高校生の親友関係と学校適応
—
学校内外の親友との信頼感の比較から
—
Relations between best friendships and school adjustment
— Compared with the trust of best friends in school and outside school —
手 塚 知 子∗ 酒 井 厚†
TEDUKA Tomoko SAKAI Atsushi
要約: 高校生になると、子どもは学校の中だけではなく外にも親友関係を形成するよう になっていく。本研究では、この高校生の学校内外における親友との信頼感に注目し、そ れらが社会的スキルや学校適応にどのように関連するかについて検討を行った。その結 果、学内の親友との信頼感は、直接的に生徒の学校適応に関連することが認められた。一 方で、学外の親友との信頼感は、社会的スキルを介して間接的に生徒の学校適応に関連 していることがわかった。 キーワード: 学内の親友,学外の親友,親友との信頼感,学校適応
I
目的
子どもの友人関係は、小中学校における地域を中心に構成された集団内のものから、高校生になる と、多くの者が高校進学に伴い地元を離れるため、友人関係は学内と学外で異なるようになる。この ような学外の友人関係は、学内の友人関係のように頻繁に会うことはできないが、お互いをよく知っ ていたり、これまでの付合ってきた経験などから、個人が落ち込んだり、不適応な状況に置かれたと きに情緒的な安定を保ったり、支えになったりするのではないかと考えられる。このような学内と学 外の友人関係には違いがあり、こうした学外の親友がいることにより個人が支えられることもある のではないかと思われる。例えば和田(2001)は、大学生を対象とし大学入学以前からの最も親し い友人を旧友人、入学以後の最も親しい友人を新友人として、検討をおこなっている。その結果、前 者は心のつながりができている関係であり、後者では情報や協力そして共行動を求める傾向が高い ことを示し、両者は相補的な機能を持っていると指摘している。また、根本・西尾(2001)は女子大 学生を対象として、学外の親友と学内の親友の自己開示の程度の比較をおこなっている。その結果、 学外の親友への自己開示のほうが学内の親友に対するよりも高いことを示している。だが、大学生活 の満足度には、学内の親友への自己開示の高さが関係していることを指摘している。しかし、これら の研究では大学生が対象であるものが多く、高校生について調査されたものは、まだ少ない。 落合・佐藤(1996)は高校生の友人関係を、中学校でみられる一緒にいる仲間としての友人関係か ら、大学生の本音を出して心をうちあけて話ができる、互いに分かり合えるような付き合いになる 大きな転換期であると指摘している。高校生の友人関係は、このように大学生や中学生の友人関係 とは異なることが予想される。そこで本研究では、高校生を対象として考えたい。青年期中期にあ る高校生にとって、友人関係は発達的・社会的に大きな意味を持つ。松井(1990)によると、青年期 の友人関係は精神的な健康を維持し、自我を支え、対人的スキルを学習させ、生き方の指標を与え るモデルになっている、と指摘される。さらに、こうした友人関係の機能に支えられて青少年は学校 ∗大学院教育学研究科学生, †学校教育講座や社会に適応し、社会化を進めているということが示唆される。従来より、友人関係が高校生の学校 適応に関して重要な位置を占めていることが指摘される。だが、高校生の友人関係には学内のみな らず学外の友人関係も考えられ、これら学外の友人関係のもつ意味は、まだ十分に検討されていな いのではないかと思われる。また友人関係のなかでも、特に親友というのは個人にとって大きな存 在といえ、重要他者となるだろう。大学生の親友関係について、友人関係との比較・検討をおこなっ た山田(2004)によると、その関係の深さは友人よりも親友の方が深いかかわりであることが示され ている。そのような親友関係は、高校生の学校適応と密接に関わることが考えられる。酒井・菅原・ 眞榮城・菅原・北村(2002)によると、中学生の親および親友との信頼関係と学校適応について、そ の親友との信頼感の良好さがネガティブな学校適応の要素である「不安な気分」や「孤立傾向」の 低さと関連するなど、親友との信頼感の高さが学校適応感に与える影響についての指摘をしている。 そこで本研究でも、高校生の学校適応に関連する親友関係の要因として、親友との信頼感に着目し、 検討をおこなう。 さらに、青年の学校への適応に関して社会的スキルがその適応を促すのではないかと考えられる。 社会的スキルと学校適応との関連についての研究も多く(例えば、飯田・石隈 2001;戸ヶ崎・坂野 1997)、社会的スキルの高さが学校適応に良好にはたらくことが考えられる。そこで本研究では、親 友との信頼感が対人関係や困難な状況下で適応的な反応ができる、個人の社会的スキルを支えるこ とによって、学校適応が良好になるのではないかという仮説を、学内と学外の親友との信頼感に着目 して検討を行いたい。 以上より本研究では高校生の親友関係を学内外の親友に区別し、それらが学校適応にどのように 関係するのかについて、学校内外の親友との信頼感と社会的スキルの観点から検討を行うことを目 的とする。
