Title
地域格差と国際私法の問題
Author(s)
組原, 洋
Citation
沖縄大学地域研究所所報(12): 11-20
Issue Date
1996-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8763
Rights
沖縄大学地域研究所
地域格差 と国際私法 の問題
組原
洋
1、は じめに 最近、私はたてつづ けに、渉外 的な事件 に関係 している。 か って私 は渉外事件専 門の弁護士 になれた らなあと思 った ことがあ るO私が弁 護士資格を取 った頃、 とにか く一番儲か るのが この分野 のよ うで、私の友人の渉 外弁護士が一般 の弁護士 の何倍かの収入を得ているのを見て、 うらや ま しく思 っ た記憶がある。収入が高い割 には仕事の内容は、例えば合弁契約書作成 とか、パ ター ン化 されているようにも見えた。 私は沖縄大学で国際私法を担当 して きているが、その理 由は、そ うい うことと はち ょっと速い、主な研究テーマ としている法人類学の隣接分野だか らとい うこ とで、いっか渉外弁護士 にな って儲 けようとい うことではない. しか し、何年閉幕義を担当 して もなかなか 自分な りのテーマが兄い出せず、 こ の分野の論文を書 こうという目論見 は連成 されないまま今 日まで きた。それは、 国際私法の理論 とか学説 とかがそれ 自体でちゃん と固まっているためである。そ の理論 は、法人類学の見地か らして も是認で きるものなのでなお さらであ った。 しか し、 「国際化」の進展 とともに本当に 日常 と接 しているところで渉外事件 が起 こるよ うにな り (例えば最近、イ ンターネ ッ トを利用 して外国か ら日本 にわ いせつ画像を入れた場合 にどう対処すべ きかが問題 にな っている。沖縄 タイムス 96・2・20、朝 日新聞 (東京版)96・2・22参照)、特 にこの数年、判 例 として現れて くるものの中に も、法的な技術だけでは割 り切れない ものが少 し ずつ出て きたと思 う。それ らは、国 と国 との間の格差か ら来ているものが 目立つ。 そうい うことで、 この格差、特に経済的な格差の評価がち ゃん とで きないと事件 - 日!-のす っきり した解決 もで きないのではないか と思われ るケースが多 い。 こういっ た問題意識 を出発点 にい くつか具体例 を挙 げて私 な りに考えた ことをまとめてみ た。 所報 に本稿を載せ ることに したのは、 この間題が多 く交通事故 と関連 していて、 地域研究所 での交通 システム研究 と結 びつ きやすい とい うことによる0 このテーマにつ いては今後 も継続 して考えてい きたい と思 っているので、忌伸 のない ご指括 ・ご批判を期待す る。 2、観光 日的で来 日し、交通事故 で死亡 した中国人のケース 最初の例 と して、国際私法 の幕義 を して いて記憶 に残 った事件を取 りあげ る。 渉外判例百逮 [第3版] (別冊 ジュ リス トⅣ0. 133、 1995年 5月)の 「50 外国人被害者 の逸失利益の算定基準」の事件であ る (中野俊一郎解説)。 まず この本 に従 って、事実の概要 と裁判の結果を述べ る. 上海市在住の中国人Aは、観光旅行 のためわが国 に短期滞在 中に 自動車事故 に あい死亡 したため、その辻族であ るX l∼Ⅹ 5 (いずれ も上海在住 中国人) は、A の姐害賠償請求債権を相続 した と して、加害車両の運転者Y.及 び所有者Y2を被 告 と して姐書賠償の請求 を起 こ した。