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夏目漱石『吾輩は猫である』の表現とレトリック

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Academic year: 2021

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(1)(1). には ﹁ 落 語 の山 ﹂ のよう な ﹁ 山 ﹂ が な け れば な ら ぬと いう 主張 か ら 始 め ら れ たも の. 山 会 ﹂ は 、 子 規 が文 章 に掲 載 さ れ た のが ﹁ 吾 輩 は 猫 であ る﹂ の第 一回 であ った。 ﹁. が 正 岡 子 規 門 下 だ った 人 々 の文 章 会 ﹁ 山 会 ﹂ に出 し た 創 作 が好 評 で ﹁ホ ト ト ギ ス﹂. よく 知 ら れ て いる よう に高 浜 虚 子 の勧 め で、 英 文 学 者 、東京 帝 大 講 師 、夏 目漱 石. 鼓 吹 す る吾 輩 ﹂ ︵ 主 人 が滑 稽 文 の材 料 にな る のも﹂ ︵ 八︶ と 述 べ て い 五︶ と 言 い、 ﹁. 舌 の織り な す 滑 稽 と 諷 刺 を 語 って いく 写 生文 であ る。 漱 石自 身 は作 中 で ﹁ 写 生文 を. 珍 野苦沙 弥 先 生 の家 庭 を 中 心 に美 学 者 迷亭 、 秀 才 理学 士 寒 月 ら太 平 の逸 民 たち の饒. ﹃ 人 間 にな り す ま し て﹂ 飼 わ れ て いる中 学 校 教 師 猫 ﹄は 語 り 手 の猫 の視 点 か ら ﹁. ら か にし て いく が 、ま ず 、漱 石 の笑 いを 醸 し 出 す 要 素 と な って いる独 自 の創 出 し た. 猫 ﹄ の言 語 的 表 現 と そ の レト リ ック に つ いて解 析 し 、 そ の特 色 を 明 本 稿 では 、 ﹃. ﹁ 吾 輩 は 猫 であ る。名 前 は ま だ な い。 ﹂ と 語 り 出 す 、棄 てら れ 子 猫 が 語 る 人 間 社. 複 合 語を と り あ げ 、次 に、漱 石 の饒 舌 を感 じ さ せ る要 素 と な って いる列 挙 法 と いう. 漱 石 全 集 ﹄ 貧 九九六年 四 と し て、 比 喩 を と り あ げ る。 以 下、引 用 は ﹃ 石波書店︶第. 滑 稽 文﹂ 会 、 猫 社 会 の観 察 、体 験 談 が 写 生 文 の筆 致 で滑 稽 に描 か れ る。 漱 石 自 身 ﹁. 猫 伝 ﹂ と し よう か と 山会 ﹂ に出 し た 文 章 の題 名 を 決 め て いず 、 ﹁ 最初 、漱 石 は 、 ﹁. 一巻 [ 底 本 は 雑 誌 ﹃ホ ト ト ギ スL によ る。 出 所 は0 =第 一回 、国 =第 五 回 のよ う. べき 表 現法 に つ いて述 べる。 最 後 に、漱 石 の ユー モ ア、 ま た独自 性 を よく 示 す も の. 吾 輩 は猫 であ る﹂ と 表 題 にす る こと 言 って いた が 、 虚 子 が冒頭 の 一句 を そ のま ま ﹁. に示す。. 猫﹂ と 略 猫 ﹂ を 用 いて いる 。 本 論 文 でも 、 以 下 、 ﹁ 猫﹂ と 略 称 し て以 後 ﹁ お いて ﹁ 称 す る。 ﹃ 猫 ﹄ の研 究 は 数 多 く な さ れ て いる が、 そ の表 現 、 レト リ ック に つ いて精 細 な 研 究 は 見当 た ら ぬ よう であ る 。. ﹃ 猫 ﹄を 読 ん で いく と 、笑 いを 醸 し 出 す 要 素 と し て、 漱 石 が創 り 出 し た 複 合 語 が.   漱 石創 案 の複 合 語 一一. を 提 案 し 、 こ の画 期 的 な 題 名 が 決 ま った 。 漱 石 は 単 行 本 中 編 自 序 ︵一九 〇六年︶に. 八︶。 と 称 し て いる ︵. 俳句 の五十年し。 一 盟 ﹃. Z θ。. 国大 学講 師 、 第 一高 等 学 校 教 授 の教 職 を 辞 し て、朝 日新 聞 社 に入社 す る の であ る。. これ によ って作 家 と し て の地 位 が確 立 し、 明 治 四 〇年 ︵一九 〇七︶四 月 に、東 京 帝. 、﹁ 、﹁ 明治一 元 年 一月︶ 坊 っち ゃん〓 四月︶ 草 枕 ﹂︵ 九月︶を 執 筆 し 、発 表 し 続 け た 。 伝﹂ ︵ 一. 、 コ 夜﹂︵ 、﹁ 、﹁ 、﹁ の楯L 四月︶ 五月︶ 九月︶ 産 露 行﹂2 一月︶ 趣 味 の遺 琴 のそ ら 音 ﹂︵. 、﹁ 漱 石は ﹃ 倫 敦 塔﹂ ﹁ 八年 一月︶ 猫 ﹄ 連 載 中 に、 ﹁ 明治一 一 一 カ ー ライ ル博 物 館 ﹂ ︵ 幻影. 吾輩 は猫 であ る﹄ の表 現 と レトリ ック 夏 目漱 石 ﹃. 一  成 立 と 特 色. ﹃ 吾 輩 は 猫 であ る﹄ は 、 ﹃ホ ト ト ギ ス﹄ に明 治 三 八年 ︵一九 〇五︶ 一月 か ら 明 治 三. 直. ﹁ 山会 の朗 で ﹁ 滑 稽 な と こ ろ に重 き を 置 く ﹂ 傾 向 が あ った と 虚 子 は 回 顧 し て いる ︵. 九 年 八月 ま で十 一回 にわ た って掲 載 さ れ た 。. 田.

