35 研究論文
母語話者の受験結果による日本語能力試験聴解問題の検証
小中高生の受験結果とアンケートからわかること
森 篤嗣
* 本研究では,平成17年度日本語能力試験の1級と2級の聴解問題について,日本語母語話者である 小中高生の受験結果とアンケートを基に,日本語母語話者にとっての日本語能力試験聴解問題の難 易度を検討した。その結果,「日本語能力試験聴解問題の1級と2級では,中学生と高校生では有意 な差は見られないが,小学生とは有意な差がある」ことが明らかとなった。続いて小問別正答率を 基に小問を質的に分析することによって,日本語能力試験聴解問題が問うている聴解能力や認知能 力について検討した。 日本語能力試験,聴解問題,日本語母語話者,難易度,小問別正答率 1.本稿の目的 本稿は,平成17年度日本語能力試験の1級と 2級の聴解問題について,日本語母語話者である 小中高生の受験結果とアンケートを基に,以下の 3点について検討することを目的とする。 1.日本語能力試験の聴解問題は日本語母語話 者(小中高生)にとってどれくらいの難易度 なのか。 2.日本語学習者にとって難しい問題は,日本 語母語話者(小中高生)にとっても難しいのか。 3.日本語母語話者(小中高生)にも難しいこと を,日本語学習者に求めていないか。 1.は実に素朴な課題であるが,管見の限りで は日本語学習者向けの日本語テストに関して日本 語母語話者に受験させて,その結果を探るという 研究は見あたらない1。文字,語彙や読解,文法(特 に読解)は学校教育における国語テストとの類似 性も高く,小中高生にとってもそれほどの意外性 は感じないと予測される。しかし,聴解に関して は国語テストではそれほど普及しておらず,これ からの分野であり,小中高生が受験するとどのよ うな結果となるのか,またどのような解答傾向を 示すのかは国語科教育にとっても興味深い2。 *国立国語研究所(〒190-8561東京都立川市緑町 10-2),E-Mail:[email protected] 1英語学習者向けの英語テストに関して英語母語話者 と英語学習者に受験させて,その結果を比較するという 研究は,少し古いがAngoff & Sharon(1971)やJohnson(1977)などがある。聴解テストそのものについては, Rost(1990)が詳しい。 2国語の聞き取り試験については,森(2008)にもあるよ うに,全国8県の公立高校入試において既に行われてい る。早くには青森県が1979年度入試で初めて「放送によ る検査」を国語に導入した。その後,少し期間が空いて沖 縄県(1994年度∼),佐賀県(1995年度∼),山口県(1999 年度∼),島根県(2003年度∼),鹿児島県(2004年度∼), 岡山県(2006年度∼),千葉県(2008年度∼)と導入が続 いている。特に千葉県での導入は首都圏で初めての導入 であり注目を集めた。
2.については,小学生,中学生,高校生及び 日本語教育学会(2008)による平成17年度日本 語能力試験受験者の小問別正答率とアンケートを 量的に分析して傾向を探る(「4.調査結果の量的 分析」)。 3.については語彙や文体,認知負荷などに注 目し,小問別正答率の差が出た要因について質的 に分析することにより,日本語能力試験聴解問題 がどのような聴解能力や認知能力を測っているの かを検証する(「5.小問別の質的分析」)。 2.先行研究 日本語聴解テストにおいて難易度に影響を与え る要因について研究したものには,島田(2004) 及び島田(2006)がある。島田(2004,2006)では, 島田(2003)で選択肢が文字提示形式の方が,音 声提示形式よりも正答率が高いことを明らかにし た上で,文字提示形式と音声提示形式の間におい て正答率の差が大きい問題について分析をしてい る。島田(2004)では,「ヒントの位置(前半/後 半)」「課題の明確/不明確」「表現の一致/不一致」 「聴解モード(スキミング/スキャニング)」「談話 の種類(独話/会話)」の5つの要因について数量 的分析を行い,「ヒントの位置」と「課題の明確/ 不明確」で差があることを述べている。さらに島 田(2006)ではデータを増やし,「選択肢の複雑さ (語形式,文形式)」「課題の明確さ(明確,不明確)」 「談話理解のタイプ(全体理解,局所理解)」「手が かりの位置(前半,後半)」の4つの要因について, それぞれが文字提示形式と音声提示形式でどのよ うに影響を与えているか分析している。一連の島 田の研究による観点は,本稿の日本語母語話者と 日本語学習者の比較という観点とは異なるが,分 析対象となる要因については参考になる。 また,前田(2005)では,聴解テストと問題解 決過程の関係を調べるため,聴解テスト(選択肢 型),問題解決テスト(IQテスト),リスニングス パンテスト,解答生成テスト(聴解テストに自由 記述で答える)を実施し,その相関を調べた。結 論として母語話者はいずれのテスト間においても 相関が低いと述べている。ここで注目したいの は,リスニングスパンテストで測られる作動記憶 容量が聴解テスト(選択型)にそれほど影響され ないとしている点である。前田(2005,p.185)で は,この点について「外国人学習者向けの検定試 験に対しては,言語能力が十分あると考えられる 日本語母語話者」と記述しており,また同じく前 田(2005,p.187)では「母語話者では,聴覚呈示 される言語が母語であり,しかも聴解テストが日 本語学習者向けの検定試験であったために,その 難易度が低かったと推測される」と記述している。 前田(2005)における「日本語母語話者」は164名 全てが大学生であり,これらの記述にある「考え られる」「推測される」といった見込みは検証され ているわけではない。