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公契約条例と落札者決定基準

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(1)

公契約条例と落札者決定基準

著者

吉村 臨兵

雑誌名

経済学論究

66

2

ページ

25-48

発行年

2012-09-20

URL

http://hdl.handle.net/10236/10780

(2)

公契約条例と落札者決定基準

The Ordinances and Codes Created

by Municipal Governments

for Fair Contracting

吉 村 臨 兵  

Ordinances for fair contracting have been enacted in several cities recently, including Noda, Kawasaki, Sagamihara, and Tama. These are designed for the contracting out of public services to help the disabled take part in the local community and to make the local labor markets fair and secure. Also, such codes have been used in competitive tendering in some cities in Osaka prefecture for a few years. These ordinances and codes are, however, spreading very slowly in Japan. That shows they still need to be refined considering various points of view. In this paper, some examples of these new kinds of ordinances and codes made by municipal governments in Japan will be provided.

Rimpei Yoshimura

  JEL:Z18

キーワード:民間委託、競争入札、最低賃金

Keywords:contracting, competitive tendering, minimum wage

はじめに

地方公共団体(以下、自治体という)が何らかの事業なり業務なりを民間に 委託するに際しては、地方自治法第234条により、契約の相手方を一般競争 入札、指名競争入札、あるいは随意契約によって選定することになっている。 もっとも、おおむね1990年代までは実際には小規模の事業を中心に入札によ らず随意契約によって事業者の選定される事例が多かったと思われ、自治体と 事業者、さらにその従事者の間には、善かれ悪しかれある程度安定的な取引関

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係がみられたといってよい。ところが、財政上の要請などを背景として、入札 に基づいて事業者の選定される事例が増え、また、指定管理者制度のような新 たな官民の関係がつくられるにしたがい、過当ともいえる価格競争や事業者の 交替によって、従事者の雇用環境は悪化し不安定さを増すようになってきた。 公共調達を通じて生み出されるそうした問題は、布施[2008]にみられるよう にワーキング・プアのなかでもとりわけ「官製ワーキング・プア」とまで特徴 づけられるようになっている。 本稿は、そのような問題への対処として、自治体に広がりつつある政策意図 をもった総合評価方式の一般競争入札と、自治体が事業者と結ぶ契約に関する 条例の制定について、現時点の論点を紹介しようとするものである。1. にお いては、これまでの制度整備の流れを概観し、2. においては、いくつかの筆 者の気づいた点を列挙し、今後の制度整備の議論に資するようにしたい。

1. 制度整備の流れ

(1) 総合評価一般競争入札 「地方自治法施行令第167条の10の2」を活用することにより、地域の雇 用環境をはじめ自治体の政策の方向性に合致した事業者選定が、大阪府内の複 数の自治体をはじめとして行われるようになっている。これがいわゆる総合評 価方式にもとづくものであるが、ごく初期の取り組みの事例としては、2000 年秋に行われた「神奈川県衛生研究所特定事業」のPFI事業者選定1)があげ 1) 当時の「神奈川県衛生研究所特定事業落札者決定基準」によれば、まず予定価格以下であるかど うかという観点で入札によって事業者が絞られてから、「定量的審査」が行われた。その審査項 目は、100 点満点中、価格評価である「サービス対価の総額」が 85 点、「光熱水費の削減」4 点、「事業の安全性」3 点、「VE による機能向上」3 点、「地球環境保護に関する配慮」3 点とつ づき、最後に「障害者雇用に関する配慮」2 点という項目がみられる。ちなみにその内容は障害 者雇用率のみだった。

(http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/005 databox/0503 shiryou/0503 seibi/files/ Kijun.pdf   2012/6/1)

なお、神奈川県の総合評価一般競争入札においては、この案件の少しあとに実施された「神奈川 県立近代美術館新館(仮称)等特定事業」を最低価格でない事業者が落札している(武藤[2006: 61-67])。

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られる。もっともPFI事業は、建設後の運営よりも当初の建設費が多くを占 めるという特徴がおおむねあるから、人件費の比重の高い労務提供型の民間委 託とは一般的に事情が異なっている。 それに対し、庁舎清掃などのような労務提供型の民間委託について、はじめ て明確に雇用環境を意識した総合評価方式の入札が行われたのが、2003年の 大阪府だった。建設事業にそれまで適用されてきた総合評価と大きく異なる点 は、さきの神奈川県の例と同様、事業実施の巧拙と直接関係のない社会的な側 面を評価対象にしているところである。それを範として他の自治体で実施され ている総合評価一般競争入札では、価格評価のウェイトをおおむね70%ない し50%まで下げた落札者決定基準が適用されている2)。表1に大阪府豊中市 で2009年10月8日公告により入札の行われた「豊中市役所庁舎清掃等業務 並びに豊中市立障害福祉センターひまわり及びしいの実学園総合管理業務の委 託契約」の、また、表2に同枚方市で2009年10月16日公表により入札の行 われた「安心と輝きの杜施設総合管理委託」の例をあげておく。豊中市の事例 からは、最低価格でない事業者の落札したことがわかる。 (2) 公契約条例 その一方、千葉県野田市において公契約条例が2009年9月に公布ののち、 あくる2010年2月に施行された3)。そもそも総合評価一般競争入札が雇用環 境などに関する自治体の政策意図を反映させる手段として考えられたときは、 その根拠となる基本条例のようなものの策定が想定されていた(武藤[2006: 110-115])4)。すなわち、ある入札における落札者決定基準が偶発的あるいは 恣意的にではなく、条例にもとづいて定められていることが容易に納得される ような制度設計である。野田市の条例はようやく日の目をみたその種の条例の 第1号とみることもできるが、むしろ従事者の賃金あるいは報酬について規定 している部分がもっぱら注目を集めている。それについては次節(4)、(5)の 各項でふれる。 2) 2011 年現在で、70%はたとえば堺市。 3) それ以後、川崎市、多摩市、渋谷区、国分寺市で公布されている。 4) 2001 年に自治労・自治体入札・委託制度研究会の提言した内容。同研究会の議論には筆者も参 加した。

