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神奈川県の沿岸地域における陸生クマムシ類(緩歩動物門)の分布について

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Academic year: 2021

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(1)横浜国立大学教育学部 :. 理科教育実習施設研究報告(5). (1989). 27-34. 神奈川県の沿岸地域における陸生クマムシ類. (緩歩動物門)の分布について* 野々垣. Note. 裕之**・蒲生. the Distribution. on. of Some Water-. in the Coastal. Summary:. This. tardigrades,. Echiniscus,. and. fallen. The. samples. gardens,. collected. on.. temples, From. that they. shows. urbanized. were. so. cliffs and study. of bamboo. area,. such. from. as. be widely. GAM6***. coastal. by. affected. 1.. inhabiting. of I(anagawa. region. roadsides,. tardigrades. distributed. of terrestrial. genera. Milnesium,. at 30 stations,. places. these. of four. and. of buildings,. rooftops. Yokohama,. Hhsibius. various. 18 stations, may. Sigeo. and. in the. grass. or. Prefecture. the distribution. with. Macrobiotus,. leaves. shrines,. deals. Tardigrades. of Kanagawa. NoNOGAKI**. report. short. Terrestrial Bears. Region. Hiroyuki. 重男***. in this region. Prefecture.. for example,. forests,. parking-places,. walls,. found.. were. mosses. and. Result. of the in much. common. pollution.. (まじめに. クマムシ類(緩歩動物)は,ほとんど体長1mm以下の小動物であり,節足動物に類縁を もつと考えられている。この類には陸生,海生,淡水生のものなど500種以上が,両極を. 含むあらゆる地域の種々の環境から知られている(Cu宜NOT, MoRIKAWA,. 1962, 1967; NELSON,. 日本産のクマムシ類については,. 1928; RAHM, MATⅢEWS. 1937. 1949;. & MAUCCI,. a,b; RAMAZOTTI. EsAKI,. 1930;. 1983など). (1936-37)/RAHM (1937a,b), HATAI. (1956,. (1951, 1960, 1962, 1965, 1967), SuzuKI (1971,1975a,b)およびUTSUGI 1959), MoRIKAWA (1985)などの研究があるが,日本の陸生クマムシ類についての知見は非常にとぼしい。 HATAI. (1956)はオニクマムシMilnesium. taydt'gradum. Ihyが竹の落葉中にみられる. という。そそこで筆者らはもっばら笹の落葉を対象に調べてみたが,チョウメイクマム *横浜国立大学教育学部理科教育実習施設研究業績15号 Testing **株式会社サカタのタネ,種子検査室(Seed ***横浜国立大学教育学部(Faculty. of Education,. Laboratory,. Yokohama. Sakata. National. 。. Seed Corporation) University).

