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上顎洞底挙上術を併用するインプラント治療:全身的・局所的因子が治療成績におよぼす影響

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原著論文

上顎洞底挙上術を併用するインプラント治療:全身的・局所的因子が治療成績におよぼす

影響

Dental implant treatment with lateral sinus floor augmentation: The effects of systemic and local factors on the clinical results

1)東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 インプラント・口腔再生医学分野 2)鶴見大学歯学部歯周病学講座

山本愛*1,2),今一裕1),山本麻衣子1),小林裕史1),大原誠司1),田辺功貴1),高橋一寿1),松島友二2) 立川敬子1),塩田真1),春日井昇平1),五味一博2)

Ai YAMAMOTO*1), Kazuhiro KON1), Maiko YAMAMOTO1), Hiroshi KOBAYASHI1),Seiji

OHARA1),Yoshitaka TANABE1),Kazuhisa TAKAHASHI1),Yuji MATSUSHIMA2), Noriko

TACHIKAWA1),Makoto SHIOTA1),Shohei KASUGAI1),Kazuhiro GOMI2)

1) Department of Oral Implantology and Regenerative Dental Medicine, Graduate School of Medical and

Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University

2) Department of Periodontology, School of Dental Medicine, Tsurumi University

Corresponding Author: Ai YAMAMOTO

Department of Oral Implantology and Regenerative Dental Medicine Tokyo Medical and Dental University

1-5-45 Yushima, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-8549, JAPAN e-mail: [email protected]

Accepted for publication January 15, 2020

ABSTRACT

Purpose: Lateral sinus floor augmentation is commonly performed as a predictable procedure

optimizing the placement of dental implants into atrophied maxillary alveolar ridge. It has been reported that implant survival rates with lateral sinus floor augmentation is 98%. However, for a precise diagnosis and screening prior to surgery, understanding the systemic or local risk factors may affect clinical outcomes. The aim of this study was to evaluate effects of the various factors of lateral sinus floor augmentation on implant survival rate.

Materials and Methods: A total of 398 patients treated with a combination of lateral sinus floor

augmentation and dental implant placement at Dental Hospital of Tokyo Medical and Dental University from 2000 to 2014 were examined. We evaluated the effects of the following factors on implant survival rate: Diabetes,smoking,nasal disease,respiratory disease with steroid drug,residual bone height and surgical procedure, implant system, bone substitute, sinus membrane perforation,cover screw exposure and periodontitis.The differences of the means were analyzed by logistic regression analysis.

Results: The number of implants could not acquire osseointegration was 43 in total, and the survival

rate was 94.3%. Nasal disease (p=0.00856), implant system (p=0.00043) and cover screw exposure (p=0.0390) were related to implant failure.

Discussions and conclusions: The present results indicate that nasal disease and postoperative

cover screw exposure affected implant survival rate. Corroboration with an otolaryngologist, treating nasal disease before maxillary sinus floor augmentation and avoiding postoperative cover screw exposure are important.

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14 Keywords:上顎洞底挙上術,全身的・局所的因子,治療成績