Ⅹ らはすで に自賠責保険か ら総額2500 万 円を本件事故 による扱者賠償 と して受領 して いるが、意法14条が定 め る法の 下の平等原則 に従 い、Aの逸失利益 は 日本人 と同様 の方式で算定すべ きであ るこ と、それ はわが国の賃金 セ ンサ スに基づ いて計算す ると約4057万 円にな るこ と、 これにAの死亡慰謝料2000万 円、葬式食用、弁護士費用等を加えた総額 は約7408万 円にな るので、 ここか ら上記2500万 円を減 じた残 り約490 8万 円につ いて Yらが連帯 して支払 う義務 を負 うこと、を主張 している。 これに 対 してY らの主張では、 Aの遺失利益 は、 Aが上海の勤務地で現実 に得ている収 入を基準 とすべ きであ り、それは約769万 円にな る。 また慰謝料額 は、中国の 経済実状等 か らみてわが国の場合の30分 の 1程度 とすべ きであるか ら、結局娘 書 は、 Ⅹ らが 自賠責保険か ら受 けた支払 いによ って全額類補 されていると して、 請求の棄却 を求 めた。 これ に対 し、松 山地裁今治支部平成2年 (1990年)9月21日判決 は、 Y - 12
-側主張をほぼ諌め,Aの逸失利益を約 678万 円、死亡患謝料を 500万 円 と算 足 してⅩらの請求を棄却 した。 これに対 しⅩ らが控訴 し、高松高裁平成 3年 (1991年) 6月25日判決 は、 次のような判断を下 した。 (1)本件事故による損害賠償請求 は、法例 11条 1項 により、原因事実の発 生 した地である日本法が準拠法 とな る。 (2) Aは中華人民共和国の国籍 を有す るが、憲法 14条の法 の下の平等の原 則により日本人 と同一方式で逸失利益を算定すべ きである。Aの本国での 生活程度 は中流であるのでわが国の中流の生活水準の労働者を一応の基準 とす ることがで きる。そのように計算す ると逸失利益の現在額 は3778 万 0191円とな る。 (3)Aの死亡による慰謝料は 1000万 円とす るのが相 当である。 中野俊一郎氏の解説末尾に、加茂隆康 「交通事故賠償」 (中公新書 ・1992 年)が挙げ られている。 この本の159貢以下 に もこの事件が取 りあげ られてい るが、それによれば、 (3)の 1000万 円とい うのは、被害者が 日本人である な ら慰謝料 として 2000万 円以上 はゆ うに認め られ るケースだか ら、著 しく不 平等な扱いを した ことになると述べ られている。そ うい う意味で高裁 の判決は論 理一貫性を欠 いていると評 され る。 以上の理解に必要 と患われ る最小限の解説をす る。 この事件のAやⅩらは中国 人であ り、 日本人ではない。 このよ うに私法上の法年関係の構成要素の少な くと も 1つが外国に開通 している場合、渉外的私法関係 といわれ る。渉外的私法関係 に適用すべ き法 は、通常関係す る国の私法のどれかか ら達ばれ る (現在 の ところ、 統一私法は特殊 な領域 しかカバ ー していない)。逮 ばれた国の法が準拠法である。 準拠法を選択す るための基準を提供す るのが、わが国では主に法例 とい う法律で ある。関係する国の法が同一な らば準拠法 を選択す る意味はない。逢 っているか らこそ逮択す る意味がある。 しか し、逢 ってい ること自体 は問題 としない。例え ば準拠法が、 日本では認め られていない一夫多妻婚を認めていた り、制度 と して 離婚を全然認めていなか った りす る場合を考えてみればよい.違 いを全部否定す 1 1
3-るのであれば、法廷地の法を適用す る しかなかろ う。 しか しそ うい う立場 は取 ら れていない。 しか し、だか らとい って どんな場合で も違 いが許せ るとい うわけで はな く、許せないとされ、準拠法の適用が否定 され ることもある.国際私法上の 公序 に反す るとされ る場合が これであるo この場合 も、例えば一夫多妻 とか稚婚 を認めない こととか 自体がいけない とされ るのでな く、それを法廷地で適用 して み ると許せない結果が発生す るという具休的な判断によるのである。そ ういう意 味で国際私法の理論が文化相対主義的な基礎を持 っているとい うことが分かるだ ろ う。 