• 検索結果がありません。

体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1) : シナリオ作成活動のねらいと評価

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1) : シナリオ作成活動のねらいと評価"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1) : シナリオ作成活 動のねらいと評価. Author(s). 高橋, 伸幸; 横山, 麻美; 乳井, 英雄. Citation. 北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要, 創刊号: 33-42. Issue Date. 2001-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2780. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 創刊号. 平成13年3月. ReportoftheResearchandEducationCenterforLifelongLeamlng−HokkaidoUniversltyOfEducationNo.1 March. 2001. 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1): シナリオ作成活動のねらいと評価. 高橋伸幸1),横山麻美1),乳井英雄2) 1)北海道教育大学函館校 2)函館大谷女子短期大学. Leamingsystemtohelpcontinuingexperience−reCOnStruCtion(1): Aimandevaluationofscenari0−Writingactivity. NobuyukiTAKAHASHIl),AsamiYOKOYAMAl),HideoCHICHII2) 1)HokkaidoUniversltyOfEducation,Hakodate,. 2)HakodateOtaniWomen−sCollege. Abstract Weintroducedastudent−Centeredlearn1ngmethod,‖experience十reCOnStruCtion:SCenario. Wrltlngbasedonasubject−relatedownexperienceofstudentsandtherelatedhistoryof thesuqect‖,tOintroductoryphysicscourses・Themethodisintroducedinascopeofliftlong. learnlngtOanalyzeandimprovethedifficultiesofinstruCtionforvarioustroublesand requestsarlSlnglnStudentslearn1ngunuSualconceptsforthemselves・Inthisreport,We discussstrategyforstudenトCenteredlearn1nguSlngSCenario−Wrltlng,andtheresultsand. theevaluationsofpreliminarylntrOductionstophysicscourses,andasystemtohelpleamlng uslngSCenario−WrltlngOutSideschool−educationuslngtheinternet・. Keywords:学生中心の学習(student−Centeredleaming),シナリオ作成(SCenariowriting),物理教育 (physics−education). 1.体験再構成活動の構想 記憶の想起は経験の再構成である。十分学習し,良く記憶している内容は,繰り返された再構. 成により記憶が再構成しやすく関連付けられた編成に変化している。我々は学習を効果的なもの とするために多様な再構成活動をしている。最も効果的な再構成活動は毎日の生活の中で使い続 けることであろう。失われない記憶は日常の多様な活動の中に無意識に組み込まれた再構成活動 によって保たれている。物理学やコンピュータなどの非日常的経験は通常の日常生活の中で再構 成されることなく失われていく。非日常的内容の学習体験を日常体験に近い再構成活動に結びつ けておくことにより学習内容の保存と関連付けによる展開が可能になるのではないかというのが. 著者の着想である注1)。このような再構成活動として幼児が自己の体験を親に話す行為に始まる. 「日常会話」が重要視されてよい。作文が苦手な学生も学生同士のおしゃべりは好む。自己の体 験を「会話」へ再構成することは日常的に行われている。本論文では物理学やコンピュータなど の非日常的学習内容を「会話」へ再構成することで日常的再構成活動へ組み込ませて,学習内容. −33−.