lateral sinus floor augmentation, systemic and local factors, clinical results 緒言 垂直的骨量に制限のある上顎臼歯部にインプ ラント治療をおこなう際に,上顎洞底に骨を造 成するための上顎洞底挙上術がおこなわれる. 1980 年に Boyne と James1)によって報告された ラ テ ラ ル ウ ィ ン ド ウ テ ク ニ ッ ク (lateral window technique)は,上顎洞頬側に骨窓を開け て上顎洞粘膜を挙上する手法であり,現在広く おこなわれている.上顎洞底挙上術については, ラテラルウィンドウの形成方法,骨移植材の種 類,必要な骨増生量,インプラント埋入手術方 法(同時法・待時法),偶発症,長期にわたるイ ンプラント残存率に関して検討がおこなわれて きた(Baldini ら2)).上顎洞底挙上術を併用し たインプラント残存率に関して,Bornstein ら 3)は 5 年残存率が 98%であったと報告し,また Manso ら4)は,平均観察期間 61.7 か月において 残存率が 98.05%であったと報告している. インプラント治療のリスク因子に関しては数 多くの報告があるが,上顎洞底挙上術を併用し たインプラント治療のリスク因子に関する報告 は少ない.そこで,著者等は,2000 年~2011 年 までに上顎洞底挙上術を併用したインプラント 治療をおこなった 234 症例 490 本について,様々 な因子(糖尿病,喫煙,鼻疾患または呼吸器疾 患,既存骨高径量と同時法および待時法,上顎 洞粘膜肥厚量,上顎洞粘膜穿孔,初期固定,カバ ースクリューの露出)が,インプラント残存率 およびインプラントの喪失時期におよぼす影響 について検討した.その結果,鼻疾患または呼 吸器疾患と,カバースクリューの露出がインプ ラント残存率を低下させることを明らかにした 5).この先行研究を進め,本研究においては,調 査期間,症例数,関連因子数を増やして多変量 解析をおこなった. 対象および方法 本研究は,東京医科歯科大学歯学部倫理委員 会の承認(承認番号 D2016-031)を得ておこなっ た.東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラ ント外来において,2000 年から 2014 年までに 上顎洞底挙上術を併用してインプラント治療を おこなった 398 症例 754 本を対象とした. 全身状態および術中所見,術後経過における 因子を抽出し,全身的因子・局所的因子に分類 した上で,インプラント残存率との関連につい て検討をおこなった. 検討した全身的因子は,インプラント埋入時年 齢,ASA 分類6),糖尿病,喫煙,鼻疾患,呼吸器 疾患とステロイド使用であった. ASA 分類に関しては,分類 3,4,5 は上顎洞底 挙上術の適応としておらず,分類 1,2 のみが対 象となった. 糖尿病に関しては,初診時 HbA1C(JDS 値)6.0 以上を糖尿病患者として,6.0 未満を健常者と した.なお,糖尿病患者に関しては,術前に担当 医師に対診をおこなって,血糖値および HbA1c の値による評価で糖尿病がコントロールされた ことを確認した後に,術前あるいは術中におい て抗菌薬を投与して,手術をおこなった. 喫煙に関しては,非喫煙者,喫煙者,喫煙歴の ある患者の 3 群に分類し,喫煙者には術前術後 の禁煙指導後,手術をおこなった. 鼻疾患に関しては,アレルギー性鼻炎(花粉 症含む),慢性副鼻腔炎,慢性鼻炎,上顎洞ポリ ープ,粘液貯留嚢胞,呼吸器疾患に関しては,喘 息,気管支炎,肺炎と結核の既往,さらにステロ イドの使用について確認した. 検討した局所的因子は,既存骨高径量と手術 方法,インプラントシステム,骨移植材,上顎洞 底挙上術中の上顎洞粘膜穿孔,インプラント埋 入手術後のカバースクリューの露出,歯周疾患 の既往,顎堤吸収であった. 診断用テンプレートを装着して撮影した術前 X 線 CT(ソマトムセンセーション 64,シーメン スヘルスケア株式会社,東京,日本)画像上にて 埋入部位の既存骨高径量を計測した. 手術方法は,上顎洞底挙上術と同時にインプ ラント埋入をおこなった「同時法」と,上顎洞底 挙上術施術後 3 ヶ月以上経過した後にインプラ ント埋入をおこなった「待時法」に分類した.ま たインプラント埋入手術は二回法でおこなった. 骨移植材は,自家骨,ハイドロキシアパタイ

