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経営学部における情報教育 I

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(1)

A

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(2)

-5-師 啓二  要旨  経営学部において行われている情報教育関連の科目を紹介する。 特に必 修科目である「経営情報科学」を中心に学生の受講状況および成績を調査し、 問題点を提起する。Tukeyらの「探索的データ解析」の方法によりデータの 分析を行った。データ解析には統計プログラムSPSSを用いた。  1,はじめに  世界最初のコンピュータEMACが登場してから、今年(1996年)でちょう ど50年である。この問のコンピュータのハードウェア・ソフトウェアに関連 した技術の進歩は目覚ましいものであり、最近ではその進歩の速度をますま す早める傾向にある。中でも、トランジスタやIC等の半導体関連の技術(マ イクロエレクトロニクス、MicroElectronics)の発達は著しく、それによっ てコンピュータは小型化され、ありとあらゆるものに使われるようになった。 それに伴って、便利で使い易いソフトウェアも開発され、今日われわれの机 の上に乗っているパーソナル・コンピュータの方が、20年前の大型コンピュ ータ・システムよりも、はるかに処理速度も早く、また使い易いという状況 が実現している。このように高度な情報処理能力を持った機械を単なる文房 具としてのみ使うだけでは、十分に活用したことにはならない。機械にはそ の能力に応じた使い途がある。本稿では「経営情報科学」を受講した学生の 成績をパソコン(Apple Power Macintosh7500)を用いてデータ解析した。 データの統計処理にはSPSS(Statistical Products and Service Solution) Release6。1」(1)を用いた。従来は大型計算機でしか使えなかったSPSSを、 今ではパソコン上で動かすことができる。これによって、大学の経済・経営 系の学部における、これからのコンピュータ教育の在り方を検討するための 資料として提供する。 ”.歴史的背景 ENIACは大砲の弾丸の弾道計算に利用する目的で開発された。それに続く 一6一

(3)

コンピュータの利用は、ミサイルの誘導などの主として軍事目的に限られた ものであった。しかし、計算のためのプログラムは機械語で書かなければな らなかったので、コンピュータのことを熟知している一部の技術者しかコン ピュータを使うことができないという状態であった。1956年に登場した最初 のフ。ログラミング言語のFORIRANは、決められた英語の単語と数式でフ。ロ グラムが書けるという特長を持っていたので、それによって、コンピュータ の知識をあまり持たない技術者でもコンピュータを利用できるようになっ た。この「プログラミング言語の登場」という事実がコンピュータの歴史の 中で持つ意味は大きい。膨大な計算が必要な宇宙開発競争において、米国が アポロ計画に見る様な大成功を収めた背景には、このような技術的な裏付け が必要不可欠であったのである。  一方で、冷戦時代、米国では国の技術力を高め、ソ連よりも遅れていた宇 宙開発競争に打ち勝つため、国内外で発行されている雑誌、特許などの情報 を国の知的資産と見なし、それらの情報をコンピュータの記憶装置に蓄えて いった。コンピュータによる情報の検索、つまり、データ・べ一スの始まり、 である。 このような大量のデータを処理するには、FORIRANよりも事務 処理用言語のCOBOLの方が向いている。 COBOLは1960年に米国の国防総 省で開発された。  マイクロエレクトロニクスの発達により、1975年頃、米国でパーソナル・ コンピュータが登場した。このパーソナル・コンピュータ(パソコン)で BASIC言語を利用することにより、簡単な計算ならば、大型計算機を使わな くて済むようになった。計算速度が遅いという欠点を我慢できれば、わざわ ざ大型計算機センターへ出かけて行って、カードにプログラムをパンチして、 入力して、結果を待つという手間が省けたのである。 続いて、WORDSmRやVISICALC等のパソコンの利点を生かした便利なソ フトウェアが登場して、パソコンはますます普及した。パソコン上で動く、 FORTRANのコンパイラ(翻訳フ。ログラム)も開発されている。今日では、 特に早い処理速度が要求される科学技術計算などの分野を除けば、ほとんど        一7一

(4)

