8Kスーパーハイビジョン放送を支えるメディア伝送技術 -8K時代の伝送と信号処理-:5.8Kスーパーハイビジョン放送実現に向けたMMT対応受信機 -進む受信機の開発-
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(2) 5. 8K スーパーハイビジョン放送実現に向けた MMT 対応受信機─進む受信機の開発─. 放送網 本編映像 UTC(基準時刻). UTC(基準時刻) 本編音声. 放送局. 吹替音声 通信網. (a)受信信号のスペクトラム波形. 伝送経路によらず どの音声を選択しても 本編映像と同期. 解説音声. 図 -3 MMT 多重化方式. 信 C/N19dB が得られたことで,SHV 放送に必要 な大容量情報伝送が安定して実現できていること を確認した.. (b)復調時のコンスタレーション. aa多重化方式. SHV 放送では,従来の MPEG-2 TS(Transport. 図 -2 伝送路符号化方式の検証. Stream)方式と異なる TLV/MMT 方式が採用さ. AV 出 力 基 板 は, 復 号 さ れ た SHV 映 像 お よ び. れている.MMT 方式は IP Network との親和性. 22.2 マルチチャンネル音声を複数の HDMI に分配し,. が高い多重化方式であり,図 -3 に示すように番組. 外部接続の 8K モニタ,AV アンプへ出力する.. を構成する映像や音声の各コンポーネントを,複. 次に SHV 試験放送で改良/採用された技術要素. 数の伝送路(たとえば放送網と通信網)を用いて. の詳細と MMT 対応受信機における実装,検証結果. 伝送し,同期再生を実現する仕組みを備えている.. について説明する.. 複 数 伝 送 路 を 経 由 し た 各 コ ン ポ ー ネ ン ト の同期 再生の実現には,UTC(Coordinated Universal. aa伝送路符号化方式. Time)を基準とした共通の時刻情報が利用される.. SHV 放送を支える高効率な大容量情報伝送を. また MPEG-2 TS と異なりパケット長が可変なた. 実現するため,誤り訂正符号として LDPC(Low. め,伝送メディアや伝送路特性に合わせた最適化. Density Parity Check)符号が採用されている.ま. が可能である.. た,変調方式に 16APSK(Amplitude and PSK). また SHV 放送では,MMT 方式で格納された IP. が追加採用されている.これらにより,衛星の 1 つ. パケットを,さらに TLV 方式でカプセル化するこ. の中継器あたり,既存衛星放送の約 2 倍にあたる約. とで衛星放送での伝送が行われる.. 100Mbps の情報伝送レートが実現される.. なお MMT 対応受信機において,TLV/MMT 多重. MMT 受信機においては,フロントエンド基板にて. 分離は,メイン基板におけるソフトウェアにて実装. LDPC による誤り訂正,16APSK 復調機能が実装さ. されている.そのため設計当初から,リアルタイム. れている.これらの機能検証のため,市販 BS アン. 処理に対する懸念が存在した.SHV 試験放送による. テナを用いて BS17ch の試験放送を受信した際のフ. 検証の結果,放送受信中の CPU 占有率は一定範囲で. ロントエンド基板における受信スペクトル波形およ. 安定しており,受信番組が映像の乱れやコマ落ちな. び復調時のコンスタレーションを確認した(図 -2) .. く再生できていることから,TLV/MMT 多重分離の. モニタに表示された波形から放送波の正常な受. リアルタイム処理に問題がないことを確認した.. 信を確認した.また,所要 C/N12.2dB に対し受. 情報処理 Vol.58 No.2 Feb. 2017. 117.
(3) 小特集. 8K スーパーハイビジョン放送を支えるメディア伝送技術 ─ 8K 時代の伝送と信号処理─. LFE. LFE. リスニング ポジション 上段スピーカ 中段スピーカ 下段スピーカ. ハイビジョン放送. スーパーハイビジョン放送. 図 -5 22.2ch スピーカー配置. 図 -4 解像度の比較. aa映像符号化方式. 図 -4 に 示 す よ う に,SHV 放 送 で は 現 行 放 送 の 16 倍にあたる超高精細映像を効率的に伝送す. (a) ch1~8. (b) ch9~16. る必要があるため,最新の映像符号化方式である HEVC(High Efficiency Video Coding)が採用さ れている.この方式は従来方式の MPEG-2 Video に比べ,同等の画質を保ったまま情報量を 1/4 程. (c) ch17~24. 度まで削減できる.また,広色域の表色系である. 図 -6 音声符号化方式の検証. ITU-R の勧告 BT.2020 が新たに採用されたことで, 実物に近い色再現も可能となっている.. aa音声符号化方式. なお SHV 放送で用いる超高精細映像の復号処理. 22.2ch に対応した MPEG-4 AAC が採用されて. およびモニタ出力に至る後処理については,高い処. いる.従来の 5.1ch サラウンド方式が前後,左右の. 理性能が求められる.そのため MMT 対応受信機に. 平面的なスピーカ配置であるのに対し,図 -5 に示. おいては,サブ基板,8K デコード基板それぞれに. すように,上下方向にもスピーカを配置することで,. 搭載された HEVC ハードウェアデコーダを入力映. 立体的な音の広がりが再現可能な構成となっている.. 像の解像度に応じて切り替えて利用し,それぞれの. MMT 対応受信機においては,サブ基板における. 解像度に応じた後処理を行う構成となっている.し. ソフトウェアにて MPEG-4 AAC 復号機能が実現さ. たがって,デコーダごとの基本的な復号機能および. れている.映像の場合と同様,22.2ch 音声の復号処. 性能を検証するとともに,デコーダ切り替えに伴う. 理には,従来に比べ高い処理性能が求められるため,. 不具合の有無についての検証も行った.検証の結果,. MPEG-4 AAC のリアルタイム復号処理についての. 4K,8K いずれの解像度の場合でも,復号エラーに. 検証を図 -6 に示すような音声モニタの出力,およ. よる画像の乱れや,コマ落ち等の不具合はなく,長. び再生音声の聴取により行った.検証の結果,音声. 時間正常に復号処理が行われ,安定した再生映像が. モニタ出力および再生音声における音途切れ等の異. 得られることを確認した.. 常は観測されず,22.2 マルチチャンネル音響による. また番組編成に伴い,映像の解像度が 4K から 8K,. 立体的な空間音響再現を確認した.. あるいは 8K から 4K へ切り替わった場合にも,適 切なデコーダに切り替わり,安定した再生映像が得 られることも確認した.. aaデータ放送方式. マ ー ク ア ッ プ 言 語 と し て HTML5 が 採 用 さ れ た.HTML5 は,従来データ放送で利用されてい. 118. 情報処理 Vol.58 No.2 Feb. 2017.