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表 1

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表 2

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2. 政策意図とその論点

(1) 男女共同参画 総合評価方式の落札者決定基準には、男女共同参画への取り組みを評価す る項目の含まれていることが多い。たとえば、男女雇用機会均等法にもとづい て、各種規程の整備などを問うものである。この点についてはつぎのような指 摘がある。 環境配慮においてはISOの取得が、福祉においては障害者雇用率の達成 が、それぞれ客観的基準としてすでに存在するが、男女共同参画については これらに相当する基準がまだない。(武藤[2006: 100]) そこで、客観的基準とよべるものの1つとして評価に用いられているのが、セ クシュアル・ハラスメント相談窓口の設置の有無である。表1では、「3. 公共 性評価」の「(2)男女共同参画への配慮」のうち、「②セクシュアル・ハラスメ ントの防止への取組」が、また、表2では、「3.社会的評価」の「(3)男女共 同参画への取組み」のうち、「①セクシャルハラスメント防止に関する社内規 定または②相談窓口設置」が、おのおのそれにあたる。 これについて、ある市の落札者決定について、ひとつ論議の起きたことが あったので、紹介したい。1999年4月施行の改正均等法では、ハラスメント に対して雇用管理上必要な「配慮」をしなければならないとされていた。それ が、2007年4月施行の改正均等法では、雇用管理上必要な「措置」を講じる 義務がつぎのように明文化されている。 (職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置) 第十一条  事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇 用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、 又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよ う、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

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その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 この措置は、事業規模にかかわらず義務とされているものである。そうする と、表1や表2の例において「相談窓口を設置していない」と回答する事業者 がでてきたときは、均等法違反の状態にあることになる。そこで、そもそも法 令遵守を前提とする入札の参加事業者について、この項目を加点項目の1つと しておくことが妥当なのかどうかという疑問が呈されたのだった。 この疑問には、ちょうど政策入札という呼び名にかかわって、「政策」面と、 「入札」面おのおのにおいて確認されたことがある。もとより、「政策」面では、 このような評価項目の存在自体により、それに対する取り組みの有無に関する 情報が事業者内でやり取りされやすくなる効果が期待される。つまり、このこ とが、使用者にそうした取り組みの必要性を再認識させる糸口にもなりうるわ けである。ところが、このような効果にとどまらず、上記のようにそれに対し て否定的な回答をする事業者に対しても、自治体側から実状を尋ねることによ り、事業者は適法な状態をより具体的に意識することができ、法のもとめる政 策的効果、すなわち、ここでは当該事業者における相談窓口の明示という結果 がえられるであろう。 とはいえ、「入札」面では、このような1つの評価項目を法令遵守上のいわ ば欠格条項のように扱うべきかどうかという実務的な疑問が生じるだろう。と いうのも、契約書の締結や事業の着手までに適法な状態に移行していればよい という判断も、ありうるからである。具体的にこの評価項目に関していえば、 ここでの均等法の規定の内容は、事業所や法人内に自前の相談窓口の設置を必 ずしも求めておらず、自治体の相談窓口などを指定して周知していればよい5) 5) 厚生労働省のホームページ「均等法 Q&A」では、つぎのような例が挙げられている。   問 会社が小規模なので、セクシュアルハラスメント防止対策としてわざわざ相談・苦情窓口を 設置するまでもないと考えますが、必ず設けなければいけないのでしょうか。   答 均等法における職場のセクシュアルハラスメント対策は、会社の規模の大小を問わず必ず講 じなければなりません。どんなに小規模な会社であっても、相談に対応する担当者をあらか じめ決め、周知しておくなど、相談窓口を定める必要があります。 社内で担当者を選任できない場合は、社外の専門機関を窓口とすることも一つの方策でしょう。 (http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/q-a.html 2012/6/1)