(2) (2) ). 文学 。文化編 (2003年 3月 甲南女子 大学研 究紀 要第 39号. あ ち こち にあ る こと に気 づ く 。 従 来 、 指 摘 さ れ る こ と のな か った も のな の で、 順. く るた め に ﹁ 牡 蠣 ﹂ にと ど ま つてお れなく な った た め であ ろう 。 ま た 、第 三回 か ら. い。第 三回 か ら金 田家 の鼻 子 夫 人 や落 雲館 の中 学 生 な ど 外 界 と の交 渉 が前 面 に出 て. Z O。. 主 人 の名 が ﹁ 苦 沙 弥﹂ と 定 ま った こと も ﹁ 牡 蠣 先 生 ﹂ が消 え た 理 由 か と 考 え ら れ. 次 、 挙 げ て いく 。 例 の神 経 胃 弱 性 の主 人  0 神 経 衰 弱 気 味 で胃 弱 の主 人 の形 容 。. 三毛子は此近 辺 で有名な美貌家 であ る。  0 吹 い子 の向 ふ面 国. 後 架 先 生  0 ト イ レ︶ で、謡 を う たう 教 師 。 ﹁ 後 架﹂ ︵. 正月野郎 0. 寒月君 の理学協会 で の演 説 の題 に ついての評。俗 世間を 離 れた、浮 世離 れし. 首総り の力学と云 ふ脱俗超凡な演題 0. は家計 が青息吐息 の状態を ののしる。﹁ 正月野郎﹂ はおめ でた い奴。. 乱暴猫車 屋 の黒 の悪態 のことば。江 戸 っ子 の の のしり 語。 ﹁ 吹 い子 の向 ふ面﹂. 近 所 で つけ た 渾名 。 同 盟 敬 遠 主 義 の的 にな って居 る奴 だ 。  日 乱 暴 猫 で教 育 のな い車 屋 の黒 と は 近 所 の猫 は誰 も 申 し合 わ せ た よう に交 際 し な い。 大 に滑 稽 的 美 徳 を 挑 発す る のは 面白 い。  0. た。. 縄 暖簾 の先 へ提 灯 玉 を 釣 し た様 な 景色   同. 冗談 を 真 に受 け る人 が多 い のは 滑 稽 であ り 、 愉 快 であ る。 牡 蠣 的 主 人  国. 空 也餅引 掛 所   0. も 活 眼 の士 な き を 嘆 ぜざ るを 得 ざ る訳 に立ち 至 り ま す か ら な 。  国. 猿 智慧 か ら 割 り 出 し た 術 数 と 、 天来 の滑 稽趣 味 と 混 同 さ れち や、 コメデ ー の神様. 椎 茸を 食 べ て前 歯 二本 を 折 った寒 月 の形容 。 茶 化 し た名 乗 。. 永 く前歯 欠 成 を 名 乗 る訳 でも な いでせう 国. 寒 月君 の欠 け た前 歯 。 空 也 餅 が そ こ にく っつく 。. 牡 蠣 的 生 涯  国 ど んな 義 務 が あ る のです か﹂ と 牡 蠣 先 生 は掛 念 の体 に見え る。  国 ﹁ ﹁ 彼 は 性 の悪 い牡 蠣 の如 く 書 斎 に吸 ひ 付 いて、 嘗 て外 界 に向 つて 口を 開 いた事 が な い。﹂ 0 、 机 に へば り つ い て いる教 師 、 学 者 の形 容 に牡 蠣 を 用 いた のは 、 日本 語 的 では な く 英 語 的 であ る。 漱 石 の教 養 であ る。 漱 石は ﹃ 哲 学 雑 誌 ﹄ 第 七 回 第 六 十 八号 ︵ 明治二五年十月︶の ﹁ 雑 録 ﹂ 欄 に無 署 名 で. 君 で、今 此 極 楽 主 義 で困 却 し つ ゝあ る のも亦 鈴 木 藤 十 郎 君 であ る  四. 極 楽 主義 を 発 明 し たも のは 明 治 の紳 士 で、極 楽 主 義 を 実 行 す るも のは鈴 木 藤 十郎. 迷亭 が自 分 の法 螺 は 天来 の滑 稽 趣 味 か ら出 るも の で コメ デ ィ にか な って いると. ” 8 ﹁一 営 一8 & ■. ﹁ 文 壇 に於 け る 平 等 主 義 の代 表 者 ﹁ウ オ ルト 、 ホ イ ット マン﹂ く姜 くコ一 ヨ 営 の詩 に. 鷺 鍵 ョ ①コ雰 F ♂ ぉ. 語 ると こ ろ。. g 田 L て C ﹁①駕. 、漱 石 二 五 歳 、 そ の中 に、 次 の 一節 があ ﹃ 全集﹄第十三巻︶ つ いて﹂ を 寄 せ て いる。 ︵ Z O。 ^ ^ 〓 oて. ﹁ 苦 労 と 心 配 と 争 論 と が な く て事 件 が進捗 す れ ば 人 生 の目 的 は 極 楽 流 に達 せ ら. 空 言 は 実 行 に 若 か ず. 家 庭 は 大 道 に若 かず 一家 に恋 々た る者 は 田螺 のわ び 住 居を 悦 ぶ が如 く 蝸 牛 の. れ る の であ る。﹂ と いう 主 義 が ﹁ 極 楽 主義﹂ であ る。. う 実業 家 金 田君 の令 嬢 富 子 が 阿 部 川餅をむ や み に食 べる こと 。. ﹁ 義 理を か く 、 人 情 を か く 、 恥 を か く﹂ の ﹁三角 主 義 ﹂ が金 を 作 る コツだ と い. 三角 主義 の張 本 金 田君 の令 嬢 阿 部 川 の富 子  国. 宅 を 負 ふ て のた リ ノヽ た る が如 く 牡 蠣 の 口堅 く 鎖 し て生涯 蒼 海 を 知 らざ る が 如 し。 ﹃ 猫 ﹄ の第 三 回 に於 いて、主 人 は ﹁ 牡 蠣 先 生 ﹂ と 呼 ば れ、 ﹁ 牡 蠣 的 主 人﹂ ﹁ 牡蠣的 生 涯 ﹂ と 形 容 さ れ る が 、第 三 回 以 後 、 最 終 回 ま で ﹁ 牡 蠣 的﹂ と 形 容 さ れ る こと は な.