(2) 28. シ属(Macrobiotus)とヤマクマムシ属(物sibius)のものなどが得られた.. (1985). UTSUGI. は東京都23区内のコケ(主に鮮類)を対象に,これに住む陸生コケムシ類の分布を調べ, 市街地にもトゲクマムシ(Echiniscus),チョウメイクマムシ,ヤマクマムシ,オニクマ ムシ属のものが広く分布し,これらは笹の落葉中よりも多いという。 神奈川県では,まだ広い地域についての陸生クマムシ類の分布は調べられていない。 そこで筆者らは,上記UTSUGI. (1985)の研究などを参考に,. 1985年4月より1986年1月. にわたり,沿岸地域を中心に30地点をえらび,それぞれの地点の森林,道路端,がけ,. ビルの屋上,庭園,神社,寺などで,種々の所に生じているコケ(主に鮮類)と笹の落 莫の資料を採集し,研究室に持帰って調べたところ,そのうちの18地点の資料から陸生 クマムシを得ることができた。 RoMAZZOTTI. (1963, 1965),. RoMAZZOTTI. &. な同定は卵の形態によらねばならず,また,. MAuccI. (1983)の検索表では,種の正確. ScHUSTERetal.. (1980)では,走査型電子. 顕微鏡による形態上の特徴を分類の重要な手掛としており,クマムシ類の多くを短時間 で正確に種の同定を行うのは非常に困難である。従って,筆者らは今回得られたクマム &. シ類を上記のRAMAZZOTTI. MAUCCIの検索表によって屈までの同定を行い。次に示す2. 綱3日4科4属に分類することができた。今回の研究では,これらの陸生クマムシ類の. .出現と分布を確認したのみで,定量的な観察は行っていない。今後この方面の研究の一 助となればと考えここに報告する。. 本稿を草するに当り,経始有益な御助言と御鞭達を下された東京女子医科大学の宇津 木和夫教授,および,種々御助言を寄せられた本学環境科学研究センターの青木淳一教 授に深く感謝申し上げる。また,資料の収集などには本学生物学教室の方々に多大の協 力を頂いた,厚く御礼申し上げる。 2.分類学上の位置と特徴 今回の研究で神奈川県沿岸地域より採集された陸生クマムシ類4属の分類学上の位置 は下記のようである(RAMAZZOTTI Phylum. &. MAUCCI,. Tardigrada. Class. 1983による)。. 緩歩動物門. Heterotardigrada. Order. 異クマムシ綱. Echiniscoides. Family. Echiniscidae 1.. Class. トゲクマムシ目 ヨロイトゲクマムシ科. Echiniscus. トゲクマムシ属. Eutardigrada. Order. Parachela. Family. Macr10biotus. Hypsibiidae 3.. Family. パラケラ目. Macrobiotidae 2.. Family. 真クマムシ綱. Hhsibius. Milnesiidae 4.. Milnesium. チョウメイクマムシ科. チョウメイクマムシ属 ヤマクマムシ科. ヤマタマムシ属 オニクマムシ科. オニクマムシ属.

(3) 29. 図1.トゲクマムシの一種Echiniscus. sp.. 体長500p位,横浜市内の石垣上のコケより採集,体背面はこの常に特有な装甲板で被われている。 (野々垣原図).

(4) 30. 上記4属の主要な特徴は次のようである。 I.トゲクマムシ属(図1) 背面にはこの類に特有な装甲板がある。装甲板は,頭板,肩甲板,胴板,端板および 中板で構成される。頭部には側ひげ,視角,乳頭状突起,内口毛および外口毛がある。 4対の歩脚末端にはそれぞれ同形,同大の4個の爪があり,爪には副鈎がない。第4歩 脚にだけ乳頭状の突起と煉襲がある。辞類に生息している。. 2・チョウメイクマムシ属(図2, A) 背面に装甲がない。頭部には,側ひげ,櫨角,頭部乳頭状突起,内口毛、外口毛など の頭部付属器官を欠く。咽頭部に特有なキチン質の小棒状の楯板がある。それぞれの歩 脚は末端に剛玖 同大の2個の爪をもち,それぞれ主杖と副枝に分かれている。. Phqrynx. Clqw. 図2.真クマム綱(Eutardigrada). 3属の咽頭(pharhynx)と歩脚の爪(claw)の比較. A:チョウメイクマムシMac710biotus. B:ヤマタマムシHhsibius. C:オニクマムシMilnesium. 3.ヤマタマムシ属(図2,. B). 背面に装甲がない。頭部付属器官をもたない。歩脚末端には2個の爪がある。これら 2爪は分枝しているが,後爪の主枝と副杖は完全に分離しており,基部での癒合はみと められない。. 4.オニクマムシ属(図2, C) 背面に装甲がない。頭部は側ひげ,梶角,内口毛と外口毛を欠くが,. 1対の頭部乳頭. 状突起と口の開口部に6個の乳頭状突起をもつ。咽頭は長い梨型をしており,楯板を欠 く,歩脚の末端には2個の爪をもつ, る。. 2爪は何れも同形,同大で主枝と副枝に分れてい.