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というものである。したがって、使用者としての実質的な措置はほとんど求め られていないに等しい。 それにもかかわらず「設置していない」という回答があれば、それは事業 者が当該の条文を知らないと推定される。あるいはそうでないとすれば、たと えば新手の談合の手法として、あえてその部分の評価点をゼロにするよう申し 合わせたなどのことも全く考えられなくはない。すなわち、価格のみによる入 札6) とちがって、次項に示すように総合評価方式は談合がやりにくいと想定 されていたものが、そうでもないのではないかという疑問も生じるところであ る。これに対し入札段階で欠格条項的な扱いを一律に行ったのでは、場合によ ると談合の術中にはまるということもありうる。 (2) 談合防止効果 ここで、総合評価方式のもつ談合防止効果について論じられてきたことを整 理しておきたい。それは次のようなことである。 価格以外の要素も落札の条件になるということは、もし談合を行おうとして も価格だけの打ち合わせだけでは済まなくなるため、談合の「やりやすさ」 の側面が大きく殺がれる。(武藤[2006: 59-60]) また、従来の談合についてもう少し構造的な指摘として、少し長くなるがつぎ のようなものを紹介したい。 最低自動落札方式は、入札価格という客観的な基準だけで契約の相手方 を選定することで発注者側の恣意的な選定を排除するメリットがある反面、 悪質不良業者の受注やダンピング受注に伴う手抜き工事を排除できず、工事 の品質を確保することが困難になることなどの不合理を招く。また、高度の 技術を要する工事などについては、施工技術を有する受注者の技術面での貢 6) この面について、公共工事発注にかかわる犯罪防止という観点からの指摘としては次のようなも のがある。

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献が重要であるが、最低価格自動落札の原則を維持する限り、技術面での貢 献は契約者選定に反映されない。そのため、入札における価格競争で契約者 を選定するという建前を維持しつつ、悪質不良業者の排除や工事の品質確 保を図るために、入札参加者間の話し合いが一定の機能を果たすことにな り、また、高度な技術を要する工事については、入札前に技術提案等で非公 式で発注者側に協力した業者が落札するよう業者間での調整が行われる場合 もある。こうして最低価格自動落札の建前が維持されつつ、実質的な不合理 を解消するために、談合が恒常化し、入札が形骸化することになる。(郷原 [2006: 109]) このようにみれば、なるほど総合評価方式に一定の談合防止効果は期待できる とはいえる。けれども、他の評価点が入札参加事業者どうしで比較的近接する 場面において、特定のいくつかの評価項目について得点を調整することは、前 項で想像してみたように不可能ではないだろう。すなわち、どのような評価項 目をたてるにせよ、落札者決定基準のよく似たかたちの入札を繰り返すうちに は、参加事業者どうしで相互の得点を想像できるようになる「賞味期限」が遅 かれ早かれ訪れるにちがいない。したがって、談合防止の観点からいえば、ど のように精緻につくられた落札者決定基準であれ、数年ごとには評価項目や ウェイトの変更が必要だということになる。 (3) 行政資源による履行の確保と地域雇用開発 男女共同参画もそうであるが、通常、自治体には相談窓口や企画講座など の設けられている数多くの政策領域がある。無料職業紹介のような事業をおこ なっている場合もある。そしてまた、総合評価方式を活用した政策入札も、そ れらの事業の1つと数えることができる。 たとえば、入札参加時点の事業者側の提案が仕様化されて、障害者や就職 困難者がある人数雇用されることになっている業務があったとしよう。ところ が、げんに雇用されている当該の労働者が現場に溶けこめずに辞めてしまいそ うだ、あるいは辞めてしまったということになると、事業者は自ら提案し契約

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した仕様をみたさないことになる。いうまでもなく、通常のサービス提供や商 品流通においては、ユーザーのニーズはある意味で絶対的であり、納期や品ぞ ろえのみならずサービスの態様が事業者にとって競争上の重要な意味をもって いることはいうまでもない。公共サービスや、庁舎清掃のような公共調達にお ける労務提供にあっても、仕様に立脚して契約をしている以上、事業者が仕様 どおりに債務を履行しなければならないのは当然である。そうすると、仕様を 充足できない事態になれば、発注側の自治体から契約解除を呈示されることも 当然想定しなければならない。けれども、自治体が、事業者の提供する役務の 単なるユーザーという立場を超えることもありうる。 すなわち、そうした事態を受けて、職や就労機会をさがしている障害者や就 職困難者に関する情報を改めて自治体が提供し、事業者につなげば、仕様の未 充足を即座に欠格条項のように運用する必然性はなくなる。むしろ、当該自治 体における職業紹介が有効に活用されていることになるだろう。そのようなと き、あたかも自治体は、登録されていた障害者を、業務を受託した事業者へ派 遣するかのような、すなわち一般労働者派遣事業者のような機能をはたす。そ の場合の「派遣先」は、事業者こそ受託事業者ではあるが、就労場所は自治体 の所有したり管理したりしている施設や設備である。 これは、建設の事業などにおける支給材料のような考え方とも近い。すな わち、公共工事においては、市場での調達により難い自治体特有の仕様の材料 を事業者に支給することがあるが、地域での雇用環境の醸成をめざす自治体に とって、事業者に対して労働力を「支給」することは目的にかなった方策のは ずである。むろん、生身の労働力であるから、その雇用形態なり労働条件なり について関知しないということになれば、議論は本稿の振り出しに戻る。ま た、行政コストの削減しか念頭にない場合など、そうした施策をすすんでやる 自治体ばかりというわけでもない。 ちなみに、それを佐口[2011: 13]によって、地域雇用の醸成という観点か らみてみよう。すなわち、「2004年度から、地方自治体による無料職業紹介機 関の設置が相次ぎ、2009年11月現在で138カ所にのぼっている」という。そ の一方で、国の施策においては、「法的な位置づけは別にして、緊急雇用創出

