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伊豆大島元町地区の深部熱水混入域の探査

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火 山 第 2集 第35巻 (1990) 第4号351-358貰 日開

伊豆大島元町地区の深部熱水混入域の探査

加 藤

完*・高橋

誠*・安藤直行*

(1989年 8月 8日受付, 1990年 9月 3日受理〉

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Kan KATOH*

Makoto TAKAHASHI* and Naoyuki ANDO* A rapid rise of groundwater temperature by up to 20o

C, observed at the Koshim

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u arid Otsu wells in Motomachi area after the 1986 fissure eruption of Izu-Oshima Volcano, was most likely induced by invasion of therma1 water泊toa sha110w aquifer lying below the Motomachi area. In order to locate a site of the

therma1 water invasion, measurements on groundwater temperature and soil air. chemistry in the area were carried out. The high回ttemperature was found at the Koshimizu well. The highest H2 and CO2

concentrations in soil air were a1so found near the Koshimizu well. These findings may indicate that the therma1 water has invaded into a sha110w aquifer in the vicinity of the Koshimizu well. 1. は じ め に 1986年11月21日伊豆大島火山の割れ目噴火後,元町地区の小清水井を中心とした水源井群 において,熱水の上昇による影響と考えられる水温上昇が観測された.1988年1月に元町地区 の水源井の水温調査を実施し,小清水井を最高温度とする3水源井で水温上昇を確認した.こ の水温上昇は化学成分および同位体組成の分析から,地下深部からの熱水が浅層地下水に混入 したために生じたと思われる(高橋ほか, 1988, 1989). また, このような水温上昇例として箱 根強羅温泉(大木ほか, 1968)と北海道壮瞥・洞爺湖温泉(安孫子, 1984)の例がある. 熱水混入域を探査するため, 1989年2月に元町地区で小清水井を中心として凡そ1.2kmX 1.2 kmの範囲内で,土壌ガス中のCO2およびH2の濃度分布を測定した. これらのガス成分は 熱水に普遍的に含まれているものであり,簡便な方法により現場測定ができるからである(野 田,1982).土壌ガス中のCO2およびH2濃度測定の結果,濃度の高かった小清水井上流部にお いて土壌ガスをサンプリングし,ガスクロマトグラフにより組成分析を行った.

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.

元町地区の水理地質 元町地区の地質は第四紀後期に噴出した玄武岩質の火山岩と火砕岩の互層からなる(一色, 1984).噴出年代が新しく未風化であるため透水性が良く,全ての水源井の静水位はほぼ海水準 *〒305茨城県つくば市東 1-1-3,工業技術院地質調査所 Geological Survey of Japan,ト1-3,Higashi, Tsukuba, Ibaraki 305, Japan.

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Fig. 1. Locality map of water wells at Motomachi area in Izu-Oshima Island. Numerals show groundwater temprature of each well measured on Jan23, 1988.The Ienoue No. 2 well was measured on May 29, 1988. 近くに位置する.水位は,位相の遅れは見 られるものの海洋潮汐に伴って変動する (田口ほか, 1988).また小清水井の揚水テ スト時の水位降下が僅か 16cmであるこ とからも,これらの地層は極めて透水性が 良いことが明らかである.なお大島の水源 井はいずれも静水位(ほぼ海水準〉に達し た後 10m前後で堀止めている. この理由 は,伊豆大島ではGhyben-Herzbergレン ズが形成されており,帯水層は淡水層と塩 水層が成層している結果(高橋ほか, 1987),密度成層している上部の淡水のみ を水中ポンプを用いて揚水するためであ る. 図 lに元町地区の水源井の位置と 1988 年1月 25日に測定した水温を数字で示し た.その時測定できなかった水温は括弧内 に測定日とともに記入した. これら水道水 源井は,海水の侵入による影響をふせぐた め海岸より数 100m 離れた海抜 50--65m の内陸部の水無川近くに位置している.

