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IRUCAA@TDC : ドイツ語発音教授法に関する考察

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Academic year: 2021

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(1)Title Author(s) Journal URL. ドイツ語発音教授法に関する考察 清水, 真哉 東京歯科大学教養系研究紀要, 25(): 16-21 http://hdl.handle.net/10130/1415. Right. Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/.

(2) ドイツ語発音教授法に関する考察 清水真哉※ 1) 受動的語学学習から能動的語学学習との並立の時代へ 江戸時代の蘭学以来、極東の日本にあっては、異国の言葉の学習では、 それを母語とする生身の人間との接触が限られた中、もたらされた文献を ひたすら記号として解読するという受動的学習が主流である時代が続い た。 しかし航空便の発達などにより、外国語を話す人との直接的な交流が日 常のものとなった環境にあっては、外国語学習のありかたも自ずと変化し てきた。外国の文物を学ぶための西洋諸語から、身近に触れ合う人間同士 のコミュニケーションの道具としての世界諸言語へと語学学習の関心が 移ってきている。学習者の志向にも変化が生じ、一昔前の学生が文法の学 習が終わるのを待ち切れずに読解のテキストに取り掛かったとしたら、今 の学生には民間の語学学校にセカンド・スクールとして通って会話力を高 めたいという傾向が強い。 そうした時代の変化の中では、読解とそのための文法のみに偏った語学 教育は、十分に社会の要請に応えたものとは言い難くなり、口頭での意思 疎通を可能とする教育へと重点が移ってきた。 ただし、いかにオーラル・コミュニケーションの必要性が高まろうとも、 文法学習と読解の修練の必要性がいささかでも減じる訳ではなく、限られ た授業のなかでその両立を図らなくてはならないところに現在の語学教 育の困難がある。 オーラル・コミュニケーションの教育では、拡散しがちな会話の練習に 無限の時間を取るのでなく、根底となる音声に関する理解と実習を核に据 えることが、実効性の高い語学教育につながるものと考えられる。 この稿では、「読む」 「話す」「聞く」に通定する、音声の教育の問題を 考える。. ※. 東京歯科大学独語研究室.

(3) 2) 会話教育と音声教育との区別の必要性 オーラル・コミュニケーションが語学教育の一方の柱となる中で、見過 ごされがちなポイントがあるように思われる。それは会話教育と音声教育 とを区別するという視点である。 会話は言語活動の重要な一側面ではあるが、学校制度の中の語学教育に おいては、それに先立って音声に関する指導が十分なされなくてはならな い。 会話の授業では音声が表に現れるが、語彙、文法、表現などにも意識が 払われ、音声に全ての意識が集中される訳ではない。そのため会話の練習 がなされる以前に、正しい発音のための一応の学習が済んでいることが望 ましい。 一般に語学学習においては、何よりも音声が先立たなくてはならない。 音声教育には語学学習の全てに先立つ要素として、根本的重要性がある。 言葉はまず音声によって成り立つものであり、自宅でテキストを予習する 際にする黙読の段階から、正しい発音が求められている。リスニングのた めにも正しい音の出し方を覚えることは必須である。 会話については、留学や旅行、国内での国際交流など、学校教育の場以 外でも、能力の向上を図っていく機会は存在する。それに対して学校教育 がより責任を感じて果たしていくべき課題として、音声教育があるのでは ないかと考えられる。. 3) 大学での語学教育の発音指導に音声学の基礎を取り入れる意義 学校での語学教育における発音指導では、経験的、体感的指導法が主流 となっている印象がある。 中等教育の課程での英語の授業において、日本語の発音に無い音素につ いては実技的な指導がなされている訳であるが、中学生や高校生に対して は、直接的、経験的、体感的な指導法が実際である場合も多いかと思われ る。 大学においては、抽象的な教育法をとることが容易になり、単に経験 的・体感的に発音を教えるのではなく、音声学に基いて理論的に指導する.

(4) ことが可能になる。 音声の現象は、語学の中の自然科学的要素であり、それを分析的に認識 させること自体に意義がある。大学生にとっては、音声現象、およびその 実際的な発声法について、客観的な認識をすることが可能であるはずであ る。ここに大学の語学教育の一つの意義を見出しうる。 音声学の基礎が学ばれてあれば、仮にまた新たな言語の習得に迫られた 場合でも、学習は容易になっているであろう。 なお、これは大学教育には限らないことであるが、音声学は語学教員養 成課程での必修単位であるべきである。 現役の語学教員についても音声学の研修を受けられる機会を設けるこ とが要請されている。. 4) ドイツ語の音声を習得させる指導の方法論 現在、市販されているドイツ語教材の中にも、あまりに素朴な指導法が 見られることがある。o ウムラウトについて「 「お」の唇で「え」と言う」 といった式の、非論理的な指導法は排除されなくてはならない。このよう な説明は音声学的な分析に基く理解に耐え得ない。あくまで音声学に基く 正確な指導がなされなくてはならない。 4.1) 音声学の基礎を教える 回り道に思えても、音声学の基礎を簡易にではあっても教えることが、 実用的な意味での音韻の習得のためにも近道であると考える。 母音を決定するのは口の開き、舌の位置、唇の形であり、子音について は調音点、調音法、声の有無を押さえれば音が定まるものであるという理 論的な理解をまず得させるべきである。 ドイツ語の母音の習得のためには、とりわけ前舌、後舌、円唇といった 概念が理解される必要がある。子音については調音の位置や調音の方法の 詳細を学んでおくことが習得の前提となる。.