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事業につながる事業は、失業対策事業の再版として出発したものといってよ」 く、また、「失業対策事業での『滞留期間』を考慮して、そこでの雇用はあく までも一時的雇用であった」。ところが、このような国の施策を自治体が地域 雇用の長期的あるいは継続的な醸成のために活用しうる余地も、つぎのとおり みられるという。 2001年度から04年度までの緊急地域雇用創出特別基金事業での推奨例は環 境・福祉・教育等であった。これらの事業には、継続的雇用が合理的なもの も含まれていたと考えられる。(佐口[2011: 13]) このように、雇用政策の側面から模索される分野には、公共サービスの分野が 大きく重なる。したがって、総合評価方式にもとづく事業者選定をこの分野と 結びつければ、地味ながらもその自治体特有の地域雇用の開発にいたる可能性 があるといえる。 (4) 賃金額に対する評価 公契約条例のなかには、本稿末尾の資料に示すとおり、所定の賃金額の支払 いを求める条項7)が入っている。この条項は、地域の賃金水準の維持や底上げ を、契約関係を通じてはかろうとするものである。それはたとえば米国におい て、古くはデービス・ベーコン法にはじまり、今世紀への転換期前後には多く の地域で策定されたリビング・ウェイジ条例にみられる考え方といってよい。 ところで2012年になると、そうした条例によらずに賃金水準に言及するか たちをとった総合評価方式の一般競争入札もみられるようになった。それが大 阪市交通局を皮切りに試行された清掃業務委託に関する入札である。もっと も、それ以前にあっても、たとえば大阪府豊中市の庁舎清掃業務委託において は、「新規雇用予定者に対する雇用条件等」として、賃金に関する評価8)のご く部分的に示唆されるものがあった。これに対し、同交通局の場合、いくつか 7) 野田市公契約条例第 6 条、川崎市契約条例第 7 条、多摩市公契約条例第 6 条。 8) 2009 年 10 月 8 日付けで公告された「豊中市役所庁舎清掃等業務並びに豊中市立障害福祉センター ひまわり及びしいの実学園総合管理業務の委託契約に係る総合評価一般競争入札」についての「資料 1

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の地下鉄駅を一区域とする清掃業務9)の落札者決定基準として、総合計点 120 点のうち、従事者の時間給1000円を確約した事業者に2点加算することとさ れ、評価基準がきわめて具体的である。 この入札は複数の区域について並行して実施されたが、それらの業務を受注 しようとする事業者の間では、対応がわかれた。すなわち、1000円の時間あ たり賃金を支払うことによって2点を獲得しようとするか、あるいは、他の項 目での高評価獲得を考慮してたかだか2点の追加を不要と判断して賃金水準 に手をつけずにおくかという、二通りの対応がみられたのである。ちなみに大 阪市は、総合評価一般競争入札に社会的評価を盛り込むのが大阪府についで早 く、2004年からのことだったし、その対象が基本的に庁舎清掃だった点では 大阪府同様であるから、事業者であるビルメンテナンス業界では高得点獲得事 業者が相互におおむねわかるという市場環境ができつつある。つまり、具体的 に何社かが近接した高得点圏に入ることがわかっている環境なので、たかが2 点といえどもその差が落札に大きく影響するかもしれないともいえる。このよ うに、この加点は、事業者間の落札ゲームの設計としても興味深い問題を提起 するだろうが、それはそれとして、実際に対応へふみ出した事業者には新たな 課題をなげかけた。 それは企業内賃金体系への影響である。大阪府の地域別最低賃金は2011年 9月30日発効の改定値で786円であり、建物清掃は周知のことながら賃金水 準が最も低い職種といえる。つまり、企業内賃金体系に、多くは短時間労働者 や期間の定めのある労働者に応じたものとして、時間あたり1000円を下回る 水準が設定されているはずである。  評価項目及び評価点配分」によれば、総合計点 1000 点中 30 点ぶんが「本業務で加点の対象となっ た新規雇用予定者に対する雇用条件を総合的に評価する。」というところにあてられ、「〈評価内容〉1. 雇用期間、2. 賃金及び各種手当の支給、3. 有給休暇付与、4. 各種保険加入及びその他事項 につい て、労働基準法等の関係法令に抵触してないか等の確認(必要に応じ市のヒヤリング結果も含め)を行 い評価する。」とされていた。他の条件が同一の場合、この「2」の部分の評価には金額の多少もかかわ る 。(http://www.city.toyonaka.osaka.jp/top/ filemst /5977/03Reference1.pdf   2012/6/1)

