電流雑音測定における電極雑音の影響
橋口住久
吉岡智恒
(昭和55年8:月29日受理)Effect of the Electrode Noise in Current Noise Measurement
SumihisaHASHIGUCHI TomonoriYOSHIOKA Abstract The effect of noise generated at electrodes on current noise measurements are discussed. The internal resistance of a current supply necessary to prevent bad influence of electrode noise is determined from the measured noise levels in 2−electrode and 4−electrode con丘gu− rations. Amethod is presented to determine the electrode resistance and capacitance fro皿thermal noise measurments. 半導体の1/f雑音 金属や半導体に電流を流したときに,電圧のゆらぎ が観測される。定電流でこれらの素子を駆動している とき,電圧のゆらぎのスペクトルは,周波数に逆比例 し,1∠fゆらぎともいわれている。このゆらぎは,素 子の抵抗ゆらぎによるもので,定電圧を印加したとき には,電流のゆらぎが1/fスペクトルとして観測さ れる。このゆらぎについて,Hoogeは金属,半導体 についてつぎの実験式を提案した1)。<4fR2>一く響〉一昔与 (・)
ここで,<dR2>/R2,<d V2>/V2は,抵抗およ び電圧の相対ゆらぎの平均値,Nはゆらぎに寄与す る総キャリア数,fは測定周波数, dfは帯域幅,α は定数であり,Hoogeはデータの集計の結果,最適 値として2 × IO”3としている。 材料によるαの値のちがいや,温度によるαの値 の変化など,1/fゆらぎの測定結果としてαの値の 比較ということは有効であり,重要なものである。α を決定するためには,Nと<dV2>/V2を正確に求 めることが必要である。Nは形状とキャリア密度か ら算出される。<4γ2>/V2の測定では,試料に検 出端子と駆動端子が必要である。試料のゆらぎの測定 では,どちらの端子のゆらぎもじゅうぶんに小さくな くてはならない。本論文では,主に半導体(n形Si) について,検出端子雑音の大きさとその低雑音化の試 みについてのべる。 電極での雑音 ゆらぎの測定方法としては,4端子法と2端子法が ある。検出端子と駆動端子をべつべつにしたものが4 端子法であり,共有しているものが2端子法である。 それぞれの方法について,電極での雑音のおよぼす影 響についてのべる。2端子法
試料の電圧ゆらぎを測定するときには,直列に試料 の抵抗値の10倍以上の抵抗を入れて,試料を定電流駆 動する。このとき,電源および直列に入れる抵抗は低 雑音のものを用いる。図一1(a)に,2端子法の測定回 路を,図(b)に等価回路を示す。ここで・rsは試料 の抵抗,r・1, r,2は電極部分の抵抗, Eは電源電圧で ある。r,1+rs+r,2=rとおくと端子電圧VとそのゆらぎdVは,
E v+d・v==R+r+dr(r+dr)V2 r2 となる。 <d・v2>_<d・r2> 一ER三。(・+∠乙 ≒v(・+斜(・一☆) となる。したがって <d V2>一<d r2>+<d r2> (R+r)2 )/(・+d「
R十r
) (2) (3) R>rであるので右辺第2項を無視して V2 r2一く砺1繧誉鷲磯晦22>(4)
となり,<d rCl2>,<d rc22>の影響が残る。<drc2> は<d r・2>にくらべてじゅうぶんに小さいとはかぎ らず,2端子法の測定では,電極部分のゆらぎによっ て試料自体のゆらぎがマスクされて観測にかからない 場合もある。4端子法
図一2(a)に,4端子法での測定回路を,図(b)に 等価回路を示す。rl, r2に電極部分の抵抗を含めて考 える。rl+rs+r2 =rとおくと,検出端子間の電圧V とそのゆらぎAVは, Ev十dv=
(rs十d rs) R十r十dr −ER竺。( drs1十 プs)/(・+晶≒) ≒V( drs1十 rs)(・一毒) (5) (rl十rs十r2)2(Ff.)2 (6)