(3) 高橋伸幸・横山麻美・乳井英雄. の保存と展開を可能とできるか実際の授業で検討した。. 授業における「会話」による体験再構成活動の一例の基本的進め方を構想する。学生は教師に よる授業目的と授業方法の概要を含めた挨拶を受けて,授業受講以前の関連する経験を含めた自 己紹介文の作成と挨拶・発表を行う。授業内容を習得した場合に達成される討議能力の例として. 授業内容に関する会話劇シナリオを朗読する。学生はこの会話劇を例として学生の自己紹介文に 現れている授業内容に関わる中心内容を会話劇にする。授業の過程で受講以前の経験が授業の理 解・習得に密接に関連していることを学ぶ。授業の前半は授業で達成を目指す内容について,理 解が可能な小単位ごとに,達成されたときに出来る会話劇内容の紹介・模倣・解説・練習を繰り. 返す。授業の後半は前半で学んだことをオリジナルの会話劇にし,さらに,「本」として「編集」 する作業に取り組む。 このような自ら能動的に作業した「体験と自覚しやすい経験」を会話劇や本のかたちに創作・ 編集する再構成活動を通して,学習内容を見直すことが可能になる(阿部1998)。経験をひとつ のものとして丸ごと記憶したものが再度の実行に必ずしも有用でないことを知り,階層化・部品. 化することで使える知識となる体験を積む。再構成の作業に取り掛かろうとして,再構成活動を 行わない経験の記憶が急速に失われていることを認識する。漠然とした能力としての自己表現力. でなく,何度も行動して身についた動作や表現の組み合わせとして豊かな内容を表現できるとい う「習得した技能に基づいた自己表現力」を身に付けることが出来ることを知る。 従来の教育のスタイルは教師から学生への一方的な知識の伝達であった。この方法が大量の知. 識を伝達するための最も効率的な方法になりうる。しかし,この方法での学習者は教師が仮定し. た予備知識と受講能力を持った学生モデルに近似した存在として教師の行為に応えることが期待. されている。実際にはこの方式は学生を意識の上で受身に落ち込ませやすく,生涯学習における 学生の自主的,主体的な学習への取り組みを阻害する。一方,教師は平均的学生を想定した準備 をして授業に臨むため,生涯学習で求められている多様な学生の自主的,主体的な学習への取り 組みから生まれる多様な要求への対応・指導に十分答えられない。生涯学習においては従来型の. 学習に比べ,学習者の意識の高さに依存した高い効率性に頼って,通信教育など自習主体で教師 との相互作用の小さい形態が一般的であった。実際には,学習者の抱える多様な困難を解決して. いくために,いっそう教師と学習者の間での双方向性の相互作用的(インタラクティブ)な教育 が必要とされる。この点において,生涯学習はコンピュータスキル・コンピュータプログラミン. グなどの導入教育と共通した教授上の困難を抱えている。(高橋1999) 本論では再構成活動の具体的実例を示して評価を行い,その学校外での継続を支援するシステ. ムについて述べる。体験再構成活動の実施例として物理学分野における大学初等教育と情報科学 分野における学士論文指導について述べる。物理学分野における大学初等教育については学校教 育において再構成活動を身につける方法と効果について述べる。情報科学分野における学士論文. 指導については,体験再構成活動の学校外での展開と継続を支援する仕組みについてインター ネットを用いた遠隔学習システムの問題点と有効に機能させるための提言を行う。. 2.体験再構成活動の戦略:物理学分野における大学初等教育 既に,「仮想生産方式」を用いた学生参加型「光学」の授業の経験を分析し,それから得られ た,「授業に学生の参加を促進するための仕組み」についての考えを述べた。(高橋2000)その最 後に,学生参加の仕組みとして,受講者自らの体験を授業目標と統合化して脚本化する演劇創作. ー34−.