師啓二 の業務はパソコンで用が足りてしまうという状況が出現している。  1”.コンピュータ教育  1.プログラミング教育の変遷  以上のような状況を踏まえて、1960年代から70年代にかけて、大学のコン ピュータ教育と言えば、主として理科系の学生を対象としたものであり、ま ず、FOR㎜の基礎文法をマスターすることであった。FomRANは初学者 にも解りやすいという特長がある。また、全世界に普及し、利用者がきわめ て多いため、それらの利用者が作成したFORmANのフ。ログラムが豊富にあ って、それらのソフトウェアの資産が利用できるという利点も見逃すことが できない。FO㎜の基礎文法を理解し、少しプログラムが書けるように なった後は、自分の専門に応じて、さらに詳しくFORrRANを勉強する者、 他のCOBOLやPL/1などの言語に進む者へと分かれていった。  パソコンの登場により、文科系の学生に対してもBASICによるプログラミ ング教育が行われるようになった。BASIC言語ではグラフィック関連の命令 文も追加され、簡単な図や絵を描くこともできたし、プロッターを接続すれ ば、製図の図面や複雑な関数のグラフも計算しながら描くことができた。し かし、BASIC言語には不都合な面もあったのである。つまり、基本的な命令 文は共通しているものの、一部の、たとえばグラフィック関連の命令文など が機種によって異なる(「方言がある」という)という点である。  このため、ある会社のパソコンで動くBASICのフ。ログラムが、他の会社の パソコンでは動かない、という事態が生じた。また、BASICは計算速度が遅 いため、処理に時間がかかる計算の場合はFOMRANでプログラムを書いて、 実行する必要があった。したがって、パソコンを利用した、BASICによるフ。 ログラミング実習と平行して、FORrRANのフ。ログラミング教育も行われて いた。 2。白鴎大学における従来の情報教育        一8一

(5)

 a.情報関連カリキュラムについて   経営学部の1年生は「経営情報科学」が必修である。従来、この科目で は、学生はコンピュータのハードウェア、ソフトウェアを学習するほか、コ ンピュータ言語を一つ勉強し、プログラミング教育および実習をする。コン ピュータ言語はFO㎜、BASIC、Cの中から1つを学習することになって いる。各言語の選択は担当教員に任され、FORTRAN言語のクラスは中型コ ンピュータ(Fulitsu M340Sシステム)、BASIC言語およびC言語のクラスは パソコン(NEC9801FA)を使った実習が行なわれる。経営学部の2年以上 では、「経営情報コース」の科目として、C言語を使って経営に関する演習を 行う「情報処理演習A」、情報処理検定試験の受験を考えてCOBOL言語を講 義する「情報処理演習Bj、ニューラルネットワークの「情報処理特論A」、 データ・べ一スの構築とデータの分析の仕方を講義する「情報処理特論B」 がある。さらに、「情報管理論」ではグラフ理論を、「会計情報システム論」 ではbtus1−2−3を用いた会計の処理の仕方を講義している。このほか情報関 連の科目として、一般教育科目の「情報科学」と「情報社会科学」、教職課 程科目の「教育工学」、専門選択科目の「管理工学1」および「II」、「計数管 理論」、「経営統計学1」および「n」、「決定の科学1」および「H」等があり、 これらの授業では必要に応じてコンピュータ教室のパソコンが利用されてい る。  このほか、情報処理教育研究センター独自の事業として、通産省の「情報 処理技術者2種」試験を受験する学生のための講座が開講されている。  b. 「経営情報科学ゴについて  「経営情報科学」は白鴎大学経営学部における情報教育の基幹科目であり、 「経営情報コース」への入門の重要な科目として位置付けられている。全体 で定員41名∼50名の12クラス(再履修クラスの2クラスを含む〉を専任教員 3名、非常勤教員2名で分担している。筆者の担当は5クラス、全体のほぼ 半数の学生を指導していることになる。        一9一

(6)

師 啓二 lV. 「経営情報科学」の現状 1.受講した学生の成績について 1995年度に筆者が担当した「経営情報科学」のクラス別の成績を紹介する。 受講者数は次の第1表の通り。第2表に、大学へ報告した成績を示す。SABC の評価の者は「合格」、D Hの評価の者は「不合格」である。 第1表  「経営情報科学」受講人数とクラス別成績(100点満点) クラスインデックス ク ラ ス 人数 データ数 中央値 平均値 標準偏差

