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PDF「射影空間の Hausdorff 性」

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Academic year: 2021

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(1)

射影空間の

Hausdorff

yamyamtopo

概要 実射影空間RPnおよび複素射影空間CPn Hausdorff空間であることは、一見 当然のようでありながら、証明しようとすると意外に苦労することが知られている。 ここでは、この事実に対して、一般論を適用する形ですっきりとした証明を与えるこ とを試みる。

1

射影空間の定義

nを非負整数とする。原点を除いたEuclid空間Rn+1\ {0}上の同値関係を、 x∼ y ⇐⇒ ある λ ∈ R \ {0} に対して y = λx によって定める。このときの商集合(Rn+1\ {0})/∼n次元実射影空間といい、RPn で表す。RPn には商位相によって位相を定める。つまり、q : Rn+1\ {0} → RPn を、 Rn+1\ {0}の点にその同値類を対応させて得られる標準的な全射とするとき、 U ⊂ RPn が開集合(閉集合)⇐⇒ q−1(U )⊂ Rn+1\ {0} が開集合(閉集合) とするのである。 この構成で、実数体Rを複素数体Cにそっくり置き換えることで、Cn+1\ {0}の商空 間としてn次元複素射影空間CPnが定義できる。なお、RP0 CP0は一点からなる空 間である。 位相空間XHausdorff空間であるとは、任意の異なる二つの点x, y∈ X に対して、 開集合U, V であってx∈ U, y ∈ V , U ∩ V = ∅を満たすものが存在することをいう。 RPnCPnはそれぞれ自然な(可微分)多様体の構造をもつことが知られている。と ころで、多様体の定義には、それが位相空間としてHausdorff空間であることが含まれて いる。そこで、RPn CPn が多様体であることを示すためには、まずそれがHausdorff 空間であることを示さなければならないのだが、その証明には古来多くの学習者が苦しま されてきた。本稿では、コンパクト性の定義に Hausdorff 性を含めない。

(2)

2

射影空間のもう一つの記述

射影空間のHausdorff性を示すためには、それを球面の商空間として表しておいた方が 都合がよいので、それについて述べる。以下では∥ · ∥によりEuclidノルムを表し、m次 元球面SmSm ={x ∈ Rm+1| ∥x∥ = 1}で定義する。 まず、商位相の性質について復習する。位相空間Xに同値関係が与えられていると し、X = X/¯ を商位相により位相空間と見なす。q : X → ¯X を標準的な全射とすると き、qは連続写像であって、任意の位相空間Y と写像f : ¯X → Y に対して次が成り立つ。 f が連続 ⇐⇒ f ◦ q が連続 このことから、次のことが分かる。 g : X → Y が連続写像で、x, x′ ∈ X, x ∼ x′(つまりq(x) = q(x′))のとき常に g(x) = g(x′)であるならば、写像f : ¯X → Y であってf ◦ q = gとなるものが一 意的に存在するが、このときf は連続である。 このとき、連続写像gは連続写像 f を誘導するという。この状況を図式で示すと次のよ うになる。 X q  g @ @ @ @ @ @ @ @ ¯ X f // Y さて、実射影空間RPn を球面の商空間として表そう。q 0: Rn+1\ {0} → RPnを標準 的な全射とする。また、Sn上の同値関係x∼ x′ ⇐⇒ x = x′ またはx = −x′ により定め、Sn/∼に商位相を与え、q1: Sn → Sn/∼を標準的な全射とする。 命題 2.1. i : Sn → Rn+1\ {0}を包含写像とするとき、q0 ◦ i: Sn → RPn は同相写像 ¯i: Sn/∼ → RPn を誘導する。 証明. x, x ∈ Sn に対してq1(x) = q1(x′)であるとすると、x = x′ または x = −x′ な ので、λ = 1 またはλ = −1 とすればx′ = λxである。よって、q0(x) = q0(x′)つまり

(3)