9) 従事者が生活保護を受けなければならないなど、「官製ワーキングプア」の象徴としていわばや

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その事業者は当然、民間やその他自治体の建物清掃も受託しているだろう が、そこでは従来どおりの賃金を適用して差し支えない。それはいうまでもな く、事業の遂行に立脚した民間の労働契約による賃金額である。ところが、大 阪市交通局の現場については同じ仕事であってもより高い賃金を支払わなけれ ばならない。そのため、結局のところ、各種手当類をみなおすかたちで就業規 則を改正した事業者もあった。このように、公共サービスやその周辺分野にお いて賃金額の上昇を求めることが企業内賃金体系に影響を及ぼすことは、悩ま しい問題といえる。 (5) 賃金の条項をめぐる議論 公契約を通じて低賃金化の歯止めをかけることは重要だが、先例となるアメ リカ合衆国とは背景となる事情が日本ではいくぶん異なっている。まず、デー ビス・ベーコン法で賃金低下を防止しようとしたのは、元来熟練技能工がある 程度組織化されていた分野だったから、高水準とはいわないまでも中位の相場 のできている分野だった。これについては次のような指摘がある。 千葉県野田市の公契約条例は、官製ワーキングプアの予防を主眼としてい るため、最低賃金法の定める最低賃金について条例による上積みを図る構造 となっている。川崎市においても、そのような傾向が若干見られる。 公契約規整は、元々、熟練就労者を含む就労者全体の賃金相場や労働条 件の下支えし、熟練就労者による品質の確保を図りつつ、地域経済の振興を 図ること等を目的として産み出されたものであり、未熟練労働者を念頭にお く最低賃金制度に上積みを図るだけでは、本来の役割を十分に果たせない。 (古川[2011: 90]) そこで、とりわけ不熟練の労働市場に主眼をおいた公契約上の規制はといえ ば、近年の全米各市におけるリビング・ウェイジ条例である。それらの事実上 の規制対象になったのは、主に移民労働者の従事する分野であり、ここでの底 上げが移民労働者の運動を後押しして民間の現場での賃金上昇と連邦最低賃金

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上昇に結びついたと思われる。その背景には、1990年代以降、米国の物価上 昇率が総じて日本より高い10)という事情もある。 それにひきかえ、現状では日本ではどちらかといえば物価は横ばいまたはゆ るやかな下落傾向にあるのであって、この状況だと公契約部分での賃金の下限 額の上昇が民間発注部分での賃金上昇要求を誘発するかどうかわからない。し たがって、底上げは地域別最低賃金か特定(産業別)最低賃金によるべきとい う考え方もなりたつ。その場合は、公契約条例上の対象はもう少し賃金が高い 職種、たとえば下水処理場の運転管理委託のようなものが想定されるかもしれ ない。企業内に年功的な賃金体系がある業界では、その下限、たとえば高卒初 任給を設定することも可能だろう。その一方で、時間当たり賃金が最低生活保 障水準に届かないような職種、たとえばビル清掃員では、その水準の賃金が支 払えるような金額を、まずは積算基準として確認しつつ、そうして得られた予 定価格をなるべく下回らないような発注価格とするところからはじめなければ ならないはずである。 また、前項で触れたような企業内賃金体系の悩ましさについては、公契約条 例制定のめざされている札幌市において、業界団体の主張から端的に読み取る ことができる。北海道ビルメンテナンス協会長の発言はつぎのように報道され ている。 山田会長らは、市の関連施設で働く従業員約350人が公契約条例で賃金底 上げの恩恵を受けても、民間施設で働く他の従業員の賃金を同水準に引き上 げる経営体力はないと主張。「社内で賃金格差が生じる条例には賛成できな い」と伝えた。11) すなわち、賃金上昇分について市による発注価格の向上が見込めても、企業内 の同一労働同一賃金の原則が保てなくなる懸念のある事業者があるということ 10) 総務省『世界の統計』各年。 11)「市長 ビルメンテ協と会談、公契約条例 なお平行線、慎重姿勢崩さぬ業界」、『北海道新聞』 2012 年 3 月 20 日朝刊。

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である。 とはいえ、たとえば札幌市のような場合、道内他都市とことなり、不熟練の 労働市場にあっても、時間あたりの賃金相場は北海道の地域別最低賃金を多少 なりとも上回っていよう。したがって、低位ではあれ最低位ではないそうした 相場を追認するような水準の賃金の支払いが公契約条例下で義務づけられたと しても、同市内の事業者にとっては価格の過当競争を緩和する要素として歓迎 されこそすれ、必ずしも忌避されるわけではないようにも思える。なぜなら、 上に述べたように物価の下落傾向という市場環境も考慮に入れる必要があるか らである。その場合、同一の事業者が、札幌市内の現場については生活費もか さむからと都市手当的なものを上乗せするような考え方で賃金体系の整合性を 保つということもありうるだろう。このように考えると、賃金額の規制につい ての論議は、事業者の組織率やその分布にもよろうが、かたや道内全体の業界 の利益を代弁せざるをえない代表者に対して、かたや札幌市の首長が会談する という点に、そもそも行き違いの生じる余地があるともいえる。いずれにして も、今後の推移を見守りたい。

