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哺乳類鳥類における寿命の進化に関わる遺伝的要因

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Academic year: 2021

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全文

(1)

哺乳類鳥類における寿命の進化に関わる遺伝的要因

著者

池本 篤史

18

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

生博第422号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00131550

(2)

氏 名 ( 本 籍 地 )

学 位 の 種 類

学 位 記 番 号

学 位 授 与 年 月 日

学 位 授 与 の 要 件

研 究 科 , 専 攻

博士論文審査委員

い け も と あ つ し

池 本 篤 史

博 士 ( 生 命 科 学 )

生 博 第 4 2 2 号

令 和 3 年 3 月 2 5 日

学 位 規 則 第 4 条 第 1 項 該 当

東 北 大 学 大 学 院 生 命 科 学 研 究 科

( 博 士 課 程 ) 生 態 発 生 適 応 科 学 専 攻

哺 乳 類 鳥 類 に お け る 寿 命 の 進 化 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因

( 主 査 ) 河 田 雅 圭

永 田 裕 二

佐 藤 修 正

(3)

論 文 内容 の 要 旨

序 論

地 球 上 の 生 物 は 体 色 や 体 サ イ ズ と い っ た 多 種 多 様 な 表 現 型 を 持 つ 。 こ の よ う な 表 現 型 の 一 つ に 「 寿 命 」 が 存 在 し 、 そ の 多 様 性 は 極 め て 顕 著 で あ る 。 例 え ば 脊 椎 動 物 で は 、 ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ (Danio reio) の 最 大 寿 命 は 5.5 年 で あ る の に 対 し 、 ヒ ト ( Homo sapiens) で は 122.5 年 、 ホ ッ キ ョ ク ク ジ ラ (Bowhead whale) に 至 っ て は 211 年 に も な る 。 寿 命 は 繁 殖 成 功 と 関 わ る 進 化 的 に 重 要 な 形 質 で あ り 、 こ の 様 な 寿 命 の 多 様 性 の 機 構 を 探 究 す る こ と は 進 化 学 に お け る 興 味 深 い 題 材 の 一 つ で あ る 。 寿 命 と 関 連 す る 生 態 的 特 徴 と し て 基 礎 代 謝 や 繁 殖 時 年 齢 、 成 長 率 な ど 様 々 な 要 素 が 報 告 さ れ て い る 。 そ の 中 で も 、 寿 命 と 体 サ イ ズ の 関 連 は 広 く 知 ら れ て お り 、 体 サ イ ズ が 大 き な 生 物 種 ほ ど 長 い 寿 命 を 持 つ 。 こ れ は 哺 乳 類 や 鳥 類 な ど 幅 広 い 生 物 群 で 共 通 し て 見 ら れ る 傾 向 で あ る 。 一 方 、 こ の 法 則 か ら 外 れ る 事 例 が い く つ か 存 在 す る 。 例 え ば 、 霊 長 類 や コ ウ モ リ 、 鳥 類 と い っ た 一 部 の 生 物 群 は 同 サ イ ズ の 他 の 生 物 種 と 比 べ て 寿 命 が 長 い 傾 向 が み ら れ る 。 ま た 、 種 内 に お い て は 体 サ イ ズ が 大 き い 個 体 ほ ど 寿 命 が 短 く な る と い う 、 種 間 と は 逆 の 相 関 関 係 の 存 在 が 示 唆 さ れ て い る 。 こ れ ら の よ う な 一 般 的 な 法 則 か ら 逸 脱 し た 現 象 が 、 な ぜ 、 ど の よ う に 生 じ る の か と い う 疑 問 は 、 寿 命 の 制 御 機 構 や 進 化 機 構 を 理 解 す る 上 で 重 要 な 役 割 を 持 つ 。 本 研 究 で は 、 特 徴 的 な 寿 命 を 示 す 生 物 群 に 焦 点 を 当 て 、 飛 翔 能 力 を 持 つ 種 と 持 た な い 種 の 寿 命 差 異 に 着 目 し た 種 間 比 較 ( 第 一 章 )、 ま た は イ ヌ の 犬 種 間 に 着 目 し た 種 内 比 較 ( 第 二 章 ) に よ る 寿 命 の 進 化 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 の 検 出 を 行 っ た 。 第 一 章 – 飛 翔 能 力 喪 失 の 進 化 に 伴 う 短 命 化 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 哺 乳 類 と 鳥 類 に お い て 、 飛 翔 能 力 の 獲 得 喪 失 は 最 大 寿 命 と 進 化 的 に 関 わ る 。 外 因 性 死 亡 率 の よ う な 環 境 要 因 は 自 然 選 択 に よ る 寿 命 の 短 縮 や 延 長 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る 。 飛 翔 能 力 を 持 つ 生 物 は 捕 食 者 か ら の 逃 避 が 容 易 で あ る た め 、 外 因 性 死 亡 率 が 低 下 し 最 大 寿 命 が 変 化 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 一 方 で 、 最 大 寿 命 は 複 雑 な 分 子 ・ 代 謝 機 構 の 影 響 を 受 け て お り 、 最 大 寿 命 の 延 長 や 短 縮 を 引 き 起 こ し た 飛 翔 能 力 と 関 連 す る 遺 伝 的 変 異 に つ い て は 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は 、 哺 乳 類 と 鳥 類 に お け る 飛 翔 の 並 行 進 化 に 着 目 し 、 飛 翔 能 力 の 獲 得 (little brown bat と large flying fox) ま た は 喪 失 ( ア デ リ ー ペ ン ギ ン と エ ン ペ ラ ー ペ ン ギ ン 、 ダ チ ョ ウ 、 エ ミ ュ ー 、 オ オ マ ダ ラ キ ウ イ 、 コ マ ダ ラ キ ウ イ 、 オ カ リ ト キ ウ イ 、 ア メ リ カ レ ア 、 ダ ー ウ ィ ン レ ア 、 ヒ ク イ ド リ ) が 起 き た 系 統 樹 上 の 枝 に お い て 適 応 的 な 進 化 を 遂 げ た 遺 伝 子 を 探 索 し た 。