上記事件 と逆 のケースが、 1988年 3月中国上海郊外の列車事故で高知学芸 高校の修学旅行生27人 と引率の教諭 1人が亡 くな ったケースである。加茂 ・前 掲131貢以下 によれば、 日本側 は当初生徒 1人 あた り 5000万 円を要求 した。 これに対 し中国側 は110万 円を提示 した。当時平均的な労働者の 1ケ月あた り 給与 は月3 6 0 0円であ るとされ、交通事故死亡者 に支払われ る柿償金額 も通常 10万 円程度 とか。実際、 この事故で死亡 した 1人 の中国人 には 8万円の補償金 だ った とか。交渉を重ね、 1年後合意 に透 した金額 は 1人 あた り推定 450万円 か ら500万 円。 いかがであろ うか。 最初の中国人 が 日本で交通事故 にあい死亡 したケースについては、法的には一 書の判断が妥当であろ うと私 は考えている。 この事件が不法行為の性質を持ち、 法例 11条が連用 され ると日本法が適用 され ることになるが、 日本法上組書類の 計井をす るにあた って、被害者が 日本 には観光 目的で短期滞在 中だ ったとい う事 実は考慮せ ざるを得ず、考慮 したか らとい って意法の平等原則 に反す るとは思え ない。 東京地裁の民事27部で私見 と同様の実務処理がなされているようである。以 下 に、関連文献のメモを梅げる。 「民事交通事故訴訟 ・規書賠償額算定基準 1992年版」 (東京三弁護士会交 通事故処理妻旦会編集 ・発行)の中の、 「東京地裁民事第27部裁判官を囲む座 ー14
-読会 損害賠償額の算定 につ いて」の 「2、外国人が被害者の場合の慰謝料等 に ついて (長久保守夫裁判官)」か らのメモ *在留外国人が被害者 となった事件が 目立つよ うになる。 交通事故 は多 くは不法行為-法例 11条で、 日本の不法行為法適用。 債務不履行の場合-法例 7条 1項 は当事者の意思 によるが、当事者の意思が明 らかでない場合、 2項 により行為地法が適用 され、現実には 日本の債務不履行法 が適用 され ることが通常 だろ う。 原則 として 日本法が適用され るので、渉外事件特有の問題 はな く、争点 は姐書 額の算定が中心 になる。 *慰謝料 について 慰謝料の性質 は、制裁ではな く、賠償 だ とい うのが通説 ・判例である。 慰謝料の考慮事 由としては一般的に考慮 され る事 由のはか、外国人特有の事情 (わが国 と被害者の出国先 との物価水準の速 い、在留資格、現実のわが国での活 動、在留期間更新の可能性、在留期間を徒過 したか近 々徒過す るか等)が挙げ ら れ る。 その他、本国にいる被害者の辻族が固有の慰謝料請求のみ した場合の扱 いや、 症状固定後 しば らく在留 した場合の後辻症慰謝料算定基準等が問題。 東京地裁平成 3 ・4 ・26 (自動車保 険 ジャーナル 907号) :「外国人が被 害者の場合 は、特 に (個 々に事案の具体性か らの)修正 を考慮す る必要があ るが、 当該外国人が 日本 に在留資格を有 し、かつ、在留 している間に慰謝を受 けるべ き もの とされ る場合には、前記基準化 ・定額化 された慰謝料額を考慮 して決定す る のが相当であり、在留資格を失 った後、あるいは在留資格の有無 にかかわ らず、 帰国 した後で慰謝を受 けるべ きもの とされ る場合には、当該外国人の帰国先の所 得水準、物価水準等を考慮 し、前記基準化 ・定額化 された慰謝料額を変更 して決 定す るのが相当である。」 自賠責保険の扱 いは、在留資格の適法性をチ ェック し、不法 目的が認め られな い限 り原則 として 日本人 と同様に算定。 - 1