¯iが同相写像であることを証明しよう。そのため、連続写像r : Rn+1 \ {0} → Snr(x) =∥x∥−1xで定義する。x, x′ ∈ Rn+1\ {0}に対してq 0(x) = q0(x′)としよう。する と、あるλ∈ R\{0}に対してx′ = λxであるが、このときλ > 0ならばr(x) = r(x′)であ り、λ < 0ならばr(x) =−r(x′)である。よって、いずれの場合でもq1◦ r(x) = q1◦ r(x′) である。したがって、q1◦ rは連続写像r :¯ RPn→ Sn/∼を誘導する。 Sn i // q1  Rn+1\ {0} r oo q0  Sn/∼ ¯i // RPn ¯ r oo 誘導される連続写像の定義より、¯i◦ q1 = q0◦ i, ¯r ◦ q0 = q1◦ rである。よって、

¯i◦ ¯r ◦ q0 = ¯i◦ q1◦ r = q0◦ i ◦ r, ¯r ◦ ¯i ◦ q1 = ¯r◦ q0◦ i = q1◦ r ◦ i (⋆)

である。ところが、定義からq0◦ i ◦ r = q0なので、(⋆)の第1式より¯i◦ ¯r ◦ q0 = q0 = idRPn◦q0 である。よって、q0 の全射性により、¯i◦ ¯r = idRPn である。また、r◦ i = idSn なので、(⋆)の第2式よりr¯◦¯i◦ q1 = q1 = idSn/∼◦q1 である。よって、q1 の全射性によ り、r¯◦ ¯i = idSn/ である。以上により、¯ir¯を逆にもつ同相写像である。 この命題により、RPnSn の商空間Sn/と同一視できることが分かった。 同様の議論がCPnに対しても成り立つことを見てみよう。以下では、Cn+1 =R2n+2 と見なすことで、S2n+1 ⊂ Cn+1 であると考える。つまり、 S2n+1 = { (z0, z1, . . . , zn)∈ Cn+1n j=0 |zj|2 = 1 } と考える。同様に、S1 = {λ ∈ C | |λ| = 1} と考える。S2n+1 上の同値関係 を、 z = (z0, . . . , zn)∈ S2n+1, z′ = (z0′, . . . , zn′)∈ S2n+1 に対して z ∼ z′ ⇐⇒ ある λ∈ S1 に対して (z0′, . . . , zn′) = (λz0, . . . , λzn) とすることにより定義する。S2n+1/∼には商位相を導入し、q0: Cn+1\ {0} → CPnq1: S2n+1 → S2n+1/∼をそれぞれ標準的な全射とする。 命題 2.2. i : S2n+1 → Cn+1\ {0}を包含写像とするとき、q 0◦ i: S2n+1 → CPn は同相 写像¯i: S2n+1/∼ → CPn を誘導する。

(4)