おわりに

前節(4)、(5)項では賃金額に関する規制について触れたが、今後もしばら くこれらの部分は論議をよびつづけることになろう。たとえば今後、公契約条 例の制定をめざす自治体においても、そもそも官製ワーキング・プアを生まな い方策としての雇用環境なり労働条件なりの規制のうちで、賃金額や賃金制度 をどのように扱うかについては多くのバリエーションがありうるように思われ る。本稿の最後に、賃金に関わる取り組みについて最低賃金制度との接合を考 察しておきたい。 まず、全国規模の労働基準政策において、現在のところ、最低賃金額を全国 的に引き上げてゆくという基調は保たれている。たとえば、「最低賃金引上げ に向けた中小企業への支援事業」12) がそれで、 12) http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/jigyousya/shienjigyou/  2012/6/1。

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最低賃金について、2020年までのできる限り早期に全国最低800円を確 保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1,000円を目指すこと(平成22年 6月3日雇用戦略対話の政労使合意、新成長戦略(平成22年6月18日、閣 議決定))との目標の実現に取り組むため、厚生労働省は経済産業省と連携 し、最も影響を受ける中小企業に対する以下の支援を実施します。 とされている。具体的には表3のとおりの施策が挙げられているが、最も関係 の深そうな「3 地域別支援策」においても、賃金額引き上げの原資それ自体 を助成するものではなく、「取り組み」を支援するものである。自治体の総合 評価一般競争入札における落札者決定基準において、この「3」のような取り 組みに評価点を配分するということはあり得るだろう。 表 3  最低賃金引上げに向けた中小企業への支援事業 1 全国的支援策:ワン・ストップ &無料の相談・支援体制を整備 生産性の向上等の経営改善に取り組む中小企業の労働条 件管理などのご相談などについて、中小企業庁が実施する 支援事業と連携して、ワン・ストップで対応する相談窓口 を開設しています。 2 業種別支援策:最低賃金引上げ の影響が大きい業種の賃金底上げ のための取組を支援 全国規模の業界団体による接客研修や、共同購入などのコ スト削減の実験的取組などへの助成をします。(1 団体の 上限 2,000 万円) 3 地域別支援策:最低賃金の大幅 な引上げが必要な地域(700 円以 下の 33 県)の賃金水準の底上げ を支援 事業場内の最も低い時間給を、計画的に 800 円以上に引 き上げる中小企業に対して、就業規則の作成、労働能率の 増進に資する設備・機器の導入、研修等の実施に係る経費 の 1/2(上限 100 万円)を助成します。 3 について (支給の要件) [1] 賃金引上げ計画の策定 事業場内で最も低い時間給を 4 年以内に 800 円以上に引上げ [2]1 年当たりの賃金引上げ額は 40 円以上(就業規則等に規定) [3] 引上げ後の賃金支払実績 [4] 業務改善の内容及び就業規則に対する労働者からの意見聴取 [5] 賃金引上げに資する業務改善を行い費用を支払うこと 等 支給額: [5] の経費の 2 分の 1(上限 100 万円) 支給回数:賃金引上計画期間中に支給要件を満たした年度に 1 回支給 申請先:申請事業場の所在地を管轄する 33 県労働局 出所:厚生労働省のホームページ   http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/jigyousya/shienjigyou/  (2012/6/1)  

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つぎに、周知のとおり、賃金下落圧力に抗する必要性を事業者団体が感じて いるのであれば、最低賃金法上の「特定(産業別)最低賃金」の新設にむけて、 「公正競争ケース」に沿って申し出るという方法がある。もし最低賃金額につ いて、基幹的労働者の概ね1/2以上に労働協約が適用されており、協約締結 当事者である労働組合又は使用者の全部の合意による申し出があるというよう な場合であれば、「労働協約ケース」に沿った新設ということになるだろうが、 公契約にかかわる分野でそのような産業分野をみつけることは困難である。し たがって可能性のあるのは「公正競争ケース」であって、中央最低賃金審議会 「公正競争ケース」検討小委員会報告(平成4年5月15日中央最低賃金審議 会了承)によると、「(1)申出の要件」として、つぎのような記述がある。 当該最低賃金の適用を受けるべき労働者又は使用者の概ね1/3以上のもの の合意による申出があったものについては受理・審議会への諮問が円滑に行 われることが望ましい。(労働調査会編[2012: 237]) つまり、同一産業の使用者の1/3以上が合意して申し出れば特定最低賃金新設 の過程が動き始めるというのが、現行最低賃金法上の取り扱いである。ところ が、そのようなかたちで特定最低賃金の新設されるケースは近年まれであり、 労働団体が働きかけるなどしても地方最低賃金審議会への諮問にたどりつきに くい。そこで、自治体による総合評価一般競争入札の落札者決定基準において は、事業者がそうした「申出」に関与していること自体を評価するという方策 がありうると考えることができる。 以上、今後の制度設計も念頭におきつつさしあたり議論すべきところを取り 上げた。これらの記述にあたっては、大阪府堺市、同豊中市、同枚方市による 落札者決定基準策定にかかわる意見聴取の場において、貴重な質疑の場をいた だいたことが基盤となっている。また、NPO労働と人権サポートセンターに よる「公契約条例研究会」における情報交換と議論はたいへん参考になった。 関係するみなさんに謝意を表したい。なお、本稿は平成23年度福井県学術振

