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学習支援センターにおけるオンライン学習支援システムの構築 -新型コロナウィルス感染拡大への対策として-

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(1)

テムの構築 −新型コロナウィルス感染拡大への対

策として−

著者

縣 拓充, 中島 啓貴, 佐藤 智子, 芳賀 満

雑誌名

東北大学高度教養教育・学生支援機構紀要

7

ページ

109-121

発行年

2021-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/00131222

(2)

東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021

1 .はじめに

東北大学学習支援センター(SLAサポート)では, 学部 3 年生以上の学生をピアチューターであるSLA (Student Learning Adviser)として雇用し,理系科 目の学習支援,ライティング支援,英会話の学習支援, などを展開してきた.主に全学教育の授業が行われる 川内北キャンパス内に窓口を設置し,初年次学生を主 な対象に,授業の合間や放課後に気軽に相談に訪れる ことができる場として運用してきた. しかし2020年度,新型コロナウィルスの影響で前期 セメスターの全授業がオンラインに移行し,原則とし て学生のキャンパス内への入構が禁止となった.これ により,学習支援センターでは,従来の形での学習支 援事業の実施が困難となり,その代替として急遽,オ ンラインでの学習支援を実施できる環境整備を進める こととした. 本稿では,東北大学学習支援センターとして構築し た,リモートでの学習支援のシステムを紹介するとと もに,その実施の中で明らかになった成果と課題につ いて報告する.まず第 2 章では当センターの学習支援 事業の運営体制及び活動概要を説明する.続く第 3 ・ 4 章では,第 2 章で述べた学習支援の仕組みを,どの ようにオンラインに移設したかを紹介する.第 3 章で 全科目に共通したシステムを紹介し,第 4 章で,科目 ごとの仕組みと成果,課題を述べたい. 以下には,共著者間での執筆分担を示しておく. 第 1 章・第 2 章:縣,中島,佐藤 第 3 章:縣,中島 第 4 章:4.1 中島・縣,4.2 佐藤,4.3 縣,4.4 佐藤,     4.5 佐藤 第 5 章:芳賀

2 .SLA サポートとは

2.1 SLA サポートの概要 東北大学のSLAサポートは,主に全学教育段階の 学習を支援する窓口として,2010年に設置された.具 体的には,TA制度に準拠して設計された「SLA制度」 の運用を基盤としながら,学生同士の「学び合い」の 文化を醸成し,主体的・自律的な学習を実践的に支援・ 促進することを使命としている. SLAは学部 3 年生から大学院生までの学生によっ て構成され,現在は理系 3 科目(物理・数学・化学), ライティング,英会話,留学生向け日本語会話,企画 という 7 種の学習支援を展開している.担当種毎に「部 会」を構成し,すべてのSLAがいずれかの部会に所 属している.部会内では,担当を同じくするSLA同

【特集・報告】

学習支援センターにおけるオンライン学習支援システムの構築

-新型コロナウィルス感染拡大への対策として-

縣   拓 充

1)

, 中 島 啓 貴

1)

, 佐 藤 智 子

1)*

, 芳 賀   満

1) 1 )東北大学高度教養教育・学生支援機構 *)連絡先:〒980-8576 仙台市青葉区川内41 東北大学高度教養教育・学生支援機構 学習支援センター [email protected] 東北大学学習支援センター(SLAサポート)では,学部 3 年生以上の学生をSLA(Student Learning Adviser) として雇用し,理系科目の学習支援,ライティング支援,英会話の学習支援,などを展開してきた. 2020年度,新型コロナウィルスの影響で従来の形での学習支援事業の実施が困難となり,その代替として急遽, オンラインでの学習支援を実施できる環境整備を進めてきた.本稿では,東北大学学習支援センターが構築した, リモートでの学習支援のシステムを紹介するとともに,その実施の中で明らかになった成果と課題について報告する. 特に初年次学生にとっては,オンライン化によってSLAの活動の様子が周囲から見えにくくなり,利用に対する 心理的な敷居の高さとなった可能性が指摘できる.しかし,川内キャンパス以外に所属する多くの高年次学生にとっ ては,オンラインによりアクセスが容易となり,利用の増加に繋がった.

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─  110  ─ 士の情報交換や,学習支援の質を維持・向上させるた めの方策に関する議論等を行っている. このうち理系科目とライティングは,2019年度まで は川内北キャンパス内,マルチメディア教育研究棟(M 棟) 1 階に窓口を設け,対面にて支援活動を行ってい た.理系科目については,授業の中での説明や出され た課題について,理解できない箇所や,躓いた箇所が あった際に利用に訪れる学生が多い.他方で,少数で はあるが,発展的な内容の学習を自主的に進めており, その内容の相談や議論のために利用する学生も存在す る.ライティング支援では,「レポートの基本的な書 き方を教えて欲しい」,あるいは,授業で課されたレ ポート課題について「何を書けばよいか分からない」 「これでよいかチェックして欲しい」という利用が大 半を占める.近年は留学生による日本語の文法や表現 に関するネイティブチェックを希望する利用が増加傾 向にある. 英会話や日本語会話は,自主的に会話力を高めよう という学生が利用する.英会話では 1 対 1 での学習支 援も行ってきたが,英会話・日本語会話ともに,複数 人参加型によるワークショップ形式の支援を中心とし てきた.その中では,その場に集まったメンバーで会 話やゲームを楽しみ,英語・日本語力を高めることを 試みてきた.副次的な効果として,その場が学生にとっ て学内の一つの居場所となり,継続的に通う利用者が 多いという特徴もあった. 企画部会は,上記のような科目や専門の枠にこだわ らない学習支援を展開すべく2016年後期に新設された 部会である.主な活動としては,哲学カフェ「かんが えるソファ」の企画・実施を行ってきた.また2018年 度から,宮城県美術館と連携して,美術館に一緒に赴 く企画も実践している. SLAの採用にあたっては,採用試験と面接を実施 し,学習支援への意欲や考え方,科目成績,コミュニ ケーション能力などを基準に選考を行っている.SLA としての雇用は半年ごと( 4 月~ 9 月・10月~翌 3 月) であるが,高い割合で更新を行っている.特に複数年 に渡って活動を行っているSLAは,SLA内でメンター としての役割も担っている. 2.2 対面での SLA の支援活動 本節では,従来のSLAサポートの仕組みや環境の うち,各科目の支援に概ね共通する点を述べる.これ らは,オンラインに移設する上で特に配慮した点に関 連している. 2.2.1 利用方法 SLAの各サポートは,学習イベント等の企画実施 活動を除き,基本的に,予約不要のdrop in方式を採 用していた.それにより,学生は授業の空きコマや放 課後に,気軽に利用することが可能となる.ただし, 混雑した場合に限り,「待ち札」を発行し,順番に案 内をしていた. 2.2.2 支援・対応の方法と流れ 上述した通り,従来はM棟 1 階に窓口があり,そ こで相談受付を行っていた.どの科目の支援にも共通 して,対応の冒頭は質問内容や要望について丁寧に聞 き取りを行っている.その際,質問箇所に関連する教 科書や板書ノート,配布資料等がある場合は見せても らい,必要に応じてその資料を複写した上で対応時に 使用した.対応中は,質問したい箇所を確認しながら, 「その問題を解決してあげること」だけではなく,利 用者が本当に必要としている支援が何かを判断し,実 際の対応に入るようにしている. また,計算や図示をしながら検討を行う際には,計 算用紙やホワイトボードを必要に応じて利用した. 2.2.3 対応記録(カルテ)の作成と情報共有 SLAサポートでは,各対応についての情報をメン バー間で共有する.また,よりよい支援方法の可能性 を議論するために,紙媒体で「対応記録(「カルテ」)」 を作成している.カルテの中では,利用者の名前や所 属,利用日時,対応にあたったSLA名のほか,学生 の質問内容,課題の見立て,対応方針やSLA自身の 振り返りなどについて記録を残している. また,頻繁に相談のある質問のうち,多くのSLA にとって対応が難しいようなケースについては,対応 方法や支援のコツを科目ごとにSLA間で議論し,「tips」 としてまとめていた.これらはすべてファイリングし,