である。<a r12>,<d r22>が<d rs2>にくらべて 大きくても,直列にいれる抵抗を大きくすれば,(6) の右辺第2項が無視できるようにすることができ,<4fY2>一く会2> (7)
となる。 ここで,Rの大きさについて考えてみる。相対ゆらぎ<dV2>/V2の1Hzにおける1Hz当たりの
大きさを,2端子法による測定の値をC2,4端子法に よる測定の値をC4とすると,ρ一く芸≧+c2(s.)2 (8)
であり,C4>C2{r/(r+R)}2のとき電極雑音の影響 からのがれることができる。C4がC2{r/(r+R)}2 より20db大きければじゅうぶんであるから,R>(V・・9i−「)r (9)
であることが必要である。すなわち,試料に直列 に抵抗Rを挿入する必要がある。こうすること により,2端子法で問題となる駆動電極で発生す るゆらぎの影響を4端子法では無視することがで v きる。 となる。したがってく睾2>一く三祭2>+蒜≧
一く舞2>+<<F:22>(r十R)2 _<drs2> グ82 +<d・r22>+<d・r・2>+<d・r22> (a)Circuit (b)Equivalent representation図一12端子法
Fig.1 Two・electrode configuration RE
試料丁ユ
(a) Circuit R rl一
rs’L
検出端子を流れる電流の影響 図一3のような試料において,電流を流すと,試 RE
γ2 Fig.2 (b)Equivalent representation図一24端子法
Four.electrode configurationE
LE「 剋 疋 系 図一3検出端子に流れこむ電流の影響 Fig.3Apossible cuurent disturibution in a four・electrode sample×
闘
i’° 1°。。.、・.2….4・.5・.6・.7・.・・.・ ratio of length to width of the detector wing 、L/D 図一4 検出端子の形状と電極に流れこむ電流の割合 Fig.4 Effect of a detector electrode on the current distribution 料を流れる駆動電流の一部は検出端子電極を経由して 流れる。これは電極をつけることにより試料の一部が 短絡されるからである。電極に電流が流れるとこの部 分で1〆ゲゆらぎを発生する。 この部分で発生するゆ らぎの影響は,直列抵抗Rを大きくしても防ぐこと はできない。この影響を取り除くためには,試料の形 状を電極に電流が流れないようにすることが必要であ る。 電極を流れる電流の割合は,試料の幅Wと測定電極のうでの幅Dと長さLによって決まる。カーボ
ンペーパーレジスタを試料と同形に切り,その電位分 布を求めることにより電極を流れる電流の割合を知る ことができる。 図一4にこのシュミレーションの結果を示す。うでの 幅Dがせまく,うでの長さが長いほど電極を流れる 電流の割合が小さいことがわかる。しかし,うでの長 さが長く,幅がせまくなるほどうでの部分の抵抗値が 大きくなり,このうでから発生する熱雑音が大きくな る。この熱雑音が測定系のシステムノイズよりも大き くなれぽ測定精度がこのノイズレベルで決定してしま う。したがって,うでをあまり細く長くすると電流は 小さくなっても,うでの部分の熱雑音で試料の電流雑 音がマスクされてしまう。L/D=0.3以上, W/D=2 以上にすれぽ,電極に流れこむ電流は駆動電流の10% 以下にすることができる。 表面じか付け電極の寄生容量と雑音 図一5のような試料の検出電極の雑音について実験を 行った。この試料は,2次元的な電位ゆらぎを測定す 匡 一140 i)r 自 一150曇 壱 : ・旨z
−160 driver electrodes detector l\ ・lect・・d・S! 一「
1 ξ ⊥ 図一5微小検出端子のある試料 Fi9.5Asilicon slab with spot detector electrodes between two driver electrodes 100 1k Frequency Hz 図一6 微小電極試料の熱雑音 10k Fig.6 Thermal voltage fluctuation at the spot contact on a silicon slab ることを目的として作った試料である。厚さ0.8mm,27mm×36mmの大きさの試料に8×8個の検出用の