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15 ト,β-TCP,自家骨+ハイドロキシアパタイト, 自家骨+β-TCP,ハイドロキシアパタイト+β -TCP,および移植材なしの 7 項目について検討 した. 上顎洞粘膜穿孔に関しては,術中のわずかな 穿孔には吸収性のコラーゲンメンブレンの使用 などによる対処をおこない,穿孔が大きく認め られた場合には上顎洞底挙上術を中止し,対象 症例に含めなかった. 歯周疾患に関しては,術前に歯周組織検査を おこない,歯周治療をおこなった患者を歯周疾 患既往患者とした. 顎堤吸収に関しては,Simion ら7)の報告より, 隣在歯の CEJ から歯槽頂部までの距離をパノラ マ X 線写真にて測定し,その距離が 3mm より長 い症例を顎堤吸収ありとして,3mm 以下の症例 を顎堤吸収なしとして検討した. 統計学的処理は,統計解析ソフト SPSS 14.0J for Windows (SPSS Inc. Chicago, IL)を用いて インプラント残存の有無を目的変数に,上記因 子を説明変数としてロジスティック回帰分析を 行い,p < 0.05 を有意差ありと判定した. 結果 対象症例は,男性 136 名,女性 262 名,平均 年齢 56.55 歳であった.上顎洞底挙上術後 5 年 ~14 年の観察期間を示し,平均観察期間は,9.87 ±2.76 年であった. インプラントシステムの内訳は,ブローネマ ルク(Brånemark System○RMKⅢ,MkⅣ,Nobel

Biocare,Göteborg,Sweden)405 本,ノーベル スピーディー(Nobel SpeedyTMGroovy,Nobel Biocare,Göteborg,Sweden)38 本,リプレイス (Replace SelectTM Tapered, Nobel Biocare USA.LLC,California,the United States of America)9 本,ストローマン(Straumann○RDental Implant System,Straumann,Basel,Switzerland) ティッシュレベル 75 本,ボーンレベル 91 本, アストラテック(Astra Tech Implant SystemTM Astra Tech,Göteborg,Sweden)113 本,3i (Osseotite○RImplant, Biomet 3i,Inc,Florida, the United States of America)12 本,POI(POIEX FINAFIX Tapered,京セラメディカル株式会社, 滋賀県,日本)11 本であり,表面性状は全て粗 面であった.インプラント 754 本中,喪失した インプラント本数は 43 本,インプラント残存率 は 94.3%であった. 全身的因子 年齢,ASA 分類,糖尿病,喫煙,呼吸器疾患と ステロイド使用はインプラント脱落との関連は 認 め ら れ ず , 鼻 疾 患 の み 関 連 が 認 め ら れ た (p=0.00856).(表 1,2,8) 局所的因子 既存骨高径量と手術方法,骨移植材,上顎洞粘 膜穿孔,歯周疾患の既往,顎堤吸収とインプラ ント脱落の関連は認められず,インプラントシ ステム(p=0.00043),カバースクリューの露出 (p=0.0390)に関連が認められた.(表 3-8)

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16 表 1.全身状態および喫煙によるインプラント残存率 埋入本数 喪失本数 残存率(%) 年齢 65 歳未満 589 33 94.3 65 歳以上 165 10 94.0 ASA 分類 1 358 19 94.7 2 396 24 94.0 糖尿病 - 725 41 94.3 + 29 2 93.1 喫煙 - 575 29 95.0 + 137 10 92.7 喫煙歴あり 42 4 90.5 鼻疾患 - 516 21 95.9 + 238 22 90.8 表 2.呼吸器疾患とステロイド使用におけるインプラント残存率 疾患 使用 埋入本数 喪失本数 残存率(%) + + 24 0 100 + - 17 1 94.1 - + 16 1 93.8 - - 697 41 94.1 表 3.既存骨高径量と治療法におけるインプラント残存率 骨高径 治療法 埋入本数 喪失本数 残存率(%) <3 ㎜ 同時法 55 4 92.7 <3 ㎜ 待時法 281 16 94.3 >3 ㎜ 同時法 165 12 92.7 >3 ㎜ 待時法 253 11 95.7