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 個人の研修や新規SLAの引継ぎに利用したほか,対 応中に参照するものとしても用いていた.   2.3 その他の仕組み SLAサポートの活動として,対学生の支援活動以 外の側面,例えばSLAが学習支援者としての能力, スキルや態度を高めていくような学びの仕組みも重要 である.同時に,センターの活動を学生に広く知って もらうための広報の活動の活動も不可欠である.本節 では,それら対学生の支援活動以外の仕組みについて 述べる. 2.3.1 活動時間帯・シフト SLAの活動は,学生が利用しやすく,またSLAが 出勤できる時間帯として,平日の昼休み~ 5 限の時間 を中心に行われていた.各SLAは,決まった曜日に, 授業 2 ~ 3 コマ分の時間を連続して勤務していた. また,テスト実施日の直前には理系科目の利用者が 大幅に増加するため,窓口の時間や待機するSLAの 人数を拡大する等により調整を行っている. 2.3.2 SLA自身の学び SLAサポートでは,SLA自身の学習支援者として の学びやSLA同士の交流を重要視し,様々な取り組 みを行っている. 特に重要なものとして,毎回のシフトの冒頭と終了 時に実施する,「始礼」及び「ブリーフミーティング」 が挙げられる.前者は,その週の共有事項を確認する こと,後者は,その日の対応の中で,検討・議論した いことを持ち寄ることを目的としたものである.また, 科目担当を超えたSLA同士のコミュニケーションの 場としての位置づけも有している. さらに, SLA相互の学びの場として,ピアレビュー やビデオリフレクションを実施していた.これらは, 他のSLAの対応の様子を見ることや,自己の支援の 過程をビデオで記録し,後に振り返ることを通じ,自 らの支援をリフレクションし,新しい気づきを得るこ とを意図したものである. 特に新規採用のSLAには,メンター制を導入して いる.相対的に経験年数の長いSLAがメンターとな り,新規SLAはまず,メンターとなるSLAが行う対 応を観察する.次第に,メンターによる補助や助言を 受けながら主担当として対応するようになり,そこで 問題がなければ 1 人での対応に移行している. その他,SLA全体,あるいは新規SLA向けの研修 会などを実施し,セメスターごとに設定されるSLA の目標や,学習支援者としての心構えを伝えている. 2.3.3 広報・学習情報の発信 支援を必要としている学生に確実にSLAサポート の存在を周知するために,基本的には,主に 4 つの経 路や方法で広報や情報発信を行っていた. 第 1 に, 1 年生向けのガイダンスにて,センターの 案内と利用ガイドブックの配布を行っている.第 2 と して,全学教育が行われる川内の講義棟でのポスター 掲示や,当日可能な支援を示した看板の設置が挙げら れる.第 3 に,学務情報システムを利用した案内や告 知が挙げられる.その他,第 4 として,webやSNS での広報がある.センターのHP,twitterのほか, 2018年度末には,学習情報を掲載するblogページを 開設し,情報発信を行っている.   2.4 2020年度前期の体制 2020年前期のSLAの構成は,理系科目(物理・数学・ 化学)担当19名,ライティング担当 2 名,英会話担当 6 名,留学生向け日本語会話担当 4 名,企画担当 5 名の, 計36名であった.このうち,昨年度からの継続メンバー が25名,新規メンバーが11名であり,約 3 分の 1 は2020 年度より新しく活動を始めるメンバーであった. SLAのオンライン環境を構築する際は,利用学生 へのチュータリングを行うことだけではなく,メン ターとのチームによる対応や対応後のリフレクション など,新規メンバーに対する研修の仕組みを考慮に入 れることも必要となっている.

3 .オンラインでの学習支援

2019年度まで,SLAは上記の仕組みや環境で活動 を展開し,支援や学びの仕組みを精緻化してきた.し かし冒頭で述べた通り,2020年 4 月,新型コロナウィ ルスの影響で,対面での活動が全て困難になった.同

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─  112  ─ 時に,SLA自身もリモートで勤務することが必要な 状況となった. 3.1 オンライン学習支援を支えるシステム環境 オンラインでピアチュータリングを行うにあたり, 特に2.2節で紹介した,1)利用方法,2)支援・対応 の方法と流れ,3)対応記録の作成と情報共有,の 3 点を支える環境や仕組みについて,利用可能な様々な サービスを比較しながら検討を行った. その結果,東北大学が2019年より導入していた,G  Suite for Educationのサービスを中心に組み合わせる かたちでシステムを構築した.下記に,それぞれにつ いて述べる. 3.1.1 予約システム SLAの利用に際して,従来はdrop inの形式をとっ ていたが,リモートの支援ではそれが困難であるため, 事前予約制を採用した.事前予約は,随時メールで受 け付けることも可能であるが,その場合は受付人数を 確認・調整することや,受付の可否を返信することに 少なくない手間を要する.そこで,希望する科目を利 用学生が選択でき,自動返信ができるような予約シス テムを導入した.利用者にとって分かりやすいイン ターフェースであり,またスタッフ側で予約リストや 利用者一覧をDLできるものなどを検討し,edisone のサービスを利用した. それにより,利用者は希望する科目について,空き のある時間帯をクリックし,必要事項を入力して予約 することができるようになった.予約が完了すると, 自動で案内メールや前日メールが配信される.他方で センターは,その日の予約一覧をDLし,シフトごと に共有することが可能となった. なお,同一の学生が複数個の予約をすることを防ぐ 目的で,予約は1つに制限した.ただし当日空きがある 場合に限り,電話やメールでの追加予約は可能とした. なお予約時には,利用者氏名や所属,メールアドレ ス,希望科目のほか,要望や大まかな相談したいこと なども入力する項目も設けた. 3.1.2 オンライン通話 オンラインのビデオ通話には,google meetを採用 した.meetでは,東北大メールのアカウントを有し ていれば,アカウント登録等を行わなくてもミーティ ングルームを立てたり,参加したりすることができる. また入室を東北大アカウントに制限するという特徴 は,セキュリティ面で安心材料となった.さらに,新 規メンバーの研修やチーム対応のために, 3 人以上の 通話が時間無制限で利用できることや,通話の過程が 録画でき,そのデータがオンラインドライブ上に自動 保存されるということも大きな利点であった. 文字情報の共有は,meetの機能の一つであるchat を活用した.その他,理系科目に関しては,問題や計 算過程,図の共有のために,オンラインホワイトボー ドを用いた.これに関しては4.1にて詳しく述べる. 3.1.3 対応記録(カルテ)の作成と情報共有 従来は紙で作成していた対応ごとの記録(カルテ) についても,リモートで共有するためにオンラインの システムを導入する必要があった.今回,G suiteに 含まれているGoogle FormおよびGoogle Classroom を組み合わせることで,それを可能にするシステムを 構築した. また対応をオンラインで実施するにあたり,Google  Formを利用してカルテも電子化し,Classroom内で 共有する方法をとった.その他,教科書や過去の対応 の資料や,利用学生からのアンケート回答なども同様 にClassroom内で共有した. 著者名・題名 て,利用可能な様々なサービスを比較しながら検討を 1 行った. 2 その結果,東北大学が2019 年より導入していた,G 3