証明. z, z ∈ S2n+1 に対してq1(z) = q1(z′)であるとすると、S1 ⊂ C \ {0}であること

から直ちにq0◦ i(z) = q0◦ i(z′)を得る。よって、q0◦ iは連続写像¯i: S2n+1/∼ → CPn

を誘導する。 次に、連続写像r : Cn+1 \ {0} → S2n+1z = (z0,· · · , zn) ∈ Cn+1 \ {0} に対して r(z) = (nj=0|zj|2)−1/2z とすることで定義する。このとき、z, z′ ∈ Cn+1\ {0}に対し てq0(z) = q0(z′) であるとすると、あるλ ∈ C \ {0}に対して z′ = λz である。する と、r の定義により、r(z′) = |λ|−1λr(z) を得る。ところが、|λ|−1λ ∈ S1 であるから、 q1◦ r(z) = q1◦ r(z′)である。よって、q1◦ rは連続写像r :¯ CPn → S2n+1/∼ を誘導す る。¯ir¯が互いに逆の同相写像となることは、命題2.1のときとまったく同様にして分 かるので証明を省略する。 この命題により、CPnS2n+1 の商空間S2n+1/と同一視できることが分かった。 以上のように、実および複素射影空間は球面の商空間として表すことができるが、これ は群作用の軌道空間と見ることもできる。群作用について復習しておこう。 位相群G(つまり、位相が与えられた群Gで、乗法と逆元をとる操作が連続であるも の)と位相空間Xに対して、連続写像α : G× X → X が与えられているとする。α(g, x)g· xと書くとき、αGX への(連続な)作用であるとは、任意のg, g′ ∈ Gx∈ X に対してg· (g′· x) = (gg′)· x, e · x = xが成り立つことである。ただし、eG の単位元とする。このとき、 x∼ y ⇐⇒ ある g∈ G に対して g· x = y と定めればX 上の同値関係である。に関する各同値類を、この作用の軌道とい う。x ∈ X を元にもつ軌道はGx = {gx | x ∈ X} である。商空間X/∼X/Gと書い て、この作用の軌道空間という。 Z/2 = {1, −1}は離散位相について位相群であり、単位円周S1 = {λ ∈ C | |λ| = 1} はCの位相と乗法により位相群となる。命題2.1のSn/∼は1· x = x, (−1) · x = −x により定まる Z/2Sn への作用の軌道空間 Sn/(Z/2) であると考えることができる。 また、S2n+1 ⊂ Cn+1 と考えるとき、λ ∈ S1 z = (z 0, . . . , zn) ∈ S2n+1 に対して λ· z = (λz0, . . . , λzn) と定義することで S1 の S2n+1 への作用が定まる。命題 2.2 の S2n+1/∼はこの作用の軌道空間S2n+1/S1であると考えることができる。

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3

位相空間論の復習

ここでは、位相空間論における良く知られた二つの命題を復習しておく。 命題 3.1. X をHausdorff空間、K, LX のコンパクト部分集合とし、K∩ L = ∅ で あるとする。このとき、X の開集合U, V であってK ⊂ U, L ⊂ V , U ∩ V = ∅となるも のが存在する。 証明. まず、Lが一点yのみからなる場合を考える。このとき、X がHausdorff空間であ ることから、各x ∈ K に対して、xの開近傍U であってy /∈ Cl U となるものが存在す る(ここで、Clは閉包を表す)。よって、 U = {U ⊂ X | UX の開集合で y /∈ Cl U} とおけば、K U である*1K はコンパクトであるから、U1, . . . , Un ∈ U が存在し て、K ni=1Ui となる。そこで、U =n i=1Ui, V = X\n i=1Cl Ui とおけば、U, V は求める開集合である。 次に、一般の場合を考える。いま示したことから、各y∈ Lに対して、yの開近傍V で あってK ∩ Cl V = ∅となるものが存在する。よって、 V = {V ⊂ X | VX の開集合で K ∩ Cl V = ∅} とおけば、L V である。Lはコンパクトであるから、V1, . . . , Vm ∈ V が存在して、 L⊂mj=1Vj となる。そこで、V =m j=1Vj, U = X\m j=1Cl Vj とおけば、U, V は求 める開集合である。 命題 3.2. X を位相空間、K をコンパクト空間とする。prX: X× K → X を射影とする と、prX は閉写像である。 証明. F ⊂ X × K を閉集合とする。x ∈ X \ prX(F ) を任意に与える。このとき、 ({x} × K) ∩ F = ∅であるから、 U = {U × V | U, V はそれぞれ X, K の開集合でx ∈ U, (U × V ) ∩ F = ∅} とおけば{x}×K ⊂U である。Kはコンパクトなので、あるUi×Vi ∈ U (i = 1, . . . , n) が存在して{x} × K ⊂ni=1(Ui × Vi) であり、よってK n i=1Vi である。このとき *1一般に、集合族A に対して、Aの要素すべての和集合を∪Aで表す。A = {Aλ| λ ∈ Λ}と添字づけ られているときは、∪A =λ∈Λである。

(6)

U =ni=1Ui とおけば、Uxの開近傍で、 pr−1X (U ) = U × K ⊂ ni=1 (Ui× Vi)⊂ (X × K) \ F となる。よって、U ⊂ X \ prXF である。これが任意のx ∈ X \ prX(F ) に対して成り 立つのでprX(F )X の閉集合である。