確かに直観的にはこれらの 見込みは可能性が高いと予測されるが,大学生よ りも発達途上にある小中高生でも同様の見込みが 妥当であるかということを,実際に調査すること によって,これらの直観的な予測に裏付けを与え ることは有意義であると考えられる。 3.調査の概要 平成20年2月に,大阪市公立学校の高校3年生, 東京都公立学校の中学3年生,愛媛県公立学校 の小学5年生を対象に,以下のように調査を行っ た3。括弧内は実施人数と各試験の項目数もしく は満点である。3.のアンケートは5段階の選択 式である。 3本調査では1.∼3.の他に,代表的な国語科の試験と して「平成16年度センター試験『国語I』本試験(高校生 119人,70点満点)」及び「平成19年度埼玉県公立高等学 校入学試験『国語(作文8点,読む23点,言語9点)』(中 学生99人,40点満点)」を,国語の聞き取り試験として 過去問の音声もHP上で公開している「平成17年度弘前 学院聖愛高校等学校入学試験『国語聞き取り』(中学生99 人,平成17年度3項目と平成18年度4項目)」を,それ ぞれ日本語能力試験結果との相関をみるために実施した。 ただし,本稿では日本語教育的側面を重視して分析する ため,相関などは別稿にて検討することとし扱わない。
1.平成17年度日本語能力試験聴解問題1級(高 校生127人,中学生95人,小学生42人。29 項目)4 2.平成17年度日本語能力試験聴解問題2級(高 校生137人,中学生95人,小学生41人。27 項目) 3.選択式アンケート(高校生134人,中学生 93人,小学生40人。5項目)5 試験の実施においては,小中高生いずれも1級 を先に実施し,2級は後日,日を改めて実施した。 また,試験時間については1級45分,2級40分 と実際の日本語能力試験の実施時間と同様の時間 で実施した。 データ収集の対象に平成17年度日本語能力試 験を用いたのは,分析報告書が出ている中で最新 の試験だったためである。調査対象の級について は問題の難易度から1級と2級を調査対象とした。 小学生については,今回の結果を見ても3級,4 級のデータも検討したいところであるが,本稿で は同一問題での対照を優先させた。今後の課題と したい。 4.調査結果の量的分析 本章では調査結果について記述と量的分析を行 う。まず1章で提起した,「1.日本語能力試験 の聴解問題は母語話者にとってどれくらいの難 易度なのか」について日本語能力試験の基本統計 量(「4.1.基本統計量」)と,アンケート結果(「4. 2.アンケート結果」)より検討する。次に小中高 生と平成17年度日本語能力試験受験者ごとに小 問別正答率を示すことによって,1章で提起した, 「2.日本語学習者にとって難しい問題は,母語話 者にとっても難しいのか」について検討する(「4. 3.小問別正答率」)。
4.1.基本統計量
本調査で得た小中高生の受験結果について,平 均と標準偏差などの基本統計量を以下のようにま とめた。表1が1級,表2が2級の基本統計量 である。参考として国際交流基金・日本国際教育 支援協会(2006,p.129)より,平成17年度日本 語能力試験受験者の結果も併せて引用して示して おく6。日本語能力試験聴解問題は100点満点で あるため,ここでは比較しやすいように,小中高 生の受験結果についても100点満点に換算して 示す。 日本語能力試験受験者は,本稿で比較の対象 としている小中高生とは主たる年齢層にずれが ある。平成17年度試験では,1級の平均年齢が 23.95歳(最少3歳∼最高81歳),2級の平均年 齢が22.81歳(最少6歳∼最高97歳)であり,1 級は21歳,2級は20歳が最頻値である。 まず小中高生の平均値の差を分散分析により検 討すると,1級でF(2, 261)=44.507,p<.001,2 級でF(2, 270)=28.841,p<.001であり,1級,2 級と共に小中高生間における平均の差は有意で あった。さらにTukey法による多重比較を行う と,1級と2級共に「小学生−中学生」と「小学生 −高校生」で共にp=.000となり0.1%水準で有 意な差があった。それに対し,「中学生−高校生」 では1級がp=.928,2級がp=1.000と有意な差 はなかった。また,1級,2級共に小学生であっ ても日本語能力試験受験者の国内受験者よりは高 4本来,平成17年度日本語能力試験の1級聴解問題は 30問だったが,本調査実施時に問題Iの1番の印刷不良 のため回答不能となり除外した。 5無回答項目のある回答者も若干名存在したため,アン ケートの回答者については,全項目回答をした人数を記 載した。なお,3.2.の表3では回答項目別に集計したの で,無回答項目のある回答者も含めている。 6国際交流基金・日本国際教育支援協会(2006,p.129) と日本語教育学会(2008,p.66)では,受験者数が数名ず つではあるが,ずれており一致しない。ここでは,最高点, 最低点を明示している国際交流基金・日本国際教育支援 協会(2006,p.129)を引用した。いが,1級では小学生と国内受験者の差はおよそ 4点に過ぎず,標準偏差もかなり近くなっている7。 満点にこそならないものの,日本語母語話者に とっては中学生の発達段階で既に聴解に関しては 差が出にくい域まで安定するが,小学生にとって は1級,2級とも安定した域まで達していると言 い難く,特に1級は難しいようである。しかし, 当然ながらこれはそのまま小学生の聴解に関する 言語能力を示唆するものではなく,ニュースなど での専門語彙やグラフの読み取りなど,聴解能力 以外の要因が関係している可能性も高い。これ らの諸要因については,小問別正答率を基に「5. 小問別の質的分析」で詳細に分析を行う。
4.2.アンケート結果