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17 表 4. インプラントシステムにおけるインプラント残存率 インプラントシステム 埋入本数 喪失本数 残存率(%) ブローネマルク 405 16 96.0 ノーベルスピーディ 38 3 92.1 リプレイス 9 1 88.9 ストローマン TL 75 3 96.0 ストローマン BL 91 7 92.3 アストラテック 113 8 92.9 3i 12 5 58.3 POI 11 0 100.0 表 5 骨移植材におけるインプラント残存率 骨移植材 埋入本数 喪失本数 残存率(%) 自家骨 2 9 5 1 1 9 6 . 3 HA 2 1 2 1 5 9 2 . 9 β-TCP 1 3 8 9 9 3 . 5 自家骨+ HA 4 5 5 8 8 . 9 自家骨+ β-TCP 4 1 7 5 . 0 HA + β-TCP 3 0 1 0 0 . 0 移植材なし 5 7 2 9 6 . 5 表 6 上顎洞粘膜穿孔,カバースクリューの露出におけるインプラント残存率 埋 入 本 数 喪 失 本 数 残 存 率 (%) 上顎洞粘膜穿孔 - 6 1 5 3 7 9 4 . 0 + 1 3 9 6 9 5 . 7 カバースクリュ ーの露出 - 6 3 0 3 1 9 5 . 0 + 1 2 4 1 2 9 0 . 3 表 7 歯周疾患の既往,顎堤吸収におけるインプラント残存率 埋 入 本 数 喪 失 本 数 残 存 率 (%) 歯周疾患の既往 - 2 8 8 1 4 9 5 . 1 + 4 6 6 2 9 9 3 . 8 顎堤吸収 - 3 4 4 1 4 9 5 . 9 + 4 1 0 2 9 9 2 . 9

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18 表 8.ロジスティック回帰分析によるインプラント残存の因子解析 p 値 オッズ比 95%信頼区間 年齢 0.720 1.174 0.489-2.818 ASA 分類 0.839 1.075 0.535-2.161 糖尿病 0.382 0.458 0.079-2.640 喫煙 0.272 1.334 0.798-2.231 鼻疾患 0.00856 2.509 1.264-4.982 呼吸器疾患とステロイド使用 0.286 1.542 0.696-3.416 既存骨高径量と治療法 0.927 0.984 0.702-1.379 インプラントシステム 0.00043 1.374 1.151-1.639 骨移植材 0.218 1.141 0.925-1.407 上顎洞粘膜穿孔 0.613 0.789 0.315-1.978 カバースクリューの露出 0.0390 2.196 1.040-4.636 歯周疾患の既往 0.947 0.976 0.479-1.989 顎堤吸収 0.076 1.915 0.934-3.926 考察 インプラント残存率 本研究におけるインプラント残存率は 94.3% であった.Bornstein ら3)の 111 本中 5 年残存 率が 98%との報告や,Manso ら4)の,160 本中残 存率が 98.05%との報告と比較するとやや低い 結果であった. 全身的因子 年齢に関して,高齢者は全身疾患などによる リスク因子を有する場合や,治癒期間の延長, 骨密度の低下など様々な要因がインプラント成 功率に関与していると考えられる. Moy8)らは, 年齢を 39 歳以下,40-59 歳,60-79 歳,80 歳以 上の 4 群に分類し,加齢はインプラントの失敗 と相関があり,60-79 歳(RR=2.24)は 39 歳以 下(RR=1.00)よりもリスクが高いと報告して いる.また,Alan ら9)は 10 歳増齢する毎にイン プ ラ ン ト 喪 失 リ ス ク が 7 % 増 加 す る ( HR : 1.07[95%CI:1.02 to 1.12];p=0.006)と報 告している.一方,Hassan ら10)は,年齢を 20 歳 -39 歳(インプラント失敗率 7.3%),40 歳-60 歳 (インプラント失敗率 6.4%),61 歳以上(イン プラント失敗率 6.6%)の 3 群に分類し,インプ ラント失敗率に相関がないと報告している.本 研究においては,本邦における高齢者とされて いる 65 歳以上の症例と現役世代とされる 65 歳 未満の症例に大別して比較したところ,インプ ラント残存率に統計学的有意差を認めなかった. ASA 分類に関しては,インプラント残存率に 大きな差は認められなかった. Moy ら8)は,頭 頸部放射線療法(RR=2.73),閉経後のホルモン 補充療法を受けている患者(RR=2.55)は,健常 者と比較して有意にインプラント失敗率が増加 すると報告している.また,Alan ら9)は,高血 圧症(HR:0.92[95%CI:0.76 to 1.11];p=0.39), シェーグレン症候群(HR:0.49[95%CI:0.12 to 1.98];p=0.32),骨粗鬆症(HR:0.89[95%CI: 0.65 to 1.22];p=0.47)はインプラント喪失 に有意差は認めなかったが,冠動脈疾患(HR: 0.69[95%CI:0.51 to 0.92];p=0.01)は有意 差があったと報告している.本研究において,

