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藤田研二郎(著)『環境ガバナンスとNGOの社会学 生物多様性政策におけるパートナーシップの展開』

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Academic year: 2021

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書     評 ― 117 ―

〔書     評〕

藤田研二郎

(著)

『環境ガバナンスと

NGO の社会学 

生物多様性政策におけるパートナーシップの展開』

ナカニシヤ出版,

2019 年,vi+235p.

評者:永井 美佳

(社会福祉法人大阪ボランティア協会) The Nonprofit Review

JANPORA©2021 DOI: https://doi.org/10.11433/janpora.NPR-B-20-00001  本書の問いは,「従来の議論で環境問題の解決策として提 起されてきた協働がすでに実行に移されているにもかかわら ず,現実の環境問題解決が進んでいないとすればなぜか」で ある.この問いのもと,環境政策決定・実施過程における NGO・NPO を取り巻くパートナーシップ,とりわけ戦略的 連携論の分析視覚をベースとして,2 つの政策提言活動の事 例を研究し,得られた知見をもとに考察している.  本書の構成は,序章,7 つの章,終章にまとめられ,全体 を3 部構成としている.序章では,環境ガバナンスにおける 行政とNGO・NPO のパートナーシップの理念と実態につい て論点を提示している.第1 章では,1970 年代の環境行政の 成立から,2016 年頃までの環境政策史に関して,NGO・NPO をはじめ市民セクターに向けた環境行政側のまなざしを検討. 第2 章では,社会運動研究における戦略的連携論をベースに 本書の分析視覚を設定し,二つの事例研究を通じた問題を提 起.第3・4 章で,一つ目の事例である外来種オオクチバス 等の規制・駆除をめぐる政策提言活動を取り上げ,第5~7 章 で二つ目の事例である生物多様性条約第10 回締約国会議(以 下「COP10」)に向けた政策提言活動を取り上げて,事例研 究を実施.そして終章で,NGO・NPO を取り巻く状況を「実 施体制の丸投げ」という概念からとらえ直し,その循環構造 について改めて問題提起を行い,筆者の示唆を述べてまとめ としている.本書を通底する命題として,筆者は「他者変革 性の発揮」と「行政下請け化」を掲げ,政策的成果(政策実 施体制が特定の環境問題の解決に対してもつ効果)を見出そ うとしている.  本書の結論で筆者は,政策形成過程におけるセクター横断 的連携は,その形成条件の選択制のもと他者実施型の政策提 言の場合に形成されにくく,結果として「他者変革性の発揮」 につながるわけではないことを主張.また,環境ガバナンス において,行政の丸投げ的実施体制が特徴的な連携と指摘し ている.  本書で取り上げる2 つの事例は,ローカルな政策提言活動 として,外来種オオクチバス等の規制・駆除を,またグロー バルな政策提言活動として,生物多様性条約第10 回締約国 会議(以下「COP10」)を取り上げている.両事例の関係性 を,「シングルイシュー/マルチイシュー」「ローカル/リー ジョナル/グローバル」という2 つの軸から整理を試みてい る.一つ目のオオクチバス等の規制・駆除をめぐる政策提言 活動は,生物多様性関連政策の個別分野であるシングルイ シューを対象として,かつ主にローカルからリージョナルレ ベルで争われたもの.二つ目の生物多様性条約COP10 に向 けた政策提言活動は,生物多様性政策全般にかかわるマルチ イシューを対象として,かつ主にリージョナルからグローバ ルレベルで争われたものと解釈して,事例研究を進めている. 事例研究で用いたデータは,政策決定・実施過程にかかわっ たキーパーソンへの聞き取りと関連資料の収集をもって分析 にあたっており,事例を立体的に捉えることができる.  各事例は,政策形成過程を丁寧に追いながら,ステークホ ルダーを構成する鍵となる人物のコメントを紹介して綴られ ており,研究者にも実務家にも,事例研究のプロセスを追体 験しながら検証できる点は評価できる.  一方で,一つ目のオオクチバス等の規制・駆除をめぐる政 策提言活動は,政策的成果を確認できるところまで検証して いるが,二つ目の生物多様性条約COP10 の「愛知ターゲッ ト」は,COP10 開催に向けた政策提言活動を 2016 年頃まで 調査するに留まっており,「愛知ターゲット」の達成目標年 である2020 年までを調査対象期間としてないために,目標 達成年にパートナーシップの展開による政策的成果がいかに 生まれたかは明らかにしておらず,やや説得力に欠ける点が 惜しい.  「愛知ターゲット」と並行した議論として,2015 年に国連 で採択された「持続可能な開発目標」(以下SDGs)を中核と する「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」において も,17 の目標それぞれに「愛知ターゲット」の目標が関係づ けられている.かつ,SDGs の目標達成において,目標 17 の グルーバル・パートナーシップが重要視されるように,本著 の主題である生物多様性政策におけるパートナーシップの展 開が活発になることが期待される.グローバルな時流からみ ても,研究対象となる実践は,2030 年までの SDGs 達成に向 けた「行動の10 年」に創出されやすい.著者が本テーマを 追及し続けるのであれば,機運が向上する時機を逃さずに, 継続した問いの立証に期待したい.過日の学会賞受賞式の席 で,著者は「受賞を通じてやり残した研究を見つけた.批判 を待ちたい.」と言及しておられた.本書を一つの通過点と しつつ,今後の研究を期待する. , Vol.20, No.2, 117–120 (2021)

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