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<総説>頭頸部癌治療の最近の進歩 利用統計を見る

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頭頸:部癌治療の最近の進歩

 岡 本 美 孝 山梨医科大学耳鼻咽喉科 1.はじめに  耳鼻咽喉科で扱う癌治療の領域は,頸部・顔 面・頭部(頭蓋内を除く)におよぶ頭頸部領域 であるが,臨床的に大きな特徴をいくつも持つ。 形態面では生活上,露出部分であり,そのヒト の人格を表すとさえ言われる顔面を含む。機能 面では嚥下,呼吸といった生存していく上での 基本から,発声,構音,聴覚といった社会生活 の基本にわたり,この領域の治療は広範囲な機 能を犠牲にしてしまう恐れがある。例え癌が治 癒しても社会生活への復帰が困難なことも生じ 得る。一方で,頭頸部領域の進行した癌は容赦 なく顔面,頸部に顔を出し,患者は毎日少しず つ増大していく腫瘍を自ら見ながら,絶望の中 でベッドに横たわることになる。そして,鼻漏, 唾液にさらされ,感染を合併した癌組織は著し い悪臭を放ち,さらには近接する頸動脈を巻き 込んで,噴出する大出血をみることも稀ではな い。このような進行頭頸部癌患者を前にして, 人間としての尊厳を保つのは容易なことではな い。  しかし,頭頸部癌の治療が放射線療法,化学 療法,手術療法を組み合わせる3者併用療法で 行われるようになり,各領域での発展から,治 療成績は確実に向上している。中でも,手術療 法はこの15年問で大きく変遷した。その根本に は,再建手術,再建外科の著しい進歩があり, それにより根治的切除,形態・機瀧の保全がは かられるようになった。現在では頭頸部癌の治 〒409-38 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東l110 受付:1997年1月13日 受理:1997年1月13日 療に再建外科は不可欠なものになっている。さ らに,この再建外科の発達に伴う形で,これま で手をつけられない「聖域」とされていた頭蓋 底と内頸動脈に対してもアプローチが積極的に 行われるようになってきた。頭頸部癌の治療, 特に手術療法について最近の進歩を自験例を含 めて概説したい。 2.再建外科の発達  頭頸部領域では,切除した欠損部を被覆する という初歩的で単純なことが容易ではない。癌 の切除にはsafty marginをつけた「絶対切除」 が必要であるが,例えば,safty marginを2

cmとするなら,3cmの口内の癌に対して切

除の幅は7cmに及び,この欠損を被覆するに は,すなわち絶対切除の手術を目指すなら移植 を行わない限り困難である。咽頭や頸部,食道 の癌では離断した咽頭を縫縮するのは,胃や腸 のような訳にはいかず,どこからか,皮膚や粘 膜を移植して咽頭腔を再建しない限り,食事や 呼吸を経口,経鼻でできないばかりか,1日2 Lを越える分泌がある唾液や鼻漏の行き場がな くなってしまう。顔面の欠損は,そのままでは 厚いガーゼで被覆しなければならない。  ヒトの皮膚の欠陥の構築は通常random pat- ternであり(図1)1),皮膚の移動は幅と長さ が1:1を越えると血流不全の危険性がつきま とう。幅と長さが1:1では頭頸部領域へ皮膚 の移動をはかり,欠損部を十分被覆することは 不可能であろう。しかし,ヒトの皮膚の特定の 領域の血管網が優位血管によって支配される axial pattern(図1)を持つことを利用し,こ

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         random pattcrn nap a:Segmental artery, b:perfOratOr muscUlocutancOus artery・ c:derma1-subdcrmal plcxi, d:筋膜, e:筋肉. 5P・乙,帽・  へ’ C };ギ・ ’・磁避 聡っ墾

