道内の児童生徒の衣生活実態に応じた被服教育の提案 : 1991年と1998年の調査の比較から
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(2) 道内の児童生徒の衣生活実態に応じた被服教育の提案. 道内の児童生徒の衣生活実態に応じた被服教育の提案 ─. 年と. 小. 松. 年の調査の比較から ─. 恵美子. 森. (天使大学非常勤講師). 藤. 田. みゆき. (北海道教育大学札幌校). 本. 尊. 子. (北海道教育大学岩見沢校). (. (. ) ). (. ). (. .緒. ). 我々は,男女共修となる以前の. 言. と,共修後の. 年(以下. 年(以下 年と省略). 年と省略)に,小・中・高. 家庭生活で行われる衣生活に関する行動の中で,特に. 校生を対象として衣服購入の実態及び洗濯の実践につい. 頻度が高いものに,衣服の洗濯がある。日常着のように. てのアンケートを実施した。本研究では現在の児童生徒. 汚れやすい状況で頻繁に使用されるものは,家庭で湿式. の衣生活への関心と行動の実態を明らかにし,男女共修. 洗濯できる性質であることが望ましい。だが取り扱い絵. 化の影響,およびこれからの家庭科教育における衣生活. 表示に,水洗いだけでなくドライクリーニングも不可と. 教育の在り方について検討した。. 表示されている商品もある。消費者は,被服の購入時に 必ず取り扱い絵表示を確認して,取り扱い困難な商品は 購入しないように注意しなければならない。被服管理は 洗濯の場面で初めて関わってくる問題と認識されやすい が,実際には被服購入の段階から,すでに. .調 査 方 法 調査対象および調査方法. 適切に洗え. アンケート調査は,北海道札幌市とその近郊の道央地. るか・洗えないか という問題との関わりは始まってい. 域の小・中・高校生を対象として行った。調査対象者の. るのである。被服は素材や着用頻度,着用状況,取り扱. 構成を表. い方によって,耐久年数に大きな違いが生じる。消費者. 月で,調査は質問紙を協力校に郵送し,教諭立ち会いの. は,これらを考慮した上で被服を購入することが望まし. もとで回答後,返送してもらう形式で行った。回収総数. い。被服を選択する場合の基準が,その被服の寿命を左. に対して集計可能なアンケートの割合は. 右するほど重要な意味合いを持つことを十分認識する必. 調査結果は集計後,男女間および. 要がある。. によって有意差検定を行った。. に示す。調査期間は. 年. 月と 年. ,. 月. %であった。 年間で. 検定. 道内の児童生徒の衣生活の実態については,被服購入 表 .調査対象者数. 時に実用面を重視せず,また洗濯の実践も低いという傾 年および. 向にあることが, されている. ). 。特に. 小学校. 年の調査で既に報告. 年の結果では,洗濯の男女の ). 年. 実践率に有意差が見られた 。現在,家庭科は男女共修 であり,共修となる前後では家庭科のカリキュラムも大 きく変わった。児童生徒の実態もその影響を受けて変化 していると予想される。家庭科の男女共修が実施された のは,中学校が. 年から,高校が. 年からである。. 年. 男子 女子 男子 女子. 中学校. 高校. (単位 人) 小計. 合計.