1

月曜3限Dクラス 41名 39 76.00 75.77 12.2

2

月曜4限Cクラス 41名 39 75.00 74.37 11.7

3

火曜2限Eクラス 43名 36 75.50 74.76 13.7

4

水曜3限Bクラス 43名 38 78.50 76.71 11.8

5

火曜4限再履修クラス 50名 30 68.00 66.73 12 第2表  「経営情報科学」成績報告 クラスインデツクス ク ラ ス

S

A

B

C

D

H

合計

1

月曜3限Dクラス

7

9

10 11

2

2

41

2

月曜4限Cクラス

3

14

8

13

2

1

41

3

火曜2限Eクラス

6

9

8

11

4

5

43

4

水曜3限Bクラス

6

12 10

9

4

2

43

5

火曜4限再履修クラス

0

4

9

14

4

19 50 一10一

(7)

 成績は、講義への出席条件(欠席回数が年間の授業日数の1/3未満)をク リアした者に対して、前期試験と期末試験の得点に演習点および出席状況を 考慮して決めている。本稿ではSABCDHの評価に直す前の素点の成績を用い てデータ解析を行った。第1表では欠席回数の多いもの、どちらか一方の試 験を欠席したもののデータは除外してある。再履修クラスには欠席回数の多 い者が特に多い。  第1図に各クラスの成績の幹葉図を示す。また、第2図にクラス別成績の箱 ヒゲ図を示す。幹葉図や箱ヒゲ図はTukeyらが提案した「探索的データ解 析」(2)∼(4)という統計解析法で使用されるデータ表示法である。ここでは 統計ソフトSPSSを用いてこれらの結果を得ている。 一11一

(8)

1 i I l Frequency 1 .OO 4.00 2.00 6.00 6.00 5.00 7.00 1 .OO 5.00 2.00 Stem width : Each [eaf : Stem &

5*

5.

6*

6.

7*

7.

8*

8.

9*

9.

Leaf 1 5699 13 578888 O1 1 234 66788 i 233444 5 O1 223 79 1 0.00 1 case(s) Frequency 2.00 3.00 6.00 3.00 4.00 6,00 5.00 8.00 2.00 Stem width : Each leaf : Stem &

5*

5.

6*

6,

7*

7.

8*

8.

9*

Leaf 14 588 1 1 1 344 567 2344 555699 00333 55668889 04 1 0.00 1 case(s)

(*) FI i 3 P !D ; (clAss INDEX1) (b) 4 F C (CLASS INDEX2)

Frequency 1 .OO 5.00 8.00 8.00 8.00 5.00 1 .OO Stem width : Each leaf : stem & 4 5 6 7. 8 9 10 Leaf 8 25667 1 2356779 04555679 00222578 1 2447 O 10.00 1 case(s) Frequency 1 .OO 1 .OO 2.00 3.00 4.00 4.00 6.00 5.00 9.00 2.00 1 .OO Stem &

4.

5*

5.

6*

6.

7*

7.

8*

8.

9*

9. Leaf 9 3 56 234 7789 O1 24 777889 1 2244 567778999 03 5 Stem width : Each leaf : 1 0.00 1 case(s) (c) ) R 2 P E ; (CLASS INDEX3) (d) ZI( 3 P B ; (CLASS INDEX4)

Frequency 1 .OO 2.00 2.00 1 ,OO 5.00 6.00 3.00 7.00 3.00 Stem & Extremes

4.

5*

5.

6*

6.

7*

7,

8*

Le af (33) 56 12 6 O1 244 777888 1 34 5567779 111 Stem width : Each leaf : 1 0.00 1 case(s)

(e) 'k : 4 : :1 i ; (CLASS INDEX5)

(9)