(4) 5. 8K スーパーハイビジョン放送実現に向けた MMT 対応受信機─進む受信機の開発─. TLV. HEVC. TLV/MMT 多重分離. AAC. HTML5アプリ. HTTP Server. HEVC Decoder. MPEG-4 AAC Decoder. HTML5 Browser. 映像. 音声. TLV. HTML5アプリ (データ放送). TTML. データ放送. TTML HTML5アプリ (字幕アプリ) TTML. HTTP Server HTML5アプリ (字幕アプリ). 図 -7 データ放送の実装. HEVC. TLV/MMT 多重分離. HEVC Decoder. HTML5 Browser. HTML5 Browser. 映像. 字幕. データ放送. HTML5アプリ (データ放送). 図 -8 字幕・文字スーパーの実装. た BML(Broadcast Markup Language)に比べ表 現力の豊かなコンテンツを実現することが可能にな. ションからも利用が可能であり,アプリケーション. るだけでなく,すでにパソコンやスマートフォン向. にて字幕データを加工し提示方法を変更することが. けの Web サイトでの利用が広く普及していること. できる.. から,放送・通信融合による新しい放送サービスで. なお MMT 対応受信機においては,図 -8 に示. の利用が期待される.なお図 -7 に示す通り,映像,. すように受信機機能としての字幕・文字スーパー. 音声コンポーネント等と同様,衛星放送にて配信さ. 提示機能自体も受信機内に保持された字幕表示用. れる HTML5 アプリケーションを受信機に内蔵さ. HTML5 アプリケーションとして実装されており,. れた HTTP(Hypertext Transfer Protocol)サー. データ放送を実行する HTML5 ブラウザと独立し. バに蓄積することが可能である.このような構成と. たブラウザ上で実行される.HTML5 アプリケーシ. することで,通信網に接続されていない受信機の. ョンとして実装を行ったことで,データ放送の場合. HTML5 ブラウザでも,データ放送として配信され. と同様,TLV/MMT 多重分離のリアルタイム処理. る HTML5 アプリケーションが実行可能となって. への影響が懸念されたが,実際の SHV 試験放送で. いる.. の動作検証により問題ないことを確認した.. また MMT 対応受信機においては,メイン基板の ソフトウェアとして HTML5 ブラウザが実行される. HTML 5 ブ ラ ウ ザ に よ る HTML 5 ア プ リ ケ ー ション起動に伴う,TLV/MMT 多重分離のリア. SHV 実用放送に向けて. ル タ イ ム 処 理 へ の 影 響 が 懸 念 さ れ た が, 実 際 の. 以上説明したように,SHV 試験放送に対応した. SHV 試験放送での動作検証により,問題ないこ. MMT 対応受信機を開発し,SHV 放送で用いられ. とを確認した.. る技術要素および受信機での実装を検証した. SHV 実用放送にむけては,受信機の普及が欠か. aa字幕・文字スーパー符号化方式. せない.今後の受信機開発においては,ハードウェ. W3C(World Wide Web Consortium)により勧. アの小型化や,コストダウンなど,受信機普及を念. 告 さ れ た TTML1.0(Timed Text Markup Lan-. 頭においた取り組みを進める必要がある.. guage 1.0)をベースに拡張された符号化方式が採. (2016 年 10 月 31 日受付). 用されている.文字だけでなく画像や音声データの 利用,アニメーション等の多彩な表現が可能な方式 となっている.また受信した字幕は,受信機機能に. 高橋真毅 ■ [email protected]. よる画一的な提示に用いられるだけでなく,前述の. 1998 年シャープ(株)入社.以来,動画像符号化,マルチメディ ア伝送技術等の研究開発に従事.現在,通信・映像技術研究所に所属.. データ放送との組合せにより,HTML5 アプリケー. 情報処理 Vol.58 No.2 Feb. 2017. 119.
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