屋根よりもET*<0 となる無次元風速 UH*が 小さい。また,気流の違いに着目すると,一様流の方が 境界層乱流よりも明確にET*<0 となっている。 各屋根形状に対して得られたエネルギー収支に対し て,2 次関数による近似を用いることで ET* < 0 となる 無次元風速UH*を明らかにする。Fig. 5 に様々な屋根形 状について,一様流と境界層乱流によるエネルギー収 支ET*のUH*による変化を示す。また,Table 1 に ET*<0 となるときの無次元風速 UH*を示す。これらの結果に よると,一様流よりも境界層乱流の方が空力不安定振 動が発生しにくい。境界層乱流中の円弧屋根ではr/L の 値に関わらず,ET*<0 となる範囲はなく,空力不安定振 動は発生しにくいと考えられる。

(a) flat roof (b) cylindrical roof (r/L=0.1) Fig. 4 Energy balance versus critical wind velocity

(a) Uniform flow (b) Turbulent boundary layer Fig. 5 Energy balance versus critical wind velocity

evaluated by using fitted curve

Table 1 Critical wind velocity which induces the unsteady aerodynamically vibration 屋根形状 一様流 境界層乱流 陸屋根 1.32 1.36 円弧屋根(r/L=0.1) 1.34 ― 円弧屋根(r/L=0.2) 2.00 ― 吊屋根(d/L=0.05) 1.50 1.55 吊屋根(d/L=0.1) 1.18 1.52 4. まとめ 強制加振解析を用いてエネルギー収支に基づく屋根 の空力安定性の評価を行った。接近流に着目すると, 境界層乱流中の方が一様流よりも空力不安定振動が発 生しにくい。また,屋根形状に着目すると,円弧屋根で は空力不安定振動が発生しにくい。 参考文献 1) 髙舘祐貴,植松康:大スパン陸屋根に作用する非定常空気 力と空力安定性,第25 回風工学シンポジウム論文集,pp. 265 – 270,2018. 0.25 0.33 0.50 0.67 1.00 2.00 s/smax 0.25 0.33 0.50 0.67 1.00 2.00 s/smax 0 1 2 3 -2 -1 0 1 2 UH * ET * 陸屋根 円弧屋根(r/L=0.1) 円弧屋根(r/L=0.2) 吊屋根(d/L=0.05) 吊屋根(d/L=0.1) 0 1 2 3 -2 -1 0 1 2 UH * ET * 陸屋根 円弧屋根(r/L=0.1) 円弧屋根(r/L=0.2) 吊屋根(d/L=0.05) 吊屋根(d/L=0.1)

Table 1 Critical wind velocity which induces the unsteady  aerodynamically vibration  屋根形状  一様流  境界層乱流  陸屋根  1.32  1.36  円弧屋根(r/L=0.1)  1.34  ―  円弧屋根 (r/L=0.2)  2.00  ―  吊屋根 (d/L=0.05)  1.50  1.55  吊屋根(d/L=0.1)  1.18  1.52  4

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