-12-第2図 クラス別成績の箱ヒゲ図 100 80 60

纒督

40 し= 0数 2効  有

6

1

∼ / 一’釜∼ V∠ ずツ 藷£ ∴ン ︾δ、 幽 酎 帖7や 丁侍 ア湾 ∼ 虐 産7躯 駕︸勉’ ダ  昂 ¢’㌧ ゲ ︶ 乍 タV 39 1.00 39 36 38 2.00     3.OO     4.00   クラスインデックス 30 5.00  幹葉図において、Frequencyの下の数字は各区間の度数(人数〉を表す。 また、Stem幅が10であるから、Stemの下の数字は得点の10の位を表し、 Leafの下の数字は1の位の数を表している。つまり、第1図(a〉の2行目に ついて言えば、55点と56点が各1名、59点が2名いることを示している。 Stemの列とLeafの列の問の(*)は区問を5.0∼5。4と5.5∼59のように2つ に分けていることを示している。このように、幹葉図はヒストグラムより情 報量が多いデータ表示法である。再履修クラスの得点分布は高得点者が少な く、左に(点数の低い方へ)裾を引いた分布で、正規分布と見なすことは出 来ない。それ以外のクラスの分布は概ね左右対称で、(b)と(d)がやや外 れるものの、ほぽ正規分布と見なすことが出来る。念のため、正規性をチェ ックした結果が第3表である。shapiro−wilks検定およびK−s検定 (Hlliefors検定)を用いた。Lillie重ors検定の有意水準(p値)がα2より大き いので、「正規分布ではない」という結論にはならない。これは、「正規分布 である」ということを必ずしも意味するわけではないが、幹葉図から見て、 再履修クラス以外は正規分布とみなしてもよいだろう。したがって、前述の 一13一

(10)

師 啓二 平均値と標準偏差は分布の代表値としての意味を持つ。

第3表

各クラスの得点分布の正規性の検討      Statistic    df    Significance (a)月曜3限Dクラス Shapiro−W蒔ks    、9776 K−S (Li”iefors)       .0584 (b)月曜4限Cクラス Shapiro−Wilks    、9468 K−S (Li“iefors)      .0963 (c)火曜2限Eクラス Shapiro−Wilks    .9707 K−S (Lilliefors)      .0630 (d)水曜3限Bクラス Shapiro−W“ks    、9433 K−S (Liliiefors)      .0784 (e)火曜4限再履修クラス Shapiro−Wilks    .9168 K−S (Li髄iefors)      .1094

9933

9933

6633

Ω︾Ωり

33

00

33

、7041 >.2000 ,0933 >.2000 .5.195 >.2000 ,0793 >.2000 .0296 >.2000  箱ヒゲ図(第2図〉において、中央の箱のなかの太い実線はデータの中央 値、箱の下端(下ヒンジ)は第1四分位数(25%点)、箱の上端(上ヒンジ) は第3四分位数(75%点)をそれぞれ表す。箱の上端と下端の問の長さをヒ ンジ幅(四分位偏差)といい、この幅の間に全体のデータ数の50%が入って いる。箱から伸びている線(ヒゲ〉は箱の端からヒンジ幅の1』焙の範囲内に ある、中央値から最もはずれたデータまで引かれている。 それ以上箱から はずれたデータは「外れ値」(Outlier)さらにはずれた(ヒンジ幅の3倍以上) ものは「極外値」(Extreme Value)と呼ばれている,、中央値は平均値と比べ        一14一

(11)

て、大きく外れたデータに影響されにくい(「抵抗性がある」という〉とい う特徴がある。ゆえに、大きく外れたデータがわずかでもある場合には、平 均値はそれらの値によって大きくずれてしまうので、データの代表値として は中央値の方が都合がよい。再履修クラスにある1つの外れ値(33点〉はデ ータの入力ミスではない。この外れ値には番号がついているが、これはデー タ順を表わす単なる番号であり、学生の学籍番号ではない。このように異常 な値の存在に気付き、そのデータの真偽を検討できることも「探索的データ 解析」の手法の利点の1つとなっている。  さて、再履修クラスの分布(クラスインデックス5)が他のクラスの分布 より低い点数のところに位置するように見えるので、これらのデータ間に差 異があるのかどうか、多重比較を行った。第4表がその結果である。 第4表 クラス別成績の多重比較(StudenレNewman−Keuls法による) Variable SE巳SEKI By Variable CLASSID Multiple Range Tests:Student−Newman−Keuls test with significance leve1.05 The difference between two means is significant if MEAN(J)一MEAN(1) >=8.6916*RANGE*SQRT(1/N(1)+1/N(」)) wlth the fo”owing value(s〉for RANGE: Step     2    3    4    5 RANGE 2.81 3.35 3.67 3.90 (*)lndicates significant differences which are shown in the lower triangle        G G G G G        r r r r r        P P P P P        52314      CLASSIDMean 66、7333 74.3718 74.7639 75.7692 76.7105

