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調理操作における食品の熱伝導率について―スポンジケーキの場合―

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武庫川女子大紀要(自然科学)

調理操作における食品の熱伝導率について

ー ス ポ ン ジ ケ ー キ の 場 合 一

東根裕子,宮川久遁子

(武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科)

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Sponge Cake

Yuko Higashine and Kuniko Miyagawa

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E司 物質内の熱の伝わりやすさの指標になる熱伝導率は 各物質に固有の値であり,金属1)などはよく知られて いる.食品における熱伝導率も殺菌などによる衛生効 果,冷凍保存に関する熱処理,また加熱調理における 加熱温度や時間を知るうえで重要な熱物性値である. 食品そのものの熱伝導率の値はいくつか出されてい る2)が,加熱中の熱移動に関するデータはほとんどみ られない.そこで,熱流計を用いて,

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からスポ ンジ生地へ状態が変化するスポンジケーキを試料にし て,加熱中の熱伝導率の測定を試みた.同時に

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及びケーキの比重,水分量,高さなどを測定し,熱伝 導率に影響を及ぼす因子を検討した.また;

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法 の熱伝導率計を用い,スポンジケーキ,およびその類 以品の試料に関して熱伝導率の測定を行い,比較検討 を行った.

実験方法

1.熱流計による熔焼実験の試料とその調製法 スポンジケーキは,花王のモントンケーキミックス と新鮮卵を使用した.モントンの配合は

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に示 すとおりである. 調製方法は,ときほぐして裏ごしを通した卵

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とモントンケーキミックス A を容器にいれ,フード ミキサー

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ケーキ型に

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入れ熔焼実験用にした.

(2)

-57-Table 1. Contents of Monton Cake Mix (plain) (名称) ケーキミックス(花王株式会社製造) (原材料名) ミックスA 150g [砂糖,ぶどう糖果糖液糖,植物油脂,乳化剤, ソルビトール,酒精,香料,着色料(アナトー)

J

ミックス B 100g [無漂白小麦粉,ベーキングパウダー] 2. Probe法の熱伝導率計用試料 (1)市販品 食パン,フランスパン,カステラ,チーズケーキ (2)調製試料 1)スポンジケーキ 薄力粉(バイオレット)100g,グラニュー糖 100g, 新鮮卵200gの配合でフードミキサーを用い,常法に よりケーキノミッターを作り, 18cm型 で 380gを 1630 C45分熔焼した. 2)蒸しパン 薄力粉 100gに ベ ー キ ン グ パ ウ ダ -4gを用い,水 looml加え,流し箱に入れて 20分間蒸した. 3)モントンケーキミックス 前述の実験方法1.の通り

巳ケーキ型

A 4cm 一一ー・・ヒートセンサー しVー熱電対 18cm 熱伝導率K=LX (Ql+Q2)/(T1-T2) X 1/2 Ql =E1/d1 Q2 =E2/d2 Ql :上側の熱量 (Kcal/m2h) Q2 :下側の熱量 (Kcal/m2h) EI 上側の電圧 (mv) E2 :下側の電圧 (mv) d1 上側のヒートセンサーの感度 (0.0116mV Ikcalm-2h-1) d2 :下側のヒートセンサーの感度 (0. 0969mV Ikcalm-2h-1) K 熱伝導率 (kcal/mhoC ) L 距離 (0.02m) T1 上側の温度 ("C) T2 :下側の温度 ("C) Fig. 1. Measurement of thermal conductivity(heat sensor) mechanism and numerical expression 3. 熱流計での熱伝導率の測定方法 Fig.lのような装置を batterの中央部に差し込み加 熱中の熱伝導率の変化の測定を試みた. 18cmのケー キ型の底から 2cmと 4cmのところに,ヒートセン サー(英弘精機KK製 CH-9)と熱電対をセットした. オーブン加熱開始後O分, 6分, 6分以降は 2分おき

に電圧と温度をハイブリッドレコーダー(横河電気 Fig. 2. Constructiton of thermal conductivity KK製 HR1300)で記録した.熱流の移動は温度差と machine in Probe method

断面積に比例し,距離に反比例することからFig.lに

より求めた.熱伝導率の単位は, Kcal/mhoCである. 使用したオーブンは,コンベクションオーブン (Mon-tgomery Ward製 Model 8287)で 1630

C45分間賠 焼した.このオーブンは,ファンが側面の奥に設置さ れている. 4. Probe法での熱伝導率の測定方法 迅 速 熱 伝 導 率 計 ( 京 都 電 子 工 業 K K製 Kem-thermQTM -D3) を 用 い , そ の プ ロ ー プ 面 に 5cmx lOcmの試料を上からおしつけて測定する.プ ロープの構造はFig.2のようになっており,この加熱 線に一定電流を流しその聞の熱電対の起電力を記録 し,次式で熱伝導率を計算する. 単位は W/mk. A.= KxPIn(t2/t1)/(V2-V1)-H K, H は定数 V1, V2はそれぞれ時間 tl,t2における熱電対の起 電力 (mV), 1は加熱線に流す電流 (A)である. n x U F ﹁ υ