II
方法
1
対象者
山梨県内の公立高等学校の 1 年生 274 名(男子 95 名、女子 179 名)を対象とした。調査は 2004 年 11 月下旬から 12 月上旬にかけて、質問紙により行った。2
調査項目
(1) 学内と学外の親友関係の実態に関する項目 対象者の親友関係を捉えるため、学校内外における親友の有無や親友の性別、それら親友とのつき あいの長さを尋ねた。学校外の親友については、その親友と知り合ったきっかけ、どのくらいの間隔 で会うのかについても尋ねた。 (2) 学内と学外の親友との信頼感に関する項目 酒井 (2005) による青年期版対人信頼感尺度を使用した。この尺度は青年期における重要な他者と の信頼感を、その相手から信頼されていると思えるかという「信頼されてる感」と自分は相手を信頼 しているかという「信頼している感」の 2 つの下位尺度より構成されている。本調査では重要な他者を学内外の親友とし、同項目により学内の親友と学外の親友の信頼感を測定した。酒井の下位尺度に 従い本調査でも信頼感尺度 14 項目を「信頼されてる感」7 項目と「信頼してる感」7 項目にそれぞれ 分類した。尺度の信頼性を示す α 係数は、学内の親友との信頼されてる感 α = .91、信頼している感 α = .93 であり、学外の親友との信頼されてる感は α = .89、信頼している感は α = .89、であった。 今回は、学校内の親友との「信頼している感」と「信頼されてる感」の得点の合計を学内の親友との 信頼感得点とし、同様に学校外の親友についても、その得点の合計を学外の親友との信頼感得点と した。 (3) 学校適応に関する項目 内藤・浅川・高瀬・古川・小泉 (1987) により作成された高校生用学校環境適応感尺度を使用した。 今回は、オリジナル尺度の「友人関係」因子を除いて検討をおこなった。本研究において主因子法に より因子分析し、Varimax 回転を行ったところ、オリジナル尺度と同様の 5 つの因子を抽出した。第 1 因子は、“ 規則に対して不満はない ”“ 学校の規則を真面目に守っている ”に代表される 6 項目から なり、「規則への態度」因子であった。第 2 因子は、“ 将来なりたい職業を決めている ”“ 自分の進路 に希望を持っている ”に代表される 6 項目からなり、「進路意識」因子であった。第 3 因子は、“ この 学校の先生を信頼している ”“ 何でも相談できる先生がいる ”に代表される 6 項目からなり、「教師関 係」因子であった。第 4 因子は、“ 勉強が楽しいと思う ”“ 授業をよく理解している ”に代表される 6 項目からなり、「学習意欲」因子であった。第 5 因子は、“ クラブ・HR 活動や行事に積極的である ” “ HR や行事には協力的である ”に代表される 6 項目からなり、「特別活動への態度」因子の 5 因子で あった。これらの信頼性を示すα係数は、規則への態度がα=.86、進路意識がα=.88、教師関係が α=.84、学習意欲がα=.84、特別活動への態度がα=.85 であった。本研究では、これらの各因子を 学校適応に関する生活面での適応の指標とした。 (4) 社会的スキルに関する項目
菊池 (1988) の Kiss-18(Kikuchi ’s Scale of Social Skills:18items) を使用した。この尺度は対人関係に おける困難な状況下におかれたときに、相手から肯定的な反応をもらい、否定的な反応を避けること ができるスキルとして項目が構成されている。本研究において主因子法により因子分析し、Varimax 回転を行ったところ、3 因子を抽出した。第 1 因子は、“ 他人が話しているところに気軽に参加でき る ”“ 自分の感情や気持ちを素直に表現できる ”に代表される 7 項目からなり、「コミュニケーショ ン能力」因子であった。第 2 因子は、“ こわさや恐ろしさを感じたときにそれをうまく処理できる ” “ 気まずいことがあった相手と上手に和解できる ”に代表される 5 項目からなり、「調和能力」因子 であった。