Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Comparison of gene expression in peri-implant soft
tissue and oral mucosal tissue by microarray
analysis
Author(s)
真壁, 康
Journal
歯科学報, 117(1): 62-63
URL
http://hdl.handle.net/10130/4196
Right
Description
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 近年,インプラント治療は高い成功率を示し,欠損補綴法の一つとして広く用いられている。しかし,イン プラント埋入により形成されるインプラント周囲軟組織は,上皮の連続性が断たれ,炎症などの合併症が発現 する部位であることから,インプラント治療の重要な課題とされている。また,インプラントに関連する合併 症は増加し,インプラント周囲炎のみならず,扁平苔癬や口腔扁平上皮癌などの発症が報告されている。今 後,インプラントを使用する患者が増加する中,インプラント周囲軟組織のリスクファクターの明確化は重要 な課題であると考えられる。しかしながら,インプラント周囲軟組織において,病理組織学的な検討やインプ ラント周囲炎との関連については数多く報告されているものの,インプラント埋入による口腔粘膜組織の変化 や,遺伝子レベルでインプラント周囲軟組織を検討した報告はあまりなされていない。我々は,インプラント 埋入によりインプラント周囲軟組織に特異的に発現する遺伝子が,合併症のリスクに関与するという仮説のも と,ゲノムレベルで遺伝子発現の比較がおこなえるマイクロアレイ法を用いて,インプラント周囲軟組織およ び口腔粘膜組織の遺伝子発現を網羅的に比較し,インプラント周囲軟組織に特異的に発現する遺伝子を検討す ることを目的とした。 2.研 究 方 法 実験動物は,4週齢の S-D 系雄性ラットを用いた。全身麻酔下にて,上顎両側第一臼歯を抜歯し,左側にの み直径1.55mm,長さ4mm のチタン合金製インプラントを即時に埋入した。4週後に実体顕微鏡下にてイン プラント周囲軟組織(PIST)及び,反対側の抜歯窩治癒後の口腔粘膜組織(OMT)を採取し,total RNA を抽出 した。total RNA より One-Cycle 法にてビオチン標識 aRNA を合成し,GeneChipⓇ
Rat Genome 2302.0Array と hybridization した。GeneChip の洗浄・染色およびスキャニング後,GeneSpring GX にて遺伝子発現の比 較・検討を行った。さらに抽出した遺伝子を,定量的 RT-PCR(qRT-PCR)にて発現差を確認し,免疫組織化 学染色によりタンパクレベルでの発現および局在を検討した。
3.研究成績および結論
発現差を示す Fold 値2.0以上を認めた遺伝子数は,合計で1,102個みられ,PIST で down-regulate したもの が352個であったのに対して,up-regulate したものは750個であった。さらに,up-regulate した遺伝子群より 氏 名(本 籍) ま かべ やすし
真
壁
康
(千葉県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2003 号(甲第1244号) 学 位 授 与 の 日 付 平成25年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Comparison of gene expression in peri-implant soft tissue and oral mucosal tissue by microarray analysis
掲 載 雑 誌 名 The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants 第30巻 946−952頁 2015年 論 文 審 査 委 員 (主査) 山本 仁教授 (副査) 井上 孝教授 柴原 孝彦教授 矢島 安朝教授 吉成 正雄教授 歯科学報 Vol.117,No.1(2017) 62 ― 62 ―
各遺伝子の性質や機能を表す用語を用いた Gene Ontology(GO)解析を行った結果,“Response to Stimulus” に関連する遺伝子が最も多く認められた。これらの遺伝子群より Ceacam1,Ifitm1,Muc4 の3遺伝子を抽出 し,qRT-PCR による定量では,マイクロアレイ解析と同様に各遺伝子とも PIST で有意に発現上昇が認めら れた(p<0.01)。また免疫組織化学染色では,いずれも OMT では陽性反応がみられなかったのに対し,PIST では,CEACAM1はインプラント周囲上皮,結合組織に,IFITM1はインプラント周囲上皮内,MUC4は インプラント周囲上皮内および表層に陽性反応がみられた。 Ceacam1は,付着上皮における免疫防御機構に関連するとの報告がされており,PIST においても防御機 構の役割を果す可能性があり,一方で,Ifitm1,Muc4は腫瘍形成に関する報告がされていることから, PIST における腫瘍形成のリスクに影響を及ぼす可能性が示唆された。
本研究の結果より,PIST と OMT では,1,102個の遺伝子の発現変化がみられた。また,Ceacam1,Ifitm
1,Muc4はインプラント周囲軟組織に特異的に発現していることが明らかとなった。 論 文 審 査 の 要 旨 インプラント埋入により形成されるインプラント周囲軟組織は炎症などの合併症が発現する部位であること から,この領域の性質を知ることはインプラント治療を行う上で重要である。本研究はラット上顎第一臼歯部 にインプラントを埋入し,4週後のインプラント周囲軟組織と口腔粘膜組織に発現する遺伝子を網羅的に比較 し,インプラント周囲軟組織に特異的に発現する遺伝子について解析,検討したものである。GeneChipⓇ Rat Genome 2302.0Array により遺伝子発現を比較した結果,インプラント周囲軟組織において発現が変化した 遺伝子は1,102個あり,特に Ceacam1,Ifitm1,Muc4 に発現の上昇がみられた。これらの遺伝子は qRT-PCR に おいても発現が上昇していたばかりでなく,免疫組織化学染色においてもインプラント周囲軟組織に陽性反応 が観察された。Ceacam1は,付着上皮における免疫防御機構に関連するとの報告がされており,インプラン ト周囲軟組織においても防御機構の役割を果す可能性が考えられた。一方 Ifitm1,Muc4は腫瘍形成やアポ トーシスの抑制に関する報告がされていることから,インプラント周囲軟組織における腫瘍形成のリスクに影 響を及ぼす可能性が考えられた。 本審査委員会では,1)対照を口腔粘膜組織とした理由,2)チタン合金を使用した理由,3)組織採取の 方法,4)3つの遺伝子を抽出した理由などについての質問がなされた。これらの質問に対して,1)インプ ラント埋入により形成されるインプラント周囲軟組織は口腔粘膜組織に由来するので,発生由来である口腔粘 膜組織を対照として実験を行った。2)粘膜貫通部を形成するアバットメントはチタン合金製のものも多く, また過去の研究において,サイトカインの発現は純チタンと差はなかったという報告もあるのでチタン合金を 用いた。3)上皮組織と結合組織を含む,骨膜より上方の組織を実体顕微鏡下に採取した。4)本研究では特 異的に発現が上昇した遺伝子に着目し,その中でプライマー設計がなされていないものや,抗体が作成されて いないものなどを除外して3つの遺伝子を抽出したが,今後の研究課題として発現が減少した遺伝子について も検索を行う予定であるとの回答があり,その他の質問に対しても妥当な回答が得られた。また,論文の構成 や表現,図表などの改善が指摘され,訂正および追加が行われた。 以上の結果,本研究で得られた知見は今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値す るものと判定した。 歯科学報 Vol.117,No.1(2017) 63 ― 63 ―