(3) 小. 松. 恵美子・森. 田. 調査内容. みゆき・藤 本 尊 子. とが読み取れる。. 児童生徒の衣服購入の実態と洗濯の実態ついて調査を 行った。衣服購入の実態を調べる内容として,最近衣服. 衣服を購入するときの選択基準. を購入した時の選択基準および衣服購入時の参考物につ. では実際に衣服を購入する場合,彼らは衣服の何を基. いて設問した。洗濯の実態については,洗濯経験の他,. 準に選択しているのであろうか。 最近の衣服購入時の. 被服素材と取り扱いの知識についても調べた。調査の質. 選択基準 という質問に対し,複数回答の結果を図. 問紙は,選択肢の中から回答を選ぶ形式とした。. 示す。 年に比べて. に. 年のほうが回答総数の割合が増加. しており,購入基準とする項目が増えていることがわか. .結. る。 年では全体の傾向として. 果. イン・色. 衣服購入時の参考物 に示す。. 年に比べて男女とも最も増加が著しかっ. たのは 雑誌. である。男子小・中学生では. て 年では約. 倍増加し, また女子では小学生で約. 年に比べ 倍,. 倍,高校生で約. 倍増加した。今や女子. 中・高校生の 割以上が 雑誌. を参考にして衣服を購. 中学生で約. 入していることがわかった。 他人の服装. も女子で増. 加傾向となった。一方, 特に参考にしない. 女子は. であった。. 年は約. 割が. 特に参考にしない. していが, 年でその数は約 わって 雑誌. と. に比べて. 倍増加した。. と回答. 割に減少した。それに代. 他人の服装. を参考にする者が. デザ. 年ではかなり高. くなっていることがわかった。 男女間の比較では,女子のほうが関心が高い結果と なったものが多かった。しかし, ブランド. だけは男. 子小学生と高校生が女子に比べて高い結果となり,男子 の方がブランド志向が強い傾向がみられた。 着用時の快適性にかかわる 着心地. の割合も男子中. 高生で顕著に増加した。衣服の機能性とかかわる 素材 を基準とする割合は. 年で大きく減少した。また男子では高校生の変化が顕著. サイズ. 値段 で顕著な増加が見られた。男女とも,. 衣服のファッション性に対する関心が. 衣服購入時に参考にする物は何かの複数回答の結果を 図. 流行. 年と. 年の間に大きな変化はな. かった。衣服の保管・管理に最も重要な. 取り扱い方. を基準とする割合は男女の別無く. 年ともに最低. 年,. であり,関心が非常に低いことがわかった。. 年. テレビ も,女子の増加が顕著であった。 テレビ を参考にする者は. 年ではいずれも. しかし 年では中学生の約 生の約 %にのぼり,女子の 時に テレビ. %未満であった。. %,小学生の約. %,高校. 割以上が衣服を購入する. を参考の一つにしていることが明らかと. なった。以上の結果からは,男子も女子も被服を購入す る際に,メディアからの情報を参考にする者が増えたこ. 図 .最近の被服購入の時の選択基準(複数回答) 年, 年, 検定 年, 年間 , ,男女間 ,. 洗濯の経験と衣服素材の取り扱い知識 児童生徒の衣服管理に対する関心については,衣服の 洗濯経験と取り扱い知識を問う質問の回答から,検討し 図 .被服購入時の参考物(複数回答) 年, 年, 検定 年, 年間 ,男女間 ,. た。日常での家庭洗濯の経験の結果を図 ,. では, ときどきする. に示す。女子. 割合が減少傾向にある一方で,. ほとんど実践していないと思われる 何度かしたことは ある と. したことはない. が. 年では増加傾向にある.
(4) 道内の児童生徒の衣生活実態に応じた被服教育の提案. 扱い知識に対する認識の低下がうかがわれる。 また被服の取り扱い絵表示に従うかという問いでは, 全く気にしていない , 表示の意味がわからない 年に比べて. が. 年の方が増加した。以上の結果から,. 年では男女間で洗濯の知識と実践の差がはっきり出てい たのに比べて,. 年では男女差が小さくなり,ともに能. 力が低下してきていることが明らかとなった。. .考. 察. アンケートの結果,. 年当時と比較して. 年で顕著な. 違いが見られたのは,以下の二点においてである。一つ 図 .洗濯の経験 年, 年, 検定 年, 年間 ,男女間 ,. めは,男女ともファッションへの関心が非常に高まって ,. いること,二つめは,洗濯の知識・実践において女子の 能力が低下し,男女の差が小さくなってきていることで. ことから,家庭実践が低くなってきていることが明らか. ある。. となった。 一方,男女間を比較した結果,. 年当時は. いつもす. る で女子中高生の値が高い傾向にあったが,. 年では. 男女差が小さくなっていることがわかった。