5-*過失利益 在留資格 によ って区別 して考え ることは収入の継続性 ・安定性判断上意味が あ ろ う。 (1)永住者資格を持つ場合 は 日本国民 と同 じでいい。 (2)在留資格があ り、就労 も可能 な ら在留期 間の限度で 日本基準でいい。荏 留期 間更新が高度 の蓋然性 を持 って認め られ る場合は更新後の期間 も含 め る。 在留期 間を徒過 したがなお不法在留 している者の休業損害 ・逸失利益 第 1説 :出国先で得 られたであろ う収入額等。 第2説 :1- 2年 をわが国で得ていた賃金を基礎 に算定、その余 は第 1説 による。 いったん は適法 に入国 したのだか ら密入国 とは 逢 うと。 第3説 :わが国の就労先か ら支払われている額。 第3説 は取れないので、第1説か第2説。 (3)在留資格 はあるがわが国では就労で きない者。 資格外就労が発覚 した場合の在留資格取 り消 し、退去強制 とい うことも あ り、なお検討 を要す る。 (4)密入国 は、遵法性の程度高 いので、出国先で得 られたであろ う収入額等。 自賠責保険の扱 いは、不法 目的が諌 め られない限 り原則 と して 日本で得ていた 収入 を基礎 に算定。 *治療糞 治療 の途 中帰 国 した と して も、必要 かつ相 当な治療であ る限 り事故 と相 当因果 関係 のある姐害 とな る。 しか し、帰 国後 の治療費 は、事故 との相 当因果関係 の有 無が争われ る場合が多 いのではないか と推測 され る。 ただ、慰謝料 について は、 同 じ人 間で苦痛量が逢 うとい うことはないはずで、 国簿 によ って大 きな差が 出て はおか しい とい う考 え も十分説得力 を持 ってい る。 また、以上の よ うに考 え ると、高知学芸高校の事件 とア ンバ ラ ンスにな る。中 国で 日本並の姐書賠償額が望 むべ くもない とすれば、結果的には低 善にそろえ る ー 16
-とい うことにな る。 これが仕方がないことなのか、 ど うか. 3、カ リフォルニア州で発生 した加害者 ・被害者 とも日本人の交通事故 次に、渉外判例百選 [第3版]の 「83 損害賠償債務の相続」 (道垣 内正人解 説)の事件を取 りあげ、考えてみ る。 事実の概要は次の通 りである。 A (日本人) は、一緒 にアメ リカ ・カ リフ ォルニア州に留学 していたⅩ らを レ ンタカーに同乗 させて同州内を走行 中、あやま って反対車線 に進入 し、正面衝突 事故を起 こした。そのためAは死亡 し、Ⅹも脳挫傷等 の重傷を負 った。Ⅹは、亡 Aの父母YI Y2 はAの負 った姐書賠償債務8700万 円余 りを2分の1ずつ相 続 したとして、各 自43 00万円余 りを支払 うべ きことを求めて大 阪地裁 に提訴 した。 これに対す る大阪地裁昭和62年 (1987年)2月 27日判決の判 旨は次の 通 りである。 法例2 5粂 (現26粂)は 「相続ハ被相続人 ノ本国法二依ル」 と規定す るので、 亡Aの本国法た る日本法 によることにな り、本件債務 は亡 Aの相続財産を構成 し、 亡 Aの死亡 によ り直ちにその相続人 た るY らに承継 され るものの ごとくであるが、 一方法例11粂 1項 によれば不法行為の効力 (相続性を含む) に関す るすべての 問題は不法行為地法によることにな り、カ リフォルニア州法 において は債務の相 続性 は認め られてお らず、被相続人の債務 は相続の対象 とな らないとされている ので、 この観点か ら見 る限 り、本件債務が亡Aの相続人であるYらに相続 され る ことはあ り得ない とい うことにな る。 このように見て くると、本件債務の相続性 につ き、法例11条 1項 と同 25条 とは相矛盾す る内容 の 2個の準拠法の適用を 命 じているもの といわなければな らず、 しか も、その うちのいずれかを使先的に 適用すべ きもの とす る根拠 も見当た らない。そ うす ると、本件請求を認容す るに は、不法行為準拠法たるカ リフォルニア州法 も、相続準拠法た る日本法 もともに 本件債務の相続性を肯定 していなければな らない と解 されるのに、カ リフォルニ ア州法では認め られていないのであるか ら、本件債務が相続 によ ってYらに承継 され ることはない もの とい うべ きだか ら、 Ⅹの本訴希求 は認 め られない。 - 1