第 3 因子は、“ あちこちから矛盾した話が伝わってきても、うまく処理できる ”“ 相手か ら非難されたときにも、それをうまく片付けることができる ”に代表される 6 項目からなり、「トラ ブルの処理」因子であった。これらの信頼性を示すα係数は、「コミュニケーション能力」因子がα =.85,「調和能力」因子がα=.83,「トラブルの処理」因子がα=.81 であった。 (5) 抑うつ感に関する項目 生徒の学校での気分を内面的な学校適応の指標と考え、Birleson の子ども用抑うつ自己評価尺度 (Depression Self-Rating Scale for Children;DSRS)の日本語版(村田・清水・森・大島,1996)を
使用した。項目は、最近 1 週間の気分について尋ねる内容であり、“ 泣きたいような気がする ”“ 逃げ 出したいような気がする ”などに代表される 18 項目からなり、得点が高いほど抑うつ感が高いと考 えられる。
III
結果
1
学内と学外の親友関係の実態
現在通う高校に親友がいる生徒は 212 名(77.4 %)であり、その内訳は男子が 69 名(72.6 %)、女 子が 143 名(79.9 %)であった。χ2検定の結果、学内の親友の有無について男女差はみられなかっ た (χ2 = 0.17, df = 1, p > .05)。学内の親友がいる生徒に対して、その親友の人数を尋ねたところ、 最も多かったのは 3 人であり(43 名;22.5 %)、次に多かったのは 1 人(37 名;19.4 %)、2 人とす る生徒も 26 名(13.6 %)いた。一方で、学外に親友(学校内の親友以外)がいる生徒は 250 名 (91.2 %) であり、その内訳は男子が 82 名 (86.3 %)、女子が 168 名 (93.9 %) であった。学外の親友の有無 には男女差がみられ、男子の方が女子に比べ学外に親友がいない者が多かった (χ2 = 4.41, df = 1, p < .05)。また学外の親友の人数を尋ねたところ、最も多かったのは 2 人であり(49 名;20.9 %)、 次に多かったのは 1 人(45 名;19.2 %)、3 人とする生徒も 41 名(17.5 %)いた。学内の親友および 学外の親友の人数は 1∼3 人という生徒が多いことが示された。 次に、親友との付き合いの長さについて、学内と学外の親友それぞれについて尋ねた( 表 1 )。複 数の親友がいる場合は、そのなかで最も親しいと思う相手について尋ねた。 表 1 学内の親友及び学外の親友との付き合いの長さ 期間 人数 3 年以上前から 65 学内親友 2 年から 1 年半くらい 14 付き合いの 1 年くらい 9 長さ 入学ころから 83 半年くらい 31 3 から 1ヶ月くらい 6 期間 人数 5 年以上前から 112 学外親友 4 年から 3 年くらい 82 付き合いの 2 年から 1 年半くらい 32 長さ 1 年くらい 11 半年くらい 1 3 から 1ヶ月くらい 1 その結果、学内の親友とは入学ころからの付き合いである生徒が最も多く認められた。しかし、入 学以前からの付き合いである者も多く、特に男子では入学以前からの付き合いの者が女子よりも有 意に多く、女子では入学以後からの付き合いが多い傾向であることがわかった(χ2 = 18.13, df = 1 , p < .001)。また、学外の親友との付き合いの長さは、およそ半数が 5 年以上前からであり、知り合ったきっかけは 9 割の生徒が小学校・中学校であった。親友と会う間隔について尋ねたところ、月 に一回以上の者が最も多い。次に多かったのは、1 週間に1回以上で 43 名(17.3 %)であった。し かし、ほとんど会わないという生徒も 37 名(14.9 %)いた。 親友の性別は、学内の親友では同性のみが 170 名(79.8 %)、異性のみが 2 名(0.9 %)、両方いる が 41 名(19.2 %)であった。一方、学外の親友でも同性のみが 172 名(68.8 %)、異性のみが 1 名 (0.4 %)、両方いるが 77 名(30.8 %)であった。 学内外の親友の有無の組み合わせは、“ 学内いる・学外いる ”が 203 名(74.1 %)、“ 学内いる・学 外いない ”が 9 名(3.3 %)、“ 学内いない・学外いる ”が 47 名(17.2 %)、“ 学内いない・学外いな い ”が 15 名(5.5 %)であった。
2
学内の親友との信頼感と学外の親友との信頼感の比較