Suite for Education のサービスを中心に組み合わせるか 4 たちでシステムを構築した.下記に,それぞれについ 5 て述べる. 6 3.1.1 予約システム 7 SLA の利用に際して,従来は drop in の形式をとっ 8 ていたが,リモートの支援ではそれが困難であるため, 9 事前予約制を採用した.事前予約は,随時メールで受 10 け付けることも可能であるが,その場合は受付人数を 11 確認・調整することや,受付の可否を返信することに 12 少なくない手間を要する.そこで,希望する科目を利 13 用学生が選択でき,自動返信ができるような予約シス 14 テムを導入した.利用者にとって分かりやすいインタ 15 ーフェースであり,またスタッフ側で予約リストや利 16 用者一覧をDL できるものなどを検討し,edisone のサ 17 ービスを利用した. 18 それにより,利用者は希望する科目について,空き 19 のある時間帯をクリックし,必要事項を入力して予約 20 することができるようになった.予約が完了すると, 21 自動で案内メールや前日メールが配信される.他方で 22 センターは,その日の予約一覧をDL し,シフトごと 23 に共有することが可能となった. 24 なお,同一の学生が複数個の予約をすることを防ぐ 25 目的で,予約は1 つに制限した.ただし当日空きがあ 26 る場合に限り,電話やメールでの追加予約は可能とし 27 た. 28 なお予約時には,利用者氏名や所属,メールアドレ 29 ス,希望科目のほか,要望や大まかな相談したいこと 30 なども入力する項目も設けた. 31 3.1.2 オンライン通話 32 オンラインのビデオ通話には,google meet を採用し 33 た.meet では,東北大メールのアカウントを有してい 34 れば,アカウント登録等を行わなくてもミーティング 35 ルームを立てたり,参加したりすることができる.ま 36 た入室を東北大アカウントに制限するという特徴は, 37 セキュリティ面で安心材料となった.さらに,新規メ 38 ンバーの研修やチーム対応のために,3 人以上の通話 39 が時間無制限で利用できることや,通話の過程が録画 40 でき,そのデータがオンラインドライブ上に自動保存 41 されるということも大きな利点であった. 42 文字情報の共有は,meet の機能の一つである chat を 43 活用した.その他,理系科目に関しては,問題や計算 44 過程,図の共有のために,オンラインホワイトボード 45 を用いた.これに関しては4.1 にて詳しく述べる. 46 3.1.3 対応記録(カルテ)の作成と情報共有 47 従来は紙で作成していた対応ごとの記録(カルテ) 48 についても,リモートで共有するためにオンラインの 49 システムを導入する必要があった.今回,G suite に含 50

まれているGoogle Form および Google Classroom を組 51 み合わせることで,それを可能にするシステムを構築 52 した. 53 また対応をオンラインで実施するにあたり,Google 54 Form を利用してカルテも電子化し,Classroom 内で共 55 有する方法をとった.その他,教科書や過去の対応の 56 資料や,利用学生からのアンケート回答なども同様に 57 Classroom 内で共有した. 58 59 図1.SLA のオンライン対応の様子 60 61 3.2 その他の仕組み 62 東北大学の授業や SLA の学習支援の仕組みのオン 63 ライン化に伴い,シフト,SLA 自身の学び,広報の形 64 も変更することが必要だった. 65 3.2.1 シフト 66 従来は学生の利用しやすさを考慮し,授業時間を考 67 慮してサポートのシフト時間を設けていた.しかし今 68 期は,学生が受講する授業の多くがオンデマンド型で 69 あったため,授業時間にこだわらずにシフト時間を設 70 けた.全SLA について,週に 1 回,午後に 3.5 時間勤 71 務を行う形に揃えた.SLA はこの時間の中で,オンラ 72 図 1 .SLA のオンライン対応の様子

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 3.2 その他の仕組み 東北大学の授業やSLAの学習支援の仕組みのオン ライン化に伴い,シフト,SLA自身の学び,広報の 形も変更することが必要だった. 3.2.1 シフト 従来は学生の利用しやすさや授業の開講コマを考慮 し,午後の 3 ~ 5 限時を中心にしながら,曜日ごとに 異なるシフト時間を設けていた.しかし今期は,学生 が受講する授業の多くがオンデマンド型であったた め,企画を除くすべてのサポートについて,月~金曜 の13:30~16:30の時間帯にサポートを実施すること とした.またSLAには,その前後の時間に,オンラ インで始礼・ブリーフミーテイングに参加することを 求めた. 3.2.2 SLA自身の学び SLA自身の学びの機会として,シフトごとのミー ティングや,SLA相互のピアレビューやビデオリフ レクションを行っていた.始礼やブリーフミーティン グは,決まったMeetのミーティングルームで,特定 の時間に集まって複数人のビデオ通話をする形をとっ た.議事録を画面上でリアルタイムで共有できるのは, オンライン化によってスムーズになった点だと言える. ピアレビューやチーム対応は,Meetにおいて時間 無制限で複数人通話が可能であったため,利用者 1 名 に対し,SLAが複数名ミーティングルームに入るこ とで実現した.さらに,利用者から許諾の得られた対 応は録画を行い,そのリンクを全体に共有することで, 隙間時間に他のSLAの対応を視聴し,レビューする ことも可能となった.この仕組みにより,SLA相互 のピアレビューは,従来よりも活発に行われた. 3.2.2 広報・学習情報の発信 SLAサポートの存在を知ってもらうための広報に ついては,従来から大きな変更が迫られたと言える. 例えば,講義室前にポスターを掲示することで,活動 やイベントの周知を行っていたが,学生がキャンパス に来ないために,この手段は利用できなくなった.ま た,学部ごとの新入生ガイダンスがオンライン実施に なったことにより,SLAの利用ガイドブックが配布 されなかった学生も少なくなかった.さらに, 1 年生 に関しては,相互に会う機会がなく友人関係が構築さ れていないため,口コミ等によって存在が知られてい くことも期待できなかった.そのため,今期の情報発 信はほぼ 2 つのルートに限られたと言える. 1 つは, 学務情報システムを利用した全学生へのメール配信で ある.SLAサポートの活動やイベント情報は,定期 的にシステムを用いて案内した. そして,より力を入れたこととして,Twitterが挙 げられる.従来はポスター掲示していたSLAの利用 案内や,  1 ・ 2 年生の学びに役立つ情報とともに,東 北大生の興味を促すようなtweetを定期的に発信し, 特に 1 年生からフォローしてもらうよう努めながら運 用を行った.