アンケートについては,3章でも述べたように 次の5項目について5段階の選択方式で回答し てもらった。このアンケートは小中高生にとって, 国語科で行われている聞き取り試験と大きく異な る日本語能力試験聴解問題をどのように感じるか ということの参考情報を得るためのものである。3.選択式アンケート(高校生
134人,中学生93人, 小学生40人。5項目) 1.1回目(2級)の試験と2回目(1級)の試験の 難しさはどう感じましたか。 ア 2回目(1級)の方が難しく感じた イ 2回目(1級)の方がやや難しく感じた ウ どちらも変わらない エ 1回目(2級)の方がやや難しく感じた オ 1回目(2級)の方が難しく感じた 2.普段の国語の試験と比べて,全体として日本 語の聞き取り試験の難しさの印象はどうでしたか。 ア 難しい イ どちらかといえば難しい 表1
基本統計量(1
級)* 項目数 受験者数 最高点 最低点 平均値 標準偏差 小学生 29 42 93.10 48.28 71.182 11.521 中学生 29 95 100 48.28 86.715 9.971 高校生 29 127 100 62.07 86.234 8.618 JLPT受験者国内 30 32,570 100 7 67.1 14.9 JLPT受験者国外 30 80,545 100 0 51.2 18.4 JLPT受験者総合 30 113,115 100 0 55.8 18.9 *小中高生とJLPT受験者で項目数が異なる理由は注4を参照のこと。 表2
基本統計量(2
級) 項目数 受験者数 最高点 最低点 平均値 標準偏差 小学生 27 41 100 55.56 87.082 9.873 中学生 27 95 100 55.56 95.556 7.015 高校生 27 137 100 81.48 95.539 4.819 JLPT受験者国内 27 17,488 100 0 65.1 17.6 JLPT受験者国外 27 93,807 100 0 44.6 19.1 JLPT受験者総合 27 111,295 100 0 47.8 20.3 7標準偏差を見てみると,1級,2級共に高校生<中学 生<小学生の順に数値が大きく(ばらつきが大きく)なっ ている。上で中高生についてはほぼ差はないと述べたが, 標準偏差を見てみると1級も2級も高校生よりも中学生 の方が数値が大きいことや,中高生共に2級よりも1級 の方が数値が大きいことから,平均値は近くとも標準偏 差を見ると差があることがわかる。ウ 同じくらい エ どちらかといえば簡単 オ 簡単 3.今回の日本語の聞き取り試験はあなたにとっ て役立つと感じましたか。 ア 感じた イ どちらかといえば感じた ウ どちらでもない エ どちらかといえば感じなかった オ 感じなかった 4.今回の日本語の聞き取り試験は「国語らしい」 と感じましたか。 ア 感じた イ どちからかといえば感じた ウ どちらでもない エ どちらかといえば感じなかった オ 感じなかった 5.あなたは国語は得意ですか。 ア 得意だ イ そこそこ得意だ ウ どちらでもない エ どちらかといえば苦手だ オ 苦手だ 上記のアンケートについて「ア=5,イ=4,ウ=3, エ=2,オ=1」と数値に置きかえて項目別及び小 中高生別に集計を行った結果が表3である。 各質問項目について分散分析を行うと,「1. 1級と2級の難易度比較」はF(2, 267)=1.439, ns(p=.239),「2.国語とJLPTの難易度比較」は F(2, 269)=21.120,p<.001,「3.役立つと感じた か」はF(2, 270)=14.590,p<.001,「4.国語らし いと感じたか」はF(2, 270)=2.992,ns(p=.052), 「5.国語は得意か」はF(2, 270)=4.997,p<.01 という結果となった。 分散分析の結果,「2.普段の国語の試験と比 べて,全体として日本語の聞き取り試験の難し さの印象はどうでしたか」,「3.今回の日本語の 聞き取り試験はあなたにとって役立つと感じまし たか」に0.1%水準での有意差,「5.あなたは国 語は得意ですか」に1%水準の有意差が認められ た。1章で挙げた「1.日本語能力試験の聴解問題 は日本語母語話者にとってどれくらいの難易度な のか。」を検討するために,「2.普段の国語の試 験と比べて,全体として日本語の聞き取り試験の 難しさの印象はどうでしたか」について,Tukey 法による多重比較を行うと,「小学生−中学生」 及び「小学生−高校生」ではp=.000と0.1%水 準で有意な差が見られ,「中学生−高校生」では, p=.676と有意な差は見られなかった。つまり, 中学生(平均値1.65)と高校生(平均値1.55)は 普段の国語の試験よりも日本語能力試験の方が簡 単であると認識しているのに対し,小学生(平均 値2.55)は単にどちらが難しいかと言えば,やや 簡単であると認識しているものの,中高生とは難 しさの差についての認識に隔たりがあると言える。
4.3.小問別正答率
本節では小中高生の平成17年度日本語能力試 験聴解問題の受験結果から小問別正答率について 検討する。表4が1級,表5が2級の小問別正 表3
