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皆生海岸のクレスト型人工リーフ周辺の地形変化実態とその予測

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Academic year: 2022

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2. 皆生海岸の人工リーフ化に伴う地形変化の実態 図-1は人工リーフ改築前の2002年7月の離岸堤周辺の 深浅図である.離岸堤背後にはいずれもトンボロが発達 し,同時に開口部には同心円状の深みが形成されていた.

また開口部中央での前浜勾配は1/7程度と急であった.

急深な地形であったことから,その緩勾配化もひとつの 目標として人工リーフ化が図られた.人工リーフ改築後,

2005年12月初旬には低気圧に伴う高波浪が作用した.

図-2には,人工リーフ沖の-8mに設置された水圧式波高 計によって観測された有義波高と周期の経時変化を示 す.有義波高は最大約4.5m(周期12s)であり,また3m 以上の高波浪が30時間継続している.この結果,2006年

1月には人工リーフ周辺の海浜形状は図-3のようになっ

た.離岸堤背後のトンボロは消失し,ほぼ-2mの平坦面 が形成された.これは図-4に示す2時期の水深変化量の 平面分布にも詳しい.また人工リーフの両側には局所洗 掘が起き,その最大水深は西側開口部では-7mに達した.

人工リーフ開口部での局所洗掘の非対称性は,波が東側 から斜め入射し,結果的に西向きの沿岸流が生じたこと と密接に関連していると考えられる.このことはまた,

人工リーフの西側に隣接する5号堤背後ではトンボロが 切れたのに対し,東側の1号堤ではトンボロは安定した ままであって,東西非対称な地形となったこととも調和 的である.結局,離岸堤の人工リーフ化により,①人工 リーフ背後は侵食され水深約2mの平坦面ができたこと,

②隣接離岸堤の背後も侵食傾向となり,西側離岸堤ほど 侵食量が大きくなったこと,③人工リーフの開口部は両 側とも深掘れが起こるが,西側開口部での水深増加量が 大きいことなどが明らかになった.

皆生海岸のクレスト型人工リーフ周辺の地形変化実態とその予測

Beach Changes around Artificial Reef with Crests on Kaike Coast and their Prediction

宇多高明

・森川数美

・上橋 昇

・大木孝志

・芹沢真澄

・神田康嗣

・福本崇嗣

Takaaki UDA, Kazumi MORIKAWA, Noboru UEHASHI, Takashi OKI, Masumi SERIZAWA

Yasutsugu KANDA and Takashi FUKUMOTO

Beach changes around an artificial reef with crests on the Kaike coast were investigated through field observations, and compared with the beach changes around the detached breakwaters. Strong shoreward currents were induced due to wave breaking on the reef, resulting in the formation of a tombolo with a scale less than that of the detached breakwater. Also rip currents were generated, and scouring was measured in the opening. These beach changes were predicted using the BG model proposed by Serizawa et al. (2006). Predicted results were in good agreement with the measured.

1. まえがき

皆生海岸では既設離岸堤に代わってクレスト型人工リ ーフ(以下,人工リーフ)が建設された(山本ら, 2004). 人工リーフの建設後,高波浪時には人工リーフ上で強い 岸向き流れが発生し,その流れが開口部での離岸流とな る過程において開口部で局所洗掘が起き,さらにその深 掘れ部からの波浪侵入度が高まった結果,前浜の安定性 の低下が起きた.このことから,人工リーフの更なる展 開においては,このような海浜変形の機構を十分明らか にすることが必要とされる.既に人工リーフ周辺の海浜 変形予測には等深線変化モデルの適用が行われている が,この手法では人工リーフ上での強い向岸流や離岸流 の効果が評価できず,予測精度は十分高くなかった.本 研究では,まず皆生海岸の人工リーフ周辺の海浜変形の 実態を明らかにし,次いで平面実験により海浜流の特性 と海浜変形を調べた.さらに人工リーフ上での強い向岸 流や離岸流を海浜流計算により求め,得られた海浜流の 平面場を芹沢ら(2006)によるBGモデルに組み込むこ とにより,流れの効果を考慮した人工リーフ周辺の海浜 変形予測モデルを開発し,現地や実験結果との比較を行 った.