学内と学外の親友によって信頼感に差があるかを検討するため、両方に親友のいる 203 名を対象 に、対応のある t 検定を行った( 表 2 )。その結果、学内よりも学外の親友に対しての方が信頼感得 点が有意に高かった(t = 2.00 , p < .05)。下位尺度ごとに検討を行ったところ、信頼している感で は、両者に差は認められなかったが (t = 1.39, n.s.)、信頼されてる感では、学外の親友の方が有意に 高い得点であった (t = 2.66, p < .05)。 つぎに、学内と学外の親友との信頼感の男女差について検討した ( 表 3 )。その結果、女子の方が、 学内の親友との信頼感得点が有意に高かった (t = 2.13, p < .05)。下位尺度ごとに検討を行ったとこ ろ、信頼している感で女子のほうが、学内 (t = 3.67, p < .001) と学外 (t = 3.05, p < .001) でともに 有意に高い得点であった。 表 2 学内の親友との信頼感と学外の親友との信頼感の比較 学内の親友 学外の親友 平均 (SD)N = 203 平均 (SD)N = 203 t 値 親友との信頼感 55.61(8.53) 56.80(8.63) 2.00 * 信頼している感 29.33(4.59) 29.78(4.50) 1.39 n.s. 信頼されてる感 26.26(4.51) 26.94(4.73) 2.26 * *p < .05 表 3 学内の親友との信頼感と学外の親友との信頼感の男女差 男子 女子 平均 (SD)N = 63 平均 (SD)N = 140 t 値 学内の親友との信頼感 53.38(10.12) 56.48(7.64) 2.13 * 信頼している感 27.35(5.46) 30.18(3.92) 3.67 *** 学外の親友との信頼感 55.11(9.82) 57.34(7.96) 1.69 n.s. 信頼している感 28.26(4.90) 30.35(4.25) 3.05 ** *p < .05,**p < .01,***p < .0013
学内と学外の親友との信頼感および社会的スキルの学校適応との関連
学校内外の親友との信頼感の学校適応との関連を検討するため、以下の分析では学内と学外の両 方に、親友のいる生徒のうち信頼感および学校適応の各尺度に記入もれのなかった 185 名を対象と した。信頼感尺度得点について、その平均値を基準に学内の親友との信頼感 H 群・L 群、学外の親 友との信頼感 H 群・L 群にそれぞれわけた。学内の親友との信頼感 2 水準(H 群・L 群)×学外の親 友との信頼感 2 水準(H 群・L 群)を独立変数、学校適応の各項目を従属変数とする 2 要因の分散分 析を行った。その結果、「進路意識」「教師関係」「特別活動への態度」および「抑うつ感」に学内の 親友との信頼感に主効果が認められた(進路:F (1, 179) = 10.26, p < .01, 教師:F (1, 177) = 5.80, p < .05, 特別活動:F (1, 177) = 4.90, p < .05, 抑うつ:F (1, 179) = 15.77, p < .001)( 表 4 )。だが一 方、学外の親友との信頼感 H・L は学校適応に関連しないことが示された。 表 4 学内の親友および学外の親友との信頼感 H 群 · 信頼感 L 群の学校適応感得点の記述統計 学内の親友 信頼感 H 群 信頼感 L 群 学外の親友 信頼感 H 群 信頼感 L 群 信頼感 H 群 信頼感 L 群 平均 (SD)N = 78 平均 (SD)N = 27 平均 (SD)N = 25 平均 (SD)N = 55 進路意識 22.01(5.06) 22.50(4.49) 19.76(5.34) 19.52(4.75) 教師関係 17.36(5.14) 17.46(4.84) 14.72(6.19) 16.09(4.24) 特別活動への態度 19.60(5.62) 20.81(4.55) 18.04(4.48) 18.74(3.87) 抑うつ感 12.07(5.21) 11.56(4.64) 15.28(6.41) 15.21(5.04) 次に、学内の親友との信頼感および学外の親友との信頼感が、どのように学校適応と関連するかに ついて、社会的スキルに着目し検討を行った。親友との信頼感が、個人の社会的スキルを支え、その 社会的スキルが高いことにより、学校適応も良好になるのではないか、という仮説のもとパス解析を 行った。はじめに、学校適応の各項目と社会的スキル、学内および学外の親友との信頼感の相関をそ れぞれ求めたところ、男女で相関に違いが認められたため、以後の検討では男女別に分析を行った。 