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をはかることが可能だとして,1965年に

Bakamjian2)が内胸動脈からの穿通枝を優位血 管として利用した三角胸部(Deltopectoral region)の皮膚の移動(DP皮弁)(図2)を頭 頸部領域へ応用したことは非常に画期的であっ た。本格的な再建外科の始まりであった。日本 でも1970年代半ば以降,舌,咽頭さらに上顎と いった頭頸部の再建に,今野ら3)により広く普 及されるようになった。しかし,皮膚ごとの移 動であるため,移植床への生着後に余分な皮膚 を切り離して元に戻すという2期的な手術が必 要であること,十分な長さ,大きさの皮膚の採 取が必ずしも容易ではなく,また患者は長期間 頭位の固定が強いられ負担が大きかった。  その後,1970年代後半から1980年代初めにか けて,大胸筋や広背筋といった筋肉を支配する 栄養血管が穿通枝をさらにその上の皮膚までの

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   deltopectoral skin Hap a’ 煖ケ動脈,b=同穿通肋間枝. 図2.Deltopectoral Hap(三角胸部低回)   損部に移動する :肩の部分に作製した皮弁をgoo翻転して頭頚部の欠 ばしていることを利用した筋皮弁の応用が米国 でつぎつぎに報告された4,5)。例えば,大胸筋 は胸肩峰動静脈により栄養されているが,必要 な大きさの皮膚を大胸筋上にデザインして,大 胸筋と共に切除し,胸肩峰動静脈は保存しなが らこの血管柄を鎖骨下動静脈からの分岐部まで 追って,ここで180。翻転して血管柄は皮下を通 して筋皮弁を口内や咽頭に移動する訳である (図3)。このような筋皮弁は血行がDP皮弁に 比べ安定していること,大きな皮膚あるいは筋 を含んだmassの移植が可能であること,必要 な大きさの皮膚と筋肉の移動であり血管柄は皮 下を通すことで手術は1回で済む,といった大 きな利点を持つことになった。筋皮弁の登場で 再建手術は大きな進歩を遂げる。しかし,栄養 血管柄を中心として翻転させて用いるという

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S38ki勧padd:● P:筋肉組織の茎 V;栄養血管藍 A:軸(1こ山)  筋皮弁の基本型 図3 筋皮弁の構造1) 「有甲皮弁」はおのずとその移動距離に限界が あること,さらに血行が必ずしも安定せず,報 告症例数の多い波利井らは,80%以上の症例で 部分壊死等の合併症がみられたとしている。  そこで,microsurgeryを用いた「遊離皮弁」 の登場となる。すなわち,顕微鏡,マイクロ用 摂子,持針器等の発達から,従来は特殊技能と されていた1~2mm径の血管吻合が,一定の 訓練を受ければ比較的安全に行えるようになっ てきたのである6・7)。特に頸部には,頸動脈か らの豊富な血管網が存在しており,これらを rec三pientの血管として前腕皮剥(擁骨動脈, 皮静脈)(図4)。腹直筋皮弁(下腹壁動静脈) (図5),外側大腿皮弁(外側大腿回旋動静脈) といった皮弁あるいは筋皮弁が,血管吻合によ り(遊離皮弁・筋皮弁),再建に広く用いられ るようになった。これら遊離皮弁・筋皮弁の利 点は,自由な位置に移植皮膚の移動が可能であ り,また,皮弁の血流は非常に良好で部分壊死 の頻度が極端に減少した。さらに,血管吻合を 利用した空腸や結腸移植による咽頭や食道の再 建,(図6)腸骨や腓骨を用いた下顎骨,上顎 骨の再建,さらには皮弁と骨とを,あるいはい くつかの皮弁をまず血管吻合して連結させた後 に移植を行う複合皮弁キメラ皮弁も用いられて いる(図7)。  このような再建外科の進歩により,腫瘍の拡 大切除が可能となり,さらに機能改善も向上し ている。化学療法を併用した術前のfull dose 外照射療法と拡大en bloc切除,このような皮 弁を用いた即時再建により,以前著者が勤務し