Grp5

Grp2

Grp3

Grp l

Grp4

**** 一15一

(12)

師 啓二  表中で1列目にはGrp5(クラスインデックス5、再履修クラス)と比較し て5%で棄却される他のGrpに対し、(*)がついている。つまり、Grp5 (再履修クラス)と他のGrp1(クラスインデックス1〉∼Grp4(クラスイン デックス4)のクラスの間には差があるということである。一方、Grp1∼ Grp4の間には差異が認められない。他の方法、Tukey−B法、Dmcan法、 LSD法でも同様の結果であった。再履修クラスは前述のように欠席回数が多 い者が多いだけでなく、授業に出ている者の成績も他のクラスに比べて悪い ことが半琶明した。  1年全クラスの得点分布を第3図に、再履修クラスの得点分布を第4図に示 す。図の中の曲線は正規分布を表す。同じデータに基づいた結果であるのに、 再履修クラスの幹葉図(第1図(e))とヒストグラム(第4図)は少し違って 見えるのは、横軸の点数領域の区分の仕方が異なっているからである。一年 全クラスの得点分布はほぽ正規分布とみなすことができる。しかし、前述の 通り、再履修クラスの分布は正規分布とはみなし難い。 第3図 1年全クラスの得点分布 癒K 30 20 10

0

賦 \ぎ へ 汎 サ ¥、 へ “ ぐ’ 、、 へ“ \\ 、 暑 \ 、\ 50 60 70 80 90 100 標準偏差諏12.26 平均=75.4 有効数=152.OO 成 績 一16一

(13)

第4図 再履修クラスの得点分布

7

6

5

4 3 癒︽

2

1

0

標準偏差=12.01 平均=66.7 有効数=30.00 35   40   45   50   55   60   65   70   75   80        成 績 2。成績の分析  次に成績と欠席回数および演習点の関係を調べた。演習点とは授業中に学 生がビデオを見ながら書いたレポート、解答した演習問題、プログラム実習 の課題などで出来の良いものに対して1点ずつボーナス点として与えたもの である。最大値は10である。成績は前期・期末の試験の得点でほぼ決まり、 演習点などのボーナス点が占める割合は7%以下である。第5図に欠席回数と 演習点と成績の散布図行列を示す。これから、欠席回数と成績は負相関、演 習点と成績は正相関、演習点と欠席回数は弱い負相関、がそれぞれあること がわかる(1)・(5)。 一17一

(14)

師 啓二 第5図 欠席回数と演習点と成績の散布図行列 口口 口 口 口〔コ ロ ロ ロロ 口田 口口

O口【コロ 口【}邸  口o ロロロ ロロ=口【m 欠席回数 ロロロ  ロロロ 口 ㎜旧 ㎝  口ロロロ 口 口じ} ロロ皿     m ロロ 口口 団 ㎜ 口〔コロロ 口ロロロロロ ロ ロロ  ロ ロ 口 口 口 ロロ 口㎜ ロロロロ ロロロロロ 口 演習点 皿口  口皿 ロロロロロ 口 口o口 口口口 口      口 口口口口ロロロロ【コ 臼 口 目ロ目麗 口    ロ 1コ   ロ 目目1冒 口 目ロ   ロ    Eヨ      ロ B目呂・     口 口  口  ロ ロ

成績

それらの量の間のPearsonの相関係数を第5表(のに示す。欠席回数と成績の 相関係数は一〇.5021、演習点と成績の相関係数は0。5416、演習点と欠席回数の 相関係数は一〇.2976である。相関係数の下の()内の数字は計算に用いられ たデータ件数を表す。その下の数値は母相関係数が0という帰無仮説のもと でのr値を表す。p−0.000ならば、1%で棄却される。相関係数のp値は全てp= 0。000だから、何れも「相関がある」ということを意味している。 一18一

(15)

第5表 欠席回数と演習点と成績の相関

ENSYUTEN

SEISEKl KESSEKl

ENSYUTEN

  1.0000   ( 0)

 P=

  ,5416   (180)  P胃.000   一.2976   (180)  P=.000 S日SEKl  .5416 (180) P器.000  1、0000 ( 0) P置  一.5021 (180) P=.000 KESSEKl  一.2976  (180) P=.000  一.5.021 (180) P=.000  1.0000  ( 0) P= (Coefficl?nt/(D.F、)/2姻led Significance) (a)Pearsonの相関係数 Contro”ing for.