4 .科目ごとのオンライン学習支援の仕組みと

成果,課題

上記のシステムを利用し,事前の研修や打ち合わせ を重ねた上で,東北大の授業期間に合わせ, 5 月11日 からオンライン対応を開始した. 本章では,各科目の支援の環境や仕組みをより具体 的に説明し,その成果や課題についても述べる. 4.1 理系科目 4.1.1 支援の目的と仕組み 理系科目支援の目的は,物理・数学・化学の全学教 育科目の範囲に関して,学生の自主的な学習を促すこ とである.方法としては,授業の分からない箇所や授 業の課題についての質問に個別対応することで実現し 東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 インでの支援活動を行う他,その前後に始礼・ブリー 1 フミーティングに参加する. 2 3.2.2 SLA 自身の学び 3 SLA 自身の学びの機会として,シフトごとのミーテ 4 ィングや,SLA 相互のピアレビューやビデオリフレク 5 ションを行っていた.始礼やブリーフミーティングは, 6 決まった Meet のミーティングルームで,特定の時間 7 に集まって複数人のビデオ通話をする形をとった.議 8 事録を画面上でリアルタイムで共有できるのは,オン 9 ライン化によってスムーズになった点だと言える. 10 ピアレビューやチーム対応は,Meet において時間無 11 制限で複数人通話が可能であったため,利用者1 名に 12 対し,SLA が複数名ミーティングルームに入ることで 13 実現した.さらに,利用者から許諾の得られた対応は 14 録画を行い,そのリンクを全体に共有することで,隙 15 間時間に他のSLA の対応を視聴し,レビューすること 16 も可能となった.この仕組みにより,SLA 相互のピア 17 レビューは,従来よりも活発に行われた. 18 3.2.2 広報・学習情報の発信 19 SLA サポートの存在を知ってもらうための広報に 20 ついては,従来から大きな変更が迫られたと言える. 21 例えば,講義室前にポスターを掲示することで,活動 22 やイベントの周知を行っていたが,学生がキャンパス 23 に来ないために,この手段は利用できなくなった.ま 24 た,学部ごとの新入生ガイダンスがオンライン実施に 25 なったことにより,SLA の利用ガイドブックが配布さ 26 れなかった学生も少なくなかった.さらに,1 年生に 27 関しては,相互に会う機会がなく友人関係が構築され 28 ていないため,口コミ等によって存在が知られていく 29 ことも期待できなかった.そのため,今期の情報発信 30 はほぼ2 つのルートに限られたと言える.1 つは,学 31 務情報システムを利用した全学生へのメール配信であ 32 る.SLA サポートの活動やイベント情報は,定期的に 33 システムを用いて案内した. 34 そして,より力を入れたこととして,Twitter が挙げ 35 られる.従来はポスター掲示していたSLA の利用案内 36 や, 1・2 年生の学びに役立つ情報とともに,東北大 37 生の興味を促すようなtweet を定期的に発信し,特に 38 1 年生からフォローしてもらうよう努めながら運用を 39 行った. 40 41 図2.オンラインでのミーティングの様子 42 43

4. 科目ごとのオンライン学習支援の仕組みと成

44

果,課題

45 上記のシステムを利用し,事前の研修や打ち合わせ 46 を重ねた上で,東北大の授業期間に合わせ,5 月 11 日 47 からオンライン対応を開始した. 48 本章では,各科目の支援の環境や仕組みをより具体 49 的に説明し,その成果や課題についても述べる. 50 51 4.1 理系科目 52 4.1.1 支援の目的と仕組み 53 理系科目支援の目的は,物理・数学・化学の全学教 54 育科目の範囲に関して,学生の自主的な学習を促すこ 55 とである.方法としては,授業の分からない箇所や授 56 業の課題についての質問に個別対応することで実現し 57 ている.自主的な学習を促すため,課題の答えを単に 58 教えるのではなく,「利用学生とSLA が一緒に考える」 59 というコンセプトで対応を行っている. 60 先述した通り,従来位の理系科目支援の対応はdrop 61 in 形式を採用していた.そこでは,対応時間について 62 45~50 分という基本時間を設けていたものの,利用待 63 ちの学生がいる場合を除いて延長が可能であった.逆 64 に,試験期間などは利用が殺到するため,1 件あたり 65 を 30 分程度で対応することが必要になるケースもあ 66 った.結果として,従来の対応時間は,45~50 分程度 67 を基本としつつも,利用者の状況や混雑具合に応じて, 68 多様であったと言える. 69 理系科目支援を事前予約制でオンライン化するにあ 70 たり,従来の平均対応時間を考慮し,45 分間と設定し 71 た.その中で,利用目的の聞き取りや問題の共有をし 72 図 2 .オンラインでのミーティングの様子

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─  114  ─ ている.自主的な学習を促すため,課題の答えを単に 教えるのではなく,「利用学生とSLAが一緒に考える」 というコンセプトで対応を行っている. 先述した通り,従来位の理系科目支援の対応は drop in形式を採用していた.そこでは,対応時間に ついて45~50分という基本時間を設けていたものの, 利用待ちの学生がいる場合を除いて延長が可能であっ た.逆に,試験期間などは利用が殺到するため, 1 件 あたりを30分程度で対応することが必要になるケース もあった.結果として,従来の対応時間は,45~50分 程度を基本としつつも,利用者の状況や混雑具合に応 じて,多様であったと言える. 理系科目支援を事前予約制でオンライン化するにあ たり,従来の平均対応時間を考慮し,45分間と設定し た.その中で,利用目的の聞き取りや問題の共有をし た上で,対応を行う形式をとった. 4.1.2 環境の整備 SLAと利用学生間での質問や解答の共有には,オ ンラインホワイトボードであるGoogle Jamboardを採 用した.編集権限を共有しておけば,SLAと利用者 の双方が書き込みや画像の貼り付けなどを行うことが できる.なお理系科目の支援では,数式や図表を書く 機会が多いことから,希望するSLAにはペンタブレッ トを配布した. 対応ではGoogle Meet(以下,Meet)の画面共有 機能を用いることもあった.Meetではテレビ電話を しながら画面共有をすることが可能である.画面共有 機能により,現在参照すべき資料を学生とSLAの間 で共有した.また,有用なWebサイトを調べている 画面を共有するという使い方もみられた.画面共有を 行うと,録画に反映されるため動画にて振り返る場合 にも有用である.  また,Google Form(以下,Form)を用いて学生 がSLAにファイルを送信できるようにした.画像の 資料の場合は,Google Jamboard(以下,Jamboard) 上に貼り付けさせたが,ファイルの形式によっては貼 り付けができないためこのような措置をとった.利用 学生がJamboardの取り扱いに慣れていない場合や, 動作環境によりJamboardを利用できない場合にも ファイル送信のFormを利用した. 4.1.3 利用実績 2020年度前期の利用者延数は259名,利用者実数は 95名であった(表 1 ).これは前年度前期の利用者延 数625名からは約 6 割の減少であり,前年度前期利用 者実数196名からはおおよそ半減した.利用者が減少 した理由としては,例年行っていた広報の形式である ポスターや看板が利用できなかったことが大きな要因 の一つと考えられる.その他,予約制を採用したこと が,利用のハードルを上げていた可能性もある. また,利用傾向について例年と比べて大きな変化が みられた.ひとつは,例年利用の多い数学の利用が大 幅に減少したことが挙げられる.これについては授業 形態の変化が数学の科目に特に影響した可能性が考え られる.また,例年の理系対応では「授業についてい けていないので全体的に教えてほしい」という質問が 少なからずあったが,今期はほぼみられなかった.授 業についていけていない層まで情報が届いていない可 能性がある.あるいは,予約制により明確でない質問 がしにくい可能性も考えられる. 4.1.4 成果と課題 オンライン化に伴う支援方法の変化を検討するため に,対応カルテ内の「支援の方法」についてのチェッ クリストの分析を行った(縣・中島, 2020).このリ ストは,①解説・説明をする,②ヒントを与えて考え させる,③教科書や板書ノートを一緒に読み直す,④ 参考書や参考サイトを探す,など 9 種類から,対応に 当たったSLAが,各対応の中で行った中心的な支援 の方法にチェック(複数選択可)を入れるものである. 著者名・題名 た上で,対応を行う形式をとった. 1 4.1.2 環境の整備 2 SLA と利用学生間での質問や解答の共有には,オン 3 ラインホワイトボードであるGoogle Jamboard を採用 4 した.編集権限を共有しておけば,SLA と利用者の双 5 方が書き込みや画像の貼り付けなどを行うことができ 6 る.なお理系科目の支援では,数式や図表を書く機会 7 が多いことから,希望するSLA にはペンタブレットを 8 配布した. 9 対応ではGoogle Meet(以下,Meet)の画面共有機能 10 を用いることもあった.Meet ではテレビ電話をしなが 11 ら画面共有をすることが可能である.画面共有機能に 12 より,現在参照すべき資料を学生とSLA の間で共有し 13 た.また,有用なWeb サイトを調べている画面を共有 14 するという使い方もみられた.画面共有を行うと,録 15 画に反映されるため動画にて振り返る場合にも有用で 16 ある. 17