ていた秋田大症例の5年生存率は,舌癌で

80%8),上顎癌で74%9),中咽頭癌53%10),下 咽頭癌54%11)となった。一方,機i能面からみ ると,上顎癌術後の形態の保存(図8)三2),及 び咀噛能の保持(表1)13)舌癌術後の構音能 (表2),および嚥下能の保持14’15),下咽頭、 頸部食道癌での摂食能の改善(表3)16)に一定 の効果がみられるようになっている。 3,頭蓋底へのアブ日一チ  従来,脳と鼻腔・咽頭・口腔が同一手術野で 連なってしまうということは,合併症として致 命的な感染を引き起こすという点から,想像す ることすらできなかった。しかし,前述した再 建外科の進歩により,脳と鼻・咽腔,口腔との 隔壁を確実に作ることが可能になったこと,画 像診断の向上で腫瘍の進展範囲をより詳細に把 握できるようになったことから,この領域への アプローチが行われるようになった。図9~11 には自験例を示す。反対側の口蓋・上顎同側 の前頭葉,卵円孔から硬膜に浸潤する巨大な上 顎洞原発癌症例であるが,両側上顎全摘,頸部 リンパ節郭清後に,脳外科により開頭のうえ前 頭葉部分切除を含む前頭蓋底,中頭蓋底一括切

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・撫ε、 ,,へ,ζ鹸♂  ダ・’ 〉憾 顔4.前腕皮綴とこれを利用した舌癌にて舌半側切除後の再建(*で示す).前腕皮弁特有の軟    らかさが残存舌の運動制限を最小限にして良好な構音,嚥下が期待される.

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図5.腹直筋皮弁:下腹壁動静脈を利用する

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図7.前腕皮綴(*印)末梢の擁骨動脈,皮静脈に腓骨(矢印)   の栄養動脈を吻合し,前腕皮弁と共に移植に用いる. 断,硬膜再建が施行された。その後,腹直筋皮 弁にて頭蓋底,鼻腔を充填し,前腕皮弁の最愛 動脈皮静脈末梢にU字型に骨切り・プレート 固定を行った腓骨を吻合した複合骨皮弁で,口 蓋・口蓋骨辺縁の再建を行った症例である。 4.内頸動脈の処理  進行癌,再発癌,あるいは前述した頭蓋底に 広がる癌の根治切除にあたっての最大の問題点 は,近接する内頸動脈の処理である。これまで, 一側内頸動脈切断時の同側の脳血流,すなわち 対側内頸動脈を介してのcollateral且ow(側副 血行路)の評価については種々の検討がなされ てきた。セルジンが国法により内頸動脈に留置 したカテーテルのバルーンを膨らませて血流を 遮断し神経症状の発現を観察する(バルーン・ マタス法)17),その時に対側内頸動脈の血管造 影による造影パターン,カテーテル末梢先端に かかる対側からの血流圧(stump pressure)18) の測定等が行われたが,いずれも信頼しうるパ ラメーターにはならなかった。一側内頸動脈遮 断による死亡も含む重篤な脳神経症状の発現率 は遅発症状も含めると50%を越えるとされてい る19)。  しかし,近年のpositron emission tomogra一

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表1.上顎癌患者の拡大切除後の喧噛能の評価.食品を固さから1~Vの5殺    階に分けてどのような食品を食べているかで曝噛能を評価した.1,II    流動,豆腐などIV, Vは鶏肉,たくあん等を含む,無歯顎症例でも義    顎装用により比較的良好な咀囑能を示した.文献13)より          食品硬度表による食品咀噛能力検査 1 H 皿

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おかゆ vリン 、腐 、どん バナナ 艪ナ卵 マ豆 墲ゥめ 食パン

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アんにゃく ソくわ 生レタス Rロッケ nム sーナッツ 生キャベツ Cカ刺身 Tラミ テたくあん  》 5症例 (7.8%)  》 6症例 (9.4%)  》 8症例 (12.5%)  》 35症例 (54.7%)  》 10症例 (15。6%) Poor 鷺症例 (17.2%) Good 45症例 (70.3%) 再建に用いた皮弁と咀囎能(健側無歯症例) DP皮弁(18症例) 前腕(擁骨)皮霜(10症例) 節皮弁(3症例) 植  皮(2症例) 1 肇19吊り乙∩) H

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皿 w5 10 2  5 2  5 0  1

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ユ∩)()0 Poor (1・H)  11%  30% 100%  50% Good (W・V)  61%  50%  0%  50% 表2.舌癌にて舌半側切除後の構音能.例えば通鼻    音を示すが,再建群では良好であった.