(4) 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1). 活動を提案した。演劇創作活動は演劇やその脚本(シナリオ)という「作品」作成を活動の中心 とする「仮想生産方式」であると共に,体験の再構成活動のひとつとして位置付けられる。本論 文では演劇創作活動を2000年度の「光学」と「物理学B」,及び「北海道大学水産学部理科教育 法(物理)」に取り入れた結果を評価する。「仮想生産方式」は学習目標を仮想的だが具体的な「製. 品(作品)を作る作業」として示す。今回は「自己の過去の体験と物理学(光学・力学)の歴史 についての知識を統合化した演劇脚本を作る作業」を通して「真の学習目標」(ここでは光や運. 動の物理の理解)を得る。 概念形成授業に必要な学生中心の授業「授業の目標は教師が・授業の実施は学生が」. 何を学ぶ時間なのか,それを示すのは教師の責任。学生が実施して初めて学生の理解が進んで. いるかが分かる。物理学やコンピュータの授業が難しいのは学習目標が学習者の経験の範囲にな いため。自転車に乗ったことの無い子供は自転車に乗ることは出来なくても自転車に乗ることが どんなことか,どんなに役立ち,楽しいか見て知っていて想像できる。苦しくても練習し,乗れ. るようになった後も乗りつづける。物理が対象とする現象(光や運動)を知っていても,物理を 使えるようになると何の役に立ち,どんなに楽しいか,学生は想像できない。教師も示すことが. 難しい。物理を使って現象を説明できた喜びは説明できた本人にしか分からない。物理は透明な 知の自転車なのだ。. 学生中心の授業の戦略「授業例を参考に自分の授業を作ろう」. 学生中心の授業の戟略は楽しく自主的に繰り返し学習したくなる学習方法を採ることである。. 教師も学生もこれまでの体験を紹介しよう。「学習目標」が学習者の既存の「体験」から類推で きる範囲にあることが第一条件である。目標とする「自転車」は何か,学生に示す。対象学生を 特定し,その現実を知っていることが大事だ。「繰り返す」ことで「成果」が次第に良くなる「体 験」が持てるように学生を誘導する。自分で「自転車」にまたがる時間と場所を与える。乗り方 をロすっぱく言っても効果はない。 以下に「物理学B」の今年度のシラバスを示す。「光学」のシラバスも従来の「仮想生産方式」. 中心の内容(高橋2000)を「脚本執筆」を中心に以下の「物理学」に近い内容を加えて,大幅に 変更された。. 授業シラバス. ****************************************** 科目番号:497 科目名:物理学 担当者名:高橋伸幸 授業概要. 本科日は,比較的単純な自然現象を題材として,数学的に記述し現象に適切な法則を相応させて 原理的な説明・予測を行う能力を養う。身近な道具・玩具・楽器に生じる自然現象を図形に置き 換えることで力・エネルギー・運動・伝播の法則性を図形で考察する能力を身につける。法則が 見いだされてきた歴史的・社会的背景についても議論する能力を身につける。学生参加型授業を 目指し,「作品」の作成を直接的課題とする「仮想生産方式」を基本として,興味に基づく多様 な選択と多面的取り組みによる繰り返し活動によって能力の定着と応用力の開発を行う。 授業計画:力・エネルギー・運動・伝播の4種のテーマについて,幾何的「言語」での質疑討論. −35−.

(5) 高橋伸幸・横山麻美・乳井英雄. を行う「物理学会話劇シナリオ」と物理学の原理が主要な役割を果たす「道具・玩具・楽器」を. 作成して発表会を行い,アンケートテスト問題を作成・実施して評価レポートを作成・発表す る3投階の活動を行う。 第1回「仮想生産方式」による学生参加型授業について学ぶ。課題のテーマを選び,作業方法 を学ぶ。課題:説明文を会話形式(シナリオ)に書き換える。. 第2回「物理学会話劇」を発表する。課題:シナリオ原稿に歴史的事実を加えて歴史科学短編 小説執筆。. 第3回 会話劇で選択したテーマについて作成する道具・玩具・楽器を選択し,作成方法を学ぶ。 課題:テーマごとに道具・玩具・楽器を作る。. 第4回「製品発表会」作成した道具・玩具・楽器の説明をし,動作を実験(測定・解析)する 方法を学ぶ。課題:製品動作の追加実験とまとめレポートの作成。 第5回「実験結果発表会」調べた道具・玩具・楽器の特性を報告し質疑する。相互評価用アン ケート・問題の雛型を学ぶ。課題:相互評価用アンケート・問題を作成する。 第6回 相互評価用アンケート問題実施。課題:相互評価用アンケート・問題結果を整理して 歴史的事実を加え,テーマについてのクラスの理解度調査報告書を執筆する。 第7回「調査報告書発表会」 第8回−13回 2つ目のテーマで第2ラウンド作業を行う。 第14週 最終評価用アンケート・記憶確認テストの実施。課題:アンケート・テストの結果整. 理解析と最終評価レポートの作成。. 第15週「最終評価発表会」 成績評価:毎回提出される中間レポートを基礎にして,主に最終レポートにより評価する。 使用テキスト及び参考図書 テキスト:川勝先生の物理授業(中巻,エネルギー・熟・波・光編,. 海鴨社)参考図書:歴史をたどる物理学,ファイマン物理学 ****************************************** 3.授業の結果と評価 光学は改組後の複数カリキュラム時間割不整合のため水曜と金曜の2回講義を行った。「光学. (金曜)」登録27名中23名,「光学(水曜)」3名,「物理学B」21名の学生が毎回の「課題」につ. いて個別・共同「作業」を行った。授業時間内に「シナリオ」「制作過程(授業記録)」をノート パソコン+携帯プロジェクターでスクリーン表示して検討すると共に,「シナリオ集」を編集・. 印刷・配布して相互に評価した。シラバスの内容は教師の力みすぎで内容が多過ぎ,進度も達す ぎる。会話劇創作を導入した4つの授業の全てで実際の授業の進度はこの半分程度で作業は1ラ ウンドが限界であり,最終評価活動は授業時間内にできなかった。最後に自己評価・他のグルー. プの評価を含めて最終レポートを提出させた。「脚本」「制作過程」の評価を含めて編集した最終 レポートはA4サイズで5−10ページ前後になったが,一部の学生は,歴史的基本事項の記述を, インターネット上のWebのページをダウンロードしたもので済ませている。毎週記録し提出す る一言自己評価と最終レポートで提出された自己評価には学習活動への肯定的評価と物理の理解. についての困難が表明されているものが多い。. −36−.