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全 て の 枝 で 共 通 す る 遺 伝 子 は 検 出 さ れ な か っ た が 、2 つ の 枝 で 共 通 し て 正 の 選 択 を 受 け た 遺 伝 子 が 7 個 検 出 さ れ た 。 7 個 の 遺 伝 子 の 内 、IGF2BP2 の み は 寿 命 と エ ネ ル ギ ー 消 費 両 方 に 影 響 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 ま た 、IGF2BP2 に お い て 検 出 さ れ た 正 の 選 択 を 受 け た 変 異 は 翻 訳 さ れ る タ ン パ ク 質 機 能 に 影 響 を 与 え 得 る こ と が 示 唆 さ れ た 。 寿 命 延 長 と エ ネ ル ギ ー 消 費 の 増 大 を 同 時 に 引 き 起 こ す と 報 告 さ れ て い る IGF2BP2 は 、 飛 翔 能 力 の 喪 失 に 伴 う 短 縮 化 さ れ た 最 大 寿 命 の 進 化 に 関 与 し て い る 可 能 性 が あ る 。

第 二 章 – イ ヌ ( Canis lupus familiaris) の 犬 種 間 に お け る 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 生 物 の 持 つ 寿 命 は 体 サ イ ズ と 密 接 な 関 係 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る が 、 そ の 関 係 性 は 種 間 と 種 内 で は 異 な る 。 一 般 的 に 種 間 で は 体 サ イ ズ が 大 き な 種 は 長 い 寿 命 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る の に 対 し 、 種 内 で は 体 サ イ ズ が 大 き な 個 体 ほ ど 短 い 寿 命 を 持 つ 傾 向 が あ る 。 こ の よ う な 種 内 に お け る 体 サ イ ズ と 寿 命 の 奇 妙 な 傾 向 が ど の よ う な 遺 伝 的 メ カ ニ ズ ム に よ り 引 き 起 こ さ れ る か は 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は 、 種 内 の 体 サ イ ズ と 寿 命 の 多 様 性 が 顕 著 な イ ヌ (Canis lupus familiaris) に 焦 点 を 当 て 、 寿 命 を 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 と 依 存 し な い 寿 命 と い う 2 つ の 指 標 に 分 割 し て 捉 え る こ と で 、 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 指 標 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 を 探 索 し た 。 ゲ ノ ム ワ イ ド 関 連 解 析 で は 、 以 前 か ら 寿 命 と の 関 連 が 示 唆 さ れ て き た 遺 伝 子 に 加 え て 、 こ れ ま で 報 告 さ れ て こ な か っ た 機 能 未 知 の ロ ン グ ノ ン コ ー デ ィ ン グ RNA 遺 伝 子 と 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 指 標 の 関 連 性 が 新 た に 示 唆 さ れ た 。 ま た 遺 伝 子 進 化 速 度 解 析 に よ り 、 哺 乳 類 全 体 の 傾 向 と 異 な り 、 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 指 標 が 大 き な 犬 種 で は 癌 抑 制 遺 伝 子 に 対 す る 純 化 選 択 が 働 い て い な い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら は 犬 種 間 の 寿 命 の 差 異 に は 未 知 の 遺 伝 的 メ カ ニ ズ ム が 関 与 し て い る 可 能 性 を 、 そ し て 体 サ イ ズ が 大 き く 寿 命 が 短 い 多 く の 大 型 犬 で は 体 サ イ ズ に 見 合 う だ け の 癌 耐 性 メ カ ニ ズ ム が 備 わ っ て い な い 可 能 性 を 示 唆 し て お り 、 種 内 の 体 サ イ ズ と 寿 命 の 負 の 相 関 関 係 を 解 明 す る 手 が か り と な る か も し れ な い 。 図1. 飛翔能力の獲得喪失が起きた枝で正の選択を受けた 遺伝子。(a)走鳥類の飛翔能力喪失が2回独立に起きた 仮説の下での結果。(b)走鳥類の飛翔能力喪失が4回独 立に起きた仮説の下での結果。