      舌尖・歯茎音(通鼻音)

表2.舌癌にて舌半側切除後の構音能.例えば通鼻    音を示すが,再建群では良好であった,   遊離空腸,有茎三島再建による摂食状況 100

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58

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21 P6 計 18 13 5 1 37 縫縮 DP  大胸筋  前腕  腹直筋 再建法 phy(PねT)の出現で, H2150をトレーサーと して用いて,このPETとバルーン・マタス法 を併用することで,一側内頸動脈遮断時の脳各 部位の血流の絶対値を測定することが可能と なった(図12)。本法を用いた自験例の検討に より,良好な側副血行があると判断された症例 で,実際に内頸動脈切断後の重篤な脳神経症状 の発症をみたものはいない(表4)20)。ただ,

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図9.下顎骨,頭蓋底,対側口蓋骨も大きく破壊する上顎癌症例

       ノ・攣

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図10.同症例の骨の切除範囲を実線,点線で示す

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図11.同症例の再建術後の顔貌

    ,Selected呈mages f治om PET cereb戯blood flow s之udアwith and without inter灘al carotid artery ba1・ Ioon test occlusion show no alteration in cerebrI羅blood flow.

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   神経症状の出現はみられなかった。文献20)より        C韮i捻ical fセatures and ou£come in padea毛s        who underwer珪量nterrlal carotid artery bal至oon test occlus量on studies P、d,。,       P,i。r M、、、、Sしump N。.Age’Sex P「lma「y Histology R、dl、、i。n、,、、 p「essu「e       (mmHg) Co}1ateral      E曲loc CarotlδNeurologlcal  FlOW     Operation Reseαion  Morbld三ty (P£T> Ouヒco撒e ll 12 玉3 14 15 16 7 1 18 9 韮 20 1◎4 q乙Q4 23 24 69・M 75・F 64・F 51・F 54・F Hypopharアnx  scc  LarynX      SCC Oro鈴harynx scc Hy鈴opharγnx  scc Orophary【}x    scc 50・F  Oropharynx SCC 51・F   Hアpopharynx    scc 59・F  Parotid Glar…d adenoca. 69・F 71・F Unknown Larynx SCC SC(: 48。F   Hypopharynx    scc 24・M   Tongue    scc 73・F  Hypopharynx  scc 62・F  Parotid GlaBd SCC 十十÷を十 十 ÷ 十 十 十 十 十

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ころは大きい。前述のPETにより,腫瘍の

“質的診断”も行われようとしている8)。今後, より一層のご指導,ご協力をお願いして連帯し ていかなくてはならない。  また,再建外科は,予後,機能に大きな役割 を果たしてきたが,切除が大きくなると,その 再建は満足すべきものにはならない。これまで 以上の工夫・改善が必要である。しかし,この 領域は発展途上であるため,確立した術式がな いということは,同時に大きな可能性を秘めた 領域ということでもある。若手教室員と共に切 磋琢磨していきたい。 文  献 1)塚田貞夫:組織移植の基礎と適応.塚田貞夫編.   形成再建外科.東京:医歯薬出版社,1984;   5-26. 2) Bakar煽ian VY. A two-stage mαhod for   pharyngoesophagea豆 reconstruction w霊th a   pr丘mary pectoral sk癒 flap. Plas乞 Reconstr   Surg l965;36:173-184. 3>今野昭義,戸川 清,東紘一郎,他.悪性腫瘍   切除後の有茎弁によるロ腔の再建術と術後機能.   耳喉科1975;47:527-536. 4) Ariyan S. The pectoralis m勾or myocutaneous   aap. Plast Recorlstr Surg l 979;63:73-81. 5)Mccraw JB, Magee wR Jr, Kalwalc H認αム   Uses of the trapezlus a鴛d stemomastoid   myocutaneous fiaps in head and neck  surgery. Plast Reco獄str Surg 1979;63:4,9-57. 6) Song R, Gao Y, Song Y,6‘α乙The forearm   f玉ap. Clin Plas£Surg 1982;9:21-26. 7) Takato T, Haril K, Eblhara S,8彦α♂. Oral and   pharyngeal reconstruc£ion  using  the free

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