(3) 西田 直敏 :夏 目漱石 『吾輩 は猫である』の表現 とレトリック. (3). 泥棒 陰 士  国 ﹁ 陰 士﹂ は ﹁ 隠 士 ﹂ のも じ り ﹁ 小 供 のち や ん ノヽ を 二枚 、 主 人 のめり 安 の股 引 の中 へ押 し 込 む と 、 股 のあ た り が丸 く 腫 れ て青 大 将 が 蛙 を 飲 んだ様 な︱ ︱ 或 は 青 大 将 の臨 月 と 云 ふ方 が よく 形 容. 一体 どう 云 ふ心 理的 状 態 の生 理的 器械 に及 ぼす影 響 だ らう 。 蝉 が 飛 び 立 つ時 に小 便 を す る こと 。 松 皮摩 擦 法  0. 猫 が 蚤 にた か ら れ、 松 の皮 に体 を こす り つけ てそ のか ゆ さを ま ぎ ら す 方 法 。. 裸体 の人 間。 服を着 て服 装 の動 物 と な った 人 間 が全 裸 の人 間 に出 会 え ば 、 人 間. 裸 体動 物   田. ﹁ オ タ ンチ ン、 パ レ オ ロガ スと 云 ふ ん です 。 オ タ ン チ ンと 云 ふ の が 禿 と 云 ふ 字. 吾 輩 は淡 泊 を愛 す る茶 人 的 猫 であ る。  0. と は認 めず 獣と 思う 。. ﹁お た ん ち ん﹂ は 江 戸 の俗 語 で ﹁間抜 け﹂、 ﹁パ レオ ロガ ス﹂ は 東 ロー マ帝 国 皇. 裸 体信者  0. 礼 服な るも のは 一種 の頓 珍 漢 的 作 用 によ って、馬 鹿 と馬 鹿 の相 談 か ら 成 立 し たも. ヌー デ ィ スト。. 寒 月 君 は ﹁日夜 団 栗 の ス タビ リチ ーを 研 究 ﹂ し て いる。 博 士 にな れ るかも 知 れ. のだ。  0. 猿 股期 、 羽織 期 、 の後 に来 る のが袴 期 であ る。  0 生意 気 書 生  0. ︻. 主 人 の両 顎 の離 合 開間 の具 合 を 熱 心 に研 究 し て居 る。  0 威 嚇性 大 音声 野蛮 的 行 動  的. 鼠 は旅 順 椀 の中 で盛 に舞 踏 会 を 催 ふ し て居 る。. 日露 戦 争 中 の兵 団 の編 成 を 模 し た 語 。. は 両 方 共 紛 失 し て 居 る。 ︵ 中 略 ︶ 御 三 と く る と 、 元 来 の骨 格 が 多 角 性 で あ つ. て ﹁ 丁 度 のあ の河豚 提 灯 の様 に ふく れ て居 る。 あ ま り ふく れ方 が残 酷 な ので眼. お多 角﹂。 下女 の御 三 の顔 に つ い 角 ば った顔 のお さ ん。 ﹁お多 福 ﹂ を も じ つて ﹁. 多 角 性 のお さ ん、 お多 角   開. ﹁ 旅 順 湾 ﹂ のも じり 。茶 椀 の中 で鼠 が暴 れ て いる。 旅 順椀 ﹂ は ﹁. て、其 骨 格 通り に ふく れ 上 が る のだ か ら 、丸 で水 気 にな や ん で居 る 六角 時 計 の 様 なも のだ﹂ 閉 と 評 し て いる。. 空腹 の吾 輩 は朝食 を 催 促 し て いろ いろ泣 き た て て いるが 、 お さ ん に全 く 反応 が. こ のお さ ん は声 盲 な のだ らう  問. 鰹節 競争  0. こんな幸 福 を 豚 的幸 福 と 名 づ け る のだ さう だ 。  ω. ︵ 主 人 は︶ 逆 上的敏 腕 を 大 に振 つて居 る積 も り であ る。  因. な いの で、猫 の声 だ け 聞 ゝ ﹂ えな い ﹁ 声 盲 ﹂ な のだ ろう と 思う 。. ﹁ 鰹 節 競 争 ﹂ 以 下 は 猫 の運 動 であ る。. 蝉 取 り 運 動  0. 蟷 螂 狩 り  0. 皿ハ な昴創 ︹ 縣︹ 普 U 貝的︺. ﹁ 七 味 唐 辛 子﹂ を か け て いる。 十 七味 調﹂ は俳句 調 、 ﹁. あ ま いと か ら いと 反 照 す る所 な んか十 七味 唐 辛 子 調 で面白 い。  閃. 混成 猫 旅 団   国. 。 ヽつノ. ﹁ 大 した恋 ぢ やな か らう﹂と 言 って いるも ので ﹁ 鼻 先 だ け の恋﹂ の意 であ ろ. 大方鼻恋位 な所だぜ 四. ﹁ 美名﹂ と ﹁ 鼻名﹂ のかけ ことば。. 鼻名を千載 に垂 れる 四. な い。. 団栗 博 士 の夢   四. 帝 コン スタ ンチ ン ・パ レオ ロガ ス。. で、 パ レオ ロガ スが 頭 な ん でせう ﹂ 国. し得 る か も 知 れ ん。 兎 に角 変 な恰 好 にな つた 。  国. 田.

(4) 生まれ付 いての野猪的本領 が直ち に全面を暴露 し来 る。  0 生ま れ つき持 って いる いのしし的な本質 が直ち に全面的 にあらわれる。 云は ゞ胡魔化 し性表情 で  0 交際 のた め に涙を流したり 、気 の毒がる顔を作 ってみせたりす ること。 君 のは ヱルテル丈あ つて、ブ イオリ ン療病だ。  0 いつの間 に秘密結婚を や つた のかね。  0 あ の表情 は超絶的曲線 で到底普通 のフアンクシ ョンではあらはせな いです。 超越曲線﹂と訳され て いる。 己8[ 28﹁ 呵営∽ o ① お の訳語。 ﹁ 主 人 は 娘 の教 育 に関 し ては 絶 対 的 放 任 主 義 を 執 る積 も り と 見 え る 。  0 今 に三 人 が海 老 茶 式 部 か鼠 式 部 か にな つて、 三 人 と も 申 し合 わ せ た様 に情夫 を こ. 的   ︱ ︱ 滑 稽 的 美 感 、 牡 蠣 的 主 人 、懸 賞 的 興奮 剤 、 生 理的 器 械 、 野春 的 行. 動 、逆 上 的 敏 腕 、 豚 的 幸 福 、 野 猪 的 本 領 、 超 絶 的 曲 線 、 絶 対 的 放 任 主義 、茶 人 的 猫. これ らを 眺 め てみ ると 、 現 代 作 家 の井 上 ひさ し や椎名 誠 ら の作 品 に見 ら れ る ユー. モ ラ スな 複 合 語 の先 樅と いう 感 じ がす る。. 一 二 ﹃ 猫 ﹄ を 彩 る 饒 舌 な 表 現 ︱ ︱ 語 句 の列 挙 、 反 覆 方 式. ﹃ 猫﹄ の表 現的特色とし て漱 石 の饒舌とも言う べき表 現があ る。押 さえき れな い. 表現欲、持ちあわせ ている該博な知識と教養を残りなく注ぎ こんだ街学的とも見え. 猫﹄ の写生文 、滑稽文を彩 って いる。 る表現、それらが ﹃. 俣. しら へて出 奔 し ても  0. セ ンテンスとし て、そ の構文を見ると、くど いま でに類似語、反対語などを並 べ. 缶. ﹁ 海 老 茶 式 部 ﹂ は 海 老 茶 色 の袴 を はく こと か ら 、女 学 生 。 ﹁ 鼠 式 部 ﹂ は そ のも じ. る こと によ って、修 飾 語 の並 列 表 現 、 述 語 の並 列 表 現を 生 み出 し て いる。. 頼. 人 の許 諾 を 経 ず し て吾 妻 橋 事 件 杯 を 至 る所 に振 り 廻 はす 以 上 は 、 人 の軒 下 に大 を. 馬 丁 Zθ. 。. 以 上は 以上は 以上は. B の大 は スパイ 。. ﹃ 猫 ﹄ の 一つの表 現的特色 であ る 。. こう し た 列 挙 型 を 語 句 、 語 に わ た つて 用 い、 し つこ いま で に く り か え す の が. り 、話 の筋 と は 関係 な い駄 洒 落 と な って いる。. 生 、 そ し て 日 雇 を 転 機 に 日 雇 婆 か ら 産 婆 、妖 婆 、 按 摩 か ら 頓 馬 と 語 呂 合 わ せ と な. C の単 語 は 連 想 ゲ ー ム式 に配 列 さ れ て いる。 車 夫 、馬 丁 か ら無 頓 漢 ← ご ろ つき 書. 猫 にも 覚 悟 があ る。. こ の構 文 は次 のよう にな る。 リ フレイ ンのよう に ︹ ︱︱ 以 上 は︺がく り 返 され. 材 に煩を 及 ぼし て顧みざ る以上は︱︱ 猫 にも覚悟 があ る。  0. ご ろ つき 書 生 、 日雇婆 、 産 婆 、 妖 婆 、按 摩 、 頓 馬 に至 る迄 を 使 用 し て国 家 有 用 の. 車 夫. ま る で蒟 蒻 閣 魔 ね  0 一夫多 妻 主 義   0 軽便 信 用 だ ね  0 以 上 に挙 げ た 漱 石 が 創 案 し た か と 思 わ れ る 語 結 合 ︵ 連 語 ︶、 複 合 語 の類 は 、 滑 稽 文 を 支え る ユー モ ア のセ ン スと サ タイ ア ︵ 風 刺 ︶ を 感 じ さ せ る。 造 語法 と し ては 、 語結 合 方 式 ︱ ︱ 生 意 気 書 生 、 空 也 餅 引 掛 所 、 泥 棒 陰 士 、 混 成 猫 旅 団 、蒟 蒻 閣 魔 、 秘 密 結 婚 、 松 皮 摩 擦 法 、 裸 体 動 物 、 正 月 野 郎 、 団 栗 博 士 、猿 股 期 、 蟷 螂 狩 り 、蝉 取 り 運 動 、 軽 便 信 用 王義 ︱ ︱ 同 盟 敬 遠 主 義 、極 楽 主 義 、 三角 主 義 、 絶 対 的 放 任 主 義 、   一夫 多 妻 主義 先 生︱ ︱ 後 架 先 生 、 牡 蠣 先 生 式 部︱ ︱ 鼠 式 部 性   ︱ ︱ 神 経 胃 弱 性 の主 人 、 胡 魔 化 し性 表 情 、多 角 性 のお さ ん、威 嚇 性 大 立日士 戸. C B A. (4) ). 文学 ・文化編 (2003年 3月 甲南女子大学研究紀要第 39号. 問.

