小学部第1学年 国語科学習指導案 1 単元名 「よもう かこう」 2 指導観 ○実態観 本グループは、知的障害を主障害とする児童4名で構成される。4名とも、体の部分の名称や動 物、果物、乗り物などの身近な物の名称はある程度理解できており、名称を聞いて絵カードを選ん だり絵を見て名称を言葉で表現したりすることができる。また、言葉による簡単な指示理解もでき ており、教師や友達と簡単なやりとりを行うことができる。 これまでに、児童たちは、朝の会の名前呼びや自分や友達の顔写真と名前カードのマッチングな どの活動を通して、机に表示している友達の名前を指さしで読もうとしたり、自分や友達の名前を 白板に自分なりの記号で書こうとしたりするなど文字に興味が芽生え始めている。また、ヒントカ ードを見て絵と単語カードをマッチングしたり、自分の名前のひらがなや「し」「い」「り」「う」な どの簡単なひらがなをなぞったりするなどの学習にも取り組んできている。しかし、一つの文字に 一つの音があることに気付いておらず、指さしと文字の読み方が一致していなかったり、線のつな がりや書き順に気付けず、文字の終点から始点に向かってなぞったりする児童がいる。また、知っ ている文字でも自信がもてず、すぐに教師に尋ねる児童もいる。さらに、書き順等を示したり、一 緒に書いたりしても、途中で関心が別のものに移ってしまったり、自分なりの書き方に固執して受 け入れられなかったりする児童もいる。 そこで、文字を読むことや書くことに興味をもち始めた児童たちに、実態に応じた課題設定と学 習活動を工夫し、自分で読んだり書いたりできる喜びを味わわせ、自分で読める、書ける経験を重 ねることができるようにすることは児童たちの表現の幅を広げるとともに自信となり、社会で主体 的に生き抜く力を育むことにつながると考える。 文字の読み書きの力に関する児童たちの実態は、下記の表に示すとおりである。 読むこと 書くこと K-ABCの結果 A 児 自分の名前に含まれるひらがなを読 むことができるが、一字ずつ追って読 むことは難しい。 自分の名前を書くことができるが、 それ以外のひらがなは、書くことに 苦手さもあり、視写することを諦め てしまう。 省略 B 児 自分の名前はまとまりで捉えられる が、一字ずつひらがなを読むことには 至っていない。 筆記具を握って持ち、自分の名前な どを○や×などの記号で表そうとし たりひらがなを終点からなぞったり する。 省略 C 児 ひらがなをすべて読むことができ、単 語をまとまりで捉えられるが、一字ず つ追って読むことは難しい。 注意が持続しにくく、順番や線のつ ながりを捉えてなぞったりすること が難しい。 省略 D 児 自分の名前に含まれるひらがなとい くつかのひらがなを読むことができ る。未学習の部分が多い。 むすびに誤りがあるが自分の名前を 書くことができる。友達の名前など は○×の記号で表そうとする。 省略 ○単元観 本単元「よもう かこう」では、親しみやすい絵本を読んだり、絵と単語や文字カードをマッチ ングしたり、体を動かしながらひらがなを読んだり書いたりする活動を通して、文字への関心を高 め、進んで読んだり書いたりする姿を引き出すことをねらいとしている。 ねらいを達成するために、本単元では、「気付く」「分かる」「できる」の3つの段階で指導を進め
ていく。「気付く」段階では、名前呼びなどの活動を通して、一つの文字に一つの音があることや文 字の書き順や線のつながりに気付くことができるようにする。「分かる」段階では、文字が集まって ものの名前になることが分かるようにする。また、文字の書き順や線のつながりが分かり、なぞっ たり視写したりできるようにする。「できる」段階では、文字を一字ずつ読んで、絵本や身の回りに ある様々なものの名前を読み取ったり、音と文字とを結びつけながら、文字をなぞったり視写した りできるようにする。 「気付く」「分かる」「できる」段階を通して、1時間を全体の活動と個別の活動の2つに分け、 学習の見通しをもちやすくする。全体の活動では、児童たちの実態を踏まえ、絵本を活用し、毎回 一字を取り上げて書き順を確認しながら手を大きく動かして書いた後、プリントでなぞって確かめ る。