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興基金、ならびに、平成24年度福井県立大学特別研究費による研究成果の一 部である。 参考文献 郷原信郎[2006]『入札関連犯罪の理論と実務』東京法令出版。 佐口和郎[2011]「日本における地域雇用政策の進化と現状」、『社会政策』第 2 巻 第 3 号、2011 年 3 月。 布施哲也[2008]『官製ワーキングプア ─自治体の非正規雇用と民間委託』七つ 森書館。 古川景一[2011]「公契約規整の到達点と課題 ─川崎市契約条例を中心に─」、『季 刊労働者の権利』290 号、2011 年 7 月。 武藤博己[2006]『自治体の入札改革 ─政策入札-価格基準から社会的価値基準へ ─』イマジン出版。 労働調査会編[2012]『平成 24 年度版 最低賃金決定要覧』労働調査会。

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(資料) ○野田市公契約条例 平成 21 年 9 月 30 日 野田市条例第 25 号 地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進め られてきたが、一方で低入札価格の問題によって下請の事業者や業務に従事する労働者 にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。 このような状況を改善し、公平かつ適正な入札を通じて豊かな地域社会の実現と労働 者の適正な労働条件が確保されることは、ひとつの自治体で解決できるものではなく、 国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な措置を講ずることが 不可欠である。 本市は、このような状況をただ見過ごすことなく先導的にこの問題に取り組んでいく ことで、地方公共団体の締結する契約が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会の 実現に寄与することができるよう貢献したいと思う。 この決意のもとに、公契約に係る業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を 図るため、この条例を制定する。 (目的) 第 1 条 この条例は、公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保する ことにより、当該業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図り、もって市 民が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする。 (適用労働者の賃金等) 第 6 条 受注者、下請負者及び法の規定に基づき受注者又は下請負者に労働者を派遣す る者(以下「受注者等」という。)は、適用労働者に対し、市長が別に定める 1 時間当 たりの賃金等の最低額以上の賃金等を支払わなければならない。 2  工事又は製造以外の請負の契約については、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号) 第 4 条第 3 項各号に掲げる賃金は、前項に規定する賃金等に算入しない。 3  第 1 項の規定の適用については、最低賃金法施行規則(昭和 34 年労働省令第 16 号) 第 2 条の規定を準用する。 4  市長は、第 1 項に規定する賃金等の最低額を定めるときは、次に掲げる額を勘案し て定めるものとする。 (1)  工事又は製造の請負の契約 農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用い るため毎年度決定する公共工事設計労務単価 (2)  工事又は製造以外の請負の契約 野田市一般職の職員の給与に関する条例(昭和 26 年野田市条例第 32 号)別表第 1 及び別表第 1 の 2 に定める額、国土交通省が国 の建築保全業務を委託する際の費用の積算に用いるため毎年度決定する建築保全業務

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労務単価その他の公的機関が定める基準等並びに本市が既に締結した工事又は製造以 外の請負の契約に係る労働者の賃金等 (平 22 条例 24・平 23 条例 25・一部改正) (総合評価一般競争入札等の措置) 第 15 条 市長は、地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 167 条の 10 の 2 第 3 項に規定する総合評価一般競争入札(同令第 167 条の 13 で準用する場合を含む。) により落札者の決定(第 4 条第 1 号に掲げる契約に係る落札者の決定を除く。)をし ようとするときは、当該決定に係る業務(以下この条において「決定業務」という。) に従事する者であって、次の各号のいずれかに該当するものの賃金等を評価するもの とする。市長又は教育委員会が地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 244 条の 2 第 3 項の規定により公の施設の管理を指定管理者に行わせるため候補者を選定しよう とするときも同様とする。 (1)  落札者に雇用され、専ら決定業務に従事する労働者(労働基準法第 9 条に規定す る労働者をいう。次号及び第 3 号において同じ。) (2)  下請その他いかなる名義によるかを問わず、市以外の者から決定業務の一部につ いて請け負った者(次号において「その他請負者」という。)に雇用され、専ら決定業 務に従事する労働者 (3)  法の規定に基づき落札者又はその他請負者に派遣され、専ら決定業務に従事する 労働者 (4)  請負労働者 (平 22 条例 24・旧第 14 条繰下・一部改正) 平成 24 年 4 月 1 日改正施行

(22)