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19 ASA 分類に関しては統計学的有意差を認めなか ったが,超高齢社会においてインプラント治療 の有病者率の増加が推察され,今後より詳細な 検討をおこなう必要性が考えられる. Oates ら11)は,Ⅱ型糖尿病患者において,HbA1C 値:5.9%以下,6-8%,8.1%以上の 3 群に分類 し,それぞれのインプラント残存率が 93%, 92.6%,95%と残存率に差がなかったことを報 告している.Khandelwal12)らは,コントロールさ れていないⅡ型糖尿病患者(HbA1C 値:7.5-11.4%)において,下顎にインプラントを埋入 した結果,成功率 98%であったと報告している. 一方,Fiorellni ら 13)は,コントロール下の糖 尿病患者において,215 本中 31 本が脱落しイン プラント生存率は 85.6%で健常者より低く,ま た荷重負荷後 1 年で 31 本中 24 本インプラント の脱落が認められたと報告している.また, Morris14)らは,Ⅱ型糖尿病患者は健常者と比較 して有意にインプラントの脱落が生じるが,埋 入後治癒期間中にクロルヘキシジンで含嗽した 場合,9.1%の改善を示したと報告している.ま た,術前に抗菌剤を投与した場合も改善を認め たと報告している.このように,糖尿病のイン プラント脱落への影響には両論がみられるが, 本研究ではコントロール下の糖尿病患者に関し て,統計学的有意差を認めず,術前の糖尿病加 療による血糖コントロールの重要性が推察され る. Holahan15)らは,喫煙者に埋入したインプラン トは非喫煙者と比較して 2.6 倍喪失したと報告 しており,Moy8)らは,喫煙者においてはインプ ラント失敗率と有意に相関があると報告してい る(RR=1.56).一方,Alexander ら16)は,1 次手術から 2 次手術までの観察期間の中で喫煙 者のインプラント失敗率(2.81%)と非喫煙者の 失敗率(3.32%)で,統計学的有意差を認めなか ったと報告している.Balshe17)らは,粗面インプ ラント使用時において,喫煙者において有意に 脱落することはない(HR=0.8;95%CI=0.3 to 2.1 p=0.68)と報告している.本研究において は,喫煙に関してインプラント残存率に統計学 的有意差を認めなかったが,手術に際しての禁 煙指導が有効であった可能性が考えられる. Anavi ら18)は,上顎洞底挙上術が失敗した 13 症例のうち 4 症例で副鼻腔炎を,1 症例で歯原 性嚢胞が存在したことを報告しており,副鼻腔 炎の消炎,もしくは副鼻腔内の疾患を完治させ た後,上顎洞底挙上術およびインプラント埋入 手術をおこなうことを推奨している.上顎洞に おける細菌叢に関しては,無菌の空洞であると する報告と菌が存在するという報告がある19)が, Evans ら 20)は,術前に上顎洞粘膜肥厚量が 6mm 以上の場合には,分泌物の細菌培養の結果が 72 ~96%で陽性であったと報告している.本研究 の結果からも,鼻疾患がインプラント脱落のリ スクとなることが示唆された.したがって,術 前の問診や CT 検査にて十分なスクリーニング をおこない,鼻疾患患者,鼻中隔弯曲が強い症 例,上顎洞自然孔の狭窄を認める症例等は耳鼻 科へ対診し,改善後に上顎洞底挙上術およびイ ンプラント埋入手術をおこなう必要があると考 えられる. 本研究においては,呼吸器疾患とステロイド 使用がインプラント残存率に与える影響に関し て,統計学的有意差は認められなかった.しか し,気管支炎や気管支喘息による好酸球浸潤に より副鼻腔に炎症が生じ,中鼻道自然孔ルート が閉塞し,副鼻腔に貯留液が長期にわたり停滞 する可能性がある21).また,ステロイド薬に関 しては,副作用である易感染性による術後感染 やインプラント周囲炎の惹起,骨形成やオッセ オインテグレーションの阻害22),さらに吸入ス テロイド剤の長期使用による骨密度減少・骨粗 鬆症などの可能性がある 23-24).上顎洞底挙上術 およびインプラント治療をおこなう際には呼吸 期疾患の有無やステロイド使用に十分留意する 必要があると考える. 局所的因子 Tawil と Mawla25)は,5mm 未満の既存骨高径量 を有する症例に対して同時法でインプラント埋 入をおこなった際のインプラント残存率は 56% で,5mm 以上の既存骨高径量を有する症例に同 処置をおこなった際の残存率 100%よりも有意 に低いとの報告をおこなっている.本研究では 既存骨高径量と手術方法のインプラント残存率 に対する影響に関して統計学的有意差を認めな かったが,同時法では既存骨高径量が 3mm 未満, 3mm 以上共に残存率が 92.7%と若干低い結果で あった.