7-日本民法 は包括承継主義 (プラスの財産 もマイナスの財産 も丸 ごと承継)を採 用 してお り、相続財産が債務超過 の場合に相続人が債務 の相接を免れ るためには 一定期 間以 内に限定承認 か相続放棄 を しなければな らない. これに対 して英米法 系 に属す るカ リフォルニ ア州法では、被相続人 の財産 をいったん死者の人格代表 者であ る遺産管理人 また は漣言執行者 に帰属 させ、それ らの者 による財産関係 の 清算を経 たあ とにプラスが残れば相続人が承継す る (マイナスは承継 しない) と い う清井主義を採用 して いる (ユー ジー ン・M ・ワイ ピスキー 「アメ リカの相続 法」 (芦書房 ・1988年) 6貢参府)。 いわば 日本民法上の限定承認 と同様の 方式を取 るわけである。本件で も、事故後,Aが幸 を借 りる際に加入 した団体生 命保 険か ら15万 ドルの保険金が支払われ、 これをAの辻産 としてカ リフォルニ ア州で遺産 管理手鏡 (プ ロベ - ト)が行われXはこの中か ら少な くとも5万 80 00ドル余 りの寵 当を受 けてい る。 この事件 に接 して、最初 に感 じた疑 問は、 この事件を 「渉外」事件 として扱 う べ きなのか どうか とい うことであ る。加害者 ・被害者 とも日本人 で、訴訟 も日本 の裁判所でなされてい る。交通事故地が 「たまたま」 カ リフ ォルニア州だ とい う だ けではないか、 と。 しか し、考 え ると、上記のよ うに、カ リフォルニア州で遺 産管理手続が行 われたのであ る。必ず しもたまたま とも言えないだろ う。例えば 次 の メモを参照 されたい。 「民事交通事故訴訟 ・損害賠償額算定基準 1990年版」 (東京三弁護士会交 通事故処理委員会編集 ・発行)中の 「誇涜 最近 の交通事故訴訟の動向について」 (柴 田保幸裁判官)か らの メモ (外 国において 日本人が被害者の事故 関係) *加害者 ・被害者 とも日本人 とい うのが多 い。 *法例11条 は不法行為地法主義 を取 るが、 この 「不法行為地」 とは不法行為の 行われた国のみをい うのか、 または結果が発生 した国の法 も含むのか等篭論があ るC そ もそ も伝統的な不法行為地法主義 自体 に対 して最近批判が強 い. - 18
-*不法行為地法 が外国法 の場合、 それを入手 す る ことはむずか しい。 *折茂皇 「渉外不 法行為法論」 (有斐 閣 ・1976年)217- 235貢 によれ ば、外国、例え ば、 スイ ス、オ ラ ンダ、 フラ ンス等 の判例 には、交通事故 の事 故 地が他国であ るが、加害 者 ・被害者 と も自国民 で あ り、事故後 いずれ も自国 に帰 ってい るとい う事件で は 自国法 を適用 して い る例が あ る。 *日本法が適用 され るとい うことは、 自賠責保 険 と結 びつ いて 自動車 の運転 に関 す る危 険分散が 図 られ る ことを前提 と し、 さ らに、姐書賠償額 につ いての法 の発 展 は 自賠責保険及 び任意保険が カバ ーす ることを考慮 して きた とい う背景 が あ る ので、 自勝手保 険及 び任 意保 険が カバ ー しな い外 国での交通事故 につ いて 自賠法 等の 日本法 を適 用す ることが で きる、 あ るいは適用すべ きで あ るとの解釈 を取 る べ きであ るとの確信を持つ に至 って いない。 