(5) 西田 直敏 :夏 目漱石 『吾輩は猫である』の表現 とレトリック. (5). 運 動 を し ろ の、 牛 乳を 飲 め の、 冷 水 を あ び ろ の、 海 の中 へ飛 び 込 め の、 夏 にな つ た ら 山 の中 へ籠 つて当 分 霞 を 食 へのと く だ ら ぬ注 文 を連 発 す る様 にな つた のは 、 西 洋 か ら 神 国 へ伝 染 し た 軌 近 の病 気 で、 矢 張 リ ペ スト、肺 病 、 神 経 衰 弱 の 一族 と 心 得 て い ゝ位 だ 。  0 命 令 形 + の﹂ の形 式 を 連 ね て いる。 ﹁ 運 動 を し ろ の﹂ 以 下 ﹁ 吾 輩 は 猫 だ け れど 、 エピ ク テ タ スを 読 ん で机 の上 へ叩き つけ る位 な 学 者 の家 に奇 遇 す る猫 で、 世 間 一般 の痴 猫 、 愚 猫 と は 少 し く 撰 を殊 にし て居 る。  国 ﹁ 痴 猫 、 愚 猫﹂ は 同義 語 の重 ね 。  無常 は 暮 の額 に は 夜 行 の明珠 があ ると 云 ふが 、 吾 輩 の尻 尾 には神 祗   釈 教   亦心 無 論 の事 満 天 下 の人 間を 馬 鹿 にす る 一家 相 伝 の妙 薬 が詰 め込 ん であ る。  国. テ ゝコを 踊 り 出す 。 両 足 が紙 鳶 のう な り の様 に震 動 を は じ め る。  0 勇 気 ・胆 力 ・分 別 ・沈 着 は 列 挙法. 天埠 院 様 の御 祐筆 の妹 の御 嫁 に行 った先 き の御 つか さ ん の甥 の娘  国. ﹁の﹂ の連 結 、 修 飾 さ れ て いる が、列 挙 さ れ て いる 関 係 が 明 確 に は わ か ら な. 猫 ﹄ で有 名 な系 図書 き であ る。 翼 叩る所 天 埠 院 様 の何 にな る ん です か ﹂ を い。 ﹃ 聞 かざ るを え な い類 のも の。. ︹ 類 語 の連 想 的 列 挙 ︺. 連 想 によ って類 語を 列 挙 し た よう な表 現. 暮 、戦 死 、老 衰 、 無 常 迅速 杯 と 云 ふ奴 が 頭 の中 を ぐ るノヽ 駆 け 廻 る。  国. ら な さう な 、 凄 い様 な 、 艶 つぽ い様 な 文 句 許 り 並 べては帰 る。  0. 来 ると 自 分 を 恋 つて居 る女 が有 り さう な 、 無 さ さう な 、世 の中 が 面白 さう な 、 語. 主 人 の家 にあ ら ゆ る塀 、 垣 、 乃至 は乱杭 、 逆 茂 木 の類 は全 く 不 要 であ る。  因. 吹き 払 ひ、 吹 き 通 し、抜 う ら 、 通行 御 免 、 天 下晴 れ て の空 地 であ る。  因. 惑 す る。  国. 暴切り と か 評 せら れ ては些 と 迷 勢 の然 ら しむ る所 で、 之 を 変 心 と か 、軽 薄 と か 、一. 敢 て同族 を 軽 蔑 す る次 第 では な い。 只性 情 の近 き 所 向 つて 一身 の安 き を 置 く のは. 熱 いノヽ と 云 ふ声 が吾 輩 の耳 を 貫 いて左 右 へ抜 け る様 に頭 の中 で乱 れ合 ふ。 其 声. ﹁ 神 祗 釈 教 恋 無 常﹂ は神 ・仏 ・恋 o死 で人 生 万 般 。. には 黄 な のも 、青 いのも 、 赤 いのも 、 黒 い のも あ る が互 に畳 な り か ゝつて 一種 名. 迷 亭 は ︶ 心 配 、遠 慮 、気 兼 、苦 労 、を 生 ま れ る 時 ど こ か へ振 り 落 し た 男 で あ ︵. ﹁ 乱 杭 、 逆 茂 木 ﹂ は 昔 、 城 の防 備 と し て敵 の侵 入 に備 え たも の。 大 袈 裟 な 表 現. 声 ﹂ は な い。 漱 石 の色 合 わ せ の洒 落 であ る。. る。  国. 状 す べか らざ る音響 を 浴 場 内 に張 らす 。  0. 猫 の社 会 では ︶ 日付 でも 、 鼻 付 でも 、 毛 並 でも 、 足 並 でも 、 み ん な 違 ふ。 髯 の ︵. だ から 探 偵 と いう 奴 は スリ、 泥 棒 、強盗 の 一族 で到 底 人 の風 上 に置 け るも の では. が ユー モ ラ スであ る。. 張 り 具 合 か ら 耳 の立 ち 按 排 、 尻 尾 の垂 れ加 減 に至 る迄 同 じも のは 一つも な い。 器. な い。  0. 赤 い声 ﹂ ﹁ 黒い 黄 色 い声 ﹂ と いう 形 容 は あ る が コロい声 ﹂ ﹁ 色 の羅 列 であ って ﹁. 量 、 不 器 量 、 好き 嫌 ひ 、 粋 無 粋 の数 を 悉 く し て千 差 万 別と 云 つても 差 支 へな い位. 所謂 洗 場 は鼻 の先 、. ︹ 句 末 語句 の反 覆 ︺. こんな 、 し つこ い、. であ る。  0 1 1 でも 、︱︱ でも 、︱ ︱ でも   の同 語 並 列 型 。 目付 、 鼻 付 、 毛 並 、 足並 は 語 末 語 の反 覆 型 。 ︱ ︱ 具 合 、︱ ︱ 按 排 、︱ ︱ 加 減   の同義 語 重 ね 型 。. 顔 の前 にぶら ついて居 る。  0. ねちねちした、執念 深 い奴は大嫌 いだ。  0. 如く︺型. 猫 の足 は あ れ ど も 無 き が如 し 、ど こを 歩 いても 不 器 用 な 音 のし た試 し がな い。 空. ︹ ︱︱︱ 如く、︱︱︱ 如く、. 其 う ち に総 身 の毛穴 が急 にあ いて、 焼 酎 を 吹 き か け た毛 肛 の様 に、勇 気 、 胆 力 、. を 踏 む が如 く 、雲 を 行 く 如 く. 水 中 に碧 を 打 つが 如 く 、 洞 裏 に意 を 鼓 す る が 如 分 別 、 沈 着 杯 と 号 す る 御 客 様 が す う ノヽ と 蒸 発 し て行 く 。 心 臓 が 肋 骨 の 下 で ス. 器 量 不 器 量 など 反対 語 セ ット型 。. ヨ羽.