また,Google Form(以下,Form)を用いて学生が SLA 18 にファイルを送信できるようにした.画像の資料の場 19 合は,Google Jamboard(以下,Jamboard)上に貼り付 20 けさせたが,ファイルの形式によっては貼り付けがで 21 きないためこのような措置をとった.利用学生が 22 Jamboard の取り扱いに慣れていない場合や,動作環境 23 により Jamboard を利用できない場合にもファイル送 24 信のForm を利用した. 25 4.1.3 利用実績 26 2020 年度前期の利用者延数は 259 名,利用者実数は 27 95 名であった(表 1).これは前年度前期の利用者延数 28 625 名からは約 6 割の減少であり,前年度前期利用者 29 実数196 名からはおおよそ半減した.利用者が減少し 30 た理由としては,例年行っていた広報の形式であるポ 31 スターや看板が利用できなかったことが大きな要因の 32 一つと考えられる.その他,予約制を採用したことが, 33 利用のハードルを上げていた可能性もある. 34 また,利用傾向について例年と比べて大きな変化が 35 みられた.ひとつは,例年利用の多い数学の利用が大 36 幅に減少したことが挙げられる.これについては授業 37 形態の変化が数学の科目に特に影響した可能性が考え 38 られる.また,例年の理系対応では「授業についてい 39 けていないので全体的に教えてほしい」という質問が 40 少なからずあったが,今期はほぼみられなかった.授 41 業についていけていない層まで情報が届いていない可 42 能性がある.あるいは,予約制により明確でない質問 43 がしにくい可能性も考えられる. 44 45 表1.2019 年と 2020 年の SLA 利用者数の比較 46 2019 年前期 対面での支援 2020 年前期 オンライン支援 利用延数 利用実数 利用延数 利用実数 理系科目 625 196 259 95 ライティング 148 83 42 20 英会話 232 55 164 69 日本語会話 99 21 109 46 企画[哲学カフェ] 8 - 113 - 47 4.1.4 成果と課題 48 オンライン化に伴う支援方法の変化を検討するため 49 に,対応カルテ内の「支援の方法」についてのチェッ 50 クリストの分析を行った(縣・中島, 2020).このリス 51 トは,①解説・説明をする,②ヒントを与えて考えさ 52 せる,③教科書や板書ノートを一緒に読み直す,④参 53 考書や参考サイトを探す,など9 種類から,対応に当 54 たったSLA が,各対応の中で行った中心的な支援の方 55 法にチェック(複数選択可)を入れるものである. 56 特に「問題を解く」タイプの対応が中心となる物理・ 57 数学系の科目に絞り,2019 年度前期(対面 349 件)と 58 2020 年前期(オンライン 215 件)の利用の中で,対応 59 の方法が変化したかを量的に検討した. 60 その結果,オンライン化によって「教科書やノート 61 を一緒に読み直す」対応が顕著に減少(30.1%→21.4%) 62 し,「解説・説明をする」(61.6%→66.0%),「ヒントを 63 与えて考えさせる」(37.0%→54.4%)対応や,「利用者 64 の解答を確認・コメントする」(3.7%→15.7%)対応が 65 有意に増加していた. 66 このことは,SLA によるリフレクションからも聞く 67 ことができた.特にオンラインの環境下では,学生の 68 様子や計算状況をリアルタイムで把握することには限 69 界がある.また教科書の中で,学生の躓きに関連する 70 箇所を一緒に探して読み合わせることや,参考書を調 71 べたりすることが簡単にはできない.そのため,対面 72 表 1 .2019年と2020年の SLA 利用者数の比較

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 特に「問題を解く」タイプの対応が中心となる物理・ 数学系の科目に絞り,2019年度前期(対面349件)と 2020年前期(オンライン215件)の利用の中で,対応 の方法が変化したかを量的に検討した. その結果,オンライン化によって「教科書やノート を一緒に読み直す」対応が顕著に減少(30.1%→21.4%) し,「解説・説明をする」(61.6%→66.0%),「ヒント を与えて考えさせる」(37.0%→54.4%)対応や,「利 用者の解答を確認・コメントする」(3.7%→15.7%) 対応が有意に増加していた. このことは,SLAによるリフレクションからも聞 くことができた.特にオンラインの環境下では,学生 の様子や計算状況をリアルタイムで把握することには 限界がある.また教科書の中で,学生の躓きに関連す る箇所を一緒に探して読み合わせることや,参考書を 調べたりすることが簡単にはできない.そのため,対 面での対応時には,解説を行うことは最小限に,利用 学生に考えさせるような対応を積極的に行っていた SLAも,オンラインでは「解説する」比率を高める ことが余儀なくされたようである.合わせて,利用者 に計算をさせた際は,リアルタイムで状況を把握する ことは諦め,随時解答を確認するという方法をとらざ るを得なかったという報告もあった. その他,SLAが「学生と一緒に悩む」対応も増加 していた(18.6%→30.7%).このことは学生が持つ教 科書やノートをSLA側が容易に参照できないために, 授業内で提示されたヒントをSLAが利用できず,自 らの知識や手持ちの資料から対応せざるを得なくなっ たケースが増えていたことが考えられる. 以上を総じて,理系対応に関して言えば,オンライ ン化したことで,いくらかSLAの対応の仕方に影響 があったと言える.利用者の利用満足度(100点満点) の平均自体は,2019年度の95.2に比較し,95.3と差は なく,多くの学生は対応に満足していたことが推察さ れる.したがって,オンラインによる対応でも,基本 的には学生の抱えていた問題を解決できており,学生 の利用のニーズを満たしていたと考えられるが,そこ に至るアプローチや支援の仕方が変化したことが示唆 される. 4.2 ライティング支援 4.2.1 支援の目的と仕組み アカデミック・ライティングの習得は,大学におけ る学修の基本である.とりわけ初年次学生に対するラ イティング教育は重要と言える. 東北大学の全学教育課程における多くの授業でもレ ポート課題が出されるが,東北大学では初年次学生の ためにアカデミック・ライティングの基本を教える授 業は少なく,またそのような授業があっても必修とは なっていない.多くの初年次学生はレポートの書き方 を十分に授業で教わることなく,授業で出されるレ ポート課題を執筆する状況となる. そこで,学習支援センターでは, 2 つの方法でのラ イティング支援を行っている.第 1 に,主に教員が担 当する形で,レポート作成の基本を学ぶためのワーク ショップを定期的に開催してきた.第 2 に,SLAに よる個別相談窓口を開設している.その中で,個々の 学生が抱えるライティングの悩みや不安に対して SLAが相談に乗り,あるいは実際に書かれたレポー トを見ながら,レポートの構造や文脈構成,論理展開 などに関してアドバイスを行ってきた.最近では,留 学生による利用も増えている.留学生の利用の場合, その多くは日本語表現のチェックを希望するものであ る. 2020年度のオンライン化により,ライティング支援 の窓口対応において2019年度以前から変化したのは, 主に以下の 2 点である.第 1 に,事前予約制となり, 1 人あたりのセッションの時間が45分となった(後期 セメスターからは60分に変更)点である.それ以前は, 1 時間を超えるケースが多く,場合によっては 2 時間 程度の対応になることもあった.オンラインでは,次 の予約が入っていなければ延長する場合もあるが,基 本的には45分という短い時間で 1 回の対応を終わらせ ることになる.第 2 に,相談者である学生がすでに執 筆した文章やレポートを持っている場合,それを SLAと相談者の間で共有する必要がある.以前はそ れを出力した紙で提供してもらい,センター側で複写 していた.オンライン化以降は,そのデータのやりと りもオンライン上で行うため,作成したファイルの データを送ってもらう必要が生じた.また,SLAか

