サイバーフィジカルシステム:8.クルマの自動走行
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(2) 特集:サイバーフィジカルシステム ギーメロン大学やゼネラルモーターズの自動走 行技術はルールベースの状況判断を用いている. このアプローチは,実装がシンプル,かつわか りやすく,法定の交通ルールとの重ね合わせと いう点でも合理的であるが,個性的な運転や快 適な運転という高度な目的達成には不十分と言 われている. もう 1 つのアプローチは機械学習を用いて運転. モデルを構築することである.これは,たとえば, 図 -1 Velodyne 社製 LRS のデータ. CAN から取得できるアクセル,ブレーキ,操舵な どの運転データと,環境センサから取得できる環境. た処理が可能となる.LRS については,ほかにも. データを入力として,どのようなデータセットに対. 近距離系,遠距離系,2 次元,3 次元,などさまざ. して,どのような状況判断が正解なのかを学習させ. まな組合せの製品が市場に出ている.. て,数理モデルとして表現する手法となる.機械学. LRS を 用 い る と, 環 境 地 図 か ら 自 己 位 置 推 定. 習によって生成されるモデルは,一般的にブラック. が可能になり,地図生成と位置推定を同時に行う. ボックスとなり,その精度は学習のデータセットや. 手法として Simultaneous Localization and Mapping. 学習器のパラメータに大きく依存する.近年では,. 地図上の相対的な位置認識を目的としており,グロ. Learning が注目を集めている.文字認識や音声認識,. (SLAM)の研究が進んでいる.SLAM は主に環境 ーバル座標系での位置認識には GPS を含めた衛星. 測位システム(GNSS)を用いるのが効果的である.. 944. さらに深層の学習を用いるアプローチとして Deep. 画像認識では Deep Learning の効果が認知されてお り,状況判断に適用できるかどうか研究が進められ. GNSS では衛星の角度によって位置認識の精度が変. ている.. 動するため,高層ビル付近やトンネルでは使用が難. 行動計画は,大別して経路生成と軌道生成がある.. しいケースもあるが,慣性センサや携帯電話の基地. 経路生成は,カーナビの発展と捉えることができ,. 局を利用した補正をかけることで,市街地でもある. 目的地までの経路をどのように生成するかという問. 程度の精度を保てるようにはなってきている.その. 題であるが,自動走行ではカーナビのような粒度の. ほかの環境センサとしてはミリ波レーダが車載に導. 荒いトポロジではなく,車線レベルでナビゲーショ. 入されてきており,研究レベルでは Time of Flight. ンできるような精度が求められる.これは先に述べ. 形式のデプスカメラや近赤外線カメラの導入も検討. た環境地図とも関連してくる.一方,軌道生成につ. されている.. いては,生成された経路に対して,さらに細かい軌. 状況判断・行動計画. 道の生成,あるいは生成された経路が利用できない. 環境認識と深く関連する要素技術が状況判断. (障害物などがある)場合に重要となる.こちらも. と行動計画である.環境認識との正確な境目は. 先にあげた状況判断と深く関連しており,最終的に. ないが,移動体や障害物を含めた周囲環境の認. は環境認識から車両操舵までを統一的に考えないと. 識結果に基づいて,運転の行動を決定する必要. 安全システムとしては成り立たないと考えられる.. がある.状況判断の古典的なアプローチとし. プラットフォーム. てルールベース手法がある.代表的な応用分野. 環境認識や状況判断,行動計画にかかるアルゴリ. として自然言語処理があるが,自動走行におけ. ズムにも大きな課題があるが,それを実装するプラ. る状況判断にも適用例が多く,たとえばカーネ. ットフォームにも課題は多い.環境認識といっても. 情報処理 Vol.55 No.9 Sep. 2014.
(3) ⑧ クルマの自動走行. さまざまなアルゴリズムが考えられ,環境センサ自 体も多岐にわたる.また,状況判断や行動計画も同. まとめ. じコミュニティで開発されるとは限らないため,さ まざまなデバイス,さまざまなモジュールを統一. 本稿では,サイバーフィジカルシステムのケース. 的に扱えるプラットフォームが不可欠となる.近. スタディとして自動走行システムを取り上げ,その. 年では,スタンフォード大学で開発され,その後. 動向と要素技術について述べてきた.自動走行では. Willow Garage 社,Open-Source Robotics Foundation. 実世界の環境認識や,人並みの状況判断と行動計画. その役割を担いつつある.また,自動走行自体は,. システムやリアルタイム OS が求められる処理が多. に引き継がれた Robot Operating System(ROS)が,. が求められ,さらに ROS のようなコンポーネント. きわめてリアルタイム性の高い処理が求められるた. く,サイバーフィジカルシステムの原理原則で実現. め,単に高速処理をするにとどまらず,すべてのタ スクが与えられた時間制約を満たすようにシステム. されるアプリケーションの 1 つと言える. (2014 年 5 月 31 日受付). の資源管理が行えるリアルタイムオペレーティング システム(OS)も必要となる.. 加賀美聡 [email protected] (独)産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター. 1997 年東京大学大学院の博士(工学).同年より東京大学リサーチ アソシエート.2001 年産総研デジタルヒューマン研究ラボに入所. 2009 年より副研究センター長.ロボットの認識・計画・制御とその リアルタイムシステムの研究に従事.. 情報処理 Vol.55 No.9 Sep. 2014. 945.
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