まず、学内の親友との信頼感を独立変数、社会的スキルの各項目を従属変数とする分析を行った。次 に学内の親友との信頼感と、社会的スキルを独立変数、学校適応の各項目を従属変数とする分析を男 女別にそれぞれ行った。また、同様の手順により学外の親友との信頼感についても分析を行った。 まず、男子のパス解析の結果を学内の親友との信頼感と、学外の親友との信頼感ごとに示す(学内 の親友との信頼感 図 1 ;学外の親友との信頼感 図 2 )。パス解析の結果、全体として学内と学外の 親友との信頼感は、社会的スキルのコミュニケーション能力とトラブルの処理の高さを有意に予測し ていた。さらに、コミュニケーション能力の高さが抑うつ感の低さを、トラブルの処理の高さが進路 意識の高さを予測していた。だが一方で、学内の親友との信頼感の高さは社会的スキルを介さず直接 的に進路意識と学習意欲に関連することが示された。 次に、女子のパス解析の結果を学内の親友との信頼感と、学外親友との信頼感ごとに示す(学内の 親友との信頼感 図 3 ;学外の親友との信頼感 図 4 )。パス解析の結果、全体として学内の親友と学 外の親友との信頼感は社会的スキルのコミュニケーション能力や調和能力、トラブルの処理の高さ を有意に予測していた。また、トラブルの処理の高さが学習意欲、規則への態度、進路意識、教師関 係、特別活動への態度の高さを、それぞれ有意に予測していた。さらに女子の場合では、学外の親友 との信頼感の高さが調和能力の高さを有意に予測し、学習意欲に関連していた。また、学内の親友と の信頼感の高さは、コミュニケーション能力を介さずに抑うつ感の低さを有意に予測することが認められた。 .48 .34 (R2 =.23 (R2 =.12 -.58 (R2 =.22 .53 (R2 =.37 (R2 =.41 !" #$% .28 -.33 図 1 学内の親友との信頼感と社会的スキルおよび学校適応との関連(男子) 図中、数値は標準偏回帰係数を示す。() 内は決定係数。*p < .05, **p < .01, ***p < .001 (以下、 図 2 , 図 3 , 図 4 も同様) ! .40""" .23" -.52"" .48""" (R2 =.16"""# (R2 =.05"# (R2 =.17""# (R2 =.34"""# 図 2 学外の親友との信頼感と社会的スキルおよび学校適応との関連 (男子)
!"# $%&' ()*+ ,-./ 01 -.29222 .47222 .34222 (R2 =.222223 (R2 =.112223 .31222 (R2 =.102223 (R2 =.182223 .40222 .3922 .44222 .252 .3222 (R2 =.162223 (R2 =.11223 (R2 =.222223 (R2 =.162223 (R2 =.182223 図 3 学内の親友との信頼感と社会的スキルおよび学校適応との関連 (女子) ! "#$% &'() *+ ,-. /01 .32222 .2422 .2722 (R2 =.102223 (R2 =.06223 (R2 =.07223 -.252 .222 .35222 .38222 .4622 .2622 .2622 (R2 =.132223 (R2 =.162223 (R2 =.10223 (R2 =.232223 (R2 =.202223 (R2 =.172223 図 4 学外の親友との信頼感と社会的スキルおよび学校適応との関連 (女子)
IV
考察
1
学内と学外の親友関係の実態
高校生の親友関係について、学校の内外という視点から調査を行った。その結果、77.4 %の生徒に 学内の親友がおり、91.2 %の生徒に学外に親友のいることが認められ、また親友の人数は学内と学外ともに、1∼3 人という生徒が多いことがわかった。このことから、学内のみならず学外にも親友関 係が存在しており、高校生はこれら学内と学外の親友とのかかわりを通して発達していくのではない かと思われる。本研究における、学内の親友関係の特徴として、多くの生徒がその親友とは入学以後 からの付き合いであるが、なかには入学以前からのものもいる。また学外の親友関係の特徴として は、5 年以上前からの付き合いのものが多く、知り合ったきっかけは小中学校が多い。またその親友 と会う頻度は、月に一回以上など、学内の親友に比べて少ないといえる。
2
学内の親友との信頼感と学外の親友との信頼感の比較