4

水源井の地質柱状図を図2に示した. 図2 で明らかなように僅か数 100m離れた水 源井の地質柱状を対比しでも地質の連続性がないことと,後述するように各水源井の水温が一 様でなく, 1987年 9月以前の 10年間ほとんど変化のないこと(図 3)および東西にほぼ同程度 の水温を持つ水源井が並んで、いること(図1)から,元町地区の地下水系は地層の累重構造に規 制され,東西に帯状に分かれていると推定される.降雨によりもたらされた地下水は速やかに 海水準に移行し,塩水層上に淡水層を形成し,海洋潮汐により流動しながら干潮時に泉浜海岸 で見られるように海中へ流出する. 3. 元町地区の水温調査 元町地区水道水源井の水温の過去 10年間の経時変化を農林省関東農政局 (1980), 田口ほか (1987),高橋ほか(1988)の資料を基にして作成した(図 3). この図から, 1977年 10月から 1987年 9月まで約 10年間, 小清水井@大津井・八重川井。神達井は数℃の範囲で夏に高く冬 に低いという季節変化を示しながら, 200 C前後の水温で推移している.一方,家の上第 1井(元

町浄水場井)と家の上第2井は,やはり夏に高く冬に低いという季節変化を示しながら上記井 戸より高い水温で推移している. ところで小清水井では 1987年 9月に,大津井では 1987年 12月に季節変化とは逆の水温上 昇が大島町水道課によって観測された. 1988年 1月 25日に実施した元町地区の水源井の水温

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伊豆大島元町地区の深部熱水混入域の探査 Koshimizu w巴11

A1ternation of vo1canic and pyroc1astic rocks

Ienoue NO.1 we11

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Volcanic rocks

353

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Py問 c1astic rocl日 Fig. 2. Geological column of some wells in Motomachi area.

調査(図1)では,近接する第1中学校井でも大巾(ム T=8.80 C)な水温上昇が観測された.最高 の水温上昇(ム T=210 C)を示したのは小清水井で、あった. 4. 水温調査の考察 元町地区の水温上昇と似た例として, 1967年 5月 23日から始まった箱根強羅温泉の水温上 昇がある.箱根では,水温上昇が発生する約 1年前の 1966年 6月から 7月にかけて箱根群発地 震が発生した.この時の群発地震は 1959'"'-'1960年の群発地震に比較すると震源が浅く,震源は 中央火口丘の内部で,標高は 700mから海面下 1500mにわたって分布し,平面的には大湧谷 と早雲山の中間部に集中した.群発地震の震源が 1966年には上部へ移動したことは,中央火口 丘に通ずる火道に地下深部から急激にマグマが上昇し,浅い震源をもっ群発地震を発生させた ためと思われる.一部分のエネルギーは地震エネルギーとして放出されたが,他は温泉や蒸気 により熱ヱネルギーとして地表近くに運ばれた. またこの時は主としてNaClを容存成分とす る熱水が,約 1年間を経過して強羅と蛇骨温泉に供給された(平賀, 1987).一方伊豆大島では, 1986年 11月 21日の割れ目噴火に先行した有感地震は伊豆大島の北西外輪の地下約 4'"'-'S知1 以浅の極めて狭い地域に集中しており,割れ目噴火の発生場所との相関もよい(沢田ほか, 1988). 両者を比べると,いづれの場合も震源が極めて、浅いことを特徴とする. これはマグマが浅い 部分に貫入し,箱根では群発地震として,伊豆大島では割れ目噴火として地表に現われた.一 部のエネルギーは熱の担体である熱水として地表近くに達し,箱根ではほぼ一年後に強羅温泉 を高温化し,伊豆大島ではほぼ半年後に小清水地区の帯水層上部の流動淡水層に混入じ温泉化