(5) 4.2) 日本語の音声について教える 日本語の音韻についての反省的な認識を持たせることが、音声学を深く 理解していく上で有効である。 日本語の音について音声学的な解説を予め行っておけば、日本語にはな いドイツ語の音を教えるに際しても、調音の位置あるいは方法を同じくす る日本語の別の音を手掛かりに指導することが出来る。 日本語の五十音には、例えば「さ」行と「ざ」行など、音声学的に見て 整合性のない行があるということを認識させることは、音声学的問題への 意識を高めさせることに意義があり、教授法として効果的である。 ドイツ語の音声を学ばせる上でも、一例として挙げると、歯茎および硬 口蓋歯茎を調音点とする閉鎖破裂音、摩擦音、破擦音の区別を認識させる 指導を行っておくことは有益である。. 5) 東京歯科大学におけるドイツ語の発音の授業 筆者の東京歯科大学における一年次の学生に対するドイツ語の授業で は、発音の指導に、通年の授業期間のうちの前期の四回の授業回数を充て ている。内訳は「母音」 「子音」 「綴りと発音の関係」「綴りと発音の関係 の試験」となる。 「母音」と「子音」は実習の形をとり、授業の場で適切 な発音が出来るようになるまで練習するという建前となっている。 5.1). 母音の授業では、まず母音とは何かについての音声学的な解説から. 始める。 それからドイツ語の全ての母音について解説するが、学生に実際に練習 させるのは o のウムラウトと u のウムラウトのみである。学生一人一人に 発音させ、全員ができるようになったことを個々に確認する。 5.2). 子音の授業についても同様である。まず子音とは何かについての音. 声学的な解説を行う。 その後、ドイツ語のすべての子音について解説するが、子音の授業にお いては、学生は全員、英語の既習者であるので、高等学校までの過程で学.

(6) んできたことの確認から入る。具体的には f・v や sch(英語 sh)などの 音である。 ドイツ語の子音で実際に練習させるのは、f・v, sch, ch, r, pf などである。 このうち f・v, r, pf については、全員が正しく発音できるまで個々にチェ ックする。 5.3). 「綴りと発音の関係」については、授業の中で解説と練習を行い、. 二ヶ月ほど後に、別の回の授業の中で試験を行う。 「綴りと発音の関係」の解説と練習をする授業の回では、規則と練習用 の単語を載せたプリントを配布し、一語ずつ学生に発音させて練習してい く。 5.4) 「綴りと発音の関係」の試験は、教室ではなく研究室において、口 頭試問の形態で行っている。受験者は一人ずつ入室し、入室後、一枚の紙 が渡される。その紙にはドイツ語の単語が 15 個、印刷されている。受験 者は口頭でそれを読み上げる。一つの語には一箇所のチェック・ポイント があり、そこが正しく発音出来ていれば正解となる。 以上のような構成で、筆者は東京歯科大学において、音声学を基礎にお いた発音の授業を行っている。 発音の授業での問題点としては、音声の指導が単音に限られ、単語レベ ル、文レベルでの発音の練習にまで至っていないことが挙げられる。限ら れた授業回数の中ではあるが、この問題の克服をする方法を見出すことが 筆者にとっての最大の課題である。.

(7) 参考文献 M.シュービゲル『新版. 音声学入門』大修館書店(邦訳 1973). ベルティル・マルンベリ『改定新版・音声学』白水社(邦訳 1976) 榎本正嗣『日英語 話し言葉の音声学』玉川大学出版部(2000) 川上蓁『日本語音声概説』桜楓社(1977) 斎藤純男『日本語音声学入門』三省堂(1997) 清野智昭『中級ドイツ語のしくみ』白水社(2008) 竹林滋『英語音声学入門』大修館書店(1982) 寺島隆吉『英語にとって「音声」とは何か?』あすなろ社(2000) 牧野武彦『日本人のための英語音声学レッスン』大修館書店(2005) 山田恒夫/ATR 人間情報科学研究所『英語スピーキング科学的上達法』講 談社ブルーバックス(2005) 山田恒夫/ATR 人間情報科学研究所『英語リスニング科学的上達法』講談 社ブルーバックス(2005) 吉島茂/境一三『ドイツ語教授法』三修社(2003).

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