1 正会員 工博 (財)土木研究センター常務理事なぎさ 総合研究室長兼日本大学客員教授理工学 部海洋建築工学科

国土交通省中国地方整備局日野川河川事 務所 所長

国土交通省中国地方整備局日野川河川事 務所 副所長

国土交通省中国地方整備局日野川河川事 務所 工務課長

5 正会員 (有)海岸研究室 6 正会員 (株)水域ネットワーク 修(工) 東京都庁

(2)

3. 人工リーフ化に伴う地形変化に関する実験的検討 実験は,国土技術政策総合研究所の平面水槽(幅24m, 長さ25m)を用いて行った.模型は,フルード則に則り

縮尺を1/50とした.中央粒径0.34mmの砂を用いて模型

海浜は2006年7月の深浅図をもとに製作した.その際,

人工リーフ背後の砂州は実験開始当初に実測形状と近い 形に整形した.人工リーフは現地と同様,12tの異形ブロ

図-1 離岸堤周辺の深浅図(2002年7月)

図-2 有義波高と周期の経時変化

図-5 人工リーフ周辺の初期海浜形状

図-3 人工リーフ周辺の海浜形状(2006年1月)

図-4 水深変化量の平面分布(2002年7月vs. 2006年1月)

図-6 流れの分布(実験)

図-7 6時間の波作用後の海底形状(実験)

(3)

ック模型を用いて製作した.人工リーフの天端水深は現 地換算で0.65mである.図-5には人工リーフ周辺の初期 海浜形状を示す.初期地形条件で波を作用させた場合の 海浜流の測定結果を図-6に示す.入射波が10°で斜め入 射するため人工リーフ上では全体に下手方向に傾いた流 れが起こる.この流れは,人工リーフの左開口部から強 い離岸流となって沖向きに流れ出ている.これと対照的 に,右開口部では離岸流ではなく向岸流となっており,

人工リーフを挟む両側開口部で全く逆方向の流れが発生 した.6時間の波作用後の海底形状を図-7に示すが,流 れの分布に対応して左開口部では深掘れが進んだのに対 し,右開口部では堆積傾向にある.図-6の海浜流分布で は人工リーフの左開口部での強い離岸流はY=5m付近ま で起きていたが,地形変化から見ると著しい局所洗掘は Y=3m付近までである.以上より,実験結果は実測深浅 図(図-3)の特徴をうまく再現していることが分かる.

4. BGモデルによる地形変化予測

(1)計算方法

人工リーフ上では強制砕波により岸向き流れが起こる が,この流れは連続条件を満足するために開口部からの 離岸流となって沖へ戻る.このような強い流れが発生す るため,人工リーフを単なる消波構造物として扱うのみ では人工リーフ周辺の漂砂を的確に表現できない.そこ で,本研究ではBGモデル(芹沢ら, 2006)を基本として,

漂砂量を波による漂砂(qw)と,流れによる漂砂(qc) の線型和として与え,流れの効果をexplicitに取り込んだ.

漂砂モデルでは,平面波浪場と海浜流場を計算し各点で の波と流れを外力とする.まず,従来の3Dモデルと同 様漂砂フラックスを波と流れによる成分の線型和で表す

(式(1)).また波による漂砂成分には,芹沢ら(2006)

のBGモデルをもとに式(2)を用いる.

………(1)

………(2)

ここに, :ネットの砂輸送フラックス,Z

(x, y, t):地盤高, :地形の勾配ベクトル, :波

向の単位ベクトル, ,α1:波向と等深線直角 方向のなす角,tanβc:平衡勾配,C0:水中重量表示から 体積表示への換算係数である.一方,芹沢ら(2006)で は,漂砂強度を砕波点の波エネルギーと結び付けて定式 化したが,本研究では局所波浪諸元と結び付けることと し,Bailard and Inman(1981)にならい,流速の3乗(せ ん断力×流速)に比例するとし,波の底面振動流速um

3乗に比例させた(式(3)).

………(3)

ここに,ρ:海水の比重,Kw:波による漂砂量係数で ある.式(3)のumは,砕波も含めた平面波浪場の計算 を行い,この計算から得られた各点の波高Hより微小振 幅長波理論により求める.流れによる漂砂成分は,芹沢 ら(2006)と同様重力に起因する効果を表す海底勾配を 陽に含むBailard and Inman(1981)の掃流砂式と同形と し,式(4)で与える.