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Fig. 3. Variation with time of groundwater temperature at Motomachi area from1977to1988(data given by Ministrty of Agriculture, Forestry and Fisheries1980, TAGUCHI et a,.l1987andTAKAHASHI et al,. 1988). したと考えられる.層状泉型温泉の帯水層は比較的薄い例が多い.温泉水の流動にともなう熱 の移動は伝導によるものより大きく,帯水層およびその周囲の温度分布は温泉水の流動状況に 強く影響される(浦上, .1971). したがって,水温上昇開始が一番早く現れ,かっ水温上昇度の 大きい小清水井およびその上流付近で,熱水が地下の割れ目を通して上昇し,帯水層上部の淡 水と混合したと考えられる.その後水温上昇域は淡水層の流動とともに海に向かつて広がって いったと考えられる. 高橋ほか(1989)によれば, 小清水井では水温上昇に伴いCl-&全炭酸(全炭酸濃度は1987 年10月をピークにその後若干の減少傾向を示している)および全陽イオン濃度が増加し,水の 酸素同位体組成もより大きな値に変化した. そしてこれら溶存成分増加の原因として, Cl一濃 度は海水の1/3程度で水の同位体組成は海水とほぼ等しい熱水の供給があったと説明してい る.

5

.

元町地区の土壌ガス調査 水温調査の結果,熱水の混入域は小清水井またはその上流付近と推定されたので,さらに詳 しくその地域を特定するため,またこの熱水が火山性熱水と考えられることから,火山性熱水 に普遍的に伴う CO2およびH2のガス成分に注目し, 小清水井を中心として凡そ1.2

kmX

1.2

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伊豆大島元町地区の深部熱水混入域の探査 kmの範囲で,土壌ガス測定を試みた.土壌条件による影響を除くため, 5 m間隔で隣接する2 干しからなる観測点を合計38ヶ所,道路沿いに設置した.観測孔は電動オーガーにて孔径5cm, 深度1 mの孔を掘さくし,下部lOcmを裸孔にして直径1.3cmの塩ピ管を入れ上部を充損す る.掘さく直後の土壌ガス中の H2濃度は定常値に比べ高いことが知られている(水林ほか, 1986).この効果を除くため,導管から 二口注射器で掘さく時の空気を 1000 cc抜き出してから密栓した.翌日,裸 孔部の土壌ガス中の

CO

2濃度を北)11 式炭酸ガス検知管を用いて,見濃度 をセンサーテック製

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型水素セン サーを用いて,それぞれ現場で測定し た.図

4

に各観測点の位置と

CO

2濃度 とH2濃度を示した. なお各濃度は近 接する2観測孔の府,高い方の測定値 を用いた. この図から小清水井とその 上流部で

CO

2濃度が高く (>1%)か っ九濃度も他に比べて高い(17--49 ppm)ことがわかる. そこで小清水井 とその上流部で,さらに37観測孔を 密に増設した.観測孔の位置と値を図 5に示した. この図から小清水井周辺 部で

CO

2濃度が高い (>2%)こと,そ の上流部で

CO

2濃度が高く (>2%) かっ見濃度も著しく高い(1,...1028 Fig.4. Distribution and CO2 concentration of soi1 air in the observation holes at Motomachi area. Numerals indicate the H2 concentration in ppm and no numera1s show H2 concentration equa1

or lower than air level. 2. ?でR =咽・ー‘ -ー 『 ‘一 ー ー時 一,一 旬、ーー =ーー〆〆 ヱト.=--、 〆 -ー‘ーー.-~- ← 吋 ー - - 一 一

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Fig. 5. L∞ality map of observation holes around the Koshimizu well. Marks and numerals are the same as in Fig. 4.

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Gas composition of soil air in the observation holes A through G. Table1. N2/Ar He/Ar X 10-4 CO2 % O2 % N2 % Ar % H2 ppm ‘He ppm Observation Hole 85.8 93.0 85.5 86.0 85.9 86.0 86.3 7.6 5.3 7.1 6.2 8.1 6.1 3.3 4.5 6.0 0.1 0.1 0.2 0.1 14.1 13.6 9.7 20.7 20.8 20.6 20.4 81.7 81.0 83.4 78.3 78.2 78.3 78.6 0.95 0.87 0;97 0.91 0.91 0.91 0.91 3 8 1 9 P 3 4 J auqL ・ 今 J 4 U 4 H O ゆ 1 2 L 川 河 . , E -A , A M 1 4 ・ ・ a 内 , , -7.3

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ロ ロ m ロ 町 臼 ∞ ﹃ ︿ 創 立 。 コ ヱ 。 一 ∞ )> ロ コ .円 cij 95 Fig.6. H2' CO2 and O2 concentrations and He/ Ar andN2/ Ar ratios of soil air in the observation holes A through G shown in Fig.5.