アンケート結果 平均値 標準偏差 回答者数 問題 小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生 小学生 中学生 高校生 1.1級と2級の難易度比較 3.74 3.47 3.52 1.037 0.829 0.818 42 93 135 2.国語とJLPTの難易度比較 2.55 1.65 1.55 1.131 0.729 0.872 40 94 138 3.役立つと感じたか 3.79 3.21 3.29 1.260 1.252 1.415 42 94 137 4.国語らしいと感じたか 3.88 3.45 3.29 1.152 1.380 1.415 42 94 137 5.国語は得意か 2.90 3.00 3.42 1.226 1.136 1.223 42 94 137答率である。参考として日本語教育学会(2008) より,平成17年度日本語能力試験受験者の結果 も併せて引用して示す。 中学生の正答率と高校生の正答率はかなり一致 の度合いが高い事がわかる。小学生の正答率は問 題によっては中高生に比べ低くなる部分が見られ, 日本語能力試験受験者については日本語母語話者 である小中高生との開きがあると言える。次に, 小中高生と日本語能力試験受験者の小問別正答率 について相関係数行列を示す。表6の左の数値が 1級,右の数値が2級である。 1級に比べて2級は全体として相関係数が低 めである。これは特に中高生に関して2級では 平均値が高すぎて天井効果が影響していること があるかもしれない。尺度項目に天井効果が出 ているかどうかは,一般的に「平均値+標準偏差 が,とりうる最高値以上となるか」を基準に判断 表
4
小問別正答率(1
級)* 大問 小問 JLPT 番号 番号 小学生 中学生 高校生 受験者総合 問題I 2 0.952 1.000 0.992 0.640 3 0.976 0.979 0.992 0.749 4 0.929 1.000 0.976 0.771 5 0.857 0.884 0.945 0.482 6 0.738 0.811 0.882 0.508 7 0.357 0.821 0.898 0.463 8 0.976 0.979 0.984 0.776 9 0.381 0.705 0.913 0.272 10 0.048 0.484 0.425 0.134 11 0.738 0.895 0.882 0.492 12 0.643 0.642 0.661 0.725 13 0.405 0.832 0.953 0.512 14 1.000 0.979 0.984 0.822 15 0.905 0.979 0.984 0.854 問題II 1 0.857 0.968 0.969 0.568 2 0.929 1.000 0.953 0.755 3 0.786 0.821 0.827 0.461 4 0.738 0.979 0.866 0.488 5 0.500 0.947 0.882 0.590 6 0.357 0.768 0.685 0.338 7 0.976 0.990 0.984 0.671 8 0.952 0.947 0.921 0.300 9 0.667 0.905 0.874 0.668 10 0.595 0.716 0.709 0.331 11 0.857 0.979 0.937 0.449 12 0.905 0.979 0.874 0.759 13 0.548 0.726 0.575 0.442 14 0.548 0.758 0.709 0.674 15 0.524 0.674 0.772 0.267 *問題Iの1番が除かれている理由は注4を参照のこと。 表5
小問別正答率(2
級) 大問 小問 JLPT 番号 番号 小学生 中学生 高校生 受験者総合 問題I 1 0.951 0.968 1.000 0.429 2 0.512 0.874 0.971 0.434 3 0.951 0.979 1.000 0.450 4 0.951 1.000 0.993 0.673 5 0.756 0.916 0.971 0.274 6 0.780 0.926 0.934 0.441 7 0.829 0.937 0.956 0.569 8 0.829 0.947 0.971 0.604 9 0.951 1.000 0.985 0.724 10 0.902 0.958 0.971 0.605 11 0.976 0.968 0.934 0.485 12 0.976 1.000 0.985 0.673 13 0.512 0.895 0.876 0.304 14 1.000 1.000 1.000 0.627 問題II 1 0.976 0.979 0.934 0.523 2 0.780 0.842 0.847 0.160 3 0.780 0.968 0.905 0.545 4 1.000 0.979 0.993 0.240 5 0.976 1.000 0.985 0.693 6 0.707 1.000 0.985 0.270 7 0.976 0.937 0.971 0.463 8 0.756 0.905 0.810 0.432 9 1.000 0.990 1.000 0.545 10 0.951 0.958 0.927 0.517 11 1.000 0.958 0.978 0.427 12 0.732 0.937 0.927 0.192 13 1.000 0.979 0.985 0.620する。本調査では,日本語能力試験聴解試験の 2級の結果において,中学生で95.556(平均点) +7.015(標 準 偏 差)=102.571, 高 校 生 で 95.539(平均点)+4.819(標準偏差)=100.358 となっており,わずかではあるが天井効果が懸念 される。 5.小問別の質的分析 本章では問題のタイプや問題に使用されている 語彙などに注目し,小問別正答率の差が出た要因 について質的に分析する8。「4.3.小問別正答率」 で示した小問別正答率と,小中高及びJLPTでの 識別力を基に以下のように分類し,問題の内容に ついて質的に分析を行うことにより,1章で提起 した,「3.日本語母語話者(小中高生)にも難し いことを,日本語学習者に求めていないか」につ いて検討する。 1.日本語能力試験受験者の正答率が小中高生 全ての正答率を上回っている。(「5.1.日 本語能力試験受験者の正答率が小中高生全て の正答率を上回っている場合」) 2.小中高生いずれも正答率が低めで日本語能 力試験受験者の正答率との差も小さい。(「5. 2.小中高生いずれも正答率が低めで日本語 能力試験受験者の正答率との差も小さい場 合」) 3.小中高生のうち小学生の正答率のみ値が離 れている。(「5.3.日本語母語話者のうち 小学生の正答率のみ値が離れている場合」)