………(4)

こ こ に , : 流 向 の 単 位 ベ ク ト ル , , α2:流向と等深線直角方向のなす角,tanφ:安息勾配で ある.ただし,計算ではb2=0とした.漂砂強度Pcは,

波存在下での流れによる仕事率がum3×(V/um)=um2V(V は流れの流速)に比例するというBagnoldの考え方より,

既往の3Dモデルと同様波の底面振動流速um2Vに比例す るとする.

………(5)

平面波浪場の計算には,Dallyらの砕波モデルを組み込 んだエネルギー平衡方程式(間瀬ら, 1999)を用い,屈 折・砕波変形と,構造物による波の遮蔽を考慮した計算 を行った.ただし計算対象は水中部のみとし,最小水深 h0を与えてこれより浅い水深はこの最小水深に置き換え た.なお,計算では最小水深h0を1mとしている.これ よりも小さな水深にすると人工リーフ上で過大な波浪減 衰が生じ,海浜流計算が不安定となるなどの問題が生じ たため,試行的にこの値に設定している.また陸上部で はエネルギーを0と置く.海浜流場の計算には堀川編

(1985)を用いた.波浪計算と同様水中部のみ計算対象 とし,最小水深h0=1mを与えた.波浪場・海浜流場を 用いて漂砂式・連続式で地形変化を計算するが,地形変 化1000ステップ毎に波浪場を計算し直した.なお離岸堤 の透過率はKt=0.3とする.海浜変形計算は,現地での 有義波高3mの波が30時間作用したことを考慮し,Δt= 0.004hrで5000steps(20時間)まで計算を行った.また漂 砂 係 数 はKw=0 . 0 0 3,Kc=0 . 0 0 6と し , 平 衡 勾 配 は

tanβc=1/30とおく.人工リーフ上は固定床として扱い,

芹沢ら(2006)のhc近傍の漂砂低減手法を応用して、砂 があれば移動可能とした.まず7基の離岸堤が設置され た条件を考え,堤長を150m,離岸距離を70m,開口幅を

50m,設置水深を2.5mとした.次に中央の離岸堤を人工

リーフに改築し,海浜変形予測を行った.人工リーフの 天端水深は0.5m,天端幅は40m,堤長は150mである.

また波浪条件としては,入射波高を1,3mと変え,波向は 直角入射と右斜め10°としてこれらを組み合わせた条件

(4)

を設定した.斜め入射の場合,沿岸流と沿岸漂砂は通過 境界とするが,境界付近では離岸堤が開口部なしに直線 状に延びると仮定した.表-1には計算条件を示す.

(2)計算結果

1/30の一様勾配海浜においてY=90mに等間隔で離岸堤

群を設置し,この状態で波高1mの波が海岸線に対し直 角方向から作用したときの20時間後の計算結果を図-8に 示す.また図-9には初期地形に対応する波高分布を示す.

離岸堤群背後が静穏になると同時に離岸堤の背後へと向 かう一対の循環流が生じるために,舌状砂州の形成が進 む.予測結果は,図-1に示した実測結果とほぼ対応を示 す.次に,中央の離岸堤1基が人工リーフ化された条件 において,実測と同様入射波高3mの波が直角入射する 条件で計算を行った.図-10は人工リーフ設置後20時間 の波浪作用後の予測結果を示す.また初期状態での波高 と海浜流の分布を図-11, 12に示す.人工リーフにより波 浪が減衰するが,その際向岸流が起こり,この流れは開 口部から離岸流となって人工リーフの端部を中心に一対 の循環流が生じる.また岸向きに流れ込んだ海水は隣接 の離岸堤背後を通過する沿岸流となって流れ,離岸堤の 開口部からも離岸流を生じさせる.計算結果によれば,

時間経過とともに人工リーフの岸側は侵食され深くなっ 表-1 計算条件

図-8 離岸堤群が設置されたケース1の20時間後の予測地形

図-9 初期状態での波高分布

図-10 人工リーフ設置後20時間の予測地形

図-11 初期状態での波高分布

6.0m/sec

図-12 初期状態での海浜流

(5)

ていくが,侵食は端部に集中し,中央部では緩やかな舌 状砂州が残される.端部での局所洗掘が著しいことに対 応して,開口部からの波浪侵入があるため,舌状砂州の 両側での汀線後退が著しくなる.さらにこの場合も人工 リーフの両側に位置する離岸堤背後の舌状砂州部分で汀 線の後退が起こる.これは図-3の特徴をうまく再現して いる.