ENSYUTEN

SElSEKl KESSEKI

ENSYUTEN

  1.0000   ( 0)

 P=

  .4750   (179)  P=.000 SElSEKl  .4750 (179) P=.000 1。0000 ( 0) P= (Coefficient/(D.F.)/2−tailed Signlficance) (b)KESSEKI(欠席回数)を制御変数とした偏相関係数  次に欠席回数を制御変数として、演習点と成績の偏相関を考える。つまり、 「欠席回数が多ければ、演習も出来ないし、成績も悪い」という仮説を検討 するわけである。第5表(b)にその偏相関係数を示す。結果は欠席回数の線形 効果を除いても、演習点と成績の間には正の相関(相関係数α475)があるこ とがわかった。言い換えれば、欠席回数によらず、「授業中の演習ができな いものは成績も悪い」ことが判明した。        一19一

(16)

師 啓二 V.結論  同じ条件で講義を行い、同じ問題の試験を実施した5クラスの成績のデー タを比較して、以下の結果を得た。 1.1年の各クラスの成績の分布は正規分布に近い分布となり、平均値と   標準偏差で比較することができる。再履修クラスの分布は正規分布か   ら外れていて、低い得点の方へ裾を引いた分布となっている。 2.1年の各クラスの成績の間には互いに有意な差異は認められなかった。“   しかし、再履修クラスの成績と他のクラスの成績の間には差異が認め   られた。つまり、再履修クラスは他のクラスとは「統計的に異なる」   クラスということになる。 3.相関係数の分析により、演習点の良い(悪い)ものは、成績も良い   (悪い〉ことが分かった。これは、普段から授業中に熱心に話を聞き、   内容を理解していれば、試験もよくできるということである。このこ   とは講義内容に対する好み・適性等とも関係していると思われる。 4。また、相関係数の分析により、欠席回数が多い(少ない)者の成績が   悪い(良い)ことが分かった。講義の内容は連続しているので、欠席   すれば、わからなくなるのは当然である。欠席した分については自習   するなど、学生本人の努力が重要である。 5.欠席者が多い、講義に対する関心度が低いなど再履修クラスには問題   がある。講義内容を工夫するなど、対策を講じる必要がある。 次稿では、同じ学生のグループに対して実施したアンケート調査の結果を報 告する。それによって、講義の内容に対する学生の関心度や理解度をチェッ クする。また、学生の要望をまとめ、カリキュラムを改善するための資料と したい。 一20一

(17)

 謝辞  今回退職された奈良治郎教授には、同教授がセンター長を務められた自鴎 情報処理教育研究センターの活動を通じていろいろとご指導をいただいた。 Tukeyの「探索的データ解析の方法」を筆者にご紹介下されたのも奈良教授 である。ここに、先生から賜わった数々のご教示に対し、心より感謝申し上 げたい。 Vl.参考文献 (1)新村秀一 1995『パソコンによるデータ解析』講談社 1995.11 (2)Tukey,J。W.1977『E切orα診o型Dαごα.AηαZツs‘s』Addison−Wesley (3)Hartwig,E,&Dearing,B.E.,1979『E筋ρlorα渉oηy Dα孟α.AηαZlysεs』  SAGE Publications;柳井晴夫・高木廣文訳1981『探索的データ解析  の方法』朝倉書店 (4)渡部 洋・鈴木規夫・山田文康・大塚雄作、1985『探索的データ解  析入門』朝倉書店 1985.5 (5)石村貞夫 1994『すぐわかる統計処理』東京図書 1994.5 (本学経営学部教授) 一21一

参照

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