次 に、相鏡 の準拠法 と不法行為 の準拠法 の適 用関係 につ いてで あ るが、私 と し て は、鳥居淳子 ・判例 タイムス677号170貢 の本件評釈 に賛成で あ る. す なわ ち、多数説 は、一般論 と して相続財産 の構成 の問題 は相続準拠法 によ る と しなが ら被相 続人 に属 す る特定 の権利 また は義 務が相続性 を持 つか ど うか はそ の権利 また は義務 その ものの属性 なので、その権利 または義務 自体 の準拠法 で あ る個別準拠法 に よ って定 め られ ると し、 その結果、 まず個別準拠法 が相続性 を肯 定 し、次 に相続準拠法が その相続財産 への帰属 を認容 す ることを必 要 とす るとす る。判決 は一見 この多数 説 に従 って い るか の ごと くだが、鳥居氏 は判決 とは別個 の解釈 を し、その結果別 個の結論 にた ど り着 いて い る。 まず、 あ る債 務が相続 され るためには、 その債務 が債務者 の死後 も存続 してい なければな らな い。 これ は、その債務 の性質 その ものの問題 で あ る。従 って個別 準拠法 た る不法 行為の準拠法 によ る。本件 の不法行為 の準拠法 た るカ リフ ォルニ ア州法上 、不法行為 によ る扱者賠償債 務 は債務者 の死亡 とともに消滅 す る もの と はされて いない。債務者 の財産か ら弁済 を受 ける ことがで きる。 次 に この債務 が遺産 を構成す るか ど うかの問題 、 これ は相続準拠法 によ るべ き 問題 であ ると。 日本法上 、交通事故 によ る損害賠償債務 は債務者 の死後 も存境 す るとされ るので遺産 を構成す る。 さ らに、遺産 の うち、一身専属 的でな い、相続人 への移転可能 な財産 だ けが現 - 19
-実に相続 され る。 ここでの移転可能性 とは、本件 に即 して言えば、仮 にAに十分 な資産が あ り、 それをYらが相続 してい る場合 に、Xはそれ に対 して権利主張で きるか とい うことであ る (道垣内解説参府)O この意味での移転可能性 は否定 さ れて いないだろ うと。本件では実際 には債務超過だ とされ、そ してカ リフォルニ ア州法上 は残債務 は前記 の通 り相続人 には承継 されないのだが、 この残債務如何 の問題 は辻産管理 の問題であ り、 これ は相続準拠法 によるべ き問題だ とされ るの であ る。別 の言 い方 をす ると、本件で遺産管理 はそ もそ も日本法 に従 ってなすべ きだ ったのだ とい うことである。そ して、 Y らは相続放棄の 申述 を し受理 されて いるそ うで、 これ によ り請求 を棄却すべ きであ っただろ うと。道垣 内解説 も同 じ 結論であ る。 判決の結論 には多 くの人が抵抗を感 じると思 う。それで、逆の結論を導 き出す 上記のよ うな解釈が妥 当 と考え るのだが、一般 の人 にとっての予見可能性 とい う 見地か ら考えてみ ると、論理構成が複雑過 ぎる. このよ うな結論が もっとパ ター ン化 されわか りやすい形で示 され ることがが望 ま しい。 その意味で、折茂氏が挙 げ られてい る例 は きわめて興味深 い (折茂 ・前掲226- 9頁参府)。例えばス イスの1958年 の 「道路交通 に関す る連邦法」 は85条で、 スイスの裁判所 は、 スイスの登録標識を有す る自動車 または 自転車が外国において生ぜ しめた事故 に もとづ く請求権 につ いて は、被害者が、スイスを起点 または終点 とす る旅行のた めの乗客であ り、またはスイスに住所 を有す るものであ るときは、 スイス法を適 用すべ きで あ ると して い るとの ことで ある。そ うでない場合 はスイス法 は適用 さ れない。わが国で も、 こ うい う形 の例外規定 をお くことを真剣 に考えていい時期 に来てい るので はなか ろ うか。 陸簾 善の国境が なければないで規定 の工夫 は可能 だろ う し、その よ うな規定 を設 ける意味 もあろ う。 (1996 ・2 ・26 脱稿) - 20