(6) (6) ). 文学 ・文化編 (2003年 3月 甲南女子大学研究紀要第 39号. く 、 醍 醐 の妙 味 を 嘗 め て言 詮 の外 に冷 暖 を 自 知 す るが如 し。  国 形 体 以 外 の活 動 を 見 る能 はざ る者 に向 つて己 霊 の光 輝 を 見 よと 強 ゆ る は 、坊 主. み﹂ は ﹁ 苦 し い時 の神 頼 み﹂ のも じり 。. 語末 の語 構 成 要 素 ︵ ︹ 語 形 式 ︶ の反覆 ︺. 語を 形 成 し て いる語構 成 要 素 が 語 の形 と し て認 識 さ れ るも の の反 覆 。. に髪 を 結 え と 逼 るが如 く 、 鮪 に演 説 を し て見 ろと 云 ふが如 く 、 電 鉄 に脱 線 を 要 求 す る が 如 く 、主 人 に辞 職 を 勧 告 す る如 く 、 三平 に金 の事 を 考 へるな と 云 ふ洲. ると気 が付 いた か ら や め にし た 。  国. 耳 と 尻 尾 は 餅 と 何等 の関 係 も な い。 要 す る に振 り 損 の、立 て損 の、寝 か し損 であ. 蒲 鉾 の種 が 山 芋 であ る如 く 、 観 音 の像 が 一寸 八分 の朽木 であ る如 く 、鴨 南 蛮 の材. 寒 月 でも 、 水 月 でも 知 ら な い いんだ よ︱︱ 大 嫌 ひだ わ  国. ご と き も の であ る。  国. 料 が烏 であ る如 く 、 下宿 屋 の牛 鍋 が 馬肉 であ る如 く 、イ ン スピ レ ー シ ョンも 実 は. 桂 月だ つて梅 月 だ つて、苦 し い思 いを し て酒 を 飲 め な ん て余 計 な事 です ね  田. 電猫 ﹄ の尻 取 り 文 ︺. れな い  0. や恋 ひ倒 れ には な るま い。 こと によ ると 卒塔 婆 小 町 の様 に行 き 倒 れ にな るかも 知. 娘 は︱ ︱ ︵ 中略 ︶ ︱ ︱ ま づ 着 倒 れ か 、食 ひ倒 れ 、 若 く呑 んだ く れ の類 だ らう 。 よも. 逆 上 であ る。  因. 語 末 字 の反 覆 ︺ ︹ TIII然 、︲ ︱︱︱然 、︲ ︱︱︱然 ︺ 型 其 由 来 を 案 ず ると 何も 無 理矢 理 に、 出 鱈 目 に、 偶 然 に  漫 然 に持 ち 上 が つた事 実 では 決 し てな い。  0. 漱 石 の文 と いえ ば 、 尻 取 り 文 が有 名 であ る。 ﹁ 尻 取 り 文 ﹂ と は 、 言 語 学 者 で文 体. 、小 論 学 者 であ った 小 林 英 夫 の命 名 し た も のであ る が ︵ ﹃ 文体論 の建ユ 屋 一九四三年︶. 今 迄 静 ま り 返 つて居 た や か ら が 紛 然   雑 然   揉 然 と し て恰 も コン ノ ート 殿 下歓 迎 の当 時 に於 け る都 人士 狂 乱 の態 度 を 以 て脳 裏 を か け 廻 る。  0. 林 のあ げ た 典 型 的 な も のは 、 ﹁ 草 枕 ﹂ の冒頭 にあ る 、次 の文 であ る。. 人 の世 を 作 つたも のは神 でも な け れば鬼 でも な い。矢 張 り向 ふ三軒 両隣 り に. 倫 理 の講 義 を き いてにや ノヽ し て居 た主 人 は奮 然 と し て立 ち 上 が った 。 猛然 と し て駆 け 出 し た 。 驀 然と し て敵 の 一人 を 生 捕 つた 。  因. ち ら ノヽ す る唯 の人 であ る。 唯 の人 が作 つた 人 の世 が住 み にく いか らと て、 越. りも 猶 住 み にく いか らう 。. す 国 は あ るま い。 あ れば 人 でな し の国 へ行 く 許 り だ 。 人 でな し の国 は人 の世 よ. ﹁ 奮 然 ﹂ ﹁猛 然 ﹂ ﹁ 驀 然 ﹂ と 語 呂 合 わ せを し て いる。 ︹ ︱ ︱ ︱ 妙 な る 、︱ ︱ ︱ 妙 な る 、︱ ︱ ︱ 妙 な る ︺ 型. ︱ ︱ 是 が 主 人 の髪 を 長 く す る 理由 で、髪 を 長 く す る のが 、彼 の髪 を わ け る源 因 で、 其 源 因 が鏡 を 見 る訳 で、 其 鏡 が 風 呂場 にあ る所 以 で、而 し て其 鏡 が 一つし. 同様 の文 は 、 既 に ﹃ 猫 ﹄ にも あ る。. ぎ かけた る如 く、勃然と し て其深奥 にし て窺知す べからざ る、巧妙 な る、美妙な る、奇妙 な る、霊妙な重 麗質を 、惜気もなく発揚 し了 つた。  問. ︵ 雪 江 さ ん は ︶ 主 人 が帰 つてき て油 壷 を 抱 り 出 す や否 や忽 ち 死 龍 に蒸 気 卿 筒 を 注. コ麗質﹂ の修飾語とし て ﹁ ︱︱︱ 妙 なる﹂と いう構造 の語を 四 つ重ね て いる。. 油 断 が な ら な く な る。 狡 猾 にな る のも卑 劣 にな る のも 表 裏 二枚 合 せ の護身 服 を. か な いと 云 ふ事 実 であ る。                                      ﹃ 猫﹄ 九 ︲ こ田 ︱ こ危 険 が多 く て、田 ︱ こ田 ︱ こ 世 に住 め ば割 引 矧 引 o割 引 矧 川 のは嬉 し いが田 ︱ ︱ ︱ ︲. ︹ ︱︱︱ み、︱︱︱ み、︱︱︱ み︺型. 着 け る のも 皆事 を 知 る の結 果 であ つて、事 を 知 る のは年 を 取 る の罪 であ る。 老. 人 に稼 な も のが 居 な いのは 此 理だ な  国. ひも じ い時 の神頼 み、貧 のぬす みに恋 のふみと云 ふ位だから 問 ﹁ 貧 のぬす み﹂ 慕心のふみ﹂ と韻 を 踏 ん で いる。 ﹁ 神 頼 み﹂ ﹁ ひも じ い時 の神 頼.