9

0

N2I'Ar 85 1030ppm 1010 40 H2 Conc

2

0

ppm)ことがわかる.特に CO2濃度と H2濃度の高かった小清水井上流部の 7観測孔(測点 A.-... G)の土壌ガスをガス補集管にサンプリングし,実験室に持ち帰りガスクロマトグラフにより He, H2' Ar, N2O2, CO,zCH4の組成分析を行った.測定結果を表 1および図 6に示した. なお大島の通常の土壌ガス中の CO2濃度は,空気(0.03%)レベルに近い.これは大島の地表 部は厚いスコリア層に覆われているので,多孔質のスコリア層が大気と流通するためであろ

.

6. 土壌ガス調査の考察 1965年から始まった松代群発地震の際には,強い地震の震源分布と温泉の分布はほぼ一致し ていた.また地震の際に,著しく塩類に富む水が多量の CO2を伴って湧出した.特に CaC12や

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伊豆大島元町地区の深部熱水混入域の探査 357 , CO2に著しく富む水源地〈加賀井温泉)付近において地震の震源が最も浅かったことを考慮す ると,これらの温泉水の溶存物質には深所のマグマからの寄与が大きいと考えられる(野口ほ か,1969).WAKITA, etal, (1978)によれば松代地震時に,直径1kmのマグマが上部マントノレか らダイアピノレ状に上昇し結品する際,揮発成分であるH20,HCl, C O2, N2およびHeなどが断 層を通して放出された.別府地熱地帯では, HgとC O2の等濃度線図から浅所における地熱流 体の存在が確認されている(古賀@野田,1976).KIYOSU組dYOSHIDA (1988)は滝の上地熱地 帯のマク、マ性ガ、ス中のH2濃度が高く ,He/Ar 比および N~Ar 比も高いことを報告している. 今回調査した小清水井付近の観測孔のうち,最高1000ppm(空気の約20∞倍〉に達する高 濃度の九, 4.5%の高濃度のCO2およびN2/Arの高い比が測定されたB観測孔,および49 ppmの 見 濃 度 と 最 高6.0% (空気の約200倍)の高濃度のCO2が測定されたC観測孔を中心 とした東西方向の土壌ガスには特にマグマ成分の寄与が大きいと解釈される.このことは小清 水井上流付近の東西方向の割れ目から主要な熱水供給のある可能性を示唆する. 7. ま と め 1986年 11月21日!割れ目噴火に先行した有感地震は伊豆大島の北西外輪の地下約4---5km 以浅の極めて狭い場所に集中している.噴火後,熱水が割れ目を通して地表部に上昇し,小清 水井上流付近で流動している帯水層上部の淡水層に混合した結果, 1987年9月以降に小清水井 付近で観測された水温上昇を生ぜしめたものと考えられる.また土壌ガス調査により,高濃度 のCO2と

H

2および高い

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2/Ar比が小清水井上流部付近で測定されたことは,小清水井上流付 近に熱水の供給があるとする解釈と矛盾しない. 謝 辞 元町地区の水源井の水温測定と資料収集には,大島町水道課の沢田昭雄・笠間 昇両氏の御 支援をいただいた. ここに謝意を表します. 引 用 文 献 安孫子勤 (1984) 1977~1978 年有珠山噴火後における洞爺湖,壮瞥両温泉の化学成分の経時変化.文部 省科学研究費自然災害特別研究研究成果(No.A・59-4)火山ガス測定による噴火予測に関する基礎研 究, 56-70. 平賀士郎(1987) 箱根火山と箱根周辺海域の地震活動.神奈川温地研報告. 18, 232-237. 一色直記(1984) 大島地域の地質.地域地質研究報告 (5万分の l地質図幅).地質調査所, 133.

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J

.

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(8)

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