しかし, と. ファッションへの関心の高まりとそれに応える衣生 活教育 今回のアンケートで,衣服購入時の参考や選択基準に. きどきする では女子の割合が高く, したことがない. は流行やブランド,テレビの与える影響が大きくなって. では男子の割合が高かったことから,総合的には. 年で. おり,児童生徒が積極的にファッション情報を利用する. も女子の方が優位であるといえる。男女共修後も,男子. ようになったことが明らかとなった。今や児童生徒も流. の大部分は家庭で実践していないことが明らかとなっ. 行の担い手となっている。自己の価値観に基づいて流行. た。. 品やブランド品を選択することは否定されるべきではな. 被服素材の基礎的な取り扱い知識についての意識を問 うた結果を図 に示す。全体の傾向として, して 年では. 十分ある と. 年と比較. ほぼ十分だと思う. い。だが単に. 有名である. 流行している. といった. ことだけを尺度に,流行を追いブランドを嗜好するなら. が減. ば,それは主体的な価値判断を放棄することにつながり. の割合が増. かねない。心身の成長が著しい時期に,着装で自分を自. 加した。知識の低下と同時に,被服素材の基礎的な取り. 由に表現する手段を模索し,価値観を育むことは大切で. 少し, ほとんどないが知らなくとも良い. ある。ファッションに関心のある児童生徒ほど知識を求 めていること ),また関心が高いゆえに,情報に影響を 受けやすいこと )もすでに報告されている。今回の調査 でも明らかになったように,児童生徒のファッションの 情報源がテレビ・雑誌などのメディアである現状では, 情報が商業主導のものだけにかたより,豊かな価値観が 育たない危険がある。また,男子に比べ,女子の方が ファッションへの関心が高い傾向は今回の調査でも見ら れたが,その一方で,女子は男子に比べて家庭科の. 服. 飾デザイン 分野に対して高い関心を寄せていない現実 も明らかになっている )。だが,この課題は家庭科の着 装学習によって改善される可能性もある。 これからの衣生活教育は,着装について学び考える事 図 .被服素材の基礎的な取り扱い知識 年, 年, 検定 年, 年間 ,男女間 ,. に時間を裂く必要がある。例えば,美学,色彩学,意匠 ,. 学,服装史などに触れ,人間にとって根元的なものにつ いて考え,知識を得る機会をもっと彼らに与えることが 求められているのではないか。これらの基本的な知識を.
(5) 小. 松. 恵美子・森. 田. みゆき・藤 本 尊 子. 学ぶことは,児童生徒の人間性を育み,価値観を確立す. また,洗濯の実習を行った後で,児童生徒が所持して. る助けとなるであろう。また流行については,発生・消. いる衣服の素材と取り扱い表示を調べさせ,衣服の使. 滅を繰り返してきたという歴史と社会現象からとらえた. 用目的とそれらが噛みあっているかどうか(例. 学習も取り入れることで,冷静に客観視できる視点が育. に着る衣服なのに水洗いできない,など)を考えさせ. つのではないかと考えられる。. ることによって,衣服購入の際に着用後の手入れまで. 素肌. 見通した選択が必要であることを学ばせることもでき 洗濯の知識・実践低下の背景と家庭科. る。. )男女の能力差の減少. ひとつの学年の授業計画として考える場合,テーマ. 洗濯の知識・実践における女子の能力低下による男. を 衣服計画. として学習をはじめ,. 所有被服の実. 女間の能力差の減少には,家庭で児童生徒の実践の場. 態調査を行い, 被服に必要とされる機能を学んだ上. が確保されなくなってきている事が大きく関係すると. で, 不足している被服を検討し,. 推測される。洗濯だけでなく,現在の児童生徒は生活. を立てる, 実際に商品を検討・購入する,. 能力が全般的に低くなってきており,自分たちの生活. の管理(洗濯・保管)を行う。この一連の流れで学習. 行為に対して低い関心しか持たなくなってきている。. を進めることが望ましい。このような実践指導は,地. この原因は,自分の生活行為と社会問題や環境問題と. 域の実状を考慮し,また児童生徒一人ひとりの個性を. のつながりを認識できずにいるからだと考えられる。. 見極めながら進めることが重要であり,小規模校での. 人間生活に関わる事象の原理や科学についての認識が. 実践に向いていると考えられる。. 不十分なのである。家庭科ではこの人間生活に必要な. 以上, 年と. 被服購入の計画 着用後. 年のアンケート結果の比較から明ら. 普遍的な知識を教える場が必要である。家庭科は,授. かとなった問題点について考察し,これからの衣生活. 業で獲得した知識・技術が学習者の実生活と結びつき. 教育の在り方について提案を行った。しかしながら,. 応用され発展することによって,使命を果たすことが. 