5.1.日本語能力試験受験者の正答率が小中高
生全ての正答率を上回っている場合 今回の調査結果の中でも非常に特殊な結果と なったのが,1級の問題Iの12番である。差は小 さいとはいえ,日本語能力試験受験者の正答率が 小中高生全ての正答率を上回った。1
級: 問 題I,
12
番( 正 答 率/識 別 力: 小 0.643/0.130,中 0.642/0.313,高 0.661/0.163, JLPT 0.725/0.405) Pre-Q:女の人が絵を示しながら古代の女性の 髪型を説明しています。この時代の結婚して いる一般の女性の髪型はどれですか。 F :これらの絵をご覧ください。これは古代 の婦人たちの髪型です。髪を頭の後ろで束 ねて,上に向けてとめたものは,一般の既 婚女性たちの髪型でした。また髪を2つに 分けて下げ,小さい輪を作ったものは未婚 の女性の髪型でした。この時代は身分が高 いほど髪を長く伸ばすことが許されていま したので,束ねて,編んで,頭の回りにた くさん回したものは特別な人だけに許され た髪型でした。 Post-Q:この時代の結婚している一般の女性 の髪型はどれですか。 この問題は,JLPT識別力は低くはなく,日 本語能力試験受験者についてはごく一般的な問 表6
小問別正答率におけるPearson
の相関係数行列(1
級/2
級) 小学生 中学生 高校生 JLPT受験者総合 小学生 1.00 /1.00 中学生 .823** /.703** 1.00 /1.00 高校生 .718** /.527** .858** /.676** 1.00 /1.00 JLPT受験者総合 .670** /.527** .656** /.592** .543** /.399* 1.00 /1.00 **p<.01 *p<.05 8以下,スクリプトは全て国際交流基金・日本国際教育 支援協会(2006),JLPTにおける識別力は日本語教育学 会(2008,pp.191-205)より引用。問題Iのイラストによ る選択肢は省略することとする。題であると言える。問題の手がかりとなるのは, 「既婚」と「未婚」という語彙であり,Pre-Q及び Post-Qの「結婚している」との言い換えであるこ とが理解できたかという部分である。「既婚」と 「未婚」は国際交流基金・日本国際教育支援協会 (2002)で1級語彙として示されており,日本語 能力試験受験者にとっては習得すべき語彙である ことが明示されている。一方で,今回の調査対象 となった日本語母語話者である小学生,中学生, 高校生にとっては,世代差なく聞き慣れない言葉 であったと推測される。その傍証として識別力を 見ると,中学生はある程度の値が出ているが,小 学生と高校生はかなり低い。中学生のみ識別力が ある程度の値が出ている理由は不明である。 国際交流基金・日本国際教育支援協会(2002, pp.52-53)にあるように,現行の日本語能力試験 の語彙は1980年代の資料を基準としているため, 現代の小中高生にとっては聞き慣れない語彙も選 定されている可能性がある。もちろん,日本語能 力試験受験者の正答率が小中高校生全ての正答率 を上回るというのは珍しい例であり,現代の小中 高生に聞き慣れない語彙であるから日本語学習者 に教えなくてよいということに直結するわけでは なく,あくまで語彙選定の際の判断要素の一例を 示唆しているに過ぎない。
5.2.小中高生いずれも正答率が低めで日本語
能力試験受験者の正答率との差も小さい場合 小中高生と日本語能力試験受験者の正答率の差 については,1級と2級を通じて差が大きい問題 が多く,特に2級ではその差は顕著だった。その 例外としては,1級に前節(5.1.)で取り上げた 問題Iの12番のように小中高生全ての正答率を 外国人の正答率が上回るという例があったが,他 に小中高生いずれも正答率が低めで日本語能力試 験受験の正答率との差が小さいと言える例をここ では「小中高生の正答率がいずれも80%に達し ておらず,外国人正答率は40%を超える」とい う基準により,二つの問題を取りあげる。1
級: 問 題II,
13
番( 正 答 率 /識 別 力: 小 0.548/0.336,中 0.726/0.368,高 0.575/0.406, JLPT 0.442/0.442) Pre-Q:ラジオで交通情報を伝えています。交 通機関の状況は今,どうなっていますか。 M :交通情報をお伝えします。先ほどの北山 地方の地震の影響で,飛行機の離着陸には 若干の遅れが出ていますが,大きな影響は ありません。ただ,空港と市内を結ぶ鉄道 は,線路の状況を調査中で,運転を見合わ せています。 Post-Q:交通機関の状況は,今どうなってい ますか。 1.飛行機はほぼ平常通りだが,電車は止まっ ている。 2.飛行機は飛んでいないが,電車は動いて いる。 3.飛行機も電車も動いている。 4.飛行機も電車も動いていない。 この問題も前節で扱った問題Iの12番と同じ く,「(運転を)見合わせる」と「止まっている」の 語彙の照合が手がかりとなる。しかし,「未婚」 か「既婚」が理解できなければ手も足も出ない問 題Iの12番に比べると,この問題IIの13番は 飛行機については「大きな影響はありません」と あり,それに続けて鉄道について述べる前に,「た だ」という接続詞を用いているため,仮に「見合 わせている」がわからなくとも,論理関係から正 解を類推する事も可能である。概ね識別力も問題 ない。1
級: 問 題II,
14