(6) 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1). シナリオ1物理学B完成版シナリオ9606北原光祐(hs9606@cc.hokkyodai.ac.jp) 1.体験として:物理に関する授業に関連した体験,というもので,あまり強い記憶はない のですが,実験器具の精巧さ,美しさ等は非常に印象的なイメージでした。しかし少し応用. 的な理論の解説に入るとすぐに授業についてゆけなくなってしまいました。先生には,「真面 目そうなのに何故宿題をやってこないんだ」と言われたりしましたが,ほとんどわからな かったからでした。もちろんそれは勉強への真剣さが足りなかったということにもなります が。 しかし今回は,当時わからなかった授業を勉強し直し,可能なだけ再構築しようと思. います。 2.シナリオ化:授業期間中にメールにより提出したものとは全く違ったものになってしま いました。会話劇を河野君の「文系」に組み込んで,統合版としました。また,簡単ですが 歴史的な事柄と説明図を組み込みました。 会話劇. B:僕は文系出身だから物理なんて習ってないんだ。 A:僕は理系だったから,物理は一応ならったけど…. B:物理って何か難しいイメージがあるね,どんな勉強をしたの? A:それはね…(Aくんの回想:授業風景) 先生「えーそれではですね,今日は波動第3章,光の分野。光の回折と干渉。ということに なっております。じゃとりあえず,彼の性質を軽く復習してから入ることにしようか。」. A君(ああ,波。あのへんは割とわかるんだよな,たしか。数式とかで言われてもわかんな いけど,センターレベルなら考えれば何となくわかったりするし…). 先生「被ってのは,振動の伝わりであります。これはサイン彼の形状になってましたね。. v=人/T=f人とかやりました。」. A君(なんとなく分かるんだけどなあ。Tとか人とか,それぞれ何のことか覚えてないとこ の式は使えないんだよなあ。) 先生「あと,彼の独立性。二つの同じ変位の波が重なると,倍の高さになる,と。もちろん 逆もあるわけですが。そして,合成によってできる,振動するが進まないタイプの波,これ を定常波といいました。はい,今日はこれ持ってきました。まえにも見せた『すだれ』です。 (といって,動かして定常波を作ってみせる)」(この実験器具の正式な名称はわかりませんで した。). A君(これも,定常波ができる理屈までは図を見ればわかるんだけど。同じカタチの波が互 いにぶつかるとできるんだ。でも厳密には,『振幅』だっけ?ああ,あと『波長』も同じでな. いとダメなのか。でも『定常波をつくる進行彼の波長の1/4に等しい』とか,覚えても視 覚的に理解できないと意味ないよな。と思うんだけど…とか考えてるうちに,ああ,授業が 進んでしまった). 先生「…というのが固定端,自由端の反射の違いでした。じゃあ今日の授業に関連する。彼. の干渉と回折。ここやって本題入りますんで…。」. A君(ここは何となくわかるし,いいや。やっぱ記号のイミ覚えないとダメだよな。ええと, 人‥・つて『ラムダ』って読むんだっけ。これが…波長か。周期がTで,振幅がAで…)−−−. 先生「えー,こんなもんで復習は終わり。このへんは一見簡単ですが,なめてかかると応用 効かなかったりして,やられますんで。ちゃんと数式の方で理解出来るようにしましょう。. はいそれじゃあ今日の本題。光の回折であります。」. ー37−.