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図 2. 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 を 用 い た ゲ ノ ム ワ イ ド 関 連 解 析 の 結 果 を 表 す マ ン ハ ッ タ ン プ ロ ッ ト 。 横 軸 は 染 色 体 と そ の 座 位 。 縦 軸 は 負 の 対 数 P 値 。 図 中 の 水 平 破 線 は ボ ン フ ェ ロ ー ニ 補 正 後 の 有 意 水 準 を 示 す 。 有 意 水 準 を 超 え る ゲ ノ ム 多 型 が 存 在 す る 遺 伝 子 に つ い て の み 名 前 を 記 す 。

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論 文 審査 結 果 の 要 旨

池 本 篤 史 氏 提 出 の 博 士 論 文 で は 、哺 乳 類 と 鳥 類 に お け る 寿 命 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 に つ い て 明 ら か に し た 。 1 章 で は 、 種 間 に お け る 寿 命 の 多 様 性 と し て 哺 乳 類 と 鳥 類 に お け る 飛 翔 能 力 を 持 つ 種 と 飛 翔 能 力 を 持 た な い 種 の 寿 命 差 異 に 着 目 し 、 寿 命 の 進 化 を 駆 動 し た 遺 伝 的 要 因 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 飛 翔 能 力 を 喪 失 し た ダ チ ョ ウ 目 の 祖 先 と ペ ン ギ ン 目 の 祖 先 に お い て IGF2BP2 と い う 寿 命 や 飛 翔 に 必 要 な エ ネ ル ギ ー 代 謝 に 関 わ る 遺 伝 子 が 検 出 さ れ た 。 ま た 、IGF2BP2 の 制 御 下 に あ る IGF1Rが 一 部 の コ ウ モ リ で 進 化 し て い る と い う 報 告 例 が あ る こ と か ら 、 飛 翔 能 力 の 獲 得 と 喪 失 の 両 過 程 に お い て 、 同 一 の 遺 伝 的 メ カ ニ ズ ム に 関 わ る 遺 伝 子 が 進 化 し た 可 能 性 が 示 さ れ た 。 2 章 で は 、 種 内 に お け る 寿 命 の 多 様 性 と し て イ ヌ の 犬 種 間 の 寿 命 差 異 に 着 目 し 、 寿 命 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 を 検 出 し た 。 そ の 結 果 、 犬 種 の 体 サ イ ズ に 依 存 す る 寿 命 に は IGF1 や HMGA2 と い っ た 寿 命 と 体 サ イ ズ 両 方 に 関 与 す る 遺 伝 子 に 加 え て 、 機 能 未 知 の ロ ン グ ノ ン コ ー デ ィ ン グ RNA 遺 伝 子 が 関 わ っ て い る 可 能 性 が 示 さ れ た 。 ま た 、 体 サ イ ズ に 依 存 す る 寿 命 が 長 い 犬 種 で は 哺 乳 類 全 体 に 比 べ て 癌 抑 制 遺 伝 子 へ の 純 化 選 択 が 弱 く な っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら 2 つ の 研 究 か ら 、 寿 命 に お け る IGF1 関 連 遺 伝 子 群 の 重 要 性 と 、 癌 抑 制 遺 伝 子 の よ う な 種 間 と 種 内 で 異 な る 進 化 傾 向 を 示 す 寿 命 関 連 遺 伝 子 群 の 存 在 を 示 唆 し た 。 池 本 篤 史 氏 の 研 究 は 、 寿 命 の 進 化 に 関 わ る 遺 伝 的 要 因 に つ い て 種 間 と 種 内 の 視 点 か ら 取 り 組 み 、 寿 命 進 化 の 類 似 性 と 相 違 性 を 明 ら か に し た 初 め て の 研 究 で あ る 。 さ ら に 、 進 化 学 的 な ア プ ロ ー チ に よ っ て 、 寿 命 の 解 明 に 新 た な 知 見 を 与 え る 研 究 と な っ た 。 こ れ ら の 研 究 は 、 池 本 篤 史 氏 が 主 導 で 行 っ た 研 究 で 、 池 本 篤 史 氏 は 自 立 し て 研 究 活 動 を 行 う に 必 要 な 高 度 の 研 究 能 力 と 学 識 を 有 す る こ と を 示 し て い る 。 し た が っ て , 池 本 篤 史 氏 提 出 の 論 文 は , 博 士 ( 生 命 科 学 ) の 博 士 論 文 と し て 合 格 と 認 め る 。

図 2. 体 サ イ ズ 依 存 的 な 寿 命 を 用 い た ゲ ノ ム ワ イ ド 関 連 解 析 の 結 果 を 表 す マ ン ハ ッ タ ン プ ロ ッ ト 。 横 軸 は 染 色 体 と そ の 座 位 。 縦 軸 は 負 の 対 数 P 値 。 図 中 の 水 平 破 線 は ボ ン フ ェ ロ ー ニ 補 正 後 の 有 意 水 準 を 示 す 。 有 意 水 準 を 超 え る ゲ ノ ム 多 型 が 存 在 す る 遺 伝 子 に つ い て の み 名 前 を 記 す 。

参照

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