(5) 31. 3.材料及び方法. 1985年4月より1986年1月までの間に,神奈川県の沿岸地域を中心に,. 30地点(図3) をえらび,これらの地点よりコケ類(主に蘇類)と笹の落葉を種々の箇所(森林,公園 などの庭,神社や寺の境内,道路の端,パーキングエリア,ビルの屋上,塀,がけなど) から採集した。これらの資料はできるだけ深さ5cm程度のところの湿ったものを採集す るように心掛けた。コケ類は紙の袋に,笹の落葉はビール袋にいれて研究室に持帰った。 持帰った資料は採集地点ごとに,笹の落葉は直径2cm,深さ5cm程度のガラス管ビンに, コケ類も同大のプラスチック製の管ビンに入れ,水を八分目程注いで一昼夜放置する。 容器の底に沈澱したデトリタス(detritus,砕層)をピペットで吸いとり,小型シャーレ に移し,これを双眼実体顕微鏡でみてクマムシを探す,みつかったクマムシを更に極細 のピペットで吸いとり,用意したスライド・グラス上に移して,生物顕微鏡で観察した。. 顕微鏡観察に最適な状態のクマムシは,上述の容器内で水につけたまま,更に数日間 放置されたものにあり,これらのなかには水中で窒息仮死状態となっているクマムシが ある。このような状態になった個体では,体が充分伸びていて観察に好都合であった。 プレパラート標本の製作には,クマムシを4%中性ホルマリンで国定し、 SEEALS,. 1979),ガム・クロラールGum-chloralで封入した。. 図3.神奈川県沿岸地域における陸生クマムシ4属の分布 Echiniscus:トゲクマムシ. Mac710biotus:チョウメイクマムシ. Hhsibius:ヤマクマムシ. Milnesium:オニクマムシ. ○●調査地点(●は陸生クマムシの採集された地点) A:コケ類(主に蘇類). B:笹の落葉. (LINCOLN. &.

(6) 32. 4.分布の調査結果と考察 今回の調査の結果から,陸生クマムシ類は神奈川県沿岸の各地に広く分布しているこ. とがみとめられた(図3)。これらクマムシ4属の分布には地域的な著しい特質はみられ なかった。コケ類の1つの資料中にただ1属がみられる場合もあったが,. 4属すべてが. みられることもあり,一般的に,笹の落葉中からよりも多くのクマムシ類がコケ類の資 料中からみいだされることの方が多い傾向がみられた。 (1959)は,. HATAI. 「クマムシの種類が混生する場合,或1種だけが特に多く,他の種. は極めて少ない」と指摘しており,. 「1資料中から,. NELSON(1982)は,. 10あるいわそれ. 以上の種類がみられる」といっている。今回の調査では,定量的な種単位でのデータを 出してないので,はっきりしたことはいえないが,筆者らの感触では,コケの資料につ. (1959)のいう程極端なことはみられないように思われた。. HATAI. いては,. (1959)は,. HATAI. 「オニクマムシ属は三浦半島の東京湾に面した地域より見出される. が,相模湾に接した地域にはみられなく,また,鎌倉,逗子,神武寺山,江の島,三崎, 油壷および長井にはチョウメイクマムシ,ヤマクマムシ,. Dii)hason属の数種が多数生息. していたが,オニクマムシ属のものはみられなかった」と述べている?しかし,今回の 調査では,油壷に近い小網代のコケの資料中からオニクマムシ属のものが得られている。 この事実から笹の落葉とコケに生息するクマムシ類の種類の組成は多少異なるものと思 われる。 今回の神奈川県沿岸地域を中心に行った調査で,種々の汚染を受けている横浜市中心. 部のような,高度に市街地化のすすんだ地域に陸生クマムシ類の上述4属が特に多く集 中して得られたことなど,一般的にみて,. (1985)の東京都内で得た結果ともよ. UTSUGI. く一致する傾向がみとめられた。更に今後も機会を得て,研究をすすめてゆきたいと考 えている。. 参考文献 Cu丘NOT,. L., 1949. Les. EsAKI,. T.. HATAI,. S.. Paris, 6: 39-59. zoologie, Masson, (江崎悌三), 1930.多足類・蜘昧類・岩波講座生物学,岩波書店,東京. (畑井新書司) 1956. on the Japanese Tardigrada (In Japanese, with English. T.,. Sci. Rep.. de. City. Mus.,. R.. ∫.,&. Cambridge. Yokosuka. distribution. English. with. Invertebrate. MATHEWS,. The. 1959.. Japanese, LINCOLN,. Trait6. ,. summary). HATAI,. Tardigrades.. ∫. G. animals. Univ.. S°i. Rep.. twd%'gyladum工わy Yokosuka. Tardigrada. 1979.. collection. Press,. G. B., 1936-1937.. Milnesium. of. summary).. SHEAS,. 1: 1112, 1 pl.. and. p. 69-71.. Tardigrada. from. 1951. Notes. on. Mus.,. (Bear-animals. preservation,. London.. City. in Japan.. Japan.. Nat.. 4: 5-12.. or. water-bears): (Nat. Hist.) and. Brit. Mus.. Peking. (In. Hist.. Bull., ll: 411-. 412. MoRIKAWA,. K.. (森川国康). ,. four. interesting. Echiniscus. (Tardigrada).