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─  116  ─ ら何らか指摘やアドバイスを行う際にも,オンライン 上の口頭での説明だけでは相談者にとってわかりにく い場合が多い.そこで,相談者から送付・共有された WordファイルやGoogleドキュメントのファイル上 に,SLAがコメントをつけたり,要修正箇所にハイ ライトを入れたりして,最後にコメントを付したファ イルのデータを利用学生に送るなどのやりとりが新た に発生している. 4.2.2 利用実績 2020年度前期のライティング利用者の延べ人数は42 名で,実数では20名だった(表 1 ).このうち,約半 数が学部 1 年生,もう半数は留学生であった. 昨年度は授業と連携した初年次学生利用が非常に多 かったために比較は難しい.留学生の利用については, 近年その割合が増加傾向にある.ここ数年グローバル ラーニングセンターとの連携を強化し,留学生に対す る学習支援利用案内を定期的に実施しているために利 用が増加している面もある.同時に,今回のオンライ ン化によって,物理的な移動の負担が軽減されたため に,いくらか利用のしやすさに繋がっている可能性は ある. 一方,急なオンライン支援体制の構築に尽力するこ ととなった影響で,例年は実施していたワークショッ プの開催は断念することとなった1) 4.2.3 成果と課題 オンライン化により,利用者の大幅な減少を懸念し ていたが,実際には,用意できた予約枠の数から見て, 利用率は総じて高かったと言える.オンライン化がど れほど影響しているかは厳密には分からないが,特に 留学生の積極的な利用が見られた.留学生に対する学 習支援としてオンラインという手段は一定の利点があ ると考えられる. 一方で,初年次学生に対してのライティング支援に ついては,課題が残った.理系科目と同様に,初年次 学生の利用は相対的に少なかった.初年次学生の場合, 自らのライティング能力の現状や課題を自己分析する ことが難しく,個別相談対応による学習支援には一定 の必要性と効果が見込まれる.しかし,オンラインの 場合には,他の学生が支援を受けている様子などを見 ることができず,初年次学生にとっての利用の敷居が 高かったことも考えられる.今後は,ワークショップ 開催の可能性も含めて,支援を必要としている初年次 学生の積極的な利用を促す工夫が必要である. 4.3 英会話支援 4.3.1 支援の目的と仕組み SLA英会話は,英会話学習の中でも「会話」に焦 点を当てた支援である.英語担当のSLAはもちろん 流暢に英語を話すことができるが,しかし教員のよう に「教える」ことの専門性は必ずしも持たない.そこ で,授業とは異なる,SLAだからこそ可能な支援と して,会話を楽しむことを通した,英会話のアウトプッ トやコミュニケーションの機会を提供していた.そし てこのような支援を有効なものにするために,利用者 にリピーターとなってもらい,定期的に利用してもら うことが,他の支援以上に重要であると言える. 英会話に関しては,従来「1on1英会話」と「英会 話カフェ」という 2 種類のサポートを実施していた. 「1on1」とは,SLAが30分間,利用学生に 1 対 1 で対 応を行うものである.レベルに合わせた会話の練習の ほか,プレゼンの練習,TOEFL等の試験の対策など, 利用学生のニーズに合わせた対応を行っていた. 他方,「カフェ」は利用者複数人で会話やゲームを 楽しむ,ワークショップ型の支援である.従来は約60 分間カフェの時間を設け,利用者は好きな時間に参加・ 退出してよい形をとっていた.週に何度も利用する利 用者もおり,そのような学生にとっては,学内での一 つの居場所として機能していた側面もあると言える. リモートでのサポート体制を検討するにあたり, 1on1はほぼそのまま実施できることが推測された. 基本的にはMeetのビデオ通話機能と,Chat機能さえ あれば,従来と同様のサポートができる.対応時間に 関しても,従来のものを踏襲して30分で設定した. 他方でカフェに関しては,出入り自由の形式にする と進行が難しく,またオンライン通話では複数人のコ ミュニケーションが円滑できないことが予測された. そこでカフェの支援に関しては,45分間,利用者を 2 名までに制限した予約制の形をとって実施することに

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 した.また,利用者 2 名の間にレベル差があると,両 者にとって効果的な学習機会となりにくいため,支援 がなくても基本的な会話ができる中・上級者と,SLA の支援を必要とする初中級者向けの 2 枠に分けた. 4.3.2 環境の整備 スムーズな英会話の対応には,音声の聞き取りやす さが重要になるため,希望するSLAにはヘッドセッ トを貸与した. 4.3.3 利用実績 2020年前期の英会話利用の延べ数は164名,実数69 名であった.例年と比較すると,利用実数は増加した 一方で,延べ数は約3割減少したと言える.このことは, 利用形態のウエイトを変えたことが関係している. オンラインのサポートの開始当初は,今期も1on1 と同時に複数人のカフェを積極的に運用していたが, 1on1の予約充足率が極めて高い一方で,カフェの予 約は埋まらないことも少なくなかった.そこで,徐々 にカフェの予約枠を減らし,支援の中心を1on1によ る支援に移行させていった. 昨年度まで,カフェは好きな時間に出入りし,英会 話と同時にそこに集ったメンバーとのコミュニケー ションを楽しむという部分に特徴があった.そこに魅 力を感じ,週に何度も通うような利用者が多く存在し た.オンライン化に伴い,このような利用回数の極め て多いカフェの利用者がいなくなったということが, 利用延べ数の落ち込みに関連していると言える. 他方で,オンライン化することによって,川内にい なくても英会話の支援が受けられることが可能になっ た.そのため,川内以外のキャンパスに通う,主に 3・ 4 年生や大学院生の利用が大幅に増加した.このこと が,利用者実数の増加につながっていると言える. 4.3.4 成果と課題 上述のように,活動形態の中心が,複数人のカフェ 形式から1対1形式に移行するという変化があったが, 1対1形式の支援活動自体は,従来の対面時と遜色ない 活動が可能であった. 1 対 1 で会話をするという部分 では,オンライン・オフラインでも大きな変化はなく, 懸念された音声の質が問題となることもなかった. 一部,絵を描くゲームを行ったり,SLAと利用者 で一緒に英語に関わる動画を見たりなど,オンライン 時では実施しにくい活動もあったが,中心は会話によ るコミュニケーションであるため,大きな支障とはな らなかったようである.約半数は継続して利用するリ ピーターになっていることや,利用者アンケートにお ける平均満足度得点が,100点満点中96.8点と極めて 高いことを鑑みても,対応の質は高い水準で維持でき ていたと言えるだろう. 英会話支援のオンライン化の成果であり,今後の課 題にもつながることとしては,従来は 1 ・ 2 年生が中 心であった利用者に,上級学年の割合が増えたことが 挙げられる. 1 ・ 2 年生の場合,主なニーズは留学準 備や,TOEFL等の対策,あるいは,基礎的な英会話 力の向上であった.しかし,大学院生の場合は,学会 発表やそれぞれの専門領域と関連しての英会話力の向 上というニーズが含まれる.それら新しい層の新しい ニーズに対応した支援の形を今後は探索することが望 まれる. 4.4 留学生向け日本語学習支援 4.4.1 支援の目的と仕組み 留学生向けの日本語会話支援は,2017年度から開発 を進め,企画担当SLA(企画部会)の中の 1 つのプ ロジェクトとして試行的に開始した新しい支援活動で ある.2017年度まで,学習支援センターでは,留学生 を主対象とした学習支援活動を行っていなかった.他 の日本人学生と同様の学習支援は利用可能だったが, 実態として利用件数は限られていた.その理由の1つ として,SLAによる学習支援がもっぱら日本語を使 用言語として行われており,また英会話担当SLAを 除くSLAの多くは,必ずしも流暢に英語を話せるわ けでもなかった点が指摘できる.同時に,留学生の日 本語運用能力も十分ではない場合が多く,結果として 留学生の利用が伸びない状況となっていた. 東北大学には現在,数多くの留学生が在籍している. 同じ高度教養教育・学生支援機構の中の業務センター であるグローバルラーニングセンターとの連携を進め るにつれ,留学生にとって日本語を実践的に使う場が