○川崎市契約条例(昭和 39 年川崎市条例第 14 号)一部改正 (目的) 第 1 条 この条例は、市及び市の契約の相手方になろうとする者等の責務を明らかにし、 契約に関する施策の基本方針を定め、並びにこれに基づく施策を実施することによっ て、市の事務又は事業の質を向上させるとともに、地域経済の健全な発展を図り、もっ て市民の福祉の増進に寄与することを目的とする。 (施策の基本方針) 第 4 条 契約に関する施策は、次に掲げる基本方針に基づき策定され、及び実施される ものとする。   (1) 契約の過程及び内容の透明性を確保するとともに、市の契約の相手方になろうと する者の間の公正な競争を促進すること。   (2) 談合その他の不正行為の排除を徹底すること。   (3) 契約により地球環境の保全その他の市の重要な政策を推進すること。   (4) 予算の適正な使用に留意しつつ、市内の中小企業者の受注の機会の増大を図る こと。   (5) 経済性に配慮しつつ、市の契約の相手方になろうとする者の技術的能力及び社会 貢献の取組その他の価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び質が総合的に優れ た内容の契約とすること。 (作業報酬下限額) 第 7 条 市長は、毎年、次の各号に掲げる契約の種類ごとに当該各号に定める者(以下 「対象労働者」という。)に対して支払われるべき 1 時間当たりの作業報酬(賃金又は 請負代金のうち規則及び地方公営企業法(昭和 27 年法律第 292 号)第 10 条に規定 する企業管理規程(以下「規則等」という。)で定めるものをいう。以下同じ。)の下 限の額(以下「作業報酬下限額」という。)を定めるものとする。   (1) 予定価格 600,000,000 円以上の工事の請負契約(以下「特定工事請負契約」とい う。)次に掲げる者であって市が工事費の積算に用いる公共工事設計労務単価に掲げ る職種に係る作業に従事するもの ア 労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第 9 条に規定する労働者(同居の親族のみを 使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。以下同じ。)であっ て特定工事請負契約に係る作業に従事するもの イ 自らが提供する労務の対償を得るために請負契約により特定工事請負契約に係る作業 に従事する者   (2) 予定価格 10,000,000 円以上の業務の委託に関する契約のうち規則等で定める もの又は地方自治法第 244 条の 2 第 3 項の規定により市の指定を受けたもの(以下 「指定管理者」という。)と締結する公の施設の管理に関する協定(以下「特定業務委 託契約」という。) 労働者であって特定業務委託契約に係る作業に従事するもの

(23)

2 作業報酬下限額は、次の各号に掲げる契約の種類ごとに当該各号に定める額その他の 事情を勘案して定めるものとする。   (1) 特定工事請負契約 市が工事費の積算に用いる公共工事設計労務単価において職 種ごとの単価として定められた金額   (2) 特定業務委託契約 生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)第 8 条第 1 項に規定 する厚生労働大臣の定める基準において本市に適用される額 3 市長は、作業報酬下限額を定めようとするときは、川崎市作業報酬審議会の意見を聴 かなければならない。 4 市長は、作業報酬下限額を定めたときは、これを告示するものとする。 平成 23 年 3 月 1 日または平成 23 年 4 月 1 日改正施行

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多摩市公契約条例 (目的) 第 1 条 この条例は、多摩市(以下「市」という。)が締結する請負契約に基づく業務及 び市が指定管理者に行わせる公の施設の管理業務において、当該業務に従事する者の 適正な労働条件等を確保し、もって労働者等の生活の安定を図り、公共工事及び公共 サービスの質の向上に資するとともに、地域経済及び地域社会の活性化に寄与するこ とを目的とする。 (市の責務) 第 3 条 市は、この条例の目的を達成するため、公契約等に関する施策を総合的に策定 し、実施する責務を有する。 (受注者の責務) 第 4 条 受注者は、公契約等を締結した責任を自覚して、誠実に職務を遂行する責務を 有し、その業務に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に努め なければならない。 2 受注者は、男女平等・男女共同参画を推進することにより、労働者の仕事と生活の調 和の実現に努めなければならない。 (労働者等の賃金等) 第 6 条 市長等は、公契約等において、受注者及び受注関係者が、労働者等(最低賃金 法(昭和 34 年法律第 137 号)第 7 条に規定する者を除く。)に対し、市長が定める 額(以下「労務報酬下限額」という。)以上の賃金等を支払わなければならないことを 定めるものとする。 2 労務報酬下限額には、工事又は製造以外の請負契約における最低賃金法第 4 条第 3 項 各号に掲げる賃金は算入しない。 3 賃金等が時間以外の期間又は出来高払制その他の請負制によって定められている者の 労務報酬下限額は、最低賃金法施行規則(昭和 34 年労働省令第 16 号)第 2 条の規 定を準用する。 (労務報酬下限額) 第 7 条 市長は、労務報酬下限額を定めるときは、次の各号に掲げる労働者等に応じ、当 該各号に定める額その他の事情を勘案するものとする。 (1) 工事又は製造の請負契約に係る業務に従事する労働者等のうち、市長が多摩市公契 約審議会の意見を聴いた上で定める割合の人数の者 農林水産省及び国土交通省が公 共工事の積算に用いるため、毎年度決定する公共工事設計労務単価(基準額) (2) 前号以外の労働者等 業務の種類及び内容に応じて、当該業務の標準的な賃金と認 められる額(市長が別に定める期日までの間においては、生活保護水準(生活保護法 (昭和 25 年法律第 144 号)第 8 条第 1 項に規定する厚生労働大臣の定める基準にお いて市に適用される額)を下回らない額)

(25)

2 市長は、労務報酬下限額を定めようとするときは、多摩市公契約審議会の意見を聴か なければならない。

3 市長は、労務報酬下限額を定めたときは、これを告示する。 平成 23 年 12 月 22 日公布施行

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