(7) 33. from. Annot.. Japan.. Zool.. 丁ap.,24: 32-35.. 森川国康,. 1960.緩歩類:内田編.原色動物大図鑑,第4巻,北隆館,東京.. MoRIKAWA,. K". 1962. Notes. Biol. Res.. 森川国康,. four. on. 丁ap. Antarct.. interesting. Exped.,. E,. ser.. Echiniscus. from. p.4. the Antarctic. region.. 1丁:3-6.. 1965.緩歩綱:岡田他監修.新日本動物図鑑(中),北隆館.東京.. p.329-. 311.. 森川国康, 1967.緩歩動物門:内田編,動物系統分類学. NELSON,. D.R". R.R.. New. York.. of the Tardigrada.. biology. p.295-334. F.W.,. &. invertebrates.. Alan. R.. of freshwater. In: HoRRISON,. p. 363-398.. G., 1937a, A. new. of Tardigrades. ordo. from. the hot. Annot.. of Japan.. springs. Japリ16: 345-352.. zool. RAHM,. biology. (Eds) : Developmental. CowDEN. Liss, RAHM,. 1982. Developmental. 6.中山書店,東京.. Gリ1937b. Insel. Eine. Kyushu,. Zool.. Japan.. RAMAZZOTTI,. G., 1963.. RAMAZZOTTI,. Gリ1965.. Idrobiolリ19: RAMAZZORRI,. Tardigraden-ordnung. neue. Anz.,. Il phylum Il. Quellen. Unzen,. Yon. 65-71.. 120:. Tardigrada.. Mem.. Ital. Soc.. Nat.. 199-210.. 98:. (1 Supplemento).. Tardigrada. phylum. heissen. aus. Mem.. Inst.. Ital.. 101-212.. G., &. MAUCCI. W.,. 1983. Il phylum. Tardigrada.. A. A. GRIGARICK,. &. Inst. Ital. Idrobiol.,. Mem.. 41:1-1012. ScHUSTER,. R. 0., D. R. NELSON, of Eutardigrada.. criteria SuzuKI,. (鈴木. M.. ism.. 1971. An. 1. Colonization. Tokyo, SuzuKI,. 実),. 80:. M.,. 1975a.. Saprobilogical. situation. of pollution,. water. UTSUGI,. 1975b.. In: 1973-74. Lotic. saprobity. K.. analysis. Microsc.. Soc., g9: 284-303. in freshwater. of colonization. along. the. 1980. Systematic. 5 lakes. of the. Mt.. microorgan-. Fuji. Zool.. Mag.. 1911201.. fauna.. M.,. Amer.. 17 stations. crobiota. SuzuKI,. Trams.. D. CHRISTENBERRY,. diagnosis. Fauna. Kwanto. and Block,. Tardigrada. Mem.. (宇津木和夫),. from. of Flora. Tama. River. of the Tama. Ministery the Tama. Inst. Ital ldrobiol., 1985. Urban. the. on. River. and. of Construction.. p.. River. pallanza.. tardigrades. based. with. special. 32: suppl.:. in Tokyo.. Zool.. the. Mi-. its present 125-178. reference. 377-391. S°i., 2: 1006.. to.

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