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20 Eliasson ら26)は,骨移植を伴わない部位への インプラント埋入後の辺縁骨吸収量に関して, インプラントシステムや荷重開始時期の違いな どによる有意差はなかった(p > .05)と報告し ているが,本研究においてはインプラントシス テムに関して,統計学的有意差を認めた.しか し,他のインプラントシステムに比較して,3i インプラントの症例数と埋入本数が少なく,本 結果については慎重な判断が必要である. 骨移植材に関しては,インプラント残存率に 統計学的有意差を認めなかった.Del Fabbro ら 27)は,自家骨単体もしくは自家骨+骨移植材の 混合物(HA,異種骨,DFDBA,FDBA,TCP)より, 骨移植材単体の方がインプラント残存率は高い ことを報告している.Del Fabbro ら28)は,粗面 インプラントの使用は様々な骨移植材の結果を 改善すると報告している.Garindo-Moreno ら29) は,ウシ HA,バイオグラスは生体適合性が良く, 上顎洞底挙上術時に自家骨と混合して使用する ことで上顎洞底挙上後の骨量減少が少なく組織 学 的 に 安 定 し て い る こ と を 報 告 し て い る . Nkenke ら30)は,骨移植材の選択に関しては明確 な 結 果 は 得 ら れ な か っ た と 報 告 し て い る . Hallman ら 31)は,自家骨単体のインプラント生 存率は 82.4%,ウシ由来アパタイト(100%中含 有率 80%)+自家骨(100%中含有率 20%)の インプラント生存率は 94.4%,ウシ由来アパタ イト単体のインプラント生存率は 96.0%であり, 短期的に同等の結果が得られたこと,また自家 骨を添加することで治療期間を短縮できる可能 性があると報告している.その他にも骨移植材 に関して数多くの報告があるが,研究によって 結果は様々であり,今後もよりよい移植材の開 発や,効果的な移植材の組み合わせを検討する 必要性が示唆された. 上顎洞底挙上術時の上顎洞粘膜穿孔に関して, 統計学的有意差は認めなかった.Moreno ら32)は, 上顎洞底挙上術を併用したインプラント治療に おいて,202 症例 364 本中インプラント残存率 は 97.2%であり,術中合併症として上顎洞粘膜 穿孔が 25.7%に認められたものの,術後の副鼻 腔炎などの合併症は認めず,インプラント脱落 との関連は無かったと報告している.Testori ら 33)は,上顎洞粘膜穿孔は 144 症例中 40 症例に認 められ,インプラントベースにおいてインプラ ント脱落に有意に相関する(p=0.01)と報告し ている.上顎洞粘膜穿孔を認めたケースにおい て,コラーゲンメンブレンなどによる封鎖が可 能と報告されており34),本研究においても,術 中のわずかな上顎洞粘膜穿孔に関しては吸収性 のコラーゲンメンブレンの使用などによる対処 をおこなった.したがって,上顎洞粘膜の損傷 は極力避ける必要があるものの,少量の穿孔で は適切な処置によって回復すると考えられる. 