具体的にどの学校・学年でどのような内容で着装およ. できる教科である。児童生徒の家庭生活とのつながり. び衣服管理を学習させるべきかについては,衣生活教. をいかに明確にしながら授業を行うかということが,. 育全体を再構成する必要があると考えられるため,現. 今後さらに家庭科が求める教育に必要なことであろ. 段階では提案するに至らなかった。今後は現行の衣生. う。. 活教育内容を再検討し,学習者の実態に応じた展開や 応用が可能となるような内容構成を確立する必要があ. )管理を見通した衣服購入の必要性 今回の結果からは児童生徒は衣服購入時に. ろう。 取り扱. い を基準とする者が少なく,かつ洗濯の知識や実践 が低いということも明らかとなった。この二つの問題. .結. 論. も無関係ではない。 取り扱い という衣服の情報は,. 児童生徒の衣生活への関心と行動の実態を明らかに. 洗濯を行う時に必要となるものであり,洗濯を行わな. し,家庭科男女共修化の影響とこれからの家庭科教育に. い者にとっては必要とは認識されにくい。家庭科で取. おける衣生活教育の在り方について検討するために,男. 扱い表示について学習しても,家庭での洗濯実践がと. 女共修となる以前の. もなわないので知識は身につかず,衣服購入の際にも. 高校生を対象とした衣生活分野に関する総合的なアン. 留意されない,という悪循環になっていると推測され. ケートを行った。その結果,以下の結論を得た。. る。児童生徒の被服の実用面への無関心と被服管理実 ). 践との関連については岡村ら も指摘していたが,本 研究でもそれを裏付ける結果になったといえる。 そこで,児童生徒が自分で選んで購入した衣服を. ・ 年に比べて. 年と共修後の. 年では,衣服購入時の参考物として. 特に(何も)参考にしない テレビ. 年に小・中・. 他人の服装. 者が減少し, 雑誌. などの情報を参考にする. 者が著しく増加した。. 使って,洗濯の実習を行うことを提案したい。衣服の. ・ 年では男女とも衣服購入時の基準として,衣服の. 洗濯は,保健衛生上の機能を保持する目的で行われる. ファッション性を重視する傾向が高くなっていた。. ものであるが,同時に衣服の色合いや風合い,形状に. その一方で,衣服の機能性に関わる. も大きな影響を及ぼす場合がある。洗い,乾かすとい. については,. う操作で衣服がどのように変化するかは,実際にやっ. 取り扱い方. 年と同様に関心が非常に低かった。. ・児童生徒は 雑誌. や テレビ. のファッション情. てみてはじめて理解できるものであり,その洗濯物が. 報に依存しているが,今後衣生活教育で着装学習を. 自分で購入したものであればさらに効果的であろう。. 行うことによって,ファッションに対する価値観を.
(6) 道内の児童生徒の衣生活実態に応じた被服教育の提案. より豊かにできる可能性がある。 年では男女間で洗濯の知識と実践の差がはっきり. ・. 年では知識・実践ともに女. 出ていたのに比べて,. 子は低下し,男女差が小さくなってきた。この結果 は家庭科の男女共修が要因というより,家庭での実 践の場がますます確保されなくなってきている事に 起因すると考えられる。 ・児童生徒は衣服購入時に 取り扱い方 を重視せず, 洗濯の知識や実践も低かった。原因の一つには,家 庭科で取扱い表示を学習しても家庭での洗濯実践が ともなわないため知識が身につかず,衣服購入の際 にも留意されないという悪循環があると推測され た。これを改善するためには,児童生徒が自分で選 んで購入した衣服を使って洗濯の実習を行うなどの 工夫が必要である。 最後に,アンケート調査にご協力いただきました各校 の皆さまにお礼申し上げます。. 引用文献 )増渕哲子,武井洋子. 児童・生徒の消費行動(第. 報)─衣生活領域について─,日本家庭科教育学会 誌,. ,. (. ). )岡村美乃里,諸岡晴美,中川眸. 小・中・高等学校. における体系的な衣生活教育に関する研究. ─衣. 服購入および衣服整理についての調査から─,日本 家庭科教育学会誌, ,. (. )岡村美乃里,諸岡晴美,中川眸. ) 小・中・高等学校. における体系的な衣生活教育に関する研究. ─衣. 服の補修・廃棄と衣生活領域への関心についての調 査から─,日本家庭科教育学会誌, , )小松恵美子,森田みゆき,藤本尊子. (. ). 生徒の衣服購. 入における地域特性と教材への応用,北海道教育大 学僻地教育施設. 僻地教育研究, ,. )森田みゆき,小松恵美子,藤本尊子. (. ). 衣生活教育の. 学習経験と意欲─北海道の児童・生徒を対象とした 調査から─,北海道教育大学紀要(教育科学編) , , (. ).
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