絵本に出てくる文字を一つずつ取り上げ、書き順を確かめながら大きく腕を動かして書くなど、 体を使って書く体験をすることで、書くことに苦手さがある児童も、書き順や線のつながりなどを 意識しやすいと考える。個別の活動では、児童たちがより主体的に活動できるようにそれぞれの課 題を1~4までのボックスに準備する。学習到達度を踏まえて4つの課題のうち、1~2つを重点 課題として教師と行い、他は一人で取り組むことができる課題を準備する。具体的には、実態に応 じて絵と単語のマッチング、単語や文の音読、プリント学習を行う。ここでは、主体的に進められ るよう順番カードを手元に準備する。自分で学習を進める経験を重ねることは、児童が様々な活動 を主体的に進めていく力を培っていく上でも意義深い。 ○指導観 指導に当たっては、児童が見通しをもつことができるように、毎回、全体の活動の後に個別の活 動に取り組むなど学習の大きな流れを変えないようにする。また、グループを構成する児童たちの 傾向として同時処理が得意であることを踏まえ、課題設定や学習活動を以下のとおりに工夫する。 全体の活動では、一字ずつ文字を読むことが定着するよう、当番による呼名を行う。大きく腕を 動かして文字を書く学習では、ラップの芯を大きな鉛筆に見立て、「1,2」などの掛け声に合わせ て白板の文字をなぞるなどして、書き順や線のつながりに注目できるようにする。また、書くこと に積極的になれるように楽しい雰囲気作りを心掛けたい。ここで取り上げる文字は、絵本や歌に出 てくるからだの部位や動物などの中で、一音一音節で表せる「め、て、は、け、お」及び1~3画 で表現できる「こ、か、ち、み、す、ぬ」とする。個別の活動では、自信をもって読んだり書いた りすることができるように、全体の活動で取り組んだ内容を白板に残しておいたり、個に応じてヒ ントカードなどを準備したりして、自分で確認できるようにする。また、自分で学習を進めること ができるよう4段ボックスを一人一人に準備し、順番カードを確認しながら取り組めるようにする。 重点課題に児童が取り組む場面では、教師が付いて指導できるように、座席や個々の課題の順番を 調整する。また、個々の課題に取り組むスピードを考慮して、それぞれの課題の順番を工夫する。 書くことに関しては、文字の形や書き順だけにとらわれず、書こうとする姿勢を評価し、児童の書 きたいという気持ちを大切にしたい。プリント教材に関しては、実態に応じて、書き順を色分けし て示したものや書く量を調節したもの、手先を使うものなどを準備し、児童が自信をもって自ら書 きたいと思えるようにしたい。 3 目標 ○文字を一字ずつ読んで、いろいろな物の名前を読み取ることができる。 ○文字を音と結びつけて、進んでなぞったり視写したりすることができる。 ○ボックスから課題を取り出すなどして、主体的に学習に取り組むことができる。 4 単元指導計画(本時 18/20時間)
目標 学習活動 手立て 気 付 く ( 5 時 間 ) ○一つの文字に一 つの音があること に気付く。 ○文字の書き順や 線のつながりに気 付く。 よもうかこう「からだのなまえ」 1 全体の活動 ○1音節の文字(体)の空書きをする。 2 個別の活動 ○絵と体の名前をマッチングする。 ○1音節の文字を読んだり書いたりする。 ○シールをはる、手を たたくなどして一字ず つ意識できるようにす る。 ○教師の促しに応じて 大きく腕を動かして文 字の空書きをする。 分 か る ( 7 時 間 ) ○文字が集まって 名前が表されてい ることが分かる。 ○つながりや順序 が分かって文字を なぞったり視写し たりできる。 よもうかこう「どうぶつのなまえ」 1 全体の活動 ○一字ずつ確認して動物の名前を構成する。 ○単語(動物)に含まれる文字の空書きをする。 2 個別の活動 ○絵と動物の名前をマッチングする。 ○単語を読んだり書いたりする。 ○2音節からなる単語 を取り上げる。 ○一字ずつ合わせて単 語を構成するなど単語 が文字の集まりである ことを意識できるよう にする。 で き る ( 8 時 間 ) ○学習した文字で 構成される単語を 読み取ることがで きる。 ○文字を音と結び 付けて単語をなぞ ったり視写したり できる。 よもうかこう「くだもののなまえ」 1 全体の活動 ○一字ずつ確認して果物の名前を読む。 ○好きな果物を選んでなぞり書きや視写をする。 2 個別の活動 ○絵と果物の名前をマッチングする。 ○単語を読んだり書いたりする。 ○3音節からなる単語 を取り上げる。 ○自信をもって書くこ とができるように学習 した文字で構成される 単語(果物)を取り上 げる。 5 本時 (1) 本時指導の考え方 児童たちは前時までに、絵本「ポポくんのミックスジュース」の読み聞かせを聴き、「ろ、ん、 ま」の学習と「すいか、みかん、とまと、めろん、かき、りんご、いちご、ばなな」の絵と単語 カードや文字カードのマッチング、なぞり書きや視写を行ってきた。また、前時より全体の活動 において、好きな果物を選択し、なぞったり視写したりして注文票を作り、教師と確認した後、 模型のくだものを使ってミックスジュースを作る活動を行ってきている。マッチングを行う際に は、知っている文字を見つけて嬉しそうに読んだり、一字ずつ声に出して文字を組み合わせたり する姿が見られ始めている。また、なぞり書きでは、印を手掛かりに始点や順番、むすび、まわ りに気を付けて書くことができ始め、果物を選択する場面では、積極的になぞったり、視写した りしようとする様子も見られている。 そこで、本時では、全体の活動においては、引き続き、ミックスジュースを作る活動を中心に、 マッチングしたりなぞったり視写したりする。また、作成した注文票を教師と一字ずつ読んで確 認する。このように、これまで学習した文字を活用し、ミックスジュースを作る活動を通して、 児童自身が楽しみながら進んで読んだり書いたりできるようにすることをねらいとする。また、 個別の活動においては、引き続き自分で課題を取り出す、分からないときにはヒントカードなど で確かめるなどしてできるだけ自分の力で学習に取り組むことができるようにすることを主なね らいとする。 本時指導にあたっては、全体の活動では、これまでに学習した文字で構成される単語(果物) を取り上げる。また、活動の始めに一音ずつ確認するなどして児童が自信をもって単語を読んだ り書いたりできるようにする。個別の課題では、これまでに学習した単語を中心にマッチングし たり、なぞったり、視写したりするようにする。また、自分で課題を取り出したり、ヒントカー
ドで確認したりして学習できたときには称賛する。さらに重点課題に取り組みやすいように席の 配置や課題の順番を工夫する。 (2) 本時の目標 A児 ・書き順に気を付けて、なぞったり視写したりできる。 ・白板を確かめながら、果物の絵と文字カードをマッチングできる。 ・できるだけ自分で一字ずつ押さえて三音節の単語を読むことができる。 ・できるだけ一人で順番に課題を取り出したり片付けたりすることができる。 B児 ・始点に気を付けて、なぞり書きをすることができる。 ・白板を確かめながら、果物の絵と単語カードのマッチングができる。 ・教師と一緒に一字ずつ押さえながら、三音節の単語を読むことができる。 ・自分でカードをポケットに入れて順番に課題を取り出すことができる。 C児 ・線のつながりに気を付けて、なぞり書きや視写ができる。 ・文頭の文字を意識して、果物の名前を文字カードで並べることができる。 ・「○○を いれる」を一字ずつ押さえて読むことができる。 ・カードをポケットに入れて順番に課題を取り出し、最後まで取り組むことができる。 D児 ・むすびの書き方などに気を付けて、なぞり書きや視写ができる。 ・白板を確かめながら、果物の絵と文字カードのマッチングができる。 ・できるだけ一人で一字ずつ押さえながら、三音節の単語を読むことができる。 ・カードをポケットに入れて順番に課題を取り出し、最後まで取り組むことができる。 (3) 準備 ①絵本、②果物の絵と文字カード(掲示用)、③模型、④書き順を示した見本(掲示用)、⑤順 番カード、⑥4段ボックス、⑦ヒントカード、⑧マッチングシート、⑨色分けしたプリント (4)展開(学習指導の過程) 数字:学習活動と内容 ■:指導上の留意点 太枠:教師が主に指導するところ(重点課題) A児 B児 C児 D児 導 入 1 始めのあいさつをする。 ■当番表を準備する。 2 ミックスジュースを作ることを知る。 ■絵本「ポポくんのミックスジュース」を提示し、意欲を高める。 3 絵と単語(みかん、すいか、めろん、とまと)をマッチングする。 ■注目できていることを確かめながら読み進める。 ■一字ずつ確認する。 展 開 ① 4 ボックスの1番目からプリントを取り出し、好きな果物を選んで鉛筆でなぞったり視写した りして注文票を作る。 ■これまでに学習した文字で構成される果物の名前を選択肢として準備する。 ■「1、2、3」と教師が言うことで順番を確かめて書けるようにする。 5 注文票を教師と確認し、果物の名前に対応した模型をカップに入れる。 ■文字だけで分からないときには、白板を見るように促す。 ■果物の模型を使用することにより、書く活動や読む活動を積極的に行えるようにする。