学内と学外の親友との信頼感を比較したところ、学内よりも学外の親友に対しての方が信頼感得 点が有意に高かった。このことは、学外の親友との関係の方が長いことが考えられるが、また学外の 親友との方が信頼感といった情緒面では学外の親友の及ぼす影響が大きいことも考えられる。和田 (2001)の指摘によると、自己向上や真正さ、自己開示を旧友人とは重視する一方で、親友人には情 報、協力、共行動をより求めることが示されている。したがって、学外の親友に対してより情緒的な 面に関わる、信頼感が高かったのかもしれない。また、下位尺度を検討すると「信頼されてる感」が 学外の親友とのあいだで高いことが認められた。これは、これまでの付き合いの経験から「信頼され てる」という情緒的な安定感があるのかもしれない。一方で「信頼している感」には差はみられない ことから、「信頼している感」は親友関係においては、学内および学外の親友との関係において重要 なものとなっていることが考えられる。 次に、学内と学外の親友との信頼感における男女差を検討したところ、女子の方が学内および学外 でともに高い得点であった。従来より、女子は友人との信頼感を男子よりも感じていることが示され ており(榎本,1999)、また女子は友人と密着した関係をもち、情緒的で通じ合うことを重視するこ とも指摘されている(長沼,落合 1998:J. コールマン,L. ヘンドリー,2003)。これらから、女子で は信頼感を中心としてその関係維持をはかっていることも考えられるのかもしれない。また、下位尺 度を検討すると「信頼してる感」において男女差があることが認められる。女子は早い段階から自分 のプライベートな情報や感情を提示し合い、相互の内面的世界への関心を示すことが指摘されてお り(大坊・奥田,1996)、このような「信頼している感」をもとに、お互いに自己開示をはかってい くことによって女子では親友と深く結びついていることも考えられる。また、そのような関係にある ことから「信頼している感」が女子で高いのかもしれない、とも思われる。3
学内と学外の親友との信頼感と社会的スキルの学校適応との関連
親友との信頼感について、その高低が学校適応に関連するか検討したところ、学内の親友との信頼 感の高さが学校適応の「進路意識」や「教師関係」「特別活動への態度」を高め、「抑うつ感」を低下 させることがわかった。これらの結果から、親友との信頼感の学校適応との関連をより詳細に検討す るために、社会的スキルの視点を含め、学内と学外の親友との信頼感それぞれについてパス解析を 行った。これらの結果から、まず男子の場合、学内と学外の親友との信頼感が高いとき、人との関係 に積極的になり、個人の抑うつ感は低下することが考えられる。また女子の場合にも、学外の親友と の信頼感が高いときに、人との関係に積極的な態度で臨めるようになるコミュニケーション能力が 高まることによって、抑うつ感が低下することが考えられる。だが、女子の場合には、学内の親友と の信頼感は直接的に抑うつ感を低下させている。つまり、女子にとって信頼できる親友が学校にいる ということが学校適応にとって重要であるということなのかもしれない。これは従来より、高校生の女子では友だちを相談相手とするような親密な関係であるといわれ(長沼・落合,1998)、また高校 生女子では、学校生活を安心して過ごすためにグループを作ることが指摘されることからも(佐藤, 1995)、女子にとって学内の親友という存在がより重要な意味をもち、学校適応と密接に関わってい ることが考えられる。 また、男子では学外の親友との信頼感の高さが、何か問題があるときに上手く対処できるといった トラブルの処理に関連し進路意識を高めている。しかし、学内の親友との信頼感は直接、進路意識 を高め、また学習意欲を低下させていた。このことから、男子の場合、信頼できる親友とは一緒に遊 んだり競い合ったりすることを通して、自己を知り目標を見つけ、それにむかっていくことが考えら れる。そのため、信頼できる親友の存在が進路意識と関わっているのかもしれない。そして、それは 学外と学内の親友との信頼感の高さが、トラブルの処理の高さと関連し進路意識を高めるのと同時 に、学内に信頼できる親友がいることが、重要であるということがうかがえる。しかし、学内の親友 との信頼感の高さは“ 勉強が楽しい ”といった学習意欲を低下させる面もあり、学内の親友との信頼 感が高い場合、学習よりも親友との関係の方に、意識が向いている可能性も考えられる。 これらの結果から、学内の親友との信頼感は直接的に生徒を支えたり、影響を与えていくものであ るが、学校外の親友との信頼感は、間接的に社会的スキルを向上させることによって、生徒が学校生 活を送っていくのを支えていることが考えられる。また、学外の親友との信頼感があることが生徒の 自信となり、学校適応を促しているのかもしれない。本研究は横断的なものであり、これから縦断的 に調査をすることによって、これらの因果関係などについてもより詳細に検討していく必要があるだ ろう。