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─  118  ─ 限られている点や,多くの留学生が日本人学生の中に 友人を持っていない,あるいは,持っていてもその友 人数が極めて少ないという実態も明らかになってきて いた.専門領域や研究室によっては研究遂行上英語だ けで支障がない場合もあるが,東北大学で学ぶ留学生 は,日本で大学生活を送る上で少なからず日本語を学 ぶ必要性を感じている.一方で東北大学内には,授業 を除くと留学生のための日本語学習の機会が極めて少 なかった.このことから,それを支援することは学習支 援センターの役割として重要であるとの認識に至った. 2019年度には定期的に日本語会話ワークショップを 実施できる体制が整い,その活動を概ね軌道に乗せる ことができた.そこで2020年度からは, SLAの企画部 会から分離・独立させる形で,留学生を対象とした日 本語学習支援を担う日本語部会を新たに発足させた. そんな折,急にオンライン化を進めることとなり, SLAたちと協議した結果,それまで実施していたワー クショップ形式での開催はオンラインでは難しいので はという判断となった.感染症拡大の問題が生じる以 前の2019年度後半には,日本語会話においても1対1形 態での支援の導入を検討したいというSLAからの声 が挙がっていた.当初は,2020年度中に「検討する」 予定だったが,2020年度前期にはセンターとしてすべ ての学習支援活動をオンライン化する決定をしたた め,必然的に,2020年度前期中に, 1 対 1 支援を「実 施する」こととなった. 4.4.2 利用実績 実際にオンラインでの1対1支援を開始してみると, 留学生から多くの利用があった.前期期間の利用者数 は延べ人数で109名,実数としては46名であった(表 1 ). 当初は, 1 対 1 形式への変更に加え,事前予約制導入 により,利用者数が減少する可能性も見込まれた.し かし,実際には,利用者数は減少することなく概ね昨 年水準となり,実数においては増加する結果となった. さらに,オンライン化に伴い,川内キャンパス以外に 所属する留学生の利用が伸びた点も指摘できる. 4.4.3 成果と課題 留学生を対象とした日本語学習支援は,当センター では開始してまだ間もない.さらに,2019年度と2020 年度の間では,オンライン化した点に加えて,カフェ 形式のみだったのがすべて 1 対 1 の形式となり,事前 予約制になったことなど,多くの要素で変更が生じた. そのために,客観的に例年との比較をする事は困難で ある.以下はあくまで筆者の所感の限りだが,オンラ イン化の影響について,2 点挙げておくこととしたい. 第 1 に,オンライン化により,利用する留学生にとっ ては,「アクセスのしやすさ」,「利用しやすさ」に繋がっ たと思われる.それは,かつては川内北キャンパスま で移動しなければならなかったという物理的な距離の 問題で利用できなかったり,オンラインでは自宅や研 究室に居ながら利用できるという心理的な面での積極 的な影響もあったと考えられる.第 2 に, 1 対 1 の形 式にした事の効果と併せて,オンラインの場合は,場 所や空間の制約を受けづらいという利点もあった. 2019年度までは,基本的にSLAによるすべての学習 支援活動がマルチメディア教育研究棟 1 階のSLAラ ウンジを使って行われていた.そのため,理系科目, ライティング,英会話,学習イベントなどが同時に場 所を共有することになり,同時間帯の対応件数が増え ると,物理的な場所を確保することや,静かな環境で の対応が難しくなるという問題があった.特に,会話 の練習の場合は,活発な発話により場が賑やかになり やすく,周囲が会話の音声に影響されたり,逆に周囲 の声により会話が聞き取りにくくなり円滑な進行が妨 げられたりすることもある.オンライン上での1対1の セッションでは,同時間帯にセッションに参加してい る他の学生の様子が見聞できないため,気兼ねなく自 分のセッションに集中できるという利点がある. すべてのオンライン上のコミュニケーションが同様 であるように,通信環境や通信状態の問題で,音声が 聞き取りづらかったり途切れたりしてしまう問題はあ る.しかし前期の間の実際の対応において,そのよう なトラブルはほとんど報告されていなかった.テレ ワークをしていたSLA側も,利用する留学生の側も, 基本的に通常からオンラインで授業を受けているとい うこともあり,自宅等でも基本的な通信環境が整って いたということかもしれない.つまり,安定した通信 環境が確保される限りは,英会話と同様に,日本語会

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 話の支援においても,オンラインには利便性と高い効 果があると考えられる. 4.5 学習イベント等の企画・運営 4.5.1 支援の目的と仕組み 学習支援センターには企画担当のSLAを配置して おり,特定の科目に限定しない学際的・教養的な学習 イベントを企画・運営している.昨今は,哲学カフェ 「かんがえるソファ」の定期開催の他,宮城県美術館 の協力を得て,美術館での作品鑑賞ツアーなども行っ てきた. 当センターでの学習イベントは,主に学際的な学び や教養教育に関連した学習経験の創出を目的として企 画されている.確かに,理系科目やライティングなど の特定の科目や分野に関連した学習イベントは,以前 から開催していた.しかし,それだけでは学際的な学 習への拡がりを生み出す上で限界があることから, 2016年度後期以降,企画担当SLAを新設した.これ により,特定科目に限定されない学際的な学習を促す イベントの企画運営を行いやすくなった. 2020年度前期は, 5 名の企画担当SLAがおり,こ の期間の活動としては,哲学カフェ「かんがえるソファ」 の定期開催を主な活動としてきた.それ以外には, SLAのファシリテーション・スキルを向上する目的 で,いくつか研修の機会を設けていた.その一環とし て,特に昨年度からは,同じく哲学カフェを実践して いる高知大学の学生グループとの交流も行うことがで きた. 企画担当のSLAに限り,毎週同じ曜日・時間帯に 勤務するシフト制ではなく,企画SLAの中で協議し て決定された学習イベント開催に向けた変動的で柔軟 な勤務形態となっている.活動の主な種類としては, まず,ミーティングを開催して,企画担当SLA間で の協議を通した学習イベントの企画概要と準備計画の 決定を行う.その後は,SNSや学務情報システム等を 活用したイベント開催の広報活動,参加申込の管理と 参加予定者への連絡,当日のイベント開催,事後のブ ログ記事の投稿などがある.当日のイベント開催にお いても,事前と事後にはミーティングの時間を設け, メンバー間で円滑に連携し,チームとしてイベントを 運営していくことに重点を置いている. 2020年度前期は,すべての回について,Meetや Zoomのオンライン会議システムを利用したオンライ ン開催とした. 4.5.2 利用実績 2020年度前期は, 5 月に行った新入生向け特別開催 の回を含めて,合計16回の「かんがえるソファ」(新 入生向け特別企画は「かんがえるカフェ」という名称 で実施)を開催した.参加者の延べ人数は合計で113 名であった(表 1 ). オンライン開催となったことで,昨年度と大きく変 化したのは,参加者が大幅に増え,特に高年次学生・ 大学院生や留学生の参加が増加した点である.昨年度 までは学習支援センターのあるマルチメディア教育研 究棟内で開催していたため,参加するためには川内北 キャンパスに来る必要があった.しかし,オンライン になったことにより,青葉山キャンパスや片平キャン パスに所属する学生たちの参加が可能になった点は大 きな収穫であった. 4.5.3 成果と課題 学習支援センターでは,従前より初年次学生を中心 的な対象として学習支援の機会を提供してきた.理系 科目や英会話の支援においては,原則的には,高年次 学生や大学院生の利用よりも初年次学生の利用を優先 する方針としている(実態としては高年次学生であっ ても状況に応じて受け入れる場合が多い).しかし, 哲学カフェの目的は,日頃は当たり前だと思って無批 判に受容し見過ごしているテーマや対象について,改 めて問い直し,言語化する行為を通して新たに気づき を得たり再確認したりすることである.そのため,多 様な属性や多様な専門性の参加者がいることが望まし い.よって,哲学カフェの場をより一層,学習効果の 高いものにする上で,参加者の増加と多様化は,大き な利点であった. 一方で,運用上の課題は残った.昨年度までは多く ても各回に 8 名を超える参加者が集まることは稀で, また対面で行っていたために,急に2つのセッション に分けて実施する事も容易だった.しかし,オンライ