(7) 高橋伸幸・横山麻美・乳井英雄. シナリオ2 光学 チーム(近谷). A:高校の時,物理を取っていなかったので光・熟・音・波について特に印象的なものはあ りません。強いて言えば,波に興味があります。 B:僕も高校生の時は力学が嫌いで成績もひどかった。. A:それでどうやって物理の先生になったの? B:二年の時に,流れる水面に雨が落ちてきてできる輪がどうなるか,つて言う質問で頭が 動き出した。 A:それって重要なの?. B:波は伝わるもの「媒質」の上の現象だから,媒質が動いても輪は丸いまま。とても印象 的でずっと覚えている。. A:僕は印象的なことがあってもすぐ忘れてしまうから,覚えていません。君は何か印象的 なことある?. C:鏡で作った箱に光を閉じ込めたら,中でずっと反射していると思う? D:どうやって閉じ込めるのさ。 C:懐中電灯かなんかの光を箱に入れたまま,上の鏡を閉めるのよ。イメージわく。 D:ああ。おう。 C:それで開けた時に,一瞬だけパヤッて光るの。すごいでしょう。. D:お−。そりゃいいや。 C:本当に光るかどうか分からないけど。 A:だめじゃん。 D:音の渡っていうのもあるんだよ。では,音の正体は何だろう。. A:わかりません。 D:結論から言うと,音は波なんだ。今からの実験で分かるよ。目覚し時計を鳴らして容器 に入れても聞こえるね。今から空気を抜くけど,そしたらどうなるんだろう? A:それでも聞こえるんじゃない? D:空気を抜いたら聞こえなくなったね。なぜだろう?. A:空気が無くなったから? D:そう。つまり,音は,空気を伝わって聞こえるんだ。音が空気を震わせて聞こえるんだ。. 水面を波が伝わるようにね。 A:それって,誰が見つけたの? D:ゲーリツケっていう人が,真空ポンプを使って真空にした容器の中で音が伝わらないこ. とを発見したんだ。(場面転換) (ナレーション)歴史的事実:ゲーリッケが,真空ポンプを用いて真空にした容器の中で音が伝 わらないことを発見した。 (ここから,ゲーリッケと弟子達の話に入る). ゲーリッケ=G 弟子=E,F G:とうとう真空ポンプを発明したぞ!I E:先生ついにやりましたね。長い苦労が実りましたね。. −38−.