図-13は人工リーフに波高3mの入射波が海岸線に対し

右斜めに10°の方向から入射した場合の20時間後の予

測結果を示す.また図-14,15には初期状態における波 高と海浜流の分布を示す.斜め入射のため全体に左向き の沿岸流が発生し,これに人工リーフ起源の向岸流と開 口部での循環流,さらには隣接の離岸堤背後を通過する

流れが重なり複雑な流れのパターンとなる.これに対応 する地形変化は図-13に示したが,この場合も時間経過 とともに人工リーフの岸側は侵食され深くなっていく.

斜め入射のために下手側離岸堤背後の舌状砂州の縮小が 顕著に現れる.人工リーフ左右端の開口部では右端から 背後へと細長い洗掘域が伸びている.これは現地では観 測されておらず不一致である.また人工リーフの中心線 に対し右側の汀線後退量が大きい.これは右端部での局 所洗掘が大きいことに対応し,開口部からの波浪侵入が あるためである.図-16には5000ステップ後の海浜流を 示す.人工リーフ上での強制砕波に伴う強い向岸流が起 こるが,右側開口部での離岸流が強く,左端部では離岸 流ではなく向岸流に変わっている.図-6に示した実験に よる海浜流場では人工リーフの右開口部では向岸流が,

左開口部では強い離岸流が発生したが,計算では左右が 逆となり,人工リーフ周辺の海浜流場の予測にはまだ課 題が残されている.

5. まとめ

皆生海岸の離岸堤の人工リーフ化に伴う海浜変形を実 測,移動床模型実験およびBGモデルによる数値計算に より比較した.この結果,人工リーフ上の岸向流の作用 をexplicitに取り込んだモデルにより,直角入射条件のも とで離岸堤の人工リーフ化に伴う舌状砂州の縮小機構を かなりうまく説明できることが分かった.一方,斜め入 射条件では海浜流パターンが実験との相違が残されてお り,これは両端の境界条件の設定法や,人工リーフ周辺 での海浜流の再現性が高くないことに原因があると考え られる.海浜流の再現性を高めることを通じて,最終 的地形変化予測の精度向上を図ることが今後の課題で ある.

参 考 文 献

合田良實(1990):「港湾構造物の耐波設計」,鹿島出版会, pp.303.

芹沢真澄・宇多高明・三波俊郎・古池 鋼(2006):Bagnold 概念に基づく海浜変形モデル, 土木学会論文集B, Vol.62, No.4, pp.330-347.

堀川清司編(1985):「海岸環境工学-海岸過程の理論・観 測・予測方法」,東京大学出版会, pp.582.

間瀬 肇・高山知司・国富将嗣・三島豊秋(1999):波の回 折を考慮した多方向不規則波の変形計算モデルに関する 研究, 土木学会論文集, №628/Ⅱ48,pp.177-187.

山本正司・鳥居謙一・福濱方哉・人見 寿・宇多高明・高橋 功(2004):水理模型実験によるクレスト型人工リーフ の開発,海岸工学論文集,第51巻,pp.771-775.

Bailard, J. A. and D. L., Inman (1981):An energetics bedload model for a plane sloping beach, J. of Geophys. Res., Vol.86, C3, pp.2035-2043

Dally, W. R., R. G., Dean and R. A. Dalrymple (1984):A model for breaker decay on beaches, Proc. 19th ICCE, pp.82-97.

図-13 波高3mの入射波が海岸線に対し右斜めに10°の方向 から入射した場合の20時間後の予測地形

図-14 初期状態における波高分布

6.0m/sec

図-15 初期状態における海浜流

6.0m/sec

図-16 5000ステップ後の海浜流

参照

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