本研究ではインプラント埋入手術後のカバー スクリューの露出に関して,インプラント残存 率に統計学的有意差を認めた.Kim ら35)は,1 次 手術から最終上部構造装着時までの間にカバー スクリューの露出を認めない症例のインプラン ト周囲辺縁骨吸収量が 0.18–0.26 mm (range:-0.03 to 0.85 mm)であることに対して,カバー スクリューの早期露出を認めた症例はインプラ ン ト 周 囲 辺 縁 骨 吸 収 量 が 0.40–0.53 mm (range:-0.15 to 2.15 mm)であり,カバースク リューの早期露出がインプラント周囲辺縁骨吸 収を有意に加速させると報告している.カバー スクリューの露出部にプラークが蓄積し,粘膜 封鎖を破壊,インプラントのプラットフォーム 周囲に細菌感染を引き起こし,骨吸収を惹起す ると考察している.対処法としては,治癒期間 中の感染予防に努める必要性があると考える. Heitz-Mayfield36)らは,3 編のコホート研究の 中で,インプラント周囲炎において,歯周治療 既往の患者群と,歯周炎の既往がない患者群と を比較すると歯周治療既往の患者群でよりリス クが高い(オッズ比 3.1-4.7)と報告している. 本研究では,術前に歯周初期治療等をおこない, かつ定期的なメインテナンスを施行しているた め,有意差がなかった可能性が考えられる. Monje37)らも,歯周炎の既往はインプラント周囲 炎の発症に影響すると報告しているが,インプ ラントのメインテナンス療法がインプラント周 囲炎発症の抑制に効果があることを述べている. 顎堤吸収が生じた部位にインプラントを埋入 するとクラウンインプラント比(C/I 比)が大 きくなる.Chiapasco ら 38)は,顎骨再建を併用 したインプラント治療のインプラント脱落率は 顎骨の萎縮度合によって異なり,より顎堤吸収 の著しい症例で高い脱落率を示したと報告して いる.また Papaspyridakos39)らは,6mm 以下の

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21 ショートインプラントはより長いインプラント に 比 べ て 予 知 性 に 劣 る こ と を 述 べ て い る . Blanes ら40)は C/I 比 2 以上のインプラント累 積生存率は 94.1%であり, C/I 比 2 以下のイン プラントと辺縁骨吸収量にも有意な差はなかっ たと報告している.本研究では顎堤吸収による インプラント残存率に関する有意差は認められ なかったが,上顎洞底挙上術により十分な長さ のインプラント埋入が可能となり,C/I 比も改 善したと考えられる. 今後さらに対象症例の範囲を拡大し,因子を 増やして詳細な検討をおこなう必要があると考 えられた. 結論 上顎洞底挙上術を併用したインプラント埋入 を行う際は,全身的因子である鼻疾患,局所的 因子であるインプラントシステム,カバースク リューの露出に関して留意することにより,さ らに予知性の高い治療法となることが示唆され た. 文献

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