番( 正 答 率 /識 別 力: 小 0.548/0.264,中 0.758/0.345,高 0.709/0.406, JLPT 0.674/0.486) Pre-Q:男の人が話しています。この人は出生 率の低下の一番の原因は何だと言っています か。 M :日本では今,出生率の低下が問題となっ ています。女性の社会進出で結婚年齢が上 昇したことや,未婚の女性が増加していることが原因と言われています。しかし,若 いうちに結婚しても,子どもを持たない夫 婦が増えてきました。子どもを育てるには, 母親が仕事を持っているかどうかにかかわ らず,周囲の助けが必要です。わたしは, 出生率の低下を抑えるためには,小さな子 どもを持つ親を社会全体で応援する環境を 作っていくことが何より必要だと考えてい ます。そういった仕組みが充分でないこと こそ,子どもを育てることへの不安を招き, 出生率低下の原因になっているのではない でしょうか。 Post-Q:この人は出生率の低下の一番の原因 は何だと言っていますか。 1.女性が社会で活躍するようになったこと。 2.女性の結婚年齢が上昇したこと。 3.結婚しない女性が増加したこと。 4.社会全体で育児を支える仕組みが不十分 なこと。 この問題の手がかりは,特に語彙というわけで はなく,スクリプトの最後の2文の「出生率の低 下を抑えるためには,小さな子どもを持つ親を社 会全体で応援する環境を作っていくことが何より 必要だと考えています」と「そういった仕組みが 充分でないことこそ(中略)出生率低下の原因に なっている」の部分である。問題の手がかりが後 半にあると正答率が高くなるという傾向は日本 語能力試験では日本語教育学会(1992,p.17)な ど,以前から指摘されており,ある種のパターン となっている9。そのため,この問題IIの14番や, 問題IIの5番などは日本語能力試験受験者の正 答率が高くなっていると考えられる。 また,上の問題IIの14番は小中高生の中では, 小学生の正答率がやや低い。これは,独話による ニュース調の文体が関係していると考えられる。 この点については次節で検討する。
5.3.日本語母語話者のうち小学生の正答率の
み値が離れている場合 小学生の正答率だけが,中学生や高校生の正答 率から離れた値となっている問題はやはり1級 に多い。1級の29問中,日本語能力試験受験者 の正答率が,小学生の正答率を上回った問題が7 問あった。中でも次の問題は,小学生42人中で 正解がたった2名だった。1
級: 問 題I,
10
番( 正 答 率/識 別 力: 小 0.048/0.092,中 0.484/0.390,高 0.425/0.394, JLPT 0.134/0.079) Pre-Q:男の人がカメラの販売台数について話 しています。正しいグラフはどれですか。 M :これは,わが社のデジタルカメラの販売 台数を示しています。1998年に新商品を 売り出した際,爆発的な販売数を記録しま した。しかしその後,98年の半分とまでは いかないまでも,売り上げが大きく落ち込 んでいました。幸い,2002年には若干回復 の兆しを見せ,2004年に至っては,最も多 いときに匹敵する数字となっています。 Post-Q:正しいグラフはどれですか。 この問題はJLPT識別力が0.079と極めて低 く,日本語教育学会(2008)でも「匹敵する」とい う語彙が2級の語彙とはいえ難しかった可能性 と,「2004年」と「最も多い」という部分が結びつ き,誤答選択肢である3が66.4%も選ばれる結 果となったと分析している。 小学生も識別力が0.092と極めて低く,小学 生にとっては「回復の兆し」と「匹敵する」が極め て難しい語彙であったと考えられるだけでなく, 折れ線グラフの認知処理がうまくいかなかった可 能性が高い。一方で中高生の識別力は問題のない 値となっている。現行の算数の学習指導要領では, 折れ線グラフは4年生の学習項目であり,本調査 の対象である5年生にとっては,4つの折れ線グ ラフを見比べながら,聞き取りながら正答を導く という作業は極めて困難である事は想像に難くな い。もちろん,グラフの認知処理の難しさは,識 9 島田(2004,p.43)でヒントの位置による正答率は,「全 体」と「後半」では大きな差はないが,「前半とは差が大き い事が検証されている。別力から見ても,日本語能力試験受験者にも同様 であり,聴解能力を測る問題でグラフのような認 知負荷の大きい選択肢を提示する場合には慎重を 期すべきである。 また,前節(5.2.)でも述べたように,この種 の独話によるニュース調あるいは説明調の文体 は,この1級問題Iの10番をはじめ,小学生の 正答率が軒並み低い。例えば,前節の1級問題II の14番(0.548),「天気予報」の1級問題Iの9 番(0.381),「映画の主役の決定プロセスを伝え るラジオニュース」の1級問題IIの5番(0.500), 「笛の説明」の2級問題Iの13番(0.512)などで ある。小学生のみ正答率が落ちるのは,独話によ るニュース調あるいは説明調の文体が,文化的な フレームに基づく認知能力を測ることになってい るのではないだろうか。日常会話と独話による ニュース調あるいは説明調の文体では,少なくと も小学生にとっては,聴解能力以前に認知負荷が 高いということが本稿で明らかとなった。した がって,日本語学習者にとって文体による認知負 荷と聴解能力との関係についても,再考の余地が あるのではないだろうか。
1
級:問題I
,7番(正答率