(3)

調理操作における食品の熱伝導率について 5. batter'スポンジケーキの形状などの測定方法 (1)batterの比重 内径40mm高さ35mmの秤量びんに試料を入れて 重量を測定し,同じ要領で測定した水の重量で、除して 算出した. (2)batterおよびスポンジケーキの水分量 焼く直前のbatterおよび熔焼後のスポンジケーキ を各5gとり電子水分計(長計量器製作所製 MC-30MB)で測定した. (3)気孔率 試料を超音波サンフ.ルカッター(山電

KK

USC-3305)で3x 3 x 1. 3cm に整え,その体積を重量で除 し,気孔率とした. (4)その他 batterおよびスポンジケーキの高さの測定方法は, 目盛りをつけた竹串を使用した. batterからスポンジケーキへの水分蒸発量より賠焼 時の水分減少率を算出した.

実験結果及び考察

1.熱流計によるスポンジケーキ熔焼時の熱伝導率 オーブンを1630 Cに予熱後, batterを入れて測定し た.電圧,熱伝導率はFig.3に示すとおり 20分ま での聞は生地内温度の急激な上昇期(Fig.4)でもある ため,熱伝導率は安定しない.熔焼開始後約20分で 熱伝導率は一定の値を示し始め,その値は0.633:t 0.047であった.電圧の値はヒートセンサーの上部か ら下部に向かつて電流が流れたときプラスの値を示 し,逆の場合はマイナスである. 熱伝導率が一定になるのは,一度高温まで昇温した 生地は,澱粉の糊化開始に従い澱粉粒子が周囲の自由 水を吸着して膨潤することにより,生地内部の自由水 が減少して結合水の割合が増加する現象が起こる3)た め,澱粉糊化後の生地の熱伝導率が温度に対し依存性 が小さくなってくると考えられる.

Table 2. Effect of egg mixing time on various characteristic of batter and sponge cake 卵の泡立て時間(凶n) 3 9 熱伝導率 (kcal/mhoC ) 0.633 0.576 batterの比重 0.815 0.668 0.607 水分減少率(明) 12.4 4.9 1.7 パッターの高さ (cm) 2.0 3.1 4.0 スポンジの高さ (cm) 3.5 5.0 6.2 増すにつれ比重,水分減少率は低下し batterと賠 焼後のスポンジの高さは高くなっており,差が見られ た. 3.生地の重量の違いによる熱伝導率 泡立て時間を 3分にして, batterの量を380g, 450gとかえ,賠焼時における熱伝導率の差を見た. Fig.3の380gに較べてFig.5に示した450gの電圧 1, 2は,ほぼ同様の時間経過を示したが, batter 450gの熱伝導率は賠焼初期から数値はほぼ一定し, 12分以降の値はO.530:t 0.061であった.450gの場 合, batterが装置の上を基準をこして十分におおった ことが,温度1より 2を最初の段階から高い値にし その結果熱伝導率がほぼ一定の値を示したと考えられ る. 4. Probe法による熱伝導率の測定 熱流計を用いて食品加熱中の熱伝導率の変化をとら えようと試みたが,明らかに差のあるデータが得られ なかったので,今後装置を検討する必要がある。そこ で熱伝導率測定の別の測定方法であるProbe法でス ポンジケーキおよびそれらの類似食品の熱伝導率を測 定した. (Probe法では,食品の状態変化に伴う熱伝 導率測定はできない.)以下はProbe法での結果を示 す.その結果はTable3に示すように,モントン3分 2.卵の泡立て時間の違いによる熱伝導率 泡立て O.1427,モントン9分泡立てO.1361であっ batterの気孔が熱伝導率に与える影響を見るため た.これらの値は熱流計での測定値と異なっている に,卵の泡立て 3分の基準配合に比し,泡立て時間を が,熱伝導率の値は測定方法によって違うのので,こ 1分, 9分と変えて測定した.1分ではbatterの粘性 のような結果になったと思われる. が強いため値にばらつきが生じ,一定の熱伝導率は得 られない. 9分ではbatterがセンサーの上部までき 5.熱伝導率と水分量の関係 ているため初期の段階から熱伝導率はばらつきが少な (1)スポンジケーキとその類似食品 く,その値は0.576:t0.093であった.batterとス スポンジケーキおよびそれらの類似食品のプロープ ポンジの形状はTable2に示すとおり,泡立て時聞が 法による熱伝導率と水分量の関係を見たところFig.6 n H d p h d

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100 90 80 70 60 141

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4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 時間 (min) Fig. 3. Change of thermalconductivityand vo1tage (in caseof 380g) L