(7) 西田 直敏 :夏 目漱石 『吾輩 は猫 である』 の表現 とレ トリック. (7). 先 達 て ム ツセ の脚 本 を 読 んだ ら其う ち の人 物 が羅 馬 の詩 人 を 引 用 し てこんな事 を 云 つて居 た 。︱ ︱ 羽 よ り 軽 い者 は塵 であ る。 塵 より 軽 い者 は 風 であ る。 風 よ り 軽 い者 は 女 であ る。 女 よ り 軽 い者 は 無 で あ る。︱ ︱ よ く 穿 つて るだ ら う 。 ﹃ 猫﹄ 六 断 片 二 五﹂ に、 こ の 〓c∽ ひ■ 8 の英 訳 本 か ら ﹃ 漱 石全 集 第 十 九 巻 ﹄ の ﹁ S の 国” ∽ の抜 き 書 き が残 さ れ て いる 。 r [① 一 Hr”く① ●oけ” QOCσけて〇嘔 ”﹃  げCけてOC パ●Oζヽこ ∽∽”てoダ≧一 くr”一[ ① or〓〇∽oOr①︻ ①﹃ ”F一一 , ,  ︼ ﹂︼ F”● OC∽ ↓︱︱ダュ●Q・ r①︹↓︱IQ暉∽  F一”r︵ F”● ” ﹄ 一 ﹂一  をくr”一日 ①﹃ F”Lう oO①[ ①﹃ ︹ ①”︹ ①︻ 一 ∽・ ”r一 ”F一 , r” F”● 邁〇ヨ ”●↓︱︱●o[ ︻ F”● ダユ●Qや︱︱≦ヽ ●”・ 一 ①︻[ 〇日 ”●・H ”r一 k. 猫 ﹄ にお け る漱 石独自 の比喩 四  ﹃ ﹃ 猫 ﹄ は 、 執 筆 時 点 に於 て、 漱 石 の持 って いた 知 識 、 教 養 を 生 か し て作 中 に注 ぎ. ﹃ 猫 ﹄ の比 喩 を 見 ると 、 ま ず 直 喩 か ら 見 て み よう 。 漱 石 ら し いも のが す ぐ 挙 げ ら れ る。. 彼 は性 の 悪 い 牡 蠣 の 如 く 、 書 斎 に吸 い付 居 て、嘗 て外 界 に向 つて 口を 開 いた事 が な い。  0. 牡 蠣 を 沈 黙 の象 徴 に用 いる のは英 語 的 であ る。. 顔を洗 ふたんび に鶴鳥 が絞 め殺 される様な声を出す人 で御座 んす 国. 端鳥は英語 では、と んま の代名 詞 に用 いられる。. 総身 の活気 が 一度 にスト ライキを起 した様 に元気 がにはか に減 入 って仕舞 ひま し て 0. 西 洋 洗 濯 屋 のシ ャ ツのよう に女 が ぶら 下 つた と 見 れば 好 いんだ ろう   国. テレ マカ スが ペネ ロピ ー の十 二人 の侍 女 を 絞 殺 した方 法 に つ いて寒 月 君 が演 説 を し た のに対す る迷 亭 の相 槌 。. 十 九 世紀 で売 れ残 つて、 二十 世 紀 で店 曝 し に逢 ふと 云 ふ相 だ  国. も 恐 らく 一等 賞 だ らう と 思 は れ る位 な 鼻 を 所有 し て入 ら せ ら れ ま す 。  0. か の御 母 堂 層 ぼ ど こ へ出 し ても 恥 づ か し か ら ぬ鼻︱︱ 鞍 馬 山 で展 覧 会 が あ つて. ﹁ 相﹂ は 人 相 。. 蜂 ﹂ にあ る 言 ギ リ シ ア語 。古 代 の アリ スト フ ァネ ス の喜 劇 ﹁ 3① ” 8 8 喜 aD一 F∽ s ︵ ︻ ”. F” 御 前 世界 で 一番 長 い字 を 知 つて いるか﹂と o こんだ も の であ った 。 中 に は 、 ﹁ oヨ? 漱石 葉で ﹁ 古 臭 く 甘 った る いプ リ ュ ニ コス の シ ド ン の歌 のよう な﹂ と いう 意 味 。 ﹃. シ ーザ ー の鼻 を鋏 でち よ ん 切 つて、当 家 の猫 の顔 へ安 置 し た ら ど んな 者 で御 座 い. 鞍 馬 山 で展 覧 会 ﹂ は、鞍 馬 山 の天 狗 と 鼻 く ら べを ﹃ 御 母堂 ﹄ は金 田夫 人鼻 子 。 ﹁. は い﹂ と 細 君 が 返 お い﹂ と 呼 び か け 、 ﹁ か﹂ と 問 いか け る。 主 人 は 今 度 は大 声 で ﹁. ま せう か 。 喩 へにも 猫 の額 と 云 ふ位 な 地 面 に英 雄 の鼻 柱 が 突 死と し て答 え た ら 、. 長 く 書 く と 六 寸 三 分 位 に か け る﹂ と いう のが あ る。ま た 、 そ 全 集 第 一巻 ﹄ 注 解 ︶ ﹁. そ んな 馬鹿 げ た こ そ のは いは感 投 詞 か 副 詞か 、 ど つち だ﹂ と 聞 く 。 ﹁ 事 を す ると 、 ﹁. 碁 盤 の上 へ奈 良 の大 仏 を 据 へ付 け た様 なも ので、少 しく 比 例 を 失 す る の極 、 其 美. させ ても の意 。. と は どう でも い いぢ やあ り ま せ ん か﹂ と 細 君 に言 わ れ ると 、 ﹁い いも のか。 是 が 現. 的 価値 を 落 す事 だ らう と 思 ひま す 。  0. 今 鳴 いた 、 に やあ と 云 ふ声 は 感 投 詞 か 、 副 詞 の前 に、 細 君 に猫 の頭 を 叩 か せ て、 ﹁. あ ら ま あ 、猫 の鳴 き 声 が です か 。 いや に国 語 家 の頭 脳 を 支 配 し て居 る大 問 題だ ﹂ ﹁. これ ら鼻 の比喩 は笑 いを 醸 し出 す も の であ る。. 結論 のな い演説は、 デザ ート のな い西洋料 理 の様 なも のだ。  国. 夫だ から な 事 ね え 。 だ つて、 猫 の鳴 き 声 は 日 本 語 ぢ や な いぢ や あ り ま せ ん か﹂ ﹁ さう ﹂ と 細 君 は 利 口 さ。 そ れ が 六 づ か し い問 題 な んだ よ。比 較 研 究 と 云 ふ んだ ﹂ ﹁. 丸 い小桶 が三角形即ちピ ラミ ッド の如く積 み重ね てあ る 0. 彼 等 は水 草 を 追 ふ て居 を 変 ず る沙 漠 の住 民 の如 く 、桐 の本 を 去 つて桧 の方 に進 ん. から鋸 でこの大岩を蒲鉾 の様 に切 つて滞りなく通行をしたさう だ 0. そこで ハン ニバルは此大き な岩 へ酢をかけ て火を焚居 て、柔か にし て置 いて、夫. だ か ら 、 こ んな 馬 鹿 な 問 題 に は 関係 しな い。 0   と 切 って捨 て る。 こう し た 言 語 に関す る 問 題 な ど は 、漱 石 の街 学 趣 味 と でも いう べき も ので、 蛇 足 のよう な も の であ る。 さ て、 比 喩 は常 套 的 な 表 現 も 多 いが、 作 家 の個 性 を 発 揮 でき る表 現法 であ る。.