展 開 ② 6 果 物 の 名 前 を 文 字カードで並べる。 ■分からなときは、ヒ ン ト カ ー ド や 白 板 を 見るよう促す。 6 果 物 の 絵 と 単 語 カ ー ド の マ ッ チ ン グ をする。 ■ 間 違 っ て い る と き は 白 板 を 一 緒 に 確 か める。 6 果 物 の 名 前 を 文 字 カードで並べる。 ■間違ったときには、 語頭の文字を示し、気 付けるようにする。 6 果 物 の 名 前 を 文 字カードで並べる。 ■ 間 違 っ て い る と き は 白 板 を 一 緒 に 確 か める。 展 開 ③ 7 果 物 の 名 前 を 一 字ずつ音読する。 ■ 全 体 の 活 動 と 同 じ 三 音 節 か ら な る 果 物 を扱う。 7 果 物 の 名 前 を 一 字ずつ音読する。 ■ 全 体 の 活 動 と 同 じ 三 音 節 か ら な る 果 物 を扱う。 7 自 分 の 名 前 を 視 写したり、前時までに 学 習 し た 文 字 を な ぞ ったりする。 ■ 間 違 え や す い 線 に 印を付ける。 7 自 分 の 名 前 や 前 時 ま で に 学 習 し た 単 語 を 視 写 し た り な ぞ ったりする。 ■書き順を示す。 展 開 ④ 8 前 時 ま で に 学 習 し た 文 字 や 単 語 を な ぞ っ た り 視 写 し た り する。 ■ 色 分 け を し て 書 き 順 が 明 確 に な る よ う にする。 8 自 分 の 名 前 を 視 写 し た り 前 時 ま で に 学 習 し た 単 語 を な ぞ ったりする。 ■ 色 分 け し て 始 点 や 線 の つ な が り を 明 確 にする。 8 一 字 ず つ 指 さ し し て 簡 単 な 文 を 音 読 する。 ■ 印 を 手 掛 か り に す る。 8 果 物 の 名 前 を 一 字ずつ音読する。 ■ ゆ っ く り 取 り 組 め る よ う 最 後 の 課 題 と する。三音節の果物を 取り上げる。 終 末 9 プリントをファイルに綴じ、終わりのあいさつをする。 ■終わりの時間に差が生じた場合は、本やパズルなどから好きな活動を選択して、全員終わる まで待つようにする。 (5) 配置図 (6) 評価 A児 好きな果物を選び、進んで視写することができたか。 分からないときに、白板などを見て文字カードを並べることができたか。 自分で一字ずつ押さえて単語を読むことができたか。 自分で課題をボックスから取り出したり片付けたりすることができたか。 B児 好きな果物を選び、始点に気を付けてなぞり書きをすることができたか。 白板を確かめながら、絵と単語カードのマッチングができたか。 教師と一緒に一字ずつ押さえて単語を読むことができたか。 順番に課題をボックスから取り出すことができたか。 C児 好きな果物を選び、線のつながりに気を付けてなぞり書きをすることができたか。 語頭の文字を意識して、文字カードを並べることができたか。 上から順に文字を指さして読むことができたか。 白 板 D児 B児 A児 C児 教卓 ロッカー 入 口 4段ボックス 机
最後まで課題に取り組むことができたか。 D児 好きな果物を選び、むすびなどに気を付けてなぞり書きをすることができたか。 白板を確かめながら、文字カードを並べることができたか。 自分で一字ずつ指さして単語を読むことができたか。 順番に課題をボックスから取り出すことができたか。 ◎:一人でできた ○:言葉掛けなど少ない支援でできた △:手を添える、指さしをするなど の十分な支援が必要だった。