参考文献
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[10] 松井豊, 1990「友人関係の機能」斉藤耕二・菊池章夫(編)「社会化の心理学ハンドブック —人 間形成と社会と文化—」川島書店. [11] 村田豊久・清水亜紀・森陽二郎・大島祥子, 1996, 「学校における子どものうつ病 —Birleson の 小児期うつ病スケールからの検討」, 最新精神医学, 1 巻, 2 号, pp.131–138. [12] 落合良行・佐藤有耕, 1996, 「青年期における友達とのつきあい方の発達的変化」, 教育心理学 研究, 第 44 巻, 第 1 号, pp.55–65. [13] 佐藤有耕, 1995, 「高校生女子が学校生活においてグループに所属する理由の分析」神戸大学発 達科学部研究紀要, 第 3 巻, 第 1 号,pp.11–20. [14] 酒井厚, 2005, 「対人的信頼感の発達:児童期から青年期へ—重要な他者間での信頼すること・ 信頼されること」, 川島書店. [15] 酒井厚・菅原ますみ・眞榮城和美・菅原健介・北村俊則, 2002, 「中学生の親および親友との信 頼関係と学校適応」, 教育心理学研究, 第 50 巻, 第 1 号, pp.12–22. [16] 戸ヶ崎泰子・坂野雄二, 1997, 「母親の養育態度が小学生の社会的スキルと学校適応におよぼす 影響 —積極的拒否型の養育態度の観点から」, 教育心理学研究, 第 45 巻, 第 2 号, pp.173–182. [17] 山田涼子, 2004, 「大学生の親友関係に関する一考察 — 性差による検討を中心として —」, 山 梨大学教育人間科学部学校教育課程発達教育コース卒業論文. [18] 和田実, 2001, 「性,物理的距離が新旧の同性友人関係に及ぼす影響」, 心理学研究, 第 72 巻, 第 3 号, pp.186–194.
付表
本研究で使用した変数間の相関(男子) 学外 · 信頼感 コミュニケーション 調和能力 トラブル 抑うつ感 規則 進路 教師 学習 特別活動 学校内 · 信頼感 .58*** .48*** .22 .34** -.30* .12 .46*** .10 -.26* .15 学校外 · 信頼感 - .40*** .20 .23* -.10 -.08 .29** .19 -.22* .00 コミュニケーション能力 - .74*** .67*** -.43*** .13 .45*** .38*** .16 .36*** 調和能力 - .64*** -.24* .28** .35*** .42*** .45*** .36*** トラブルの処理 - -.27** .19 .56*** .31** .31** .38*** 抑うつ感 - -.05 -.24* -.20 -.07 -.30** 規則態度 - .21* .38*** .53*** .46*** 進路意識 - .27** .19 .22* 教師関係 - .59*** .41*** 学習意欲 - .42*** 特別活動 -*p < .05, *-*p < .01, **-*p < .001本研究で使用した変数間の相関(女子) 学外 · 信頼感 コミュニケーション 調和能力 トラブル 抑うつ感 規則 進路 教師 学習 特別活動 学校内 · 信頼感 .52*** .47*** .34*** .31*** -.37*** -.02 .12 .21* .06 .10 学校外 · 信頼感 - .32*** .24** .27** -.12 .01 .16* .13 .08 .09 コミュニケーション能力 - .68*** .57*** -.31*** .02 .29*** .35*** .18* .31*** 調和能力 - .59*** -.27*** .08 .34*** .33*** .33*** .37*** トラブルの処理 - -.28*** .29*** .47*** .37*** .38*** .42*** 抑うつ感 - .00 -.14 -.11 -.14 -.17* 規則態度 - .29*** .48*** .56*** .41*** 進路意識 - .43*** .42*** .39*** 教師関係 - .46*** .50*** 学習意欲 - .48*** 特別活動 -*p < .05, *-*p < .01, **-*p < .001