(8) (8). で来 た  因 も し木 戸 か ら 迂 回 し て敵 地 を 突 か う とす れば 、 足 音 を 聞 き つけ て、 ぽか リ ノヽ と いレL防ドーー ︲︲︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱ 捉 ま る前 に向 ふ側 へ下 り て仕 舞 ふ。 艦 胸 暦 が ひ︲な た ぼ つこを し て居 る 所 へ密 猟 船 が向 つた 様 な者 だ 。  因 右 の二 つは 、苦 沙 弥 の庭 に落 雲 館 の中 学 生 が 入 つて来 て いる様 子 と そ れを 捕 ま. 他 は 仏 教 に関係す るも のであ る。 これ ら も 漱 石 の創 案. 鼻 丈 は無 暗 に大 き い。 人 の鼻 を 盗 ん で来 て顔 の真 中 へ据 ゑ付 け た様 に見え る。 三. 州目﹁副刷翻醐剛鋼司uq割副冽剥ηコ劃洲国倒q圏刊d測劇刻劉劇﹁創利州側整然と ぴかノヽ して居る。  国. ﹁ 天 明 調 ﹂ は 正 岡 子規 の俳 句 革 新 の理想 、 ﹁ 万 葉 調﹂ は子 規 の短 歌 革 新 の理想 。. 仏 蘭 西 や英 吉 利 へ行 く と 随 分 天 明 調 や万 葉 調 が食 へるんだ が 。  国. 雑 煮 に食 い ついた猫 がも てあ ま し て発 した 語 。. 餅 は 魔 物 だ な 。  国. 主 人 が書 斎 に吸 い付 いて外 界 に 口を 開 かな い性 質 。. 愈 牡 蠣 の根 性 を あ ら は し て居 る  国. げ た。. 断 の つき にく いも のも あ る が 、   一応 、 こ こ には漱 石 の独自 性 を 感 じ さ せ るも のを 挙. 比 喩 の中 で隠 喩 に ついて み ると 、直 喩 に比 し て、漱 石 の創 出 し た も のが否 か 、 判. これ らも 漱 石 の比喩 ︵ 直 喩 ︶ であ る。 ユー モ ア、 サ タイ ア に満 ち て いる。. 鏡 は 己 惚 の醸 造 器 であ る如 く 、 同時 に自 慢 の消 毒 器 であ る。  ω. 吾妻鑑 に将 軍源頼朝 が訪 れ てきた西行法師 に銀製 の猫を与え たと いう記事 があ る。西行 はそ の像を 門前 の童 に与え て去 ったと いう。. 洲刑 d 、コ 劉 g 劉 剰 輛 淵 Я 翻 劉 洲 判 引 馴 g 側 翻 渕 召 馴 d o  田. 長 い比 喩. 怪まる ゝ位平坦な顔である。  四. 潮 目 倒 側 引 綱 q 調 認 ∃ 測 創 副 刊 国 創 倒 劃 同 刷 引 日. ﹁ 川 嘲 州 酬 洲 翻 刻 ﹁ 副 引 引 剰 翻 劉 ﹁ 剤 創 洲 細日倒引倒 q q 、 親 が 生 ん でく れた 顔 を. え よう と す る様 子 の形 容 。. 独 り で 冨 中 を 不J か し て 居 る が. 翻 劉 躙 ロ ヨ 捌 翻 劉 劇 引 倒 劃 引 刷 ヨ 引 綱 到 川 目 ∃ 側. 丈 で牡 丹 餅 の御 馳 走 にな る様 な 者 だ 。  四 上を 仰 ぐ と 真 黒 な煤 が ラ ンプ の光 で輝 や居 て、地 獄 を 裏 返 し に 釣 る し た 如 く 、  一 寸 吾 輩 の手 際 では 上 る事 も 、 下 る事 も 出 来 ん。  国 京 都 の黒 谷 で参 詣 人 が蓮 生 坊 の太 刀 を 戴 く 様 な か た で、苦 沙 弥 先 生 しば らく 持 つ てゐた が  開 迷 亭 の古 風 な 伯 父 が 常 に持 ち 歩 く 甲 計 り を 苦 沙 弥 が手 に取 って見 て いた の で あ る。. 斬 新 な 料 理。. イ 可. 鉄 拐 仙 人 は 画 題 で あ る が`. に か か わ る も の に ち が い な い. 大 な し に し て仕 舞 った 。  開 ﹁ラブ ﹂ は ごお で溶 岩 。 ﹁ あ ば た 面﹂ の こと 。 漱 石 は 自 身 のあ ば た 面 を 気 に し て いた 。 此 両者 ︵ 細 君 と 掃 除 ︶ の関 係 は形番繋珊彗貢ツ貧 嬰 に 於 る 名 辞 の 如 く 其 内 容 の如 何 にか ヽは ら ず 結 合 せ ら れ たも の であ らう 。  問 これ ら の比 喩 ︵ 直 喩 ︶ は 、 西 洋 的 近 代 的 な 内 容 、表 現 を 持 つも の で、 ﹃ 猫﹄ に お け る、 漱 石創 案 の比 喩 と 考 え ら れ る。 次 に、 主 人 は 禅 坊 主 が大 燈 国 師 の遺 誠 を 読 む様 な声 を 出 し て読 み始 め る 。 迷 亭 先 生 は 例 の如 く 空 々と し て偶 然 童 子 の如 く 舞 ひ込 ん で来 た 。 鉄 拐 仙 人 が 軍鶏 の蹴 合 ひを 見 る様 な 顔 を し て平 気 で聞 居 て居 る。. (司. かう 云 ふ好 材 料 を 得 様 と は 全 く 思 ひ掛 け な んだ 。 御 彼 岸 に御 寺 詣 り と し て偶 然 方. 鉄拐 仙 人 ︵ 中 国 随 代 の仙 人 ︶ は 画 題 と さ れ る。. 0 日.