/識別力:小 0.357/0.126, 中 0 . 821 / 0 . 396, 高 0 . 898 / 0 . 293,JLPT 0.463/0.441) Pre-Q:女の人と男の人がホテルで時刻表を見 ながら話しています。2人は明日,どの電車 に乗りますか。 F :ねえ,明日の朝,何時までに戸田駅に着 けばいいの。 M :10時だよ。 F :じゃあ,この電車がいいわね。10時10 分前に着くこれ。せっかく休み取ったんだ から,できるだけ朝はゆっくりしたいし。 M :だめだよ,明日は金曜だろ。この電車は 平日は運転してないよ。 F :あ,ほんと。じゃあこれ,この45分に 着く電車。あ,これもだめだ。この電車, 中村駅に止まらないんだ。じゃあ,これで 行くしかないのね。 M :そうだね。 Post-Q:2人は明日どの電車に乗りますか。 この問題は,中高生の正答率は8割から9割 と高いが,小学生は0.357と低い。時刻表を見 ながら答える問題で,数字の処理についていけな かったと思われる。実際には計算などをする必 要はないのであるが,目の前の数字に気を取ら れ,聞き取りに注意が向けられなかったと考えら れる。その意味ではこの程度の読み取りでも,小 学生にとっては認知負荷が高く,純粋な聴解能力 を測っているというよりも,読聴解に一部足を踏 み入れているとも言える。その傍証として小学生 の識別力は0.126とかなり低い。一方で中高生は, 読み取りで注目すべき点をうまく掴む事で,聞き 取りとのバランスを上手く取っていると考えられ, 日本語能力試験受験者にも同様にこうしたバラン スを求めていると考えられる。1
級: 問 題I,
13
番( 正 答 率/ 識 別 力: 小 0.405/0.368,中 0.832/0.473,高 0.953/0.120, JLPT 0.512/0.393) Pre-Q:女の人と男の人がスーパーで話してい ます。男の人はおすすめのカップラーメンを 棚のどの位置に並べましたか。 F :山田くん,カップラーメン並べ終わった? M :はい。 F :あら,目立つように棚の中央に並べてっ て言ったのに。おすすめ商品なんだから。 M :あのう,商品の陳列について研究してる 人が,おすすめ商品は中央のやや右よりに 置くのがいいと書いていたんです。それで ……。 F :どうして? M :人の視線は左から右に移動するんだそう です。 F :じゃあ左端に置く方がいいんじゃないの。 M :お客様はたいてい最初に棚の中央を見ま すよね。だからそこに今一番人気がある商 品を置くんです。で,その右におすすめ商 品を置けば,目に付くというわけです。 F :へえ。じゃあ,これでしばらく様子を見て, 売れなかったら中央に並べ替えてください。M :はい,わかりました。 Post-Q:男の人はおすすめのカップラーメン を棚のどの位置に並べましたか。 この問題も中高生は8割から9割と正答率が 高いが,小学生は0.405と低い。小学生の選択 肢を見てみたところ,42人中,1(一番左)が4人, 2(中央)は0人,3(中央のすぐ右)が17人(正答), 4(一番右)が21人であった。2(中央)を選んで いる小学生はいないことから,おおよその会話の 目的は把握していると考えられる。しかし,誤答 選択肢の4(一番右)が正答選択肢の3(中央のす ぐ右)を上回っていることから,「右よりに置く」 と「(その)右におすすめ商品を置けば」の「右」に 強く引きずられていることがわかる。1を選択し た小学生がいるのも「左端に置く方がいいんじゃ ないの」に影響されているようである。小学生に とっては数字の処理だけでなく,空間把握という 認知処理も難しいようである。ただ,小学生の識 別力は0.368と意外に悪くない。一方で高校生 の識別力が0.120と極めて低い。これは正答率 が高すぎたことが影響していると考えられる。 このように,独話のニュース調,説明調の文体 や,グラフや数字,空間の認知処理といった聴解 能力以外の能力に負荷がかかる問題は,小学生に とっては難しくなるようである。もちろん,これ は日本語能力試験受験者にも同様であり,特に1 級では聴解能力だけでなく,「中高生であればそ れほど問題はないが,小学生には難しい認知能力」 も問うているという結果になっている問題がある ということを充分に認識した上で問題作成を行う 必要があると言える。 6.本稿の結論 本稿では,日本語母語話者である小中高生の受 験結果を分析した結果,以下の二つのことが明ら かになった。 1.日本語能力試験聴解問題の1級と2級では, 中学生と高校生では有意な差は見られないが, 小学生とは有意な差がある。 2.小問別に質的に分析すると,日本語母語話 者である小中高生にとってどの程度の難易度 にあるのかによって,日本語学習者にどのよ うな種類の聴解能力や認知能力を問うている 問題かわかる可能性がある。 日本語能力試験は2008年現在,50カ国138都 市で523,958人が受験する大規模テストであり, その信頼性,妥当性を高める努力は十分に払われ ている極めて質の高いテストである。しかし,本 稿で分析したように,小中高生という各発達段階 にある日本語母語話者の受験結果を検討すること により,「どのような種類の聴解能力や認知能力 を問うか」がわかる可能性がある。小中高生だけ でなく,成人も含めて日本語母語話者への試行試 験を行うことは,その試験で問うている聴解能力 や認知能力の把握に繋がり,‘Can Do’ statements にも役立つ可能性がある。日本語能力試験を指標 に用いる大学や企業にとっては,日本語母語話者 を基準に具体的なイメージを持つ事ができ,日本 語能力試験の価値を高めることにもつながるので はないだろうか。 小中高生という各発達段階にある日本語母語話 者への試行試験の意義は,日本語教育のためだけ ではない。日本語教育と学校教育における国語科 教育との橋渡しにもなり得る10。現在の国語科教 育では,高校入試を中心に聞く試験が普及しつつ あるが,その多くはメモを取る能力を測る試験に なっており,聞く能力をうまく測れる試験になっ ていない。日本語能力試験の蓄積は,今や日本語 学習者だけのためのものではなく,日本語を使用 する全ての言語生活者のためのものとなることを 求められているとも言える。 10 森・豊田(2008)では,重回帰分析により,国語科の 聞く試験の結果からは,聞き取りではない国語科の一般 的な試験の結果は予測できないが,日本語能力試験聴解 問題の結果からは国語科の一般的な試験の結果を十分に 予測できるという報告をしている。このことからも日本 語能力試験聴解問題の国語科聞き取り試験への応用は極 めて高い可能性を持っていると言えるだろう。