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─  120  ─ ンで哲学カフェを開催する場合,参加者数が増えるほ ど,より一層,哲学カフェの運営が難しくなる. オンラインだからこその制約としては,以下の 2 点 が指摘できる.第1に,オンラインでの開催は参加人 数が増加するほど,一定の質を保証して実施すること が困難となる.哲学カフェへの参加者は自ら発言した いという想いを持って参加している場合が多いが,半 面で,参加者の人数が増えるにつれて,最後までほと んど発言できないで終わってしまう参加者が生じやす い.とりわけオンライン開催の場合,人数が多くなる ほど,参加者全員を一同に 1 つの画面上に表示するこ とも難しくなり,他の参加者の様子が見えづらくなる. SLAがファシリテーターを務め,その場の円滑な進 行を担うが,人数が増えるほど,誰が発言して誰が発 言していないかの把握も困難となる.つまり,協働的 な思考と対話を目指す哲学カフェの場において,他の 参加者の様子が見えない環境というのはデメリットと なる.第2に,グラフィックの問題である.対面で開 催していた時には,ファシリテーターの他にグラ フィック担当のSLAを配置し,ホワイトボードに, 参加者から出た意見やアイディアを,文字だけでなく 画や図なども駆使しながら描きとめておくようにして いた.オンライン会議システムの中では,それが不可 能ではないにしても,技術的に困難である点は否めな い.比較的容易な方法としては,テキスト(文章)の みで入力し,それを画面共有で参加者に見せる方法が ある.しかし,画面共有機能を使うと,その裏返しと して参加者全員の顔が表示しづらくなってしまう.表 情が見えないと,ファシリテーターとして,参加者の 様子を的確につかみづらくなり,適切な進行を困難に する. 以上をまとめると,参加者にとってアクセスしやす い環境として,オンライン開催には大きなメリットが 確認できた.しかし,定員を設けるなどによって適切 な運営を行うことが重要である点と,オンライン上で は非言語的なコミュニケーションが困難である点を加 味し,ファシリテーションのさらなる工夫が求められ ることを課題として確認できた.

5 .課題と今後の展望

東北大学の学生として学習するとはどのような意味 なのか.大学での教養教育とはどのような意味がある のか.それは単なる学殖多識,専門知識の授受にある のではない.過去の人類文明を批判的に継受し以て主 体的に未来創造に係わる能力と覚悟を会得することと そのための人格陶冶にこそ大学教養教育の意味がある ならば,教室や,その他のキャンパス内外で共に青春 を共有することが必要である.それが新型コロナウィ ルスによって阻害された.学生にとっては,薄っぺら な「リア充」さえ困難な夢となった. その状況下でも学生同士の学び合いの力で,主体的・ 自律的な学習を実践的に支援・促進することを支援し ようと努めた.学びを,専門知識は勿論,ライティン グ,語学,企画などの面からも支えようと奮闘努力し た.その報告が本稿である. 新型コロナウィルスは,我々が従来から少しずつは 試みてはいたが先送りしていた社会の諸問題を,眼前 に突然に顕現化しそれへの即応を強制した.それは社 会全体を加速器にかけたような実験,ウィルスによっ て強制された社会変革である.これによる尊い命と経 済の犠牲を活かすためにも,血と涙で得た「新しい生 活様式」を我々は大事にしなければならない.それは 大学教育においても同様であり,オンラインの利点は 今後も維持したい.オンラインの全学授業(国際学士 コース)で,中国,韓国,東南アジアや欧米等の国々 から東北大学生がリアルタイムでGoogle Classroom やMeetに集まり討論する様は感動的で未来を感じさ せる. 学習支援センターにおける学習支援活動では,一面 では,オンラインによりアクセスが容易となったこと で,学習支援センターのある川内キャンパス以外の学 生の利用が増加した.まさに物理的距離の概念がなく なったことで,哲学カフェでは大学院生を含む多様な 学生がそこに集いやすくなり,高知大学との連携まで もが容易となった.しかしその反面では,特に初年次 学生にとっては,主に心理的な敷居の高さとなり,例 年よりも利用が伸びない結果にも繋がった. オンラインの利点を確認できたと同時に,対面の重 要さにも改めて感じ入るのである.人と直に向き合う

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東北大学 高度教養教育・学生支援機構 紀要第 7 号 2021 とはある意味で暴力的でさえあるが,それは生産的な 暴力でもあった.そもそも我々は自分の命と人生を意 志と論理で制御できない.それが本来のリアルな自然 であることを,ウィルスは我々に改めて突き付けた. 全ては制御され規則正しく予定通りに進み期待された 成果が得られるとすることこそが,都市空間における バーチュアルな人工的理想なのである. 世界も大学もウィルスとのつき合いを学習しつつ未 来世代に学問と教養と命を繋いでゆくしかない. 謝辞 学習支援センターにおけるオンライン学習支援シス テムの構築は,言うまでもなく,教職員のみで実現で きたものではない.すべてのSLAの尽力と協力を得 られたことによる成果である.個々のSLAの貢献を 記述できないが,この場を借りて,前期セメスターに 活動した全36名のSLAに謝意を記したい. 注 1)  一方で,従前はこのワークショップの中で扱ってい た内容の一部を盛り込む形で,オンライン開催となっ た基礎ゼミ(大半の初年次学生が受講)の授業の中 で扱った.学習支援センター主催のワークショップ としては実施できなかったが,その学習機会の一部 分は大半の初年次学生に提供できたと考えている. つまり,オンラインでの開催ができなかった理由と しては,オンラインによる開催が物理的に困難だっ たというよりも,授業という別の場での学習機会が 確保されていた点や,オンライン化対応における優 先順位の観点から,センタースタッフ側の過重負担 を回避すべく開催を断念した側面が大きい.  参考文献 縣拓充・中島啓貴(2020)「ピアチューターを活用したオ ンラインの理系学習支援の仕組みの構築」,『日本教 育工学会 2020年秋季全国大会』.

参照

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