(9) 西田 直敏 三夏 目漱石 『吾輩 は猫 である』 の表現 とレ トリック. (9). 金 田邸 は 吾 輩 の姻 草 であ る。  四  一服 。 煙 草 は 一体 み。 鈴 木 藤 十 郎 君 の名 刺 は臭 い所 へ無 期 徒 刑 に処 せ ら れ るも のと 見 え る。  四 名 刺 が 便 所 に捨 てら れ た こと 。 自 分 の様 に出 来 損 ひ の本 像 は 仏 師 屋 の隅 で虫 が喰 ふ迄白 木 の侭 薫 つて居 ても 遺 憾. 落 雲館 に群 が る敵 軍 は近 日 に至 つて 一種 のダ ムダ ム弾 を 発 明 し て、 十 分 の休 暇 、. 若 しく は 放 課 後 に至 つて熾 ん に北 側 の空 地 に向 つて砲 火 を 浴 び せ か け る。  因. 落雲館 の中 学 生 が休 み時 間 や放 課後 に 野球 、 打 撃 を 行 ってボ ー ルを 苦 沙 弥 邸 ま でとば す こと 。. 倫 理 の先 生 は 丹 波 の笹 山 を 連 れ て表 門 か ら落 雲 館 へ引 き 上 げ る。  因. ﹁ 丹波 の笹 山 ﹂ は 、 丹波 笹 山 ︵ 篠 山 ︶ の山 猿 。 こ こ では暴 れ ん坊 の中学 生 。. 迷 亭 が金 魚 な な らあ れ ︵ 苦 沙 弥 ︶ は藁 で括 った 蒟 蒻 だ ね 。  因. は な いが 、 是 は旨 く 仕 上 が つた と 思 ふ彫 刻 に は 一日も 早 く 箔 を 塗 つて やり た い。 四. 心 臓 が肋 骨 の下 で ス テ テ コを 踊 り 出す 。  0. いる。 そ の考 察 は後 日 に譲 らざ るをえ な い。. 猫 ﹄ の表 現 を 多 彩 なも のと し て 戸訛 ︶ への愛 着 、 幼 児 語 への興 味 な ど が 見 ら れ 、 ﹃. 猫 ﹄ には 、 漱 石 の論 理愛 好 癖 、 擬 声 語 ・擬 態 語 愛 好 、江 戸 語 ︵ 以 上 のほ か 、 ﹃ 江. ﹁ステ テ コ﹂ は ス テ テ コ踊 り 。心 臓 の鼓 動 が激 しく な る こと 。. 苦 沙 弥 先 生 の教 え 子 寒 月︱ ︱ 博 士 を 取 り そう な秀 才 理 学 士︱ ︱ への愛 情 のこも った 評 。 金 田某 は 何 だ い紙 幣 に眼 鼻 を つけ た丈 の人 間 ぢ やな いか 。  四 金 田某 は実 業 家 の成 功 者 。 夫 人 は鼻 子 。 苦 沙 弥 家 の近 所 に豪 邸 を構 え て いる。 迷 亭 の金 田某 評 。 奇 警 な る 語 を 以 て形 容 す るな らば 彼 は 一個 の活 動 紙 幣 に過 ぎ ん の であ る。 活 動 紙 幣 の娘 な らば 活 動 切手 位 な 所 だ らう 。  四 迷 亭 一流 の喩 を 以 て寒 月 君 を 評 す れば 彼 は 活 動 図書館 であ る。 智 識を 以 て捏 ね 上 げ た る 二十 八 珊 の弾 丸 であ る。  四 大 学 の教 師 が懐剣 な ら リ ー ド ル の教 師 はま あ 小 刀位 な所 だ な 。  四 主 人 が 生 徒 や教 師 が少 々ぐ ず ノヽ 言 っても こわく な いと 強 が り を 言 って、 サ ン ト ブ ー ヴ が パ リ大 学 で講 義 を し た時 に不 評 で、 い つ学 生 に襲 わ れ ても 防 戦 でき る よう に短 刀を 用意 し て いた と いう 話 を し た のを 迷 亭 が茶 化 し たも の。 主 人 に取 つては書 物 は 読 む 者 では な い眠 を 誘 ふ 器 械 であ る。 活 版 の睡 眠 剤 であ る。  0 二十 世 紀 の アダ ム であ る。  0 何 し ろ女 は東 西 両 国 を 通 じ て 一種 の装 飾 品 であ る。米 春 にも な れ ん志 望 兵 にも な れな いが 、 開校 式 には欠 く べか らざ る化 装 道 具 であ る。  0 超 人 だ 。 ニー チ ェの所 謂 超 人 だ 。 魔 中 の大 王 だ 。 化 物 の頭 梁 だ 。  0 銭 湯 の群 象 の中 か ら 抜 き ん出 た髯 の大 男 が破 れ鐘 を つく よう な声 を 出 し て ﹁ う め ろノヽ 。 魏ぶ 熱 い﹂ と 叫 ん で いる のを 見 た吾 輩 ︵ 猫 ︶ の印 象 であ る。.

(10) 甲南女子 大学研 究紀 要第 39号. 文学 ・ 文化編 (2003年 3月. (10). ). The expression and rhetoric of Natsume SOseki's. Wagα ttα J. wα 4ι た θグιαr夕 (Iα. αCα ′ ). “. NISHIDA Naotoshi Abstract: Natsume SOseki is the greatcst and most popular novelist of modern Japano He published his first novel Wagα. ttα J"ノ. α κιたθグιαr夕 in 1905。. SOseki desc五 bed this work as a humorous novel.In this paper,I have tried to analysc his humor and rheto―. ric.To this end,I have pointed out his new and oHginal compounds,such asた gθ た ′″た夕sカ タgj(paradisc― ism)and. so on.These compounds cause us amusement。. αた. 4sι j(Oystcr_tcacher),. 'sθ. SOscki uses the style of ordinary conversation and strings many words together,as in the foHowing example: 刀,gθ な′た sttθ sθ J,あ ″α′ θ bα bα α,sα わα,ソ σbα ,α κ α,′ θκ α κJJ′αr“ αグθ"(“ from sta■ Jた α “ “ “ “ “ “ to finish a rickshaw― man, stableman, roguc, hooligan― scholar, old charwoman, Πlidwife, witch, massagist, θJ,b“ “∫力 イ ,bα ′. J―. J―. `′. ass").This pattem of expression is typical of his writing。 SOscki displays striking originality in his silniles and metaphors..

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