(8) 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1). 記述の難しさ:図形と数値. 「物理学」の自己評価を見ると,4月中の2回の評価は楽しかった様子で,体験発表ヤシナリオ 化をこなした達成感が表現されている。しかし,連休開けの5月からは,不十分な点を克己努力 しなければという調子が支配的になり,課題の難しさが表現されるようになる。6月に入ると,. 記述が減り,授業に参加できていないことが言葉少なに表現されている。これは,「物理学」の 授業の雰囲気を良く反映している。「物理学」では,課題や体験劇・歴史劇の現象記述に定量的 (数値的)記述を求めたことが早急過ぎた。. 一方,「光学」では当初戸惑いを表現していた学生も,グループで統合した体験劇の「発表」で 生き生きと自己表現し,比較的元気に最終レポートヘと到達することができた。最終レポートに は最終「公演」が時間切れでできなかったことに対する残念な思いが記述されている。もちろん, 新しく学んだことがなかったというような厳しい自己評価も散見される。 数値的記述にこだわってしまった「物理学」と比較して「光学」の授業が円滑であった理由と. して,「光学」での原理的な説明を,「波動の幾何学的な側面」すなわち,「図形」で説明できる 範囲で要求していることが一点目として挙げられる。もうひとつは,早い機会に気の合う同士で グループを作らせて固定化してしまったことが結果的に良い方向に働いたメンバーが多かったよ. うだ。もちろん,グループにうまく入れずに,教師が主導してまとめたグループを作らざるを得 なかったことは問題点として残る。また,授業を数回休んでしまうとグループ作業になじめず, さらなる欠席を誘導することになったと思われる。 式と量:個別性と普遍性. シナリオの一部を枠組みの中に示す。シナリオから分析できる教授・学習上の問題点は有用な. ものが多い。シナリオ1で注目すべきは物理学の「式」における記号の「慣用」が初学者にとっ て大きな困難になっている点である。我々は普遍的な内容を表すためにアルファベットで表象さ れる普通名詞化された物理量を用いる。物理学に慣れた者にとって物理量を慣用的に特定の記号 で表すことは記憶を助け,アルファベットに定義だけでなく具体的イメージと体験的物理量を結. びつけるのに有効である。普通名詞化・単純化された記号で変数を扱ったほうが論理的な関係 (主に比例関係)などが「分かりやすい」という感覚を持っている。しかし,実際は,普遍的な 内容を表すはずの普通名詞化されたアルファベットの定義は非常に狭い学問分野での定義の基で しか使えない。注2) 物理的現象の記述に際しては目前の現象に関わっている物体に固有な名称を冠した固有名詞に 近い変数での記述を心がけることが良い。学習者が固有名詞で表現された現象の現実とモデルと. 式の対応関係に十分なじむことを追求し,単純で「普遍的」な変数に慣れることを望むのはその. 後にするのが良い。物理学や情報数育などのように,「力」や「質量」,「ファイル」や「保存」な どの一般的な名詞を「独自の概念を持つ普通名詞」として多用する分野における概念形成を伴う. 授業では,個々の学生が形成しつつある「概念」=「普通名詞」をそれぞれどのような「固有名 詞」と関連付けて捉えているのか教師が的確に把握するのは難しい。演劇的な活動の中で教える 側と学ぶ側の双方が言葉の使い方に細心の注意をはらうことで,言葉の持っている多義性の中か ら,分野に特有な使い方を確認しあい,良好なコミュニケーションを形成していくことが必要で. ある。. −39−.