4

射影空間の

Hausdorff

本稿で射影空間のHausdorff性を示す鍵となるのは、次の補題である。 補題 4.1. X をHausdorff空間とし、X 上の同値関係とする。に関する各同値類 がXのコンパクト集合であり、商空間X/∼への標準的な全射q : X → X/∼が閉写像で あるならば、X/∼はHausdorff空間である。 証明. 記法を簡単にするため、X/∼ = ¯X とおく。ξ, η∈ ¯X, ξ ̸= η とする。K = q−1(ξ)L = q−1(η)に関する異なる同値類だから、K, LXのコンパクト集合であって K ∩ L = ∅ である。したがって、命題3.1により、K ⊂ U, L ⊂ V , U ∩ V = ∅ となる ようなX の開集合U, V が存在する。いま、qは閉写像なので、q(X \ U), q(X \ V ) は ¯ Xの閉集合となり、よって、U′ = ¯X\ q(X \ U), V′ = ¯X\ q(X \ V )X¯ の開集合であ る。q−1(ξ) = K ⊂ U であったことから ξ ∈ U′ であり、また同様にη ∈ V′ である。さ らに、q が全射であることを用いて、U′ ∩ V′ = であることが簡単に分かる。よって、 ¯ X = X/∼はHausdorff空間である。 この補題の簡単な適用例を挙げておく。 例 4.2. I = [0, 1]とし、I× I 上の同値関係として、 (0, t)∼ (1, 1 − t) (t ∈ I) で生成されるものを考える。このときの商空間M = I× I/∼をM¨obiusの帯という。M がHausdorff空間であることを、補題4.1によって証明しよう。 I×I はHausdorff空間である。また、に関する同値類はすべて一点または二点からな るので、コンパクトである。また、標準的な全射q : I×I → M は閉写像であることが次の ようにして分かる。F ⊂ I × I を閉集合としよう。すると、F0 ={t ∈ I | (0, 1 − t) ∈ F },

(7)

F1 ={t ∈ I | (1, 1 − t) ∈ F }I の閉集合であり、 q−1(q(F )) = F ∪ ({1} × F0)∪ ({0} × F1) となる。よって、q−1(q(F ))I× I の閉集合なので、q(F )M の閉集合である。これ でqは閉写像であることが示された。以上から、補題4.1によりM はHausdorff空間で ある。 例 4.3. X をHausdorff空間とし、KXの互いに交わらない空でないコンパクト集合 からなる局所有限な族とする。このとき、Kの各要素を一点につぶして得られるX の商 空間はHausdorff空間である。このことも補題4.1により比較的簡単に証明される。 補題4.1を用いて、ある条件を満たす群作用に関する軌道空間のHausdorff性を示すこ とができる。 定理 4.4. X をHausdorff空間、Gをコンパクトな位相群とし、GX への連続な群作 用が与えられているとする。このとき、軌道空間X/GはHausdorff空間である。 証明. 補題4.1を用いて証明する。この作用の各軌道Gx (x∈ X)Gの連続像であるか らコンパクトである。よって、あとは標準的な全射q : X → X/Gが閉写像であることを 示せばよい。そこでF ⊂ X を閉集合とする。q(F )X/Gの閉集合であること、すなわ ちq−1(q(F ))X の閉集合であることを示せばよい。 q−1(q(F )) ={g · x | g ∈ G, x ∈ F } となることに注意すると、q−1(q(F ))は、G× X の閉集合G× F の合成写像 G× X → G × Xα˜ pr→ XX による像である。ここで、α˜はα(g, x) = (g, g˜ · x) で定義され、prX は射影である。α˜ は 逆が(g, x) 7→ (g, g−1· x) で定義される同相写像であり、Gのコンパクト性から補題3.2 によりprX は閉写像である。よって、この合成は閉写像なので、q−1(q(F ))X の閉集 合である。 系 4.5. 実射影空間RPnおよび複素射影空間CPnHausdorff空間である。 証明. §2の最後で注意したように、RPnは、コンパクトな位相群Z/2Hausdorff空間 Snへの作用の軌道空間と同一視されるから、定理4.4によりHausdorff空間である。同 様に、CPnはコンパクトな位相群S1 Hausdorff空間S2n+1への作用の軌道空間と同 一視されるから、Hausdorff空間である。

参照

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