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。 熱 伝 導 率

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4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 時間 (min) Fig. 4. Relation betweenthermalconductivity and temperature Table 3. Thermal conductivity of food by Probe method 試 料 熱伝導率 (W/m'k) に示すようになった.スポンジケーキなどは熱伝導率 は0.14,水分量は40"-'45070付近の値になった.この ように,これらの食品の熱伝導率と水分量の聞に明ら かな関係は見られなかったが,表面の状態が似たスポ ンジケーキとカステラがほぼ同様の熱伝導率を示した ことから, Probe法による熱伝導率は,混合成分量の 違いよりも表面の状態に影響されることが予想された. (2) 食パンの場合 食パンの熱伝導率と水分量の関係を見るために,食 パンの保存による水分量の変化をあわせて測定した. - 60-モントン3分泡立て 0.143 モントン9分泡立て 0.136 スポンジケーキ (調合)

I

0.132 食パン 0.104 フランスパン カステラ チーズケーキ 0.116 0.140 0.250

(5)

電 圧 (mv) 熱 伝 導 率 (kcal/mhVC) 水 分 量 (%) 調理操作における食品の熱伝導率について -10 率 1 2 導 圧 圧 伝 電 電 熱

+ A V 4

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6 8 1 0 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 45 時間 (min) Fig. 5. Change of thermal conductivity and voltage (in case of 450g) 60 チーズケーキ

55 50 -フランスパン モントン9分泡立て 45 -1食パンロ 1 ロ ロ ロ ー モ ン ト ン3分泡立て

スポンジケーキ 40 35 -30 _ カステラ

25 0.14 0.22 0.1 0.18 熱伝導率 (W/m'k) T 0.26 Fig. 6. Relation between thermal conductivity and moisture content (Fig.7)その結果,水分量は日がたつにつれて低下し たが,熱伝導率については明らかな傾向はみられな かった. (3) 蒸しパンの場合 同様に蒸しパンでの関係を調べた.ベーキングパウ ダーは粉の41170に固定し,水分量を150,75と変えて 蒸しパンを作製して,基準の 100に対し測定を行った 結果,予想したように添加水分量が多いほど熱伝導率 は上がり調製品の水分量も高くなる傾向が見られた. (Fig.8) 6.熱伝導率と気孔率の関係 熱伝導率と気孔率の関係を見るために,ベーキング パウダーの添加量を粉の0%4% 8%と変えて蒸しパ ンを作製した.その結果添加量を増加させた方が気孔 率は上がり,熱伝導率は下がる傾向がみられた.この ことから膨化が大きいほど熱伝導率は下がる傾向があ ることが分かる.(Fig. 9)これは密度の大きいほうが 高い熱伝導率を示すのというデータと一致し,気孔率 の違う食品では食品のきめも違うことから,熱伝導率 の違いが明らかに測定できると考えられた. n h u

(6)

40 70 熱 伝 率導 0.8 35 水 熱 0.8 60 水 30 伝 50 0.6 25 分 導 0.6 水分量 分 量 率 40 20 0.4 15 0.4 30

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0.2 熱伝導率 20 且 5 10 (%) O O O O 1日後 2日後 3日後 4日後 5日後 75 水分100(ml) 150 moisutre content on whitebread Fig. 7. Relation between thermal conductivity and Fig. 8. Relation betweenthermalconductivity and moisutre content (differenceinwateradded) 250 導熱伝率 0.8 200気 孔 0.6 150率 0.4 100

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0.2 熱伝導率 50(cm3/g) O O

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4 8 ベーキングパウダー添加量 (%) Fig. 9. Relation between thermal conductivity and specificvolume on steambread (differencein quantity of baking powder)

batterからスポンジ状生地へと状態が変化するスポ ンジケーキの熔焼中における熱伝導率を熱流計を用い て測定した.またProbe法での熱伝導率測定も行い, 熱伝導率に影響を及ぼす因子を検討した. 1. 生地内の温度と電圧から熱伝導率を求めたが,今 回の熱流計の装置では培焼中の明らかな変化はとら えられなかった. 2. バッターの比重・重量などを変化させての熱伝導 率測定においても明らかな差は見られなかった.し かし,パッターの高さが4cm以上あるほうが,倍 焼の初期段階から熱伝導率のばらつきを少なくする ことがわかった. 3. プロープ法で測定した熱伝導率は,試料の表面の 状態(きめ),水分量による差が見られた. 以上のことから食品の熱伝導率は比重,水分量,気 孔率などの因子に影響を受けることがわかったが,食 品の状態変化を時間の経過に従ってとらえられること はできなかった. 貴重なご助言を下さいました元大阪市立大学工学部 教授兵働務先生,また迅速熱伝導率計 (Probe法)の 使用を快諾下さいました京都電子工業株式会社に深く 感謝致します. 本研究の概要は,日本調理科学会近畿支部第20回 研究発表会において発表した.

文 献

1) 日本熱物性学会,熱物性ハンドブック, (日本熱 物性学会, 1991) 2) N. N. Mohsenin,林弘通(訳),食品の熱物性, (光琳, 1985)

3) Nikui, J., etal., Denpun Kagaku Handbook,

Asakura shoten(1977), 34 4) 山田盛二,小林清志,高野孝義, The Thirteens Japan Symposium on Thermophysical Proper -ties 181...184, (1992) 円 ノ “ F h U

参照

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