文献 国際交流基金・日本国際教育支援協会(2002).『日 本語能力試験出題基準〔改訂版〕』凡人社. 国際交流基金・日本国際教育支援協会(2006).『平 成17年度日本語能力試験1・2級試験問題と 正解』凡人社. 島田めぐみ(2003).日本語聴解テストにおける 選択肢提示形式の影響『日本語教育』119,21 -30. 島田めぐみ(2004).日本語聴解テストの項目正 答率に影響を与える要因『東京学芸大学紀要 第2部門』55,39-46. 島田めぐみ(2006).日本語聴解テストにおいて 難易度に影響を与える要因『日本語教育』129, 1-10. 日本語教育学会(1992).『日本語聴解問題の改善 に関する考察―最終報告書』日本語教育学会 調査研究第1小委員会. 日本語教育学会(2008).『平成17年度日本語能 力試験―分析評価に関する報告書』凡人社. 前田由樹(2005).日本語の聴解テストにおける 問題解決能力の関わり―解答過程の分析と作 動記憶容量の個人差をふまえて『広島大学大 学院教育学研究科紀要第二部』54,183-188. 森篤嗣(2008).聞き取り試験は何を測っている か『文化庁月報』477,27. 森篤嗣・豊田誠(2008).日本語能力試験による 中高生の聞き取り能力調査『全国大学国語教 育学会発表要旨集』114,155-158.
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11
(1
), 79-86.Rost, M. (1990). Listening in language learning. London: Longman. 付記 本調査の実施にあたり,データ収集に協力して いただいた西予市立狩江小学校の牛頭哲宏氏,中 野区立緑野中学校の谷川敦子氏,大阪市立住之江 特別支援学校の豊田誠氏(3人の所属は原稿掲載 時のものであり,調査時の所属とは異なる)に深 く感謝を申し上げたい。 また,本稿を成すに当たっては,国立国語研究 所の横山詔一氏,国際交流基金の横山紀子氏,神 戸学院大学の辻野あらと氏にご助言を頂いたほか, 第12回日本語文法教育研究会(2009年3月1日, 千葉大学)における口頭発表でも有益なコメント を頂いた。丁寧な査読コメントを頂いた匿名査読 者の方々も含め,各位に感謝を申し上げたい。た だし,本稿の不備は全て筆者の責任である。 本稿は科学研究費補助金(若手研究B,研究課 題:日本語学・日本語教育の概念を応用した国語 科言語事項の指導法開発,課題番号:18730548, 研究代表者:森篤嗣)の成果の一部である。
81
An Aanalysis of the Examination Results of Japanese Native
Speakers in the Listening Section of the Japanese-Language
Proficiency Test 2005
Based on the Examination and Questionnaire Result
of Schoolchildren and Students
MORI, Atsushi*
The National Institute for Japanese Language, Tokyo, Japan
* 10-2, Midori-cho, Tachikawa-shi, Tokyo 190-8561. E-mail address: [email protected]
Abstract
This paper analyses the results of the examination and questionnaire of Japanese na-tive speakers, primary schoolchildren, junior high students and high school students, in the listening section of the Japanese-Language Proficiency Test 2005 with the de-gree of difficulty of the items. As a result, I proved that though there was no remark-able difference between the junior high school and high school students, there was a significant difference between the primary schoolchildren and the other students. And I examined the listening and the cognitive competence by the investigation of a qualitative analysis of a percentage of correct answers in each item.
Keywords: Japanese-Language Proficiency Test; Listening section; Japanese native speaker; Degree of difficulty; Percentage of correct answers in an each item