(9) 高橋伸幸・横山麻美・乳井英雄. 現象間の距離と関連. 教師の側から見ての判断であるが,授業目標を達成する上で最大の困難となったのは,「授業 目標と自分の体験との距離を会話文で明らかにする」という作業が不十分にしか達成できなかっ. たことである。シナリオ2に示すように,多くの学生は自分の体験した現象と他の現象の関連を 深めることができない。シナリオ2は「水波」「光」「音」の3体験を統合しようとしたもので,. 教師(B)が参加しているが,教え込む形にならないよう,できるだけ学生の発想を優先してい る0教師から出されたシラバスの学習目標(一般目標,行動目標)「(光学)光・熟・音・彼の多 様な現象(中略)を場の重ね合わせ(中略)の作図と計算で処理・解析する(以下略)」に現れ ている「言葉」が記述している「現象」に対する「考えられない考え」を自分の体験劇に組み込. むことができない。他の学生と共同で統合されたシナリオを作るときも単に話題の転換になって. しまう。「言葉」が「わからない」という表現が実際見られるのだが,学生だけでは,「わからな い言葉」と自分の体験との関係(初期位置)を設定できない。 各自の体験からテーマが紋り込まれていくため,「作品テーマ」は自由選択に近い。従来の「光 学」における「仮想生産方式」の「作品テーマ」が過去に体験した「学校での授業」に限定され. る傾向があり,その場合,「作品」に含まれる「真の学習目標」が学生の慣れ親しんでいる内容 (光学では反射・屈折,音響では音速・ドップラー効果等)に限定された。今回も,やはり「学 校での経験」が約半数で残りが学校外の日常生活での体験である。「学校での理科は拒否反応」も 「学校での体験」に含めてであるが。今回,アルバイト先での労働など,数は少ないが多様性が. 増した。しかし,多様な体験は複雑な現象を含む。自由な選択は学生の学習段階を明瞭に示す反 面,高等教育での学習目標への接近が難しい。選択を許した適切な課題提示と,教師に帰還した. 学生の状態評価を,学生の主体的繰り返し学習を保証する継続学習に生かす授業設計が求められ る。このような授業設計として,学習目標と学生の経験との距離を創作演劇として明らかにして 差を締めていくという本論文での手法は,学習目標と体験との関係を詰めていく手続きにおいて,. さらに明確な実例と,それに基づく実施要領が示されなければならない。 学習者が自分の体験を会話形式に直す作業,さらに,歴史的事実との関連を村話形式で考察す る過程を楽しめているかが授業継続の分岐点になる。学習者が作業を楽しめず繰り返さないなら,. 問題点を改善し,改善できない場合は,シナリオを他の「製品」の一部として組みこむ形で「完. 了」させるなど,適切に作業を中断することも必要になる。 4.体験再構成活動継続を支援する仕組み. 体験再構成活動は学習者の学習目標への距離や志向により多様な開始点を持ち,学校教育の終 了時の達成度も多様である。生涯学習の一環として体験再構成活動を継続していくことを考える と,体験の会話劇シナリオ化は非常に時間のかかる作業であり,学習者毎でその速度も大きく異. なる。短期間の集中的なスクーリングでは良好な成果は期待できない。基本的に学校外に学習基 盤を持ちながら,教師や他の学習者との円滑なコミュニケーションに基づく相互的な学習活動が. 必要とされる。このような活動を支援するシステムとしてインターネット上のWebサイトのホー ムページやメーリングリストを活用することが可能である。無料のホームページ開設サービス. など,その容易性は適切な利用法を開発すればコンピュータのエキスパートでなくとも活用でき る。 学士論文指導などで,学生が自身の研究成果をまとめる論文作成も再構成活動のひとつである. ー40−.

(10) 体験の再構成活動の継続を支援する学習システム(1). が,より意識的な再構成活動として,学生間の研究交流をインターネット上の研究室ホームペー ジにおいて行う活動と研究日誌のドラマ化を学生に要請している。ホームページ上での学生間の 研究交流は著者の一人である4年学生(A.Y.)の卒業論文テーマともなっている。(横山2001) そこではインターネットツールの1つである電子掲示板を活用する。 Web上に構築された共有のホームページに各自が作成したシナリオを公開する。自らの情報を シナリオとして発信し,他のゼミメンバーの情報をシナリオから得る。ここでのシナリオとは,. 研究者(学習者)が,その研究の概要,目的から,経過,最終的な結論に至るまでを記述した研 究の記録である。研究開始直後は,その研究をするに至った動機や,概要,方法,最終目標等で ある。研究の進展とともに,教師や他の学生との討議なども会話形式で残しながら過程を記述し 続ける。研究は他の研究成果のエッセンスを得て続けていくものなので,研究過程をシナリオの ように迫った記述は,そこから,研究を始めた動機・結論などに至るまでを詳しく知ることがで き,研究者にとって有用な資料になる。. ゼミの生徒の1人が管理者となりWebの管理・ホームページの更新等をしていく。教師の負 担が軽減され実行可能なレベルになる反面,管理学生の負担が大きく,学生が卒業すると次の管. 理者を養成しなくてはならない。電子掲示板上で学習者と指導者のやり取りがあると,他の受講 者にも公開されているため,教室でのやりとりのような効果が生まれる。メーリングリストと比. 較すると,あらかじめ適切に階層化・グループ化された掲示板を用いることで,書き込まれた情 報が直ちに再利用可能な構造化・関連付けされた文書群となる利点がある。欠点として,掲示板 を見に行く間隔が伸びて,応答が遅れることになった。掲示板への書き込みに対して自動的に広 報するメールの活用が望まれる。. 5.終わりに 「体験の再構成活動」と位置付けられる学生中心の学習方法「学習主題に関わる学生自身の体. 験と学習主題に関する歴史を基にした脚本執筆」を初等的物理学の授業課程に導入した。この手 法は生涯学習を視野に学習者にとって不慣れな概念の学習に際して生じる多様な困難や要求に対 する指導の困難を解析して改善することを目指している。ここでは1)物理学の授業における困難 と概念形成学習における学生中心の学習の必要性,2)脚本執筆を用いた学生中心の学習の戦略と. シラバス,その物理学授業への導入の結果と評価,3)体験再構成活動を学校教育以外の生涯学習 へ展開・継続できるように支援する仕組みを構築する必要性と,インターネットを用いた遠隔学 習の組み込みの可能性を述べた。. この手法は学習内容への導入段階と学習後の見直しにおける学習活動の活性化に効果があった。 未修得の概念と自己の体験との関係を整理していく手法としては,さらに,具体的で有効な進め 方の事例が必要である。 注1)体験の再構成は作文指導の中に既に現れている概念(安河内2000)であるが,ここでは,物理学や 情報科学の専門課程における多用な学習活動に拡張して用いる。 注2)この辺の事情はコンピュータプログラミング言語における変数の階層性との関連で興味深い。コン ピュータプログラミング言語のひとつで比較的少ないトレーニングでWindowsの応用ソフトを作成できる VisualBasicではボタンやラベルなどのオブジェクトと呼ばれるプログラム単位はそれぞれ固有の情報を定め. る変数として固有名詞に相当するプロパティという値を多数持っている。このプロパティはUserFomと呼 ばれるプログラム単位全体の中でどこでも通用する大域的な変数である。我々が良く使う数式や論理関係を. −41−.