電圧端子と一対の駆動用電流端子がある。電圧端子は 直径300μmの円形である。 電極は,ニッケル板のマスクを用いて真空中で Au Sbを蒸着して作った。 Au Sbを蒸着したあとそ のまま真空中で400°Cで4分間シンタリングを行っ た。 この試料の電流端子間,電流端子一電圧端子間の熱 雑音スペクトルを図一6に示す。低域と高域で雑音強度 に差があることがわかる。 熱雑音強度は素子のインピーダンスをZ(ω)で表 わすと,<v。2>=4kTRe〔Z(ω)〕で表わされる。 ここで,kはボルツマン定数であり, Tは絶対温度, Reは実部を意味する。 素子のインピーダンスの実部が周波数によって変化 するとき,その素子の熱雑音強度は周波数によって変 化する。試料の熱雑音スペクトルから,図一7のような 等価回路が考えられる。ここで,R1はバルクの抵抗, R2は電極部分の抵抗, Cは電極部分の静電容量に対 応する。この回路のインピーダンスZ(ω)は,R, c ∬{2 図一7 検出電極の等価回路 Fig.7 Equivalent repres・ entation of a dete. ctor electrode Z(ω)=R、+{(1/元ωC)//R2} 一(Rl+、+。莞、疋) ・ ωCR22 一ノ 1+tU2 C2 R22 である。 ンスの実部の値は,それぞれ, Re〔Z(0)〕=Ri十R2 Re〔Z(ω)〕=Rl (10) ここでωが0と。。のときのこのインピーダ (11) (12) となり,これに対応して,熱雑音強度は低域では 4kT(Ri+R2),高域では4kTR,となる。また
』1{多織一(Ri+−i+懸躍)
×(Ri十R2)−1 (13) であるので熱雑音強度が低域での強度にくらべて,3 db低下する周波数をfoとすると (R1+一一一一一一 1十4π2プ02C2 R22) =_1_2
R2−…
撃q1+R・) (14) である。これよりCの値がつぎのように求まる。 2 tr f・ R2 すなわち,C=_
1/謬哀「・
(15) 熱雑音スペクトルからRl, R2, Cを求 めることができる。この試料での電極部分の単位面積 当たりの抵抗と静電容量の平均値は,それぞれR2= conducting channel 図一8多接点電極 Fig.8 Multisport contact 164Ωcm2, C=3.48μF/cm2となり,直接ブリッジで 測定した値R2=165Ωcm2, C=2.94μF/cm2とよく 一致した。電極部分の抵抗,容量は,R2/(電極面積), C×(電極面積)で与えられる。 Siの表面に絶縁物である酸化物の層ができていて, その上に電極ができていると,電極はバルクと不完全 に接触していることになり,図一8のようなマルチポイ ントコンタクトのモデルで表せる。このような電極の 電流雑音についてVandammeらが計算している2)。 Vandammeらは,電極の接触面積の割合によって, 3つの場合にわけて考えているが,今回の試料は,こ の理論から予想される値よりも大きな電流雑音を生じ た。 また,四端子法の測定でも予想された値以上のゆら ぎが観測された。電極自体が大きなゆらぎを発生する 電極であった可能性もあるが,構造上電極を流れる電 流が多く,その影響をうけているものと思われる。 この試料のように,小面積部分にじかに電極をつけ ると,試料に電流を流したときに電圧端子部分で発生 する雑音は,試料の電流雑音を測定するときに問題と なる。これを避けるためには,電極自体を低雑音の電 極にすることと,電極に電流が流れこまないように検 出端子部分にうでを出すような構造にすることが重要 である。 電極雑音とシンタリングの関係 半導体に電極をつけるときにはオーム性接触とする ためにシンタリングを行う。シンタリングの時間を変 一90 Lil−1・・ ξ .ξ 言 一110 ξ 芸 皇.12。 言 2 旦 o −130 一140 o o o ● o ● 8 ● ● ● ● ● N2雰囲気中 400°Cで熱処理 。処理A ・処理B 本文参照 0 5 10 time min. 図一9 シンタリング時間と電極雑音の関係 Fig・g Contact noise versus sintering timeえて電極雑音との関係を調べたのが図一9である。