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マグネシウム金属負極を用いた蓄電デバイス構築のための基礎的研究

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Academic year: 2021

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マグネシウム金属負極を用いた蓄電デバイス構築の

ための基礎的研究

著者

下川 航平

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19269号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130561

(2)

しもかわ こうへい

下 川 航 平

研究科,専攻の名称 東北大学大学院工学研究科(博士課程)金属フロンティア工学専攻

学 位 論 文 題 目

マグネシウム金属負極を用いた蓄電デバイス構築のための基礎的研究

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 市坪 哲 東北大学教授 武藤 泉

東北大学教授 髙村 仁 東北大学教授 加藤 秀実

東北大学教授 小俣 孝久 東北大学准教授 岡本 範彦

論文内容要約

本研究は,次世代蓄電池の候補として有望視されているマグネシウム蓄電池の要素材料の開発に総合的に取り 組むと共に,多価イオンを電荷担体として利用する蓄電池の実現に向けた基礎学理の構築に挑むものである. 第一章では,蓄電池におけるエネルギー変換のシステムについて述べた後に,特にこれからの時代に求められ る蓄電池の評価軸について説明し,本研究で着目するマグネシウム蓄電池の利点および欠点,開発の歴史や現状 について整理されている.またマグネシウム蓄電池の開発がこれまで難航していた要因について,固相内拡散の 活性化エネルギーの高さに着目して考察した上で,マグネシウム蓄電池の実現に向けた中温域(100~150℃程度) 作動のアプローチを提案している.

第二章では,Mg(TFSA)2–MgCl2/triglyme 系溶液 (TFSA: bis (trifluoromethanesulfonyl) amide) に着目した 詳細な調査から,可逆的なMg 電析/溶解の実現に向けた電解液中の Mg イオンの溶媒和構造の設計指針を示した 研究成果について述べられている.Mg(TFSA)2/triglyme 系溶液は高い耐熱性・耐酸化性を有する電解液の候補 として有望視されているものの,TFSA アニオンが Mg 金属表面で反応して不動態皮膜を生成し,Mg 溶解時に 1 V 程度の大きな過電圧が生じることが問題点であった.本研究では,MgCl2塩の混合および電解液の高濃度化 によりMg イオンの溶媒和構造を変えることで,不動態化の要因となるフリーな TFSA アニオンを除去すること により,Mg 溶解にかかる過電圧が安定的に低減されることを明らかにした. 第三章では,高電位かつ高容量の正極材料としてスピネル型酸化物に着目した調査から,可逆的なMg イオン の挿入/脱離を実現するための組成・結晶構造の設計指針を示した研究成果について述べられている.MgCo2O4 などの一連のスピネル型酸化物は,岩塩型構造への相転移を伴う高電位(2~3 V vs. Mg2+/Mg)かつ高容量(100 ~200 mAh/g)の Mg イオンの挿入が可能であるものの,サイクル特性が乏しいことが問題点であった.本研究 では,「スピネル⇔岩塩」構造相転移のメカニズムを考慮した上で,スピネル型酸化物AB2O4の適切なカチオン

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選択の方針を提案し,例えば四面体サイトを好むZn を A カチオンに適用することにより構造相転移の可逆性が 向上することを示した.さらに,活物質の劣化を引き起こす岩塩型構造への二相共存反応による相転移を回避す る方策として,初期状態からカチオン欠損を含有する欠陥スピネル型酸化物ZnMnO3の利用を考案し,従来材料 を飛躍的に凌駕する高サイクル特性を実証することに成功した. 第四章では,金属硫化物から金属イオンを昇温下で電気化学的に脱離することにより,高速充放電を実現する 硫黄/金属硫化物の複合材料を創成するコンセプトを示した研究成果について述べられている.硫黄 (S) は高容 量かつ安価な正極材料の候補である一方で,絶縁体であるため電気伝導性の担保が困難であるという課題があり, 従来はボトムアップ的工程を必要とする炭素系材料との複合化などにより解決が図られてきた.本研究では, 150℃のイオン液体中において FeS2から電気化学的にFe イオンを脱離させるというトップダウン的手法により FeS2粒子の表面付近に形成した細孔部にS が担持された複合材料が作製可能であり,またこの複合材料は約 900 mA/g の高電流密度においても 2 V 級の高電圧のマグネシウム蓄電池用正極として作動することを示した. 第五章では,以上の研究で扱った要素材料を利用した種々のマグネシウム蓄電池のプロトタイプを構築して, その電池特性を評価した結果について述べられている.それぞれ単独の構成要素の特性から想定される挙動が放 電時には主に得られたものの,特にMgCo2O4やZnMnO3を正極に利用した電池セルの充電時には,正極材料の 充電反応に先行して電解液の酸化分解が生じる傾向が確認された.Co や Mn を含有するスピネル型酸化物は触 媒材料としても利用されることから,これらの正極材料の表面では電解液分解が顕著に促進されたと考えられる ため,このような触媒作用を抑制するための正極/電解液界面の設計が残された課題として挙げられる. 第六章では,本研究を総括し,本研究が拓いた領域を整理した後に,蓄電池の未来像について述べられている. マグネシウム蓄電池は従来1 V 級の低電圧の蓄電池に分類されていた一方で,本研究では 2~3 V 級の高電圧の マグネシウム蓄電池の実行可能性を示した点が,特筆すべき成果であると言える.

参照

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