(11) 高橋伸幸・横山麻美・乳井英雄. 表すxやyなどは特別に定義しない限りオブジェクトの中でしか有効でない局所的(ローカル)な変数であ る。このような意味で,物理学の定式化に用いられる変数は決して大域的(グローバル)な変数ではない。 (Windows,VisualBasicはMicrosoft社の登録商標). 参考文献. 阿部和厚,「教育の生産性とその評価一学生の参加型授業からみて」. 「高等教育ジャーナル一高等教育と生涯学習−」,3,138−142(1998) 高橋伸幸,乳井英雄,小笠原正明 「情報教育における学生を中心とした授業」. 「高等教育ジャーナル一高等教育と生涯学習−」,5,67−73(1999) 高橋伸幸,乳井英雄,小笠原正明 「情報教育における学生を中心とした授業−2」. 「2000PCConference論文集」,269−270,(2000) 高橋伸幸,「学生参加型授業をどのように作り上げるか」. 「北海道の教育2000」,131−139(合同教育研究全道集会実行委員会,札幌)(2000) 横山麻美,「共同作業によるシナリオ作成を活用したプログラミングの遠隔教育」. 北海道教育大学函館校情報科学課程平成12年度学士論文(2001). 安河内 義己,「書くこと 体験・再構成・自己表現」,近代文芸杜, 「活動単元」による中学校国語科新単元学習(安河内 義己編)(2000). 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要論文(2001). ー42−.

(12)

参照

関連したドキュメント

SVF Migration Tool の動作を制御するための設定を設定ファイルに記述します。Windows 環境 の場合は「SVF Migration Tool の動作設定 (p. 20)」を、UNIX/Linux

自動車や鉄道などの運輸機関は、大都市東京の

・HSE 活動を推進するには、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、造船所で働く全 ての者及び来訪者を HSE 活動の対象とし、HSE

ダウンロードしたファイルを 解凍して自動作成ツール (StartPro2018.exe) を起動します。.

記録表 ワークシート 作品 活動の観察

脅威検出 悪意のある操作や不正な動作を継続的にモニタリングす る脅威検出サービスを導入しています。アカウント侵害の

 「事業活動収支計算書」は、当該年度の活動に対応する事業活動収入および事業活動支出の内容を明らか

 「事業活動収支計算書」は、当該年度の活動に対応する事業活動収入および事業活動支出の内容を明らか